JP4189215B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分および触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対水素活性が良好であり、ポリマーの立体規則性及び収率を高度に維持できるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。例えば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)並びに特許文献2(同57−63311号公報)においては、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体を含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物およびSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、特に炭素数が3以上のオレフィン類を重合させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、高立体規則性重合体を高収率で得るには、必ずしも充分に満足したものではなく、より一層の改良が望まれていた。
【0003】
一方、特許文献3(特開昭63−3010号公報)においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素化合物およびチタンハロゲン化物を接触して得られた生成物を、粉末状態で加熱処理することにより調製した固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物より成るプロピレン重合用触媒とプロピレンの重合方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献4(特開平1−315406号公報)においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸ジクロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物より成るプロピレン重合用触媒および該触媒の存在下でのプロピレンの重合方法が提案されている。
【0005】
上記各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記のような触媒を用いて得られるポリマーは、自動車あるいは家電製品等の成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成型機により成型されるが、特に射出成型等でかつ大型の成型品を製造する際に、溶融ポリマーの流動性(メルトフローレイト)が高いことが要求される場合があり、そのためポリマーのメルトフローレイトを上げるべく多くの研究が為されている。
【0007】
メルトフローレイトは、ポリマーの分子量に大きく依存する。当業界においてはプロピレンの重合に際し、生成ポリマーの分子量調節剤として水素を添加することが一般的に行われている。このとき低分子量のポリマーを製造する場合、すなわち高メルトフローレイトのポリマーを製造するためには通常多くの水素を添加するが、リアクターの耐圧にはその安全性から限度があり、添加し得る水素量にも制限がある。このため、より多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧を下げざるを得ず、この場合生産性が低下することになる。また、水素を多量に用いることからコストの面の問題も生じる。従って、より少ない水素量で高メルトフローレイトのポリマーが製造できるような、いわゆる対水素活性が高くかつ高立体規則性ポリマーを高収率で得られる触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭57−63310号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭57−63311号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭63−3010号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平1−315406号公報(特許請求の範囲)
【0009】
すなわち、本発明の目的は、上記した従来の触媒より高い対水素活性を有し、且つポリマーの立体規則性と収率とを高度に維持することができるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム化合物、電子供与性化合物として置換基を有していてもよいマロン酸ジエステルおよびシロキサンを用いて調製した固体触媒成分による触媒が、上記した従来の触媒より高い対水素活性を有し、且つポリマーの立体規則性と収率とを高度に維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、上記目的を達成するための、本発明によるオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)は、マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、下記一般式(1)で表される電子供与性化合物(c)および1,3-ジハロアルキルジシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサン(d)を接触させることにより調製されるものである。
R1R2C(COOR3)2(1)
(式中、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基およびハロゲン原子が1または2置換した炭素数1から10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基から選ばれるいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。)
【0012】
また、本発明のもう一つのオレフィン類重合用固体触媒成分(A2)は、マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、下記一般式(1)で表される電子供与性化合物(c)、1,3-ジハロアルキルジシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサン(d)および下記一般式(2)で表される電子供与性化合物(e)を接触させることにより調製されるものである。
R1R2C(COOR3)2(1)
(式中、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基およびハロゲン原子が1または2置換した炭素数1から10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基から選ばれるいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。)
(R4)lC6H4−l(COOR5)(COOR6) (2)
(式中、R4は炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R5およびR6は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R5とR6は同一であっても異なってもよく、また、置換基R4の数lは0、1又は2であり、lが2のとき、R4は同一であっても異なってもよい。)
【0013】
また、本発明のオレフィン類重合用触媒は、上記の固体触媒成分(A1)または固体触媒成分(A2)、(B)下記一般式(3);
R7 pAlQ3−p (3)
(式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および外部電子供与性化合物(C)によって形成されるオレフィン類重合用触媒である。
【0014】
さらに、本発明のオレフィン類重合用触媒は、上記の固体触媒成分(A1)または固体触媒成分(A2)、(B)下記一般式(3);
R7 pAlQ3−p (3)
(式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(4);
R8 qSi( OR9)4−q (4)
