JP3785716B2 - フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた赤外線吸収能を有するフィルムであって、優れた赤外線吸収能を保持しつつ耐磨耗性、耐擦傷性に優れた赤外線吸収能を有するフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、熱線としての赤外線を遮断し保温、断熱の性能を付与したり、電子機器のノイズ防止フィルタとして使用するために、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明基材に赤外線吸収能を付与する要求が強い。
【0003】
従来、透明基材に赤外線吸収能を付与する方法としては、(1)透明基材自体に赤外線吸収剤を混入配合する方法、(2)スパッタ等の気層製膜法で赤外線吸収性薄膜を透明基材表面に直接形成する方法、が提案されている。(1)の方法では、赤外線吸収剤混入時に高い加工温度を必要とするため使用しうる赤外線吸収剤が著しく限定される問題がある。(2)の方法では、多額の設備投資が必要となり多品種生産には適合せず、薄膜の種類によっては耐湿性、耐薬品性、耐久性等が充分ではない問題がある。
【0004】
このような問題を改良するために赤外線吸収剤を溶解した樹脂層を透明基材にコーティングしたり積層する方法が種々提案された(例えば特開平4−160037、特開平5−42622)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、大量の赤外線吸収剤の添加に伴い樹脂層の可塑化が起こり、耐擦傷性が不充分になるという問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、耐擦傷性を向上させる方法を鋭意検討した結果、赤外線吸収剤を含有した合成樹脂と自己修復性、耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂を積層することにより上述の問題を解決しうることを見いだし、本発明を完成するに到った。本発明は下記発明である。
【0007】
【0008】
自己修復性および耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂(A)の層とポリウレタン樹脂(A)以外の合成樹脂(B)の層とを含み、少なくとも片面がポリウレタン樹脂(A)の表面層であり、かつ合成樹脂(B)が最大吸収波長が750〜1100nmである赤外線吸収剤を含有する積層体からなるフィルムであり、
前記ポリウレタン樹脂(A)の層は、官能基数2〜3であるポリエステル系のポリオールと、脂肪族もしくは脂環族のジイソシアネートまたは3価以上のポリイソシアネートとから反応性キャスティング法により得られた層であり、
前記合成樹脂(B)の層は、合成樹脂(B)の溶液をキャストし溶剤を乾燥除去して得られた層または押し出し成形法で得られた層であるフィルム。
【0009】
【発明の実施の形態】
[ポリウレタン樹脂(A)]
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)は自己修復性および耐擦傷性を有する。ポリウレタン樹脂(A)は透明であることが好ましい。このようなポリウレタン樹脂は公知である(例えば特開昭60−222249、特開昭61−281118参照)。
【0010】
透明で自己修復性および耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂(A)は、熱硬化性ポリウレタン樹脂である。
【0011】
熱硬化性ポリウレタン樹脂は多官能性活性水素化合物(ポリオール類)とポリイソシアネートからなる反応性主原料のうち、少なくとも一方の原料の少なくともその一部として3官能性以上の化合物を使用することによって得られるポリウレタン樹脂である。これに対して熱可塑性ポリウレタン樹脂はすべて2官能性の原料を用いて得られるポリウレタン樹脂である。
【0012】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)は、耐薬品性、耐汚染性、耐久性の観点から熱硬化性ポリウレタン樹脂である。以下に熱硬化性ポリウレタン樹脂について説明する。
【0013】
多官能性活性水素化合物としては、耐久性、価格、強度と耐擦傷性、自己修復性のバランスからポリエステル系のポリオールである。環状エステル、特にカプロラクトン、を開環して得られるポリエステル系ポリオールが特に好ましい。
【0014】
ポリオールの官能基数は、平均値として1より大きいことを要し、強度、伸度、自己修復性、耐擦傷性のバランスの観点から、2〜3である。
【0015】
