JP4401977B2 - イオン源に用いるフィラメントの作製方法及びイオン源 - Google Patents

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Description

本発明は、イオンビームを生成するイオン源であって、LSI(大規模集積回路)や平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ,FPD)等に設けられる半導体の作製に用いるイオン注入装置等に用いるイオン源及びそのイオン源に用いるフィラメントの作製方法に関する。
半導体を用いたLSIや低温ポリシリコン(LTPS)を用いたTFT(Thin Film Transistor)をアクティブマトリクス素子として用いる平面型表示装置(FPD)等の作製工程では、不純物、例えば、ホウ素、燐、砒素等をイオン化し、電場を用いて加速してイオンビームを生成し、このイオンビームを基板に形成されたシリコン結晶中に照射することで、イオンを注入するイオン注入処理が行われる。このイオン注入処理には、イオンビームを生成するイオン源を備えたイオン注入装置が用いられる。例えば、イオン注入装置を用いたFPDの作製の各工程では、TFT特性を左右するチャネル工程、LDD工程、ソース・ドレイン工程があり、特に、チャンネル工程は、ゲート閾値電圧を制御するために精度の高いイオン注入処理が求められている。
このようなイオン注入装置は、チャンバ内に導入された原料ガスを、加速した電子を用いて電離させ、高密度プラズマ状態を作り出すイオン源と、イオン源で生成されたイオンをイオンビームとして引き出す引き出し機構と、引き出されたイオンビームから特定のイオンのみを分離する質量分離機構と、処理対象の基板にイオンビームを照射するための基板操作機構とを有し、特定のイオンのみを必要量分精度よく基板上のシリコンに注入することができる。
イオン源は、例えば不純物となる原料ガスを導入したチャンバ内に抵抗導体線が1〜数回螺旋状に巻かれて折り返されたフィラメントが設けられている。このフィラメントに、上記チャンバと電気絶縁した状態で、1〜10Vの電圧を印加して加熱することによりチャンバ内に熱電子を供給するとともに、チャンバとフィラメント間に電圧を印加してグロー放電、さらにはアーク放電を生じさせてプラズマを生成する。この生成されたプラズマからイオンを取り出してイオンビームを生成する。このようにアーク放電を維持しつつイオンビームを生成するイオン源として、高効率にイオンビームを生成するコンパクトな装置構成であるバーナス型イオン源が広く知られている。この他、イオン源としてフリーマン型イオン源やバケット型イオン源が知られている。
一方、FPDの生産能力を高めるために、イオン注入装置には従来に比べてイオン注入に要する時間を短縮することが望まれている。イオン注入に要する時間は、基板を基板操作機構により搬送する搬送時間とイオンを注入する処理時間の合計であり、特に上記ソース・ドレイン工程では多量のイオンを注入する必要があるため、上記処理時間が長くなる。このため、処理時間を短縮するために、生成するイオンビームの電流密度を高くして、一定時間に注入するイオンの量を増大させる必要があり、イオンビームを生成するプラズマを高密度化することが必要である。しかし、プラズマをチャンバ内で高密度化しようとすると、プラズマの浸蝕作用によりチャンバ内の壁面やフィラメントは浸蝕を受けて、装置の運用時間(寿命)が短くなるという問題があった。
この問題を解決するために下記特許文献1では、フィラメントの近傍にタングステンやタンタル等の高融点材からなる補助体を配置し、この補助体の電位をフィラメントの電位より低くするイオン源を開示している。これにより、プラズマに曝されるフィラメントの長寿命化を図ることができるとされている。
また、下記特許文献2では、フィラメントの前方に、タングステン等の熱電子の放出率の高い金属材料で構成した傍熱型カソードを設けたイオン源を開示している。
特開平7−272657号公報 特開2001−167707号公報
しかし、これらの装置は、従来のバーナス型イオン源の基本装置構成を大きく変更するものであり、また、新たに電源を用意する必要のある装置構成となる。このため、装置構成が煩雑になり、コンパクトな装置を構成することができない。
そこで、本発明は、高密度のプラズマを生成するイオン源において、プラズマ生成のための運用時間を長くすることのできる、コンパクトな装置構成のイオン源及びこのイオン源に用いる寿命の長いフィラメントの作製方法を提供することを目的とする。
