JP3785830B2 - 鉄系酸素吸収性樹脂組成物及びこれを用いた包装材料・容器 - Google Patents

鉄系酸素吸収性樹脂組成物及びこれを用いた包装材料・容器 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鉄の酸化反応により酸素吸収性能を発現する樹脂組成物及びこれを用いた包装材料・容器に関する。さらに詳しくは、酸素吸収性能が良好であると同時に、保存中における水素の発生量が抑制された鉄系酸素吸収性樹脂組成物及びそれを用いた包装材料・容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
包材自体に酸素吸収機能を付与するため、脱酸素剤を熱可塑性樹脂中に配合した酸素吸収性樹脂組成物を用いて包装材料を製造する方法は従来より知られており、例えば特公昭62−1824で開示がある。
【0003】
脱酸素剤には、様々な無機系及び有機系のものが知られているが、脱酸素性能、加工時の高温に耐える熱安定性、経済性及び衛生性の観点から、鉄粉と酸化促進剤からなるものが好適に用いられる。脱酸素剤を包装材料の構成成分とするために熱可塑性樹脂に配合する場合は、脱酸素剤の周囲に樹脂が存在することにより、粉末形態の場合と比べて酸素及び水と接触する割合が非常に少ないため、被包装物の酸化防止効果を満足させるためには、より一層の脱酸素活性が求められる。
【0004】
鉄系脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合した酸素吸収性樹脂組成物においては、以上のように鉄系の粉末形態で使用する脱酸素剤に比べて非常に脱酸素活性の高い脱酸素剤が選択される。これを用いた包装材料によって内容物を密封することによって、急速に内部の酸素が吸収され内容物の酸化劣化が効果的に防止される。
【0005】
ところが、酸素吸収が終了し内部が無酸素状態になると、未反応の活性な鉄粉が内部に存在する水を還元して水素を発生するという問題が生じ、発生量が多いと密封包装材料が破裂する危険性がある。水素自体は無味無臭無色無毒の気体ではあるが、可燃性であり爆発的に燃焼するため、該包装材料を用いた商品の流通時及び使用時に引火燃焼する危険性もある。この現象は、鉄系の小袋状脱酸素剤のような粉末系の場合にも生じるが、熱可塑性樹脂に配合する目的の鉄系脱酸素剤に比べると脱酸素活性を低く設定できるため、それほど大きな問題とはならない。
【0006】
かかる現象を抑えるために、該酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料で内容物を密封する場合において、内部の酸素吸収が終了した時点で酸素吸収性樹脂組成物中の鉄粉が実質的に全て酸化され、未反応の活性な鉄粉が存在しない状態になるように樹脂に配合する鉄粉の量を調整する方法が考えられる。しかし、前記のように樹脂に配合する脱酸素剤においては高脱酸素活性が必要であるため、密封された包装材料内部の酸素吸収に必要な鉄粉より過剰な鉄粉がどうしても必要であり、包装後の保管時に発生する水素量を効果的なレベルに抑制することはできない。
【0007】
前記の特公昭62−1824においては、脱酸素剤を熱可塑性樹脂中に配合した酸素吸収性樹脂組成物を用いて包装材料を製造する提案をしてはいるが、水素発生に関する開示は全くない。
【0008】
鉄系脱酸素剤より発生する水素を抑制する方法として、特公昭54−476は硫黄を0.05−5重量%含有する鉄を使用することを開示している。しかしながら、硫黄含有鉄を使用した場合は異臭発生の原因となる可能性があり、特に内容物が食品の場合は微妙な風味の維持が重要であるため、硫黄含有鉄を配合した酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料の使用は困難である。また、該公報本文中には、水素発生の一層の抑制を主目的とする助剤として粘結剤、多価アルコールまたはアルカリ物質を添加することが記載されており、その具体例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の第三リン酸塩、第二リン酸塩を提示している。しかしながら、硫黄含有鉄の効果に対するあくまでも助剤としての位置づけであり、更に粉末系の鉄系脱酸素剤に関する効果について述べているだけであり、熱可塑性樹脂に配合するための脱酸素剤についての記載はない。
【0009】
特開平9−271661は、鉄に100μm以下のシリカ粉末を添加することにより水素の発生が抑制された脱酸素剤を開示している。しかし、この場合においても、粉末系の鉄系脱酸素剤に関する効果について述べているだけであり、熱可塑性樹脂に配合するための脱酸素剤についての記載はない。
【0010】
