JP3795981B2 - 水分散系離型剤組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分散系離型剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、粘着テープ、粘着ラベル等は、使用する時まで、粘着層を保護する目的で、保護シートが貼り付けられ、使用する時に剥離される。従って、保護シートは粘着層から容易に剥離できることが必要であり、保護シートと粘着層との間の粘着力が強すぎるのは好ましくない。かかる観点より、保護シートと粘着層との剥離を容易にする目的で、通常、保護シートの粘着層との接触面には、離型剤が塗工されている。
【0003】
上記離型剤の役割として、粘着層の保護と粘着剤からの剥離を容易にすること以外に、剥離する時に、離型剤層が凝集破壊して粘着層に移行し、粘着層の粘着力を低下させない性能、所謂、非移行性が要求される。又、この非移行性は、時間が経過しても、温度が高い状態が続いても、実質的に変化しないことが要求される。
【0004】
離型剤としては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いられており、これらは、通常、有機溶剤を溶媒とする溶液の形態で使用される。
【0005】
しかし、近年、安全環境上の問題から、無溶剤化が推進されており、水を溶媒とする水分散系離型剤や加熱溶融して用いるホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤等の各種離型剤が検討されている。
【0006】
上記ホットメルト型離型剤やモノマー型離型剤は、基材上に薄く均一に塗工することが困難であるため、水分散系離型剤が強く要求されており、種々の提案が成されている。例えば、特開平3−86778号公報には、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールもしくはその変性物とアルキルイソシアネートを反応させることによって得られる長鎖アルキルグラフトポリマーを後乳化することによって得られる水分散体を用いることを特徴とする水系離型剤が開示されている。又、特開平6−73351号公報には、ポリビニルアルコールやポリエチレンイミンなどに長鎖アルキルイソシアネートを反応させ、これらの変性物を、界面活性剤と共に、水に溶解もしくは分散させて得られる離型剤が開示されている。
【0007】
しかし、上記提案にあるような従来の水分散系離型剤は、希釈時や塗工時に泡の発生(起泡)が激しく、容器から泡が横溢したり、泡により塗工面があれて均一な塗工面を得られ難い等の問題点がある。
【0008】
上記起泡による問題点に対応するため、水分散系離型剤に消泡剤を添加することが一般的に行われている。上記消泡剤としては、植物油、鉱物油、脂肪酸、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルコール等が通常使用される。
【0009】
しかし、一般的に、消泡剤は少量の添加では消泡効果が乏しく、消泡効果が得られるほどの量を添加すると、水分散系離型剤の離型性能に悪影響を及ぼしたり、特にアルコールの場合は水分散系離型剤の貯蔵安定性が低下する等、消泡剤添加に伴う問題点があり、起泡が少なく、しかも優れた離型性能を有する水分散系離型剤は実用化されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決するため、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する水分散系離型剤組成物を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による水分散系離型剤組成物は、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤が水に分散され、且つ、疎水性シリカ微粒子が添加されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による水分散系離型剤組成物を構成するアルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤とは、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基(以下、単に「長鎖アルキル基」と記す)を側鎖に有する高分子化合物であって、特に限定されるものではないが、例えば、(1)長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体、(2)カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体、(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体、(4)活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。尚、ここで言う「(共)重合体」とは「重合体」もしくは「共重合体」を意味する。
【0013】
上記長鎖アルキル基の炭素数が6未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に長鎖アルキル基の炭素数が30を超えると、ビニルモノマーの(共)重合体やポリアミン化合物と長鎖アルキル基を含有する化合物との反応性が低下する。
【0014】
以下、これらの有機離型剤(1)〜(4)を、順次、説明する。
【0015】
(1)長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体
長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体とは、炭素数6〜30の長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメタアクリレート、ステアリルアクリレート等の長鎖アルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体;ビニルオクチレート、ビニルステアレート等の長鎖アルキルビニルエステルの(共)重合体;ビニルステアリルエーテル等の長鎖アルキルビニルエーテルの(共)重合体;ステアリルアクリルアマイド等の長鎖アルキル(メタ)アクリルアマイドの(共)重合体;マレイン酸モノステアレート等のマレイン酸の長鎖アルキル誘導体の(共)重合体;アリルステアレート等の長鎖アルキルアリルエステルの(共)重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。尚、ここで言う「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」もしくは「メタクリレート」を意味する。
【0016】
これらの(共)重合体は、長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーを50モル%以上含有していることが好ましく、50モル%未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0017】
上記長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーと共重合されるビニルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、エチレン、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル等の通常のビニルモノマーが挙げられ、長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーも含め、得られる共重合体を構成するビニルモノマーが2種類以上であっても、本発明を何ら制限するものではない。
【0018】
上記(1)の有機離型剤の合成方法は、通常のビニルモノマーの(共)重合の場合と同様で良く、得られる(共)重合体は、主鎖である高分子の側鎖に長鎖アルキル基が多数結合しており、そのまま有機離型剤として使用される。
【0019】
(2)カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体
カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等からなる群より選択される少なくとも1種のカルボキシル基を含有するビニルモノマー50モル%以上と、エチレン、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ブチルアクリレート等からなる群より選択される少なくとも1種の通常のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、ブチルアクリレート−アクリル酸−マレイン酸共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0020】
カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体とは、カルボキシル基と反応する官能基を有する長鎖アルキル化合物を変性剤として、上記共重合体のカルボキシル基と反応させて、側鎖に長鎖アルキル基を多数結合させた有機離型剤を意味する。
【0021】
上記長鎖アルキル化合物による共重合体の変性量は、特に限定されるものではないが、共重合体に含有されるカルボキシル基1当量に対し、カルボキシル基と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0022】
共重合体に含有されるカルボキシル基と反応する長鎖アルキル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルアミン、オクチルメチルアミン、ステアリルアミン等のアミン類;オクチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;オクチルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル等のエポキシ類;ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート等のイソシアネート類;オクチルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマー、オクタデシルケテンダイマー、ドコサニルケテンダイマー等のケテン類;オクチルオキサゾリン、ステアリルオキサゾリン等のアルキルオキサゾリン類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0023】
(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸ビニル重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとアルキルアクリレート等のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0024】
上記水酸基を含有するビニルモノマーは50モル%以上が(共)重合体に含有されていることが好ましく、50モル%未満では、長鎖アルキル化合物を側鎖に反応させた場合、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0025】
水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体とは、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、ケテン基、アルデヒド基及びエポキシ基からなる群より選択される、水酸基と反応し得る少なくとも1種の官能基を有し、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル化合物を、上記水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の水酸基と反応させて得られる、側鎖に長鎖アルキル基を有する有機離型剤を意味する。
【0026】
上記長鎖アルキル化合物としては、特に限定されるものではないが、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ドコサニルイソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物;オクタン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸等のカルボキシル基を有する化合物;オクタノイルクロライド、ドデカノイルクロライド、オクタデカノイルクロライド、オクタデシロイルクロライド、ドコサノイルクロライド等ノ酸ハライド基を有する化合物;オクチルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマー、オクタデシルケテンダイマー、ドコサニルケテンダイマー等のケテン基を有する化合物;ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、ドコサニルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物;オクチルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ドコサニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0027】
上記長鎖アルキル化合物による(共)重合体の変性量は、特に限定されるものではないが、(共)重合体に含有される水酸基1当量に対し、水酸基と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0028】
上述した(1)〜(3)の有機離型剤の合成に用いられる(共)重合体の重合度は、特に限定されるものではないが、300〜5000であることが好ましく、800〜2500であることがより好ましい。(共)重合体の重合度が300未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に(共)重合体の重合度が5000を超えると、得られる有機離型剤の水への分散が困難となり、水分散系離型剤組成物の塗工性が低下する。
【0029】
(4)活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体
活性水素を含有するポリアミン化合物とは、第1級アミノ基(−NH2 )及び/又は第2級アミノ基(−NH−)を含有するポリアミン化合物を意味し、活性水素とは、アミノ基の窒素原子に直接結合している水素原子、又は、該アミノ基によって活性が誘起されるα位の水素原子を意味する。
【0030】
従って、活性水素を含有するアミノ基は、ポリアミン化合物の主鎖、側鎖いずれに含まれていても良い。又、上記ポリアミン化合物には、アミノ基以外に由来する活性水素(例えば、−OH、−SH、−COOH等に由来する活性水素等)が含まれていても良い
【0031】
上記活性水素を含有するポリアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミンなどのアルキル多価アミンとエピクロルヒドリンとの縮合物等のポリアルキレンポリアミン;アリルアミンの単独重合体;エチレン、プロピレンなどのオレフィン、ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸もしくはその無水物、ビニルホスホン酸、ビニルピロリドン、アリルアルコールなどのビニルモノマーとアリルアミンとの共重合体;これらのポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを開環付加させた化合物;さらに、これらのポリアミン化合物をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにマイケル付加させた化合物等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0032】
上記ポリアミン化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜1000000であることが好ましく、1000〜500000であることがより好ましい。ポリアミン化合物の数平均分子量が500未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に1000000を超えると、得られる有機離型剤の水への分散が困難となり、水分散系離型剤組成物の塗工性が低下する。
【0033】
活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体とは、活性水素と反応する官能基を有する長鎖アルキル化合物を変性剤として、上記ポリアミン化合物の活性水素と反応させて、側鎖に長鎖アルキル基を多数結合させた有機離型剤を意味する。
【0034】
上記長鎖アルキル化合物によるポリアミン化合物の変性量は、特に限定されるものではないが、ポリアミン化合物に含有される活性水素1当量に対し、活性水素と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0035】
上述した(1)〜(4)の有機離型剤のなかでも、本発明においては(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体がより好ましく用いられる。
【0036】
本発明による水分散系離型剤組成物を構成する疎水性シリカ微粒子とは、シリカ(SiO2 )の表面にシラノール基(Si−OH)が残存した親水性シリカ微粒子を、トリフルオロアルキルアルコール等でトリフルオロアルキル化したり、アルキルアルコキシシラン等でアルキル化して、表面を疎水化したシリカ微粒子である。
【0037】
親水性シリカ微粒子は、コロイダルシリカ(pHを調節したコロイド状態の無水珪酸超微粒子)からや、四塩化珪素を酸素もしくは水素の炎中で加水分解して得られる。
【0038】
