JP3784877B2 - 電子回路のコーティング方法 - Google Patents

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  • Non-Metallic Protective Coatings For Printed Circuits (AREA)

Description

【0001】
【技術分野】
本願発明は、半導体素子などの電子部品を用いてプリント基板上に構成された電子回路、あるいはハイブリッドICなどとして構成された電子回路などの各種の電子回路の所望の部位を、効率良くかつ適切にコーティングするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のとおり、たとえばプリント基板などを利用して電子回路を作製した場合には、プリント基板上の電子部品や配線部分などの所望の部位を保護したり、あるいは電気的に絶縁させるなどの必要性から、その表面にコーティング処理を施さねばならない場合がある。従来では、このような場合のコーティング方法として、液体状または粉体状のコーティング塗料を用いる方法がある。
【0003】
すなわち、液体状のコーティング塗料を用いる方法の一例としては、液体塗料中にコーティング対象物を浸漬させ、その後これを引き上げてから乾燥、硬化させる、ディッピングと称される方法がある。また、これ以外の方法としては、適当な仕切部材を用いてコーティング対象部位に樹脂注入用の空間部を形成した後に、この空間部に液状樹脂を流し込み、これを乾燥、硬化させる、ポッティングと称される方法もある。さらには、液体状のコーティング塗料をノズルから吐出させてコーティング対象部位にスプレーするスプレー法などもある。
【0004】
一方、後者の粉体状のコーティング塗料を用いる方法は、合成樹脂の粉末を用いて無溶剤で塗装する方法である。その一例としては、粉末塗料の流動槽内に加熱したコーティング対象物を浸漬させてからこれを引き上げる、流動浸漬法がある。また、エアスプレーガンから帯電させた塗料粉末を吹きつけて、アースされたコーティング対象部位に付着させる静電スプレー法などもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のコーティング方法は、液体状または粉体状のコーティング塗料を用いる方法であるために、次のような不具合を生じていた。
【0006】
すなわち、上記従来の各方法のうち、ディッピングと称される方法や流動浸漬法では、電子回路の全面にコーティング処理を施す場合には比較的効率の良い作業性が得られるものの、電子回路の特定の一部分のみにコーティング処理を施すことは困難であり、不向きであった。
【0007】
これに対し、従来のポッティングと称される方法では、特定箇所への部分的なコーティング処理が可能である。また、液体状または粉体状のコーティング塗料をスプレーする方法においても、所定箇所にマスクを施しておくことにより、部分的なコーティング処理が可能である。
【0008】
ところが、上記前者のポッティングと称される方法では、仕切部材を用いてコーティング対象部位に樹脂注入用の空間部を正確に形成する必要があり、この空間部の形成作業が非常に煩雑であった。したがって、この方法では、作業性が悪く、作業コストが高価になっていた。
【0009】
一方、液体状または粉体状のコーティング塗料をスプレーする方法では、コーティングしない部分を覆い隠すためのマスクを予め製作しておく必要があり、マスクの製作費用が余分に必要となる。また、このマスクはコーティング対象部位に正確に位置決めして保持させる必要がある他、コーティング塗料のスプレー量などについても正確に制御する必要があり、スプレー装置の調整や制御も面倒なものとなっていた。さらには、コーティング塗料のスプレー装置は、ノズルの目詰まりなどが生じ易く、その保守管理も面倒なものとなっていた。したがって、コーティング塗料をスプレーする方法においても、その作業性はさほど良好ではなく、コーティング処理に要する種々の費用が高価になるという不具合を生じていた。
【0010】
その他、液体状のコーティング塗料をスプレーする方法では、コーティング膜を厚膜にすることが難しいという不具合もあった。これに対し、粉体状のコーティング塗料をスプレーする方法では、このような不具合は解消できるものの、コーティング塗料が周辺に飛散し、作業環境が悪化するといった特有の難点が生じていた。
【0011】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、電子回路の全面をコーティングする場合に限らず、その一部分をコーティングする場合であっても、難しい調整や制御などを必要とせず、また作業環境の悪化などの不具合も生じさせることなく、簡易な作業工程によって適切なコーティング処理が行えるようにすることをその課題としている。
【0012】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
