JP3794144B2 - 光半導体素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非単結晶光半導体及びその製造方法並びにこの光半導体を用いた光半導体素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体受光素子用の光電変換部材として、非晶質や微結晶の非単結晶光半導体が使用されている。たとえば、セレン、テルルなどの非晶質カルコゲナイド化合物が、撮像管、受光素子、電子写真感光体などに広く用いられている(オーム社、「アモルファス半導体の基礎」)。また、近年では、水素化アモルファスシリコンが、太陽電池、イメージセンサー、Thin Film Transistor、電子写真感光体などに用いられている。
【0003】
しかしながら、非晶質カルコゲナイド化合物や水素化アモルファスシリコンから形成される従来の非単結晶光半導体には種々の問題があった。
非晶質カルコゲナイド化合物は、熱に対して不安定で結晶化が起こり易く使用できる条件が限られており、価電子制御ができないなどの欠点があった。
水素化アモルファスシリコンは、価電子制御は可能であり、pn接合や界面での電界効果などが実現でき、耐熱性も250℃程度まであるが、強い光により光導電性が劣化する現象があり(Staebler-Wronski効果:応用物理ハンドブックなど)、たとえば、太陽電池の効率が使用中に低下する問題がある。また、非晶質や微結晶シリコンのband gapは約1.7eV から1.5eV 程度であり太陽光の光を有効に利用するためや活性領域へ十分な光が到達できるようにGeやCを加えることによってband gapを狭めたり広めたりすることができるが, これらの元素を加えて0.3 eV程度変化させても光導電特性が大きく劣化し、広い範囲の光を有効に利用できないという問題があった。さらに、GeやC等の元素を含む半導体は、その結晶が間接遷移型であり、発光素子に用いることができず、用途が限られていた。
【0004】
一方、III-V族化合物半導体の多くは、直接遷移型半導体に属し、光吸収係数が大きく、またバンドギャップが組成により変化できるという特徴を有している。特に、窒素系の化合物は、InNの1.9 eVからGaNの3.2 eVまで、またAlNの6.5 eVまでと、紫外領域から可視領域まで広くバンドギャップを変えることができる。そこで、バンドギャップを自由に設定できる非単結晶光半導体として、III-V族化合物、特に、窒素系のIII-V族化合物からなる非単結晶光半導体に期待が寄せられている。
【0005】
また、窒素系のIII-V族結晶からなる半導体は、一般に、基板としてサファイア基板、GaAs基板、SiC基板を用いて結晶成長させているが、これらの基板は高価であるとともに、格子常数がこれらの半導体とは適合しないためそのままで結晶成長させることができず、窒素系のIII-V族結晶からなる半導体には、バッファ層の挿入や基板の窒化処理などを行う必要があるという不便さがあった。また、窒素系のIII-V族結晶用基板材料については、光の入出力用材料としては導電性の基板は光の透過性が不十分なものが多く、一方、光の透過性が良い基板は絶縁性であり、光半導体素子用基板としては不十分であった。
また、この結晶成長は、通常800-1100℃の温度でおこなわれているが、このような高温に適合する材料が限られるとともに、基板用バルク結晶の大きさがかぎられ任意の大面積の膜が得られないという問題があった。このため、窒素系のIII-V族化合物の結晶のLED(発光ダイオード;Light Emitting Diode)が実用化されているが、LEDはDisplayなどの二次元表示デバイスに使う場合にはLEDを画素数だけ並べる必要があり、数10万から数100万画素といった高解像度での表示には高価になりすぎ使用できるところが限られるという問題があった。また、従来、表示素子においては複数の色からなる画素を一つの平面上に並べる方式が広く行われており、高解像度の表示や光インターコネクションのような高密度の情報の伝達においては、より密度の高い発光点の素子が必要であるが、発光素子を並べた場合、間隔が大きく、その位置ずれと単位画素の大きさが問題であった。これらの発光や光導電、光起電力、高速電子移動を利用した比較的面積の大きい二次元デバイス用に、大きさの制約が無く、安価に製造できる非晶質や微結晶の材料が求められていた。
【0006】
以上のような事情から、窒素系の非単結晶III-V族化合物が、光半導体材料として注目されている。
従来、非単結晶のIII-V族化合物は、製造温度を、結晶作製する場合(600-1000℃)よりも低い温度に設定することによって得られている。具体的には、III-V族化合物結晶膜は、III-V族結晶の蒸着やスパッターによって、あるいは、III 族金属を原子状としたものとV族元素を含む分子や活性分子との反応によって[H.Reuter,H.Schmitt,M.Boffgen,Thin Solid Films,254(1995)94]、あるいは、III 族金属を含む有機金属化合物とV族元素を含む化合物を用いて、いわゆる有機金属CVD(MOCVD)法によって、加熱した基板上に作製されているが、非単結晶のIII-V族化合物は、これらの方法において、基板温度を、結晶作製する場合(600-1000℃)よりも低い温度に設定することによって得られている。
【0007】
しかしながら、原料に結晶を用いスパッターで作製する方法では、膜中の欠陥が多く、光導電性等の光半導体特性が不良であり、また、MOCVD法では、非晶質化するために低温成膜が必要であり、有機金属からの炭素が膜中に残ったり、膜中欠陥準位が多い等の問題があり、光半導体材料として機能できる非単結晶のIII-V族化合物半導体は得られていなかった[H.Reuter,H.Schmitt,M.Boffgen,Thin Solid Films25 4,94(1995)]。
【0008】
これら非晶質や微結晶の非単結晶 III-V族化合物半導体の欠陥を水素によりパッシベーションしたものとしては、III 族の原料として有機金属化合物を使用したプラズマCVD法によって水素を含む微結晶膜のGaNが得られているが、光導電性を示さず、絶縁性であった[J.Knights,and R.A.Lujan,J.Appl.Phys.,42,1291(1978)]。また、プラズマCVD法よって作製した水素化非晶質GaAsについても、10%程度の微小の光導電性しかなく実用上は程遠いものであった。
以上の様に、水素を導入するためには、より低温で成膜せざるを得ないが、有機金属化合物をIII 族の原料にした低温成膜では、膜中への炭素の残存が問題であった[Y.Segui,F.Carrere and A.Bui,Thin Solid Films,92,303(1982)]。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、上記窒素系の非単結晶 III-V族化合物半導体の欠点を改善し、広範囲の光学ギャップが自由に選べ、優れた光導電特性と発光特性を有し、かつ、高速応答性かつ耐環境特性や耐高温度特性を有し光学的に活性で、大面積で、安価な新しいオプトエレクトロニクス材料となりえる非単結晶材料を用いた光半導体素子を提供することにある。
本発明の第2の目的は、高解像度の表示や高密度の光情報が可能な入出力用の光半導体素子を提供することにある。
本発明の第3の目的は、安全に製造でき、かつ、低コストで製造することができる光半導体素子の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、有機金属からの炭素が膜中に残ったり、膜中欠陥準位が多い等の従来の窒素系の非単結晶のIII-V族化合物半導体材料の欠点の改善について、鋭意検討した結果、本発明の製膜法を用いることによって、炭素の含有量が少なく、膜中の欠陥が少ない窒素系の非単結晶のIII-V族化合物半導体材料を得ることができ、この材料を利用すれば、高性能の光半導体素子が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の光半導体素子は、基板上に、少なくとも、第一の層と第一の層より光学ギャップの小さい第二の層とを交互に積層し、さらに第二の層の光学ギャップより大きい光学ギャップを有する第三の層を積層してなる構造単位を有する光半導体素子において、前記光半導体素子が発光素子として構成され、前記第一の層と前記第二の層と前記第三の層が、それぞれ、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と25 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶のIII-V族化合物半導体からなり、前記第二の層の層厚が5〜200 Åであることを特徴とする。
