JP3788293B2 - 回転埋設杭の成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は支持力を向上させた回転埋設杭の成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、埋立地や盛り土した地盤の弱い土地に、木造住宅や鉄骨低層建築を建てる場合には、コンクリート基礎の形状に沿って所定の間隔で、予め地中に杭を打ち込む杭地業を行なってからコンクリート基礎を施工している。
【0003】
この杭地業としては従来から種々の方法が行なわれているが、例えば腐朽しにくい松の木を打ち込む松杭がある。これは松の木の調達が難しく、品質にばらつきがあるので支持力計算ができず、また施工時には重錘による打設しかできないので振動や騒音の問題がある。
【0004】
また従来行なわれている杭打工法は、コンクリート杭や鋼管杭を地中にハンマーで打設する工法で、打設時の振動や騒音により近隣に建物があるところでは施工できない。またこの方法では杭重量も重く運搬が面倒で、価格も高く、しかも3m程度の短いものがないので、施工深さによってはパイルカッターによって杭頭部を切断しなければならず、施工に手間がかかる問題があった。また鋼管の先端にスクリュー羽根を取付けて、これを回転させながら埋設するスクリューパイルもあるが、スクリュー羽根の製作や溶接に手間がかかる上、スクリュー羽根の外径が大きくなるので運搬や保管にかさばり、残土処理の問題もあった。
【0005】
このため本発明者は、図14に示す回転埋設杭1を先に開発した(特許第2893443号)。この回転埋設杭1は鋼管2の先端を紡錘状に形成し、この紡錘部3の周側面に2枚のブレード4、4が対向して突設され、更にこのブレード4、4は図15に示すように鋼管2を埋設する時の回転方向に沿って先端側を角度αで捩じって湾曲させたもので、鋼管2の先端を成形機で押し潰して2枚のブレード4、4を同時に成形できるものである。
【0006】
この回転埋設杭1は、バックホー用のアームの先端に取付けた油圧モータにより、回転埋設杭1を、図16に示すように回転させながら地中に埋め込む。回転埋設杭1の先端には、2枚のブレード4、4が突設されているので、ブレード4、4で土7を掻き取りながら孔6が形成され、またブレード4、4の先端がキリのように側面V形状に形成されているので地中に短時間で埋め込むことができる。
【0007】
この時、ブレード4、4は、先端側が回転埋設杭1の回転方向に捩じられているので、掻き取られた土7がブレード4、4によって上方外側に寄せられ、また紡錘部3と孔6との間隔は上方に向かって狭くなっているので、寄せられた土7は孔6の内壁面に押し付けられて周囲地盤を締め固めるので回転埋設杭1の支持強度を向上させることができる。また掻き取られた土7は孔6の内壁面に押し付けられるので排出土がほとんどなく残土処理も不要である。
【0008】
またこの回転埋設杭1は、鋼管2を地盤調査に基づいて必要な長さに切断し、その先端をプレス成形してブレード4、4を一体に形成できるので製造コストが安く、また2〜5m程度の短い回転埋設杭1を工場で生産することができ、現場での杭頭部の切断作業が不要になるなど種々の利点がある。
【0009】
しかしながらこの回転埋設杭1は、図15に示すように鋼管2の先端を成形機で両側から押し潰して2枚のブレード4、4を同時に成形させるのでブレード4、4の先端が鋼管2の半径の1.4倍程度外側に突出している。このため外側に突出したブレード4、4が回転しながら土7をほぐしてしまうので貫入した回転埋設杭1の摩擦力が低下する問題があった。また地盤の支持力は、回転埋設杭1の底面の断面積に応じた底面支持力と回転埋設杭1の側面と接触する土7との間の摩擦力の合力となるが、従来の回転埋設杭1では周囲の土7を広い範囲でほぐしてしまうので、この摩擦力が低下し、全体の支持力が小さくなる問題がある。
【0010】
