JP3778944B2 - ラインs−補正発生用ダイオード変調器 - Google Patents
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Description
1995年9月20日に出願された未公開のフランス国特許出願第9511035号及びその対応外国出願に、2つの互いに異なるライン偏向振幅において好適な許容ラインS−補正を発生する回路が記載されている。このフランス国特許出願は、S−キャパシタ、追加のS−キャパシタ及びサイリスタを具えるダイオード変調器回路を記載している。サイリスタにより、16/9のアスペクト比を有する画像スクリーン上に表示される4/3のアスペクト比を有するテレビジョン画像のS−補正を補正するために追加のS−キャパシタを附勢又は滅勢するようにしている。このようにすると、それぞれ4/3及び16/9のアスペクト比のライン走査幅に対応する2つのライン走査電流値に対しライン方向の許容S−補正を得ることができる。
このフランス国特許出願第9511035号に記載された回路は、2つの走査幅において許容S−補正を得るために多数の追加の構成素子を必要とする欠点を有する。これには費用がかかり、またこれらの追加の素子は高電圧及び大電流の環境で使用されるので、信頼性が低下する。更に、得られるS−補正は3/4及び16/9の走査幅の近くで最適となるだけである。
本発明の目的は、ラインS−補正を発生する簡単且つ経済的な回路を提供することにある。
この目的のために、本発明の第1の特徴は、請求項1に記載されたダイオード変調器回路を提供することにある。
本発明の第2の特徴は請求項8に記載された画像表示装置を提供することにある。
有利な実施例は縦続請求項に記載されている。
受像管はフル走査幅において所定量のS−補正を必要とするが、それより小さい走査幅ではそれより少量のS−補正を必要とする。受像管スクリーンが平坦になればなるほど、2つの異なる走査幅において必要とされるS−補正の量の差が大きくなる。平坦受像管の一例はフィリップス社のワイドスクリーン受像管W66ESF002X13であり、この受像管は4/3走査幅ではフル(16/9)走査幅におけるS−補正の量より著しく少量のS−補正を必要とする。
フランス国特許出願第9511035号に記載された回路は、16/9走査幅において正しい量のS−補正が得られるように設計されている。4/3走査幅にではこのS−補正量は高すぎることが判明した。そこで、追加のキャパシタをサイリスタ回路を用いて附勢し、4/3走査幅時のS−補正の量を低下させている。
本発明は、ライン偏向コイルと直列のS−補正キャパシタを省略することができ、且つ2つの異なる走査振幅における正しい量のS−補正を得るのに追加のS−キャパシタ及びサイリスタ回路は不要であるという認識に基づくものである。S−補正キャパシタを省略するとともに、ダイオード変調器の他の素子の適切な値を決定することにより、所定の走査幅(例えば16/9)において発生するS−補正の量とそれより小さい走査幅(例えば4/3)において発生するS−補正の量との間に大きな差を得ることができる。この点は図面を参照して後に説明する。全体的な説明は以下に記す。
フランス国特許出願第9511035号に記載されたダイオード変調器は2つのループを具える。第1のループは第1フライバックキャパシタ及び第1ダイオードと並列に配置されたライン偏向コイルとS−キャパシタの直列配置を具える。第2のループは第2フライバックキャパシタ及び第2ダイオードと並列に配置された変調器コイルを具える。両ループは直列に配置される。半導体スイッチが両ループの直列配置と並列に配置される。ラインフライバック期間中、各ループ内のそれぞれコイルとフライバックキャパシタが共振してラインフライバックを与える。ライン走査期間中、ダイオード及び/又は半導体スイッチが導通して各ループの両端間に一定の電圧を得て、各コイルにほぼのこぎり波状の電流を発生させる。ほぼのこぎり波状のライン偏向電流はS−キャパシタの両端間にほぼパラボラ状の電圧を発生する。この電圧がライン偏向電流のS−補正を与える。ライン偏向電流と変調器コイルを流れる変調器電流が共通の通路を経てフライバックキャパシタとダイオードの2つの並列配置の接続点に共通電流として流れる。ライン偏向電流と変調器電流は共通の通路内に配置された内方ピンクッションキャパシタを反対方向に流れる。