JP2002334662A - イオン源およびその運転方法 - Google Patents
イオン源およびその運転方法Info
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Abstract
る。 【解決手段】 このイオン源では、背後反射電極10
を、プラズマ生成容器2およびフィラメント6の両者か
ら電気的に絶縁し、この背後反射電極10と対向反射電
極8とを互いに電気的に接続した。更に、フィラメント
電源24およびアーク電源26とは別の電源であって、
両反射電極8、10とプラズマ生成容器2との間に、両
反射電極8、10側を負極にしてバイアス電圧VB を印
加する直流のバイアス電源32を設けた。 【効果】 前記バイアス電圧VB の印加によって、多価
イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。
また、アーク電圧VA を小さくしてフィラメント6の長
寿命化を図ることもできる。両者を折衷させることもで
きる。
Description
ィラメントおよび当該電子反射用の反射電極を有してお
り、かつプラズマ生成容器内に磁界を印加する構成のイ
オン源に関し、より具体的には、イオンの生成効率の向
上やフィラメントの長寿命化等を図る手段に関する。
す。このイオン源は、バーナス型イオン源と呼ばれるも
のであり、同様の構造のものが、例えば特開平9−63
981号公報にも開示されている。
て陽極を兼ねるプラズマ生成容器2を備えており、その
内部にはプラズマ16の生成用のガス(蒸気の場合も含
む)が導入される。このプラズマ生成容器2の壁面(長
辺壁)には、イオンビーム18の引き出し用のイオン引
出しスリット4が設けられている。この例では、イオン
ビーム18は紙面の裏側へ向けて引き出される。
短辺壁側)内には、電子eを放出するこの例ではU字状
のフィラメント6が設けられている。このフィラメント
6とプラズマ生成容器2との間は、絶縁物12によって
電気的に絶縁されている。
メント6と相対向する短辺壁側)内には、フィラメント
6と相対向させて、電子eを反射する対向反射電極8が
設けられている。この対向反射電極8とプラズマ生成容
器2との間は、絶縁物13によって電気的に絶縁されて
いる。この対向反射電極8は、従来は、どこにも接続せ
ずに浮遊電位にする場合と、前記特開平9−63981
号公報にも記載されているように、導線28でフィラメ
ント6の一方端(より具体的には、フィラメント電源2
4の負極側端)に接続してフィラメント電位にする場合
とがある。
ト6の背後に位置する箇所には、即ちフィラメント6の
U字状部とその背後のプラズマ生成容器2の壁面との間
には、対向反射電極8に相対向させて、電子eを反射す
る背後反射電極10が設けられている。この背後反射電
極10とプラズマ生成容器2との間は、絶縁物12およ
び14によって電気的に絶縁されている。この反射電極
10は、従来は、フィラメント6の一端(より具体的に
は、フィラメント電源24の負極側端)に接続してフィ
ラメント電位にしていた。
の生成・維持用に、プラズマ生成容器2の外部に設けら
れた磁界発生器20から、フィラメント6と対向反射電
極8とを結ぶ軸に沿う磁界22が印加される。但し、磁
界22の向きは図示とは逆でも良い。磁界発生器20
は、例えば電磁石である。
(熱電子)eを放出させるために、直流のフィラメント
電源24から、直流のフィラメント電圧VF (例えば2
〜4V程度)が印加される。
2との間には、両者間でアーク放電を生じさせるため
に、フィラメント6を負極側にして、直流のアーク電源
26からアーク電圧VA (例えば40〜100V程度)
が印加される。
13に示す。この例は、対向反射電極8を前記導線28
でフィラメント6の一端に接続した例であるが、対向反
射電極8をどこにも接続せずに浮遊電位にしても、対向
反射電極8の電位はこの例と同程度に、即ちフィラメン
ト6の電位と同程度になる。これは、浮遊電位にしてい
ても、対向反射電極8には、プラズマ16中の軽くて移
動度の高い電子がイオンよりも遙かに多く入射して、対
向反射電極8は負電位に帯電するからである。
器2内に導入されたガスが電離されてプラズマ16が作
られる。そしてこのプラズマ16から、電界の作用で、
イオンビーム18を引き出すことができる。なお、イオ
ン引出しスリット4に対向する箇所(紙面の裏側)に
は、通常は、イオンビーム18を引き出す引出し電極が
設けられているが、ここではその図示を省略している。
と、フィラメント6から放出された電子eは、上記アー
ク電圧VA (フィラメント電圧VF は上記のように小さ
いのでここではそれを無視して説明する)によってプラ
ズマ生成容器2に向けて加速され、この電圧VA に相当
するエネルギーをもってガス分子と衝突して、当該ガス
分子を電離あるいはイオン化する。これによって、プラ
ズマ16が生成される。このプラズマ16中のイオンや
電子(これにはフィラメント6から放出された熱電子も
含まれる)eは、上記磁界22によって閉じ込められ、
更にガス分子との衝突を繰り返すことによって、プラズ
マ16を生成かつ維持する。
ように、プラズマ生成容器2の電位と両反射電極8、1
0の電位との間の電位になり、プラズマ16と両反射電
極8、10との間には電位差が生じており、この電位差
によって、フィラメント6から放出されたりプラズマ1
6中で生成されたりした電子eは、両反射電極8、10
でそれぞれ反射されて両反射電極8、10間を往復運動
するようになる。その結果、当該電子eとガス分子との
衝突確率が高くなり、密度の高いプラズマ16を生成す
ることができ、ひいてはイオンビーム18の引き出し量
を多くすることができる。
から、イオンビーム18を構成するイオンとして、2価
以上の多価イオンを引き出して利用したいという要望が
ある。これは、多価イオンの場合は、1価イオンに比べ
て、同じ加速電圧で価数倍(例えば2価イオンの場合は
2倍)の加速エネルギーを得ることができるので、高エ
ネルギー化が容易になる等の理由による。
源では、多価イオンの生成に対する配慮が成されていな
いので、分子イオンあるいは1価イオンに比べて、多価
イオンの生成量が少なかった。即ち、プラズマ16中の
多価イオンの割合、ひいてはイオンビーム18中に含ま
れる多価イオンの割合が高くなかった。従って、多価イ
オンを有効に利用することができなかった。
において、多価イオンの生成効率を向上させて、イオン
ビーム中に含まれる多価イオンの割合を向上させること
を可能にすることを一つの目的としている。その他の目
的は後述する。
の一つは、前記背後反射電極をフィラメントから電気的
