JP3871291B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分の調製方法 - Google Patents
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Description
本発明は、オレフィン類重合用の固体触媒成分の調製方法に係り、特にスラリー法によるプロピレンの重合用として用いた際に優れた重合活性を示し、しかも比較的結晶性の低い、すなわち沸騰n−ヘプタン不溶解重合体の生成割合が90〜98重量%の範囲にある立体規則性ポリマーを、重合溶媒可溶分の生成率が少なく、かつ高収率で得ることができる高性能固体触媒成分の調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分、並びに該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物からなるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させるオレフィン類の重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭57−63310号及び同57−63311号公報においては、マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与体を含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及びSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせからなる触媒を用いて、特に炭素数が3以上のオレフィンを重合させる方法が提案されている。
【0003】
また、特開昭63−92614号公報においては、ハロゲン含有マグネシウム化合物、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素、チタンハロゲン化物及び塩化カルシウムを接触して得られる、オレフィン類重合用固体触媒成分が提案されている。
【0004】
また、特開平1−315406号公報においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸ジクロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物よりなるオレフィン類重合用触媒及び該触媒の存在下でのオレフィン類の重合方法が提案されている。
【0005】
上記各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の高活性型触媒を用いて重合を行うと、従来の三塩化チタン型固体触媒成分と有機アルミニウム化合物及び電子供与性化合物からなる触媒を用いる場合に比較して、触媒活性及び生成ポリマーの立体規則性が高くなる傾向があるが、特に生成ポリマーをシートやフィルムに加工する場合、その高い立体規則性が災いし、高速成型時に破断したり、得られる成型品の透明性を損なうなどの問題が生じる。しかし上記の高活性型触媒を使用して、重合条件の変更などにより生成ポリマーの立体規則性を低くしようとすると、特にスラリー重合の場合には重合溶媒中に可溶なポリマー(特にプロピレン重合の場合には、アタクチックポリプロピレン:APPともいう。)の生成率が高くなり、重合時に配管の閉塞などを起こす恐れがあるほか、重合後に、製品となる高立体規則性の重合体からAPPを除去する工程が必要になり、プロセス操作及び製品製造コストに好ましくない影響を及ぼすことが懸念される。このように、従来の高活性型触媒の使用は、用途によっては不適切な場合があるが、逆に従来の三塩化チタン型固体触媒成分を用いると、活性が低いことによりポリマーの生産性が低下する。即ち、シートやフィルムなどの加工に適した比較的結晶性の低い、沸騰n−ヘプタン不溶解重合体の生成割合(以下、HIと略記することがある。)が90〜98重量%の範囲にあるポリマーを高収率で得ることができ、かつ重合時の溶媒可溶分の生成率が低い、高活性型のオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒の開発が当業者に強く望まれていたが、上記従来技術では係る要求を満たすのに充分ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、係る従来技術に残された問題点を解決し、重合溶媒可溶分の生成率が少なく、HIが90〜98重量%の範囲にある比較的結晶性の低いポリマーを高収率で生成できる、高活性型のオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ハロゲン含有マグネシウム化合物、チタン化合物、芳香族ジカルボン酸ジエステル、アルミニウム化合物を接触することにより得られるオレフィン類重合用固体触媒成分を用いることにより、所期の課題を解決し得るオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の調製方法は、ハロゲン含有マグネシウム化合物(a)、一般式Ti(OR1)n X4−n(式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタン化合物(b)、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)を接触させて得られる固体生成物に、該チタン化合物(b)の存在下にアルミニウムトリクロライドを接触させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(A)(以下、「固体触媒成分(A)」ということがある。)の調製に用いられる成分(a)の具体例としては、ジハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムなどが挙げられる。
【0013】
ジハロゲン化マグネシウムの具体例としては、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジアイオダイドなどが挙げられる。
【0014】
ハロゲン化アルキルマグネシウムの具体例としては、エチルマグネシウムクロライド、プロピルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライドなどを挙げることができ、これらは金属マグネシウムをハロゲン化炭化水素あるいはアルコールと反応させて得ることもできる。
