JP3794336B2 - 電子写真用トナーおよび現像剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの電子写真プロセスを利用する電子写真装置、特にカラー電子写真装置に使用される電子写真用トナーおよび現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子写真プロセスとしては多数のプロセスが知られている。電子写真プロセスでは、まず、光導電性物質を利用した電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)表面上に種々の手段によって電気的に潜像を形成し、この潜像を電子写真用トナー(以下、単に「トナー」とも称す)を用いて現像する。現像によって感光体表面上に形成されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに紙などの被転写体に転写した後、この転写画像を加熱、加圧、加熱加圧または溶剤の蒸気などによって定着する。以上のような複数の工程を経て定着画像が形成される。感光体表面上に残ったトナーは必要により種々のクリーニング方法で除去され、前述の複数の工程が繰り返されて連続的に画像が形成される。
【0003】
近年、情報化社会における機器の発達や通信網の充実によって、このような電子写真プロセスが複写機のみならずプリンタにも広く利用されるようになっている。また電子写真プロセスのカラー化が急速に進展している。カラー複写機やカラープリンタなどの電子写真装置が普及するにつれて、白黒電子写真装置とカラー電子写真装置との区別がなくなりつつあり、カラー電子写真装置1台で白黒画像およびカラー画像の両方の複写やプリントを行うという使われ方が増えている。
【0004】
白黒画像の場合ももちろんであるが、特にカラー画像の場合は、形成される画像が高画質かつ高発色であることが強く要求される。高画質で高発色の画像を得るためには、透光性および光沢性などの観点から、トナーが定着工程で十分に融解し、定着後の画像の表面が平滑にならなくてはならない。このため、カラー電子写真装置では、トナーに分子量が低く、ガラス状態から比較的シャープに溶けて溶融粘度が低下する樹脂を用い、定着工程として熱効率、信頼性および安全性に優れる接触型の加熱加圧定着方式を用いている。
【0005】
このような樹脂を用いたトナーは、ガラス状態から溶融状態への変化が急激であることから、定着工程の温度変化に対して敏感に溶融粘度が変化するという欠点を有している。また、定着時の溶融粘度を低くしなくてはならないので、被転写体として画像記録に主に用いられている紙の繊維間にトナーが浸透する浸透現象が発生し、画像が劣化するという欠点も有している。このため、カラー電子写真装置において高画質の画像を得るためには、紙の中でも、表面にコート層を有したり、繊維間隔が比較的密で、トナーの浸透現象を低減することができる特定のカラー用紙を用いる必要がある。
【0006】
ところが、前述のように近年のカラー電子写真装置は、1台で白黒画像およびカラー画像の両方の画像形成を行うようになっており、従来から白黒電子写真装置に用いられてきた紙(以下、「普通紙」と称す)をカラー用途にも使用できることが所望されている。普通紙をカラー電子写真装置に用いた場合、普通紙はカラー用紙に比べて紙自体の熱容量が小さいので定着時にトナーに加わる熱量が多くなり、カラー用紙に定着させる場合に比べてトナーの溶融粘度が低下する傾向があり、また繊維間隔が疎であるすなわち密でないので、トナーの浸透現象が顕著に現れ、画像の劣化が発生しやすい。トナーの浸透現象が生じると、普通紙の繊維の太さは数10μmで繊維間の空隙程度の大きさがあることから、目視で画像のむらとして十分認識され、画像の劣化となる。このような浸透現象による画像の劣化は、たとえば印刷やインクジェット技術においてもコート紙やシリカコート紙などの受像層を設けた専用紙を用いて印刷用インクやインクジェット用インクのにじみを防止していることから考えて解決が困難であることは間違いないが、トナーの浸透現象を防いで白黒電子写真装置の普通紙適性という優れた利便性を引継ぎ、カラー電子写真装置においても特別な用紙を選択することなく高画質の画像を得ることができる技術を提供することは重要なことである。
【0007】
また、近年の更なる高画質化の要請に対して、定着画像の画像厚みを薄くする動きがある。従来の電子写真画像の画像厚みは、1色につき5〜7μmもあり、フルカラーでは20μmにも達することから、画像濃度の濃い部分と薄い部分との画像厚みの違いが見る人に違和感を与える。一方、高画質画像の代表である印刷画像の画像厚みはフルカラーでも数μmであり、前述のような違和感を感じさせない。このことから、電子写真画像においても、トナーの粒子径を小さくして高解像度を得て画像厚みを薄くし、印刷画像と同等の高画質を得ようとしている。しかしながら、印刷画像ではコート紙を用いることが前提であるのに対して、電子写真画像の場合にはコート紙よりも著しく表面平滑度の低い紙を用いるので、画像厚みが薄くなると前述のトナーの浸透現象による画像劣化がより発生しやすくなる。この画像劣化は画像中で白い斑点のように見え、特に同じ濃度で広い面積を占めるような場合には非常に不快感を感じさせることから、改善が強く望まれている。
【0008】
このようにトナー特性としては浸透現象を起こさないことが求められる。また、定着工程として接触型の加熱加圧定着方式を用いた場合には、トナー画像の一部が定着部表面に付着し、次に定着される被転写体に転写されるオフセット現象が発生することがあり、耐オフセット性も求められる。また、トナーの定着には大きなエネルギが必要であるので、電子写真装置の省エネルギ化の観点から、定着可能温度を低くして必要なエネルギを小さくするために、低温定着性も求められる。
【0009】
このような特性を満たすトナーとしていくつかのトナーが提案されているが、要求されるすべての特性を満たすトナーは得られていない。トナーの浸透現象に関しては、浸透現象を直接防止する技術は提案されておらず、類似の効果を持つ技術がいくつか提案されている。
【0010】
その一つとして、トナー中に微粒子を含有させて、トナーの溶融粘度の温度に対する変化割合を小さくすることによって、低温定着性と耐オフセット性とを両立させることを目的として、数平均分子量が1,000〜5,000、酸価が10〜50mgKOH/gのポリエステル樹脂をマトリックスとし、平均粒子径が0.05〜2.0μmの架橋樹脂粒子をドメインとしたトナー用樹脂が提案されている。この技術では確かに溶融粘度曲線は改善されるが、平均粒子径の大きな粒子を含有させた場合には、トナーの浸透現象を防止できないだけでなく、画像の光沢性が得られず発色性が低下する。また、粒子の分散性については考慮されておらず、分散性が悪い場合には溶融特性が改善された部分と改善されていない部分とが混在し、全体として良好な溶融特性を得ることができず、トナーの浸透現象を防止することができない。さらに、ドメイン粒子とマトリックス樹脂との混合に溶剤を用いているので、樹脂であるドメイン粒子が溶解または膨潤することが避けられず、それによって粒子の凝集が発生する場合がある。また粒子中の溶剤を除去するために高温下で乾燥させる必要があることから、乾燥工程で粒子の凝集や温度による樹脂の熱劣化が発生する場合がある。粒子が凝集すると分散性が悪くなることから前述のように浸透現象の防止が難しくなり、また熱劣化が発生すると帯電性などのトナーの特性が悪化するという問題が生じる。
【0011】
また別の技術として、トナーの結着樹脂中に無機粒子を含有させ、各色の粘弾性特性を黒色トナーと同様にして、耐オフセット性を向上させたトナーが提案されている。この技術では確かに粘弾性データ測定の上ではトナーの溶融粘弾性曲線を改善することができるが、高速、高画質および高発色が要求される高速の電子写真装置においては、耐オフセット性に対してほとんど効果が得られない。これは、粘弾性データ測定中のトナーの状態と定着時のトナーの状態とが全く異なっているためである。また、この技術においても粒子の分散性が悪い場合にはトナーの浸透現象を防止することができない。さらに、無機粒子の添加量が1〜10重量%の場合には、高温でのオフセット現象すなわちホットオフセット現象が起こる粘度よりも低い粘度から起こる浸透現象を十分に防止することはできない。
【0012】
以上のように、従来の技術ではトナーの普通紙への浸透現象を防止することは困難であり、新たに設計されたトナーが求められている。
【0013】
また、近年の電子写真装置の高速化、小型化および省エネルギ化に鑑みれば、低温定着性および耐オフセット性の更なる改善が望まれる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温定着性および耐オフセット性に優れる電子写真用トナーおよび現像剤を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂を含有するトナー粒子を含む電子写真用トナーであって、前記結着樹脂は、少なくとも、軟化点が120〜170℃であり、かつガラス転移温度が55〜75℃である樹脂A、軟化点が90〜120℃であり、かつガラス転移温度が58〜75℃であり、かつクロロホルム不溶分率が5質量%未満である樹脂B、および融点が80〜140℃であり、水酸基価が0.5〜5mgKOH/gである結晶性ポリエステル樹脂Cを含み、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径は、0.05〜0.2μmであることを特徴とする電子写真用トナーである。
【0016】
本発明に従えば、前記樹脂A、前記樹脂Bおよび前記結晶性ポリエステル樹脂Cを用い、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径を0.05〜0.2μmとすることによって、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性、耐久性および保存安定性のいずれにも優れた電子写真用トナーを得ることができる。
【0021】
また本発明は、前記樹脂Aの含有量と前記樹脂Bの含有量との比A/Bが、質量比で10/1〜10/8の範囲にあることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、前記比A/Bが質量比で10/1〜10/8の範囲にあることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および耐ブロッキング性のバランスを良好にすることができる。
【0023】