熱可塑性樹脂に配合するための鉄系脱酸素剤については、脱酸素剤の周囲に樹脂が存在することにより、粉末形態の場合と比べて酸素及び水と接触する割合が非常に少なく、鉄の脱酸素活性が少しでも低下すると酸素吸収性樹脂組成物としての脱酸素能は急激に低下するため、実用上使用できなくなることがある。そこで、粉末系脱酸素剤の添加剤として使用可能であるからといって、それをそのまま熱可塑性樹脂に配合するための脱酸素剤に使用できるとは言い難い。
【0011】
特開平10−114371は、熱可塑性樹脂に配合するための脱酸素剤として例示されている中に、還元性を有する金属粉とアルカリ金属、アルカリ土類金属の第三リン酸塩、第二リン酸塩、ハロゲン化物等とを組み合わせて使用できるとの開示はあるものの、水素発生抑制に関する記載は全くなく、また本発明の必要条件であるハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属及びリン酸塩それぞれの配合量に関する記載はない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前項記載の従来技術の背景下に、本発明の課題は、酸素吸収性能が良好であると同時に、保存中における水素の発生量が抑制された鉄系酸素吸収性樹脂組成物及びこれを用いた包装材料・容器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこの課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、保存中における水素の発生量が抑制をリン酸塩で検討する中で、鉄粉に対する酸化促進剤及びリン酸塩の比率が重要なことをみいだし本発明を完成させた。すなわち、本発明は平均粒径が100μm以下の鉄粉及び酸化促進剤としてハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属を含有する脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合した酸素吸収性樹脂組成物において、酸化促進剤の配合量が鉄粉に対して3乃至25重量%であり、ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウムから選ばれるピロリン酸塩の配合量が鉄粉に対して0.1乃至10重量%であることを特徴とする鉄系酸素吸収性樹脂組成物及びこれを用いた包装材料・容器である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられる鉄粉については、熱可塑性樹脂中に配合するため高脱酸素活性が必要であり、平均粒径としては100μm以下であることが必要で、50μm以下であることがより好ましい。また、粒径が小さいものは脱酸素活性が優れるものの、粒径が小さくなるほどコストが高くなり非経済的であると同時に、取扱中に発火する危険性がある。そこで、平均粒径としては5μm以上が好ましい。鉄粉の種類としては特に制限はなく、還元鉄粉、噴霧鉄粉等の鉄粉の他、鋳鉄、鋼鉄屑、研削鉄屑の破砕物が用いられる。
【0016】
鉄粉の酸化促進剤としては、促進効果が非常に大きく且つ衛生的及び経済的であるハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属が最も好ましい。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。これらは単一の化合物を用いても、いくつかを混合して用いても良い。
【0017】
酸化促進剤は、鉄粉と単にブレンドした後熱可塑性樹脂に配合するだけでも効果を発揮するが、鉄粉表面に接触している量が多い場合が最も効果的に働く。そこで、酸化促進剤を鉄粉表面にコーティングすることが好ましい。コーティング方法としては、内部を窒素などの不活性気体で置換した振動ミル等の乾式ミリング装置中に所定粒径の鉄粉と酸化促進剤を投入し、酸化促進剤を粉砕しつつ鉄粉の表面にコーティングする乾式法が挙げられる。また、酸化促進剤が溶解した水もしくはアルコール溶液を所定粒径の鉄粉に噴霧し、攪拌もしくはニーディングしながら真空ポンプで減圧乾燥させることにより酸化促進剤を鉄粉の表面にコーティングする湿式法も適用できる。
【0018】
酸化促進剤の添加量としては、鉄粉に対して1乃至30重量%であり、さらに好ましくは3乃至25%である。添加量が1重量%以下である場合は十分な鉄粉の酸化促進効果が得られず、また、添加量が30重量%で酸化促進効果が飽和するため、それ以上添加しても酸化促進効果は上昇しない。前記のコーティング法を採用した場合は、そのコーティング効率によって添加量を減らすことが可能となるが、それでも添加量が1重量%以下になると十分な鉄粉の酸化促進効果は得られなくなる。
【0019】