【0015】
ハロゲン化アルコキシマグネシウムの具体例としては、メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、プロポキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライドなどを挙げることができる。
【0016】
上記のハロゲン含有マグネシウム化合物の中でも特にマグネシウムジクロライドが好ましく用いられる。また、上記のハロゲン含有マグネシウム化合物は、2種以上併用することもできる。
【0017】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる成分(b)は、下記一般式Ti(OR1 )n X4-n (式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライドの1種あるいは2種以上である。
【0018】
具体的には、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等のアルコキシチタンハライドが例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライド(TiCl4 )である。これらのチタン化合物は2種以上併用することもできる。
【0019】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる成分(c)としては、フタル酸あるいはテレフタル酸のジエステルの1種あるいは2種以上が好適である。
【0020】
フタル酸のジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0021】
テレフタル酸のジエステルの具体例としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ−n−プロピル、テレフタル酸ジ−iso−プロピル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジ−iso−ブチル、テレフタル酸エチルメチル、テレフタル酸メチル(iso−プロピル)、テレフタル酸エチル(n−プロピル)、テレフタル酸エチル(n−ブチル)、テレフタル酸エチル(iso−ブチル)、テレフタル酸ジ−n−ペンチル、テレフタル酸ジ−iso−ペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジ−n−ヘプチル、テレフタル酸ジ−n−オクチル、テレフタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸ジ−n−ノニル、テレフタル酸ジ−iso−デシル、テレフタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、テレフタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ペンチルヘキシル、テレフタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、テレフタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、テレフタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、テレフタル酸n−ペンチルウンデシル、テレフタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、テレフタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、テレフタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、テレフタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0022】
上記の内でも、フタル酸のジエステルが好適であり、その中でも特にフタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−iso−デシルが好ましく用いられる。
【0023】
本発明においては、成分(c)の他に、以下に示す電子供与性化合物、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等を併用することもできる。これらは1種あるいは2種以上使用することができる。
【0024】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0025】
また、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0026】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる成分(d)としては、下記一般式(2)または(3)で表される化合物の少なくとも1種である。
Al(OR2 )a M3-a (2)
(式中、R2 は炭化水素基を示し、Mはハロゲン原子を示し、aは0≦a≦3の実数である。)
R3 b AlN3-b (3)
(式中、R3 は炭化水素基を示し、Nはハロゲン原子または水素原子を示し、bは0≦b≦3の実数である。)
【0027】
一般式(2)で表されるアルミニウム化合物としては、アルミニウムトリハライド、アルコキシアルミニウムジハライド、ジアルコキシアルミニウムハライド及びトリアルコキシアルミニウムであり、これらの具体例としては、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、アルミニウムトリアイオダイド、エトキシアルミニウムジクロライド、iso−プロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジ−iso−プロポキシアルミニウムクロライド、ジブトキシアルミニウムクロライド、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリ−iso−ブトキシアルミニウムなどが挙げられ、とりわけアルミニウムトリクロライド、iso−プロポキシアルミニウムジクロライド、ジ−iso−プロポキシアルミニウムクロライド、トリエトキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウムが好ましい。
【0028】