上記課題の達成のためにフィラメントの寿命時間を長くするには、チャンバの容積を大きくしてプラズマ密度を低下させる方法がある。しかし、この方法ではプラズマを閉じ込めるための均一な磁場の設定や各部の見直しが必要となる。
一方、フィラメントの寿命時間を長くするに、熱電子を放出するフィラメントを設ける部分と、生成したプラズマを閉じ込める部分とを空間として隔てて別容器にすることもできるが、イオン源自体の装置構成を大きく変更することとなる。
このような背景の下に、本発明は、既存の装置構成を変更することなく、イオン源の運用時間を長くするために成されたものである。
すなわち、本発明は、ガスを供給して電圧を印加することによりイオンビームを生成するイオン源に用いる熱電子を放出するフィラメントの作製方法であって、フィラメント線材の両端部分を被覆した状態で、フィラメント線材の熱電子放出部分を金属溶射により径を太くした後、金属溶射されていないフィラメント線材の両端部分を、フィラメント保持部としてイオン源のプラズマ生成容器に装着することを特徴とするイオン源に用いるフィラメントの作製方法を提供する。
また、本発明は、ガスを供給して電圧を印加することによりイオンビームを生成するイオン源において、ガスが供給されてプラズマを生成する内部空間を備えたチャンバと、前記チャンバ内で熱電子を放出するフィラメントであって、前記チャンバの内部空間にフィラメントが突出するように前記チャンバに対して前記フィラメントを保持するスリーブを貫通したフィラメント両端部分の径に対して、前記チャンバ内に露出する熱電子放出部分の径が、金属溶射により太く形成されたフィラメントを備えた熱電子供給源と、前記チャンバと前記熱電子供給源との間に電圧を印加することにより前記内部空間に生成されるプラズマからイオンビームを取り出す、前記チャンバに設けられたイオンビーム取出口と、を有することを特徴とするイオン源を提供する。
本発明は、熱電子の放出に用いるフィラメントの熱電子放出部分の径を太くすることで、従来のイオン源をそのまま用いることができ、設計変更なしに容易に装置の運用寿命を延ばすことができる。
また、本発明は、フィラメントの熱電子放出部分の径を金属溶射により太くするので、金属溶射の溶射時間によって太さを自在に調整することができる。さらに、一度に複数のフィラメント線材に金属溶射を施すことができるので、大量生産も可能である。また、リペア用フィラメントとして好適に用いることができる。
以下、本発明のイオン源及びこのイオン源に用いるフィラメントの作製方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。図1(a)は、本発明のイオン源の一実施形態の構成を示す断面図である。
イオン源10は、原料ガスを供給し放電することによりプラズマを生成し、このプラズマからイオンを取り出すことによりイオビームを生成するバーナス型イオン源である。イオン源10は、図1に示すように、チャンバ12、フィラメント14、反射電極板(リペラープレート)16、背面電極板18、スリーブ20、原料ガス供給口22、イオンビーム取出口24、および所定の電圧を印加する引出電源26、アーク電源28、フィラメント電源30、原料ガス調整バルブ32を主に有して構成される。チャンバ12は、図示されないイオン注入装置の減圧容器内に収納され、チャンバ12内で10−3〜10−5(Pa)に減圧された状態となっている。
チャンバ12は、耐高温性を有する導電性材料、例えばタングステン、モリブデン、タンタル、炭素等によって構成され、直方体形状の内部空間34を有する放電箱である。
チャンバ12の内部空間34の内壁面には、一方の端面から内部空間34に突出するフィラメント14が設けられ、他方の端面には反射電極板16が設けられ、フィラメント14が反射電極板16に対向するように配置されている。フィラメント14は、タングステン等の抵抗導体線が螺旋状に1〜数回巻かれて折り返された発熱素子体である。このようにフィラメント14を螺旋状に巻くのは、フィラメント14を流れる電流による磁場を利用してプラズマを効率よく閉じ込めるためである。
チャンバ12によって形成される内部空間34は、例えば40mm×40mm×120mmのサイズである。
