JP3765278B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立体規則性を高度に維持しながら、極めて高い収率でオレフィン類重合体を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合もしくは共重合させるオレフィンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭59−142206号公報には、アルコキシマグネシウムを酢酸メチルのごときカルボン酸エステルの存在下、芳香族炭化水素に懸濁させ、次いでおよび四塩化チタンのごときハロゲン化チタンを接触してなるオレフィン類重合用触媒成分が開示されている。
【0003】
また、特開昭62−158704号公報には、アルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素に懸濁させ、しかる後にハロゲン化チタンと接触させて得られた組成物にさらにハロゲン化チタンを接触させ、この際いずれかの時点でフタル酸ジエステルのごとき芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させて得られる個体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物からなるオレフィン類重合用触媒が開示されている。
【0004】
さらに特開平9−169808号公報には、アルコキシマグネシウム、チタン化合物、フタル酸ジエステルのごとき芳香族ジカルボン酸のジエステルおよび環状又は鎖状ポリシロキサンを用いて調製されるオレフィン類重合用触媒成分が開示されている。
【0005】
上記従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。
【0006】
しかし、近年のオレフィン重合体のコスト低減要求、プロセス改善、また共重合体のような高機能を有する重合体を効率よく製造するために、さらに触媒の高活性化が強く望まれており、この要求を満足するには必ずしも十分ではなく、より一層の改良が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、オレフィン類重合体を極めて高い収率で得ることのでき、特にプロピレン重合体を高い立体規則性を維持しながら高い収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム化合物、4価のチタンハロゲン化合物、電子供与性化合物および特定のハロゲン含有ポリシロキサンから形成される固体触媒成分が、オレフィン類の重合に供したときに極めて高い活性を示し、特にプロピレンの重合に供したとき、高い立体規則性を維持しながら極めて高い活性と収率を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)ジアルコキシマグネシウム、(b)4価のチタンハロゲン化合物、(c)芳香族ジカルボン酸ジエステルおよび(d)下記一般式(1);
X(R1 2SiO)nSiR2 2X (1)
(式中Xはハロゲン原子、R1およびR2は炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、フェニル基および水素原子、nは1〜1000の整数である。)で表されるハロゲン含有ポリシロキサンを接触させることにより調製されることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、(A)上記固体触媒成分および(B)下記一般式(2);
R3 pAlQ3-p (2)
(式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物から形成されるオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、(A)上記固体触媒成分、(B)下記一般式(2);
R3 pAlQ3-p (2)
(式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(3);R4 q Si(OR5)4-q (3)
(式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、R5は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から形成されるオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち固体触媒成分(A)(以下、「成分(A)」ということがある。)の調製に用いられるマグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある。」としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中でもジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0013】
更に、本発明において成分(A)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0014】
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
【0015】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0016】
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
【0017】
本発明における成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、一般式Ti(OR6)mCl4-m(式中、R6 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
【0018】
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0019】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0020】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジエステル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類等を挙げることができる。
【0021】
また、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0022】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステル及びその誘導体が好適である。このうち、フタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0023】
また、フタル酸ジエステル誘導体としては、下記一般式(6);
(R7)lC6H4(COOR8)(COOR9) (6)
(式中、R7は炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R8およびR9は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R8とR9は同一であっても異なってもよく、また、置換基R7の数lは1又は2であり、lが2のとき、R7は同一であっても異なってもよい。)で表わされるものが好ましい。
【0024】
上記一般式(6)において、R7の炭素数1〜8のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基であり、R7のハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。R7は好ましくはメチル基、臭素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはメチル基または臭素原子である。
【0025】
上記一般式(6)において、R8およびR9はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、またはイソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基が好ましく、エチル基、n−ブチル基、ネオペンチル基が特に好ましい。また、置換基R7の数lは1又は2であり、lが2のとき、R7は同一でもあっても異なってもよい。lが1の場合、R7は上記一般式(6)のフタル酸エステル誘導体の3位、4位又は5位の位置の水素原子と置換し、lが2の場合、R7は4位および5位の位置の水素原子と置換すると好ましい。
【0026】
上記一般式(6)で表されるフタル酸ジエステル誘導体としては、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−エチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルが挙げられる。
【0027】
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
【0028】
本発明の成分(A)の調製に用いられるハロゲン含有ポリシロキサン(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)は上記一般式(1)で表される化合物である。上記一般式(1)においてハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子であり、好ましくは塩素原子および臭素原子である。本発明の成分(d)はα、ω−ジハロアルキルポリシロキサン、α、ω−ジハロアリールポリシロキサン、α、ω−ジハロフェニルポリシロキサン、あるいはα、ω−ジハロハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的な化合物としては、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、5−ジクロロヘキサメチルトリシロキサン、1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、ジクロロポリシロキサン、1、3−ジブロモテトラメチルジシロキサン、1、5−ジブロモヘキサメチルトリシロキサン、1、7−ジブロモオクタメチルテトラシロキサン、ジブロモポリシロキサンなどが挙げられる。これらのハロゲン含有ポリシロキサンは1種又は2種以上用いることができる。ハロゲン含有ポリシロキサン(d)を用いることにより、生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができる。