本発明による水分散系離型剤組成物においては、主成分である前述の有機離型剤に対し、上記疎水性シリカ微粒子を添加することにより、優れた起泡抑制効果や消泡効果を得ることが出来る。
【0039】
上記疎水性シリカ微粒子添加による効果は、起泡が生じても、疎水性シリカ微粒子が泡の液壁に容易に付着し、付着することにより泡の液壁を容易に破る、即ち、容易に破泡させることにより得られるものと思考される。
【0040】
上記疎水性シリカ微粒子の1次粒子径は、特に限定されるものではないが、1nm〜10μmであることが好ましい。疎水性シリカ微粒子の1次粒子径が1nm未満であると、十分な起泡抑制効果や消泡効果を得られず、逆に10μmを超えると、水分散系離型剤組成物中で沈殿したり、水分散系離型剤組成物を塗工する時に塗工ムラを生じ易くなる。
【0041】
又、水分散系離型剤組成物中における上記疎水性シリカ微粒子の添加量は、特に限定されるものではないが、0.0001〜1重量%であることが好ましい。疎水性シリカ微粒子の添加量が0.0001重量%未満であると、十分な起泡抑制効果や消泡効果を得られず、逆に1重量%を超えると、水分散系離型剤組成物を塗工して得られる離型剤層の離型性能が低下する。
【0042】
本発明による水分散系離型剤組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機離型剤を予め加熱溶融し、この加熱溶融物と水とを、例えば加圧ニーダー、コロイドミル、高速攪拌シャフト等の従来公知の混合機を用いて、高剪断力をかけて均一に乳化分散させた後、疎水性シリカ微粒子を添加し、均一に攪拌混合して所望の水分散系離型剤組成物を得る方法(高圧乳化法)や、有機離型剤を予め有機溶剤に溶解し、この溶液と水とを、例えば高速乳化機を用いて、高剪断力をかけて均一に乳化分散させた後、有機溶剤の除去前もしくは除去後に、疎水性シリカ微粒子を添加し、均一に攪拌混合して所望の水分散系離型剤組成物を得る方法(溶剤溶解法)等が挙げられ、いずれの方法も好適に採用されるが、なかでも有機溶剤の除去が不要で工程の簡略な高圧乳化法がより好適に採用される。
【0043】
上記水分散系離型剤組成物の製造工程において、疎水性シリカ微粒子は、予め添加混合しておいても良いが、より優れた起泡抑制効果や消泡効果を得るためには、水分散系離型剤組成物を使用する直前に添加混合することが好ましい。水分散系離型剤組成物に疎水性シリカ微粒子を予め添加混合しておくと、乳化分散された有機離型剤の微粒子中に疎水性シリカ微粒子が取り込まれて、起泡抑制効果や消泡効果が低下することがある。
【0044】
又、上記疎水性シリカ微粒子は、水分散系離型剤組成物中に直接添加混合しても良いが、より良好な分散性を得るためには、疎水性シリカ微粒子を予めケロシン、スピンドル油、流動パラフィン等の鉱物油やアニオン系、ノニオン系、シリコーン系等の界面活性剤等に分散させた状態で、水分散系離型剤組成物中に添加混合することが好ましい。
【0045】
上記高圧乳化法もしくは溶剤溶解法のいずれの方法においても、有機離型剤と水との混合割合は、特に限定されるものではないが、有機離型剤5〜50重量%、水95〜50重量%であることが好ましい。有機離型剤の混合割合が5重量%未満であると、乳化分散時の剪断効果が減殺されて製造効率が低下し、逆に有機離型剤の混合割合が50重量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて均一な乳化分散を行うことが困難となる。
【0046】
又、上記で得られた本発明による水分散系離型剤組成物は、貯蔵安定性等が損なわれない範囲で必要に応じて、水で希釈されていても良い。
【0047】
本発明による水分散系離型剤組成物には、必須成分である有機離型剤及び疎水性シリカ微粒子以外に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、脂肪酸もしくはその金属塩、酸変性ポリオレフィン(共)重合体、低分子界面活性剤、高分子界面活性剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料、ワックス類、導電化剤、架橋剤、消泡剤、溶剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が含有されていても良い。
【0048】
本発明による水分散系離型剤組成物の使用方法は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロファン等のフィルム類、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の紙類、含浸紙、プラスチックコート紙等の目止め処理を施した紙類、不織布、布等の布類等から成る基材上に、ロールコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、リップコーター等の従来公知の塗工装置を用いて、水分散系離型剤組成物を塗工し、乾燥することにより所望の塗工品を得れば良い。尚、上記基材には、乾燥後に形成される離型剤組成物層との密着性を高めるために、予め、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されていても良い。
【0049】
基材に対する水分散系離型剤組成物の塗工量は、特に限定されるものではないが、乾燥後の重量で0.01〜5g/m2 であることが好ましい。上記塗工量が0.01g/m2 未満であると、十分な離型性能を得られず、逆に5g/m2 を超えると、離型剤層の非移行性が低下する。
【0050】
本発明による水分散系離型剤組成物は、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤を主成分とし、これに疎水性シリカ微粒子が添加されているので、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
【0053】
1.有機離型剤の合成
以下に示す方法で3種類の有機離型剤を合成した。
▲1▼有機離型剤(R−1)
攪拌機、冷却器、滴下漏斗及び温度計を備えた反応容器中に、脱水したキシレン50gを投入した後、酢酸ビニル(共)重合体として、鹸化された酢酸ビニル重合体〔ポリビニルアルコール(重合度1100、鹸化度98モル%)〕10gを加えて均一に分散させた。次いで、還流温度で、長鎖アルキル化合物として、オクタデシルイソシアネート67g(水酸基に対する官能基量1当量)、及び、反応触媒として、ジラウリン酸ジブチル錫0.01gを加え、上記ポリビニルアルコールと反応させた。反応が進行し、ポリビニルアルコールの粉末が完全に消失した後、さらに2時間反応を継続した。反応終了後、40℃まで冷却し、反応溶液を1000gのメタノール中に注いで、白色沈殿物を得た。得られた白色沈殿物をメタノール、次いで、n−ヘキサンで洗浄した後、乾燥して、有機離型剤(R−1)を得た。
【0054】
▲2▼有機離型剤(R−2)
酢酸ビニル(共)重合体として、ポリビニルアルコールの代わりに、鹸化されたエチレン−酢酸ビニル共重合体〔エチレン−ビニルアルコール共重合体(重合度1500、鹸化度69モル%、エチレン共重合比30モル%)〕10gを使用し、オクタデシルイソシアネートの使用量を57g(水酸基に対する官能基量1当量)としたこと以外は▲1▼と同様にして、有機離型剤(R−2)を得た。尚、ここで言う鹸化度は、ビニルアルコール共重合比を意味する。
【0055】
▲3▼有機離型剤(R−3)
攪拌機、冷却器、滴下漏斗及び温度計を備えた反応容器中に、脱水したピリジン300gを投入した後、酢酸ビニル(共)重合体として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(重合度1500、鹸化度69モル%、エチレン共重合比30モル%)10gを加えて均一に分散させた。次いで、80℃で、長鎖アルキル化合物として、オクタデシロイルクロライド80g(水酸基に対する官能基量1当量)を加え、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体と反応させた。反応が進行し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の粉末が完全に消失した後、さらに2時間反応を継続した。反応終了後、40℃まで冷却し、反応溶液を1500gのメタノール中に注いで、白色沈殿物を得た。得られた白色沈殿物をメタノール、次いで、n−ヘキサンで洗浄した後、乾燥して、有機離型剤(R−3)を得た。
【0056】
2.疎水性シリカ微粒子溶液の調製
以下に示す3種類の疎水性シリカ微粒子溶液を調製した。
(イ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−1)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.5μm)2重量%とトリデカン98重量%の混合溶液
(ロ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−2)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.01μm)2重量%とトリデカン98重量%の混合溶液