(式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R9は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物によって形成されるオレフィン類重合用触媒である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち一つ目の固体触媒成分(A1)(以下、「成分(A1)」ということがある。)の調製に用いられるマグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある。」)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中でもジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記のマグネシウム化合物(a)は、単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0016】
更に、本発明において成分(A1)の調製に好適なジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0017】
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
【0018】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0019】
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
【0020】
本発明における固体触媒成分(A1)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下単に「成分(b)ということがある。」)は、一般式Ti( OR10)nX4−n(式中、R10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、nは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドおよびアルコキシチタンハライドからなる化合物群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
【0021】
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0022】
本発明における固体触媒成分(A1)の調製に用いられる電子供与性化合物(c)(以下単に「成分(c)ということがある。」)としては、前記一般式(1)で表されるマロン酸ジエステル、並びにハロゲン置換マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステルおよびハロゲン化アルキル置換マロン酸ジエステルなど置換マロン酸ジエステルを挙げることができる。
【0023】
上記一般式(1)において、R1およびR2がハロゲン原子の場合、ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子であり、好ましくは塩素原子および臭素原子である。また上記一般式中、R1およびR2は、1つ以上の2級炭素、3級炭素あるいは4級炭素を含む炭素数3〜10の分岐鎖状アルキル基が好ましく、特にイソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基が好ましい。また、上記一般式(1)においてカルボニルのエステル残基であるR3は、アルキル基が好ましく、特に炭素数が1〜8の直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的にはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基であり、このうち、エチル基が特に好ましい。
【0024】
マロン酸ジエステル、すなわち上記一般式(1)においてR1およびR2が共に水素原子である化合物の具体例としては、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチルなどが挙げられる。
【0025】
ハロゲン置換マロン酸ジエステル、すなわち上記一般式(1)においてR1およびR2が共にハロゲン原子であるか、R1およびR2がハロゲン原子及び水素原子である化合物の具体例としては、クロロマロン酸ジエチル、ジクロロマロン酸ジエチル、ブロモマロン酸ジエチル、ジブロモマロン酸ジエチル、クロロマロン酸ジプロピル、ジクロロマロン酸ジプロピル、ブロモマロン酸ジプロピル、ジブロモマロン酸ジプロピル、クロロマロン酸ジブチル、ジクロロマロン酸ジブチル、ブロモマロン酸ジブチル、ジブロモマロン酸ジブチル、クロロマロン酸ジイソブチル、ジクロロマロン酸ジイソブチル、ブロモマロン酸イソジブチル、ジブロモマロン酸ジイソブチル、クロロマロン酸ジペンチル、ジクロロマロン酸ジペンチル、ブロモマロン酸ジペンチル、ジブロモマロン酸ジペンチル、クロロマロン酸ジネオペンチル、ジクロロマロン酸ジネオペンチル、ブロモマロン酸ジネオペンチル、ジブロモマロン酸ジネオペンチル、クロロマロン酸ジイソオクチル、ジクロロマロン酸ジイソオクチル、ブロモマロン酸ジイソオクチル、ジブロモマロン酸ジイソオクチルなどが挙げられる。
【0026】
アルキルおよびハロゲン置換マロン酸ジエステル、すなわち上記一般式(1)のR1およびR2がアルキル基およびハロゲン原子である化合物の具体例としては、エチルクロロマロン酸ジブチル、エチルブロモマロン酸ジブチル、イソプロピルクロロマロン酸ジブチル、イソプロピルブロモマロン酸ジブチル、イソプロピルクロロマロン酸ジイソブチル、イソプロピルブロモマロン酸ジイソブチル、イソプロピルクロロマロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジネオペンチル、ブチルクロロマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルクロロマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0027】
アルキル置換マロン酸ジエステル、すなわち、上記一般式(1)のR1およびR2が共にアルキル基である化合物の具体例としては、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジブチル、ジイソプロピルマロン酸ジイソブチル、ジイソプロピルマロン酸ジネオペンチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジプロピル、ジイソブチルマロン酸ジイソプロピル、ジイソブチルマロン酸ジブチル、ジイソブチルマロン酸ジイソブチル、ジイソブチルマロン酸ジネオペンチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジプロピル、ジイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、ジイソペンチルマロン酸ジブチル、ジイソペンチルマロン酸ジイソブチル、ジイソペンチルマロン酸ジネオペンチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジプロピル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジイソプロピル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジブチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジイソブチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジネオペンチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジプロピル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジブチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジイソブチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジネオペンチルなどが挙げられる。
【0028】