に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源
とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反
射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間
に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印
加する直流のバイアス電源を設けたことを特徴としてい
る。
び背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイアス電
源から印加するバイアス電圧によって、アーク電源およ
びフィラメント電源の出力電圧から独立して調整するこ
とができる。従って、当該反射電極で反射する電子のエ
ネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によって
調整することができる。例えば、バイアス電圧を大きく
するほど、反射される電子のエネルギーおよび量は大き
くなる。
ネルギーの電子を多くプラズマの生成に利用することが
可能になるので、プラズマ中の分子、原子あるいはイオ
ンの解離(電離)をより促進させて、多価イオンをより
多く生成することが可能になる。即ち、多価イオンの生
成効率を向上させて、イオンビーム中に含まれる多価イ
オンの割合を向上させることが可能になる。
を行う場合にも、上記バイアス電圧の印加された反射電
極で反射される高いエネルギーの電子を多くプラズマの
生成に効率良く利用してイオンの生成効率を高めること
ができるので、1価イオンの生成効率を向上させて、1
価イオンビームの引き出し量を多くすることも可能にな
る。
うに、バイアス電圧の印加された反射電極で反射される
高いエネルギーの電子によってガスを効率良く電離させ
ることができるので、アーク電圧を小さくしても、プラ
ズマの生成効率の低下を抑えて、ビーム電流の減少を抑
えることができる。従って、フィラメント電流ひいては
アーク電流を大きくせずに済む。その結果、アーク電圧
を小さくしてフィラメントの長寿命化を図ることも可能
になる。
の生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオ
ンの生成効率を高めることができる。また、フィラメン
トの長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧を小さくして
フィラメントの長寿命化を図ることもできる。これは1
価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもでき
る。また、イオンの生成効率向上とフィラメントの長寿
命化とを折衷させることもできる。
反射電極および背後反射電極の少なくとも一方の電位を
フィラメントの電位よりも負にして、あるいは前記バイ
アス電圧をアーク電圧よりも10V以上大きくしてイオ
ンビームを引き出すというイオン源の運転方法を採用す
ることによって、より高エネルギーの電子をより多く利
用することが可能になるので、上記イオンの生成効率向
上やフィラメントの長寿命化等の効果をより高めること
が可能になる。
の一例を示す概略断面図である。図12に示した従来例
と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下に
おいては当該従来例との相違点を主に説明する。
を、フィラメント6から電気的に絶縁している。即ち、
ここでは背後反射電極10を、プラズマ生成容器2およ
びフィラメント6の両者から電気的に絶縁している。
反射電極8とを、導線30で互いに電気的に接続して互
いに同電位にしている。
ーク電源26とは別の電源であって、前記対向反射電極
8および背後反射電極10と前記プラズマ生成容器2と
の間に両反射電極8、10側を負極にして直流のバイア
ス電圧VB を印加する直流のバイアス電源32を設けて
いる。
ら説明する。
示した従来のイオン源の電位配置を再び説明すると、前
述したように従来の電位配置は図13に示すようなもの
であり、対向反射電極8および背後反射電極10の電位
はフィラメント6の電位に等しいかほぼ等しい。このよ
うな電位配置の場合、背後反射電極10による電子eの
反射はあまり効率が良くなく、フィラメント6から放出
された電子eの内の何割かは、フィラメント6の近傍に
設けられた背後反射電極10に衝突してしまい、プラズ
マ16の生成・維持に寄与しない。また、この背後反射
電極10は、アーク電圧VA に相当する電位とさほど変
わらない電位しか有していないため、この背後反射電極
10で反射される電位eのエネルギーはあまり大きくな
い。
相当する電位とさほど変わらない電位しか有していない
ため、この対向反射電極8で反射される電子eのエネル
ギーはあまり大きくない。また、この対向反射電極8に
よる電子eの反射もあまり効率が良くなく、プラズマ1
6側に向かわずに拡散して、プラズマ生成容器2の壁面
に衝突する電子eも多い。
は、両反射電極8、10で反射される電子eのエネルギ
ーおよび量が小さいので、当該電子eによるプラズマ1
6中の分子、原子あるいはやイオンの解離があまり進ま
ず、多価イオンの生成量が少なかったものと考えられ
る。
は、フィラメント電源24およびアーク電源26とは別
のバイアス電源32を設けているので、このバイアス電
源32から出力するバイアス電圧VB によって、対向反
射電極8および背後反射電極10の電位を、フィラメン
ト電圧VF およびアーク電圧VA から独立して調整する
ことができる。従って、両反射電極8、10で反射する
電子eのエネルギーや当該電子eの量を、このバイアス
電圧VB の大きさによって調整することができる。例え
ば、バイアス電圧VB を大きくするほど、両反射電極
8、10による電子eの反射の効率が高まるので、反射
させる電子eの量は多くなる。また、両反射電極8、1
0で反射された電子eのエネルギーも大きくなる。
例を示す。バイアス電源32から出力するバイアス電圧
VB によって、対向反射電極8および背後反射電極10
の電位を自由に調整することができ、従来例と違って、
両反射電極8、10の電位を、フィラメント6の電位よ
りも負の電位にすることも可能である。従って、上述し
たように、両反射電極8、10で反射させる電子eのエ
ネルギーおよび量をより大きくすることが可能である。
エネルギーの電子eを多くプラズマ16の生成・維持に
利用することが可能になるので、プラズマ16中の分
子、原子あるいはイオンの解離(電離)をより促進させ
て、多価イオンをより多く生成することが可能になる。
即ち、多価イオンの生成効率を向上させて、プラズマ1
