JP3785302B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 - Google Patents

オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、立体規則性を高度に維持しながら、極めて高い収率さらに高対水素レスポンス能を持つオレフィン類重合体を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るプロピレン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合もしくは共重合させるプロピレンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭57−63310号公報および特開昭57−63311号公報には、マグネシウム化合物、チタン化合物およびフタル酸エステルをはじめとするジエステル化合物の電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物およびSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、炭素数3以上のオレフィンを重合させる方法が開示されている。
【0003】
また、特開平1−6006号公報には、アルコキシマグネシウム、四塩化チタン、フタル酸ジブチルを含むオレフィン類重合用固体触媒成分が開示されており、この固体触媒成分の存在下にプロピレンを重合することによって、立体規則性重合体が高収率で得られており、ある程度効果を上げている。ところで上記のような触媒を用いて得られるポリマーは、自動車あるいは家電製品等の成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成型機により成型されるが、特に射出成型等でかつ大型の成型品を製造する際に、溶融ポリマーの流動性(メルトフローレイト)が高いことが要求される場合があり、そのためポリマーのメルトフローレイトを上げるべく多くの研究が為されている。
【0004】
メルトフローレイトはポリマーの分子量に大きく依存する。当業界においてはオレフィン類の重合に際し、生成ポリマーの分子量調節剤として水素を添加することが一般的に行われている。このとき低分子量のポリマーを製造する場合、すなわち高メルトフローレイトのポリマーを製造するためには通常多くの水素を添加するが、リアクターの耐圧にはその安全性から限度があり、添加し得る水素量にも制限がある。より多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧を下げざるを得ず、この場合生産性が低下することになる。また、水素を多量に用いることからコストの面の問題も生じる。従って、より少ない水素量で高メルトフローレイトのポリマーが製造できるような、いわゆる対水素活性あるいは対水素レスポンスが高くかつ高立体規則性ポリマーを高収率で得られる触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決し、オレフィン類重合体を極めて高い収率で得ることのでき、特にはプロピレン重合体を高い立体規則性を維持しながら極めて高い収率もしくは高対水素レスポンス能を持つオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム化合物、四塩化チタンおよび特定のフタル酸ジエステルまたはその誘導体からなる固体触媒成分が、オレフィン類の重合に供したときに極めて高い活性を示し、特にプロピレンの重合に供したとき、高い立体規則性を維持しながら極めて高い活性または収率もしくは高対水素レスポンス能を持つことを示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、上記目的を達成するための、本発明によるオレフィン類重合用固体触媒成分(以下、単に「成分(A)」ということがある。)は、(a)マグネシウム化合物、(b)四塩化チタン、および(c)下記の一般式(1)で表わされるフタル酸ジエステル誘導体を接触させることにより調製されることを特徴とする。
【0008】
【化2】
Figure 0003785302
【0009】
(式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R2 およびR3 は3級炭素を有する炭素数4〜8のアルキル基を示し、R2 とR3 は同一であっても異なってもよい。また、nはR1 置換基の数で、1又は2であり、nが2のとき、R1 は同一であっても異なってもよい。)
【0010】
また、本発明のオレフィン類重合用触媒は、下記成分(A)、(B)、および(C)から形成されることを特徴とする。
(A)前記オレフィン類重合用固体触媒成分、
(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物、
4 pAlQ3-p (2)
(式中、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子又はハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)
(C)一般式(3)で表される有機ケイ素化合物、
5 qSi(OR6) - (3)
(式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R6は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物(以下、単に「成分(a)」ということがある。)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0012】
ジハロゲン化マグネシウムの具体例としては、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウム、二沃化マグネシウム、二フッ化マグネシウム等が挙げられる。ジアルキルマグネシウムとしては、一般式R7R8Mg(式中、R7及びR8は炭素数1〜10のアルキル基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、メチルプロピルマグネシウム、エチルプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、メチルブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム等が挙げられる。これらのジアルキルマグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲン化炭化水素あるいはアルコールと反応させて得ることができる。
【0013】
ハロゲン化アルキルマグネシウムとしては、一般式R9MgD1(式中、R9は炭素数1〜10のアルキル基を示し、D1は塩素、臭素、沃素、フッ素などのハロゲン原子を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム等が挙げられる。これらのハロゲン化マグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲン化炭化水素あるいはアルコールと反応させて得ることができる。
【0014】
ジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムとしては、一般式Mg(OR10)(OR11)(式中、R10 及びR11 は炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。これらのジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得ることができる。
【0015】
ハロゲン化アルコキシマグネシウムとしては、一般式Mg(OR12)D2(式中、R12 は炭素数1〜10のアルキル基、D2は塩素、臭素、沃素、フッ素などのハロゲン原子を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、プロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0016】