すなわち、本願発明は、基板上に少なくとも1個以上の電子部品がリフローハンダ付けによって実装されてなる電子回路のコーティング対象部位に、シート状またはチップ状の固形のコーティング材を載せる工程と、この固形のコーティング材を加熱して流動化させることにより、このコーティング材を上記コーティング対象部位に付着させ、その後このコーティング材を硬化させる工程と、を有することを特徴としている。
【0014】
上記電子回路のコーティング対象部位は、たとえば電子回路の全面もしくはその一部、または電子回路を構成する複数枚の基板どうしを互いに接続するための導体とすることができる。
【0015】
本願発明では、たとえば電子回路の全面にコーティング処理を施す場合には、この電子回路の全面にわたってシート状またはチップ状の固形のコーティング材を載せてから、これを加熱して流動化させればよい。また、電子回路の一部にコーティング処理を施す場合には、その特定部分のみに固形のコーティング材を載せてから、これを加熱して流動化させればよい。
【0016】
すなわち、本願発明では、電子回路に部分的なコーティング処理を施す場合であっても、従来のポッティングと称される方法やスプレー法などとは異なり、特別な仕切部材を用いて樹脂注入用の空間部を形成したり、あるいはマスクを施すといった作業を行う必要はない。また、固形のコーティング材であれば、このコーティング材を所望のコーティング対象部位に載せる作業を、電子回路の製造用途に広く用いられているチップマウンターなどの装置を用いて、電子部品のマウント作業と同様な要領で能率良く行うこともできる。
【0017】
したがって、本願発明では、電子回路の全面の広い領域へのコーティング処理が効率良く行えることは勿論のこと、部分的なコーティング処理であっても、電子回路の全面に対するコーティング処理の場合と同様に、非常に簡単な作業によって迅速に、かつ効率良く行うことができ、その作業コストをかなり安価にすることができるという格別な効果が得られる。
【0018】
また、本願発明は、固形のコーティング材を加熱流動化させてコーティング対象部位に付着させる手段であるから、従来の粉体状のコーティング塗料のスプレー法とは異なり、コーティング材の飛散によって作業環境が悪化するような虞れはない。さらに、シート状またはチップ状の固形のコーティング材の厚みを予め大きくしておけば、このコーティング材を加熱流動化させて得られるコーティング膜の厚みも大きくすることが可能であり、従来の液体状のコーティング塗料のスプレー法とは異なり、コーティング膜の膜厚を大きくすることが困難になるようなことも解消することができる。そればかりか、本願発明では、固形のコーティング材の厚みを種々変更することによって、コーティング膜の厚みを簡単に変更することができるという効果も得られる。
【0019】
さらに、本願発明では、従来のスプレー法とは異なり、コーティング塗料をスプレーするための高価で、かつ保守管理が面倒なスプレー装置を用いる必要はなく、たとえば既述したチップマウンターと、固形のコーティング材を加熱するための炉などの加熱装置とを準備するだけでよい。したがって、設備コストの低減化、ならびにこれら装置の保守管理も容易なものにでき、コーティング処理に必要とされる種々の費用を一層安価にすることができるという効果が得られる。
【0020】
本願発明の好ましい実施の形態では、上記固形のコーティング材は、ガラスエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とする微粉末を圧縮して固形化したものである構成とすることができる。
【0021】
このような構成によれば、一般にエポキシ樹脂などは安価であり、固形のコーティング材の原料費を抑制することができる。また、この固形のコーティング材を加熱して流動化させた後において、引き続き加熱することによってこのコーティング材を迅速に硬化させることもできる。したがって、コーティング材を硬化させるまでに到る一連の作業時間の短縮化を図り、作業能率を一層高めることができるという利点が得られる。
【0022】
本願発明の他の好ましい実施の形態では、上記固形のコーティング材には、電子回路の非コーティング部位に対応した孔部または切欠部が形成されている構成とすることができる。
【0023】
このような構成によれば、電子回路上に固形のコーティング材を載せてから加熱流動化させた場合に、このコーティング材に形成されている孔部または切欠部に対応する位置にはコーティングを施すことなく、それ以外の箇所に対しては適切なコーティングを施すことが可能となる。したがって、たとえばコーティング対象部位に、コーティングを施したくない部分が一部含まれているような場合にも適切に対処できることとなる。
【0024】