6中に含まれる多価イオンの割合を向上させることがで
きる。従って、多価イオンを有効に利用することが可能
になる。
ィラメント6の電位よりも負にすることによって、より
高エネルギーの電子eをより多く利用することが可能に
なるので、多価イオンをより多く、より効率的に生成す
ることが可能になる。
10の電位をフィラメント6の電位よりもどの程度負に
するのが好ましいかは、後述する図3の結果からも分か
るように、例えば10V以上、より好ましくは20V以
上負にするのが好ましい。
を両反射電極8、10の電位で規定したものであるが、
アーク電圧VA との関係でバイアス電圧VB の好ましい
領域を規定しても良い。具体的には、バイアス電圧VB
(より正確に言えばバイアス電圧VB の絶対値)をアー
ク電圧VA (より正確に言えばアーク電圧VA の絶対
値)よりも10V以上大きくする、即ちバイアス電圧V
B とアーク電圧VA との差ΔV(=|VB |−|V
A |)を10V以上にすることでも良い。これによって
も、両反射電極8、10で反射されたより高エネルギー
の電子eをより多く利用することが可能になるので、多
価イオンをより多く、より効果的に生成することが可能
になる。
場合よりも小さくする等して、1価イオンのイオンビー
ム18の引き出しを行う場合にも、上記バイアス電圧V
B の印加された反射電極8、10で反射される高いエネ
ルギーの電子eを多くプラズマ16の生成に効率良く利
用してイオンの生成効率を高めることができるので、1
価イオンの生成効率を向上させて、1価イオンビーム1
8の引き出し量を多くすることも可能になる。これは、
後述する図4〜図6の結果からも裏付けられている。
オンの生成効率を高めることができるので、そのような
効果を利用して、多価イオンをより多く引き出すこと
も、1価イオンをより多く引き出すことも、いずれも可
能になるということである。
圧VB は、上記例のように対向反射電極8および背後反
射電極10の両方に印加するのが最も好ましいけれど
も、対向反射電極8または背後反射電極10のどちらか
一方だけにバイアス電圧VB を印加するようにしても良
い。そのようにしても、バイアス電圧VB を印加した反
射電極8または10で反射される電子eのエネルギーお
よび量を前述したように大きくすることができるので、
多価イオンや1価イオンの生成効率を向上させてイオン
ビーム18中に含まれる多価イオンあるいは1価イオン
の割合を向上させる効果を奏する。反射電極8または1
0の一方にバイアス電圧VB を印加する場合は、背後反
射電極10にバイアス電圧VB を印加する場合の方が、
上述した作用によって多価イオンや1価イオンの生成効
率を向上させる効果は大きい。しかし、対向反射電極8
にバイアス電圧VB を印加しても、上述した作用から、
従来のイオン源よりかは多価イオンあるいは1価イオン
の生成効率を高めることができる。
る対向反射電極8および背後反射電極10には、電子e
が反射されるのに比例して、プラズマ16中のイオン
が、プラズマ16と両反射電極8、10間の電位差に相
当するエネルギーで入射衝突する。そのために両反射電
極8、10の温度は高温に上昇するので、両反射電極
8、10は、その高温に耐えられる高融点材料で構成し
ておくのが好ましい。例えば、元素周期表の4A族(T
i 、Zr 、Hf )、5A族(V、Nb 、Ta )、6A族
(Cr 、Mo 、W)の金属またはそれらの合金(例えば
タングステン・イットリウム合金、タングステン・ジル
コニウム合金等)で構成しておくのが好ましい。
ら説明する。
参照)フィラメント6の寿命を長くするために、アーク
電圧VA を小さくしてイオン源を運転する、即ちイオン
ビーム18を引き出すことが提案されている。プラズマ
16中のイオン(正イオン。以下同じ)は、アーク電圧
VA で加速されてフィラメント6に衝突するので、アー
ク電圧VA を小さくするとこのイオンによるスパッタリ
ングによるフィラメント6の消耗を少なくすることがで
きるからである。
ーク電圧VA を小さくしたのでは、前記説明(図13参
照)からも分かるように、フィラメント6から放出され
たりプラズマ16中で生成されたりした電子eのアーク
電圧VA による加速エネルギーも小さくなるので、当該
電子eによるガスの電離効率が下がり、プラズマ16の
生成効率が下がり、引き出し得るイオンビーム18の量
(即ちビーム電流)が減少してしまう。
に流すフィラメント電流を大きくすることによって、フ
ィラメント6とプラズマ生成容器2間のアーク放電の電
流(即ちアーク電流。これはアーク電源26に流れる電
流でもある)を大きくして対処するという考えもあるけ
れども、そのようにすると、フィラメント6の温度上昇
が大きくなってフィラメント材料の蒸発量が多くなり、
これが新たにフィラメント6の寿命を短くする原因にな
るので、必ずしもうまく行かない。
ように、両反射電極8、10で反射する電子eのエネル
ギーや当該電子eの量を、バイアス電圧VB によって調
整することができ、このバイアス電圧VB を大きくする
ほど反射される電子eのエネルギーおよび量は大きくな
る。特に、前述したように、バイアス電圧VB によって
両反射電極8および10の電位をフィラメント6の電位
よりも負にすることによって、あるいは両反射電極8、
10に印加するバイアス電圧VB をアーク電圧VA より
も10V以上大きくすることによって、より高エネルギ
ーの電子eをより多く利用することが可能になる。そし
て、この両反射電極8、10で反射された高いエネルギ
ーの電子eによってプラズマ生成容器2内のガスを効率
良く電離させることができるので、アーク電圧VA を小
さくしても、プラズマ16の生成効率の低下を抑えて、
イオンビーム18のビーム電流の減少を抑えることがで
きる。従って、フィラメント電流ひいてはアーク電流を
大きくせずに済む。
成容器2内に導入されたガスを効率良く電離させてプラ
ズマ16を効率良く生成するためには、ガスの電離エネ
ルギー以上のエネルギーを有する電子eを多く発生させ
る必要がある。従来はその電子eのエネルギーを決めて
いたのがアーク電圧VA である。従って、ガスの電離エ
ネルギーに相当する電圧よりもアーク電圧VA を小さく
すると、ガスの電離効率は急激に低下する。
電圧VA よりも10V(=ΔV)以上大きいバイアス電
圧VB を両反射電極8、10に印加すると、アーク電圧
VAによって加速された電子eだけでなく、両反射電極
8、10で反射された、アーク電圧VA に相当するエネ
ルギーよりも高いエネルギーを有する電子eをガスの電
離に利用することができる。これによって、電子eのエ
ネルギー分布を、アーク電圧VA だけの場合よりもΔV
相当ぶん高い方へシフトさせることができる。しかも、