脂肪酸マグネシウムとしては、一般式Mg(R13COO)2 (式中、R13 は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウム及びデカン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるこれらマグネシウム化合物の中で、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、その中でも特にジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウムが好ましく用いられる。また、上記のマグネシウム化合物は、単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0018】
本発明において成分(a)としてジアルコキシマグネシウムを用いる場合、アルコキシマグネシウムは顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものが使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0019】
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものが用いられる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が通常3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。このような球状ジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、同62−51633号公報、特開平3−74341号公報、同4−368391号公報、同8−73388号公報などに例示されている。
【0020】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、通常1から200μm 、好ましくは5から150μm である。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は通常1から100μm 、好ましくは5から50μm であり、更に好ましくは10から40μm である。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm 以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm 以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0021】
本発明における成分(A)の調製に四塩化チタン(以下、単に「成分(b)」ということがある。)を用いるが、四塩化チタン以外のハロゲン化チタン化合物もこれと併用することができる。このハロゲン化チタン化合物としては、一般式Ti(OR14)n Cl4-n (式中、R14 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1≦n≦3の整数である。)で表されるアルコキシチタンクロライドが例示される。また、上記のハロゲン化チタン化合物は、単独あるいは2種以上併用することもできる。具体的には、Ti(OCH3)Cl3 、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(OC3H7)Cl3、Ti(O-n-C4H9)Cl3 、Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2 、Ti(OC3H7)2Cl2 、Ti(O-n-C4H9)2Cl2、Ti(OCH3)3Cl 、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(OC3H7)3Cl、Ti(O-n-C4H9)3Cl 等が例示される。
【0022】
本発明における成分(A)の調製に用いられるフタル酸ジエステル誘導体は(以下、単に、「成分(c)」ということがある。)、下記の一般式(1)で表わされる。
【0023】
【化3】
Figure 0003785302
【0024】
(式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R2 およびR3 は3級炭素を有する炭素数4〜8のアルキル基を示し、R2 とR3 は同一であっても異なってもよい。また、nはR1 置換基の数で、1又は2であり、nが2のとき、R1 は同一であっても異なってもよい。)
【0025】
一般式(1)において、R1 の炭素数1〜5のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t- ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基であり、R1 のハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。R1 は好ましくはメチル基、臭素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはメチル基である。
【0026】
2 およびR3 は3級炭素を有する炭素数4〜8のアルキル基で、R2 とR3 は同一であっても異なってもよい。具体的には、t−ブチル基、ネオペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルヘキシル基であり、好ましくはネオペンチル基である。
【0027】
また、置換基R1 の数nは、1又は2であり、nが2のとき、R1 は同一でもあっても異なってもよい。nが1の場合、R1 は上記一般式(1)のフタル酸エステル誘導体の3位、4位および5位の位置の水素原子と置換し、nが2の場合、R1 は4位および5位の位置の水素原子と置換する。
【0028】
本発明の上記一般式(1)で表されるフタル酸ジエステル誘導体としては、具体的には、3−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、3−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルが挙げられる。これらのうち、オレフィン重合用触媒の一成分である電子供与体として好ましいフタル酸ジエステル誘導体は、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチルである。これらのフタル酸ジエステル誘導体は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明において、上記成分(c)のフタル酸ジエステルまたはその誘導体の他、他の電子供与性化合物も成分(A)を調製する際併用できる。この電子供与性化合物は、酸素あるいは窒素を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0030】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール、カテコール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n- プロピルフタレート、ジ-n- ブチルフタレート、ジ-iso- ブチルフタレート、ジ-n- ペンチルフタレート、ジ-n- ヘキシルフタレート、ジ-n- ヘプチルフタレート、ジ-n- オクチルフタレート、ジ-iso- オクチルフタレート、ジ-n- ノニルフタレート、ジ-n- デシルフタレート等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリニトリル等のニトリル類等、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチルなどのイソシアネート類を挙げることができる。
