JP3796823B2 - エンジンの気筒識別装置 - Google Patents

エンジンの気筒識別装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、エンジンの気筒識別装置に関し、さらに詳しくは複数の気筒識別を可能にしたエンジンの気筒識別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジンの点火時期や燃料噴射等を制御するためにエンジンの回転と同期した信号が用いられる。例えば、クランク角基準信号(SGT)と気筒識別信号(SGC)とにより、特定気筒における点火時期あるいは燃料噴射のタイミングを識別し、その後全気筒に対する気筒別制御を行うようにしている。
【0003】
上記のような気筒識別方法の場合、クランク角基準信号(SGT)と気筒識別信号(SGC)との二つの系統の信号を発生させる必要がある。そこで、エンジンの回転に同期して各気筒に対応する所定の第1および第2の基準位置を示す信号を発生し、特定気筒のみ第2の基準位置をオフセットさせた回転信号発生手段を用い、オフセットされた第2の基準位置を検出することにより特定気筒の識別を行うものが既に提案されている(例えば、特開平2−99744号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公知例の場合、1系統の信号発生により気筒識別ができるものの、一つの特定気筒識別しか行えないところから、例えば4気筒エンジンの場合、720°のクランク角間隔での気筒識別となる。従って、エンジンのクランキング開始時においてオフセットされた第2基準位置の停止位置によってはクランク角で最大720°待たなければ気筒識別が行えないこととなり、エンジンの始動性が悪くなるという不具合が存する。
【0005】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、既存の二つのカム角センサから発生されるカム回転位置検出信号と気筒識別信号とを共有化することにより、エンジンの始動性を損なわないように早期に気筒識別が行えるようにすることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明の第1の基本構成では、上記課題を解決するための手段として、クランク角基準信号を発生させるクランク角センサと、2本のカム軸にそれぞれ設けられたカム回転位置検出信号を発生させるカム角センサとを備えた複数の気筒を有するエンジンにおいて、前記カム角センサのうちの一方からのカム回転位置検出信号の発生特性を、特定気筒のクランク角基準信号発生区間と該特定気筒以外の他気筒のクランク角基準信号発生区間とで相違するように設定する一方、他方のカム角センサからのカム回転位置検出信号の発生特性を、記特定気筒を除く第2の特定気筒のクランク角基準信号発生区間と該第2の特定気筒以外の他気筒のクランク角基準信号発生区間とで相違するように設定し、前記カム回転位置検出信号の発生特性と前記クランク角基準信号との対比に基づいて複数の特定気筒を識別するようにして、既存の二つのカム角センサから発生されるカム位置検出信号と気筒識別信号とを共有化し、エンジンの始動性を損なわないように早期に気筒識別が行えるようにしている。
【0007】
そして、前記両カム軸に、エンジンの運転状態に対応してその回転位相を変化させる可変動弁機構をそれぞれ付設し、該可変動弁機構を、前記カム角センサからのカム回転位置検出信号に基づいてフィードバック制御されるものとするとともに、前記可変動弁機構による回転位相変化の許容範囲内において前記カム回転位置検出信号の発生特性を相違させることで、可変動弁機構によりカム軸の回転位相が変化せしめられても、複数の気筒識別が確実に行える。
【0008】
また、前記カム回転位置検出信号の発生特性の相違を発生回数の相違とした場合、カム回転位置検出信号の発生回数を検出するだけで複数の気筒識別が容易に行える点で好ましい。
【0009】
また、前記カム回転位置検出信号の発生特性の相違を発生期間の相違とした場合、カム回転位置検出信号の発生期間を検出するだけで複数の気筒識別が容易に行える点で好ましい。
【0010】
また、前記可変動弁機構を、電磁式アクチュエータにより動作するものとした場合、低回転、特にエンジンの始動時からバルブタイミング制御が行えることとなり、エンジンの始動性がより向上する点で好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの好適な実施の形態について詳述する。
【0012】
第1の実施の形態
図1には、本願発明の第1の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置のハード構成が示されている。
【0013】
図1において、符号1はクランク軸、2は吸気弁開閉用のカム軸、3は排気弁開閉用のカム軸であり、前記クランク軸1のプーリ4と、前記カム軸2,3のプーリ5,6とは、タイミングベルト7を介して同期回転可能に連結されている。
【0014】
また、前記クランク軸1には、クランク角基準信号SGTを発生させるクランク角センサ8が付設され、前記カム軸2,3には、カム(図示省略)の回転位置を検知するためのカム回転位置検出信号VTi,VTeを発生させるカム角センサ9,10がそれぞれ付設されている。
【0015】