ハロゲン化アルキル置換マロン酸ジエステル、すなわち、上記一般式(1)のR1およびR2が共にハロゲン化アルキル基である化合物の具体例としては、ビス(クロロメチル)マロン酸ジエチル、ビス(ブロモメチル)マロン酸ジエチル、ビス(クロロエチル)マロン酸ジエチル、ビス(ブロモエチル)マロン酸ジエチル、ビス(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、上記の内でも特にイソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチルが好ましく、ジイソブチルマロン酸ジエチルが特に好ましい。また、上記一般式(1)で表される電子供与性化合物(c)は、単独の化合物で用いることもでき、また、2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明の固体触媒成分(A1)において、該固体触媒成分の調製に用いられる電子供与性化合物(c)として、前記マロン酸ジエステルあるいは置換マロン酸ジエステルを使用すれば、芳香族エステル化合物を用いなくとも、対水素活性が良好で、更にポリマーの立体規則性および収率を高度に維持できる。また、芳香族エステル化合物を用いないため、安全衛生等の環境面の問題もクリヤーできる。
【0030】
本発明における固体触媒成分(A1)の調製に用いられるシロキサン(d)(以下単に「成分(d)ということがある。」)は、共に主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する化合物であり、アルキルジシロキサン、ハロゲン置換アルキルジシロキサン、1,3−ジハロアルキルジシロキサンおよび1,3−ジハロフェニルジシロキサンなどのジシロキサン、あるいはポリシロキサンなどが例示できる。このうちポリシロキサンは重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm2/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm2/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0031】
ジシロキサンの具体的な化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1,3−ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、トリシロキサン、テトラシロキサンまたはペンタシロキサンとしては、1,5−ジクロロヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、1,5−ジブロモヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ジブロモオクタメチルテトラシロキサン、3−クロロメチルヘプタメチルトリシロキサン、3,5−ビス(クロロメチル)オクタメチルテトラシロキサン、3,5,7−トリス(クロロメチル)ノナメチルペンタシロキサン、3−ブロモメチルヘプタメチルトリシロキサン、3,5−ビス(ブロモメチル)オクタメチルテトラシロキサン、3,5,7−トリス(ブロモメチル)ノナメチルペンタシロキサンなどが挙げられ、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンが特に好ましい。
【0032】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジクロロポリシロキサン、ジブロモポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。また、電子供与性化合物(d)は、単独の化合物で用いることもでき、また、2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明の固体触媒成分(A1)において、該固体触媒成分の調製に用いられる電子供与性化合物として、前記マロン酸ジエステルあるいは置換マロン酸ジエステルと併せてポリシロキサンを使用すれば、対水素活性がより良好で、更にポリマーの立体規則性および収率を高度に維持することができる。
【0034】
また本発明の他の固体触媒成分(A2)((以下、「成分(A2)」ということがある。)の調製に用いられる成分は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の他に、上記一般式(2)で表される電子供与性化合物(e)(以下単に「成分(e)ということがある。」)である。成分(e)としては、フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステルまたはハロゲン化アルキル置換フタル酸ジエステルなど置換フタル酸ジエステルが挙げられる。
【0035】
このうち、フタル酸ジエステル、すなわち上記一般式(2)においてlが0である化合物の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、フタル酸ジ−n−ブチルが好ましく、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0036】
また、置換フタル酸ジエステルとしては、一般式(2)において、R4の炭素数1〜8のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基であり、R4のハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。R4は好ましくはメチル基、臭素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはメチル基または臭素原子である。
【0037】
上記一般式(2)において、R5およびR6はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、またはイソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基が好ましく、エチル基、n−ブチル基、ネオペンチル基が特に好ましい。また、置換基R4の数lは1又は2であり、lが2のとき、R4は同一でもあっても異なってもよい。lが1の場合、R4は上記一般式(2)のフタル酸エステル誘導体の3位、4位又は5位の位置の水素原子と置換し、lが2の場合、R4は4位および5位の位置の水素原子と置換すると好ましい。
【0038】
上記一般式(2)で表される置換フタル酸ジエステルとしては、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−エチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルが挙げられる。
【0039】
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
【0040】
本発明の固体触媒成分(A2)において、該固体触媒成分の調製に用いられる電子供与性化合物として、前記マロン酸ジエステルあるいは置換マロン酸ジエステルと併せてフタル酸ジエステルあるいは置換フタル酸ジエステルを使用すれば、各々単独で用いたときよりも、対水素活性がより良好で、更に高立体規則性ポリマーを高収率で得ることができる。
【0041】
固体触媒成分(A1)および(A2)においては、上記成分(a)〜(d)または上記成分(a)〜(e)を、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)(以下単に「成分(f)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A1)および(A2)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物以外の飽和炭化水素化合物等を用いると、反応または洗浄の際、不純物の溶解度が低下し、結果として得られる固体触媒成分の触媒活性や得られるポリマーの立体規則性が低下する点で好ましくない。
【0042】
以下に、本発明の成分(A1)および(A2)の調製方法について述べる。具体的には、マグネシウム化合物(a)を、アルコール、ハロゲン化炭化水素溶媒、4価のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素化合物(f)に懸濁させ、置換マロン酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)または(c)と(e)、およびシロキサン(d)または4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触して固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができる。
【0043】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0044】
以下に、本発明の固体触媒成分(A1)を調製する際の好ましい接触順序をより具体的に例示する。