(ハ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−3)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.5μm)2重量%と界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、商品名「エマルゲン903」、HLB7.8、花王社製)98重量%の混合溶液
【0057】
3.消泡剤の準備
以下に示す3種類の消泡剤を準備した。
(x) 消泡剤(DF−1)
界面活性剤「エマルゲン903」
(y) 消泡剤(DF−2)
トリデカン
(z) 消泡剤(DF−3)
ジメチルポリシロキサン
(商品名「KS604」、信越化学社製)
【0058】
(実施例1)
【0059】
(1)水分散系離型剤組成物の作製
有機離型剤の合成▲1▼で得られた有機離型剤(R−1)135g、高分子界面活性剤(カルボン酸型ビニル重合体のナトリウム塩、重量平均分子量4000)49g、ワックス(モノステアリル尿素、融点100℃)5g及びトリデカン15gから成る離型剤組成物を95℃で溶融し、攪拌速度500rpmで10分間攪拌・混合した。次に、高圧式乳化機中で、得られた溶融混合物を攪拌速度1000rpmで攪拌しながら、100℃に加熱・加圧された界面活性剤水溶液〔ソルビタンモノステアレート(重量平均分子量430)1g+水49g〕50gをゆっくり滴下し、離型剤組成物中に水を分散させ、W/O型の水分散系離型剤組成物を得た。その後、攪拌速度を5000rpmに上げ、水745gを順次滴下して転相乳化を行い、O/W型の水分散系離型剤組成物の原液(A)を得た。次いで、得られた原液(A)を有機離型剤含有量が2重量%となるように、水(基材への濡れ性向上のため、ジオクチルスルホ琥珀酸0.04重量%含有)で希釈した後、疎水性シリカ微粒子溶液(S−1)1gを添加し、均一に攪拌混合して、塗工可能な状態にある水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を作製した。
【0060】
(2)離型シートの製造
上記で得られた水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を、ポリエチレン加工紙(坪量75g/m2 のクルパッククラフト紙にポリエチレンを厚み20μmで押出しラミネートし、ポリエチレン面を44dyn/cmの条件でコロナ処理したもの)のポリエチレン面上に、#6のメイヤーバーコーターを用いて、塗布量10g/m2 (wet)、0.2g/m2 (dry)となるように塗工した。次いで、水分散系離型剤組成物の希釈液(B)が塗工されたポリエチレン加工紙を、炉長1m、温度120℃の乾燥炉中をライン速度2m/分で通し、水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を乾燥・造膜させて、離型シートを製造した。
【0061】
(3)評価
上記で得られた水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能〔(a)平均粒子径、(b)貯蔵安定性、(c)消泡性、(d)展開力、(e)残存接着力〕を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0062】
(a) 平均粒子径:水分散系離型剤組成物の原液(A)を所定濃度になるまで水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(型式「9220FRA」、MICROTRAC社製)を用いて、体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0063】
(b) 貯蔵安定性:水分散系離型剤組成物の原液(A)を固形分が1重量%となるようにイオン交換水で希釈し、23℃で72時間放置した後、沈殿、凝集、相分離等の有無を目視で観察し、下記判定基準で貯蔵安定性を評価した。
【判定基準】
○‥‥沈殿、凝集、相分離のいずれも認められず、貯蔵安定性良好
△‥‥沈殿、凝集、相分離が認められ、貯蔵安定性不十分
×‥‥乳化分散直後に凝集が発生し、水分散系離型剤組成物を得られなかった
【0064】
(c) 消泡性:水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を、試験管(直径10mm、高さ10cm)に、底面からの液面の高さが5cmとなるように入れた後、試験管の口をパラフィルムで覆い、手で20秒間(往復50振り以上)激しく振って、30秒後及び5分後の液面からの泡の高さ(mm)を測定した。泡の高さが0mmに近づく時間が速いほど消泡性に優れていること示す。
【0065】
(d) 展開力:JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠し、離型シートの離型剤組成物塗工面に、幅25mmに切断された粘着テープ(商品名「クラフトテープ#504」、積水化学工業社製)を圧着ローラーで貼り付けて試験片を作製し、23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した。その後、同雰囲気下で、高速剥離試験機を用い、10m/分の剥離速度で、180度引き剥がし試験を行い、展開力(g/25mm)を求めた。展開力が低いほど離型剤組成物の離型性が優れていることを示す。
【0066】
(e) 残存接着力:(d)展開力の場合と同様の方法で作製した試験片を23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した後、粘着テープを離型シートから剥離した。次いで、JIS Z−0237に準拠し、剥離された粘着テープをステンレス板に圧着ローラーで貼り付け、23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した後、同雰囲気下で、300mm/分の剥離速度で、180度引き剥がし試験を行い、剥離強度P(g/25mm)を測定した。
【0067】
別途、離型シートに貼り付けなかった粘着テープを用い、同様にしてステンレス板に貼り付け、同様の条件で剥離強度を測定したところ、2010(g/25mm)であった。 両方の剥離強度の比〔(P/2010)×100〕を算出し、残存接着力(%)を求めた。残存接着力が100%に近いほど粘着剤層に対する離型剤組成物の移行量が少なく、非移行性に優れていることを示す。
【0068】
(実施例2〜9)
【0069】
水分散系離型剤組成物の配合組成を表1に示す配合組成としたこと以外は実施例1と同様にして、8種類の水分散系離型剤組成物を作製した。次いで、得られた8種類の水分散系離型剤組成物を用い、実施例1と同様にして、8種類の離型シートを製造した。
【0070】
上記で得られた8種類の水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能を実施例1と同様の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0071】
(比較例1〜9)
水分散系離型剤組成物の配合組成を表2に示す配合組成としたこと以外は実施例1と同様にして、9種類の水分散系離型剤組成物を作製した。次いで、得られた9種類の水分散系離型剤組成物を用い、実施例1と同様にして、9種類の離型シートを製造した。
【0072】
上記で得られた9種類の水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能を実施例1と同様の方法で評価した。その結果は表2に示すとおりであった。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1に示されるように、疎水性シリカ微粒子を添加した本発明による実施例1〜9の水分散系離型剤組成物は、良好な消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する。
【0076】
これに対し、表2に示されるように、疎水性シリカ微粒子も消泡剤も添加していない比較例1、2及び比較例6〜9の水分散系離型剤組成物は、消泡性が著しく劣ると共に、離型性能もやや劣る。又、疎水性シリカ微粒子は添加していないが消泡剤を添加した比較例3〜5の水分散系離型剤組成物も、消泡性や非移行性が劣る。
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による水分散系離型剤組成物は、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮するので、主として粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル等の粘着加工品を対象とする離型シート用等として好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分散系離型剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、粘着テープ、粘着ラベル等は、使用する時まで、粘着層を保護する目的で、保護シートが貼り付けられ、使用する時に剥離される。従って、保護シートは粘着層から容易に剥離できることが必要であり、保護シートと粘着層との間の粘着力が強すぎるのは好ましくない。かかる観点より、保護シートと粘着層との剥離を容易にする目的で、通常、保護シートの粘着層との接触面には、離型剤が塗工されている。