アーク電圧VA 相当のエネルギーを有する電子eとバイ
アス電圧VB 相当のエネルギーを有する電子とが混在す
ることになるので、電子eのエネルギー分布におけるピ
ーク付近のエネルギーの幅も広がる。従って、アーク電
圧VA を小さくしても、ガスの電離に用いる電子eのエ
ネルギーを、当該ガスの電離に適したエネルギー値付近
に多く分布させることができる。このような作用によっ
て、アーク電圧VA を小さくしても、ガスを効率良く電
離させることができ、ビーム電流の減少を抑えることが
できる。
タによるフィラメント6の消耗は、前述したようにアー
ク電圧VA には依存するけれども、バイアス電圧VB に
は依存しない。つまり、バイアス電圧VB を大きくして
もフィラメント6の消耗を大きくすることにはならな
い。これは、両反射電極8、10は、電子eを反射する
のであって、フィラメント6をスパッタするイオンをフ
ィラメント6に向けて加速する作用は奏しないからであ
る。
アーク電流を大きくせずにビーム電流の減少を抑えるこ
とができる。その結果、アーク電圧VA を小さくしてフ
ィラメント6の長寿命化を図ることが可能になる。
ント6の寿命をより延ばしたい等の場合は、バイアス電
圧VB とアーク電圧VA との差ΔVを前述した10Vよ
りももっと大きくすれば良い。例えば後述するより具体
的な実施例からも分かるように、バイアス電圧VB をア
ーク電圧VA よりも20V以上大きくすると、ビーム電
流の減少抑制により顕著な効果を発揮する。バイアス電
圧VB によって両反射電極8、10の電位をフィラメン
ト6の電位よりも負にする観点から言えば、例えば10
V以上、より好ましくは20V以上負にするのが好まし
い。
同様に、バイアス電源32からのバイアス電圧VB は、
上記例のように対向反射電極8および背後反射電極10
の両方に印加するのが最も好ましいけれども、対向反射
電極8または背後反射電極10のどちらか一方だけにバ
イアス電圧VB を印加するようにしても良い。そのよう
にしても、バイアス電圧VB を印加した反射電極8また
は10で反射される電子eのエネルギーおよび量を前述
したように大きくすることができ、それによってイオン
の生成効率を高めることができるからである。
オンビーム18を構成するイオンとして、1価のイオン
を引き出す場合に限られるものではなく、前述したよう
な2価等の多価のイオンを引き出す場合にも可能であ
る。多価イオンを生成する場合は、1価イオンの場合に
比べて、一般的に、アーク電圧VA を大きくする必要が
あるけれども、その場合でも、上記のようなバイアス電
圧VB を印加することによって、上述したようにより小
さいアーク電圧VA で済むようになるので、多価イオン
引き出しの場合もフィラメント6の長寿命化を図ること
が可能になる。
オンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価
イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラ
メント6の長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧VA を
小さくしてフィラメント6の長寿命化を図ることもでき
る。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれに
おいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラ
メント6の長寿命化とを折衷させることもできる。折衷
させる場合は、アーク電圧VA の下げ方を、フィラメン
ト6の長寿命化を主眼にする場合よりも少なくすれば良
い。
場合のより具体的な実施例を説明する。
生成容器2内にフッ化ホウ素(BF 3 )ガスを導入し
て、イオンビーム18としてホウ素イオンビームを引き
出したときの、当該イオンビーム中に含まれるホウ素の
2価イオン(B2+)のビーム電流が、前記バイアス電圧
VB によって変化する状況を測定した結果を図3中に実
施例として示す。このとき、アーク電圧VA は60V、
フィラメント電圧VF は約2Vにした。
した従来のイオン源において、対向反射電極8を浮遊電
位にした(即ち導線28を接続していない)ときのB2+
ビーム電流を測定した結果を従来例として示す。従来例
では、バイアス電圧VB は印加しないので、測定点の横
軸の値は示していない(示しようがない)。
すとB2+ビーム電流が急増しており、70V以上では従
来例と明確な差があり、80V以上で顕著な差のあるこ
とが分かる。即ち、この例の場合、アーク電圧VA が6
0Vであるから、フィラメント6の電位は、プラズマ生
成容器2の電位を基準に見て−60V程度であり、上記
バイアス電圧VB によって両反射電極8および10の電
位を−60Vよりも負にすることによって、B2+ビーム
電流の増大に効果のあることが分かる。より具体的に
は、B2+ビームを引き出す場合は、バイアス電圧VB は
70V以上が好ましく、80V以上がより好ましいと言
える。換言すれば、バイアス電圧VB によって両反射電
極8、10の電位をフィラメント6の電位よりも10V
以上負にするのが好ましく、20V以上負にするのがよ
り好ましい。そのようにすれば、従来例の1.5倍〜2
倍程度のB2+ビーム電流を得ることができる。
からも分かるように160Vに近づくとB2+ビーム電流
の増大が飽和しており、またバイアス電圧VB をあまり
大きくすると両反射電極8および10の電気絶縁が難し
くなるので、当該電気絶縁の面から上限が自ずから決ま
ってくる。
0Vより小さいときの測定点がないのは、バイアス電圧
VB を60Vより小さくすると、バイアス電源32に大
きな負荷電流が流れて測定が困難になったからである。
これは、上記条件ではプラズマ16の電位が−60V付
近にあり、バイアス電圧VB を60Vよりも小さくする
と、両反射電極8および10が電子eを反射するのとは
反対に電子eを引き込んでしまうからであると考えられ
る。
の例であるが、この発明は勿論、それ以外の多価イオン
の生成、引き出しにも利用することができる。例えば、
リン(P)の多価イオンの生成等にも利用することがで
きる。
する場合のより具体的な実施例を説明する。
例と同様に、プラズマ生成容器2内にフッ化ホウ素(B
F3 )ガスを導入して、イオンビーム18としてホウ素
イオンビームを引き出したときの、当該イオンビーム中
に含まれるホウ素の1価イオン(B+ )のビーム電流
が、前記バイアス電圧VB によって変化する状況を測定
した結果を図4〜図6に示す。このとき、アーク電圧V
A は45V、60Vおよび75Vの3種、フィラメント
電圧VF は約2Vにした。図4はアーク電流が1000