最小ライン走査幅において、ダイオード変調器は平衡し、共通電流は零になる。S−補正の量は最小ライン走査電流の値とS−キャパシタの値に依存する。最大ライン走査幅において、ライン偏向コイルの両端間に最大の電圧が発生し、変調器コイルの両端間の電圧が零になる。S−キャパシタを流れる電流と内方ピンクッションキャパシタを流れる電流が最大ライン走査電流に等しくなる。S−補正の量は最大ライン走査電流の値と、S−キャパシタ及び内方ピンクッションキャパシタの直列キャパシタの値とに依存し、従って最小ライン走査振幅におけるS−補正の量より大きくなる。最小走査幅におけるS−補正の量は使用する受像管の要件を満足するほど十分に低くないので、追加のS−キャパシタを附勢する。
本発明のダイオード変調器においては、S−キャパシタも追加のS−キャパシタも省略した。こうすると、ダイオード変調器が平衡状態の場合には共通電流が零である事実のために、最小走査幅におけるS−補正の量は零になる。従って、本発明のダイオード変調器は小さい走査幅のときに極めて少量のS−補正を必要とする受像管に対処することができる。従って、小さい走査幅のときにS−補正の量を下げるための追加のキャパシタとこの追加のキャパシタを附勢するサイリスタスイッチング回路は必要ない。本発明は、16/9アスペクト比を有する表示管上に16/9走査幅と4/3走査幅との間の連続ズームを簡単に達成する必要がある場合に特に有用である。
EP−B−0236064号は内方ピンクッション歪み補正付き偏向装置を記載している。S−補正キャパシタをライン偏向コイルと直列に配置してS−整形というS−補正を得ている。キャパシタと可調整コイルの直列配置によりS−補正キャパシタと並列に配置された共振回路を構成して内方ピンクッション歪み補正を得ている。従って、この回路では、原則として2つのキャパシタ、即ちS−補正キャパシタと、共振回路の共振周波数を決定するキャパシタとを必要とする。共振回路は、ライン掃引期間中、ライン偏向コイルとS−補正キャパシタの直列配置の掃引共振周波数より高い周波数で共振する。EP−B−0236064号に記載されている回路はダイオード変調器として動作しないこと明らかである。これは、従来の回路(ダイオード変調器)では変調器コイルが可調整コイルの代わりに使用されているという記載から明らかである。その明細書は、この変調器コイルが、掃引期間の少なくとも一部分中、偏向コイルと直列に結合され、これにより帰線電圧及び偏向電力消費が増大すると述べている。EP−B−0236064号に記載された回路はダイオード変調器でないことは次のことからも明らかである。可調整コイルが変調器コイルであるダイオード変調器では、可調整コイルの値がライン偏向電流の振幅に大きく影響する。内方ピンクッション補正の量を調整することにより偏向の振幅が変化することは極めて不所望である。更に、偏向電流及び共振回路を流れる電流がS−キャパシタを同一方向に流れ、このことは、これらの電流が内方ピンクッションキャパシタを互いに反対方向に流れるダイオード変調器と相反するところである。
請求項2に記載された本発明の実施例では、追加の電圧源を変調器コイルと直列に付加する。この電圧源は正のDC走査電流及び負のフライバック電流を発生する。この電圧がS−補正の量に及ぼす効果は次の通りである。変調器コイルの値は、内方ピンクッションキャパシタの一端に発生する開放E/W電圧が変化しないように、従って偏向電流の最小値が変化しないように調整されているものとする。この状態では、ライン偏向電流と変調器電流が内方ピンクッションキャパシタを含む共通通路内で相殺されるので、ライン偏向電流の最小値におけるS−補正の量はまだ零である。追加の電圧源が変調器コイルLBに変調器電流を流し、この電流が内方ピンクッションキャパシタをライン偏向電流と反対の方向に流れるため、最大走査電流が流れる零E/W電圧におけるS−補正の量が減少する。これは、内方ピンクッションキャパシタCSMの値を減少させることができる利点をもたらす。実際には、内方ピンクッションキャパシタは一連の使用可能な値から選択する必要がある。追加の電圧源の他の利点は、正しい電圧値を選択することにより、内方ピンクッションキャパシタの所定の固定値において正しいS−補正量を得ることができる。