【0012】
また、前記構造単位の両側に、電流注入のためのp型中間層とn型中間層を有してなることが好ましく、前記中間層が、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と0.5 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶材料からなることがより好ましい。また、光の取り出しを容易にするために、前記中間層の少なくとも一つを、第二の層の光学ギャップより大きい光学ギャップを有する中間層とし、該中間層の上に透明電極を設けることが好ましい。
【0013】
また、透明基板上に、前記構造単位を2以上積層してなる光半導体素子とすることもできる。この場合も、光の取り出しを容易にするために、透明基板上に、透明電極を設けることが好ましい。
【0014】
本発明の光半導体素子を構成する非単結晶材料は、赤外吸収スペクトルにおけるAl, Ga, In原子とN原子の結合を示す吸収ピークの半値幅が、300cm-1以下であることが好ましく、Al,Ga,Inの原子数の総和xとチッ素の原子数の総和yの比が、0.5:1.0から1.0:0.5の間にあることがより好ましい。
【0015】
n型中間層には、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つの元素を更に含むことができ、p型中間層には、Be,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つの元素を更に含むことができる。また、各中間層が、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つの元素とBe,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素とを、同時に含むこともできる。
【0016】
本発明の非単結晶光半導体は、窒素を含む化合物を活性化した活性種と、Al,Ga,Inをの元素を一つ以上含む有機金属化合物とを、活性化水素を含む雰囲気下で、反応させることにより製造することができる。活性化水素は、水素を含む化合物を活性化することにより供給されてもよく、活性化手段としては、高周波放電および/またはマイクロ波放電を利用することができる。また、周期律表におけるIII 族元素を含む有機金属化合物の少なくとも一種以上を、前記活性化手段の下流側から導入することが好ましい。
【0017】
このような方法で製造することにより、非晶質膜や微結晶膜が成長できる低温でも有機金属から安定分子として有機基が分離し、膜中に取り込まれず、膜成長時に未結合手の欠陥が除去でき、さらに有機基より生成する活性水素あるいは別に加えられた水素および水素化合物による活性水素が膜成長時に膜表面の炭素を除去する働きをし、不純物を極微量まで低減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(光半導体素子の構造)
図1および図2は、本発明の光半導体素子の構造の一例を示す模式的断面図である。
図1に示すように、本発明の光半導体素子は、基板1上に、少なくとも、第一の層2と第一の層より光学ギャップの小さい第二の層3とを交互に積層し、さらにこの上に設けられた第二の層の光学ギャップ以上の光学ギャップを有する第三の層4とからなる構造単位5を有している。構造単位5は、第一の層2と第二の層3とが一組の井戸構造でも良いし、第一の層2と第二の層3とを2組以上積層した多重井戸構造でも良い。また、前記構造単位5の両側には、電流注入のためのp型中間層6とn型中間層7とを有していてもよい。また、p型中間層6とn型中間層7のうち、光出入力側の中間層(図1においては、n型中間層7)の上には、透明電極8が設けられている。あるいは、図2に示すように、p型中間層6とn型中間層7のうち、光出入力側の中間層(図2においては、p型中間層6)の上には、透明電極9と透明基板10とが設けられている。
【0019】
本発明の活性層を構成する前記第一の層、前記第二の層と、該活性層の上に設けられた第三の層は、それぞれ、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と0.5 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶材料で構成されている。
【0020】
本発明において、非単結晶とは、非晶質あるいは微結晶であることを意味し、非晶質相、微結晶相、微結晶相と非晶質相の混合状態のいずれであっても良い。微結晶の結晶系は、立方晶系あるいは6方晶系のいずれか一つであってもよく、また、複数の結晶系が混合された状態でもよい。なお、微結晶の大きさは5nmから5μmであり、X線回折や電子線回折および断面の電子顕微鏡写真を用いた形状測定などによって測定することができる。
ここで、非晶質とは、例えば、透過電子線回折パターンにおいて全くリング状の回折パターンがなくぼんやりしたハローパターンの完全に長距離秩序の欠如しているものから、ハローパターンの中にリング状の回折パターンが見られるもの、さらにその中に輝点が見られるものまでを指している。このような膜は透過電子線回折より広範囲を観測するX線回折測定においては、ほとんど何のピークも得られないことが多い。
また、微結晶とは、例えば、透過電子線回折パターンにおいてリング状の回折パターンとともに輝点が多数見られるもの、スポット状の輝点のみ見られるものを指している。微結晶からなる膜は、X線回折測定においては、わずかに結晶面に相当するピークが得られるが、多結晶であると、ピーク強度が単結晶にくらべて弱く、かつ、ピーク幅が単結晶に比べて広いことが多い。
このような、非晶質あるいは微結晶の材料を用いることで、自由な基板材料に低温で成膜することができるため、低コストで、形状、サイズに制限がなく、高機能な光半導体素子を作製することができる。
【0021】
本発明の非単結晶材料は、周期律表におけるIII 族元素として、Al,Ga,Inの少なくとも一つを有している。膜の光学ギャップは、これらIII 族元素の混合比によって任意にかえることができる。例えば、GaN:H 膜の光学ギャップ3.2-3.5eV を基準にすると、これにAlを加えることによって6.5eV 程度まで大きくすることができ、紫外領域にも対応でき、Inを加えることによって1.9eV 程度まで変化させることができ、可視領域にも対応できる。
【0022】
また、本発明の非単結晶材料は、V族元素として、チッ素を含有している。V族元素として、チッ素を選ぶことによって組成比がストイキオメトリック状態を保ちやすくしたものである。
【0023】
本発明の非単結晶材料中のAl,Ga,Inの原子数の総和をx、チッ素の原子数をyとした場合に、xとyとの比が、1.0:0.5 から1.0:2.0 の間にあることが好ましい。xとyとの比が、この範囲外であると、III 族元素と窒素との結合において立方晶や閃亜鉛鉱(Zincblende)型を取る部分が少なくなり、その結果、欠陥が多くなり、良好な半導体として機能しなくなる。非単結晶材料中の各元素組成はX線光電子分光(XPS)、エレクトロンマイクロプローブ、ラザフォードバックスキャタリング(RBS)、二次イオン質量分析計等の方法で測定することができる。
【0024】
本発明の非単結晶材料中の水素濃度は、0.5 原子%以上50原子%以下の範囲になければならない。3次元的な構造を維持しながら非晶質構造を実現するためには、III 族元素と窒素の両方に未結合手が発生する。また、微結晶により3次元的構造を実現するためには、粒界においてIII 族元素と窒素の両方に未結合手が発生する。この未結合手を補償するために水素またはハロゲン等の一配位の原子を用いることができる。本発明においては、水素により、このような未結合手を補償するため、水素がIII 族元素と窒素に共に結合するようにする。
従って、 非単結晶材料に含まれる水素が0.5 原子%未満では、結晶粒界での結合欠陥、非晶質相内部での結合欠陥、および未結合手を、水素との結合によってなくし、バンド内に形成する欠陥準位を不活性化するのに不十分であり、結合欠陥や構造欠陥が維持される結果、暗抵抗が低下し、光感度がなくなるため、実用的な光導電体として機能することができない。また、無輻射過程の再結合中心が増加するため発光効率が低下し発光素子として機能できない。