ポリオールはトリオールのみ(2種以上のトリオール混合物であってもよい)またはトリオールとジオールの混合物が好ましい。各々のポリオールの水酸基価は特に限定されないが、全ポリオールの平均水酸基価は100〜600が好ましく、200〜500がより好ましい。このポリオールは短鎖ポリオールである鎖延長剤を含んでもよく、平均水酸基価はこれを含めて計算した平均水酸基価である。
【0016】
使用可能な鎖延長剤としては、短鎖ポリオール、短鎖ポリアミン等が挙げられる。特に透明性、柔軟性、反応性の観点から短鎖ポリオールが好ましく、短鎖ジオールが特に好ましい。
【0017】
使用できるポリイソシアネートは、脂肪族もしくは脂環族のジイソシアネートまたは3価以上のポリイソシアネートである。
【0018】
具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどがある。
特に3官能以上のポリイソシアネートあるいはそれとジイソシアネートの混合物が好ましい。3官能以上のポリイソシアネートとしてはジイソシアネートのヌレート変性体、ビューレット変性体、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールで変性したウレタン変性体が好ましい。
【0019】
これら原料は単独でまたは混合して使用できる。また、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤、ウレタン化触媒、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加できる。
【0020】
ポリウレタン樹脂(A)のフィルムの成形法は、フィルムの光学的品質の観点から、また熱硬化性樹脂も成形可能であり成形時の加熱温度が低い等の観点から、特開平1−56717記載のような反応性キャスティング法である。
【0021】
反応性キャスティング法とは、反応して軟質合成樹脂となる流動性の反応性原料混合物を剥離性または非剥離性の平滑な担体上を流延する間に反応させて軟質合成樹脂のフィルムを形成し、剥離性担体の場合にはその後、担体から剥離することによりフィルムを得る方法である。通常、反応性キャステイング法を行う場合、反応性原料に溶剤が含まれていてもよいが、ポリウレタン樹脂(A)のフィルムの製造の場合には実質的に溶剤を含まない反応性原料を用いる方法、すなわち反応性バルクキャスティング法がより好ましい。
【0022】
また、本発明においてポリウレタン樹脂(A)が自己修復性を有するとは、「23℃、50%相対湿度雰囲気下で、先端径15μmのダイアモンドチップを加傷体として、生じた傷が消失しうる最大荷重を、HEIDONスクラッチテスターを用いて測定した値が10g以上であること」をいう。
【0023】
また、耐擦傷性を有するとは「23℃、50%相対湿度雰囲気下で、2つのCS−10F磨耗輪を用いた、500g荷重でのテーバー磨耗試験法により100回転させる前後での、ヘーズメータにて測定した曇価の上昇幅が10%未満であること」をいう。
【0024】
ポリウレタン樹脂(A)の層の厚さは、耐擦傷性や自己修復性の観点から0.05〜0.5mmが好ましく0.1〜0.3mmが特に好ましい。
【0025】
[赤外線吸収剤]
本発明において、使用しうる赤外線吸収剤はポリメチン系、フタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アントラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の赤外線吸収剤は、熱線吸収や電子機器のノイズ防止の用途であり、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収剤である。金属錯体系、アミニウム系、ジイモニウム系が特に好ましい。
【0027】
本発明において、赤外線吸収剤はポリウレタン樹脂(A)に含有させることができる。この場合、赤外線吸収剤の添加量は添加するポリウレタン樹脂(A)の層の厚さと要求される赤外線吸収能によって異なるが、ポリウレタン樹脂(A)の樹脂分100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0028】
[合成樹脂(B)]
本発明は自己修復性および耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂(A)の層とポリウレタン樹脂(A)以外の合成樹脂(B)の層とを含み、少なくとも片面がポリウレタン樹脂(A)の表面層であり、かつ合成樹脂(B)が赤外線吸収剤を含有する積層体からなるフィルムである。
【0029】
合成樹脂(B)の役割の1つは、赤外線吸収剤を溶解保持することにより、それ自体は耐擦傷性は持たないが、ポリウレタン樹脂(A)と積層したときに、積層体表面の耐擦傷性を発現し、かつ積層体に赤外性吸収能を付与することである。
ポリウレタン樹脂(A)は赤外線吸収剤を含有していてもいなくてもよい。