(1)(a)→(f)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(2)(a)→(f)→(c)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(3)(a)→(f)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(4)(a)→(f)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(f)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(5)(a)→(f)→(c)→(b)→(d)《中間洗浄→(f)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(6)(a)→(f)→(c)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(7)(a)→(c)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(8)(a)→(c)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(b)+(f)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(9)(a)→(c)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(b)+(f)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
(10)(a)→(c)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A1)
【0045】
また、以下に、本発明の固体触媒成分(A2)を調製する際の好ましい接触順序をより具体的に例示する。
(11)(a)→(f)→(b)→(c)+(e)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(12)(a)→(f)→(c)+(e)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(13)(a)→(f)→(b)→(c)+(e)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(14)(a)→(f)→(b)→(c)+(e)→(d)+(e)→《中間洗浄→(f)→(c+(e))→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(15)(a)→(f)→(c)+(e)→(b)→(d)《中間洗浄→(f)→(b)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(16)(a)→(f)→(c)+(e)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(c)+(e)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(17)(a)→(c)+(e)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(b)+(f)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(18)(a)→(c)+(e)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(19)(a)→(c)+(e)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(b)+(f)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
(20)(a)→(c)+(e)+(f)→(b)→(d)→《中間洗浄→(f)→(b)→(c)+(e)》→最終洗浄→固体触媒成分(A2)
【0046】
なお、上記の各接触方法において、二重かっこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数回繰り返し行うことで一層活性が向上する。かつ《 》内の工程で用いる成分(b)あるいは成分(d)は、新たに加えたものでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記(1)〜(20)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄することもできる。
【0047】
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A1)の好ましい調製方法としては、マグネシウム化合物(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上、およびポリシロキサン(d)を、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物(c)を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄および反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A1)を得る。
【0048】
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A1)の特に好ましい調製方法としては、成分(b)と成分(f)とから混合溶液を形成し、次いで成分(a)と成分(c)と成分(f)とから形成した懸濁液を、該混合溶液に接触して、得られた混合溶液に成分(d)を添加し、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0049】
本願における固体触媒成分(A1)の最も好ましい調製方法としては、以下の調製方法を挙げることができる。成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)より混合溶液を形成する。次いで、成分(a) 、成分(c)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)を用いて形成された懸濁液を、前記混合溶液中に添加する。昇温により40〜105℃になった時点で、成分(d)を添加し、さらに昇温して80〜130℃とした。その後、温度を保持した状態で、撹拌しながら反応処理をする(第一反応処理)。反応終了後、得られた固体生成物を中間洗浄し、新たに成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)を加え、反応処理(第二次反応処理)する。反応終了後、最終洗浄して、固体触媒成分(A1)を得る。
【0050】
また、本願における固体触媒成分(A2)の好ましい調製方法としては、マグネシウム化合物(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上、電子供与性化合物(e)の1種または2種以上およびポリシロキサン(d)を、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物(c)を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜120℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄および反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A2)を得る。
【0051】
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A2)の特に好ましい調製方法としては、成分(b)と成分(f)とから混合溶液を形成し、次いで成分(a)と成分(c)と成分(e)と成分(f)とから形成した懸濁液を、該混合溶液に添加して、得られた混合溶液に成分(d)を添加し、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0052】