より具体的には、電子回路のコーティング対象部位にコーティングを施したくない部分が一部含まれているような場合には、コーティングを施したくない部分の上にコーティング材が配置されないように、コーティング材う複数枚に分割した上で、これら複数枚のコーティング材をコーティング対象部位上にのみ載せるようにしてもよい。ところが、このような手段では、複数枚のコーティング材を電子回路上に載せる作業が煩雑となる。これに対し、孔部または切欠部を形成したコーティング材を用いれば、コーティングを施したくない部分へのコーティング処理を回避しつつ、1枚のコーティング材のみによってコーティング対象部位の各領域を適切にコーティングすることが可能となる。したがって、電子回路上にコーティング材を載せるための作業工程数を少なくでき、作業効率を高めることができるという利点が得られる。
【0025】
本願発明の他の好ましい実施の形態では、電子回路のコーティング対象部位に固形のコーティング材を載せる以前に、上記電子回路のコーティング対象部位を予熱する工程を有している構成とすることができる。
【0026】
このような構成によれば、電子回路のコーティング対象部位に固形のコーティング材を載せたときに、予熱されているコーティング対象部位の熱によって上記コーティング材を直ちに流動化させることができる。そして、この流動化により、上記コーティング材を電子回路のコーティング対象部位へ接着させることができる。したがって、電子回路上に載せられたコーティング材がその後不当に位置ずれするようなことを解消することができ、所望の正確な位置へのコーティング処理が可能となる。
【0027】
本願発明の他の好ましい実施の形態では、上記電子回路のコーティング対象部位を予熱する工程は、電子回路を構成する電子部品のリフローハンダ付けを行うための加熱工程である構成とすることができる。
【0028】
このような構成によれば、電子回路のコーティング処理を行う前になされる電子部品のリフローハンダ付けを行うための加熱工程が、電子回路のコーティング対象部位の予熱工程を兼ねることとなり、電子回路の予熱を行うための専用の作業を別途行う必要がなくなる。したがって、作業工程数を少なくし、コーティング処理の作業能率をより一層高めることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0030】
図1は、本願発明に係る電子回路のコーティング方法の適用対象となる電子回路の一例を示す平面図である。図2は、図1に示す電子回路にコーティング処理を施す作業の一例を示す平面図である。図3および図4は、電子回路にコーティング処理を施す場合の一連の作業工程を示す要部側面図である。図5は、コーティング処理が終了した複数の電子回路を個々の電子回路に分割する状態を示す平面図である。図6は、電子回路の製作作業とコーティング処理作業との一連の作業流れを示す説明図である。
【0031】
図1に示す電子回路1は、ガラスエポキシ樹脂製などのプリント基板2の表面に、複数条の導電配線パターン3が適宜形成されているとともに、ICチップなどの電子部品4が少なくとも1個以上実装されて構成されている。また、上記プリント基板2の裏面側にも、表面側と同様に、導電配線パターンが形成されているとともに、電子部品が実装されている。上記プリント基板2としては、長寸法のものが用いられており、このプリント基板2上には、複数の電子回路1の一群が連続して設けられている。したがって、上記プリント基板2を、図1の仮想線Nに沿って切断すると、個々の電子回路1ごとに分割することが可能である。
【0032】
本実施形態に係る電子回路のコーティング方法は、上記一群の電子回路1の製造工程と密接な関連を有している。したがって、これら一群の電子回路1の製造工程について、先に説明する。
【0033】
すなわち、上記一群の電子回路1を製造するには、まずプリント基板2への所望の導電配線パターン3を作製した後に、このプリント基板2を、図6に示すように、印刷装置Aに供給する。この印刷装置Aでは、クリームハンダなどのハンダぺーストをプリント基板2の所望箇所へ印刷する。次いで、このプリント基板2をマウンター(チップマウンター)Bに供給し、ICチップなどの所定の電子部品4を上記ハンダペーストの上にマウントする。そして、その後プリント基板2を炉Cに供給し、ハンダペーストをリフロー(再溶融)させることにより、上記電子部品4のリフローハンダ付けを行う。このような一連の工程を経て、図1に示す一群の電子回路1が製作される。
【0034】
次に、上記各電子回路1のうち、小チップ状の電子部品4(4a)を複数個一纏まりに実装した領域をコーティングする場合を一例として、そのコーティング方法の具体的内容を説明する。
【0035】
まず、図6に示す炉Cによって加熱され、各電子部品4のリフローハンダ付けが終了した一群の電子回路1は、余熱を有しており、この余熱が存在するうちにこれら一群の電子回路1をマウンターDに供給する。そして、このマウンターDによって、たとえば図2に示すように、シート状またはチップ状の固形のコーティング材5を上記複数の部品4(4a)の実装箇所の上にマウントする。
【0036】