【0030】
このような合成樹脂(B)は、透明であって、合成樹脂(B)の原料または原料溶液中に赤外線吸収剤が溶解可能であれば特に限定はされない。溶解性、加工性等を考慮した場合、熱可塑性アクリル樹脂またはポリウレタン樹脂(A)以外の熱可塑性ポリウレタン樹脂からなることが好ましい。
【0031】
合成樹脂(B)のフィルムの成形方法としては、押し出し成形、溶液キャスティング等の方法が可能であるが、薄膜が形成できるという点から溶液キャスティング法が好ましい。溶液キャスティング法において使用する赤外線吸収剤と合成樹脂を溶解する溶剤としては、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤等を使用しうる。これらは単独でも数種類の混合系でも使用しうる。
【0032】
この場合赤外線吸収剤の使用量は赤外線吸収剤を含有させる合成樹脂(B)の樹脂分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。
【0033】
また、赤外性吸収剤を含有する該合成樹脂(B)の層の厚さは溶液キャスティング法の場合0.001〜0.05mmが好ましく、0.002〜0.02mmが特に好ましい。
【0034】
また、合成樹脂(B)の層は2層以上からなっていてもよい。例えば、ポリウレタン樹脂(A)や合成樹脂(B)のフィルムをキャストする際に担体として使用するフィルムがそのまま合成樹脂層(B)として含まれていてもよい。ただし、その場合、該フィルムは透明樹脂フィルム(D)であることが必須である。該透明樹脂フィルム(D)の膜厚は0.01〜0.1mmが好ましい。
【0035】
[フィルムの製造]
【0036】
【0037】
次に積層体を得る場合について説明する。
自己修復性および耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂(A)の層と合成樹脂(B)の層とを含み、少なくとも片面がポリウレタン樹脂(A)の表面層であり、かつ合成樹脂(B)が赤外線吸収剤を含有する積層体からなるフィルムの製造方法としては例えば下記の方法が挙げられる。
【0038】
(ア)担体上に赤外線吸収剤を溶解した合成樹脂(B)の溶液をキャストし、溶剤を乾燥除去して合成樹脂(B)のフィルムを得た後、その上にポリウレタン樹脂(A)の原料をキャストして加熱硬化する方法。
(イ)担体上に赤外線吸収剤を溶解した合成樹脂(B)の溶液をキャストし、溶剤を乾燥除去して合成樹脂(B)のフィルムを得た後、あらかじめ他の担体上で反応性キャスティング法によって得られたポリウレタン樹脂(A)のフィルムを粘着剤等で積層する方法。
(ウ)押し出し成形法で合成樹脂(B)のフィルムを得た後、その上にポリウレタン樹脂(A)の原料をキャストして加熱硬化する方法。
(エ)押し出し成形法で合成樹脂(B)のフィルムを得た後、あらかじめ担体上で反応性キャスティング法によって得られたポリウレタン樹脂(A)のフィルムを粘着剤等で積層する方法。
【0039】
(イ)、(エ)の場合にはポリウレタン樹脂(A)のフィルムのキャストに用いる担体は剥離した後で合成樹脂(B)のフィルムと積層してもよく、積層後に剥離してもよい。また担体を保持したまま担体面と合成樹脂層を粘着剤等で積層してもよい。
【0040】
(ア)、(イ)の場合、ポリウレタン樹脂(A)のフィルムと直接または粘着剤を介して接触する面は担体の面でも合成樹脂(B)フィルムの面でもよい。合成樹脂(B)のフィルムが接触している場合には、ポリウレタン樹脂(A)のフィルムと積層後、反対側にある担体を合成樹脂(B)のフィルムから剥離して用いてもよいし、剥離せずにそのまま使用してもよい。
【0041】
ポリウレタン樹脂(A)のフィルム、合成樹脂(B)のフィルムを製造する際に用いる担体としては、平滑性に優れ、加工に耐えうる強度を有するものであれば特に限定されないが、汎用性等を考慮すれば、ポリエステルフィルムまたは延伸ポリプロピレンフィルム等が好ましい。
【0042】
特に、合成樹脂層(B)をキャストする担体は、担体として機能するとともに、例えば、合成樹脂層(B)の膜厚が薄く単独では扱いにくい場合に、ポリウレタン樹脂(A)のフィルムと積層する場合の補強材としての役割も担う。
【0043】
また、前述したように、担体として用いたフィルムが積層体の一部に含まれる場合には、該フィルムは透明樹脂フィルム(D)であることが必須である。該透明樹脂フィルム(D)の膜厚は0.01〜0.1mmが好ましい。
【0044】
また、本発明の積層体は少なくとも片面はポリウレタン樹脂(A)の表面層になっていることが必須である。
積層体からなるフィルムの総厚は、0.1〜0.5mmが好ましい。
【0045】
本発明においては、ポリウレタン樹脂(A)の表面に、非結晶性の含フッ素重合体からなる反射防止薄膜層(C)を有していてもよい。
【0046】