また本発明は、前記樹脂Aの含有量と、前記樹脂Bおよび前記結晶性ポリエステル樹脂Cの合計含有量との比A/(B+C)が、質量比で10/2〜10/14の範囲にあり、かつ前記樹脂Bの含有量と前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量との比B/Cが、質量比で1/1〜4/1の範囲にあることを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、前記比A/(B+C)が質量比で10/2〜10/14の範囲にあり、かつ前記比B/Cが質量比で1/1〜4/1の範囲にあることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および耐ブロッキング性のバランスをさらに良好にすることができる。
【0025】
また本発明は、前記樹脂Aは、多塩基酸成分および多価アルコール成分を含むポリエステル樹脂であり、前記多塩基酸成分は、テレフタル酸を主成分とし、前記多価アルコール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)および下記一般式(1)で表されるグリコール(b)を主成分とし、かつモル比(a):(b)が35:65〜65:35の範囲にあることを特徴とする。
【0026】
【化2】
Figure 0003794336
【0027】
(式中、Rは炭素数2または3のアルキレン基を示し、mおよびnは各々整数を示し、2≦m+n≦4である。)
【0028】
本発明に従えば、前記樹脂Aがポリエステル樹脂であることによって、定着性、耐久性および着色剤の分散性を良好にすることができ、前記モル比(a):(b)が35:65〜65:35の範囲にあることによって、1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)の使用比率が65モル%を越えるために結晶化傾向が大きすぎて樹脂自体が完全に不透明となる現象を防ぎ、また前記使用比率が35モル%未満であるために半晶的な性状にならず、結着樹脂自体が着色してくる現象を防ぐことができる。したがって、透明性および発色性が良好で、細緻な色彩管理が要求されるデジタルカラー複写機用のトナーとしても使用可能な電子写真用トナーを提供することができる。
【0031】
また本発明は、前記多塩基酸成分の90モル%以上が、テレフタル酸であることを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、前記多塩基酸成分の90モル%以上がテレフタル酸であることによって、耐熱凝集性を特に良好にすることができる。
【0033】
また本発明は、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび前記一般式(1)で表されるグリコールの合計量が、前記多価アルコール成分の90モル%以上であることを特徴とする。
【0034】
本発明に従えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび前記一般式(1)で表されるグリコールの合計量が、前記多価アルコール成分の90モル%以上であることによって、他の多価アルコール成分を10モル%以上含むために前述のトナーの特性が損なわれることを防ぐことができる。
【0035】
また本発明は、前記電子写真用トナーを含むことを特徴とする現像剤である。本発明に従えば、前述のような電子写真用トナーを用いることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および保存安定性の均衡がとれた現像剤を提供することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明の実施の一形態による電子写真用トナーは、結着樹脂、微粒子、ならびに着色剤、帯電制御剤およびワックスなどの添加剤を含有し、無機微粉体などの表面処理剤が外添されたトナー粒子を含んで構成される。
【0038】
前記結着樹脂は、軟化点などの異なる2種以上の樹脂と、1種以上の結晶性樹脂とを含む。通常、結晶性樹脂と、該結晶性樹脂の融点、たとえば後述の80〜140℃から大きく離れた高軟化点、たとえば後述の120〜170℃の樹脂とを溶融混練させてトナーを作製する際には、互いの溶融粘度が同じ温度において大きく異なるため、トナー中に結晶性樹脂を均一に分散させることは困難である。本発明による電子写真用トナーでは、軟化点などの異なる少なくとも2種類の樹脂、すなわち結晶性樹脂の融点から大きく離れた軟化点を有する高軟化点の樹脂と、結晶性樹脂の融点に近い軟化点を有する低軟化点の樹脂とを用いているので、溶融混練させてトナーを作製する際に、低軟化点の樹脂が高軟化点の樹脂と結晶性樹脂とのつなぎの役割を果たし、トナー中に結晶性樹脂を均一に分散させることができる。これによって、定着性の向上された均一な性状のトナーを得ることができる。
【0039】
本実施形態において、融点とは、結晶性樹脂が溶融し始める温度をいい、軟化点とは、融点を特定できないような熱的性質を示す非晶性樹脂および半晶性樹脂が溶融を起こして流動し始める温度をいう。(以下、同様。)
【0040】
具体的には、前記高軟化点の樹脂として、軟化点が120〜170℃であり、かつガラス転移温度(Tg)が55〜75℃である樹脂A、前記低軟化点の樹脂として、軟化点が90〜120℃であり、かつガラス転移温度(Tg)が58〜75℃であり、かつクロロホルム不溶分率が5質量%未満である樹脂B、前記結晶性樹脂として、融点が80〜140℃である結晶性樹脂Cを用いる。
【0041】
前記樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの物性および配合比率は、各樹脂が有する優れた特性を十分に発現させて、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性、耐久性および保存安定性のいずれの特性にも優れる電子写真用トナーを得るために以下のように選ばれる。
【0042】
前記樹脂Aの軟化点Tm(A)は、耐オフセット性および耐久性の観点から120℃以上であることが好ましく、低温定着性の観点から170℃以下であることが好ましい。すなわち、120〜170℃であることが好ましく、より好ましくは130〜165℃である。またガラス転移温度Tg(A)は、耐ブロッキング性の観点から55℃以上であることが好ましく、低温定着性の観点から75℃以下であることが好ましい。すなわち、55〜75℃であることが好ましく、より好ましくは55〜70℃である。
【0043】
前記樹脂Bの物性は、特に、前記樹脂Aと結晶性樹脂Cとの相溶性を高めるように選ばれる。前記樹脂Bの軟化点Tm(B)は、90〜120℃であることが好ましく、より好ましくは90〜110℃であり、さらに前記樹脂Aの軟化点Tm(A)との差が20℃以上あることが好ましい。またガラス転移温度Tg(B)は、58〜75℃であることが好ましく、より好ましくは58〜70℃である。またクロロホルム不溶分率は、5質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0〜3質量%であり、さらに好ましくは0質量%である。
【0044】
前記結晶性樹脂Cの融点は、保存安定性および低温定着性の観点から、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)を用いた測定における融解ピーク温度で、80〜140℃であることが好ましく、より好ましくは80〜120℃である。また前記結晶性樹脂Cの融解は、保存安定性の観点から狭い温度範囲で起こることが好ましく、融解ピークの半値幅は20℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。
【0045】
前記樹脂Aの含有量と前記樹脂Bの含有量との比A/Bは、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性のバランスを良好にするという観点から、質量比で10/1〜10/8であることが好ましく、より好ましくは10/1〜10/5である。
【0046】
また、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性のバランスをさらに良好にするという観点から、前記樹脂Aの含有量と、前記樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの合計含有量との比A/(B+C)は、質量比で10/2〜10/14であることが好ましく、より好ましくは10/4〜10/10である。さらに前記樹脂Bの含有量と結晶性樹脂Cの含有量との比B/Cは、質量比で1/1〜4/1であることが好ましく、より好ましくは1/1〜3/1である。
【0047】
前記樹脂Aおよび樹脂Bとしては、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂などを挙げることができる。
【0048】
前記ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコール成分すなわち多価アルコール成分と、2価以上のカルボン酸成分すなわち多塩基酸成分とから構成され、たとえば特開平7−175260号公報に開示の例示化合物を用い、該公報に記載の方法を参考にして製造することができる。
【0049】
多価アルコール成分を形成するために用いられる原料モノマーとしては以下のものが好ましい。2価のアルコール成分では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)の炭素数2または3のアルキレンオキシド付加物で、平均付加モル数1〜10のもの、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−へキサンジオール、ビスフェノールAおよび水素添加ビスフェノールAなどが好ましい。3価以上のアルコール成分では、ソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセリンおよびトリメチロールプロパンなどが好ましい。
【0050】
多塩基酸成分を形成するために用いられる原料モノマーとしては、2価以上のカルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルなどを挙げることができ、具体的には以下のものが好ましい。2価の多塩基酸成分では、各種ジカルボン酸、炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基で置換されたコハク酸、ならびにこれらの酸の無水物および炭素数1〜12のアルキルエステルなどを挙げることができ、特にマレイン酸、フマル酸、テレフタル酸および炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸が好ましい。3価以上の多塩基酸成分では、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(慣用名:トリメリット酸)、ならびにその無水物および炭素数1〜12のアルキルエステルなどが好ましい。