一般式(3)で表されるアルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、ジアルキルアルミニウムハライド及びアルキルアルミニウムジハライドであり、これらの具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ−iso−ブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−iso−ブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドである。
【0029】
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、成分(d)として、上記の一般式(2)または一般式(3)で示した化合物群から選択されるものの1種あるいは2種以上を用いる。該成分(d)を接触させる際、トルエンあるいはキシレンのような芳香族炭化水素あるいはヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素などの有機溶媒で希釈して使用してもよい。
【0030】
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、上記必須の成分の他、選択的にポリシロキサンを使用することができる。
【0031】
ポリシロキサンとしては、下記一般式(化1)で表されるものの1種あるいは2種以上が用いられる。
【0032】
【化1】
【0033】
(式中、αは平均重合度を表し、2〜30000であり、R7 〜R14の主体はメチル基であり、ときにはR7 〜R14の一部分はフェニル基、水素原子、高級脂肪酸残基、エポキシ含有基、ポリオキシアルキレン基で置換されたものであり、また上記一般式の化合物はR10及びR11がメチル基の環状ポリシロキサンを形成していてもよい。)
【0034】
該ポリシロキサンは、シリコーンオイルとも総称され、25℃での粘度が2〜10000センチストークス、より好ましくは3〜500センチストークスを有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0035】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。
【0036】
本発明における固体触媒成分(A)の調製は、大別して2工程に分けられる。即ち、成分(a)、成分(b)、成分(c)を接触させて固体生成物を得る工程(以下、工程Iと略記することがある。)と、該固体生成物に、成分(b)の存在下で成分(d)を接触させて固体触媒成分(A)を得る工程(以下、工程IIと略記することがある。)である。
【0037】
工程Iについては、公知の方法を用いることができる。例えば、不活性有機溶媒中に各成分を懸濁させて行うことも可能であり、用いられる不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、メチレンクロライド、カーボンテトラクロライド、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。また、成分(a)を炭化水素化合物溶媒中に溶解させて行うこともできる。マグネシウム化合物を溶解させて調製を行う方法については、特開昭61−78803号公報、特開平2−84404号公報、あるいは米国特許4,784,983号公報などに開示されている。
【0038】
上記のように、工程Iにおいて固体生成物を調製する方法としては、ハロゲン含有マグネシウム化合物を、アルコールまたは炭化水素化合物などに溶解させた後、固体物を析出させて得る方法、またはハロゲン含有マグネシウム化合物をチタン化合物または不活性炭化水素溶媒等に懸濁させて得る方法等が挙げられるが、このうち、前者の方法で得られた固体生成物の粒子はほぼ球状に近く、粒度分布もシャープである。また、後者の方法においても、例えばスプレードライ法によって粒子を形成させることにより、上記と同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体生成物を得ることができる。
【0039】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、攪拌機を具備した容器中で、攪拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0040】
以下に、工程Iにおける固体生成物の調製方法を例示する。
【0041】
(1)成分(a)、炭化水素化合物溶媒、有機エポキシ化合物、有機リン化合物を反応させて均一溶液とした後、酸無水物などの析出助剤を接触させて固体成分を析出させ、次いで該析出成分に成分(b)を接触させ、更に成分(c)を接触させて固体生成物を得る方法。
【0042】
(2)成分(a)、炭化水素化合物溶媒、アルコールなどの溶解促進剤及び酸無水物などの電子供与性化合物を反応させて均一溶液とした後、該均一溶液に成分(b)を接触させ、更に成分(c)を接触させて固体生成物を得る方法。
【0043】
(3)成分(a)、炭化水素化合物溶媒、アルコキシチタン化合物などの溶解促進剤を反応させて均一溶液とした後、該均一溶液にポリシロキサン化合物などの析出助剤を接触させて固体成分を析出させ、更に成分(b)及び成分(c)を接触させて固体生成物を得る方法。
【0044】
(4)成分(a)に成分(b)及び成分(c)を接触させ、10℃以下の低温で共粉砕して固体生成物を得る方法。
【0045】
(5)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返して、固体生成物を得る方法。上記接触のいずれかの時点で、ポリシロキサンを併用することもできる。
【0046】
(6)成分(a)及び成分(c)を接触させ、その混合液を成分(b)中に添加し、反応させて固体成分を得、該固体成分を芳香族炭化水素で洗浄して、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返して、固体生成物を得る方法。上記接触のいずれかの時点で、ポリシロキサンを併用することもできる。
【0047】
(7)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点で塩化カルシウム等の無機塩を接触させて、固体生成物を調製する方法。上記接触のいずれかの時点で、ポリシロキサンを併用することもできる。
【0048】