一方、非単結晶材料に含まれる水素が50原子%をこえると、水素がIII 族元素および窒素に2つ以上結合する確率が増え、これらの元素が3次元構造を保たず、2次元および鎖状のネットワークを形成するようになり、とくに結晶粒界でボイドを多量に発生するため結果としてバンド内に新たな準位を形成し、電気的な特性が劣化するとともに、硬度などの機械的性質が低下する。さらに膜が酸化されやすくなり、結果として膜中に不純物欠陥が多量に発生することとになり、良好な光電気特性が得られなくなる。また、非単結晶材料に含まれる水素が50原子%をこえると、電気的特性を制御するためにドープするドーパントを水素が不活性化するようになるため、結果として、電気的に活性な非晶質あるいは微結晶からなる非単結晶光半導体が得られない。
水素量についてはハイドロジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することができる。また加熱による水素放出量の測定あるいは赤外吸収スペクトルの測定によっても推定することができる。
【0025】
非単結晶材料における水素とIII 族元素、水素と窒素、窒素とIII 族元素のそれぞれの結合状態は赤外吸収スペクトルによって容易に測定することできる。すなわち、膜中の化学結合状態は、おもにIII 族元素、窒素、および水素の結合状態と、その量関係によって規定することが可能である。さらに不純物としての炭素との関係を複合的にとらえることによって膜構造、さらには膜の特性を規定することができる。
【0026】
図3は、Siウェハーを基板として成膜した膜の赤外吸収スペクトルの一例を示すスペクトル図である。ここでは、III 族元素としてガリウムを用いているので、このスペクトルによれば、550 cm-1付近にGa-Nの骨格振動による吸収ピークがある。
測定結果から、この550 cm-1付近のGa-Nの吸収ピークは、非晶質から微結晶構造に近づくに従って、単一でシャープな形状を呈するようになることが分かっている。電子回折パターンから判定した相状態と照合すると、具体的には、半値幅が250 cm-1以上では、非晶質であり、半値幅が200 cm-1以下では、非晶質構造が主体ではあるが微結晶が混ざり始め、半値幅が100 cm-1以下では、微結晶が主体となることが分かっている。一方、この吸収ピーク位置での吸収帯は、例えば、C-H 結合などが膜中に多く含まれるような有機的な膜では複数の吸収帯によって半値幅が300 cm-1以上に広がることが分かっている。
【0027】
本発明の非単結晶材料は、炭素等の含有量が少ないことが好ましく、赤外吸収スペクトルにおけるAl, Ga, In原子とN原子の結合を示す吸収ピークの半値幅が、300cm-1以下であることが好ましく、微結晶が、多く含まれるほど、光導電特性、高速応答性が向上するため、Ga-Nの吸収ピーク(III -N)の半値幅は、150 cm-1以下がより好ましい。
【0028】
本発明において、半値幅とは、III 族原子と窒素との結合を主体とする吸収位置での複数のピークからなる吸収帯の場合も含みそのピークの最高強度とバックグランドを除いた強度を1/2 とした位置での幅である。あるいは低波数側が完全に測定できない場合には高波数側の片側半分の半値幅を二倍としたものである。
【0029】
また、吸収波長ピークは、非晶質である場合と微結晶である場合とでは、波長が10〜40cm-1の範囲で高波数側にシフトするが、同様な関係を適用する。
さらに、III 族元素としてガリウムの他に、インジウム、アルミニウム等を含む膜の赤外吸収スペクトルの場合においても、同様な関係を適用することができる。例えばInを加えた場合には低波数側に10-50 cm-1シフトするが同様な関係を適用する。このほかの結合に由来する吸収ピークも同様に状態や含有元素によりシフトするが、吸収ピーク強度関係は同様に扱う。
【0030】
本発明の非単結晶材料中、酸素と炭素は、合計で15原子%以下であることが望ましい。酸素が材料中に含まれると、この酸素原子がIII 族元素のAl,Ga,Inと安定な結合を形成し、Al,Ga,Inと窒素原子による3次元構造を部分的に2次元的柔構造を形成するため、電気的制御のための置換型ドーパントが3次元剛構造の中で電気的に活性な結合配置をとることを妨げることとなり、結果としてpn制御ができない。一方、炭素が材料中に含まれると、炭素と水素との結合はIII 族原子としてのAl,Ga,Inと水素との結合より安定であり、水素が炭素と多く結合するようになり、さらに炭素は -CH2-, -CH3結合を取りやすくなり鎖状構造やボイドの発生により、材料全体として欠陥準位が増えると共にドーパントをドープしたときに構造的柔軟性のためpn制御ができない。また、ワイドギャップの材料では材料が着色して黄色から茶褐色となるため光学的な特性も悪化する。
なお、膜中の酸素と炭素の濃度は、X線光電子分光(XPS)、エレクトロンマイクロプローブ、ラザフォードバックスキャタリング(RBS)、二次イオン質量分析計等の方法で測定することができる。
【0031】
本発明の非単結晶材料には、pn制御のために他の元素を材料中にドープすることができる。n型用の元素としては、Ia族のLi、Ib族のCu,Ag,Au、IIa族のMg、IIb族のZn、IVa族のSi,Ge,Sn,Pb 、IVb族のS,Se,Te を用いることができる。p型用の元素としてはIa族のLi,Na,K 、Ib族のCu,Ag,Au、IIa族のBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra 、IIb族のZn,Cd,Hg、IVa族のC,Si,Ge,Sn,Pb 、IVb族のS,Se,Te 、VIa族のCr,Mo,W 、VIII族のFe,Co,Niなどを用いることができる。
【0032】
ドーパントは活性化された水素のIII 族元素および窒素への結合、即ち、活性化された水素による欠陥準位のパッシベーションを阻害しないものが好ましい。すなわち、活性化された水素が、III 族元素および窒素と選択的に結合し、ドーパントに結合して不活性化しないことが必要である。この点から、n型用の元素としては、特に、Si,Ge,Snが好ましく、p型用の元素としては、特に、Be,Mg,Ca,Zn,Srが好ましい。
【0033】
本発明の構造単位に含まれる各層の光学ギャップは、第一の層が、2.0〜6.5eVの範囲にあることが好ましく、第二の層の光学ギャップは、第一の層の光学ギャップより小さいが、量子井戸層を形成する点で、0.1〜3.0eV程度小さいことが好ましく、0.1〜2.5eV程度小さいことがより好ましい。また、第三の層の光学ギャップは、第二の層の光学ギャップ以上であり、量子井戸層の壁の点で、0.1〜3.0eV程度大きいことが好ましい。
【0034】
本発明の活性層を構成する前記第一の層と前記第二の層の各層の層厚は、5〜200 Åであり、発光の効率の点で、5〜150 Åがより好ましい。層厚が5Å以下では量子井戸構造を形成できないため電子と正孔は自由にバルク内を移動して無輻射の再結合センターに捕獲されてしまう。一方、200 Å以上の層厚では量子井戸構造の幅が広すぎて電子と正孔のバリア内での閉じ込め効果が得られない。
なお、前記第三の層の層厚は、量子井戸層の形成と電流注入の点で、5〜500 Åが好ましい。
【0035】
本発明の中間層は、前記第一の層、第二の層と同様、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と0.5 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶材料から構成されていることが好ましい。
また、本発明の中間層の少なくとも一つは、第二の層の光学ギャップより大きい光学ギャップを有することが好ましい。具体的には、0.1〜3.0eV程度大きい光学ギャップとすることが好ましい。このようにすることによってどちらか一方の層から光入力や光出力を行うことができる。
また、本発明の中間層の層厚は、光の出入力と電流注入量の点で、5Å〜2μmが好ましい。
【0036】
本発明の基板は、導電性でも絶縁性でも良く、結晶あるいは非晶質でも良い。導電性基板としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、クロム等の金属及びその合金結晶、Si,GaAs,GaP,GaN,SiC,ZnOなどの半導体を挙げることができる。