【0051】
これらの原料モノマーを重合させる際には、反応を促進させるために、酸化ジブチル錫などの一般に使用されているエステル化触媒などを適宜使用してもよい。
【0052】
前記ポリエステルポリアミド樹脂およびアミド樹脂のアミド成分を形成するために用いられる原料モノマーとしては、従来公知の各種ポリアミン、アミノカルボン酸類およびアミノアルコールなどを挙げることができ、特にヘキサメチレンジアミンおよびε−カプロラクタムが好ましい。
【0053】
前記樹脂Aおよび樹脂Bは、定着性、耐久性および着色剤の分散性の観点から、いずれもポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0054】
特に前記樹脂Aは、多塩基酸成分が耐熱凝集性の観点からテレフタル酸を主成分とし、多価アルコール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)および下記一般式(1)で表されるグリコール(b)を主成分とするポリエステル樹脂Aであることが好ましい。
【0055】
【化3】
Figure 0003794336
【0056】
(式中、Rは炭素数2または3のアルキレン基を示し、mおよびnは各々整数を示し、2≦m+n≦4である。)
【0057】
前記一般式(1)で表されるグリコールのうち好ましいものとしては、ビスフェノールAの1モルに対して、エチレンオキシドが2モル付加したものまたはプロピレンオキシドが2モル付加したものを挙げることができ、特にエチレンオキシドが2モル付加したものが好ましい。
【0058】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)と前記一般式(1)で表されるグリコール(b)とのモル比a:bは、35:65〜65:35の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは40:60〜60:40の範囲である。1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)の使用比率が65モル%を越えると、結晶化傾向が大きすぎて樹脂自体が完全に不透明となり、透明性がよく発色性の良好なトナーを得ることができない。逆に、1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)の使用比率が35モル%より低くなると、半結晶的な性状を呈しなくなるだけでなく、樹脂自体が黄褐色に着色してくる傾向が強まり、精緻な色彩管理が要求されるデジタルカラー複写機用のトナーを提供することができなくなる。
【0059】
前記多価アルコール成分を形成する原料モノマーとして、前述の1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび前記一般式(1)で表されるグリコールと併用できるものとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび水素添加ビスフェノールAなどの2価アルコール類、ならびに、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートおよびペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコール類を挙げることができる。これらの多価アルコールは、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができ、多価アルコール成分の10モル%未満の少量を併用することが好ましい。
【0060】
また前記多塩基酸成分を形成する原料モノマーとしては、テレフタル酸およびその低級アルキルエステルを挙げることができる。前記テレフタル酸およびその低級アルキルエステルと併用できる原料モノマーとしては、たとえばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸およびイソフタル酸などの二塩基酸類、トリメリット酸、トリメシン酸およびピロメリット酸などの塩基度3以上の酸類、ならびにこれらの無水物および低級アルキルエステル類を挙げることができる。これらの多塩基酸は、耐熱凝集性の観点から、多塩基酸成分の10モル%未満の範囲で少量併用することが好ましい。
【0061】
前記ポリエステル樹脂Aは、これらの原料モノマーを重縮合させることによって製造することができる。重縮合に際しては、従来公知の重合触媒、たとえばチタンテトラブトキシド、酸化ジブチル錫、酢酸錫、酢酸亜鉛、二硫化錫、三酸化アンチモンおよび二酸化ゲルマニウムなどを用いることができる。
【0062】
このようにして得られるポリエステル樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、55〜75℃であることが好ましく、より好ましくは60〜70℃である。ガラス転移温度(Tg)が55℃未満であるとトナーとしての耐熱凝集性が不良となり、75℃を越えると定着性が不良となる。
【0063】
また前記ポリエステル樹脂Aの100℃における溶融粘度は、103〜105Pa・sであることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×104Pa・sである。100℃における溶融粘度が103Pa・s未満であると、定着にヒートロールを用いた場合に、定着ヒートロールへのシリコーンオイルの供給量にもよるが、紙の巻き付きやオフセット現象が起こりやすくなる。逆に105Pa・sを越えると、紙上に転写するカラートナーとして使用した場合に、各色のトナーの定着時における溶融混合が不完全となり、発色不良となる。
【0064】
また前記ポリエステル樹脂Aの環球法軟化点(SP:Softening Point)は、90〜120℃であることが好ましく、より好ましくは95〜115℃である。環球法軟化点が90℃未満であると、前述の100℃における溶融粘度が103Pa・s未満である場合と同様に紙の巻き付きやオフセット現象が起こりやすくなる。逆に120℃を越えると、前述の100℃における溶融粘度が105Pa・sを越える場合と同様に発色不良となる。
【0065】
また前記ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、5,000〜20,000であることが好ましく、より好ましくは7,000〜12,000である。重量平均分子量が5,000未満であると、樹脂が脆くなり過ぎて、粉砕してトナー粒子とする際に粒子径2μm以下の微粉が大量に生成し、分級収率が低下する。逆に重量平均分子量が20,000を越えると、樹脂が強靭になり過ぎ、トナーの粉砕性が低下し、生産性が低下する。
【0066】
前述のように、前記樹脂Aにおいて、多塩基酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、多価アルコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)および前記一般式(1)で表されるグリコール(b)を主成分とし、かつモル比a:bを35:65〜65:35の範囲とし、ガラス転移温度(Tg)を55〜75℃、重量平均分子量(Mw)を5,000〜20,000、100℃における溶融粘度を103〜105Pa・s、環球法軟化点(SP)を90〜120℃とすることによって、半晶性とも言うべき状態を呈するポリエステル樹脂を得ることができる。
【0067】
前記結晶性樹脂Cは、結晶性ポリエステル樹脂Cであることが好ましい。トナー中に結晶性ポリエステル樹脂Cを均一に分散させることによって、定着性および保存安定性のバランスを最適化することができる。トナー中の結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径としては、0.05〜0.2μmが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂Cの分散性が不良である、すなわち分散粒径が0.05μm未満または0.2μmを越えると、トナーの帯電量分布が広がり、着色度も低下するので好ましくない。
【0068】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、前述のポリエステル樹脂と同様の多価アルコール成分と多塩基酸成分とから構成されるポリエステル樹脂である。その中でも、耐ブロッキング性が良好であることから、主鎖に芳香環を有する芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、特に芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールまたはこれらの誘導体からなる熱可塑性の結晶性芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0069】
前記芳香族ジカルボン酸としては、たとえば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸およびナフタレンジカルボン酸、ならびにそれらの誘導体などを挙げることができる。
【0070】
前記芳香族ジオールとしては、たとえば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物では、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.0モル付加物であるポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびその誘導体、その他の芳香族ジオールでは、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ならびにそれらの誘導体を挙げることができる。
【0071】
前記結晶性芳香族ポリエステル樹脂のうち、特に好ましいものとしては、フタル酸とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物とからなる骨格を有する熱可塑性の結晶性芳香族ポリエステル樹脂を挙げることができる。該結晶性芳香族ポリエステル樹脂は、芳香環およびポリオキシエチレン鎖などが分子間相互作用によって一定の規則性をもって配列しうる骨格を有するため、結晶性がより高くなるので特に好ましい。前記ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物は、全アルコール成分の50モル%以上含有することが好ましく、アルコール成分の全量がビスフェノールAのエチレンオキシド付加物であることが特に好ましい。
