JP4666426B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、立体規則性を維持しながら、高い収率でオレフィン類重合体を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合もしくは共重合させるオレフィンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭52−98045号公報には、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化チタンおよび有機カルボン酸エステルをはじめとするジエステル化合物の電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、炭素数3以上のオレフィンを重合させる方法が開示されている。
【0003】
また、特開昭53−19395号公報には、ハロゲン化アシル、ジハロゲン化マグネシウム、ハロゲン含有チタン化合物とアルコール系化合物および/またはフェノール系化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分が開示されており、この固体触媒成分の存在下にプロピレンを重合することによって、優れた機械的性質と成形性をあわせもつ重合体が高収率で得られており、ある程度効果を上げている。
【0004】
しかし、近年のオレフィン重合体のコスト低減要求を満たし、プロセスを改善し、また共重合体のような高機能を有する重合体を効率よく製造するために、さらに触媒の高活性化が強く望まれており、この要求を満足するには必ずしも十分ではなく、より一層の改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、高活性であり、且つオレフィン類重合体を高い収率で得ることができ、特にはプロピレンの重合において高活性であり、且つ立体規則性を維持しながらプロピレン重合体を高い収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム化合物、四塩化チタン、フタル酸ジエステルおよび特定のナフタレンジオールまたはナフタレントリオールからなる固体触媒成分が、オレフィン類の重合に供したときに高い活性を示し、特にプロピレンの重合に供したとき、高い活性を示し、高い立体規則性を維持しながらプロピレン重合体を高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)マグネシウム化合物、(b)四塩化チタン、(c)フタル酸ジエステル、および(d)下記一般式(1);
(R1 )m X(OH)n (1)
(式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基またはハロゲン原子を示し、mは0、1または2であり、mが2であるときR1 は同一でも異なっていてもよく、nは2または3であり、Xはナフタレンから水素(m+n)原子を取り去った基を示す。)で表わされるナフタレン誘導体から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、(A)前記オレフィン類重合用触媒成分、(B)下記一般式(2);
R2 p AlQ3-p (2)
(式中、R2 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(3);
R3 q Si(OR4 )4-q (3)
(式中、R3 は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R4 は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物(以下単に「成分(a)」ということがある。)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0010】
ジハロゲン化マグネシウムの具体例としては、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウム、二沃化マグネシウム、二フッ化マグネシウム等が挙げられる。
【0011】
ジアルキルマグネシウムとしては、一般式R5R6Mg(式中、R5及びR6は炭素数1〜10のアルキル基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、メチルプロピルマグネシウム、エチルプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、メチルブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム等が挙げられる。これらのジアルキルマグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲン化炭化水素あるいはアルコールと反応させて得ることができる。
【0012】
ハロゲン化アルキルマグネシウムとしては、一般式R7MgD1(式中、R7は炭素数1〜10のアルキル基を示し、D1はハロゲン原子を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム等が挙げられる。これらのハロゲン化マグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲン化炭化水素あるいはアルコールと反応させて得ることができる。
【0013】
ジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムとしては、一般式Mg(OR8)(OR9)(式中、R8及びR9は炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。これらのジアルコキシマグネシウムまたはジアリールオキシマグネシウムは、金属マグネシウムをハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得ることができる。
【0014】
ハロゲン化アルコキシマグネシウムとしては、一般式Mg(OR10)D2(式中、R10 は炭素数1〜10のアルキル基、D2は塩素、臭素、沃素、フッ素などのハロゲン原子を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、プロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0015】
脂肪酸マグネシウムとしては、一般式Mg(R11COO)2 (式中、R11 は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウム及びデカン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0016】
本発明におけるこれらマグネシウム化合物の中で、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、その中でも特にジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウムが好ましく用いられる。また、上記のマグネシウム化合物は、単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0017】
本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)としてジアルコキシマグネシウムを用いる場合、ジアルコキシマグネシウムは顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものが使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0018】
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものが用いられる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が通常3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。このような球状ジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、同62−51633号公報、特開平3−74341号公報、同4−368391号公報、同8−73388号公報などに例示されている。