(8)成分(a)及び塩化カルシウム等のカルシウム化合物を共粉砕し、得られた粉砕物に成分(b)及び成分(c)を接触反応させて固体生成物を得る方法。この際、一般式Si(OR15)4 (式中、R15はアルキル基またはアリール基を示す。)で表されるケイ素化合物を共存させることもできる。
【0049】
(9)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点でテトラブトキシチタンやトリイソプロポキシアルミニウム等のアルコキシ化合物を接触させて、固体生成物を調製する方法。
【0050】
(10)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点で界面活性剤を接触させて、固体生成物を得る方法。
【0051】
(11)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返して得られる固体成分を、炭化水素溶媒の存在下または不存在下で加熱処理して固体生成物を得る方法。この際、ハロゲン化炭化水素を共存させることもできる。
【0052】
(12)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点で水を接触させて、固体生成物を得る方法。この際、ハロゲン化炭化水素を共存させることもできる。
【0053】
(13)成分(a)を成分(b)と接触させ、その後昇温して炭素数の異なるアルキル基を有する2種以上の成分(c)と接触反応させて、更に必要に応じ成分(b)との接触を繰り返し、固体生成物を得る方法。この際、炭素数の異なるアルキル基を有する2種以上の成分(c)を、2回目以降の成分(b)との接触の際に再度接触させることもできる。また、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0054】
(14)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点でポリカルボニル化合物を接触させて、固体生成物を調製する方法。また、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0055】
(15)成分(a)を成分(b)と接触させ、次いで成分(c)及び必要に応じ他の電子供与性化合物を接触させて、更に必要に応じ成分(b)及び/または成分(c)などの電子供与性化合物との接触を繰り返す際に、いずれかの時点で1価あるいは多価のアルコールを接触させることにより固体生成物を得る方法。また、いずれかの時点でポリシロキサンを接触させることもできる。
【0056】
(16)上記(1)〜(15)のいずれかの方法で調製した固体調製物を2種以上混合して、固体生成物を得る方法。
【0057】
本発明においては、工程Iに続けて工程IIを行うことで、固体触媒成分(A)を調製できる。工程IIにおいては、上記のいずれかの方法で調製された固体生成物に、成分(b)の存在下で成分(d)を接触させる。ここで成分(d)は、成分(b)と併用して接触させることが必要である。併用しなかった場合、本発明の触媒は所期の目的を達成することが極めて困難となる。なお、ここで用いる成分(b)は、工程Iでの残留チタン化合物であっても、工程IIで新たに添加してもよい。また、上記接触の際に、芳香族あるいは脂肪族炭化水素などの不活性溶媒に各成分を懸濁させて行うこともできる。上記接触の温度及び時間については特に制限されないが、温度については0〜130℃、より好ましくは60〜13℃、時間については1分〜10時間、より好ましくは30分〜5時間が望ましい。
【0058】
本発明の固体触媒成分は、0.01≦WD /WM ≦0.6(式中、WD は、固体触媒成分(A)中に含まれる全芳香族ジカルボン酸ジエステルの重量割合を示し、WM は、固体触媒成分(A)中に含まれるマグネシウムの重量割合を示す。)の関係を満たすことが、所期の目的を達成するうえで望ましい。好ましくは0.05≦WD /WM ≦0.6、より好ましくは0.1≦WD /WM ≦0.5である。WD /WM が上記の範囲外になると、本発明の課題を解決することが困難となる。なお、本特許においては、WM についてはアルカリ分離−エチルジアミン四酢酸二ナトリウム溶液滴定法にて、WD については固体触媒成分を加水分解してガスクロマトグラフィーにて測定した。
【0059】
各成分の使用量については特に制限されないが、固体触媒成分(A)が上記関係式を満たすことができるようにするためには、以下のような使用量比を採用するのが好ましい:例えば工程Iにおいては成分(b)の使用量は、成分(a)1モルに対し0.05〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、より好ましくは0.2〜30モルであり、成分(c)の使用量は、成分(a)1モルに対し0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルである。工程IIにおいて成分(b)の使用量は、成分(a)1モルに対し0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜30モルであり、成分(d)は0.01〜500モル、好ましくは0.05〜300モル、より好ましくは0.05〜100モルである。
【0060】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる成分(B)としては、一般式R4 p AlY3-p(式中、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Y は水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である)で表される有機アルミニウム化合物であり、具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0061】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる成分(C)としては、一般式R5 q Si(OR6)4-q(式中、R5及びR6は炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である)で表される有機ケイ素化合物が用いられる。R5の好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基が挙げられ、同一または異なっていてもよい。R6の好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基が挙げられ、同一または異なっていてもよい。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0062】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該成分(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