【0072】
また前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、必要に応じて以下の多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を含んでもよい。
【0073】
多価カルボン酸成分としては、ジカルボン酸成分では、たとえばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などを挙げることができる。3価以上のカルボン酸成分では、たとえばトリメリット酸およびピロメリット酸、ならびにこれらの無水物などを挙げることができる。
【0074】
多価アルコール成分としては、ジオール成分では、たとえば水素添加ビスフェノールA、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよびシクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。3価以上のアルコール成分では、ソルビトール、1,2,3,6−へキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよび1,3,5−トリメチロールベンゼンなどを挙げることができる。
【0075】
なお、前述の3価以上のカルボン酸成分およびアルコール成分は、本発明による電子写真用トナーの特性を阻害しない範囲で使用することができるが、ジカルボン酸およびジオールのみを用いて線状ポリエステル樹脂を得る方が各特性の最適化をはかりやすいので好ましい。
【0076】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、触媒の存在下、前述の原料モノマーを用いて脱水縮合反応またはエステル交換反応を行うことにより製造することができる。このときの反応温度および反応時間は特に限定されるものではないが、一般には20〜300℃の反応温度で0.5〜24時間反応させる。反応に用いる触媒としては、たとえば酸化亜鉛、酸化第一錫、酸化ジブチル錫およびジブチル錫ジラウレートなどを適宜使用することができる。
【0077】
このようにして得られる結晶性ポリエステル樹脂Cの溶融粘度は、低温定着性の観点から、150℃において、5〜1000mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜800mPa・sであり、10〜500mPa・sが最適である。
【0078】
また結晶性ポリエステル樹脂Cの水酸基価は、環境に対する安定性の観点から、0.5〜5mgKOH/gが好ましく、より好ましくは0.5〜4mgKOH/gである。通常のポリエステル樹脂では、水酸基価を低くするために酸成分を多く反応させることが考えられるが、この方法では酸価が高くなり過ぎ、トナーにしたときの帯電性が悪くなる。また酸成分としてカルボン酸の低級アルキルエステルを使用することも考えられるが、酸成分が昇華しやすかったり、反応が十分に進みにくく、水酸基価を5mgKOH/g以下にすることは困難である。また酸成分とアルコール成分との反応率を上げることも考えられるが、反応率を上げるだけでは粘度が高くなり過ぎ、トナーにしたときの低温定着性の効果が小さくなる。本発明における結晶性ポリエステル樹脂Cでは、重合後に残存する水酸基をモノカルボン酸無水物でエステル化することによって水酸基価を0.5〜5mgKOH/gにすることができる。
【0079】
また結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価は、トナーにしたときの帯電性の観点から、3〜20mgKOH/gが好ましく、より好ましくは3〜15mgKOH/gである。
【0080】
また結晶性ポリエステル樹脂Cの重量平均分子量は、1,000〜20,000が好ましく、より好ましくは2,000〜10,000である。
【0081】
なお、前述の樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの軟化点、融点、ガラス転移温度およびクロロホルム不溶分率などの各物性の調整は、各樹脂を製造する際の原料モノマー、重合開始剤および触媒などの種類、使用量および反応条件などを適当に選択することにより、容易に行うことができる。また、このように前記樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの各物性を調整することによって、後述する結着樹脂としての好ましい物性を得ることができる。
【0082】
また、本発明による電子写真用トナーは、前述のようにトナー粒子が後述する微粒子を含有して構成され、該微粒子として粒子径が1.0μm以上2.0μm以下の粒子を含有するトナー粒子の数がトナーに含まれる単位個数のトナー粒子のうちの半数以下であることを特徴とする。このことは、トナー全体として見たときに、前記微粒子の平均粒子径が1.0μm以上の1次粒子、および平均粒子径が1.0μm未満の1次粒子の凝集による粒子径が1.0μm以上の2次粒子(以下、「凝集体」とも称す)の存在が少ないことを示す。すなわち、通常、トナー中に微粒子を含有させると凝集体を形成してしまうために分散性が悪くなるが、本発明によるトナーでは、前記微粒子があまり凝集体を形成しておらず、トナー全体として見たときに前記微粒子が均一に分散している状態となっている。
【0083】
前記微粒子として、粒子径が1.0μm以上の粒子を含有するトナー粒子の数は、たとえば以下のようにして算出する。まず、本発明による電子写真用トナーを透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)または走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察し、無作為に抽出したトナー粒子1個を30,000倍の倍率で写真撮影する。これをたとえば50回、すなわちトナー粒子50個に対して行い、得られた50枚の写真から、前記微粒子として、最大長で1.0μm以上の粒子を含有するトナー粒子の個数を数えることにより算出する。
【0084】
前記微粒子を前記分散状態に分散させる具体的手法としては、後述するように結着樹脂および微粒子に必要に応じて着色剤およびワックスなどの各種添加剤を加え、ボールミルなどの混合機で均一に混合する前混合の条件を最適化する方法、および混練において前記結着樹脂および微粒子に必要に応じて着色剤およびワックスなどの各種添加剤を加えた材料の流れ方向を送りに対して戻りを多くする方法などを挙げることができる。
【0085】
前述のように微粒子をトナー中に均一に分散させることによって、トナーの溶融流動特性を改善することができ、紙の繊維間の隙間に浸透していくトナーの浸透現象を防止することができる。この理由は明らかではないが、以下のように推察することができる。
【0086】
紙の種類によっても異なるが、紙の繊維間の隙間の大きさには分布があり、0.1〜10μm程度の孔径の隙間が存在する。この中でも、数μm以上のものは隙間というよりも紙表面の凹凸と考えてよく、トナーの浸透現象に寄与するのは主に1μm以下のものと考えられる。トナーは、定着時の熱および圧力によって押しつぶされてこの隙間を流れるわけであるが、このときトナーが微粒子を含有していないと容易に隙間の奥まで押し込まれ、浸透現象が発生する。一方、トナーが微粒子を含有していると、該微粒子が抵抗点となることによってトナーの流れが阻害され、トナーの浸透が防止される。一般に、レオロジー学では、この紙の繊維間の隙間のような細い管を、トナーのような高粘度媒体が添加剤を含有して流れるときには、流れに大きな乱れが生じることが知られており、トナーが紙の繊維間の隙間を流れるときにも同様のことが起こり、浸透が防止されると推察される。このようにトナーが細管内を流れるときを考えた場合、細管断面に微粒子が複数存在することが好適であると考えられる。したがって、前記微粒子はトナー中に均一に分散されていることが必要である。
【0087】
この浸透現象防止効果は、粒子径1.0μm以上の微粒子を含有するトナー粒子の割合が低いほど高いことが実験的にわかっている。すなわち、前記微粒子として粒子径が1.0μm以上の粒子を含有するトナー粒子の割合は、トナーに含まれる単位個数のトナー粒子のうちの半数以下であることが好ましく、より好ましくは2/5以下であり、3/10以下が最適である。この割合が高く、前記微粒子の分散性が悪いと、前述のようにトナーが細管内を流れるときを考えた場合、抵抗点となり得る粒子、すなわち粒子径が1.0μm未満の微粒子を含有しないトナー成分が流れるという状態が生じ、浸透防止の効果が得られないだけでなく、定着後の画像の光沢が得られにくくなり、画像の鮮明性が損なわれる。また微粒子の凝集体によって画像の平滑性が低下し、発色が阻害される。
【0088】
前記微粒子の1次粒子の平均粒子径である平均1次粒子径は、前述のようにトナーが細管内を流れるときを考えた場合、細管断面に微粒子が複数存在することが好適であるという観点から、1〜500nmであることが好ましい。この平均1次粒子径は、300nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。平均1次粒子径が500nmより大きくなると、浸透現象の防止効果が弱まるとともに定着後の画像の光沢が得られにくくなり、画像の鮮明性が損なわれるおそれがある。また、前記微粒子の平均1次粒子径が小さいほど浸透防止の効果が高くなる傾向があるが、粒子の製造性および取り扱い性などの観点から、平均1次粒子径は5nm以上がより好ましい。
【0089】
また、前記微粒子の平均1次粒子径と含有量との間には関係があり、平均1次粒子径が小さいほど含有量が少なくても浸透防止の効果を得ることができる。したがって、トナーの単位体積当たりに含まれる前記微粒子の含有量、すなわち体積分率Φは、平均1次粒子径Dにより有効な範囲が異なり、下記式(1)で示される範囲であることが好ましく、さらに好ましくは下記式(1−a)で示される範囲であり、下記式(1−b)で示される範囲であることが最適である。
0.015D0.4<Φ<0.5 …(1)
0.02D0.4<Φ<0.4 …(1−a)
0.022D0.4<Φ<0.4 …(1−b)
(前記式(1)、(1−a)および(1−b)において、Φは体積分率であり、Dは平均1次粒子径である。)
【0090】