【0003】
上記離型剤の役割として、粘着層の保護と粘着剤からの剥離を容易にすること以外に、剥離する時に、離型剤層が凝集破壊して粘着層に移行し、粘着層の粘着力を低下させない性能、所謂、非移行性が要求される。又、この非移行性は、時間が経過しても、温度が高い状態が続いても、実質的に変化しないことが要求される。
【0004】
離型剤としては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いられており、これらは、通常、有機溶剤を溶媒とする溶液の形態で使用される。
【0005】
しかし、近年、安全環境上の問題から、無溶剤化が推進されており、水を溶媒とする水分散系離型剤や加熱溶融して用いるホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤等の各種離型剤が検討されている。
【0006】
上記ホットメルト型離型剤やモノマー型離型剤は、基材上に薄く均一に塗工することが困難であるため、水分散系離型剤が強く要求されており、種々の提案が成されている。例えば、特開平3−86778号公報には、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールもしくはその変性物とアルキルイソシアネートを反応させることによって得られる長鎖アルキルグラフトポリマーを後乳化することによって得られる水分散体を用いることを特徴とする水系離型剤が開示されている。又、特開平6−73351号公報には、ポリビニルアルコールやポリエチレンイミンなどに長鎖アルキルイソシアネートを反応させ、これらの変性物を、界面活性剤と共に、水に溶解もしくは分散させて得られる離型剤が開示されている。
【0007】
しかし、上記提案にあるような従来の水分散系離型剤は、希釈時や塗工時に泡の発生(起泡)が激しく、容器から泡が横溢したり、泡により塗工面があれて均一な塗工面を得られ難い等の問題点がある。
【0008】
上記起泡による問題点に対応するため、水分散系離型剤に消泡剤を添加することが一般的に行われている。上記消泡剤としては、植物油、鉱物油、脂肪酸、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルコール等が通常使用される。
【0009】
しかし、一般的に、消泡剤は少量の添加では消泡効果が乏しく、消泡効果が得られるほどの量を添加すると、水分散系離型剤の離型性能に悪影響を及ぼしたり、特にアルコールの場合は水分散系離型剤の貯蔵安定性が低下する等、消泡剤添加に伴う問題点があり、起泡が少なく、しかも優れた離型性能を有する水分散系離型剤は実用化されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決するため、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する水分散系離型剤組成物を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による水分散系離型剤組成物は、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤が水に分散され、且つ、疎水性シリカ微粒子が添加されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による水分散系離型剤組成物を構成するアルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤とは、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基(以下、単に「長鎖アルキル基」と記す)を側鎖に有する高分子化合物であって、特に限定されるものではないが、例えば、(1)長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体、(2)カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体、(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体、(4)活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。尚、ここで言う「(共)重合体」とは「重合体」もしくは「共重合体」を意味する。
【0013】
上記長鎖アルキル基の炭素数が6未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に長鎖アルキル基の炭素数が30を超えると、ビニルモノマーの(共)重合体やポリアミン化合物と長鎖アルキル基を含有する化合物との反応性が低下する。
【0014】
以下、これらの有機離型剤(1)〜(4)を、順次、説明する。
【0015】
(1)長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体
長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体とは、炭素数6〜30の長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーの(共)重合体を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメタアクリレート、ステアリルアクリレート等の長鎖アルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体;ビニルオクチレート、ビニルステアレート等の長鎖アルキルビニルエステルの(共)重合体;ビニルステアリルエーテル等の長鎖アルキルビニルエーテルの(共)重合体;ステアリルアクリルアマイド等の長鎖アルキル(メタ)アクリルアマイドの(共)重合体;マレイン酸モノステアレート等のマレイン酸の長鎖アルキル誘導体の(共)重合体;アリルステアレート等の長鎖アルキルアリルエステルの(共)重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。尚、ここで言う「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」もしくは「メタクリレート」を意味する。
【0016】
これらの(共)重合体は、長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーを50モル%以上含有していることが好ましく、50モル%未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0017】
上記長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーと共重合されるビニルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、エチレン、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル等の通常のビニルモノマーが挙げられ、長鎖アルキル基を含有するビニルモノマーも含め、得られる共重合体を構成するビニルモノマーが2種類以上であっても、本発明を何ら制限するものではない。
【0018】
上記(1)の有機離型剤の合成方法は、通常のビニルモノマーの(共)重合の場合と同様で良く、得られる(共)重合体は、主鎖である高分子の側鎖に長鎖アルキル基が多数結合しており、そのまま有機離型剤として使用される。
【0019】
(2)カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体
カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等からなる群より選択される少なくとも1種のカルボキシル基を含有するビニルモノマー50モル%以上と、エチレン、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ブチルアクリレート等からなる群より選択される少なくとも1種の通常のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、ブチルアクリレート−アクリル酸−マレイン酸共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0020】
カルボキシル基を含有するビニルモノマーの共重合体の長鎖アルキル変性体とは、カルボキシル基と反応する官能基を有する長鎖アルキル化合物を変性剤として、上記共重合体のカルボキシル基と反応させて、側鎖に長鎖アルキル基を多数結合させた有機離型剤を意味する。
【0021】