【0019】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、通常1から200μm、好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は通常1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0020】
本発明におけるオレフィン類重合用固体触媒成分(A)の調製に四塩化チタン(以下、単に「成分(b)」ということがある。)を用いるが、四塩化チタン以外のハロゲン化チタン化合物もこれと併用することができる。このハロゲン化チタン化合物としては、一般式Ti(OR12)n Cl4-n (式中、R12 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1≦n≦3の整数である。)で表されるアルコキシチタンクロライドが例示される。また、上記のハロゲン化チタン化合物は、単独あるいは2種以上併用することもできる。具体的には、Ti(OCH3)Cl3 、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(OC3H7)Cl3、Ti(O-n-C4H9)Cl3 、Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2 、Ti(OC3H7)2Cl2 、Ti(O-n-C4H9)2Cl2、Ti(OCH3)3Cl 、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(OC3H7)3Cl、Ti(O-n-C4H9)3Cl 等が例示される。
【0021】
本発明におけるオレフィン類重合用固体触媒成分(A)の調製に用いられるフタル酸ジエステル(以下、単に、「成分(c)」ということがある。)の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(イソプロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(イソブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(イソヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(イソヘキシル)、フタル酸イソペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(イソノニル)、フタル酸イソペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸イソペンチル(イソヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(イソノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(イソノニル)、フタル酸n−ヘプチル(ネオデシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(イソノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0022】
上記フタル酸ジエステルの内でも特にフタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシルが好ましく用いられる。
【0023】
本発明で用いられるナフタレン誘導体(以下単に成分(d)ということがある。)は、ナフタレンジオール、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子で置換される置換ナフタレンジオール、ナフタレントリオール、または炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子で置換される置換ナフタレントリオールである。上記ナフタレン誘導体の置換基R1 の数mは0又は1が好ましく、置換基R1 の具体例としては、メチル基、エチル基、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましく、メチル基、及び臭素原子が特に好ましい。また、上記ナフタレン誘導体において、水酸基の数nが2であるナフタレンジオール、及び炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子で置換される置換ナフタレンジオールが好ましい。具体的に水酸基の置換位置は、ナフタレンジオールの場合、1,2−体、1,8−体、2,3−体であり、ナフタレントリオールの場合、1,2,3−体、1,2,8−体であり、これらのうち、ナフタレンジオールの1,2−体及び2,3−体が好ましく、ナフタレンジオールの2,3−体が特に好ましい。
【0024】
本発明のナフタレン誘導体がナフタレンジオール及び置換ナフタレンジオールである場合の具体的例としては、1,2−ナフタレンジオール、2,3−ナフタレンジオール、5−メチルナフタレン−2、3−ジオール、6‐メチルナフタレン−2、3−ジオール、5‐メチルナフタレン−1,2−ジオール、6‐メチルナフタレン−1,2−ジオール、5−エチルナフタレン−2、3−ジオール、6‐エチルナフタレン−2、3−ジオール、5‐エチルナフタレン−1,2−ジオール、6‐エチルナフタレン−1,2−ジオール、5−フルオロナフタレン−2、3−ジオール、6‐フルオロナフタレン−2、3−ジオール、5‐フルオロナフタレン−1,2−ジオール、6‐フルオロナフタレン−1,2−ジオール、5−クロロナフタレン−2、3−ジオール、6‐クロロナフタレン−2、3−ジオール、5‐クロロナフタレン−1,2−ジオール、6‐クロロナフタレン−1,2−ジオール、5−ブロモナフタレン−2、3−ジオール、6‐ブロモナフタレン−2、3−ジオール、5‐ブロモナフタレン−1,2−ジオール、6‐ブロモナフタレン−1,2−ジオール、6,7- ジメチルナフタレン−2, 3- ジオール、6,7- ジブロモナフタレン−2, 3- ジオール、6−ブロモ−7−メチルナフタレン−2, 3−ジオール、6−メチル−7−ブロモナフタレン−2, 3- ジオール?、6,7- ジメチルナフタレン−1, 2- ジオール、6,7- ジブロモナフタレン−1, 2- ジオール、6−ブロモ−7−メチルナフタレン−1, 2−ジオール、6−メチル−7−ブロモナフタレン−1, 2- ジオール等が挙げられる。
【0025】
これらのうち好ましいナフタレンジオール又は置換ナフタレンジオールは、2,3−ナフタレンジオール、6‐メチルナフタレン−2、3−ジオール、6‐ブロモナフタレン−2、3−ジオールであり、2,3−ナフタレンジオールが特に好ましい。これらのナフタレンジオールは1種でも2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明のナフタレン誘導体がナフタレントリオール及び置換ナフタレントリオールである場合の具体的例としては、1,2,3−ナフタレントリオール、6‐メチルナフタレン−1,2,3−トリオール、6‐フルオロナフタレン−1,2,3−トリオール、6‐クロロナフタレン−1,2,3−トリオール、6‐ブロモナフタレン−1,2,3−トリオール、1,2,8−ナフタレントリオール、6‐メチルナフタレン−1,2,8−トリオール、6‐フルオロナフタレン−1,2,8−トリオール、6‐クロロナフタレン−1,2,8−トリオール、6‐ブロモナフタレン−1,2,8−トリオール等が挙げられる。
【0027】