前記微粒子の体積分率Φは、結着樹脂や微粒子の材質、およびその他の添加剤に鑑みて、定着性を良好にしながら、かつ定着性以外のトナーの特性を悪化させないように前記範囲内で適宜決定することが好適である。なお、体積分率Φが0.015D0.4以下であると浸透防止の効果を発揮し難くなり、0.5以上であると定着可能温度の上昇や定着性の低下が生じるおそれがある。
【0091】
また、前述のように前記微粒子をトナー中に均一に分散させることによって、トナーの浸透現象を防止するだけでなく、トナーの溶融特性および固体物性を変化させることができる。以下にその特長を挙げる。
【0092】
前記微粒子をトナー中に分散性よく含有させることによって、トナーの粘弾性の温度依存性、すなわちトナーの貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″との和として表される動的複素弾性率G(=G′+G″)の降下度合いを温度変化に対して緩やかにすることができる。このようなトナーの粘弾性の温度依存性は、トナーの動的複素弾性率Gを、そのトナーが定着工程における加熱によって浸透を開始するときの動的複素弾性率Gである3,000Pa程度には達しないように下がりにくくし、かつ、トナーの動的複素弾性率Gが、トナーが前記定着工程において定着を開始するときの値である10,000Pa程度のときには、粘性的でつぶれやすい状態とすることができるので、カラー発色および定着が容易で、カラー画像の形成に適する電子写真用トナーを得ることができる。
【0093】
一方、トナー中に前記微粒子を含有せずに、結着樹脂の分子量を大きくすることによって微粒子を含有する場合と同様の粘弾性の温度変化を得ようとすると、樹脂の分子量が微粒子を含有する場合に比べて約一桁大きくなり、貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″との比G″/G′である損失正接(tanδ)の値が小さくなり過ぎ、また動的複素弾性率が上がり過ぎて、カラー発色および定着が容易でなくなる。この粘弾性の温度変化と粘弾性との関係は、樹脂のみの場合には高分子鎖の緩和過程だけでほぼ一義的に決まるが、微粒子を含有した微粒子分散樹脂の場合には、緩和過程を微粒子の種類、含有量および分散状態などによって変化させることができるので、同様の粘弾性の温度変化であっても粘弾性を粘性的から弾性的まで独立に制御することができ、浸透現象の防止と、カラー発色性および定着性との両立が可能である。このような意味から、微粒子を含有させたトナーをカラー画像用トナーに適応させる際には粘弾性特性が非常に重要である。また前述のような粘弾性特性は、常温からガラス転移温度付近の固体状態においても、粉体トナー同士、定着画像と紙、および定着画像同士のブロッキング現象を抑制する効果を有する。
【0094】
したがって、本発明による電子写真用トナーは、浸透防止効果を達成するためには前述のようにトナーが細管内を流れるときを考えた場合に細管断面に微粒子が複数存在することが好適であるという観点、および純粋にトナーのレオロジー的な物性の観点から、粘弾性条件として、損失弾性率G″と貯蔵弾性率G′との比G″/G′である損失正接(tanδ)の値が、150℃で0.05〜1.5の範囲で、かつこのときの損失弾性率G″の値が5.0×104Pa以下であるという条件を満たすことが好ましい。この粘弾性条件は、トナー中に前記微粒子を前述のように均一に分散させることによって満たすことができる。
【0095】
また本発明による電子写真用トナーは、前記微粒子が分散性よく含有されているので、ガラス転移温度(Tg)および溶融温度(Tm)の低い樹脂を結着樹脂として用いても粉体トナー同士、定着画像と紙、および定着画像同士の熱によるブロッキング現象を抑えることができる。この耐熱ブロッキング性を有することによって定着温度の低温化が可能となり、低いエネルギで定着することができるので、省エネルギ化を図ることができる。
【0096】
従来のトナーでは、ガラス転移温度(Tg)が60℃程度以上、かつ溶融温度(Tm)が100℃以上の結着樹脂を用いなければ、十分な耐熱ブロッキング性を得ることができなかった。これに対し、前記微粒子を分散性よく含有している本発明による電子写真用トナーでは、ガラス転移温度および溶融温度が低い樹脂を結着樹脂として用いても、十分な耐熱ブロッキング性を得ることができる。この理由に関しては、以下のように推察することができる。
【0097】
熱によるブロッキング現象は、まずトナー表面近傍に存在する結着樹脂の低分子成分が拡散移動し、トナー粒子同士、トナー像と紙、またはトナー像とトナー像とを接着することから開始すると考えられる。本発明による電子写真用トナーでは結着樹脂中に微粒子が均一に分散されているので、該微粒子が結着樹脂の低分子成分の拡散移動を抑制し、熱ブロッキング現象を防いでいると思われる。微粒子がその周りの溶媒分子の拡散を抑制する、または束縛するという考え方は、別の材料系において文献に示されている。たとえば、微粒子の水系分散体のレオロジー挙動を微粒子の存在によって説明する際に、水和層によって粒子の粒子径が実際の粒子径よりも大きくなる効果を用いて考察している。本発明による電子写真用トナーにおいて、粒子間表面距離は10〜50nm程度で粒子同士が非常に近接していることから、結着樹脂分子のうちの相当多い量が微粒子表面近傍にあることが判る。すなわち結着樹脂分子は分子間相互作用などによって粒子に束縛されているので、耐熱ブロッキング性が現れると推察される。ブロッキング現象を防止するためには、一般には塗料などのアンチブロッキング剤を用いる。これは塗膜表面に微小突起を存在させ、他のものとの面接触を避け、点接触させることによってブロッキング現象を防止する手法であり、アンチブロッキング剤としては前記微粒子よりも大きい粒子径1μm程度の粒子が有効である。しかし、粒子径500nm以上の粒子では、トナー粒子同士の熱ブロッキング現象にはあまり効果がなく、また表面平滑性が上がらないのでカラー画像には適さない。
【0098】
この耐熱ブロッキング性の観点からは、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜100℃であることが好ましく、40〜85℃であることがより好ましく、50〜75℃であることがさらに好ましい。Tgが40℃より低いと、トナーが熱でブロッキングしやすく、Tgが100℃より高いと、トナーの定着可能温度が高くなり過ぎる。なおTgは、DSCたとえば株式会社マック・サイエンス製DSC3110の熱分析システム001を用いて、たとえば昇温速度5℃/分の条件で測定することができ、得られたチャートのTgに相当する吸熱点の低温側の肩の温度をTgとする。
【0099】
また前記結着樹脂の溶融温度(Tm)は、60〜100℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましく、60〜80℃であることがさらに好ましい。Tmが60℃より低いと、トナーが熱でブロッキングしやすく、Tmが100℃より高いと、トナーの定着可能温度が高くなり過ぎる。
【0100】
また前記結着樹脂は、以下のような粘弾性特性を有することが好ましい。トナーが定着器表面から剥離する変形において、トナー層の厚みが10μm程度と薄いことからトナーの実質の剥離変形速度は非常に速いので、粘弾性の温度−時間換算則から、剥離変形にはガラス転移領域の後半の温度付近の結着樹脂の粘弾性が大きく影響すると考えられる。したがって、良好な耐巻き付き性を得るための結着樹脂の粘弾性特性としては、剥離変形における粘性変形によるエネルギ損失を小さく抑えることが必要である。すなわち、結着樹脂のガラス転移温度と、結着樹脂の損失弾性率G″が1×104Paとなる温度との間に、結着樹脂の粘弾性における損失弾性率G″と貯蔵弾性率G′との比G″/G′である損失正接(tanδ)が極小値を有し、かつその極小値が1.2未満であることが好適である。
【0101】
なお、このような結着樹脂の物性は、前述のように、結着樹脂に含まれる樹脂成分、すなわち前記樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの各物性によって調整することができる。
【0102】
また耐熱ブロッキング性の効果を十分に引き出すという観点からは、前記微粒子は、前記1次粒子および2次粒子を含めたすべての粒子の粒子径の平均である平均粒子径が1〜300nmであることが好適である。またトナー粉体の熱保存性を上げるという観点からは、平均粒子径の異なる微粒子を含むことが好適であり、具体的には、前記微粒子として、平均粒子径が30〜200nm、好ましくは30〜150nmの微粒子と、その範囲外の平均粒子径の微粒子とを含むことが好適である。前記範囲外の平均粒子径の微粒子としては、前記範囲よりも小さい平均粒子径の微粒子では、平均粒子径が1〜30nmの微粒子が好ましく、より好ましくは5〜30nmであり、また前記範囲よりも大きい平均粒子径の微粒子では、平均粒子径が200〜300nmの微粒子が好適である。
【0103】
前記微粒子としては、有機微粒子および無機微粒子などの淡色または無色の微粒子を挙げることができ、これらの微粒子は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0104】
前記有機微粒子としては特に限定はないが、有機架橋粒子が好適である。前記有機微粒子の材料としては、たとえばビニル系、スチレン系、メタクリル系、アクリル系、エステル系、アミド系、メラミン系、エーテル系およびエポキシ系などの単一樹脂、ならびにこれらの共重合樹脂を用いることができる。これらの中でも、電子写真分野での使用実績の観点から、ビニル系、スチレン系、メタクリル系およびアクリル系樹脂に代表される付加重合系樹脂、ならびにエステル系樹脂に代表される重縮合系樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂としては、日本ペイント株式会社製のマイクロジェルシリーズ(商品名)、JSR株式会社製のSTADEXシリーズ(商品名)、ならびに綜研化学株式会社製のMRシリーズ(商品名)およびMPシリーズ(商品名)などが入手しやすい。
【0105】
前記無機微粒子としては、平均粒子径が1〜300nmの無色または淡色の無機微粒子が好適である。前記無機微粒子の材料としては、金属元素などの酸化物および非酸化物などを用いることができる。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、べんがら、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、塩化セリウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素などを挙げることができる。特に、チタン系微粒子およびシリカ微粒子が好ましい。
【0106】