上記長鎖アルキル化合物による共重合体の変性量は、特に限定されるものではないが、共重合体に含有されるカルボキシル基1当量に対し、カルボキシル基と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0022】
共重合体に含有されるカルボキシル基と反応する長鎖アルキル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルアミン、オクチルメチルアミン、ステアリルアミン等のアミン類;オクチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;オクチルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル等のエポキシ類;ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート等のイソシアネート類;オクチルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマー、オクタデシルケテンダイマー、ドコサニルケテンダイマー等のケテン類;オクチルオキサゾリン、ステアリルオキサゾリン等のアルキルオキサゾリン類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0023】
(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸ビニル重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとアルキルアクリレート等のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0024】
上記水酸基を含有するビニルモノマーは50モル%以上が(共)重合体に含有されていることが好ましく、50モル%未満では、長鎖アルキル化合物を側鎖に反応させた場合、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0025】
水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体とは、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、ケテン基、アルデヒド基及びエポキシ基からなる群より選択される、水酸基と反応し得る少なくとも1種の官能基を有し、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル化合物を、上記水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の水酸基と反応させて得られる、側鎖に長鎖アルキル基を有する有機離型剤を意味する。
【0026】
上記長鎖アルキル化合物としては、特に限定されるものではないが、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ドコサニルイソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物;オクタン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸等のカルボキシル基を有する化合物;オクタノイルクロライド、ドデカノイルクロライド、オクタデカノイルクロライド、オクタデシロイルクロライド、ドコサノイルクロライド等ノ酸ハライド基を有する化合物;オクチルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマー、オクタデシルケテンダイマー、ドコサニルケテンダイマー等のケテン基を有する化合物;ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、ドコサニルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物;オクチルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ドコサニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0027】
上記長鎖アルキル化合物による(共)重合体の変性量は、特に限定されるものではないが、(共)重合体に含有される水酸基1当量に対し、水酸基と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0028】
上述した(1)〜(3)の有機離型剤の合成に用いられる(共)重合体の重合度は、特に限定されるものではないが、300〜5000であることが好ましく、800〜2500であることがより好ましい。(共)重合体の重合度が300未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に(共)重合体の重合度が5000を超えると、得られる有機離型剤の水への分散が困難となり、水分散系離型剤組成物の塗工性が低下する。
【0029】
(4)活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体
活性水素を含有するポリアミン化合物とは、第1級アミノ基(−NH2 )及び/又は第2級アミノ基(−NH−)を含有するポリアミン化合物を意味し、活性水素とは、アミノ基の窒素原子に直接結合している水素原子、又は、該アミノ基によって活性が誘起されるα位の水素原子を意味する。
【0030】
従って、活性水素を含有するアミノ基は、ポリアミン化合物の主鎖、側鎖いずれに含まれていても良い。又、上記ポリアミン化合物には、アミノ基以外に由来する活性水素(例えば、−OH、−SH、−COOH等に由来する活性水素等)が含まれていても良い
【0031】
上記活性水素を含有するポリアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミンなどのアルキル多価アミンとエピクロルヒドリンとの縮合物等のポリアルキレンポリアミン;アリルアミンの単独重合体;エチレン、プロピレンなどのオレフィン、ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸もしくはその無水物、ビニルホスホン酸、ビニルピロリドン、アリルアルコールなどのビニルモノマーとアリルアミンとの共重合体;これらのポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを開環付加させた化合物;さらに、これらのポリアミン化合物をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにマイケル付加させた化合物等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0032】
上記ポリアミン化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜1000000であることが好ましく、1000〜500000であることがより好ましい。ポリアミン化合物の数平均分子量が500未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となり、逆に1000000を超えると、得られる有機離型剤の水への分散が困難となり、水分散系離型剤組成物の塗工性が低下する。
【0033】
活性水素を含有するポリアミン化合物の長鎖アルキル変性体とは、活性水素と反応する官能基を有する長鎖アルキル化合物を変性剤として、上記ポリアミン化合物の活性水素と反応させて、側鎖に長鎖アルキル基を多数結合させた有機離型剤を意味する。
【0034】
上記長鎖アルキル化合物によるポリアミン化合物の変性量は、特に限定されるものではないが、ポリアミン化合物に含有される活性水素1当量に対し、活性水素と反応する長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上反応させることが好ましく、0.5当量未満であると、得られる有機離型剤の離型性能が不十分となる。
【0035】
上述した(1)〜(4)の有機離型剤のなかでも、本発明においては(3)水酸基を含有するビニルモノマーの(共)重合体の長鎖アルキル変性体がより好ましく用いられる。
【0036】
本発明による水分散系離型剤組成物を構成する疎水性シリカ微粒子とは、シリカ(SiO2 )の表面にシラノール基(Si−OH)が残存した親水性シリカ微粒子を、トリフルオロアルキルアルコール等でトリフルオロアルキル化したり、アルキルアルコキシシラン等でアルキル化して、表面を疎水化したシリカ微粒子である。
【0037】
親水性シリカ微粒子は、コロイダルシリカ(pHを調節したコロイド状態の無水珪酸超微粒子)からや、四塩化珪素を酸素もしくは水素の炎中で加水分解して得られる。
【0038】
本発明による水分散系離型剤組成物においては、主成分である前述の有機離型剤に対し、上記疎水性シリカ微粒子を添加することにより、優れた起泡抑制効果や消泡効果を得ることが出来る。
【0039】
上記疎水性シリカ微粒子添加による効果は、起泡が生じても、疎水性シリカ微粒子が泡の液壁に容易に付着し、付着することにより泡の液壁を容易に破る、即ち、容易に破泡させることにより得られるものと思考される。