本発明においては前記鉄の酸化促進剤に加えて、包装材料として内容物を密封包装した状態で保管中に発生する水素の量を抑制するために、リン酸塩を添加することが大きな特徴である。
【0020】
一般にリン酸塩類は金属材料の腐食抑制剤に用いられる。その抑制機構としては、溶出した金属イオンと反応して難溶性の腐食生成物皮膜を表面に析出させ、これが層となって金属表面を覆うことによりその後の腐食の進行を抑制する、とされている。
【0021】
リン酸塩の添加に対しては、鉄の酸化促進剤として促進効果の大きなハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属を使用することが必須である。この2つを組み合わせることにより、包装材料として内容物を密封包装した際に、内部の酸素が存在する状況では鉄の酸化が進行し内部を速やかに無酸素状態にし、それから以降はリン酸塩の鉄腐食抑制効果が作用するため、鉄の酸化と同時に起こる水の還元による水素発生反応が抑制される。鉄の酸化促進剤として促進効果のより小さなものを使用した場合は、内部の酸素が存在する状況においても鉄の酸化反応が抑制されてしまい、水素発生は抑制されても肝心の脱酸素機能も低下するため好ましくない。
【0022】
前記のリン酸塩の鉄腐食(酸化)抑制効果を考慮すると、その添加量は多すぎてはならない。一方鉄の酸化反応は、アルカリ性条件下では抑制されることが知られている。リン酸塩の中にはアルカリ性の物質も存在するが、添加量をあまり多くしないこと及び酸化促進剤として促進効果の大きなハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属を選択することにより、リン酸塩の添加による実質的な脱酸素能低下を防ぐことができる。このような観点から、リン酸塩の添加量は鉄粉に対して0.05乃至10重量%であり、さらに好ましくは0.1乃至10重量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明に適用できるリン酸塩を具体的に例示するならば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を陽イオンとする第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸、ポリリン酸塩等が挙げられ、これらの混合物であっても一向に差し支えない。
【0024】
本発明で選択されるリン酸塩としては、第一リン酸塩、第二リン酸塩もしくは第三リン酸塩のようなモノリン酸塩でも良いが、モノリン酸が二分子以上縮合した縮合リン酸の塩がより好ましい。この理由として、第一には、縮合リン酸塩の方が前記の金属腐食抑制剤には適していることが知られており、本目的にも適していることが挙げられる。第二には、モノリン酸塩は本発明の樹脂組成物を包装材料に加工する際の熱により縮合する可能性があり、縮合反応が起こった場合水蒸気が発生するため、製膜時に発泡現象となって現れうまく包装材料としての加工ができない恐れがあることが挙げられる。
【0025】
また、本発明で選択されるリン酸塩としては、水溶性であることがより好ましい。水溶性でないものは無酸素状態になってからの水素発生抑制に対する添加効果が発現しにくいか発現するまでに時間がかかる。
【0026】
本発明における前記リン酸塩としては、縮合リン酸塩であることがより好ましい。
【0027】
更に、本発明における前記リン酸塩としては、ピロリン酸、メタリン酸もしくはポリリン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることがより好ましい。
【0028】
以上のことを総合すると、本発明で選択されるリン酸塩としては、ピロリン酸、メタリン酸もしくはポリリン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が最も好ましい。
【0029】
リン酸塩の添加方法としては特に制限はないが、例えば、1)酸化促進剤を鉄粉とブレンドする際に一緒に添加し、しかる後熱可塑性樹脂に配合する方法、2)酸化促進剤を鉄粉表面にコーティングする際に添加し、しかる後熱可塑性樹脂に配合する方法、3)鉄粉と酸化促進剤を熱可塑性樹脂に配合したマスターバッチ及びリン酸塩を熱可塑性樹脂に配合したマスターバッチを各々あらかじめ作製し、しかる後両者を、必要な場合は更に熱可塑性樹脂も加えて混合混練する方法、等適当に選択すればよい。
【0030】