請求項4に記載された本発明の実施例では、変調器コイルと直列に配置された阻止キャパシタの両端間に可調整電圧源を付加することにより簡単なラインシフト回路を得る。阻止キャパシタは電源とライン偏向コイルと変調器コイルの直列配置を流れるDC電流を阻止する。この可調整電圧源は阻止キャパシタの両端間に小さいDC電圧を発生させてライン偏向コイルに小さいDC電流を得る。このDC電圧の符号及び値は、表示画像のライン方向の所望のシフトを得るために調整可能である。S−キャパシタがライン偏向コイルと直列に配置され、阻止キャパシタが変調器コイルと直列に配置されていない既知のダイオード変調器では、同一のDCシフト回路をS−補正キャパシタの両端間に配置することができる。この場合には、使用するインピーダンスを十分高くしてS−補正に与える悪影響を阻止する必要があるため、DCシフト回路が大きな電力消費を示す欠点があるとともに、DCシフト回路をS−補正キャパシタの端子に発生する高電圧パルスに適応させなければならない欠点がある。本発明の簡単なDCシフト回路は、阻止キャパシタ以外のキャパシタがライン偏向コイルと直列に配置されていない場合、即ちS−補正キャパシタがライン偏向コイルと直列に配置されていない場合に機能するのみのものであること明らかである。
請求項5に記載された本発明の実施例では、阻止キャパシタの一端を基準端子に接続する。この基準端子は大地電位点又はDC電源に接続することができる。いづれの場合にも、阻止キャパシタの両端に極めて低い電圧が発生するのみであるので、ラインシフト回路が一層簡単且つ安価になる。
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は添付図面について以下に記載する本発明の説明から明らかになる。図面において、
図1は、第2ライン振幅におけるS−補正の量が主S−キャパシタと並列の追加のS−キャパシタを附勢又は滅勢することにより補正されるフランス国特許出願第9511035号に記載されているダイオード変調器の回路図であり、
図2は、異なる振幅のライン偏向電流のときに図1に示すダイオード変調器において得られるS−補正の量を示すグラフであり、
図3は本発明のダイオード変調器を具える表示装置を示し、
図4は異なる振幅のライン偏向電流における図3のダイオード変調器において得られるS−補正の量を示すグラフであり、
図5は本発明のダイオード変調器の他の実施例を示し、
図6は本発明の詳細ラインシフト回路を具えるダイオード変調器の実施例を示す。
図1は第2ライン走査振幅時におけるS−補正の量が追加のS−キャパシタCS2を附勢又は滅勢することにより補正されるダイオード変調器の回路図である。
フランス国特許出願第9511035号は、追加のS−補正キャパシタCS2と、この追加のキャパシタCS2を附勢するスイッチSWとして示すサイリスタとを具える。ダイオード変調器の動作方法は、例えばPhilips Electronic Components and Materials Technical Publication 201, 1986,から公知であるので、詳細な説明は省略する。本発明に関連する問題を以下に検討する。
ダイオード変調器は2つのループを具える。主ループはライン偏向コイルLDとS−補正キャパシタCSの直列配置を具える。ライン走査中に、ほぼのこぎり波状のライン偏向電流Idが偏向コイルLDを流れる。S−補正キャパシタCSはライン偏向電流Idをほぼパラボラ状の電圧を積分する。ライン偏向コイルLD両端間のこのパラボラ電圧はライン偏向電流IdにS−補正を与える。ライン偏向コイルLDとS−キャパシタCSの直列配置は第1ダイオードD1と第1フライバックキャパシタCF1の並列配置と並列に結合される。第2ループは変調器コイルLBを具え、このコイルは第2ダイオードD2と第2フライバックキャパシタCF2の並列配置と並列に結合される。第1ダイオードD1と第1フライバックキャパシタCF1の並列配置と、第2ダイオードD2と第2フライバックキャパシタCF2の並列配置は接続点T2において直列に配置される。半導体スイッチング素子TRがこの直列配置の両端間に接続される。チョークコイルLTが電源VBと半導体スイッチング素子TRの第1端子T1との間に接続される。このチョークコイルは、特に表示管の陽極電圧を発生するライン出力変成器とすることができる。第1ダイオードD1のカソードを第1端子T1に接続し、第2ダイオードD2のカソードを接続点T2において第1ダイオードD1のアノードに接続する。