さらに、前記両カム軸2,3には、エンジンの運転状態に対応してその回転位相を変化させる可変動弁機構11,11がそれぞれ付設されている。この可変動弁機構11は、前記カム角センサ9あるいは10からのカム回転位置検出信号VTi,VTeに基づいてフィードバック制御されるものとされている(後に詳述)。
【0016】
そして、前記クランク角センサ8およびカム角センサ9,10からの信号(即ち、クランク角基準信号SGTおよびカム回転位置検出信号VTi,VTe)は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUと略称する)12に入力され、該ECU12においては各種演算処理がなされ、その演算処理結果に基づいて、後に詳述するように、気筒識別制御および可変動弁機構11,11によるバルブタイミング制御がなされる。
【0017】
次に、前記可変動弁機構11の構成について、図2を参照して詳述する。なお、図1に示すハード構成における部材と同一の部材には同符号を付している。
【0018】
この可変動弁機構11は、カム軸2(あるいは3)とプーリー5(あるいは6)との間における回転角位相を変更することでバルブタイミングを変更するものとされている。
【0019】
前記カム軸2(あるいは3)の先端には、後述する遊星歯車機構13の構成部材の一つであるインターナルギヤ14と所定軸長をもつ中空軸部材15とが同軸上に配置されるととともに、これら各部材14,15は結合ボルト16によって前記カム軸2(あるいは3)に共回り可能に結合されている。
【0020】
前記プーリー5(あるいは6)は、軸受17を介してシリンダヘッド18側に回転自在に支承されるとともに、その径方向の内側には前述の遊星歯車機構13が配置されている。この遊星歯車機構13は、前記インターナルギヤ14と後述する筒状部材19の一端側に形成したサンギヤ20と、前記プーリー5(あるいは6)と一体形成されたキャリア21に支持された複数のピニオンギヤ22,22・・とで構成されている。
【0021】
また、前記遊星歯車機構13の軸方向の一方側には、渦巻きバネ23が、その一端を上記プーリー5(あるいは6)側に、他端を後述する筒状部材19側に、それぞれ固定せしめた状態で配置されている。この渦巻きバネ23は、後述する電磁ブレーキ24との関係において、その巻方向が設定されるが、この点については後述する。
【0022】
前記筒状部材19は、フランジ部材25と一体的に結合され、軸受26を介して前記中空軸部材15側に回転自在に支承されている。さらに、このフランジ部材25は、その一側面25aの外周部を後述する電磁ブレーキ24に対する接触面とする一方、その径方向中段位置には所定径のピッチ円上に位置するようにして複数のツース27A,27A・・が設けられている。
【0023】
一方、前記中空軸部材15の先端寄り部位には、ツース式電磁クラッチ28が配置されている。この電磁クラッチ28は、スライダー29と軸受支持部材30とを備えている。前記スライダー29は、前記フランジ部材25に対向する面の外周部に該フランジ部材25側のツース27A,27A・・と対向するツース27B,27B,・・を設けた略円板状形態を有し、前記中空軸部材15に対してその軸方向へ移動可能にスプライン結合されている。また、前記軸受支持部材30は、前記スライダー29に近接対向するように前記中空軸部材15の端部に非回動に取り付けられるとともに、前記スライダー29との間には、該スライダー29を常時前記フランジ部材25側へ押圧付勢するウェーブリング31を配置している。
【0024】
従って、この電磁クラッチ28は、前記ウェーブリング31により前記スライダー29がフランジ部材25側に押圧付勢され、該スライダー29側の各ツース27B,27B・・が前記フランジ部材25側の各ツース27A,27A・・に噛合することで締結状態となり、この締結状態においては前記スライダー29とフランジ部材25とはその相対回転が規制され、前記カム軸2(あるいは3)とプーリー5(あるいは6)との間における回転角位相が保持されることになる。
【0025】
一方、前記スライダー29の裏面側には、ケーシング32側に固定された状態で第1のソレノイドコイル33が近接配置されている。このソレノイドコイル33は、磁気吸引力により前記スライダー29を前記フランジ部材25側から引き離し、前記各ツース27A,27A・・と同27B,27B・・との噛合状態を解除し、前記電磁クラッチ28による回転角位相の保持状態を解除するものであり、その通電制御は、前記したようにECU12からの制御信号により行われる。
【0026】
さらに、前記ソレノイドコイル33の径方向外側位置には、第2のソレノイドコイル34と該ソレノイドコイル34の磁力を受けてその軸方向へ移動可能とされた接触子35とからなる電磁ブレーキ24が配置されている。この電磁ブレーキ24は、前記ソレノイドコイル34に通電して前記接触子35を励磁することで該接触子35の一端側を前記フランジ部材25の側面25aに押圧して該フランジ部材25に所定の制動トルクを付与する。この電磁ブレーキ24のソレノイドコイル34への通電制御は、前述したECU12からの制御信号により行われる。
【0027】
つまり、前記電磁クラッチ28および電磁ブレーキ24は、可変動弁機構11を動作させるための電磁式アクチュエータとして作用するのである。
【0028】