本発明のオレフィン類重合触媒を用いてオレフィン類を重合するには、前記した固体触媒成分(A)、成分(B)及び成分(C)よりなる触媒の存在下、オレフィン類の重合もしくは共重合を行うが、各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、モル比で1〜1000、好ましくは50〜800の範囲で用いられる。成分(C)は、成分(B)1モル当たり、モル比で0.002〜10、好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.01〜0.5の範囲で用いられる。
【0064】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0065】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またオレフィンモノマーは、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。特に本発明のオレフィン重合用触媒を有機溶媒の存在下での重合、すなわちスラリー重合に供した場合は、重合時に、溶媒に可溶な重合体の発生率が抑制される。また、重合時に分子量調節剤として水素を用いることも可能である。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0066】
本発明の方法により重合あるいは共重合されるオレフィン類は、炭素数2〜10のオレフィン、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の長鎖オレフィン類、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の分枝オレフィン類、ブタジエン等のジエン類、あるいはビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が好ましく、これらのオレフィンは1種あるいは2種以上用いることができる。とりわけ、エチレン及びプロピレンが好適に用いられる。
【0067】
更に、本発明において固体触媒成分(A)、成分(B)及び成分(C)よりなる触媒を用いて行うオレフィン重合(本重合ともいう。)にあたり、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際に用いるオレフィン類として、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0068】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいは重合を行うオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、1種あるいは2種以上のオレフィンを接触させる方法が望ましい。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
【0070】
〈重合評価〉
窒素ガスで置換された、内容積1500mlの撹拌装置付きオートクレーブ内に、重合溶媒としてn−ヘプタン700mlを装入し、次いでトリエチルアルミニウム2.1mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.21mmol及び後述する方法で調製された固体触媒成分(A)を、チタン原子として0.0053mmol相当量添加して攪拌処理し、重合触媒を形成した。次いでプロピレンガスで系内を0.1MPaに昇圧し、20℃で30分間予備重合を行った。その後、水素ガス150mlを装入し、プロピレンガスで系内を0.6MPaに昇圧して、70℃で2時間の本重合を行った。得られた重合体につき、固体触媒成分当たりの重合活性(Yield)、HI及びアタクチック・ポリプロピレンの生成率(APP)を測定した。重合活性、HI及びAPPは、下記の(4)〜(6)式より算出した。更に、生成重合体の嵩密度(BD)及びメルトフローレイト(MI)を測定した。BD及びMIの測定は、それぞれJIS K 6721及びJIS K 7210に準拠した。また、各実施例及び比較例の重合評価結果は、全て表1に併載した。
【0071】
Yield(g-PP/g-cat. )={a(g)/c(g) }/ 固体触媒成分(g) (4)
HI(重量%)={b(g)/a(g)}×100 (5)
APP(重量%)={c(g)/(a(g)+c(g))}×100 (6)
上記(4)〜(6)式において、aは重合反応終了後、生成した重合体の重量、bは重合反応終了後に生成した重合体をソックスレー抽出器にて沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した、n−ヘプタン不溶解分の重量、cは重合終了後に濾過された重合溶媒中に溶存する重合体の量を示す。
【0072】
実施例1
〈固体触媒成分(A)の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、マグネシウムジクロライド10g、チタンテトラクロライド200ml及びフタル酸ジ−n−ブチル2.5mlを装入し、攪拌しながら100℃で2時間反応させた。反応終了後、生成物をトルエンで洗浄し、新たにチタンテトラクロライド200mlを加えて、攪拌しながら100℃で2時間接触反応させ、固体生成物を得た。その後、該固体生成物をトルエンで洗浄し固体生成物を得、次いで該固体生成物にアルミニウムトリクロライド0.50g、チタンテトラクロライド200mlを装入し、再度攪拌しながら100℃で2時間反応させた。次いで、生成物をヘプタンで洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.5重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−n−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に示す。
【0073】
実施例2