本発明におけるオレフィン類重合用固体触媒成分(A)の調製においては、上記必須の成分の他、更に、アルミニウムトリクロライド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジイソプロポキシアルミニウムクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、イソプロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、トリエトキシアルミニウム等のアルミニウム化合物またはステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等の有機酸の金属塩または常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサン等のポリシロキサンを使用することができる。鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロペンタンシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロトリシロキサンが、また、変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。
【0028】
前記オレフィン類重合用固体触媒成分(A)は、上述したような成分(a)、成分(b)、成分(c)、および成分(d)を接触させることにより調製することができ、この接触は、不活性有機溶媒の不存在下で処理することも可能であるが、操作の容易性を考慮すると、該溶媒の存在下で処理することが好ましい。用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられるが、このうち、沸点が90〜150℃程度の、常温で液状の芳香族炭化水素化合物、具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。
【0029】
また、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法としては、上記の成分(a)のマグネシウム化合物を、アルコール又はチタン化合物等に溶解させ、該溶液と成分(b)あるいは成分(b)および成分(c)を接触させ加熱処理などにより固体物を析出させた後、さらに成分(b)と接触させ、このいずれかの段階において成分(d)を接触させて固体成分を得る方法。また、成分(a)を成分(b)又は不活性炭化水素溶媒等に懸濁させ、更に成分(c)あるいは成分(c)と成分(b)を接触し、さらに成分(b)を接触させ、このいずれかの段階において成分(d)を接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法等が挙げられる。
【0030】
このうち、前者の方法で得られた固体触媒成分の粒子はほぼ球状に近く、粒度分布もシャープである。また、後者の方法においても、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることもできる。
【0031】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体触媒成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0032】
本発明において、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する際、成分(a)〜(d)の接触順序は任意であるが、特に成分(d)は、予め成分(b)と接触させた後、成分(a)および/または成分(c)と接触させることが、固体触媒成分の活性を向上させるうえで好ましい。ここで、成分(d)をあらかじめ成分(b)と接触させる際、ナフタレンジオールと四塩化チタンなどのチタン化合物との錯化合物を形成させた後、成分(a)および/または成分(c)と接触させることも好ましい態様の一つである。
【0033】
以下に、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)の調製方法を例示する。
(1)塩化マグネシウム(a)をテトラアルコキシチタンに溶解させた後、ポリシロキサンを接触させて固体生成物を得、該固体生成物と四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を反応させ、次いで成分(c)を接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。なおこの際、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的に重合処理することもできる。
【0034】
(2)無水塩化マグネシウム(a)及び2−エチルヘキシルアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液に無水フタル酸を接触させ、次いでこの溶液に、四塩化チタン(b)、成分(c)を接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に更に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0035】
(3)金属マグネシウム、ブチルクロライド及びジブチルエーテルを反応させることによって有機マグネシウム化合物(a)を合成し、該有機マグネシウム化合物に、テトラブトキシチタン及びテトラエトキシチタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(c)、ジブチルエーテル、四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。なおこの際、該固体成分に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的に重合処理することによって、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製することもできる。
【0036】
(4)ジブチルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物(a)と、有機アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒の存在下、例えばブタノール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコールと接触反応させて均一溶液とし、この溶液に、例えば SiCl4 、HSiCl3、ポリシロキサン等のケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、次いで芳香族炭化水素溶媒の存在下で該固体生成物に、四塩化チタン(b)、成分(c)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触反応させた後、更に四塩化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法。
【0037】
(5)塩化マグネシウム(a)、テトラアルコキシチタン及び脂肪族アルコールを、脂肪族炭化水素化合物の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液に四塩化チタン(b)を加えた後昇温して固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(c)を接触させ、更に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法。
【0038】
(6)金属マグネシウム粉末、アルキルモノハロゲン化合物及びヨウ素を接触反応させ、その後テトラアルコキシチタン、酸ハロゲン化物、及び脂肪族アルコールを、脂肪族炭化水素の存在下で接触反応させて均質溶液(a)とし、その溶液に四塩化チタン(b)を加えた後昇温し、固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(c)を接触させ、更に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0039】