なお、この実施形態のものにおいては、前記電磁ブレーキ24と前記渦巻きバネ23との作動上の相互関係は次の通りである。即ち、この実施形態のものにおいては、前記電磁ブレーキ24により前記フランジ部材25に制動トルクをかけることで、前記遊星歯車機構13を介して前記カム軸2(あるいは3)の回転角位相が前記プーリー5(あるいは6)の回転角位相に対して遅らせられる(即ち、回転角位相の遅角動作)とともに、このカム軸2(あるいは3)とプーリー5(あるいは6)との相対回転に伴って前記渦巻きバネ23が巻上げられてバネ力を蓄える。これに対して、前記渦巻きバネ23の復元方向のバネ力により前記フランジ部材25に加速トルクがかけられることで、前記遊星歯車機構13を介して前記カム軸2(あるいは3)の回転角位相が前記プーリー5(あるいは6)の回転角位相に対して早められる(即ち、回転角位相の進角動作)ようになっている。
【0029】
そして、この可変動弁機構11は、カム角センサ9,10からのカム回転位置検出信号VTi,VTeに基づいて実回転角位相を目標回転角位相に収束せしめるようにその制御量(デューティ値)をフィードバック制御するものとされている。
【0030】
ところで、前記ECU12は、上記したバルブタイミング制御とは別に、気筒識別のための諸機能を有している。
【0031】
即ち、前記ECU12は、一方のカム角センサ9からのカム回転位置検出信号VTiの発生特性(本実施の形態においては、発生回数)を、特定気筒(例えば、#1気筒)のクランク角基準信号SGTの発生区間(例えば、SGT“L”区間)と該特定気筒(例えば、#1気筒)以外の他気筒(例えば、#2〜#4気筒)のクランク角基準信号SGTの発生区間(例えば、SGT“L”区間)とで相違するように設定する一方、他方のカム角センサ10からのカム回転位置検出信号VTeの発生特性(本実施の形態においては、発生回数)を、上記特定気筒(例えば、#1気筒)を除く第2の特定気筒(例えば、#4気筒)のクランク角基準信号SGTの発生区間(例えば、SGT“L”区間)と該第2の特定気筒(例えば、#4気筒)以外の他気筒(例えば、#1〜#3気筒)のクランク角基準信号SGTの発生区間(例えば、SGT“L”区間)とで相違するように設定し、前記カム回転位置検出信号VTi,VTeの発生特性(即ち、発生回数)と前記クランク角基準信号SGTとの対比に基づいて複数の特定気筒(例えば、#3および#2気筒)を識別する機能を備えている。
【0032】
例えば、図3のタイムチャートに示すように、吸気弁開閉用のカム角センサ9からのカム回転位置検出信号VTiにおいては、特定気筒(即ち、#1気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を2とし、他の気筒(即ち、#2〜#4気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を1とする一方、排気弁開閉用のカム角センサ10からのカム回転位置検出信号VTeにおいては、特定気筒(即ち、#4気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を2とし、他の気筒(即ち、#1〜#3気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を1としている。ここでは、カム回転位置検出信号VTi,VTeにおける信号発生回数は、立ち上がりあるいは立ち下がりの回数により数えている。なお、カム回転位置検出信号VTi,VTeにおいて、バルブタイミングを決定するための実カム回転位置検出信号の発生間隔T0は等間隔とされている。
【0033】
ところで、本実施の形態の場合、前述したように可変動弁機構11によりカム軸2,3の回転位相が運転状態に対応して変化せしめられることとなっているため、前記特定気筒(即ち、#1および#4気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTi,VTeの発生位置は、カム軸2,3の回転位相変化があったとしても、それぞれのクランク角基準信号SGTの“L”区間から逸脱しないように設定される。
【0034】
ついで、図4に示すフローチャートを参照して、本実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置による気筒識別の手順について説明する。
【0035】
ステップS1において吸気弁開閉用および排気弁開閉用のカム角センサ9,10からのカム回転位置検出信号VTi,VTeおよびクランク角センサ8からのクランク角基準信号SGTが読み込まれ、ステップS2においてクランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTiの発生回数=2であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS3に進み、特定気筒(即ち、#1気筒)であることが識別され、#1気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。ついで、ステップS4においてクランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTeの発生回数=2であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS5に進み、特定気筒(即ち、#4気筒)であることが識別され、#4気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。なお、ステップS2あるいはステップS4において否定判定された場合には、以下の処理を行うことなくステップS1へリターンする。
【0036】