前記無機微粒子のうち、金属元素などの酸化物の微粒子の合成方法としては、たとえば、四塩化ケイ素、四塩化チタンおよび四塩化アルミニウムなどの塩化物を気相中で加水分解して合成する方法、湿式法によって合成する方法および高温溶融法によって合成する方法などを挙げることができる。また非酸化物の微粒子の合成方法としては化学気相法によって合成する方法などを挙げることができる。
【0107】
また前記無機微粒子は、疎水化剤で疎水処理されたものであることが好ましい。前記疎水化剤としては、たとえばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤およびジルコニウム系カップリング剤などのカップリング剤、ならびにシリコーンオイルなどを挙げることができる。これらの中でも、シラン系カップリング剤およびシリコーンオイルが好ましい。これらの疎水化剤は単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0108】
前記シラン系カップリング剤としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザンおよび特殊シリル化剤などのいずれのタイプのものも用いることができる。具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタクリロキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(グリシドキシ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(グリシドキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物、ならびにこれらのシラン化合物の水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素系シラン化合物およびアミノ基で置換したアミノ系シラン化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
前記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロゲンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルおよびフッ素変性シリコーンオイルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
前記無機微粒子の疎水化処理の方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、微粒子に前述の疎水化剤を直接噴霧する方法、ならびに前述の疎水化剤を適当な溶媒、たとえばテトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンおよびアセトンなどで希釈した溶媒溶液を用いる方法などを挙げることができる。疎水化剤の溶媒溶液を用いる方法としては、たとえば、疎水化剤の溶媒溶液を微粒子にブレンダなどで強制的に滴下または噴霧して十分に混合し、必要に応じて洗浄および濾過を行った後、加熱乾燥させ、乾燥後の凝集物をブレンダおよび乳鉢などで解砕して処理する方法、疎水化剤の溶媒溶液に微粒子を浸漬した後、該微粒子を沈殿させて加熱乾燥させ、解砕して処理する方法、微粒子を水中に分散してスラリー状にし、これを疎水化剤の溶媒溶液に滴下した後、該微粒子を沈殿させて加熱乾燥させ、解砕して処理する方法などを挙げることができる。
【0111】
前記疎水化剤の微粒子への付着量は、微粒子に対して0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜25重量%がより好ましい。付着量は、前述の疎水化処理の段階で疎水化剤の混合量を増やしたり、疎水処理後の洗浄工程の数を変えるなどの方法によって調整することができる。また付着量は、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)および元素分析などによって定量することができる。なお、付着量が0.01重量%未満であると高湿度下で帯電性が低下する場合があり、また50重量%を超えると低湿度下で帯電が過剰になり、疎水化剤が遊離してトナーの粉体流動性を悪化させる場合がある。
【0112】
前記着色剤としては、従来公知の黒色着色剤および有彩色着色剤を用いることができる。前記黒色着色剤としては、カーボンブラックを挙げることができる。前記カーボンブラックは製法によって分類され、たとえばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックなどを挙げることができる。
【0113】
前記有彩色着色剤としては、有機顔料を挙げることができる。青系の有機顔料としては、たとえばフタロシアニン系のC.I.(Color Index) Pigment Blue 15−3およびインダンスロン系のC.I. PigmentBlue 60などを挙げることができる。赤系の有機顔料としては、たとえばキナクリドン系のC.I. Pigment Red 122、アゾ系のC.I. Pigment Red 22、C.I. Pigment Red 48:1、C.I. Pigment Red 48:3およびC.I. Pigment Red 57:1などを挙げることができる。黄系の有機顔料としては、たとえばアゾ系のC.I. Pigment Yellow 12、C.I. Pigment Yellow 13、C.I. Pigment Yellow 14およびC.I. Pigment Yellow 17、イソインドリノン系のC.I. Pigment Yellow 110、ならびにベンズイミダゾロン系のC.I. Pigment Yellow 151、C.I. Pigment Yellow 154およびC.I. Pigment Yellow 180などを挙げることができる。
【0114】
前記着色剤の含有量は、1〜20質量部の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部の範囲内である。
【0115】
トナーの帯電制御は、前記結着樹脂または着色剤によって行ってもよいが、必要に応じて帯電制御剤を併用してもよい。前記帯電制御剤としては、たとえばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリメチルエタン系染料、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料およびアゾクロム錯体などの重金属含有酸性染料などが用いられる。具体的には、「ボントロンS−32」(オリエント化学株式会社製)および「Aizen SpilonBlack TRH」(保土谷化学工業株式会社製)などを挙げることができる。
【0116】
なお、カラー用トナーにおいては無色の帯電制御剤を使用することが好ましく、サリチル酸またはサリチル酸とアルキルアルコールとのエステルの金属錯化合物などが用いられる。具体的には「ボントロンE−84」(オリエント化学株式会社製)および「LR−147」(日本カーリット株式会社製)などを挙げることができる。
【0117】
また前記トナー粒子には、前記耐熱ブロッキング性の効果を十分に引き出すために、さらに低融点滑剤を添加することが好ましい。前記低融点滑剤は、定着工程において画像表面にしみ出し、画像表面に数10nmの膜を形成する。この膜は、微粒子によって抑制された結着樹脂の低分子成分の拡散移動をさらに抑制する働きをし、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)および溶融温度(Tm)よりもやや高い温度という厳しい定着条件下においても良好な耐熱ブロッキング性を付与する。
【0118】
前記低融点滑剤としては、前述の耐オフセット性を向上させる目的で用いられる従来公知の低融点滑剤を挙げることができる。特に、融点が100℃以下の低融点滑剤が好ましい。トナー中の前記低融点滑剤の含有量は、3〜10重量%が好ましく、より好ましくは3〜7重量%である。
【0119】
前記微粒子および結着樹脂に加えて低融点滑剤を含有させることによって、十分な耐熱ブロッキング性を付与することができる。これによって、オイルレス条件下で定着する場合において良好な離型性をもつトナーを得ることができ、また定着温度の低温化を図ることができる。ただし、オイルレス条件下で定着する場合には、トナーの耐ホットオフセット性だけでなく、耐巻き付き性を確保し、トナー層を接着層として紙が定着部に巻き付く現象を避けなければならない。耐巻き付き性を確保するためには、前記低融点滑剤による離型効果だけでは不十分であり、結着樹脂が前述のような特定の粘弾性特性を有することが好適である。
【0120】
また本発明による電子写真用トナーには、必要に応じて種々のワックス類を分散させて用いることができる。前記ワックス類としては、たとえばモンタン酸エステルワックスなどの天然ワックス、高圧法ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン系ワックス、シリコーン系ワックスならびにフッ素系ワックスなどを使用することができる。これらのワックス類のうち好ましいものとしては、「ビスコール660P」、「ビスコール550P」、「ビスコール330P」、「TP−32」(以上、三洋化成工業株式会社製)、「ミツイハイワックスNP505」、「ミツイハイワックスP200」、「ミツイハイワックスP300」および「ミツイハイワックスP400」(以上、三井化学株式会社製)などを挙げることができる。
【0121】
また前記トナー粒子には、必要に応じてシリカなどの無機微粉体を表面処理剤として外添してもよい。これによって、より粉体流動性などを向上させることができるので、実用上好適である。
【0122】
前記シリカとしては、疎水性などを有するものが好ましく、たとえば二酸化ケイ素を各種のポリオルガノシロキサンおよびシランカップリング剤などで表面処理したものを挙げることができる。具体的には、「AEROSIL R972」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」、「AEROSIL R809」、「AEROSIL RX50」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「WACKER HDK H2000」、「WACKER HDK H2050EP」(以上、ワッカーケミカルズイーストアジア株式会社製)、「Nipsil SS−10」、「Nipsil SS−15」、「Nipsil SS−20」、「Nipsil SS−50」、「Nipsil SS−60」、「NipsilSS−100」、「Nipsil SS−50B」、「Nipsil SS−50F」、「Nipsil SS−10F」、「Nipsil SS−40」、「Nipsil SS−70」および「Nipsil SS−72F」(以上、日本シリカ工業株式会社製)などの商品名で市販されているものを挙げることができる。