〈固体触媒成分(A)の調製〉
アルミニウムトリクロライドの使用量を1.0gとした以外は、実施例1と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.9重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−n−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0074】
実施例3
〈固体触媒成分(A)の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、マグネシウムジクロライド35g及びトルエン551mlを装入し、次いでエポキシクロロプロパン57ml及びリン酸トリ−n−ブチル48mlを添加し、50℃で2時間の処理を行った。次いで、該処理液に無水フタル酸9.8gを添加し、更に50℃で1時間の処理を行い、固体析出物を含む懸濁液を得た。次に該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコ中に293ml分取し、−25℃に保持した。分取した該懸濁液に、チタンテトラクロライド173mlを1時間かけて滴下した。次いで、該溶液を3時間かけて80℃に昇温し、更にフタル酸ジ−iso−ブチル10.5mlを添加し、80℃で1時間処理を行った。次いで該固体成分をトルエンで洗浄し、更にトルエン190ml及びチタンテトラクロライド126mlを添加し、90℃で2時間の処理を行い、固体生成物を得た。次いで該固体生成物をトルエンで洗浄した後、アルミニウムトリクロライド1.5g及びチタンテトラクロライド200mlを添加し、更に100℃で2時間の処理を行った。次に固体生成物をヘプタンで洗浄して、固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.4重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−iso−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0075】
実施例4
〈固体触媒成分(A)の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、マグネシウムジクロライド25g、デカン131ml及び2−エチルヘキシルアルコール128mlを装入し、130℃で2時間の処理を行った。次いで、該処理液に無水フタル酸5.8gを添加し、更に130℃で1時間の処理を行い、均質溶液を得た。次に該溶液116mlを、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコ中で−25℃に保持されたチタンテトラクロライド400ml中に、1時間かけて滴下した。次いで、該溶液を4時間かけて110℃に昇温し、更にフタル酸ジ−iso−ブチル5.36mlを添加し、110℃で2時間処理を行い、固体生成物を得た。次に該固体生成物をトルエンで洗浄した後、アルミニウムトリクロライド1.5g及びチタンテトラクロライド400mlを添加し、更に110℃で2時間処理を行った。次いで固体生成物をヘプタンで洗浄して、固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、1.6重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−iso−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0076】
比較例1
〈固体触媒成分(A)の調製〉
2回目のトルエンでの洗浄後に、アルミニウムトリクロライド及びチタンテトラクロライドを加えての処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、4.6重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−n−ブチル量を測定して、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0077】
比較例2
固体触媒成分(A)の調製時に、フタル酸ジ−n−ブチルの使用量を1.8mlとした以外は、比較例1と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.0重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−n−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0078】
比較例3
〈固体触媒成分(A)の調製〉
2回目のトルエンでの洗浄後に、アルミニウムトリクロライド及びチタンテトラクロライドを加えての処理を行わなかった以外は、実施例3と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、4.6重量%であった。該固体触媒成分中のマグネシウム量及びフタル酸ジ−iso−ブチル量を測定し、WD /WM を算出した。結果を表1に併載する。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
本発明の重合触媒を用いてオレフィン類を重合することにより、従来の高活性型触媒に較べ、HIが90〜98重量%の範囲にある比較的結晶性の低いポリマーを高収率で生成でき、かつ重合溶媒可溶分の生成率が少ない。従ってシートやフィルムなどの加工性に優れたポリマーを、合理的に提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒成分及び重合触媒を製造する工程を示すフローチャート図である。
Claims (1)
- ハロゲン含有マグネシウム化合物(a)、一般式Ti(OR1)n X4−n(式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタン化合物(b)、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)を接触させて得られる固体生成物に、該チタン化合物(b)の存在下にアルミニウムトリクロライドを接触させることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の調製方法。
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