【0040】
上記疎水性シリカ微粒子の1次粒子径は、特に限定されるものではないが、1nm〜10μmであることが好ましい。疎水性シリカ微粒子の1次粒子径が1nm未満であると、十分な起泡抑制効果や消泡効果を得られず、逆に10μmを超えると、水分散系離型剤組成物中で沈殿したり、水分散系離型剤組成物を塗工する時に塗工ムラを生じ易くなる。
【0041】
又、水分散系離型剤組成物中における上記疎水性シリカ微粒子の添加量は、特に限定されるものではないが、0.0001〜1重量%であることが好ましい。疎水性シリカ微粒子の添加量が0.0001重量%未満であると、十分な起泡抑制効果や消泡効果を得られず、逆に1重量%を超えると、水分散系離型剤組成物を塗工して得られる離型剤層の離型性能が低下する。
【0042】
本発明による水分散系離型剤組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機離型剤を予め加熱溶融し、この加熱溶融物と水とを、例えば加圧ニーダー、コロイドミル、高速攪拌シャフト等の従来公知の混合機を用いて、高剪断力をかけて均一に乳化分散させた後、疎水性シリカ微粒子を添加し、均一に攪拌混合して所望の水分散系離型剤組成物を得る方法(高圧乳化法)や、有機離型剤を予め有機溶剤に溶解し、この溶液と水とを、例えば高速乳化機を用いて、高剪断力をかけて均一に乳化分散させた後、有機溶剤の除去前もしくは除去後に、疎水性シリカ微粒子を添加し、均一に攪拌混合して所望の水分散系離型剤組成物を得る方法(溶剤溶解法)等が挙げられ、いずれの方法も好適に採用されるが、なかでも有機溶剤の除去が不要で工程の簡略な高圧乳化法がより好適に採用される。
【0043】
上記水分散系離型剤組成物の製造工程において、疎水性シリカ微粒子は、予め添加混合しておいても良いが、より優れた起泡抑制効果や消泡効果を得るためには、水分散系離型剤組成物を使用する直前に添加混合することが好ましい。水分散系離型剤組成物に疎水性シリカ微粒子を予め添加混合しておくと、乳化分散された有機離型剤の微粒子中に疎水性シリカ微粒子が取り込まれて、起泡抑制効果や消泡効果が低下することがある。
【0044】
又、上記疎水性シリカ微粒子は、水分散系離型剤組成物中に直接添加混合しても良いが、より良好な分散性を得るためには、疎水性シリカ微粒子を予めケロシン、スピンドル油、流動パラフィン等の鉱物油やアニオン系、ノニオン系、シリコーン系等の界面活性剤等に分散させた状態で、水分散系離型剤組成物中に添加混合することが好ましい。
【0045】
上記高圧乳化法もしくは溶剤溶解法のいずれの方法においても、有機離型剤と水との混合割合は、特に限定されるものではないが、有機離型剤5〜50重量%、水95〜50重量%であることが好ましい。有機離型剤の混合割合が5重量%未満であると、乳化分散時の剪断効果が減殺されて製造効率が低下し、逆に有機離型剤の混合割合が50重量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて均一な乳化分散を行うことが困難となる。
【0046】
又、上記で得られた本発明による水分散系離型剤組成物は、貯蔵安定性等が損なわれない範囲で必要に応じて、水で希釈されていても良い。
【0047】
本発明による水分散系離型剤組成物には、必須成分である有機離型剤及び疎水性シリカ微粒子以外に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、脂肪酸もしくはその金属塩、酸変性ポリオレフィン(共)重合体、低分子界面活性剤、高分子界面活性剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料、ワックス類、導電化剤、架橋剤、消泡剤、溶剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が含有されていても良い。
【0048】
本発明による水分散系離型剤組成物の使用方法は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロファン等のフィルム類、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の紙類、含浸紙、プラスチックコート紙等の目止め処理を施した紙類、不織布、布等の布類等から成る基材上に、ロールコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、リップコーター等の従来公知の塗工装置を用いて、水分散系離型剤組成物を塗工し、乾燥することにより所望の塗工品を得れば良い。尚、上記基材には、乾燥後に形成される離型剤組成物層との密着性を高めるために、予め、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されていても良い。
【0049】
基材に対する水分散系離型剤組成物の塗工量は、特に限定されるものではないが、乾燥後の重量で0.01〜5g/m2 であることが好ましい。上記塗工量が0.01g/m2 未満であると、十分な離型性能を得られず、逆に5g/m2 を超えると、離型剤層の非移行性が低下する。
【0050】
本発明による水分散系離型剤組成物は、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤を主成分とし、これに疎水性シリカ微粒子が添加されているので、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
【0053】
1.有機離型剤の合成
以下に示す方法で3種類の有機離型剤を合成した。
▲1▼有機離型剤(R−1)
攪拌機、冷却器、滴下漏斗及び温度計を備えた反応容器中に、脱水したキシレン50gを投入した後、酢酸ビニル(共)重合体として、鹸化された酢酸ビニル重合体〔ポリビニルアルコール(重合度1100、鹸化度98モル%)〕10gを加えて均一に分散させた。次いで、還流温度で、長鎖アルキル化合物として、オクタデシルイソシアネート67g(水酸基に対する官能基量1当量)、及び、反応触媒として、ジラウリン酸ジブチル錫0.01gを加え、上記ポリビニルアルコールと反応させた。反応が進行し、ポリビニルアルコールの粉末が完全に消失した後、さらに2時間反応を継続した。反応終了後、40℃まで冷却し、反応溶液を1000gのメタノール中に注いで、白色沈殿物を得た。得られた白色沈殿物をメタノール、次いで、n−ヘキサンで洗浄した後、乾燥して、有機離型剤(R−1)を得た。
【0054】
▲2▼有機離型剤(R−2)
酢酸ビニル(共)重合体として、ポリビニルアルコールの代わりに、鹸化されたエチレン−酢酸ビニル共重合体〔エチレン−ビニルアルコール共重合体(重合度1500、鹸化度69モル%、エチレン共重合比30モル%)〕10gを使用し、オクタデシルイソシアネートの使用量を57g(水酸基に対する官能基量1当量)としたこと以外は▲1▼と同様にして、有機離型剤(R−2)を得た。尚、ここで言う鹸化度は、ビニルアルコール共重合比を意味する。
【0055】
▲3▼有機離型剤(R−3)
攪拌機、冷却器、滴下漏斗及び温度計を備えた反応容器中に、脱水したピリジン300gを投入した後、酢酸ビニル(共)重合体として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(重合度1500、鹸化度69モル%、エチレン共重合比30モル%)10gを加えて均一に分散させた。次いで、80℃で、長鎖アルキル化合物として、オクタデシロイルクロライド80g(水酸基に対する官能基量1当量)を加え、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体と反応させた。反応が進行し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の粉末が完全に消失した後、さらに2時間反応を継続した。反応終了後、40℃まで冷却し、反応溶液を1500gのメタノール中に注いで、白色沈殿物を得た。得られた白色沈殿物をメタノール、次いで、n−ヘキサンで洗浄した後、乾燥して、有機離型剤(R−3)を得た。
【0056】
2.疎水性シリカ微粒子溶液の調製
以下に示す3種類の疎水性シリカ微粒子溶液を調製した。
(イ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−1)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.5μm)2重量%とトリデカン98重量%の混合溶液
(ロ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−2)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.01μm)2重量%とトリデカン98重量%の混合溶液
(ハ) 疎水性シリカ微粒子溶液(S−3)
疎水性シリカ微粒子(メチル化品、1次粒径0.5μm)2重量%と界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、商品名「エマルゲン903」、HLB7.8、花王社製)98重量%の混合溶液