この場合、特定気筒は、#1および#4気筒であるので、どちらかが識別されると、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒あるいは#4気筒→#2気筒→#1気筒→#3気筒の順で信号が得られるので、他気筒が#3気筒→#4気筒→#2気筒あるいは#2気筒→#1気筒→#3気筒の順に識別できることとなる。つまり、360°のクランク角間隔での気筒識別が可能となり、エンジンの始動性を損なわないように早期に気筒識別が行えるのである。
【0037】
また、本実施の形態においては、両カム軸2,3の回転位相を、電磁式アクチュエータである電磁クラッチ28および電磁ブレーキ24により動作する可変動弁機構11により変化させるようにしているが、前記可変動弁機構11による回転位相変化の許容範囲内(即ち、クランク角基準信号SGTの“L”区間を逸脱しない範囲内)において前記カム回転位置検出信号VTi,VTeの発生回数を相違させるようにしているので、可変動弁機構11によりカム軸2,3の回転位相が変化せしめられても、2個の気筒識別が確実に行える。
【0038】
また、前記可変動弁機構11を、電磁式アクチュエータ(即ち、電磁クラッチ28および電磁ブレーキ24)により動作するものとしているので、油圧式の場合のように油圧の立ち上がりを待つ必要がなく、低回転、特にエンジンの始動時からバルブタイミング制御が行えることとなり、エンジンの始動性がより向上する。
【0039】
第2の実施の形態
図5には、本願発明の第2の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における信号発生タイミングを示すタイムチャートが示されている。
【0040】
この場合、例えば吸気弁開閉用のカム角センサ9からのカム回転位置検出信号VTiにおいては、二つの特定気筒(即ち、#1および#3気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数をそれぞれ3および2とし、他の気筒(即ち、#2および#4気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を1とする一方、排気弁開閉用のカム角センサ10からのカム回転位置検出信号VTeにおいては、二つの特定気筒(即ち、#4および#2気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数をそれぞれ3および2とし、他の気筒(即ち、#1および#3気筒)のクランク角基準信号SGTの“L”区間における信号発生回数を1としている。その他の構成は第1の実施の形態におけると同様なので説明を省略する。
【0041】
ついで、図6に示すフローチャートを参照して、本実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置による気筒識別の手順について説明する。
【0042】
ステップS1において吸気弁開閉用および排気弁開閉用のカム角センサ9,10からのカム回転位置検出信号VTi,VTeおよびクランク角センサ8からのクランク角基準信号SGTが読み込まれ、ステップS2においてクランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTiの発生回数=3であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS3に進み、特定気筒(即ち、#1気筒)であることが識別され、#1気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。
【0043】
ステップS2において否定判定された場合には、ステップS4に進み、クランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTiの発生回数=2であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS5に進み、特定気筒(即ち、#3気筒)であることが識別され、#3気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。ステップS4において否定判定された場合には、以下の処理を行うことなくステップS1へリターンする。
【0044】
ついで、ステップS6においてクランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTeの発生回数=3であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS7に進み、特定気筒(即ち、#4気筒)であることが識別され、#4気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。
【0045】
ステップS6において否定判定された場合には、ステップS8に進み、クランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTeの発生回数=2であるか否かの判定が行われる。ここで、肯定判定された場合には、ステップS9に進み、特定気筒(即ち、#2気筒)であることが識別され、#2気筒に対応するレジスタにフラグがセットされる。ステップS8において否定判定された場合には、以下の処理を行うことなくステップS1へリターンする。
【0046】