【0029】
本発明においては、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を、芳香族炭化水素(e)(以下単に「成分(e)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、この成分(e)としては具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素が好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、上記成分の他、更に、上記ハロゲン含有ポリシロキサン(d)以外のポリシロキサン(以下単に「成分(f)」ということがある。)を使用することが好ましく、ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が2〜10000センチストークス、より好ましくは3〜500センチストークスを有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0031】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0032】
このようにハロゲンを含まないポリシロキサンを上記成分(d)のハロゲン含有ポリシロキサン(f)と併用することによって、さらに生成する重合体の立体規則性を向上することができる。
【0033】
以下に、本発明の成分(A)の調製方法について述べる。具体的には、ジアルコキシマグネシウム(a)を、アルコール、ハロゲン化炭化水素溶媒、4価のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素(e)に懸濁させ、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)及び/または4価のチタンハロゲン化合物(b)及びハロゲン含有ポリシロキサン(d)を接触して固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができる。
【0034】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0035】
本発明の好ましい固体触媒成分(A)の調製方法としては、成分(a)を成分(e)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)及び成分(d)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(e)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させその後成分(d)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分(A)を調製する方法を挙げることができる。
【0036】
以下に、本発明の固体触媒成分(A)を調製する際の好ましい接触順序をより具体的に例示する。
(1)(a)→(e)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(e)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(2)(a)→(e)→(c)→(b)→(d)→《中間洗浄→(e)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(3)(a)→(e)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(e)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(4)(a)→(e)→(b)→(c)→(d)→《中間洗浄→(e)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(5)(a)→(e)→(c)→(b)→(d)《中間洗浄→(e)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(6)(a)→(e)→(c)→(b)→(d)→《中間洗浄→(e)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
【0037】
なお、上記の各接触方法において、二重かっこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数回繰り返し行なうことで一層活性が向上する。かつ《 》内の工程で用いる成分(b)あるいは成分(e)は、新たに加えたものでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記(1)〜(6)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄することもできる。
【0038】
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素(e)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、さらに電子供与性化合物(c)を接触させた後に、ハロゲン含有ポリシロキサン(d)を20〜130℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物の1種あるいは2種以上を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A)を得る。
上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は以下の通りである。
【0039】
・低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時間。
・反応処理:40〜130℃、好ましくは70〜120℃、特に好ましくは80〜115℃で、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4時間。
・洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは1〜15回、特に好ましくは1〜10回。なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体の芳香族あるいは飽和炭化水素が好ましく、具体的には、芳香族炭化水素としてトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素としてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素を、最終洗浄では飽和炭化水素を用いることが望ましい。
【0040】
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、ハロゲン含有ポリシロキサン(d)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gであり、芳香族炭化水素(e)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルでである。
【0041】
また、本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.5〜8.0重量%、好ましくは1.0〜6.0重量%、より好ましくは1.5〜4.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜85重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
【0042】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(2)で表される化合物であれば、特に制限されないが、R3としては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、pは、2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0043】
また、本発明の触媒では上記成分(A)及び成分(B)の他に電子供与性化合物(C)(以下単に「成分(C)」ということがある。)を用いることができる。特にプロピレンの立体規則性重合を行う際、成分(C)を用いることにより、触媒の活性および重合体の立体規則性を向上させることができる。
【0044】
オレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる電子供与性化合物(C)としては前記した固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でも9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルなどのエステル類、また有機ケイ素化合物である。
【0045】
上記のなかでも特に有機ケイ素化合物が好ましく、上記一般式(3)で表される化合物が用いられる。一般式(3)で表される有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0046】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリイソブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(イソプロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(イソブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(イソプロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(イソブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