本願における固体触媒成分(A2)の最も好ましい調製方法としては、以下の調製方法を挙げることができる。成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)より混合溶液を形成する。次いで、成分(a) 、成分(c)、成分(e)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)を用いて形成された懸濁液を、前記混合溶液中に添加する。昇温により40〜105℃になった時点で、成分(d)を添加し、さらに昇温して80〜130℃とした。その後、温度を保持した状態で、撹拌しながら反応処理をする(第一反応処理)。反応終了後、得られた固体生成物を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)し、新たに成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(f)を加え、反応処理(第二次反応処理)する。反応終了後、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)して、固体触媒成分(A1)を得る。
【0053】
上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は以下の通りである。
・低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時間。
・反応処理:0〜130℃、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜115℃で、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4時間。
・洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは1〜15回、特に好ましくは1〜10回。なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体の芳香族化合物あるいは飽和炭化水素化合物が好ましく、具体的には、芳香族炭化水素化合物としてトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素化合物としてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素化合物を、最終洗浄では飽和炭化水素化合物を用いることが望ましい。
【0054】
固体触媒成分(A1)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(a)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、ポリシロキサン(d)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gであり、芳香族炭化水素化合物(f)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。また、固体触媒成分(A2)を調製する際の成分(a)と成分(b)〜成分(d)および成分(f)との使用量比は固体触媒成分(A1)と同様であり、加えて、電子供与性化合物(e)の使用量は、成分(a)1モル当たり、電子供与性化合物(e)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルである。
【0055】
また本発明における固体触媒成分(A1)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが1.8〜8.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物(c)が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。本発明の電子供与性化合物とその他の成分を使用してなる固体触媒成分(A1)の総合性能を更にバランスよく発揮させるには、チタン含有量が2〜8重量%、マグネシウム含有量が15〜25重量%、ハロゲン原子の含有量が45〜75重量%、電子供与性化合物(c)の含有量が2〜20重量%であることが望ましい。
【0056】
また固体触媒成分(A2)の場合、好ましくは、チタンが1.8〜8.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物(c)が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%、電子供与性化合物(e)が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
【0057】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、上記一般式(3)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0058】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては前記した固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でも9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルなどのエステル類、また有機ケイ素化合物である。
【0059】
上記の有機ケイ素化合物としては、上記一般式(4)で表される化合物が用いられる。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0060】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5 −ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0061】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記したオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)または(A2)、成分(B)、および成分(C)を含有し、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
【0062】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A1)または(A2)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0063】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)または(A2)を接触させることが望ましい。
【0064】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0065】
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)または(A2)、成分(B)、および成分(C)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0066】
予備重合を行うに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)または(A2)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A1)または(A2)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0067】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、より高い対水素活性を有し、更に高活性で、高立体規則性のポリマーを高収率で得ることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
実施例1
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、球状ジエトキシマグネシウム(球形度l/w:1.10)10g 、ジイソブチルマロン酸ジエチル3.1mlおよびトルエン50mlを用いて形成された懸濁液を、前記混合溶液中に添加した。100℃になった時点で、デカメチルシクロペンタシロキサンを4ml添加し、さらに昇温して110℃とした。その後110℃の温度を保持した状態で、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、110℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、3.0重量%であった。
【0069】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)、生成重合体(a)のメルトフローレイトの値(MFR)を表1に示した。
【0070】
なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。
重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g)