(7)ジエトキシマグネシウム(a)をアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタン(b)と接触させ、その後昇温して成分(c)と接触させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理してオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得ることもできる。
【0040】
(8)ジエトキシマグネシウム(a)をアルキルベンゼン中に懸濁させた後、四塩化チタン(b)及び成分(c)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と接触させて成分(A)を得る方法。なおこの際、該固体成分と四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)とを2回以上接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得ることもできる。
【0041】
(9)ジエトキシマグネシウム(a)、塩化カルシウム及びSi(OR12)4 (式中、R12 はアルキル基又はアリール基を示す。)で表されるケイ素化合物を共粉砕し、得られた粉砕固体物を芳香族炭化水素に懸濁させた後、四塩化チタン(b)及び成分(c)と接触反応させ、次いで更に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0042】
(10)ジエトキシマグネシウム(a)及び成分(c)をアルキルベンゼン中に懸濁させ、その懸濁液を四塩化チタン(b)中に添加し、反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法。
【0043】
(11)ハロゲン化カルシウム(a)及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムを、四塩化チタン(b)及び成分(c)と接触反応させ、その後更に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0044】
(12)ジエトキシマグネシウム(a)をアルキルベンゼンまたはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させた後、四塩化チタン(b)と接触させ、その後昇温して成分(c)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)と接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法であって、上記懸濁・接触並びに接触反応のいずれかの段階において、塩化アルミニウムを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0045】
(13)ジエトキシマグネシウム(a)、2−エチルヘキシルアルコール及び二酸化炭素を、トルエンの存在下で接触反応させて均一溶液とし、この溶液に四塩化チタン(b)及び成分(c)を接触反応させて固体生成物を得、更にこの固体生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、その後更に固体生成物を析出させ、この固体生成物に四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触反応させ、場合により四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)との接触反応を繰り返し行い、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)を調製する方法。なおこの際、上記接触・接触反応・溶解のいずれかの段階において、例えばテトラブトキシシラン等のケイ素化合物を使用することもできる。
【0046】
(14)塩化マグネシウム(a)、有機エポキシ化合物及びリン酸化合物をトルエンの如き炭化水素溶媒中に懸濁させた後、加熱して均一溶液とし、この溶液に、無水フタル酸及び四塩化チタン(b)を接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(c)を接触させて反応させ、得られた反応生成物をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法。
【0047】
(15)ジアルコキシマグネシウム(a)、チタン化合物及び成分(c)をトルエンの存在下に接触反応させ、得られた反応生成物にポリシロキサン等のケイ素化合物を接触反応させ、更に四塩化チタン(b)を接触反応させ、次いで有機酸の金属塩を接触反応させた後、再度四塩化チタン(b)及びあらかじめ四塩化チタン(b)と接触させた成分(d)を接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る方法。
【0048】
また、本発明で用いられるオレフィン類重合用固体触媒成分(A)の好ましい調製方法としては、以下のような方法が挙げられる:例えば、成分(a)としてジアルコキシマグネシウムを常温で液体の芳香族炭化水素化合物に懸濁させることによって懸濁液を形成し、次いでこの懸濁液に成分(b)として四塩化チタンを−20〜100℃、好ましくは−10〜70℃、より好ましくは0〜30℃で接触し、40〜130℃、より好ましくは70〜120℃で反応させる。この際、上記の懸濁液に四塩化チタンを接触させる前又は接触させた後に、成分(c)としてフタル酸ジ−n−ブチルを、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物を得る。この固体反応生成物を常温で液体の芳香族炭化水素化合物で洗浄した後、再度四塩化チタン及びあらかじめ四塩化チタンに接触させた成分(d)として2,3−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオールを、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物の存在下に、40〜130℃、より好ましくは70〜120℃で接触反応させ、更に常温で液体の炭化水素化合物で洗浄しオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を得る。
【0049】
各化合物の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(a)1モル当たり、成分(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、成分(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、成分(d)が0.0005〜1モル、好ましくは0.0005〜0.5モル、より好ましくは0.001〜0.1モルである。また、成分(d)をあらかじめ成分(b)に接触させて用いる際、成分(d)の使用量は、あらかじめ接触させる成分(b)1モルに対し、0.00002〜0.05モル、好ましくは0.0001〜0.01モルである。
【0050】
上記のように調製したオレフィン類重合用固体触媒成分(A)は、マグネシウム、チタン、成分(c)、成分(d)及びハロゲン原子を含有する。各成分の含有量は特に規定されないが、好ましくはマグネシウムが10〜30重量%、チタンが1〜5重量%、成分(c)が1〜20重量%、成分(d)が0.05〜2重量%、ハロゲン原子が40〜70重量%である。