【0031】
また、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0032】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類が好ましく用いられ、特に成分(c)以外のフタル酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、フェノール類が好適である。
【0033】
本発明における成分(A)の調製においては、上記必須の成分の他、更に、アルミニウムトリクロライド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジ−iso−プロポキシアルミニウムクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、iso−プロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、トリエトキシアルミニウム等のアルミニウム化合物またはステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等の有機酸の金属塩または常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサン等のポリシロキサンを使用することができる。
【0034】
前記成分(A)は、上述したような成分(a)、成分(b)および成分(c)を接触させることにより調製することができ、この接触は、不活性有機溶媒の不存在下で処理することも可能であるが、操作の容易性を考慮すると、該溶媒の存在下で処理することが好ましい。用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられるが、このうち、沸点が90〜150℃程度の、常温で液状状態の芳香族炭化水素化合物、具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。
【0035】
また、成分(A)を調製する方法としては、上記の成分(a)のマグネシウム化合物を、アルコール又はチタン化合物等に溶解させ、その成分(b)あるいは成分(b)および成分(c)との接触あるいは加熱処理などにより固体物を析出させ、固体成分を得る方法、成分(a)を成分(b)又は不活性炭化水素溶媒等に懸濁させ、更に成分(c)あるいは成分(c)と成分(b)を接触して成分(A)を得る方法等が挙げられる。
【0036】
このうち、前者の方法で得られた固体触媒成分の粒子はほぼ球状に近く、粒度分布もシャープである。また、後者の方法においても、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることもできる。
【0037】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体触媒成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0038】
以下に、成分(A)の調製方法を例示する。
(1)塩化マグネシウムをテトラアルコキシチタンに溶解させた後、ポリシロキサンを接触させて固体生成物を得、該固体生成物と四塩化チタンを反応させ、次いで成分(c)を接触反応させて成分(A)を調製する方法。なおこの際、成分(A)に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的に重合処理することもできる。
(2)無水塩化マグネシウム及び2−エチルヘキシルアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液に無水フタル酸を接触させ、次いでこの溶液に、四塩化チタン及び成分(c)を接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に更に四塩化チタンを接触させて成分(A)を調製する方法。
(3)金属マグネシウム、ブチルクロライド及びジブチルエーテルを反応させることによって有機マグネシウム化合物を合成し、該有機マグネシウム化合物に、テトラブトキシチタン及びテトラエトキシチタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(c)、ジブチルエーテル及び四塩化チタンを接触反応させて成分(A)を調製する方法。なおこの際、該固体成分に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的に重合処理することによって、成分(A)を調製することもできる。
(4)ジブチルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物と、有機アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒の存在下、例えばブタノール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコールと接触反応させて均一溶液とし、この溶液に、例えばSiCl4 、HSiCl3、ポリシロキサン等のケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、次いで芳香族炭化水素溶媒の存在下で該固体生成物に、四塩化チタン及び成分(c)を接触反応させた後、更に四塩化チタンを接触させて成分(A)を得る方法。
(5)塩化マグネシウム、テトラアルコキシチタン及び脂肪族アルコールを、脂肪族炭化水素化合物の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液に四塩化チタンを加えた後昇温して固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(c)を接触させ、更に四塩化チタンと反応させて成分(A)を得る方法。
(6)金属マグネシウム粉末、アルキルモノハロゲン化合物及びヨウ素を接触反応させ、その後テトラアルコキシチタン、酸ハロゲン化物、及び脂肪族アルコールを、脂肪族炭化水素の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液に四塩化チタンを加えた後昇温し、固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(c)を接触させ、更に四塩化チタンと反応させて成分(A)を調製する方法。
(7)ジエトキシマグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、その後昇温して成分(c)と接触させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンと接触させて成分(A)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理して成分(A)を得ることもできる。
(8)ジエトキシマグネシウムをアルキルベンゼン中に懸濁させた後、四塩化チタン及び成分(c)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンと接触させて成分(A)を得る方法。なおこの際、該固体成分と四塩化チタンとを2回以上接触させて成分(A)を得ることもできる。
(9)ジエトキシマグネシウム、塩化カルシウム及びSi(OR154 (式中、R15 はアルキル基又はアリール基を示す。)で表されるケイ素化合物を共粉砕し、得られた粉砕固体物を芳香族炭化水素に懸濁させた後、四塩化チタン及び成分(c)と接触反応させ、次いで更に四塩化チタンを接触させることにより成分(A)を調製する方法。
(10)ジエトキシマグネシウム及び成分(c)をアルキルベンゼン中に懸濁させ、その懸濁液を四塩化チタン中に添加し、反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンを接触させて成分(A)を得る方法。