本発明の鉄系脱酸素剤を配合する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、具体的にはポリオレフィンとして、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン及びこれらの共重合体等が挙げられる。また、ビニル化合物として、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。また、この他にも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、6−ナイロン等のポリアミド、アクリル酸もしくはアクリル酸エステルとエチレンの共重合体及びアイオノマー等の熱可塑性樹脂が使用可能であり、これらの混合物であっても一向に差し支えない。
【0031】
鉄系脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合する方法としては、二軸押出し機等の混練機を用いて、加熱溶融された熱可塑性樹脂中で鉄系脱酸素剤を混練・分散される方法が好ましく、次工程の包装材料化のためには得られた鉄系酸素吸収性樹脂組成物をペレット化することが好ましい。また、前記のリン酸塩のマスターバッチを作製する場合も同様に行えばよい。
【0032】
本発明の鉄系酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料は、フィルム、シート、カップ、トレー等の様々な形態となり得る。本包装材料の適用目的が内容物を密封包装した際に内部の酸素を吸収することであることから、包装材料の構成としては、鉄系酸素吸収性樹脂層の外側に酸素バリアー層が包装材料全面に配置されていることが必須である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明の内容を説明・例示するが本発明の内容は実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
平均粒径10μmの鉄粉に、鉄粉に対する重量比率が表1に示されるように粉末状の無水塩化カルシウム及び各種リン酸塩を添加し、内部を窒素ガスで置換した振動ミルを用いて無水塩化カルシウム及びリン酸塩の粉砕と鉄粉へのコーティングを行い、脱酸素剤を得た。次に得られた脱酸素剤を、サイドフィード方式によりベント付き2軸の押出混練機を用いて、鉄粉含有量が重量換算で20%になるように低密度ポリエチレンに混練し、次いで得られたストランドをペレタイザーでペレット化することにより、酸素吸収性樹脂組成物Aを得た。得られた酸素吸収性樹脂組成物Aは、熱プレス機を用いて110℃にて厚み500μmのシートに成型した後、一辺が10cmの正方形に切り出して評価用に用いた。
【0035】
(脱酸素能の測定)
層構成がポリエチレンテレフタレート[PET]/アルミ箔/無延伸ポリプロピレン[CPP]からなる平パウチに、前記評価用シートを空気50ml(酸素として10.5ml)及び水5mlと共に封入し、60℃のオーブンにて60分加熱処理を行った直後のパウチ内部の気体の組成をガスクロマトグラフィーで測定することによって酸素吸収量を導いた。結果を表1に示す。
【0036】(水素発生量の測定)
層構成がPET/アルミ箔/CPPからなる平パウチに、前記評価用シートを空気がなるべく入らないようにして水5mlと共に封入し、60℃のオーブンにて48時間加熱処理を行った直後のパウチ内部の気体の量を水上捕集にて、組成をガスクロマトグラフィーにて測定することによって、水素発生量を導いた。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1]
リン酸塩を添加しないことを除いて実施例1と全く同様の操作を行い、酸素吸収量と水素発生量を測定した結果を表1に示す。
【0038】
[比較例2]
実施例1において、リン酸塩を水酸化カルシウムに変更した以外は全く同じ操作を行い、酸素吸収量と水素発生量を測定した結果を表1に示す。
【0039】
[比較例3]
実施例1において、リン酸塩としてピロリン酸カリウムを用い、塩化カルシウムとリン酸塩の添加量を表1に示すように変更した以外は全く同じ操作を行い、酸素吸収量と水素発生量を測定した結果を表1に示す。
【0040】
以上の結果は、鉄粉を主成分とする酸素吸収性樹脂組成物において、本発明の添加量の範囲でハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属及びリン酸塩を添加することにより、脱酸素能をほとんど落とすことなく水素発生量を効果的に抑制していることを示している。本発明の範囲外の添加量では高脱酸素能と少水素発生量を両方とも満足できないか、あるいは添加量を増やした効果が現れていない。また、水酸化カルシウム添加では水素発生を抑制すると同時に脱酸素能も落としてしまう。
【0041】
【表1】
Figure 0003785830
【0042】
[実施例2]