また、基板表面に導電化処理を施した絶縁性基板を使用することもできる。絶縁性基板としては、高分子フィルム、ガラス、石英、セラミック等を挙げることができる。導電化処理は、上記の金属又は金、銀、銅等を蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法などにより成膜して行う。
特に、光入力や光出力を行こなう側に設けられる基板としては、光入力や光出力を行う光の波長に対して透明なものを使用する。光の入出力用の透明導電性基板の透光性支持体としては、ガラス、石英、サファイア、MgO, LiF,CaF2等の透明な無機材料、また、弗素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ等の透明な有機樹脂のフィルムまたは板状体、さらにまた、オプチカルファイバー、セルフォック光学プレート等が使用できる。
【0037】
本発明の電極としては、公知の電極を使用することができるが、特に、光入力や光出力を行こなう側に設けられる電極としては、光入力や光出力を行う光の波長に対して透明なものを使用する。上記透光性支持体上に設ける透光性電極としては、ITO、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を用い、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法により形成したもの、あるいはAl,Ni,Au等の金属を蒸着やスパッタリングにより半透明になる程度に薄く形成したものが用いられる。
【0038】
本発明の光半導体素子は、透明基板上に、第一の層と第二の層を2回以上積層してなる構造とすることもできる。これらの層を2回以上積層することにより、量子井戸構造として機能する層の信頼性を向上し、高効率化が可能となる。
また、電流注入効率を向上させるために、基板と第一の中間層あるいは第二の中間層と電極の間には、さらに高濃度のドーピングを行った膜であるp+ 層あるいはn+ 層を挿入しても良いし、第一の中間層と第一の層あるいは第二の中間層と第二の層の間に低濃度のドーピングを行った膜であるp- 層あるいはn- 層を挿入しても良い。
さらに、透明性や障壁の形成のために、これらのp型、i型、n型の層は各々異なるAlxGayInz(x=0-1.0,y=0-1.0,z=0-1.0)で表せるAl,Ga,InとNの組成を持っていてもよいし、p型、i型、n型それぞれの膜が、複数のAlxGayInzN:H(x=0-1.0,y=0-1.0,z=0-1.0)の組成から成っていてもよい。
【0039】
(光半導体素子の製造方法)
本発明の光半導体素子は、上記の通り、非晶質あるいは微結晶からなる非単結晶材料を積層することによって、製造される。そこで、まず、非単結晶材料の製造方法から説明する。
【0040】
本発明の非単結晶材料は、窒素を含む化合物を活性化した活性種と、周期律表におけるIII 族元素を含む有機金属化合物とを、活性化された水素を含む雰囲気下で反応させ、基板上に膜として形成される。
上記の製造方法は、周期律表におけるIII 族元素の供給原料として有機金属化合物を用いる点、および活性化された窒素および水素との反応を低温で行う点に、特徴がある。
【0041】
本発明の窒素を含む化合物の活性化とは、窒素を含む化合物を、III 族元素を含む有機金属化合物との反応に必要なエネルギー状態にすること、または、窒素を含む化合物を分解して生成する励起種にすることをいう。また、活性化された水素は、励起された水素ガスを活性化することにより得ることができる他、水素を含有する化合物を活性化することにより得ることができる。水素を含有する化合物としては、水素分子、炭化水素、ハロゲン化水素、有機金属化合物が挙げられ、不純物が混入しない点で、水素分子が好ましい。
また、放電エネルギーにより形成される活性化水素と活性化窒素とは独立に制御してもよいし、NH3 のような窒素と水素原子を同時に含むガスを用いて同時に活性化してもよい。この場合には、さらにH2 を加えてもよい。また、有機金属化合物から活性水素が遊離生成する条件を用いることもできる。
このようにすることで、基板上には活性化されたIII 族原子、窒素原子が制御された状態で存在し、かつ水素原子がメチル基やエチル基をメタンやエタン等の不活性分子にするために低温にも拘わらず、炭素がほとんど入らないか、極く低量の、膜欠陥が抑えられた非晶質あるいは微結晶の膜が形成できる。
【0042】
活性化手段としては、高周波放電、マイクロ波放電、エレクトロサイクロトロン共鳴方式、またはヘリコンプラズマ方式等を用いることができる。これら活性化手段は、単独で用いても良いし、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。また、高周波発放電同士、マイクロ波放電同士、またはエレクトロンサイクロトロン共鳴方式同士を組み合わせて用いてもよい。
また、高周波放電の場合は、誘導型でも容量型でも良い。異なる活性化手段(励起手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要があり、放電管内と成膜部に圧力差を設けても良い。
また、同一圧力で行う場合、異なる活性化手段(励起手段)、例えば、マイクロ波と高周波放電を用いると、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質制御に有効である。
【0043】
本発明の周期律表におけるIII 族元素を含む有機金属化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、ターシャリーブチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、ターシャリーブチルインジウムなどの液体や固体を気化して単独にあるいはキャリアガスでバブリングすることによって混合状態で使用することができる。
【0044】
本発明の窒素を含む化合物としては、 N2 、NH3 、NF3 、N2H4、メチルヒドラジンなどの気体、液体の窒素化合物を、用いることができる。
【0045】
本発明の非単結晶光半導体は反応性蒸着法やイオンプレーティング、リアクティブスパッターなどにおいては、原料あるいは補助原料に水素が無い場合が多いので、水素を含ませるため、少なくとも活性化された水素の雰囲気下で成膜を行うことにより得ることができる。
【0046】
以下、本発明の非単結晶材料の製造方法を、使用する製造装置とともに、具体的に説明する。図4は、プラズマ活性化MOCVD法に用いる装置の概略図である。
プラズマ活性化MOCVD法は、プラズマを活性化手段とする薄膜作製方法である。図4において、11は真空に排気しうる容器、12は排気口、13は基板ホルダー、14は基板加熱用のヒーター、15,16は容器11に接続された石英管であり、それぞれガス導入管19,20に連通している。また、石英管15にはガス導入管22が接続され、石英管16にはガス導入管22が接続されている。
【0047】
この装置においては、窒素源として、例えば、N2 を用いガス導入管19から石英管15に導入する。マグネトロンを用いたマイクロ波発振器(図示せず)に接続されたマイクロ導波管18に2.45 GHzのマイクロ波が供給され石英管15内に放電を発生させる。これによりN2 が活性化され、活性種が容器11中に導入される。別のガス導入口20から、水素元素源として、例えば、H2 を石英管16に導入する。高周波発振器(図示せず)から高周波コイル17に13.56MHzの高周波を供給し、石英管16内に放電を発生させる。これによりH2 が活性化され、活性種が容器11中に導入される。放電空間の下流側よりトリメチルガリウムをガス導入管22より導入することによって、窒素を活性化した活性種と、水素を活性化した活性種と、トリメチルガリウムとを、反応させ、基板上に水素を含んだ非晶質あるいは微結晶の非単結晶チッ化ガリウム光半導体を成膜することができる。
【0048】
本発明の非単結晶材料が、非晶質あるいは微結晶になるかは、基板の種類、基板温度、ガスの流量・圧力、放電出力等の条件に依存する。また、光学ギャップの値を決定する非単結晶材料の組成は、原料ガスとキャリアガスの濃度・流量に依存する。また、膜厚は、原料ガスとキャリアガスの濃度・流量の他、放電のエネルギーにも依存する。ただし、膜厚の制御に関しては、成膜時間の制御によるものが好ましい。
【0049】