mA、図5は同電流が2000mA、図6は同電流が3
000mAの場合の結果である。
イアス電圧VB の低いときの測定点(即ち白抜きの測定
点)が、バイアス電圧VB を印加しない場合、即ち両反
射電極8、10をフロート状態にした場合であり、その
場合に両電極8、10の電位が、アーク電圧VA よりも
若干小さい値の電位になる、即ち図のバイアス電圧V B
に相当する電位になる理由は、前述のとおりである。
バイアス電圧VB が印加されていない場合、ビーム電流
は約110μA得られている。これに対して、アーク電
圧V A が45Vでバイアス電圧VB が印加されていない
場合、ビーム電流は約60μAしか得られない。大幅に
減少している。しかしながら、アーク電圧VA よりも大
きいバイアス電圧VB を印加してその電圧を上げて行く
とビーム電流は増大し、バイアス電圧VB をアーク電圧
VA よりも10V以上大きくすれば(バイアス電圧VB
の値で言えば55V以上にすれば)ビーム電流は明らか
に増大しているのが分かる。バイアス電圧VB をアーク
電圧VA よりも20V以上大きくすれば、ビーム電流は
バイアス電圧無印加時に比べて顕著に増大している。
げてもバイアス電圧VB を60〜65Vにすれば、アー
ク電圧VA が60Vでバイアス電圧無印加時とほぼ同程
度のビーム電流が得られている。即ち、ビーム電流の減
少を十分に抑えることができている。同様に、アーク電
圧VA を60Vに下げてもバイアス電圧VB をアーク電
圧VA よりも10V以上大きくすることによって(バイ
アス電圧VB の値で言えば70V以上にすることによっ
て)、アーク電圧VA が75Vでバイアス電圧無印加時
と同程度以上のビーム電流が得られている。
させてビーム電流全体を増大させた場合も、バイアス電
圧VB をアーク電圧VA よりも10V以上大きくする、
より好ましくは20V以上大きくすることによって、バ
イアス電圧無印加時に比べてビーム電流が明らかに増大
している。即ち、アーク電圧VA を45Vに下げても、
ビーム電流の減少を抑えて、アーク電圧VA が60Vで
バイアス電圧無印加時のビーム電流に近づけることがで
きている。同様に、アーク電圧VA を60Vに下げて
も、アーク電圧VA が75Vでバイアス電圧無印加時と
同程度以上のビーム電流が得られている。
ΔVの上限については、上記図4〜図6の測定結果から
も分かるように、差をある程度大きくするとビーム電流
の増大が飽和するので、80V程度を上限と考えること
ができる。また、バイアス電圧VB 自体の大きさの上限
は、上記と同様の理由から、160V程度が現実的であ
る。
ラズマ生成用のガスとしてアルゴン(Ar )ガスを用い
て、アーク電圧VA を50Vと60Vの2種とし、アー
ク電流が2500mAで10時間連続してプラズマ16
を生成させた後のフィラメント6の消耗の状況(即ちフ
ィラメント6の直径の減少量)を測定した結果を図8に
示す。このとき、バイアス電圧VB は90Vにした。ま
た、図7に、フィラメント6の直径の測定点を示し、こ
れは図8の横軸に対応している。
A を60Vから50Vに低下させると、フィラメント6
の消耗は大幅に減っている。具体的には、フィラメント
6の先端付近での直径の減少量は半分近くに減ってい
る。従って、フィラメント6の寿命は大幅に延びる。こ
れは、アーク電圧VA を60Vから50Vへと10V低
下させた場合の例であり、10Vよりも更に低下させる
とフィラメント6の寿命がより延びることは、この結果
から容易に推測できよう。
前述したようにイオンの生成効率が向上することによっ
て、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメ
ント電流を小さくすることもできるので、それによって
フィラメント6の温度を下げることができ、フィラメン
ト6からの構成材料の蒸発速度を低下させることがで
き、これによってもフィラメント6の寿命を延長するこ
とができる。
6の材料として一般的なタングステンの蒸発速度および
熱電子放射電流密度の温度特性を示す。例えば、通常の
運転状態に近いフィラメント温度2800Kでの熱電子
放射電流密度を半分にする温度は約2720Kであり、
この場合のタングステンの蒸発速度は約4分の1(正確
には1/4.3)となり、フィラメント6の寿命は4倍
近くに延びる。即ち、フィラメント6の温度を約280
0Kから約2720Kに下げると、熱電子放射電流密度
は約半分に下がるけれども、その場合のビーム電流の減
少は上記バイアス電圧VB の印加によって抑えることが
でき、しかもフィラメント6の寿命は約4倍に延びると
いうことである。
電極10の温度は、前述したように、プラズマ16から
のイオンの入射衝突によって高温に上昇するので、対向
反射電極8および背後反射電極10の少なくとも一方
を、好ましくは両方を、フィラメント6の一般的な構成
材料であるタングステンよりも熱電子放射電流密度の高
い材料で構成しておいても良い。そのようにすれば、当
該反射電極8、10から放出される電子をもプラズマ1
6の生成・維持に効果的に利用することが可能になるの
で、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメ
ント電流をより低下させることができ、それによってフ
ィラメント6の寿命をより延ばすことができる。
よりも熱電子放射電流密度の大きい材料としては、例え
ば、タンタル(約9.9×10-3)、モリブデン(約
7.7×10-3)、ニオブ(約1.2×10-2)、ジル
コニウム(約5.5×10-2)、タングステン・イット
リウム合金(約4.4)、タングステン・ジルコニウム
合金(約0.24)等が利用できる。各括弧内の数値
は、当該材料の2000Kにおける熱電子放射電流密度
を示す(単位はA/cm2 )。タングステンを基準にし
たのは、熱電子放出材料としてはタングステンが一般的
だからである。これらの材料の内でもタンタルは、融点
も高く(約3250K)、熱電子放射電流密度も大き
く、しかも価格も比較的安いので、好ましい材料の一つ
である。
ン源によれば、イオンの生成効率が向上することによっ
てフィラメント電流を小さくすることができるので、フ
ィラメント電流の大きさを、イオン源の運転の初期は相
対的に大きくし、その後は相対的に小さくする運転方法
を採用しても良い。そのようにすれば、イオン源運転の
初期には大きなフィラメント電流でプラズマ16を確実
に点火させることができると共に、その後にフィラメン
ト電流を小さくすることによって、フィラメント6の寿
命をより一層延ばすことができる。
少なくとも一方に、好ましくは両方に、上記のようなタ
ングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料を用
いている場合は、上述したように、当該反射電極8、1
0から放出される電子をもプラズマ16の生成・維持に
効果的に利用することが可能になるので、イオン源運転
開始後のフィラメント電流をより一層小さくして、フィ
ラメント6の寿命をより一層長く延ばすことが可能にな
る。
大きい材料を用いている場合には、特に両反射電極8お
よび10に用いている場合には、プラズマ16の点火後
は、当該反射電極8、10からの電子放出によってプラ
ズマ16を維持することができる場合もあり、その場合
は、イオン源の運転の初期にのみフィラメント電流を流
してフィラメント6を加熱し、その後はフィラメント電
流をオフ(即ち0)にすることができる。そのようにす
れば、フィラメント6の寿命を非常に延長することがで
きる。
てイオンビーム18の量を制御する実施例を説明する。
条件の一つであるイオンドーズ量の変更には、通常はイ
オン源から引き出すイオンビームの量(即ちイオンビー
ム電流)を変化させることで行われる。
は、それから引き出すイオンビーム18の量の調整は、
フィラメント電源24からフィラメント6に流すフィラ
メント電流を変化させてアーク電流を変化させることに
よって行っていた。
ント6から放出される熱電子eの量、即ちフィラメント
6の温度によって決定されるが、真空中(プラズマ生成
容器2内およびその周りは真空中である)に設置された
フィラメント6の温度を変化させるためには長い時間が
必要となる。即ち、アーク電流およびイオンビーム電流
を変化させるためには長い時間が必要である。例えば数
十秒程度は必要である。その結果例えば、当該イオン源
を用いたイオン注入処理において、注入条件の変更に長
い時間を要することになり、全体の処理が遅くなってし
まう。
は、前記図4〜図6およびその説明からも分かるよう
に、アーク電流を変化させなくても(即ち同一のアーク
電流であっても)、バイアス電圧VB の大きさを制御
(調整)することによって、引き出すイオンビーム18
の量(即ちイオンビーム電流)を制御することができ
る。
で一定)において、アーク電圧VAが60Vでバイアス
電圧VB が印加されていない場合、ビーム電流は約11
0μA得られている。これに対して、バイアス電圧VB
を印加し、かつその値を大きくするとビーム電流は次第
に増大し、バイアス電圧VB を120Vにするとビーム
電流は約190μAにまで上昇している。
図6の場合も同様に、アーク電流を一定にしておいて
も、バイアス電圧VB の電圧制御によってビーム電流の
大きさを制御することのできることが分かる。2価イオ
ンのイオンビーム18を引き出す場合も同様である(図
3参照)。
のに要する時間は、バイアス電源32から出力するバイ
アス電圧VB の調整に要する時間で決まり、例えば数秒
程度である。これは、前述した従来のアーク電流を変化
させる方法による場合の数十秒程度に比べて、約10倍
も速い。このように、バイアス電源32から出力するバ
イアス電圧VB の大きさを制御する(この制御には、バ
イアス電圧VB をオン、オフさせることも含む)ことに
よって、イオン源から引き出すイオンビーム18の量を
高速で制御することができる。
う一組のフィラメント6および背後反射電極10を設け
た実施例を説明する。
においては図1に示したイオン源との相違点を主体に説
明する。それ以外の事項については、図1のイオン源に
おける前記説明が適用される。
(第1の)フィラメント6および背後反射電極10の他
に、上記対向反射電極8の代わりとして、もう一組の
(第2の)フィラメント6および背後反射電極10を設
けている。即ち、二つの(第1および第2の)前述した
ようなフィラメント6を、プラズマ生成容器2内に相対
向させて配置している。また、各フィラメント6の背後
には、二つの(第1および第2の)前述したような背後
反射電極10を、相対向させて配置している。
10中の点P、Qで互いに並列接続されている。従って
この例では、二つのフィラメント6には、共通のフィラ
メント電源24から加熱用のフィラメント電圧VF が印
加され、かつ共通のアーク電源26からアーク放電用の
アーク電圧VA が印加される。但し、この例と違って、
各フィラメント6にフィラメント電源24およびアーク
電源26をそれぞれ設けても良い。
射電極10を二組有するイオン源は、前記特開平9−6
3981号公報にも記載されているけれども、従来は、
両背後反射電極10は、図12の従来例と同様、フィラ
メント6の一端(より具体的には、フィラメント電源2
4の負極側端)に接続してフィラメント電位にしてい
た。
施例の場合と同様、各背後反射電極10を、各フィラメ
ント6およびプラズマ生成容器2の両者から電気的に絶
縁している。そして、この例では、両背後反射電極10
を導線30で互いに電気的に接続して互いに同電位にし
ている。
ーク電源26とは別の電源であって、両反射電極10と
前記プラズマ生成容器2との間に両反射電極10側を負
極にして直流のバイアス電圧VB を印加する直流の前記
バイアス電源32を設けている。
11に示す。フィラメント6および背後反射電極10
は、同じ電位のものが二つずつあると考えれば良い。
2から両背後反射電極10に前記のようなバイアス電圧
VB を印加することによって、基本的には、図1に示し
たイオン源の場合と同様の作用効果を奏する。
合も、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオ
ンや1価イオンの生成効率を高めることができる。ま
た、フィラメント6の長寿命化を主眼にすれば、アーク
電圧VA を小さくしてフィラメント6の長寿命化を図る
こともできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成
のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向
上とフィラメント6の長寿命化とを折衷させることもで
きる。折衷させる場合は、アーク電圧VA の下げ方を、
フィラメント6の長寿命化を主眼にする場合よりも少な
くすれば良い。
の運転方法を採用することができ、それによって前述し
たような作用効果を奏することができる。
オン源に比べて、フィラメント6および背後反射電極1
0を二組設けているので、各フィラメント6から放出さ
せる電子量を半分にして、各フィラメント6の寿命をよ
り一層延長させることができるという特徴を有してい
る。
イアス電源32からのバイアス電圧VB は、この例のよ
うに両背後反射電極10に印加するのが最も好ましいけ
れども、どちらか一方の背後反射電極10だけにバイア
ス電圧VB を印加するようにしても良い。そのようにし