【0057】
3.消泡剤の準備
以下に示す3種類の消泡剤を準備した。
(x) 消泡剤(DF−1)
界面活性剤「エマルゲン903」
(y) 消泡剤(DF−2)
トリデカン
(z) 消泡剤(DF−3)
ジメチルポリシロキサン
(商品名「KS604」、信越化学社製)
【0058】
(実施例1)
【0059】
(1)水分散系離型剤組成物の作製
有機離型剤の合成▲1▼で得られた有機離型剤(R−1)135g、高分子界面活性剤(カルボン酸型ビニル重合体のナトリウム塩、重量平均分子量4000)49g、ワックス(モノステアリル尿素、融点100℃)5g及びトリデカン15gから成る離型剤組成物を95℃で溶融し、攪拌速度500rpmで10分間攪拌・混合した。次に、高圧式乳化機中で、得られた溶融混合物を攪拌速度1000rpmで攪拌しながら、100℃に加熱・加圧された界面活性剤水溶液〔ソルビタンモノステアレート(重量平均分子量430)1g+水49g〕50gをゆっくり滴下し、離型剤組成物中に水を分散させ、W/O型の水分散系離型剤組成物を得た。その後、攪拌速度を5000rpmに上げ、水745gを順次滴下して転相乳化を行い、O/W型の水分散系離型剤組成物の原液(A)を得た。次いで、得られた原液(A)を有機離型剤含有量が2重量%となるように、水(基材への濡れ性向上のため、ジオクチルスルホ琥珀酸0.04重量%含有)で希釈した後、疎水性シリカ微粒子溶液(S−1)1gを添加し、均一に攪拌混合して、塗工可能な状態にある水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を作製した。
【0060】
(2)離型シートの製造
上記で得られた水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を、ポリエチレン加工紙(坪量75g/m2 のクルパッククラフト紙にポリエチレンを厚み20μmで押出しラミネートし、ポリエチレン面を44dyn/cmの条件でコロナ処理したもの)のポリエチレン面上に、#6のメイヤーバーコーターを用いて、塗布量10g/m2 (wet)、0.2g/m2 (dry)となるように塗工した。次いで、水分散系離型剤組成物の希釈液(B)が塗工されたポリエチレン加工紙を、炉長1m、温度120℃の乾燥炉中をライン速度2m/分で通し、水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を乾燥・造膜させて、離型シートを製造した。
【0061】
(3)評価
上記で得られた水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能〔(a)平均粒子径、(b)貯蔵安定性、(c)消泡性、(d)展開力、(e)残存接着力〕を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0062】
(a) 平均粒子径:水分散系離型剤組成物の原液(A)を所定濃度になるまで水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(型式「9220FRA」、MICROTRAC社製)を用いて、体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0063】
(b) 貯蔵安定性:水分散系離型剤組成物の原液(A)を固形分が1重量%となるようにイオン交換水で希釈し、23℃で72時間放置した後、沈殿、凝集、相分離等の有無を目視で観察し、下記判定基準で貯蔵安定性を評価した。
【判定基準】
○‥‥沈殿、凝集、相分離のいずれも認められず、貯蔵安定性良好
△‥‥沈殿、凝集、相分離が認められ、貯蔵安定性不十分
×‥‥乳化分散直後に凝集が発生し、水分散系離型剤組成物を得られなかった
【0064】
(c) 消泡性:水分散系離型剤組成物の希釈液(B)を、試験管(直径10mm、高さ10cm)に、底面からの液面の高さが5cmとなるように入れた後、試験管の口をパラフィルムで覆い、手で20秒間(往復50振り以上)激しく振って、30秒後及び5分後の液面からの泡の高さ(mm)を測定した。泡の高さが0mmに近づく時間が速いほど消泡性に優れていること示す。
【0065】
(d) 展開力:JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠し、離型シートの離型剤組成物塗工面に、幅25mmに切断された粘着テープ(商品名「クラフトテープ#504」、積水化学工業社製)を圧着ローラーで貼り付けて試験片を作製し、23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した。その後、同雰囲気下で、高速剥離試験機を用い、10m/分の剥離速度で、180度引き剥がし試験を行い、展開力(g/25mm)を求めた。展開力が低いほど離型剤組成物の離型性が優れていることを示す。
【0066】
(e) 残存接着力:(d)展開力の場合と同様の方法で作製した試験片を23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した後、粘着テープを離型シートから剥離した。次いで、JIS Z−0237に準拠し、剥離された粘着テープをステンレス板に圧着ローラーで貼り付け、23℃−65%RHの雰囲気下に24時間放置した後、同雰囲気下で、300mm/分の剥離速度で、180度引き剥がし試験を行い、剥離強度P(g/25mm)を測定した。
【0067】
別途、離型シートに貼り付けなかった粘着テープを用い、同様にしてステンレス板に貼り付け、同様の条件で剥離強度を測定したところ、2010(g/25mm)であった。 両方の剥離強度の比〔(P/2010)×100〕を算出し、残存接着力(%)を求めた。残存接着力が100%に近いほど粘着剤層に対する離型剤組成物の移行量が少なく、非移行性に優れていることを示す。
【0068】
(実施例2〜9)
【0069】
水分散系離型剤組成物の配合組成を表1に示す配合組成としたこと以外は実施例1と同様にして、8種類の水分散系離型剤組成物を作製した。次いで、得られた8種類の水分散系離型剤組成物を用い、実施例1と同様にして、8種類の離型シートを製造した。
【0070】
上記で得られた8種類の水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能を実施例1と同様の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0071】
(比較例1〜9)
水分散系離型剤組成物の配合組成を表2に示す配合組成としたこと以外は実施例1と同様にして、9種類の水分散系離型剤組成物を作製した。次いで、得られた9種類の水分散系離型剤組成物を用い、実施例1と同様にして、9種類の離型シートを製造した。
【0072】
上記で得られた9種類の水分散系離型剤組成物及び離型シートの性能を実施例1と同様の方法で評価した。その結果は表2に示すとおりであった。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1に示されるように、疎水性シリカ微粒子を添加した本発明による実施例1〜9の水分散系離型剤組成物は、良好な消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮する。
【0076】
これに対し、表2に示されるように、疎水性シリカ微粒子も消泡剤も添加していない比較例1、2及び比較例6〜9の水分散系離型剤組成物は、消泡性が著しく劣ると共に、離型性能もやや劣る。又、疎水性シリカ微粒子は添加していないが消泡剤を添加した比較例3〜5の水分散系離型剤組成物も、消泡性や非移行性が劣る。
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による水分散系離型剤組成物は、良好な起泡抑制性や消泡性を有すると共に、優れた離型性能や非移行性を発揮するので、主として粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル等の粘着加工品を対象とする離型シート用等として好適に用いられる。
Claims (2)
- アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を側鎖に有する有機離型剤が水に分散され、且つ、疎水性シリカ微粒子が添加されていることを特徴とする水分散系離型剤組成物。
- 有機離型剤が、重合度300〜5000、鹸化度50モル%以上の酢酸ビニル(共)重合体の水酸基1当量に対し、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、ケテン基、アルデヒド基及びエポキシ基からなる群より選択される、水酸基と反応し得る少なくとも1種の官能基を有し、アルキル基の炭素数が6〜30の長鎖アルキル化合物を官能基換算で0.5当量以上の割合で反応させて得られる有機ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の水分散系離型剤組成物。
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