フィラメント14と内壁面の端面との間には背面電極板18が設けられ、カソードプレートとなっている。フィラメント14には、フィラメント14から熱電子を放出するように、フィラメント14の両端間に所定の電圧、例えば数V〜10数Vを印加するフィラメント電源30が設けられ、2000℃程度に加熱されたフィラメント14から内部空間34に熱電子を放出する。また、フィラメント14の負極側の端と導電性を有するチャンバ12との間にアーク電圧を印加するように、アーク電源28が設けられている。アーク電圧は、チャンバ12の電位がフィラメント14の電位に対して高くなるようにアーク電圧が数10〜100V印加される。なお、フィラメント14が貫通するスリーブ20と導電性を有するチャンバ12との間は、インシュレータ21によって電気絶縁されている。
反射電極板16は、フィラメント14に対向するように内部空間34に設けられ、反射電極板16に向かって移動する熱電子を反射する反射板である。反射電極板16とチャンバ12との間は、インシュレータ21によって電気絶縁されている。反射電極板16は、フィラメント電源30の負極と接続されている。なお、フィラメント14に対して反射電極板16の方向と反対方向にある背面電極板18は、フィラメント14の陰極と接続されており、背面電極板18と反射電極板16は同電位になるように構成される。
一方、チャンバ12の外側には、背面電極板18、フィラメント14および反射電極板16の配置方向(図1中のX方向)に沿って磁場が形成されるようにN極、S極の電磁石36、38が設けられている。
また、内部空間34の内壁面には、原料ガス供給口22が設けられ、供給管42を介して図示されないガス供給源と接続され、原料ガス調整バルブ32を介して原料ガスの供給が調整されるようになっている。
このようなチャンバ12の内部空間34では、フィラメント14から放出された電子とチャンバ12とフィラメント14との間に印加されたアーク電圧によりアーク放電を開始し、プラズマが励起される。このプラズマ中の電子は、電磁石36、38の磁場の作用によってらせん運動を起こしつつ反射電極板16に向けて移動しながら反射電極板16に到達し、反射電極板16で反射し、背面電極板18に向かう。さらに、背面電極板18において電子は反射される。このように内部空間34で移動する電子は、更に原料ガス分子に衝突し、ガス分子は正にイオン化しプラズマが生成され、生成されたプラズマが内部空間34全体で保持される。この状態で、チャンバ12の側壁に設けられたスリット状のイオンビーム取出口24から、引出電極40に印加された引出電圧によってイオンが引き出され、イオンビームが生成される。ここで、引出電極40は、チャンバ12との間で所定の電位が生ずるように引出電源26が設けられ、引出電極40がチャンバ12から見て電位が低く設定される。
この様なイオン源10において、フィラメント14は、図1(b)に示すように、チャンバ12の内部空間34にフィラメントが突出するようにチャンバ12に対して前記フィラメントを保持するスリーブ20を貫通したフィラメント両端部分14bの径に対して、チャンバ12内の内部空間34に露出する熱電子放出部分14aの径が、金属溶射により太く形成されている。
フィラメント14の熱電子放出部分14aは、負の電位をもち、上述したように反射電極板16と背面電極18との間で電子が移動して正のイオンを持つプラズマが生成されるため、負の電位を有するフィラメントの熱電子放出部分14aは正のイオンの衝突により、浸蝕を受け易い。このため、チャンバ12内の内部空間34に露出する熱電子放出部分14aのみを金属溶射により、それ以外の部分に対して径を太くしてフィラメントの寿命時間を長くしている。
フィラメント14のスリーブ20及び背面電極18にて被覆されるフィラメント両端部分14bの径は例えば2mmであり、これに対して、熱電子放出部分14aの径は2.5〜3.5mmにすることが好ましい。この際、熱電子放出部分14aの径を2mmより太くすると、プラズマ生成に十分な熱電子を放出するために大きな電力が必要となり、場合によっては電源を強化する必要がある。
これより、フィラメント14の熱電子放出部分14aの径が太くなった分、寿命が延びる。
一方、フィラメント両端部分14b以外の部分の径を太くしないのは、この部分の径を太くしても、フィラメント14の寿命時間に影響を与えるものではなく、さらに、背面電極板16に設けられたフィラメント14を通す貫通孔及びフィラメント14と隙間なく密着するように径が定められたスリーブ20に通すことができなくなるためである。
このように、フィラメント14の熱電子放出部分14aの径のみを太くすることにより、従来のバーナス型イオン源の装置構成を変更することなく、フィラメントの寿命時間を延ばすことができる。
このようなフィラメント14の作製は、まず、フィラメント線材15、例えばタングステンのフィラメント線材を用意する。このフィラメント線材15の径は、例えば2mmである。