【0123】
前記シリカとしては、比較的大きい平均粒子径を有するものと、比較的小さい平均粒子径を有するものがあり、これらは単独で用いても併用してもよい。
【0124】
前記シリカのトナー粒子への外添量としては、トナーに必要な帯電性の付与、感光体ドラムへの影響およびトナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部が実用上好適である。
【0125】
前記シリカをトナー粒子に外添させる方法としては、たとえば通常の粉体混合機であるヘンシェルミキサなどを用いる方法、およびハイブリダイザなどのいわゆる表面改質機を用いる方法などを挙げることができる。なお、このシリカの外添は、トナー粒子の表面にシリカを付着させるようにしてもよいし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしてもよい。
【0126】
また前記トナー粒子の表面には、必要に応じて流動性向上剤などを添加してもよい。
【0127】
他の実施形態において、電子写真用トナーに含まれるトナー粒子は、前述の各種添加剤および外添剤を含まなくてもよい。
【0128】
次に、本発明による電子写真用トナーの製造方法を説明する。本発明による電子写真用トナーは、混練粉砕法、スプレイドライ法および重合法などの公知の方法により製造することができる。
【0129】
具体的には、たとえば、前記結着樹脂および微粒子に、必要に応じて着色剤およびワックスなどの各種添加剤を加え、ボールミルなどの混合機で均一に混合する。この際、前記結着樹脂は、前記樹脂Aおよび樹脂B、または樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cの粉末状のものまたはペレット状のものが単に混合されたものであってもよく、それらの樹脂が溶融混練により均一に混合分散された後、粉砕などによって粉末状またはペレット状にされたものであってもよい。また前記着色剤は、前記結着樹脂中に均一に分散するように、予めフラッシング処理を施して用いてもよく、また前記結着樹脂と高濃度で溶融混練してマスターバッチとして用いてもよい。
【0130】
次いで、2本ロールニーダ、3本ロールニーダ、加圧ニーダ、密閉式ニーダおよび1軸または2軸の押し出し機などの混練手段によって、結着樹脂の融点または軟化点以上で溶融混練する。この際、前記結着樹脂中に着色剤などが均一に分散すればよく、溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、一般的には80〜180℃で10分〜2時間である。次いで、前記処理を施した混合物を冷却した後、ジェットミルなどの粉砕機で微粉砕し、風力分級機などによって分級し、本発明による電子写真用トナーを得る。
【0131】
こうして得られるトナーは、前述のように粘弾性測定において、損失弾性率G″と貯蔵弾性率G′との比G″/G′である損失正接(tanδ)の値が150℃で0.05〜1.5であり、かつこのときの損失弾性率G″の値が5.0×10Pa以上5.0×104Pa以下であることが好ましい。
【0132】
またトナーに含まれるトナー粒子は、平均粒子径で5〜10μmであることが好ましく、体積平均粒子径(Dp)で5〜15μmであることが好ましい。
【0133】
本発明による現像剤は、前記電子写真用トナーを用いるものである。前記電子写真用トナーのうち、磁性体微粉末を含有するトナーは、単独で現像剤として使用される。また磁性体微粉末を含有しないトナーは、非磁性一成分系現像剤として、またはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用される。
【0134】
前記電子写真用トナーを用いることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および保存安定性の均衡がとれた現像剤を得ることができる。
【0135】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0136】
《物性値測定方法》
〔軟化点〕
高化式フローテスタ(株式会社島津製作所製CFT−500)を用い、試料1gに対して、昇温速度6℃/分、荷重20kg/cm2、ノズル1mmφ×1mmの条件で測定を行い、試料の半分が流出する温度を軟化点とする。
【0137】
〔融点〕
JIS K 7121−1987に準じて測定し、融解ピークの温度を融点とする。
【0138】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製DSC210)を用い、昇温速度10℃/分で測定し、JIS K 7121−1987に準じて、得られたチャートのガラス転移に相当する吸熱点の低温側の肩をガラス転移温度とする。
【0139】
〔クロロホルム不溶分率〕
容積100mlの蓋付きガラス瓶に粉体試料5g、ラジオライト(昭和化学工業株式会社製#700)およびクロロホルム100mlを入れ、ボールミルにて25℃で5時間攪拌した後、ラジオライト(昭和化学工業株式会社製#700)5gを均一に敷き詰めた濾紙(東洋濾紙株式会社製No.2)で加圧濾過する。濾紙上の固形物をクロロホルム100mlで2回洗浄し、乾燥させた後、下記の式に従って不溶分率を算出する。
不溶分率(質量%)=〔濾紙上の固形物の重量(g)−10g(ラジオライトの重量)〕/5g(試料の重量)×100
【0140】
《樹脂の製造》
(結晶性ポリエステル樹脂Cの製造)
(製造例1) 結晶性ポリエステル樹脂(C−1)の製造
四つ口フラスコに、テレフタル酸2.5モル部と、イソフタル酸2.5モル部と、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.8モル部とを入れ、攪拌器、コンデンサおよび温度計をセットし、窒素ガスを吹き込み、触媒として酸化ジブチル錫を全酸成分に対して0.07質量%添加し、220℃にて、脱水縮合により生成した水を除去しながら15時間反応させ、線状の結晶性ポリエステル樹脂(C−1)を得た。得られた線状の結晶性ポリエステル樹脂(C−1)を分析したところ、重量平均分子量(Mw)は11,000、数平均分子量(Mn)は4,100、融点は121℃、酸価は4.2mgKOH/g、水酸基価は1.2mgKOH/gであった。
【0141】
(製造例2) 結晶性ポリエステル樹脂(C−2)の製造
製造例1において、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.8モル部に代えて、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.6モル部およびポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.2モル部を用いた以外は、製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(C−2)を製造した。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−2)を分析したところ、重量平均分子量(Mw)は12,000、数平均分子量(Mn)は4,300、融点は116℃、酸価は4.7mgKOH/g、水酸基価は1.9mgKOH/gであった。
【0142】
比較製造例) 結晶性ポリエステル樹脂(C−3)の製造
シクロヘキサンジメタノール1008質量部とビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物の975質量部とに、さらにテレフタル酸1461質量部(8.8モル相当)と酸化ジブチル錫2.0質量部とを加え、均一溶解した後、脱水しながら120℃にて8時間反応させた後、徐々に温度を上げて200℃とし、さらに減圧下で反応させ、結晶性ポリエステル樹脂(C−3)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−3)を分析したところ、融点は92℃、酸価は16mgKOH/g、水酸基価は35mgKOH/gであった。
【0143】
(製造例) 結晶性ポリエステル樹脂(C−4)の製造
比較製造例において、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物を895質量部として用いた以外は、比較製造例と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(C−4)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−4)を分析したところ、融点は85℃、酸価は18mgKOH/g、水酸基価は3.4mgKOH/gであった。
【0144】
(比較製造例) 結晶性ポリエステル樹脂(C−5)の製造
セバシン酸707質量部と1,6−ヘキサンジオール496質量部と酸化ジブチル錫1.5質量部とを均一溶解した後、脱水しながら120℃にて8時間反応させた。次に徐々に温度を上げて200℃とし、減圧下で反応させた。その後、温度を130℃とし、無水酢酸80質量部を加え、3時間反応させた後、生成した酢酸と過剰の無水酢酸とを留去し、結晶性ポリエステル樹脂(C−5)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−5)を分析したところ、融点は65℃、酸価は10mgKOH/g、水酸基価は2mgKOH/gであった。
【0145】
(樹脂Aの製造)
(製造例) 樹脂(A−1)の製造
攪拌機、温度計、窒素(N2)ガス導入管および分留管を有するフラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール576g(4.0モル)とビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物の1950g(6.0モル)とを加え、さらにテレフタル酸1461g(8.8モル)と酸化ジブチル錫4gとを加え、N2ガス気流下、攪拌しながら加熱昇温し、240℃にて脱水縮合反応を行った。その際、原料モノマーが留出しないように注意を払い、もし留出した場合には留出分を補填して、仕込み時の組成通りの樹脂組成となるように調整した。酸価が5mgKOH/gとなるまで反応させた後取り出し、固形のポリエステル樹脂(A−1)を得た。
【0146】
(製造例
表1に示す原料を用いて、製造例と同様にして、ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−5)を製造した。