平均粒径10μmの鉄粉に、粉末状の無水塩化カルシウム及び表2に示されるリン酸塩をそれぞれ鉄粉に対して20重量%及び1重量%添加し、内部を窒素ガスで置換した振動ミルを用いて無水塩化カルシウム及びリン酸塩の粉砕と鉄粉へのコーティングを行い、脱酸素剤を得た。次に得られた脱酸素剤を、サイドフィード方式によりベント付き2軸の押出混練機を用いて、鉄粉含有量が20重量%になるようにポリプロピレンに混練し、次いで得られたストランドをペレタイザーでペレット化することにより、酸素吸収性樹脂組成物Bを得た。
【0043】
通常のドライラミネート法によりウレタン系接着剤にてラミネートされたPET/アルミ箔/延伸ナイロン(15μm)/CPP(30μm)と酸化チタン含有白色無延伸ポリプロピレン[CPPw](30μm)との間に、押出機を用いて前記酸素吸収剤含有樹脂組成物BをTダイより押出し、酸素吸収層(40μm)を形成して本発明の酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料を得た。構成は下記のようになる。
PET/アルミ箔/延伸ナイロン(15μm)/CPP(30μm)/酸素吸収層(40μm)/CPPw(30μm)
【0044】
得られた包装材料2枚を側面とし、PET/アルミ箔/延伸ナイロン(15μm)/CPP(60μm)を底面とする内容量250ml用のスタンディングパウチを製袋機にて調製した。ヒートシール部を除いた酸素吸収性包装材料の内面積は350cm2であった。
【0045】
パウチ中にクラムチャウダー・スープ250gを空気20mlと共に封入し、125℃で20分レトルト処理を行なった。レトルト処理直後及び24℃で1年間保管したパウチについて、ヘッドスペース気体の量を水上捕集にて、組成をガスクロマトグラフィーにて分析を行い、酸素濃度と水素発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
[比較例4]
リン酸塩を添加しないことを除いて実施例2と全く同様の操作を行って調製したパウチを用いて、実施例2と同様にクラムチャウダー・スープについて行った結果を表2に示す。
【0047】
以上の結果は、リン酸塩の添加が脱酸素能をほとんど落とすことなく水素発生量を効果的に抑制していることを示している。
【0048】
【表2】
Figure 0003785830
【0049】
[実施例3]
実施例2で調製したパウチ中に、脱気水225mlと良く洗った白米25gを空気10mlと共に封入し、125℃で10分レトルト処理を行いお粥を調製した。レトルト処理直及び24℃で1年間保管したパウチについて、ヘッドスペース気体の量を水上捕集にて、組成をガスクロマトグラフィーにて分析を行い、酸素濃度と水素発生量を測定した。結果を表3に示す。
【0050】
[比較例5]
比較例4で調製したパウチを用いて、実施例3と同様にお粥ついて行った結果を表3に示す。
【0051】
以上の結果は、リン酸塩の添加が脱酸素能をほとんど落とすことなく水素発生量を効果的に抑制していることを示している。
【0052】
【表3】
Figure 0003785830
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、鉄粉及び酸化促進剤としてハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属を含有する脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合した酸素吸収性樹脂組成物において、リン酸塩を適切量添加することにより、該酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料で内容物を密封包装した際に、内部の酸素を速やかに吸収すると共に、保存中の水素発生量を抑制することができる。このことにより、該包材で密封した商品の流通時や使用時に引火したり破裂したりする危険を避けることができる。

Claims (2)

  1. 平均粒径が100μm以下の鉄粉及び酸化促進剤としてハロゲン化アルカリ金属もしくはハロゲン化アルカリ土類金属を含有し更にリン酸塩をも含有する脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合した酸素吸収性樹脂組成物において、酸化促進剤の配合量が鉄粉に対して3乃至25重量%であり、ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウムから選ばれるピロリン酸塩の配合量が鉄粉に対して0.1乃至10重量%であることを特徴とする鉄系酸素吸収性樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の鉄系酸素吸収性樹脂組成物を用いた包装材料及び容器。
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