偏向コイルLDは第1端子T1に接続された第1端と、S−キャパシタCSを経て他の端子T3に接続された第2端を有する。変調器コイルLBは他の端子T3と基準端子Trとの間に接続される。以後内方ピンクッションキャパシタCSMという第3キャパシタが接続点T2と他の端子T3との間に結合される。偏向コイルLDを流れるライン偏向電流Idと変調器コイルLBを流れる変調器電流Ibとからなる共通電流Imが接続点T2に至る共通通路内に配置された内方ピンクッションキャパシタCSMを経てへ流れる。偏向電流Idと変調器電流Ibは共通通路を反対方向に流れる。一次巻線が変調器コイルLBであり、二次巻線LMが共通通路内に内方ピンクッションキャパシタCSMと直列に配置された変成器Tを付加し、高いS−補正量のときに、第2ダイオードD2が走査の第1部分中導通するようにする。二次巻線LMは他の端子T3に接続された第1端と、内方ピンクッションキャパシタCSMに接続された第2端を有する。
ライン偏向電流Id及び変調器電流Ibの振幅は、偏向コイルLD及び変調器コイルLB間の分圧を制御することにより調整することができる。この分圧は上述した接続点T2の電圧Vewを変調することにより制御することができる。変調電圧Vewの減少はライン偏向電流Idの増大及び変調器電流Ibの減少を生ずる。従って、ライン偏向電流Idの振幅、従ってライン走査の幅を制御することができる。この振幅制御は、ライン偏向電流Idの振幅を垂直周波数のパラボラ信号で変調してライン偏向電流Idの振幅をスクリーンの中心ラインからスクリーンの上端又は下端の方向に減少させることにより左右ピンクッション歪みを補正するのにも使用することができる。
所定の受像管は、受像管の垂直縁と中心との間の水平位置において内側に湾曲した垂直線として見える内方ピンクッション歪みを示す。内方ピンクッション歪みはスクリーンの上端及び下端よりスクリーンの水平軸部分において大きなS−補正量を発生させることにより補正することができる。S−補正量のこのような変調は、ライン偏向電流Idと変調器電流Ibが流れる共通通路内にキャパシタCSMを付加することにより得ることができる。この内方ピンクッションキャパシタCSMの影響は次のように説明することができる。ライン偏向電流の最小振幅Idmin(図2)においては、変調電圧Vewは供給されず、ダイオード変調器は平衡状態にあり、ライン偏向電流Idは変調器電流Ibに等しく、共通通路内の共通電流Imは零である。従って、S−補正の総量に対する内方ピンクッションキャパシタCSMの寄与は最小ライン振幅Idminのとき零である。ライン偏向電流の最大振幅Idmaxにおいては、変調電流Vewは零であり、全電源電圧VBがライン偏向コイルLDの両端間に発生し、従って最大ライン偏向電流Idmaxが流れる。変調器コイルLBの両端間の電圧は零であるので、変調器電流Ibは零である。従って、最大ライン偏向電流Idmaxに等しい最大共通電流Immaxが共通通路を流れ、従って内方ピンクッションキャパシタCSMの両端間電圧が最大値になる。この状態では、S−補正の総量はS−キャパシタCSと内方ピンクッションキャパシタCSMの両キャパシタの両端間に発生する(ほぼパラボラ状の)電圧により決まり、従ってライン偏向電流の最大値Idmaxにおいて大きくなる。変成器Tは本発明に関係ない。前記Philips Technical Publication 201に説明されているように、その二次巻線LMは一次巻線LBを流れる電流Ibを変成し、この変成された電流が常にライン偏向電流Idより小さくなるようにする。
以上から明らかなように、ダイオード変調器が平衡状態にあり、共通電流が零である状態において最小S−補正Sminが生ずる。この最小S−補正Sminはライン偏向コイルLDと直列のS−補正キャパシタCSを流れる最小偏向電流Idminにより生ずる。16/9のアスペクト比の受像管スクリーン上に4/3走査幅で発生する偏向電流Idは最小偏向電流Idminに近い値を有し、従って得られるS−補正S4/3はS−キャパシタCSのみにより生ずる最小S−補正Sminより僅かに大きい。4/3走査幅で発生するこの量のS−補正S4/3が大きすぎる場合には、前記フランス国特許出願に記載された回路は追加のキャパシタCS2を附勢してS−補正の量を許容しうる値に低下させる。