(11)ハロゲン化カルシウム及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムを、四塩化チタン及び成分(c)と接触反応させ、その後更に四塩化チタンと接触させることにより成分(A)を調製する方法。
(12)ジエトキシマグネシウムをアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させ、その後昇温して成分(c)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンと接触させて成分(A)を調製する方法であって、上記懸濁・接触並びに接触反応のいずれかの段階において、塩化アルミニウムを接触させて成分(A)を調製する方法。
(13)ジエトキシマグネシウム、2−エチルヘキシルアルコール及び二酸化炭素を、トルエンの存在下で接触反応させて均一溶液とし、この溶液に四塩化チタン及び成分(c)を接触反応させて固体生成物を得、更にこの固体生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、その後更に固体生成物を析出させ、この固体生成物に四塩化チタンを接触反応させ、場合により四塩化チタンとの接触反応を繰り返し行い、成分(A)を調製する方法。なおこの際、上記接触・接触反応・溶解のいずれかの段階において、例えばテトラブトキシシラン等のケイ素化合物を使用することもできる。
(14)塩化マグネシウム、有機エポキシ化合物及びリン酸化合物をトルエンの如き炭化水素溶媒中に懸濁させた後、加熱して均一溶液とし、この溶液に、無水フタル酸及び四塩化チタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(c)を接触させて反応させ、得られた反応生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンを接触させることにより成分(A)を得る方法。
(15)ジアルコキシマグネシウム、チタン化合物及び成分(c)をトルエンの存在下に接触反応させ、得られた反応生成物にポリシロキサン等のケイ素化合物を接触反応させ、更に四塩化チタンを接触反応させ、次いで有機酸の金属塩を接触反応させた後、再度四塩化チタンを接触させることにより成分(A)を得る方法。
【0039】
また、本発明で用いられる成分(A)の好ましい調製方法としては、以下のような方法が挙げられる:例えば、ジアルコキシマグネシウムを常温で液体の芳香族炭化水素化合物に懸濁させることによって懸濁液を形成し、次いでこの懸濁液に4価のハロゲン化チタンを−20〜100℃、好ましくは−10〜70℃、より好ましくは0〜30℃で接触し、0〜130℃、より好ましくは70〜120℃で反応させる。この際、上記の懸濁液にハロゲン化チタンを接触させる前又は接触した後に、成分(c)として4−メチルフタル酸ジネオペンチルを、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物を得る。この固体反応生成物を常温で液体の芳香族炭化水素化合物で洗浄した後、再度4価のハロゲン化チタンを、芳香族炭化水素化合物の存在下に、0〜130℃、より好ましくは70〜120℃で接触反応させ、更に常温で液体の炭化水素化合物で洗浄し成分(A)を得る。
【0040】
各化合物の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(a)1モル当たり、成分(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、成分(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルである。
【0041】
上記のように調製した成分(A)は、マグネシウム、チタン、成分(c)及びハロゲン原子を含有する。各成分の含有量は特に規定されないが、好ましくはマグネシウムが10〜30重量%、チタンが1〜5重量%、成分(c)が1〜20重量%、ハロゲン原子が40〜70重量%である。
【0042】
本発明のプロピレン重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下、「成分(B)」ということがある。)としては、一般式R4 p AlQ3-p (式中、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Q は水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0043】
本発明のプロピレン重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては、一般式R5 q Si(OR6)4-q(式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R6は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される化合物が用いられる。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0044】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記した成分(A)、成分(B)、および成分(C)より成り、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種単独あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
【0046】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0047】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0048】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0049】
更に、本発明において成分(A)、成分(B)、及び成分(C)より成る触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0050】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0051】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、高い立体規則性を維持しながら極めて高い収率でオレフィン類重合体を得ることができる。さらに、高水素レスポンスも実現できる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
【0053】
実施例1
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10gおよびトルエン80mlを装入して、懸濁状態とした。次いで該懸濁溶液に四塩化チタン20mlを加えて、昇温し、80℃に達した時点で3.5mlのトルエンに4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解させた溶液を加え、さらに昇温して110℃とした。その後110℃の温度を保持した状態で、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、90℃のトルエン100mlで3回洗浄し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、110℃に昇温し、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで7回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタン含有率を測定したところ、2.8重量%であった。