次に、図2に示すように、このフィラメント線材15のスリーブ20及び背面電極18で覆われる部分を含むフィラメント線材の両端部分をクランプ部46として、カバー部材48で被覆し、金属溶射真空容器50内に設置する。
この状態で、フィラメント線材の熱電子放出部分を均一に金属溶射し、一様に径を太くする。
金属溶射は、例えばプラズマ金属溶射等により、フィラメント線材と同じ金属材料の溶射を行う。プラズマ金属溶射の他に、アーク溶射、ガスフレーム溶射、超高速フレーム溶射等公知の方法を用いることができる。
フィラメント線材15の両端部分をクランプ部46としてカバー部材48で被覆し、この部分の径を太くしないのは、上述したように、スリーブ20はフィラメント線材と隙間なく密着するように径が設けられているためである。したがって、フィラメント14には、径の太くした熱電子放出部分14aと両端部分14bとの境界において段差を成している。したがって、金属溶射の際、フィラメント線材の両端部分はカバー部材との間に隙間が生じないようにすることが必要である。
また、スリーブ20の先端位置が、熱電子放出部分14aと両端部分14bとの境界に一致しない場合、径の細いフィラメント14の部分が内部空間34に露出して、この部分が集中的に損耗し、寿命を延ばすことはできない。
こうして熱電子放出部分14aの径が太くなったフィラメント14は、所定の装置を用いて、背面電極18及びスリーブ20の孔を貫通し、チャンバ12内の所定の位置に、金属溶射されていないフィラメント線材の両端部分はフィラメント保持部として装着される。
本発明のように、熱電子の放出に用いるフィラメントの熱電子放出部分の径のみを金属溶射により太くすることで、従来のイオン源をそのまま用いることができ、設計変更なしに容易に装置の運用寿命を延ばすことができる。特に、フィラメントの形状を螺旋状とする場合、径の太い、例えば2mm程度の直線状のフィラメントを曲げ加工して螺旋状にすることは困難である。
また、フィラメントの熱電子放出部分の径を金属溶射の溶射時間によって調整することができる。さらに、一度に複数のフィラメント線材に金属溶射を施すことができるので、大量生産も可能である。また、リペア用フィラメントとして好適に用いることができる。
以上、本発明のイオン源及びこのイオン源に用いるフィラメントの作製方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
(a)は、本発明のイオン源の一実施形態の装置構成を示す断面図であり、(b)は、(a)に示すイオン源に用いるフィラメントの形状を示す図である。 イオン源に用いるフィラメントの作製方法を説明する図である。
符号の説明
10 イオン源
12 チャンバ
14 フィラメント
15 フィラメント線材
16 反射電極板
18 背面電極板
20 スリーブ
21 インシュレータ
22 原料ガス供給口
24 イオンビーム取出口
26 引出電源
28 アーク電源
30 フィラメント電源
32 原料ガス調整バルブ
34 内部空間
36,38 電磁石
40 引出電極
42 供給管
46 クランプ部
48 カバー部材

Claims (2)

  1. ガスを供給して電圧を印加することによりイオンビームを生成するイオン源に用いる熱電子を放出するフィラメントの作製方法であって、
    フィラメント線材の両端部分を被覆した状態で、フィラメント線材の熱電子放出部分を金属溶射により径を太くした後、金属溶射されていないフィラメント線材の両端部分を、フィラメント保持部としてイオン源のプラズマ生成容器に装着することを特徴とするイオン源に用いるフィラメントの作製方法。
  2. ガスを供給して電圧を印加することによりイオンビームを生成するイオン源において、
    ガスが供給されてプラズマを生成する内部空間を備えたチャンバと、
    前記チャンバ内で熱電子を放出するフィラメントであって、前記チャンバの内部空間にフィラメントが突出するように前記チャンバに対して前記フィラメントを保持するスリーブを貫通したフィラメント両端部分の径に対して、前記チャンバ内に露出する熱電子放出部分の径が、金属溶射により太く形成されたフィラメントを備えた熱電子供給源と、
    前記チャンバと前記熱電子供給源との間に電圧を印加することにより前記内部空間に生成されるプラズマからイオンビームを取り出す、前記チャンバに設けられたイオンビーム取出口と、を有することを特徴とするイオン源。
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