更にブレード4の先端が鋼管2の外側に大きく突出しているので、固い地盤に回転させながら貫入するとブレード4が折り曲げられて円滑に埋設できないことがある。またブレード4、4の先端がキリのように側面V形状に形成されているので、石などの固いものに当たると芯がずれて垂直に埋設できないこともあった。またブレード4、4が捩じれているのでプレス型の構造が複雑で高価であるなどの欠点もあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は2枚のブレードが外周側に大きく突出した従来の回転埋設杭の欠点を解消し、全く新しい着想に基づいて開発したもので、製造が容易で、製造装置の構造も簡単で安価であり、ブレードの変形もなく、垂直に埋設できると共に貫入速度が速く、その上、排出土がほとんどなく周囲地盤との密着性が高く摩擦力が増大して支持力を大幅に向上させた回転埋設杭の成形装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の回転埋設杭の成形装置は、下部側をV形状に形成した3個の押し型を120度間隔で放射状に取付けた成形型をプレスのシリンダーの先端に取付け、前記押し型で鋼管の先端側外周から中心に向かって斜めに押圧することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項2記載の回転埋設杭の成形装置は、3個の押し型を120度間隔で放射状に配置し、この押し型の一端側をそれぞれ回動自在に支持すると共に、この押し型の側面にシリンダーの先端をそれぞれ連結して、前記押し型を回動させて、鋼管の先端側外周から中心に向かって斜めに押圧することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図8を参照して詳細に説明する。図1において8は回転埋設杭を示すもので、鋼管2の先端側を外周の3方向から中心に向かって斜めに陥没した谷部9…を形成し、これら谷部9…の間に、先端側が閉塞し、後方側が順次、径方向に膨出した3枚のブレード10…を放射状に突設したものである。
【0015】
また放射状に突設したブレード10…の先端位置は図2に示すように、鋼管2の外径Dの1.1〜0.7に形成されている。また隣接するブレード10、10の間に形成された谷部9の傾斜角度βは、図3に示すように鋼管2の中心軸に対して30〜60度の範囲に傾斜していると共に、3枚のブレード10…が集合した中心部が、ブレード10…の外周側の先端部より軸方向に沿って短く形成されている。
【0016】
この回転埋設杭8の製造方法としては、図6(A)に示すような成形装置13で行なう。この成形装置13は、押し型となる下部側をV形状に形成した3個の押し板14を120度間隔で放射状に取付けた成形型15をプレスのシリンダー16の先端に取付けたものである。更に下部側をV形状に形成した3個の押し板14の対向する内側の傾斜面の傾斜角度は、シリンダー16の中心軸に対して30〜60度の範囲に規定されている。
【0017】
この成形装置13の下方に鋼管2を配置して固定し、シリンダー16を伸出させていくと、図6(B)に示すように鋼管2の先端側が3個の押し板14の対向する内側の傾斜面で3方向から次第に押し潰され、押し板14で押された部分に谷部9が形成されると共に、これら谷部9…の間に、3枚のブレード10…が放射状に形成される。この場合、谷部9の傾斜角度βは、下部側をV形状に形成した押し板14の対向する内側の傾斜面の傾斜角度に等しく成型される。
【0018】
また押し板14の対向する内側の傾斜面は傾斜しているので、形成されたブレード10…は先端側が閉塞し、後方側が順次、膨出した形状となる。つまり図4のaーa、bーb、cーc、dーd断面を示すと図5の(A)〜(D)に示すように先端から後方側に向かってブレード10…が順次、周方向に膨出した形状となる。
【0019】
また鋼管2の先端側を3個の押し板14で3方向から次第に押し潰すので、押し板14で押された部分は、内側に下降しながら中心部で3方向から集合し、図4に示すように、ブレード10…の集合した中心部が、ブレード10…の外周側の先端部より軸方向に沿って短く形成される。このようにプレスで成型する場合には、従来のように複雑な型が不要で、通常のプレス装置に押し板14を組合せた成形型15を取り付けるだけで簡単に成型することができる。
【0020】
上記構成の回転埋設杭8を埋設する場合、埋設現場では図7に示すように、バックホーのアーム17の先端に油圧モータ18を取付け、ここにブレード10…を下にして回転埋設杭8の上端を押えて垂直に支持させる。