また、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合(重量%)とした。
また、生成重合体(a)のメルトフローレイトの値(MFR)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。
【0071】
実施例2
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g、ジイソブチルマロン酸ジエチル2.4mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル2.4mlおよびトルエン80mlを装入して、懸濁状態とした。次いで該懸濁溶液に四塩化チタン20mlを加えて、昇温し、80℃に達した時点でを加え、100℃になった時点で、デカメチルシクロペンタシロキサンをそれぞれ2ml添加し、さらに昇温して110℃とした。その後110℃の温度を保持した状態で、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、90℃のトルエン100mlで3回洗浄し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、110℃に昇温し、1時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで7回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中の固液を分離して、固体分中のチタン含有率を測定したところ、2.8重量%であった。
【0072】
〔重合触媒の形成および重合〕
上記のようにして得られた固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に重合触媒の形成および重合を行った。その結果を表1に示した。
【0073】
実施例3
デカメチルシクロペンタシロキサン4mlの代わりに、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン4mlを用いた以外は実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.3重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0074】
比較例1
デカメチルシクロペンタシロキサンを添加しなかった以外は実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果固体触媒成分中のチタン含有量は4.1重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0075】
比較例2
ジイソブチルマロン酸ジエチルを添加しなかった以外は実施例2と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果固体触媒成分中のチタン含有量は2.6重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0076】
比較例3
ジイソブチルマロン酸ジエチルおよびデカメチルシクロペンタシロキサンを添加しなかった以外は実施例2と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果固体触媒成分中のチタン含有量は3.3重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から、本発明の固体触媒成分および触媒を用いてプロピレンの重合を行うことにより、より高い対水素活性を示し、オレフィン類重合体の立体規則性および収率が高度に維持されていることがわかる。
【0079】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、従来の触媒より高い対水素活性を有し、且つポリマーの立体規則性と収率とを高度に維持することができる。従って、重合に際して用いる水素量を削減できるため、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
Claims (8)
- マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、下記一般式(1)で表される電子供与性化合物(c)および1,3-ジハロアルキルジシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサン(d)を接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分。
R1R2C(COOR3)2(1)
(式中、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基およびハロゲン原子が1または2置換した炭素数1から10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基から選ばれるいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。) - マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、下記一般式(1)で表される電子供与性化合物(c)、1,3-ジハロアルキルジシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサン(d)および下記一般式(2)で表される電子供与性化合物(e)を接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分。
R1R2C(COOR3)2 (1)
(式中、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基およびハロゲン原子が1または2置換した炭素数1から10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基から選ばれるいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。)
(R4)lC6H4−l(COOR5)(COOR6) (2)
(式中、R4は炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R5およびR6は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R5とR6は同一であっても異なってもよく、また、置換基R4の数lは0、1又は2であり、lが2のとき、R4は同一であっても異なってもよい。) - 前記マグネシウム化合物が、ジアルコキシマグネシウムである請求項1または2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記一般式(1)中のR1またはR2がイソブチル基である請求項1または2記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記一般式(1)中のR3がエチル基である請求項1または2記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記電子供与性化合物(c)がジイソブチルマロン酸ジエチルである請求項1または2記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- (A)請求項1〜6のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(3);R7 pAlQ3−p(3)
(式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および外部電子供与性化合物(C)によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。 - (A)請求項1〜6のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(3);R7 pAlQ3−p(3)
(式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(4);
R8 qSi( OR9)4−q (4)(式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R9は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
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