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。固体触媒成分1g当たりの重合活性は60,100g/gであった。重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)(測定方法は、ASTM D 1238 、JIS K 7210に準ずる)は19g/10min であった。なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。重合活性=(a)270.9(g)/固体触媒成分0.00451(g)
また、この重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体(b)は263.0gであり、重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合は97.5重量%となった。固体触媒成分1g当たりの重合活性、キシレン溶解成分(XS)、ヘプタン不溶分(HI)、メルトインデックス(MI)を表1に併載する。
【0054】
比較例3
3.5mlのトルエンに4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解させた溶液の代わりに、10.2mlのトルエンにフタル酸ジネオペンチル3.4gを溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.6重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0055】
実施例
3.5mlのトルエンに4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解させた溶液の代わりに、4.7mlのトルエンに3−フルオロフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.2重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0056】
実施例
4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gの代わりに、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル3.6gを用いた以外は実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、固体触媒成分中のチタン含有量は3.6重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0057】
実施例
3.5mlのトルエンに4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解させた溶液の代わりに、5.3mlのトルエンに4−ブロモフタル酸ジネオペンチル4.2gを溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、固体触媒成分中のチタン含有量は2.9重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0058】
比較例4
3.5mlのトルエンに4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gを溶解させた溶液の代わりに、9.6mlのトルエンにフタル酸−t−ブチルネオペンチル3.2gを溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、固体触媒成分中のチタン含有量は3.8重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0059】
比較例1
4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gの代わりに、フタル酸ジ-n- ブチル3.0gを使用した以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、固体触媒成分中のチタン含有量は3.0重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0060】
比較例2
4−メチルフタル酸ジネオペンチル3.5gの代わりに、フタル酸ジ-n- ペンチル3.4gを使用した以外は実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、固体触媒成分中のチタン含有量は2.6重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
Figure 0003785302
【0062】
表1の結果から、本発明の固体触媒成分および触媒を用いてオレフィン類の重合を行うことにより、極めて高い収率でオレフィン類重合体が得られることがわかる。また、対水素レスポンスも極めて優れていることが判る。
【0063】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高い立体規則性を高度に維持しながら、オレフィン類重合体を極めて高い収率で得ることができる。また、水素レスポンスの高いオレフィン類重合用触媒である。従って、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。

Claims (5)

  1. (a)マグネシウム化合物、(b)四塩化チタン、および(c)下記の一般式(1)で表わされるフタル酸ジエステル誘導体を接触させることにより調製されることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
    Figure 0003785302
    (式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R2 およびR3 は3級炭素を有する炭素数4〜8のアルキル基を示し、R2 とR3 は同一であっても異なってもよい。また、nはR1 置換基の数で、1又は2であり、nが2のとき、R1 は同一であっても異なってもよい。)
  2. 前記マグネシウム化合物がアルコキシマグネシウムである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  3. 前記R2 およびR3 のうち少なくとも一方がネオペンチル基であるか、又は前記R2 およびR3 のうち少なくとも一方がt- ブチル基である請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  4. 前記フタル酸ジエステル誘導体が、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル又は4- t- ブチルフタル酸ジネオペンチルである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  5. 下記成分(A)、(B)、および(C)から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
    (A)請求項1〜に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
    (B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物、
    4 pAlQ3-p (2)
    (式中、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子又はハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)
    (C)一般式(3)で表される有機ケイ素化合物、
    5 qSi(OR6) - (3)
    (式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R6は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)。
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