基板の種類は、結晶性の基板あるいは表面をエッチング処理した結晶基板の場合に、微結晶となりやすく、例えば、Si基板等を好適に用いることができる。また、基板温度は、非単結晶とするためには100 ℃〜600 ℃が好ましく、基板温度が300 ℃より高い場合に微結晶になりやすく、好ましい。
【0050】
各種原料ガスの導入は、ガス導入口から行われ、キャリアガスとしては、水素,N2 、メタン、エタンなどの炭化水素、CF4 , C2F6などのハロゲン化炭素などを用いることができる。原料ガスの実質的流量は、膜質等の点で、0.001〜10sccmとすることが好ましい。また、III 族原料ガスの流量が少ない場合に、微結晶になりやすく好ましい。ただし、基板温度とIII 族原料ガスの流量とでは、基板温度の影響の方が大きく、基板温度が300 ℃より高い場合には、III 族族原料ガスの流量が多い場合でも微結晶となりやすい。一方、III 族原料ガスの流量が多く、かつ、放電出力が不足する場合には、有機物的な膜になりやすく、好ましくない。
【0051】
特に、III 族元素を含む有機金属化合物は、放電空間での生膜を避けるため、放電空間の下流側(図3においては、ガス導入管11またはガス導入管12)に設けたガス導入管より導入するのが好ましい。また、数種のIII 族元素を含む有機金属化合物を導入する場合には、同一のガス導入管から導入してもよく、異なるガス導入管から導入しても良い。
【0052】
また、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つ以上の元素を含むガス、あるいはBe,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素を含むガスを導入することによってn型、p型等任意の伝導型の非晶質あるいは微結晶のチッ化物半導体を得ることができる。C の場合には条件によっては有機金属化合物の炭素を使用してもよい。また、これらは、III 族元素を含む有機金属化合物と同様に、放電空間の下流側に設けたガス導入管より導入するのが好ましい。
【0053】
C,Si,Ge,Snの元素源としては、SiH4 , Si2H6 , GeH4 , GeF4 , SnH4 等の化合物を、Be,Mg,Ca,Zn,Srの元素源としては、BeH2 , BeCl2 , BeCl4 ,ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等の化合物をガス状態で用いることができる。
ドーピングの方法としては、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することができる。
【0054】
また、放電出力は、高い場合に、微結晶となりやすく、例えば、水素放電により活性水素を併用して生膜を行った場合には、行なわない場合よりも、微結晶化を進めることができるので好ましい。
【0055】
次に、図1に示した本発明の光半導体素子の製造方法について説明する。
導電性あるいは導電処理した基板1上に、前記のプラズマ活性化MOCVD法を用い、p型(あるいはn型)の非単結晶光半導体からなる第一の中間層6を設け、この上に、Al, Ga, Inの少なくとも一つ以上の元素とチッ素と水素を含む非単結晶からなる第一の層2と、Al, Ga, Inの少なくとも一つ以上の元素とチッ素と水素を含み第一の層より光学ギャップの小さい非単結晶からなる第二の層3とを、原料ガスを一定時間交互に切り替えたり、二つの放電のうち窒素原子を含まない方の放電をon/offすることによって5〜100 Åの層厚で一組以上積層する。これらの層の組成や膜厚の制御は、前記した通り、原料ガスとキャリアガスとの濃度を変えても良いし、また流量を変えても良い、また放電のエネルギーを変えても良い。膜厚の制御に対しては成膜時間の制御によるものが好ましい。この上に、第一の層とおなじ非単結晶からなる第三の層4を積層し、第三の層4上に、n型(あるいはp型)の非単結晶光半導体からなる第二の中間層7を設け、この第二の中間層7上に、透明電極8を積層する。
【0056】
【実施例】
実施例1
図2に示す製造装置を用い、洗浄したAl基板、石英基板、Siウェハーを基板ホルダー13に載せ、排気口12を介して容器11内を真空排気後、ヒーター14により基板を250℃に加熱した。N2 ガスをガス導入管19より直径25mmの石英管15内に1000sccm導入し、マイクロ波導波管18を介して2.45 GHzのマイクロ波を出力250Wにセットしチューナでマッチングを取り放電を行った。この時の反射波は0Wであった。水素ガスはガス導入管20より直径30mmの石英管16内に100sccm導入した。マイクロ波の出力を200Wにセットした。反射波は0Wであった。この状態でガス導入管22より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、直接マスフローコントローラーを通して1sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。成膜を30分行いGaN:H膜を作製した。
次に、ガス導入管22より50℃に保持したトリメチルインジウム(TMIn)を、窒素ガスをキャリアガスとして用い、圧力1.01×105Pa で、マスフローコントローラーを通して3sccm反応領域に導入した。30秒毎にガス導入管22のバルブのon/offを10回行い、GaInN:Hの層が10層となるように、GaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した。各層の厚さは別の単層の実験から、GaInN:H層厚が30Å、GaN:H層厚が20Åと推定した。
その後ガス導入管22のバルブを閉じたままトリメチルガリウム(TMGa)だけで成膜を30分行いGaN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0057】
得られた光半導体素子のGaN:H膜と同じ条件で作製した膜の組成をRBS(ラザフォード・バックースキャタリング)にて測定したところGa/N比1.0で化学量論化となっていた。炭素(C)は5原子%以下であり、酸素(O)は検出できなかった。また、HFS測定による水素は25原子%であった。IRスペクトル測定によって、水素は、Ga-H,N-HとしてこのGaN膜中に含まれていることが確認できた。また、Ga-N吸収は200cm-1でブロードであり非晶質であることがわかった。なお、電子線回折スペクトルでもハローパターンしか検出できず非晶質であることを示していた。光学Gapは3.2eVであった。
また、得られた光半導体素子のGaInN:H膜と同条件で作製した膜の組成をXPSにてRBS測定から校正した補正係数をもちいて測定したところGa/N比は1.0:0.2でありまたNとの比は(Ga+In)/N比1.1でほぼ化学量論化となっていた。単層の光学Gapは2.6eVであった。
得られた光半導体素子の量子井戸構造を持つ多層膜をIRスペクトル測定によって測定したところほぼ単層のGaN:H膜とかわりが無かった。この膜は透明であり光学Gapは3.0eVであった。
【0058】
得られた光半導体素子に、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところ緑色の明確な発光が観測できた。また半透明の金電極を100 Å蒸着し、暗抵抗を測定したところ10+15Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は0.1s以下で明暗比6桁以上の光導電性を示し紫外光の検出も可能であった。
【0059】
比較例1
実施例1と同じ製造装置を用い、同様の状態にセットして、実施例1と同じ基板上に、ガス導入管22より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、直接マスフローコントローラーを通して1sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。ガス導入管22より50℃に保持したトリメチルインジウム(TMIn)を、窒素ガスをキャリアガスとして用い、圧力1.01×105Pa で、マスフローコントローラーを通して3sccm反応領域に導入して、60分間成膜を行いGaInN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0060】