【0048】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常、成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)は(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0049】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。電子供与性化合物(C)を用いる場合、まず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで電子供与性化合物(C)を接触させ、次いで固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。更にあるいは重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、一方で成分(A)と成分(C)とを予め接触させ、接触させた成分(A)、成分(C)を重合系内に装入接触させ触媒を形成することを特徴とすることも好ましい態様である。このように予め成分(A)と成分(C)とを接触させて処理することによって、触媒の対水素活性および生成ポリマーの結晶性をより向上させることが可能となる。
【0050】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0051】
更に、本発明において成分(A)及び成分(B)、又は成分(C)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。具体的には、オレフィン類の存在下に成分(A)、成分(B)または成分(C)を接触させ、成分(A)1gあたり0.1〜100gのポリオレフィンを予備的に重合させ、さらに成分(B)または成分(C)を接触させ触媒を形成する。
【0052】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。
【0053】
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、同じ水素量で生成ポリマーのメルトフローレイト(MI)が向上しており、更に触媒活性及び生成ポリマーの立体規則性も従来の触媒と同等の性能を示す。すなわち、本発明の触媒をオレフィン類の重合に用いると、活性及びポリマーの結晶性を高度に維持しつつ、対水素活性が改善されるという作用が確認された。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量1000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム75g及びトルエン350mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量1000mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン300ml及びチタンテトラクロライド150mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を4℃で1時間反応させた(低温熟成処理)。その後、フタル酸ジ−n−ブチル27.0mlを添加して、昇温して40℃と100℃になった時点で、1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンをそれぞれ15mlずつ添加した。さらに105℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を100℃のトルエン650mlで4回洗浄(中間洗浄)し、新たにトルエン600ml及びチタンテトラクロライド150mlを加えて、撹拌しながら100℃で2時間の反応処理(第2処理)を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタン500mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.2重量%であった。
【0055】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)、生成重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)を表1に示した。
【0056】
なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g)
また、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合(重量%)とした。さらに、生成重合体(a)のメルトインデックスの値(MI)は、ASTM D1238、又はJIS K7210に準じて測定した。
【0057】
実施例2
1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンの代わりに1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサンを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0058】
実施例3
1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンの代わりに1、5−ジクロロヘキサメチルトリシロキサンを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0059】
比較例1
1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンを用いなかった以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0060】
比較例2
1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンの代わりにデカメチルシクロペンタシロキサンを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンの代わりにジメチルポリシロキサンを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、固体触媒調製時にハロゲン含有ポリシロキサンを用いると、生成重合体の立体規則性を高度に維持しながら、触媒の活性が向上することがわかる。
【0064】
【発明の効果】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高い立体規則性を高度に維持しながら、オレフィン類重合体を極めて高い収率で得ることができる。従って、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造において有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
Claims (7)
- (a)ジアルコキシマグネシウム、(b)4価のチタンハロゲン化合物、(c)芳香族ジカルボン酸ジエステルおよび(d)下記一般式(1);
X(R1 2SiO)nSiR2 2X (1)
(式中Xはハロゲン原子、R1およびR2は炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、フェニル基および水素原子、nは1〜1000の整数である。)で表されるハロゲン含有ポリシロキサンを接触させることにより調製されることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。 - 前記4価のチタンハロゲン化合物が四塩化チタンである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記芳香族ジカルボン酸ジエステルがフタル酸ジエステルである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記成分(a)〜(d)を沸点が90〜150℃の常温で液状状態の芳香族炭化水素化合物の存在下に接触させる請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 前記成分(d)のハロゲン含有ポリシロキサンが、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、5−ジクロロヘキサメチルトリシロキサンおよび1、7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
- (A)請求項1に記載の固体触媒成分および(B)下記一般式(2);
R3 pAlQ3-p (2)
(式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。 - (A)請求項1に記載の固体触媒成分、(B)下記一般式(2);
R3 pAlQ3-p (2)
(式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(3);R4 q Si(OR5)4-q (3)
(式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、R5は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、又はアラルキル基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
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