上記コーティング材5は、たとえばエポキシ樹脂を主成分とする微粉末を圧縮して固形化し、一定厚みのシート状に形成したものを、コーティング対象部位の平面形状と略同一の形状およびサイズに切断したものである。このコーティング材5は、図3に示すように、上記マウンターDの移動自在な真空吸着ノズル6に吸着保持させて移送し、複数の電子部品4aの上に載置させればよい。このようなコーティング材5のマウント作業は、通常のICチップのマウント作業と何ら変わるところがなく、コーティング材5を所望の位置へ正確に、かつ高速で載置することができる。とくに、このようなコーティング材5の載置作業は、複数の電子回路1のそれぞれについて一斉に行うことができるので、その作業効率が一層良好となる。
【0037】
一方、上記図3に示すように、コーティング材5を電子部品4aの上に載置すると、このコーティング材5のうち上記各電子部品4aと接触する部分は、電子回路1の余熱により軟化し、流動性、粘着性を生じる結果、上記各電子部品4aに接着する。したがって、たとえばコーティング材5を上記電子部品4aに対して接着剤を用いて接着させるといった手段を採用しなくても、上記コーティング材5を所定のコーティング対象部位に適切に位置決め保持することができ、不当な位置ずれを防止することができる。
【0038】
このように、電子部品4のリフローハンダ付けを行うための炉Cによる加熱工程は、固形のコーティング材5をコーティング対象部位に接着させるための予熱工程を兼ねたものとなっている。したがって、電子部品4のリフローハンダ付けを行うための加熱工程とは別に、電子回路1を予熱するための専用の工程が不要となり、好ましい。ただし、本願発明はこれに限定されず、たとえばリフローハンダ付けを行うための加熱工程とは別に、電子部品4を予熱するための専用の加熱処理を行うようにしてもよい。
【0039】
次いで、上記のようにして、固形のコーティング材5を各電子部品4aの上に載せた後には、上記一群の電子回路1を構成するプリント基板2を、図6に示す炉Eに供給し、上記コーティング材5を加熱する。この炉Eとしては、ハンダのリフロー用に用いている先の炉Cと同様な構成のものでよい。上記炉Eによってコーティング材5を加熱してゆくと、図4に示すように、コーティング材5の流動化が促進され、この流動化したコーティング材5が複数の電子部品4aの実装箇所の全面を覆うように付着する。
【0040】
そして、上記コーティング材5の温度が、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の硬化温度に達すると、この時点で上記コーティング材5は硬化してゆく。したがって、炉Eからプリント基板2が排出された段階では、既に、一群の電子回路1の各電子部品4aの実装領域が、硬質のコーティング膜で覆われたものとなる。
【0041】
図4に示したように、固形のコーティング材5を加熱して流動化させた場合には、この流動化したコーティング材5は、元の固形時のときのサイズよりも幾分大きくなるように広がるが、その広がり寸法は極僅かにすることが可能であり、流動化したコーティング材5がプリント基板2の表面に沿って無制約に大きく広がってゆくことを適切に回避することができる。したがって、このコーティング材5によって所望の領域のみを正確にコーティングすることができる。また、固形のコーティング材5の厚み寸法tを予め大きくしておけば(図3参照)、最終的に得られるコーティング膜の厚み寸法もやはり大きくすることが可能である。したがって、厚みの大きなコーティング膜の形成も容易である。さらには、コーティング膜の膜厚の調整は、固形のコーティング材5の当初の厚み寸法tを種々変更するだけで簡単に行うことも可能である。
【0042】
以上のように、上記各電子回路1のうち、複数の電子部品4aが実装された領域を部分的にコーティングする作業は、マスクや仕切部材などの補助部材を用いることなく、マウンターDと炉Eを用いただけの非常に簡単な作業によって行える。また、既述したとおり、マウンターDとしては、電子部品実装用のチップマウンターを用いればよく、炉Eとしては、ハンダのリフロー用の炉を用いればよく、いずれも電子部品実装プロセスに多用されているものを有効に利用することができる。したがって、設備コストを安価にすることができる。また、これらのメンテナンスも比較的容易である。
【0043】
上記一連の作業により、各電子回路1の部分的なコーティング処理が終了した後には、図5に示すように、長寸のプリント基板2を切断し、複数の個々の電子回路1として分割すればよい。なお、プリント基板2の裏面側にコーティング処理を施す必要がある場合には、このプリント基板2を切断する以前の段階において、その表裏を反転し、上記と同様な手順によってプリント基板2の裏面側の必要箇所をコーティングすればよい。
【0044】