ても、バイアス電圧VB を印加した側の背後反射電極1
0で反射される電子eのエネルギーおよび量を前述した
ように大きくすることができるので、多価イオンや1価
イオンの生成効率を向上させてイオンビーム18中に含
まれる多価イオンあるいは1価イオンの割合を向上させ
る効果を奏する。また、アーク電圧VA を小さくしてフ
ィラメント6の長寿命化を図ることもできる。
るので、次のような効果を奏する。
極および背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイ
アス電源から印加するバイアス電圧によって、アーク電
源およびフィラメント電源の出力電圧から独立して調整
することができるので、当該反射電極で反射する電子の
エネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によっ
て調整することができる。その結果、高いエネルギーの
電子を多くプラズマの生成に利用することが可能になる
ので、プラズマ中のガス分子あるいはイオンの解離をよ
り促進させて、イオンの生成効率を高めることが可能に
なる。
すれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めるこ
とができる。また、フィラメントの長寿命化を主眼にす
れば、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化
を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオ
ン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成
効率向上とフィラメントの長寿命化とを折衷させること
もできる。
極および背後反射電極の少なくとも一方を、タングステ
ンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成するこ
とによって、当該反射電極から放出される電子をもプラ
ズマの生成・維持に効果的に利用することが可能になる
ので、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラ
メント電流をより低下させることができ、それによって
フィラメントの寿命をより延ばすことが可能になる。
反射電極および背後反射電極の少なくとも一方の電位を
フィラメントの電位よりも負にすることによって(請求
項5または8に記載の発明)、あるいは前記バイアス電
圧をアーク電圧よりも10V以上大きくすることによっ
て(請求項7または10に記載の発明)、より高エネル
ギーの電子をより多く利用することが可能になるので、
上記イオンの生成効率向上やフィラメントの長寿命化等
の効果をより高めることが可能になる。
第2の背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイア
ス電源から印加するバイアス電圧によって、アーク電源
およびフィラメント電源の出力電圧から独立して調整す
ることができるので、当該反射電極で反射する電子のエ
ネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によって
調整することができる。その結果、高いエネルギーの電
子を多くプラズマの生成に利用することが可能になるの
で、プラズマ中のガス分子あるいはイオンの解離をより
促進させて、イオンの生成効率を高めることが可能にな
る。
すれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めるこ
とができる。また、フィラメントの長寿命化を主眼にす
れば、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化
を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオ
ン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成
効率向上とフィラメントの長寿命化とを折衷させること
もできる。
を二組有しているので、請求項1記載の発明に比べて、
各フィラメントから放出させる電子量を半分にして、各
フィラメントの寿命をより一層延長させることができ
る。
第2の背後反射電極の少なくとも一方を、タングステン
よりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成すること
によって、当該反射電極から放出される電子をもプラズ
マの生成・維持に効果的に利用することが可能になるの
で、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメ
ント電流をより低下させることができ、それによってフ
ィラメントの寿命をより延ばすことが可能になる。
および第2の背後反射電極の少なくとも一方の電位を第
1および第2のフィラメントの電位よりも負にすること
によって(請求項6または9に記載の発明)、あるいは
前記バイアス電圧をアーク電圧よりも10V以上大きく
することによって(請求項7または10に記載の発
明)、より高エネルギーの電子をより多く利用すること
が可能になるので、上記イオンの生成効率向上やフィラ
メントの長寿命化等の効果をより高めることが可能にな
る。
運転の初期には大きなフィラメント電流でプラズマを確
実に点火させることができると共に、その後にフィラメ
ント電流を小さくすることによって、フィラメントの寿
命をより一層延ばすことができる。
電源から出力するバイアス電圧の大きさを制御すること
によって、イオン源から引き出すイオンビームの量を、
フィラメント電流を変化させてアーク電流を変化させる
場合に比べて、高速で制御することができる。
図である。
的に示す図である。
特性の一例を示す図である。
イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図で
ある。
イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図で
ある。
イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図で
ある。
る。
変化を測定した結果を示す図である。
密度の温度特性を示す図である。
断面図である。
模式的に示す図である。
る。
模式的に示す図である。
Claims (12)
- 【請求項1】 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラ
ズマ生成容器と、このプラズマ生成容器の一方側内にプ