この場合、特定気筒は、#1〜#4気筒(即ち、全気筒)であるので、どれかが識別されると、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒、#3気筒→#4気筒→#2気筒→#1気筒、#4気筒→#2気筒→#1気筒→#3気筒あるいは#2気筒→#1気筒→#3気筒→#4気筒の順で信号が得られるので、他気筒が#3気筒→#4気筒→#2気筒、#4気筒→#2気筒→#1気筒、#2気筒→#1気筒→#3気筒あるいは#1気筒→#3気筒→#4気筒の順に識別できることとなる。つまり、180°のクランク角間隔での気筒識別が可能となり、エンジンの始動性を損なわないようにより早期に気筒識別が行えるのである。
【0047】
第3の実施の形態
図7には、本願発明の第3の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における信号発生タイミングを示すタイムチャートが示されている。
【0048】
この場合、クランク角基準信号SGTの“L”区間におけるカム回転位置検出信号VTi,VTeにおける信号発生回数は、立ち上がりおよび立ち下がりの回数により数えている。その他の構成および作用効果は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0049】
上記実施の形態においては、カム回転位置検出信号の発生特性の相違を発生回数の相違としているが、発生期間(例えば、信号パルス幅)の相違とする場合もある。
【0050】
【発明の効果】
本願発明によれば、既存の二つのカム角センサから発生されるカム回転位置検出信号と気筒識別信号とを共有化して、複数の気筒識別を行うようにしているので、早期の(例えば、360°あるいは180°のクランク角間隔での)気筒識別が行えることとなり、エンジンの始動性が大幅に向上するという優れた効果がある。
【0051】
そして、可変動弁機構による回転位相変化の許容範囲内において前記カム回転位置検出信号の発生特性を相違させることで、可変動弁機構によりカム軸の回転位相が変化せしめられても、複数の気筒識別が確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の第1の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置のハード構成図である。
【図2】 本願発明の第1の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における可変動弁機構の構造を示す断面図である。
【図3】 本願発明の第1の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における信号発生タイミングを示すタイムチャートである。
【図4】 本願発明の第1の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置による気筒識別の手順を示すフローチャートである。
【図5】 本願発明の第2の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における信号発生タイミングを示すタイムチャートである。
【図6】 本願発明の第2の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置による気筒識別の手順を示すフローチャートである。
【図7】 本願発明の第3の実施の形態にかかるエンジンの気筒識別装置における信号発生タイミングを示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1はクランク軸、2,3はカム軸、8はクランク角センサ、9,10はカム角センサ、11は可変動弁機構、24は電磁ブレーキ、28は電磁クラッチ。

Claims (4)

  1. クランク角基準信号を発生させるクランク角センサと、2本のカム軸にそれぞれ設けられたカム回転位置検出信号を発生させるカム角センサとを備えた複数の気筒を有するエンジンにおいて、前記カム角センサのうちの一方からのカム回転位置検出信号の発生特性を、特定気筒のクランク角基準信号発生区間と該特定気筒以外の他気筒のクランク角基準信号発生区間とで相違するように設定する一方、他方のカム角センサからのカム回転位置検出信号の発生特性を、記特定気筒を除く第2の特定気筒のクランク角基準信号発生区間と該第2の特定気筒以外の他気筒のクランク角基準信号発生区間とで相違するように設定し、カム回転位置検出信号の発生特性と前記クランク角基準信号との対比に基づいて複数の特定気筒を識別するようにして、
    前記両カム軸には、エンジンの運転状態に対応してその回転位相を変化させる可変動弁機構がそれぞれ付設され、該可変動弁機構は、前記カム角センサからのカム回転位置検出信号に基づいてフィードバック制御されるものとされており、前記可変動弁機構による回転位相変化の許容範囲内において前記カム回転位置検出信号の発生特性を相違させるものとしたことを特徴とするエンジンの気筒識別装置
  2. 前記カム回転位置検出信号の発生特性の相違は発生回数の相違とされていることを特徴とする前記請求項1記載のエンジンの気筒識別装置。
  3. 前記カム回転位置検出信号の発生特性の相違は発生期間の相違とされていることを特徴とする前記請求項1記載のエンジンの気筒識別装置。
  4. 前記可変動弁機構は、電磁式アクチュエータにより動作するものとされていることを特徴とする前記請求項2ないし請求項のいずれか一項記載のエンジンの気筒識別装置。
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