【0147】
【表1】
Figure 0003794336
【0148】
(樹脂Bの製造)
表2に示す樹脂原料および触媒を、窒素雰囲気下、220℃で反応させ、ASTM E−28−87に準じた測定における軟化点が表3に示す所定の温度に達したときに反応を終了し、冷却後、粉砕し、製造例として樹脂(B−1)〜(B−3)、比較製造例とて樹脂(B−4)を得た。なお、表2において、各欄の上段は質量を示し、下段はモル数を示す。
【0149】
【表2】
Figure 0003794336
【0150】
《物性値の測定》
以上の樹脂(A−1)〜(A−5)および樹脂(B−1)〜(B−4)について、軟化点、ガラス転移温度およびクロロホルム不溶分率の測定を行った。その結果を表3に示す。
【0151】
【表3】
Figure 0003794336
【0152】
《電子写真用トナーの製造》
(実施例1)
表4に示す組成の結着樹脂(TB−1)の88質量部に、微粒子としてAEROSIL R972(日本アエロジル株式会社製)1.5質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製MA100)6質量部、帯電制御剤(保土谷化学工業株式会社製スピロンブラックTRH)2質量部およびポリプロピレンワックス4質量部を均一に混合した後、内部温度150℃の二軸押出機で混練した。冷却物をジェットミルで微粉砕し、ディスパージョンセパレータで分級した後、表面処理剤を外添し、体積平均粒子径9μmの電子写真用トナーを得た。
【0153】
(実施例2〜
実施例1において、結着樹脂(TB−1)に代えて、表4に示す組成の結着樹脂(TB−2)〜(TB−)を用いた以外は、実施例1と同様にして、種類の電子写真用トナーを製造した。
【0156】
(比較例1〜
実施例1において、結着樹脂(TB−1)に代えて、表4に示す結着樹脂(TB−)〜(TB−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、種類の電子写真用トナーを製造した。
【0157】
【表4】
Figure 0003794336
【0158】
《評価》
(1)低温定着性
以上の実施例1〜および比較例1〜で製造した電子写真用トナーの各4質量部に、フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製F−150)96質量部を均一に混合し、現像剤とした。この現像剤を、定着部を取除いた複写機(シャープ株式会社製AR5030F)の現像器に投入し、紙上にトナー像を転写した。紙上に転写されたトナーを、定着部を改造した複写機(シャープ株式会社製SF8400A)にて、A4用紙35枚/分のスピードで定着させた。
【0159】
次いで、学振式堅牢度試験機の砂消しゴムに1kgの荷重を載せたものによって、定着部を通過して定着された画像の上を3往復こすった。反射濃度計(マクベス社製)にて、こする前後の光学反射密度を測定して画像濃度を求め、以下の定義による定着率の変化を観測した。
定着率(%)=〔(こすった後の画像濃度)/(こする前の画像濃度)〕×100
【0160】
この操作を定着ローラの設定温度を100℃から240℃まで順次上昇させて繰返し、前記定着率が初めて70%を越えたときの定着ローラの設定温度を定着に必要な最低温度すなわち最低定着温度として求め、低温定着性を評価をした。その結果を表5に示す。表5において、判定符号○、△および×は、以下の評価を示す。
○:最低定着温度が160℃未満。
△:最低定着温度が160℃以上175℃未満。
×:最低定着温度が175℃以上。
【0161】
(2)耐ホットオフセット性
前記最低定着温度の測定と同様にして、トナー像を転写して前記定着部を改造した複写機の定着ローラによって定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で前記定着ローラに送って通過させ、該転写紙にトナーによる汚れが生じるか否かを目視観測した。この操作を前記定着ローラの設定温度を順次上昇させて繰返し、トナーの汚れが初めて生じたときの定着ローラの設定温度をホットオフセット発生温度として求め、耐ホットオフセット性を評価した。その結果を表5に示す。表5において、判定符号○、△および×は、以下の評価を示す。
○:ホットオフセット発生温度が210℃以上。
△:ホットオフセット発生温度が190℃以上210℃未満。
×:ホットオフセット発生温度が190℃未満。
【0162】
(3)耐ブロッキング性
実施例1〜および比較例1〜で製造した電子写真用トナーの各10gを容積100mlのガラス瓶に入れ、温度50℃の恒温槽に2日間放置し、トナーの状態を観察した。その結果を表5に示す。表5において、判定符号○、△および×は、以下の評価を示す。
○:ブロッキングが全く見られない。
△:ソフトケーキング状態。
×:ハードケーキング状態。
【0163】
また、表5に実施例および比較例の電子写真用トナー中の結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径(μm)を示す。
【0164】
【表5】
Figure 0003794336
【0165】
表5の結果から、実施例の電子写真用トナーは、前述の特定の物性を有する樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cを含有するので、比較例のトナーに比べ、低温定着性、耐ホットオフセット性および耐ブロッキング性が良好であることが判った。具体的には、樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cを用いていない比較例のトナーでは、低温定着性、耐ホットオフセット性および耐ブロッキング性のいずれも良好でなかった。また、好ましい範囲より若干低い融点の結晶性樹脂Cを用いた比較例、ならびに樹脂Bの軟化点およびクロロホルム不溶分率が好ましい範囲にない比較例のトナーでは、樹脂Cの分散性が悪かった。また、結晶性樹脂Cを用いなかった比較例のトナーでは、低温定着性が不良となった。
【0168】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、特定の物性を有する樹脂A、樹脂Bおよび結晶性ポリエステル樹脂Cを用い、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径を0.05〜0.2μmとすることによって、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性、耐久性および保存安定性のいずれにも優れた電子写真用トナーを提供することができる。
【0170】
また本発明によれば、前記樹脂A、樹脂Bおよび結晶性樹脂Cを特定の比率で含有させることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および耐ブロッキング性のバランスを良好にすることができる。
【0171】
また本発明によれば、前記樹脂Aが、多価アルコール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび特定のグリコールを特定の比率で含み、多塩基酸成分としてテレフタル酸を含むポリエステル樹脂であることによって、透明性がよく発色性が良好で、細緻な色彩管理が要求されるデジタルカラー複写機用のトナーとしても使用可能な電子写真用トナーを提供することができる。
【0173】
また本発明によれば、特定の多塩基酸成分または多価アルコール成分を特定の割合以上含むことによって、耐熱凝集性を特に良好にしたり、トナーの特性が損なわれることを防ぐことができる。
【0174】
また本発明によれば、前述のような電子写真用トナーを用いることによって、低温定着性、耐ホットオフセット性および保存安定性の均衡がとれた現像剤を提供することができる。

Claims (7)

  1. 少なくとも結着樹脂を含有するトナー粒子を含む電子写真用トナーであって、
    前記結着樹脂は、少なくとも、軟化点が120〜170℃であり、かつガラス転移温度が55〜75℃である樹脂A、軟化点が90〜120℃であり、かつガラス転移温度が58〜75℃であり、かつクロロホルム不溶分率が5質量%未満である樹脂B、および融点が80〜140℃であり、水酸基価が0.5〜5mgKOH/gである結晶性ポリエステル樹脂Cを含み、
    前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分散粒径は、0.05〜0.2μmであることを特徴とする電子写真用トナー。
  2. 前記樹脂Aの含有量と前記樹脂Bの含有量との比A/Bが、質量比で10/1〜10/8の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナー。
  3. 前記樹脂Aの含有量と、前記樹脂Bおよび前記結晶性ポリエステル樹脂Cの合計含有量との比A/(B+C)が、質量比で10/2〜10/14の範囲にあり、かつ前記樹脂Bの含有量と前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量との比B/Cが、質量比で1/1〜4/1の範囲にあることを特徴とする請求項記載の電子写真用トナー。
  4. 前記樹脂Aは、多塩基酸成分および多価アルコール成分を含むポリエステル樹脂であり、
    前記多塩基酸成分は、テレフタル酸を主成分とし、
    前記多価アルコール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール(a)および下記一般式(1)で表されるグリコール(b)を主成分とし、かつモル比(a):(b)が35:65〜65:35の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1記載の電子写真用トナー。
    Figure 0003794336
    (式中、Rは炭素数2または3のアルキレン基を示し、mおよびnは各々整数を示し、2≦m+n≦4である。)
  5. 前記多塩基酸成分の90モル%以上が、テレフタル酸であることを特徴とする請求項4記載の電子写真用トナー。
  6. 1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび前記一般式(1)で表されるグリコールの合計量が、前記多価アルコール成分の90モル%以上であることを特徴とする請求項4または5記載の電子写真用トナー
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用トナーを含むことを特徴とする現像剤
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