得られた光半導体素子に、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところなんら発光は観測できなかった。金電極を設け、暗抵抗を測定したところ10+9Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は1s以上で明暗比1桁しか光導電性を示さなかった。
【0061】
比較例2
実施例1と同じ製造装置を用い、同様の状態にセットして、実施例1と同じ基板上に、ガス導入管22より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、直接マスフローコントローラーを通して1sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。60分間成膜を行いGaInN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0062】
得られた光半導体素子に、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところ、紫外域も含めて、なんら発光は観測できなかった。暗抵抗を測定したところ10+15Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は0.1s以下で明暗比4桁の光導電性を示した。
【0063】
比較例3
実施例1と同じ製造装置を用い、同様の状態にセットして、実施例1と同じ基板上に、ガス導入管22より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、直接マスフローコントローラーを通して1sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。成膜を30分行いGaN:H膜を作製した。
次に、ガス導入管22より50℃に保持したトリメチルインジウム(TMIn)を、窒素ガスをキャリアガスとして用い、圧力1.01×105Pa で、マスフローコントローラーを通して3sccm反応領域に導入し、5分間連続的に成膜を行い、GaInN:H膜を作製した。推定厚さは300 Åである。
その後ガス導入管22のバルブを閉じたままトリメチルガリウム(TMGa)だけで成膜を30分行いGaN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0064】
得られた光半導体素子は、透明で干渉色が見えた。得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところなんら発光は観測できなかった。暗抵抗を測定したところ10+9Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は1s以上で明暗比1桁しか光導電性を示さなかった。
【0065】
実施例2
図2に示す製造装置を用い、洗浄したAl基板、石英基板、Siウェハーを基板ホルダー13に載せ、排気口12を介して容器11内を真空排気後、ヒーター14により基板を350℃に加熱した。N2 ガスをガス導入管19より直径25mmの石英管5内に1000sccm導入し、マイクロ波導波管18を介して2.45GHzのマイクロ波を出力300Wにセットしチューナでマッチングを取り放電を行った。この時の反射波は0Wであった。水素ガスはガス導入管20より直径30mmの石英管16内に100sccm導入した。マイクロ波の出力を200Wにセットした。反射波は0Wであった。この状態でガス導入管22より−10℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の中に圧力1.01×105 Paの窒素を導入し、直接マスフローコントローラーを通して2sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。成膜を30分行いGaN:H膜を作製した。
次に、ガス導入管22より50℃に保持したトリメチルインジウム(TMIn)を、窒素ガスをキャリアガスとして用い、圧力1.01×105Pa で、マスフローコントローラーを通して2sccm反応領域に導入した。30秒毎にガス導入管22のバルブのon/offを10回行い、GaInN:Hの層が10層となるように、GaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した。各層の厚さは別の単層の実験から、GaInN:H層厚が20Å、GaN:H層厚が15Åと推定した。
その後ガス導入管22のバルブを閉じたままトリメチルガリウム(TMGa)だけで成膜を30分行いGaN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0066】
得られた光半導体素子のGaN:H膜と同じ条件で作製した膜の組成をRBS(ラザフォード・バックースキャタリング)にて測定したところGa/N比0.9で化学量論化となっていた。炭素(C)は12原子%以下であり、酸素(O)は検出できなかった。また、HFS測定による水素は25原子%であった。IRスペクトル測定によって、水素は、Ga-H,N-HとしてこのGaN膜中に含まれていることが確認できた。また、Ga-N吸収はシャープで半値幅が70cm-1であり微結晶的であることがわかった。また電子線回折スペクトルではハローパターンのほかに明確な輝点がピークが見られた。またX線回折測定では複数の回折ピークが測定できた。光学Gapは3.0 eVであった。
また、得られた光半導体素子のGaInN:H膜と同条件で作製した膜の組成をXPSにてRBS測定から校正した補正係数をもちいて測定したところGa/N比は1.0:0.22でありまたNとの比は(Ga+In)/N比1.0 でほぼ化学量論化となっていた。
単層の光学Gapは2.45eVであった。
得られた光半導体素子の量子井戸構造を持つ多層膜をIRスペクトル測定によって測定したところほぼ単層のGaN:H膜とかわりが無かった。この膜は透明であり光学Gapは3.0eVであった。
【0067】
得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところみどり色の明確な発光が観測でき、電流注入発光に必要な発光が得られることがわかった。さらに紫外光ー可視光変換が可能であることがわかった。
また暗抵抗を測定したところ10+9Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は5s以下で明暗比2桁以上の光導電性を示し紫外光の検出も可能であった。
【0068】
実施例3
トリメチルインジウム(TMIn)導入する際に、15秒毎にガス導入管22のバルブのon/offを行いGaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した他は、実施例2と同様にして、光半導体素子を得た。各層の厚さは別の単層の実験から、GaInN:H層厚が10Å、GaN:H層厚が10Åと推定した。
【0069】
得られた光半導体素子のGaN:H膜、GaInN:H膜の組成、光学Gapは、実施例2
と同じであり、量子井戸構造を持つ多層膜の光学Gapは3.0 eVであった。
【0070】
得られた光半導体素子は、透明で干渉色が見えた。得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところ青色の明確な発光が観測でき、電流注入発光に必要な発光が得られることがわかった。さらに、紫外光ー可視光変換が可能であることがわかった。
また、暗抵抗を測定したところ10+9Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は5s以下で明暗比2桁以上の光導電性を示し紫外光の検出も可能であった。
【0071】
実施例4
トリメチルインジウム(TMIn)導入する際に、100 秒毎にガス導入管22のバルブのon/offを行いGaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した他は、実施例1と同様にして、光半導体素子を得た。GaInN:H層とGaN:H層の厚さは別の単層の実験から、各々、100 Åと推定した。
【0072】
得られた光半導体素子のGaN:H膜、GaInN:H膜の組成、光学Gapは、実施例1と同じであり、量子井戸構造を持つ多層膜の光学Gapは3.0 eVであった。
【0073】
得られた光半導体素子は、透明で干渉色が見えた。得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところみどり色の明確な発光が観測でき、電流注入発光に必要な発光が得られることがわかった。さらに、紫外光ー可視光変換が可能であることがわかった。