【0021】
次に油圧モータ18により回転埋設杭8を回転させながら地中5に埋め込んでいく。回転埋設杭8の先端には、3枚のブレード10…が等間隔に突設されているので、ブレード10で土7を掻き取りながら孔6が形成されていく。この場合、図8に示すようにブレード10…の集合した中心部が、ブレード10…の外周側の先端部より短く形成されているので、ブレード10…の先端部の3か所が同一円周上を回転しながら先に食い込んで行き、従来のキリ状に尖った回転埋設杭8のように石などに当っても芯ずれすることがなく垂直に貫入することができる。
【0022】
またブレード10は回転しながら先端で土7を掻き取り、図5の(A)〜(D)に示すように先端から後方側に向かってブレード10…が順次、周方向に膨出した形状となっているので、掻き取られた土7は速やかに外側に排出され、排出された土7は孔6の内壁面に押し付けられて周囲地盤を締め固める。
【0023】
この場合、ブレード10…の先端位置は図2に示すように、鋼管2の半径Rの 1.1〜0.7に形成され、従来のブレード4、4のように鋼管2の外周から大きく突出していないので周囲の土7を広い範囲にわたってほぐすことがなく地盤を強く締め固めるので、埋設された回転埋設杭8と周囲地盤との間の摩擦力を大幅に増大させることができる。なおブレード10の先端位置が鋼管半径Rの1.1を超えると周囲の土7が広い範囲にわたってほぐされるので埋設した回転埋設杭8の摩擦力が小さくなる上、固い地盤ではブレード10が折れ曲がる恐れがあり、また鋼管半径Rの0.7より小さいとブレード10の幅が狭くなり土7を掻き取る効率が悪くなる。
【0024】
また谷部9の傾斜角度βは図3に示すように、鋼管2の中心軸に対して30〜60度の範囲に傾斜しているので、土7の掻き取り作用と、円滑な排出作用を同時に行なう最適なブレード10の長さに設定することができる。この場合、谷部9の傾斜角度βが鋼管2の中心軸に対して30度未満であるとブレード10が長くなり土7が円滑に排出されず土7が谷部9に詰まって共回りしてしまう恐れがある。また谷部9の傾斜角度βが60度を越えるとブレード10が短くなり、土7の掻き取り作用が低下して貫入速度が遅くなる。更に三角形状に形成した3枚の押し板14の傾斜角度は、シリンダー16の中心軸に対して30〜60度の範囲に規定されている。この場合、谷部9の傾斜角度βは、三角形状に形成した押し板14の傾斜角度に等しく成型されるので、押し板14の傾斜角度も30〜60度の範囲に規定されている。
【0025】
図9は本発明の他の成形装置13を示すもので、押し型となる3個の押し板14を120度間隔で放射状に配置し、この押し板14の一端側をそれぞれ回動自在に支持すると共に、この側面にシリンダー16の先端をそれぞれ連結したものである。この成形装置13は図9(A)に示すように、放射状に配置した3個の押し板14…の間に鋼管2の先端を設置し、シリンダー16…を伸出させて押し板14を回動させることにより、図9(B)に示すように鋼管2の先端側外周を押し潰して谷部9を形成するようにしたものである。
【0026】
図10は本発明の他の実施の形態を示すもので、短い鋼管2aの先端側を外周の3方向から中心に向かって斜めに陥没した谷部9を形成し、これら谷部9の間に、先端側が閉塞し、後方側が順次膨出した3枚のブレード10…を放射状に突設すると共に、鋼管2aの後端側をラッパ状にしてラッパ状拡大部22を形成したものである。これは鋼管2の下部内側に下型を置いて図6の成形装置13でプレス加工すると、ブレード10…とラッパ状拡大部22とを同時に成形することができる。
【0027】
このようにブレード10とラッパ状拡大部22を形成した短い鋼管2aを別に成型しておき、これを図11に示すように、ラッパ状拡大部22の内側に長い直状鋼管2の先端を挿入して溶接し一体に接合して回転埋設杭8としたものである。この回転埋設杭8は短い鋼管2aを別個に成型するのでプレス作業が容易であり、またこの状態で現場に搬入して、現場で長い鋼管2と溶接しても良い。この回転埋設杭8はプレス成形が容易な上、摩擦力が大きく、しかもラッパ状拡大部22の断面積が拡大しているので底面支持力が増大する。この底面支持力は半径の二乗に比例するので、ラッパ状拡大部22が僅かに大きくなるだけで底面支持力を大幅に向上させることができる。