上述した各電子回路1の所定位置へのコーティング処理は、長寸法のプリント基板2を切断する以前の時期に、複数の電子回路1のそれぞれに対して纏めて行っているために、1枚ずつ分割された電子回路に対して個々にコーティング処理を施す場合と比較すれば、そのコーティング処理の作業能率をかなり良好にすることが可能である。ただし、本願発明は、必ずしも複数の電子回路のコーティング処理を纏めて行う必要はない。
【0045】
図7および図8は、本願発明に係る電子回路のコーティング方法の他の例を示す斜視図である。
【0046】
図7において、電子回路1A(図面上その詳細は省略している)は、たとえばプリント基板2A上に、電子部品4bを実装して構成されているが、この電子部品4bの種類如何では、たとえば放熱性の確保などの観点から、この電子部品4bをコーティングしないように配慮しなければならない場合がある。これに対し、同図に示す固形のコーティング材5Aは、その全体の外形は、電子回路1Aを構成するプリント基板2Aの外形と略同一の形状およびサイズであるが、上記電子部品4bに対応する箇所には、孔部50が貫通して形成されている。
【0047】
上記コーティング材5Aの使用によれば、図8に示すように、電子部品4bの実装箇所については上記孔部50の存在によって、そのコーティング処理を回避することができる。そして、それ以外の領域についてはコーティング材5Aによって適切にコーティングすることができる。このように、本願発明では、コーティング対象部位の一部に、コーティングしたくない部位が存在する場合には、予め固形のコーティング材に孔部を形成しておくことにより、それ以外の所望の部位に対してのみ適切なコーティング処理を施すことができる。むろん、コーティング材に形成する孔部の具体的な形状や数などは、コーティングしたくない部位の具体的な形状などに応じて適宜決定すればよい。
【0048】
また、本願発明では、所望部位へのコーティングを回避する手段として、たとえば図9(a)や、図10に示すような手段を採用してもよい。すなわち、図9(a)に示すコーティング材5Bは、その一部に切欠部51が形成されており、全体の外形形状が平面視略L字状である。また、図10に示すコーティング材5Cについても、その一部に切欠部51aが形成されており、全体の外形形状が平面視コ字状である。これらの手段によれば、いずれの場合にも、上記切欠部51または51aが形成されている箇所については、コーティングがなされることを回避しつつ、他の部位については適切なコーティングが行える。
【0049】
図9(a)に示すコーティング材5Bを用いた場合と同様なコーティング処理を、切欠部51aを有しないコーティング材を用いて行おうとすれば、たとえば同図(b)に示すように、2枚の矩形状のコーティング材55a,55bを用いる必要がある。ところが、これでは、2枚のコーティング材55a,55bのそれぞれをマウンターを用いて個々に電子回路上に載せる必要があり、マウンターの吸着ヘッドの動作回数は2回となる。これに対し、同図(a)に示す1枚のコーティング材5Bを用いれば、マウンターの吸着ヘッドの動作回数は1回でよい。したがって、電子回路上にコーティング材を載せる作業の高速化が図れる。このような利点は、図10に示したコーティング材5Cを用いる場合の他、先の図7および図8において説明した孔部50を有するコーティング材5Aを用いる場合についても同様に得られる。
【0050】
このように、本願発明では、固形のコーティング材の具体的な形状などはとくに限定されず、コーティング対象部位の形状などに応じて種々に決定すればよい。また、本願発明は、電子回路の一部分のみにコーティング処理を施すだけではなく、電子回路の全面にコーティング処理を施す用途にも適用できることは言うまでもない。
【0051】
図11および図12は、本願発明の適用対象となる電子回路の他の例を示しており、図11は概略斜視図であり、図12は側面図である。図13は、図12に示す電子回路の特定部分にコーティング処理を施した状態の側面図である。
【0052】
図11に示す電子回路は、2枚のプリント基板2B,2Cのそれぞれの表面に形成された所定の端子部18b,18cに、帯状あるいは線状などの金属製の複数条の導体7の両端部を導電接着し、これらの導体7を介して上記2枚のプリント基板2B,2Cを互いに連結したものである。このような電子回路は、たとえば図12に示すように、上記導体7を折り曲げるなどして、2枚のプリント基板2B,2Cを、所定のベース部材8の異なる側面部8a,8bに装着する場合がある。また、このような状態において、上記導体7のコーティング処理が要請される場合がある。
【0053】
本願発明では、このような場合であっても、図13に示すように、上記導体7をコーティング材5Dによって適切にコーティングすることが可能である。その作業工程は、先に説明した場合と同様に、固形のコーティング材を導体7の上に載せてから、そのコーティング材を加熱するだけでよい。
【0054】