非結晶性の含フッ素重合体としては、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオリドおよびヘキサフルオロプロピレンの3元共重合体や含フッ素脂肪族環構造を有する重合体などがある。特に、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が機械的特性に優れるため好ましい。
【0047】
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを重合して得られるもの(特公昭63−18964など)や、2以上の重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体(特開昭63−238111など)が好適である。
【0048】
反射防止薄膜層(C)はポリウレタン樹脂(A)の自己修復性および耐擦傷性を著しく阻害しないことが必須である。このため、反射防止薄膜層(C)の厚さは10〜1000nm、好ましくは20〜500nmが好ましい。
【0049】
本発明のフィルムはガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明基材に積層することにより、耐擦傷性、耐久性に優れた積層体を提供しうる。これらの積層体は、建築用、車両用の窓材やブラウン管、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイの保護板等に使用しうる。
本発明のフィルムの最大吸収波長は750〜1100nmであることが好ましい。この場合、熱線吸収や電子機器のノイズ防止の用途には特に適する。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例、比較例についての各種物性の測定および評価は後述の方法で行った。部は重量部を示す。
【0051】
(合成例1)
パーフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)の35g、イオン交換水の150gおよび重合開始剤として((CH3 )2 CHOCOO)2 の90mgを、内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れ、系内を窒素置換した後、40℃で22時間懸濁重合を行い、屈折率1.34、光線透過率95%以上の重合体を得た。この重合体をパーフルオロオクタンに1.5重量%で溶解し重合体溶液を得た。
【0052】
(参考例1)
表1上段の成分を80℃で2時間加熱溶融下で撹拌し、真空脱泡して均一なポリオールシステム液を製造した。また、表1下段の成分を撹拌混合して均一なイソシアネートシステム液を製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
次いで、上記の両システム液(ポリウレタンシステム液)をNCOインデックスが95になるように重量比を調整しつつ連続的に吐出・撹拌混合し、連続的に配給される平滑なポリエステルフィルム上に、上記の混合物をダイスを用いて0.2mm厚で均一に塗工、流延した。この液膜を連続重合オーブン中で80℃にて20分加熱して重合を実質的に完結した。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有していた。
【0055】
(実施例2)
(アクリル樹脂溶液)
表2の成分を還流下90℃で3時間撹拌し、均一なアクリル樹脂溶液を得た。
【0056】
【表2】
【0057】
連続的に配給されるポリエステルフィルム上に上記アクリル樹脂溶液をダイスを用いて均一に塗工、乾燥し溶媒を留去して膜厚0.008mmの合成樹脂フィルム(b1)を得た。
【0058】
引き続き合成樹脂フィルム(b1)上に、赤外線吸収剤を省いた以外は参考例1と同じ組成のポリウレタンシステム液を塗工流延後、連続重合オーブン中で80℃にて20分加熱して重合を実質的に完結した。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有していた。
【0059】
(実施例3)
アクリル樹脂の代わりに固形分12.5%の熱可塑性ポリウレタン樹脂溶液を、また赤外線吸収剤としてIRG−022の代わりに三井東圧染料社製SIR−159を、用いた以外は全て実施例2と同じ方法でフィルムを得た。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有していた。
【0060】
(実施例4)
実施例2と同様の方法にて合成樹脂フィルム(b1)を得た。
ポリエステルフィルム上に赤外線吸収剤を省いた以外は参考例1と同じ組成のポリウレタンシステム液をダイスを用いて0.2mm厚で均一に塗工、流延後、連続重合オーブン中で80℃にて20分加熱して重合を実質的に完結し、ポリウレタン樹脂(a1)のフィルムを得た。これをアクリル系粘着剤にて、合成樹脂フィルム(b1)と積層し、フィルムを得た。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有していた。