【0028】
図12および図13は本発明の他の実施の形態を示すもので、後端側にラッパ状拡大部22を形成した上記構成の短い鋼管2aの、ラッパ状拡大部22に等間隔で3カ所にV形スリット23を形成し、ここの部分を先端側に切り起こして推進刃24を形成したものである。このように形成した鋼管2aのラッパ状拡大部22の内側に長い鋼管2の先端を挿入して溶接し一体に接合して回転埋設杭8としたものである。
【0029】
この回転埋設杭8は、ラッパ状拡大部22に推進刃24が等間隔で形成されているので、回転埋設杭8の回転に伴い、下方に傾斜して切り起こした推進刃24が土に食い込んで、V形スリット23の隙間から土が上方側に円滑に送られ、効率よく下方に推進して埋設することができる。従ってラッパ状拡大部22を多少大きくしても円滑に貫入できると共に、底面支持力を大幅に向上させることができる。
【0030】
なおブレード10…が5枚以上になるとブレード10…の幅が狭くなり、谷部9に土7が詰まって共回りしてしまうので、土7を掻き取る作用が低下してくる。このため本発明では、ブレード10…の枚数を3枚に規定した。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係る回転埋設杭の製造方法によれば、極めて簡単な構造により、鋼管の先端側を外周の3方向から中心に向かって斜めに陥没した谷部を形成して、3枚のブレードを放射状に突設したので、製造が容易で、ブレードが鋼管の外周側にほとんど突設していないのでブレードの変形もなく、垂直に埋設できると共に貫入速度が速く、その上、排出土がほとんどなく周囲地盤との密着性が高く摩擦力が増大して支持力を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による3枚ブレードの回転埋設杭を示す斜視図である。
【図2】図1の回転埋設杭を示す平面図である。
【図3】図1の回転埋設杭を示す縦断面図である。
【図4】図1の回転埋設杭を示す正面図である。
【図5】図4の回転埋設杭を、高さの異なる位置で水平に破断した断面図である。
【図6】成形装置により回転埋設杭を成形する状態を示す説明図である。
【図7】回転埋設杭を地中に貫入している状態を示す正面図である。
【図8】回転埋設杭が地中に貫入していく状態を示す説明図である。
【図9】本発明の他の成形装置により回転埋設杭を成形する状態を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施の形態による拡大部を形成した回転埋設杭の頭部を示す斜視図である。
【図11】図10の成形した鋼管に、直状の鋼管の先端に接合した回転埋設杭の断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態による拡大部に推進刃を形成した回転埋設杭の頭部を示す斜視図である。
【図13】図12の成形した鋼管を示す平面図である。
【図14】従来の回転埋設杭を示す正面図である。
【図15】図14の回転埋設杭を示す底面図である。
【図16】図15の回転埋設杭を埋設している状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 回転埋設杭
4 ブレード
8 回転埋設杭
9 谷部
10 ブレード
11 膨出部
13 成形装置
14 押し板
15 成形型
16 シリンダー
23 V形スリット
24 推進刃
Claims (2)
- 下部側をV形状に形成した3個の押し型を120度間隔で放射状に取付けた成形型をプレスのシリンダーの先端に取付け、前記押し型で鋼管の先端側外周から中心に向かって斜めに押圧することを特徴とする回転埋設杭の成形装置。
- 3個の押し型を120度間隔で放射状に配置し、この押し型の一端側をそれぞれ回動自在に支持すると共に、この押し型の側面にシリンダーの先端をそれぞれ連結して、前記押し型を回動させて、鋼管の先端側外周から中心に向かって斜めに押圧することを特徴とする回転埋設杭の成形装置。
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