また、暗抵抗を測定したところ10+15Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は明暗比5桁以上の光導電性を示し紫外光の検出も可能であった。
【0074】
比較例4
トリメチルインジウム(TMIn)導入する際に、2秒毎にガス導入管22のバルブのon/offを行いGaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した他は、実施例2と同様にして、光半導体素子を得た。GaInN:H層とGaN:H層の厚さは別の単層の実験から、各々、2Åと推定した。
【0075】
得られた光半導体素子は、透明で干渉色が見えた。得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところなんら発光は観測できなかった。
【0076】
比較例5
トリメチルインジウム(TMIn)導入する際に、5分毎にガス導入管22のバルブのon/offを5回行い、GaInN:Hの層が5層となるように、GaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した他は、実施例2と同様にして、光半導体素子を得た。GaInN:H層とGaN:H層の厚さは別の単層の実験から、各々、300 Åと推定した。
【0077】
得られた光半導体素子は、透明で干渉色が見えた。得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところなんら発光は観測できなかった。
【0078】
実施例5
ガス導入管22のバルブを開けて、トリメチルインジウム(TMIn)導入を、30秒間導入し、GaInN:Hの層を一層のみとし、GaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した構造を作製した他は、実施例1と同様にして、光半導体素子を得た。各層の厚さは別の単層の実験から、GaInN:H層厚が30Å、GaN:H層厚が20Åと推定
した。
【0079】
得られた光半導体素子のGaN:H膜、GaInN:H膜の組成、光学Gapは実施例1と同じであった。
【0080】
得られた光半導体素子を、室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光をHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところみどり色の明確な発光が観測でき、電流注入発光に必要な発光が得られることがわかった。さらに紫外光ー可視光変換が可能であることがわかった。
【0081】
実施例6
実施例1と同じ装置、同じ基板を用いて、ヒーター14により基板を250℃に加熱した。窒素ガスをガス導入管19より直径25mmの石英管5内に1000sccm導入し、マイクロ波導波管18を介して2.45GHzのマイクロ波を出力250Wにセットしチューナでマッチングを取り放電を行った。この時の反射波は0Wであった。水素ガスはガス導入管20より直径30mmの石英管16内に100sccm導入した。マイクロ波の出力を200Wにセットした。反射波は0Wであった。この状態でガス導入管21より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を直接マスフローコントローラーを通して4sccm導入した。この時バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Paであった。成膜を10分行いGaN:H膜を作製した。
次に、−10℃で保持されたトリメチルアルミニウム(TMA)の蒸気を加えて1sccm導入した。この条件で30秒保持し、その後、TMAのバルブを閉じ、ガス導入管22より20℃に保持したトリメチルインジウム(TMIn)に窒素ガスを圧力1.01×105 Paで導入し、マスフローコントローラーを通して1sccm反応領域に導入した。30秒毎にこの操作を5回繰り返し、AlGaN:H層が5層となるように、AlGaN:H の層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した。さらに、AlGaN:H層を一層積層した。この層の厚さは別の単層の実験から、AlGaN:H層厚が30Å、GaInN:H層厚が25Åと推定した。その後ガス導入管22のバルブを閉じたままトリメチルガリウム(TMGa)で成膜を30分行いGaN:H膜を作製し、光半導体素子を得た。
【0082】
得られた光半導体素子のAlGaN:Hの膜組成は(Al+Ga)/N 比1.05でほぼ化学量論化に等しいことが分かった。光学Gapは3.8eVであった。GaInN:H膜の組成は、(Ga+In)/N 比0.95であり、光学Gapは2.8 eVであった。量子井戸構造を持つ多層膜の光学Gapは3.2 eVであった。
【0083】
得られた光半導体素子を室温にて窒素レーザの337.1nmの紫外光を照射したところオレンジ色の明確な発光が観測できた。またさらにHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところさらにオレンジ色の明確な発光が観測でき、電流注入発光に必要な発光が得られることがわかった。さらに、紫外光ー可視光変換が可能であることがわかった。
また、暗抵抗を測定したところ10+15Ωcmであり、キセノン(Xe)ランプ光を照射したところ、応答は明暗比4桁以上の光導電性を示し紫外光の検出も可能であった。
【0084】
実施例7
実施例2と同じ装置、同じ基板とITO基板を用いて、窒素ガスをガス導入管19より1000sccm導入し、2.45GHzのマイクロ波出力を300Wで放電を行った。さらにH2 ガス300sccmをガス導入管20より導入し、13.56MHzの高周波で出力200Wで放電を行った。ヒーター14により基板ホルダーの温度を250℃とし、この状態でガス導入管22よりトリメチルガリウム0.5sccmと水素ガスで0.1 %に希釈したSiH 4 を導入し、n型のGax N z :Hを成膜した。
次に、トリメチルインジウム(TMIn)導入する際に、トリメチルインジウム流量を半分にした他は、実施例1と同様に、GaInN:Hの層が10層となるように、GaN:Hの層とGaInN:Hの層とを交互に積層した多層構造を作製した。各層の厚さは別の単層の実験から、GaInN:H層厚が30Å、GaN:H層厚が20Åと推定した。
その後トリメチルガリウム(TMGa)とビスペンタジエニルマグネシウムを50℃保持しキャリアガスとともにガス導入管21より10sccm導入し、p型のGaN:Hを5分成膜した。冷却後真空槽から取り出し、真空蒸着器にてAl膜を電極として蒸着し、光半導体素子を得た。
【0085】
得られた光半導体素子のGaN:H膜の組成は、Ga/N比0.95であり、光学Gapは3.1 eVであった。GaInN:H膜の組成は、(Ga+In)/N 比1.0 であり、光学Gapは2.75eVであった。量子井戸構造を持つ多層膜光素子の光学Gapは3.0 eVであった。
【0086】
得られた光半導体素子を、ITO電極と金(Au)電極に10V印加したところ緑色の発光が観測できた。
【0087】
比較例6
実施例1とは基板温度を150 ℃とし、二つのマイクロ波の出力を100Wとし、トリメチルガリウム(TMGa)流量を3sccm とし、トリメチルインジウム(TMIn)流量を5sccm とした以外は、同じ条件で成膜した。GaN:H膜は水素濃度が40原子%であり、Ga/N比1.20であった。また、GaInN:H膜は水素濃度が55原子%であり、(Ga+In)/N 比 1.3であった。これらの多層膜の各々の推定厚さは50Åと70Åと推定した。この膜は透明で少し黄色がかって見えた。この膜を室温にてHe-Cdレーザの連続紫外光を照射したところなんら発光は観測できなかった。また金電極を蒸着して光導電性を測定したところ明暗比一桁以下の光導電性しか示さなかった。
【0088】
以上の実施例、比較例から、本発明の光半導体素子は、本発明のような積層構造をとることにより、広い波長領域で、発光機能を示し、光導電特性と高速応答性に優れていることが分かる。
一方、活性層を、単一の材料で構成した光半導体素子は、光導電特性は示すが、発光機能は発揮しえないことが分かる(比較例1、2)。また、活性層の各層の層厚が200 Åを超えると、発光機能を発揮せず、光導電特性も示さないことが分かる(比較例3、5)。また、活性層の各層の層厚が5Åより小さい場合も、発光機能を発揮せず、光導電特性も示さないことが分かる(比較例4)。さらに水素を50原子%より多く含む層を有する場合は、発光機能を発揮しえないことが分かる(比較例6)。