【0061】
(実施例5)
実施例4と同様の方法にてポリウレタン樹脂フィルム(a1)を得た。
ポリエステル樹脂に赤外線吸収剤として三井東圧染料社製SIR−159を0.2重量%加熱混練し、押し出し成形法にて厚さ0.05mmの合成樹脂フィルム(b2)を得た。これをアクリル系粘着剤にて、ポリウレタン樹脂フィルム(a1)と積層し、フィルムを得た。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有していた。
【0062】
(実施例6)
実施例4と同様の方法にてポリウレタン樹脂フィルム(a1)を得た。
また実施例2と同様の方法にて合成樹脂フィルム(b1)を得た。
引き続き、ポリウレタン樹脂フィルム(a1)の表面に合成例1で得られた重合体溶液を溶剤留去後の膜厚が100nmになるように塗工後乾燥し、非晶性の含フッ素重合体からなる低屈折率の反射防止層をコートした後、合成樹脂フィルム(b1)と粘着剤にて積層し、フィルムを得た。得られたフィルムは、自己修復性および耐擦傷性を有し、表面反射率は0.8%であった。
【0063】
(比較例1)
連続的に配給されるポリエステルフィルム上に実施例2と同一のアクリル樹脂溶液をダイスを用いて均一に塗工、乾燥し溶媒を留去して膜厚0.008mmの赤外線吸収フィルムを得た。
【0064】
(比較例2)
ポリエステル樹脂に赤外線吸収剤として三井東圧染料社製SIR−159を0.2重量%加熱混練し、押し出し成形法にて厚さ0.05mmの赤外線吸収フィルムを得た。
【0065】
表3に実施例および比較例に用いた化合物を説明する。上記実施例および比較例で得たフィルムについて、以下の測定方法で性能を調べ、表4に示した。
【0066】
[自己修復性]
23℃、50%相対湿度雰囲気下で先端径15μmのダイヤモンドチップを加傷体としてHEIDONスクラッチテスターで測定した、自己修復性が確保される最大荷重を示す。
【0067】
[耐擦傷性]
23℃、50%相対湿度雰囲気下で、2つのCS−10F磨耗輪を用いた、500g荷重でのテーバー磨耗試験法により100回転させる前後で、曇価(ヘーズ)をヘーズメータにて測定した。(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験前曇価)の値(%)で、耐擦傷性を示す。なお、曇価の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。
【0068】
[赤外線吸収性]
分光光度計で吸収スペクトルを測定し、800nm以上の赤外線領域の最大吸収波長とその透過率を測定した。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【発明の効果】
本発明は赤外線吸収性を有するフィルムとして表面に自己修復性と耐擦傷性に優れたポリウレタン樹脂フィルムを必須成分として導入することにより、耐擦傷性に優れた赤外線吸収フィルムを得るものである。
Claims (6)
- 自己修復性および耐擦傷性を有するポリウレタン樹脂(A)の層とポリウレタン樹脂(A)以外の合成樹脂(B)の層とを含み、少なくとも片面がポリウレタン樹脂(A)の表面層であり、かつ合成樹脂(B)が最大吸収波長が750〜1100nmである赤外線吸収剤を含有する積層体からなるフィルムであり、
前記ポリウレタン樹脂(A)の層は、官能基数2〜3であるポリエステル系のポリオールと、脂肪族もしくは脂環族のジイソシアネートまたは3価以上のポリイソシアネートとから反応性キャスティング法により得られた層であり、
前記合成樹脂(B)の層は、合成樹脂(B)の溶液をキャストし溶剤を乾燥除去して得られた層または押し出し成形法で得られた層であるフィルム。 - 合成樹脂(B)が、熱可塑性アクリル樹脂からなる、請求項1に記載のフィルム。
- 合成樹脂(B)が、ポリウレタン樹脂(A)以外の熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる、請求項1に記載のフィルム。
- 合成樹脂(B)の層が、2層以上からなる請求項1に記載のフィルム。
- ポリウレタン樹脂(A)の表面に、非結晶性の含フッ素重合体からなる反射防止薄膜層(C)を有する請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
- 最大吸収波長が750〜1100nmである、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
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