上記2枚のプリント基板2B,2Cの連結手段としては、たとえばビニールなどで被覆された配線コードを用いることが可能であるが、この場合にはビニールなどの被覆樹脂の耐熱性が悪く、高温の条件下では適用できない場合がある。また、耐熱性および可撓性を備えたフレキシブルケーブルを用いて2枚のプリント基板2B,2Cを連結する手段では、このフレキシブルケーブルの部品コストが非常に高価となる。本願発明に係るコーティング方法を用いることによって、導体7のコーティングを行うようにすれば、導体7としては、安価ないわゆる裸線を用いることができ、コスト的に有利である。上記導体7を被覆するコーティング材5Dは、熱硬化性樹脂製のコーティング材を熱硬化させたものであるから、その後の耐熱性に優れることは勿論である。
【0055】
上述した各実施形態では、エポキシ樹脂を主成分とするコーティング材を用いているが、本願発明はこれに限定されない。本願発明では、他の熱硬化性樹脂を主成分とするものを用いてもよく、この場合であっても上記と同様な効果が得られる。また、本願発明は、熱硬化性樹脂に代えて、熱可塑性樹脂を主成分とするコーティング材を用いてもよい。この場合には、加熱により固形のコーティング材を流動させた後に、この流動化したコーティング材を冷却(自然冷却を含む)させることによって硬化させればよい。
【0056】
その他、本願発明に係る電子回路のコーティング方法の各作業工程の具体的な内容は、決して上記実施形態に限定されず、種々に変更自在である。本願発明に係るコーティング方法は、電子回路を構成する電子部品を1個ずつの単位でコーティングする場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る電子回路のコーティング方法の適用対象となる電子回路の一例を示す平面図。
【図2】図1に示す電子回路にコーティング処理を施す作業の一例を示す平面図。
【図3】電子回路にコーティング処理を施す場合の一連の作業工程を示す要部側面図。
【図4】電子回路にコーティング処理を施す場合の一連の作業工程を示す要部側面図。
【図5】コーティング処理が終了した複数の電子回路を個々の電子回路に分割する状態を示す平面図。
【図6】電子回路の製作作業とコーティング処理作業との一連の作業流れを示す説明図。
【図7】本願発明に係る電子回路のコーティング方法の他の例を示す斜視図。
【図8】図7に示す方法によりコーティング処理がなされた状態の斜視図。
【図9】(a),(b)は、コーティング材の他の例を示す平面図。
【図10】コーティング材の他の例を示す平面図。
【図11】本願発明の適用対象となる電子回路の他の例を示す概略斜視図。
【図12】図11に示す電子回路の装着状態の一例を示す側面図。
【図13】図12に示す電子回路の特定部分にコーティング処理を施した状態の側面図。
【符号の説明】
1,1A 電子回路
2,2A〜2C プリント基板
3 導電配線パターン
4(4a,4b) 電子部品
5,5A〜5D コーティング材
7 導体
50 孔部
51,51a 切欠部

Claims (6)

  1. 基板上に少なくとも1個以上の電子部品がリフローハンダ付けによって実装されてなる電子回路のコーティング対象部位に、シート状またはチップ状の固形のコーティング材を載せる工程と、
    この固形のコーティング材を加熱して流動化させることにより、このコーティング材を上記コーティング対象部位に付着させ、その後このコーティング材を硬化させる工程と、
    を有することを特徴とする、電子回路のコーティング方法。
  2. 上記固形のコーティング材は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とする微粉末を圧縮して固形化したものである、請求項1に記載の電子回路のコーティング方法。
  3. 上記固形のコーティング材には、上記電子回路の非コーティング部位に対応した孔部または切欠部が形成されている、請求項1または2に記載の電子回路のコーティング方法。
  4. 上記電子回路のコーティング対象部位に固形のコーティング材を載せる以前に、上記電子回路のコーティング対象部位を予熱する工程を有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子回路のコーティング方法。
  5. 上記電子回路のコーティング対象部位を予熱する工程は、電子回路を構成する電子部品のリフローハンダ付けを行うための加熱工程である、請求項4に記載の電子回路のコーティング方法。
  6. 上記電子回路のコーティング対象部位は、電子回路の全面もしくはその一部、または電子回路を構成する複数枚の基板どうしを互いに接続するための導体である、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子回路のコーティング方法。
JP04471296A 1996-03-01 1996-03-01 電子回路のコーティング方法 Expired - Fee Related JP3784877B2 (ja)

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