【0089】
【発明の効果】
本発明の非晶質あるいは微結晶の光半導体素子は、従来の非晶質あるいは微結晶からなる非単結晶半導体に無い発光機能を全波長領域で合わせ持つことができるため光入力や光出力を赤色から紫外までの全領域で可変となる。また、耐光性、耐熱性、耐酸化性にすぐれ、高速応答が可能であるほか、高光透過性と高光感度および高速応答性に優れているので電子デバイスと発光デバイスを組み合せたハイブリッドデバイスにも使用できる。さらに、この光半導体素子単独の場合はもとより、光入力や光出力波長の異なる光半導体素子を順次組み合したタンデム型にすれば可視から紫外域までのはば広い光の有効利用とかつ光入力や光出力の波長多重が可能となり、同時に取り扱える情報量を飛躍的に増加することができ二次元光情報処理素子としても使用することができる。
【0090】
具体的には、高効率太陽電池、高速TFT、電子写真感光体、高感度光センサー、高感度アバランシェ光センサーなどの電子や光導電性また光起電力を利用するデバイスや、大面積LED、ディスプレー、フルカラーフラットディスプレーなどの発光を利用するデバイス、光変調子、光ー光波長変換デバイス、光インターコネクト用素子などの光入力と光出力に関係するデバイス、さらにこれらの機能併せ持つ複合デバイス等が挙げられる。
【0091】
上記の通り、本発明によれば、広範囲の光学ギャップが自由に選べ、優れた光導電特性と高速応答性かつ耐環境特性や耐高温度特性を有し光学的に活性で発光素子としても可能な大面積で安価な新しいオプトエレクトロニクス材料を用いた光半導体素子が提供される。さらに、本発明によれば、本発明の光半導体素子を、安全、かつ、低コストで製造することができる光半導体素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光半導体素子の構造の一例を示す模式的断面図である。
【図2】 本発明の光半導体素子の構造の一例を示す模式的断面図である。
【図3】 Siウェハーを基板として成膜した膜のIRスペクトルの一例を示すスペクトル図である。
【図4】 プラズマ活性化MOCVD法に用いる装置の概略図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第一の層
3 第二の層
4 第三の層
5 構造単位
6 p型中間層
7 n型中間層
8,9 透明電極
10 透明基板
11 真空容器
12 排気口
13 基板ホルダー
14 ヒーター
15,16 石英管
17 高周波コイル
18 マイクロ導波管
19〜22 ガス導入管
Claims (22)
- 基板上に、少なくとも、第一の層と第一の層より光学ギャップの小さい第二の層とを交互に積層し、さらに第二の層の光学ギャップより大きい光学ギャップを有する第三の層を積層してなる構造単位を有する光半導体素子において、
前記光半導体素子が発光素子として構成され、前記第一の層と前記第二の層と前記第三の層が、それぞれ、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と25 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶のIII-V族化合物半導体からなり、前記第二の層の層厚が5〜200Åであることを特徴とする光半導体素子。 - 前記構造単位の両側に、p型中間層とn型中間層を有してなり、該中間層が、Al, Ga, Inの少なくとも一つの元素とチッ素と0.5 原子%以上50原子%以下の水素を含む非単結晶のIII-V族化合物半導体からなることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
- 前記非単結晶のIII-V族化合物半導体の赤外吸収スペクトルにおけるAl, Ga, In原子とN原子の結合を示す吸収ピークの半値幅が、300cm -1 以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
- 前記III-V族化合物半導体に含まれる酸素と炭素との合計が、15原子%以下であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記第一の層の光学ギャップが2.0〜6.5eVの範囲にあることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記第二の層の光学ギャップが前記第一の層の光学ギャップより0.1〜2.5eV小さいことを特徴とする請求項5に記載の光半導体素子。
- 前記第三の層の光学ギャップが前記第二の層の光学ギャップより0.1〜3.0eV大きいことを特徴とする請求項5または6に記載の光半導体素子。
- 前記中間層として、第二の層の光学ギャップより大きい光学ギャップを有する中間層を、少なくとも一つ有してなることを特徴とする請求項2から7までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記中間層として、第二の層の光学ギャップより0.1〜3.0eV大きい光学ギャップを有する中間層を、少なくとも一つ有してなることを特徴とする請求項8に記載の光半導体素子。
- 前記第二の層の光学ギャップより広い光学ギャップを有する中間層の上に、透明電極を積層してなることを特徴とする請求項9に記載の光半導体素子。
- 透明基板上に、前記構造単位を2以上積層してなることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記透明基板上に、透明電極を積層してなることを特徴とする請求項11に記載の光半導体素子。
- 前記非単結晶のIII-V族化合物半導体のAl,Ga,Inの原子数の総和xとチッ素の原子数の総和yの比が、0.5:1.0から1.0:0.5の間にあることを特徴とする請求項1から12までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記n型中間層が、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つの元素を更に含むことを特徴とする請求項2から13までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記p型中間層が、Be,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とする請求項2から14までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 前記中間層が、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つの元素とBe,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素とを、同時に含むことを特徴とする請求項2から14までのいずれか一項に記載の光半導体素子。
- 請求項1から16までのいずれか一項に記載の光半導体素子の製造方法であって、
各層が、有機金属化合物を原料にして形成されたことを特徴とする光半導体素子の製造方法。 - 請求項1から16までのいずれか一項に記載の光半導体素子の製造方法であって、
前記非単結晶のIII-V族化合物半導体からなる層が、Al,Ga,Inから選ばれた少なくとも1つの元素を含む有機金属化合物を原料にして形成されたことを特徴とする光半導体素子の製造方法。 - チッ素を含む化合物を活性化した活性種と、Al,Ga,Inの元素を含む有機金属化合物とを反応させることを特徴とする請求項18に記載の光半導体素子の製造方法。
- チッ素を含む化合物を活性化した活性種と、Al,Ga,Inの元素を含む有機金属化合物とを、活性化水素を含む雰囲気下で、反応させることを特徴とする請求項18または19に記載の光半導体素子の製造方法。
- 活性化手段として、高周波放電及び/又はマイクロ波放電を利用することを特徴とする請求項19または20に記載の光半導体素子の製造方法。
- Al,Ga,Inを含む化合物の少なくとも一種を、前記活性化手段の下流側から導入することを特徴とする請求項21に記載の光半導体素子の製造方法。
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