ラズマ生成容器から電気的に絶縁して設けられていて電
子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成容器の
他方側内にフィラメントと相対向させて、かつプラズマ
生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反
射する対向反射電極と、前記プラズマ生成容器内のフィ
ラメントの背後に対向反射電極に相対向させて、かつプ
ラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電
子を反射する背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内
にフィラメントと対向反射電極とを結ぶ軸に沿う磁界を
発生させる磁界発生器と、前記フィラメントを加熱して
電子を放出させるフィラメント電源と、前記フィラメン
トとプラズマ生成容器との間にフィラメント側を負極に
して直流のアーク電圧を印加して両者間でアーク放電を
生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源におい
て、前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁
し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別
の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極
の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該
反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する
直流のバイアス電源を設けたことを特徴とするイオン
源。 - 【請求項2】 前記対向反射電極および背後反射電極の
少なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流
密度の大きい材料で構成している請求項1記載のイオン
源。 - 【請求項3】 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラ
ズマ生成容器と、このプラズマ生成容器内にプラズマ生
成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて設けら
れていて電子をそれぞれ放出する第1および第2のフィ
ラメントと、この第1および第2のフィラメントの背後
にあってプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ
相対向させて配置されていて電子をそれぞれ反射する第
1および第2の背後反射電極と、前記プラズマ生成容器
内に前記第1および第2のフィラメントを結ぶ軸に沿う
磁界を発生させる磁界発生器と、前記第1および第2の
フィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント
電源と、前記第1および第2のフィラメントとプラズマ
生成容器との間に両フィラメント側を負極にして直流の
アーク電圧を印加して両フィラメントとプラズマ生成容
器との間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源と
を備えるイオン源において、前記第1および第2の背後
反射電極を前記第1および第2のフィラメントからそれ
ぞれ電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源および
アーク電源とは別の電源であって、前記第1および第2
の背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容
器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス
電圧を印加する直流のバイアス電源を設けたことを特徴
とするイオン源。 - 【請求項4】 前記第1および第2の背後反射電極の少
なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流密
度の大きい材料で構成している請求項3記載のイオン
源。 - 【請求項5】 前記バイアス電源は、前記プラズマ生成
容器の電位を基準に見て、前記対向反射電極および背後
反射電極の少なくとも一方の電位を前記フィラメントの
電位よりも負の電位にするバイアス電圧を出力するもの
である請求項1または2記載のイオン源。 - 【請求項6】 前記バイアス電源は、前記プラズマ生成
容器の電位を基準に見て、前記第1および第2の背後反
射電極の少なくとも一方の電位を前記第1および第2の
フィラメントの電位よりも負の電位にするバイアス電圧
を出力するものである請求項3または4記載のイオン
源。 - 【請求項7】 前記バイアス電源から出力するバイアス
電圧を、前記アーク電源から出力するアーク電圧よりも
10V以上大きく設定している請求項1、2、3または
4記載のイオン源。 - 【請求項8】 請求項1または2記載のイオン源におい
て、前記バイアス電圧によって、前記プラズマ生成容器
の電位を基準に見て、前記対向反射電極および背後反射
電極の少なくとも一方の電位を前記フィラメントの電位
よりも負の電位にしてイオンビームを引き出すことを特
徴とするイオン源の運転方法。 - 【請求項9】 請求項3または4記載のイオン源におい
て、前記バイアス電圧によって、前記プラズマ生成容器
の電位を基準に見て、前記第1および第2の背後反射電
極の少なくとも一方の電位を前記第1および第2のフィ
ラメントの電位よりも負の電位にしてイオンビームを引
き出すことを特徴とするイオン源の運転方法。 - 【請求項10】 請求項1、2、3または4記載のイオ
ン源において、前記バイアス電圧を前記アーク電圧より
も10V以上大きくしてイオンビームを引き出すことを
特徴とするイオン源の運転方法。 - 【請求項11】 請求項1、2、3または4記載のイオ
ン源において、前記フィラメント電源から前記フィラメ
ントに流すフィラメント電流の大きさを、当該イオン源
の運転の初期は相対的に大きくし、その後は相対的に小
さくすることを特徴とするイオン源の運転方法。 - 【請求項12】 請求項1、2、3または4記載のイオ
ン源において、前記バイアス電源から出力するバイアス
電圧の大きさを制御して、当該イオン源から引き出すイ
オンビームの量を制御することを特徴とするイオン源の
運転方法。
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