【0051】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下、「成分(B)」ということがある。)としては、一般式R2 p AlQ3-p (式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Q は水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0052】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては、一般式R3 q Si(OR4)4-q(式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、R4は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、又はアリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される化合物が用いられる。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0053】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリイソブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5 −ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(イソプロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(イソブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(イソプロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(イソブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記したオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)より成り、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
【0055】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)はオレフィン類重合用固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0056】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0057】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0058】
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、及び成分(C)より成る触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0059】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0060】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、高い立体規則性を維持しながら極めて高い収率でオレフィン類重合体を得ることができる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されない。
【0062】
実施例1
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10gおよびトルエン80m lを装入して、懸濁状態とした。次いで該懸濁溶液に四塩化チタン20mlを加えて、昇温し、80℃に達した時点でフタル酸ジ-n- ブチル3.0gを加え、さらに昇温して110℃とした。その後110℃の温度を保持した状態で、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、90℃のトルエン100mlで3回洗浄し、新たにあらかじめ四塩化チタン20mlおよびトルエン80ml中に2,3−ナフタレンジオール0.16gを加え、室温で1時間撹拌した溶液を加え、110℃に昇温し、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで7回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタン含有率を測定したところ、3.2重量%であった。
【0063】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。固体触媒成分1g当たりの重合活性は52,800g−PP/g−cat.であった。重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)( 測定方法は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準ずる) は6.3g/10min であった。なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。
重合活性=(a)211.2(g)/固体触媒成分0.0040(g)
またこの重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体(b)は208.2gであり、重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合は98.6重量%となった。
【0064】
比較例1
2,3−ナフタレンジオールを加えなかったこと以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果固体触媒成分中のチタン含有量は2.9重量%であった。固体触媒成分1g当たりの重合活性は42,400g−PP/g−cat.であった。重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)は6.6g/10min であった。重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合は98.7重量%となった。
【0065】
以上の結果から、本発明の固体触媒成分および触媒は、プロピレンの重合において高活性であり、高い収率でプロピレン重合体が得られることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高活性であり、高い立体規則性を高度に維持しながら、オレフィン類重合体を高い収率で得ることができ、特にプロピレンの重合において高活性であり、プロピレン重合体を、立体規則性を維持しながら高い収率で得ることができる。従って、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
Claims (4)
- (a)マグネシウム化合物、(b)四塩化チタン、(c)フタル酸ジエステル、および(d)下記一般式(1);
(R1 )m X(OH)n (1)
(式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基またはハロゲン原子を示し、mは0、1または2であり、mが2であるときR1 は同一でも異なっていてもよく、nは2または3であり、Xはナフタレンから水素(m+n)原子を取り去った基を示す。)で表わされるナフタレン誘導体から形成されることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分。 - 前記マグネシウム化合物がジアルコキシマグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記ナフタレン誘導体が2,3−ナフタレンジオールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- (A)請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(2);
R2 p AlQ3-p (2)
(式中、R2 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の整数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(3);
R3 q Si(OR4 )4-q (3)
(式中、R3 は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R4 は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
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