図2は、図1に示すダイオード変調器において、追加のキャパシタを使用しない場合における、ライン偏向電流Idの種々の振幅において得られるS−補正の量を示すグラフである。グラフの垂直軸はS−補正の量を表す。ライン偏向電流Id、共通電流Im及び接続点T2の電圧Vewがグラフの水平軸にプロットされている。
接続点T2に外部変調電圧Vewが供給されないとき、電圧Vewが最大値Vew-openを有する。このとき、電圧Vewが最大値Vew-openを有し、従ってライン偏向コイルの両端間の電圧が最小になるので、ライン偏向コイルLDを流れるライン偏向電流Idは最小値Idminになる。変調器電流Ibは、変調器コイルLBの両端間の電圧が最大になるので、最大値Ibmaxになる。ダイオード変調器は平衡状態になるため、最小ライン偏向電流Idminが変調器コイルLBが流れる最大電流Ibmaxに等しくなり、共通電流Imは零に等しい最小値Imminになる。
電圧Vewが零に等しい最小値Vew-minを有するときは、ライン偏向コイルLD間に最大電圧が発生し、最大ライン偏向電流Idmaxが発生する。変調器電流Ibは、変調器コイルLB間の電圧が零になるので、零に等しい最小値Ibminになる。共通電流Imは最大ライン偏向電流Idmaxに等しい最大値Immaxになる。
CSで示す破線は実線で示すS−補正の総量に対するS−キャパシタCSの寄与分を示す。S−キャパシタCSにより発生されるS−補正の量はこれを流れるライン偏向電流Idに依存する。この寄与はライン偏向電流の最小値Idminにおいて最小であり、最大ライン偏向電流Idmaxにおいて最大になる。
CSMで示す破線はS−補正の総量に対する内方ピンクッションキャパシタCSMの寄与分を示す。内方ピンクッションキャパシタCSMの寄与はこれを流れる共通電流Imにより生じ、従ってライン偏向電流の最小振幅Idminにおいて零であり、最大ライン偏向電流Idmaxにおいて最大になる。S−補正の総量はS−キャパシタCSにより発生される寄与分と内方ピンクッションキャパシタCSMにより発生される寄与分との和である。
以上から明らかなように、最小S−補正Sminは、ダイオード変調器が平衡状態にあり、共通電流Imが零である状態において発生する。この最小S−補正Sminはライン偏向コイルLDと直列のS−キャパシタCSを流れる最小偏向電流Idminにより生ずる。16/9のアスペクト比を有する受像管スクリーン上に4/3走査幅で発生する偏向電流Idは最小偏向電流Idminに近い値を有し、従って得られるS−補正S4/3はS−キャパシタCSのみにより生ずる最小S−補正Sminより僅かに大きくなる。フランス国特許出願第9511035号に記載された回路は16/9走査幅のときに正しいS−補正量が得られるように設計されている。4/3走査幅のときのS−補正量は高すぎることが判明している。そこで、追加のキャパシタCS2をサイリスタ回路SWを用いて附勢し、4/3走査幅時のS−補正量を許容値まで低下させている。
図3は本発明のダイオード変調器を具える表示装置を示す。本発明のダイオード変調器は、ライン偏向コイルLDと直列のS−補正キャパシタCSを省略した点がフランス国特許出願第9511035号に記載された回路と相違する。S−補正キャパシタCSの省略により、所定の走査幅(例えば16/9)のときに発生されるS−補正量とそれより小さい走査幅(例えば4/3)のときに発生されるS−補正量との間に大きな差を得ることができるので、追加のS−キャパシタCS2もサイリスタ回路Sも不要になる。これを図4を参照して後に説明する。
変調器コイルLBの一端を接地する場合には、阻止キャパシタCBを付加してライン偏向コイルLD及び変調器コイルLBの直列配置を経て不確定のDC電流が流れるのを阻止するのが好ましい。このようなDC電流はライン方向に表示画像の不確定のシフトを生ずる。しかし、この不確定のシフトは阻止キャパシタを用いずに阻止することもできる。第1の方法では、変調器コイルLBの一端を電源VBに接続する。第2の方法では、変調器コイルLBの一端を変成器巻線を経て第1端子T1に接続し、電源VBにより供給される電圧にほぼ等しい電圧を供給する。
表示装置は、更に、ビデオソースから同期パルスSpを受信し、ライン駆動パルスDpを半導体スイッチング素子TRに供給する同期回路SCと、電源電圧VBを発生する主電源PS、ライン偏向コイルLDを流れるライン偏向電流Idに応答してライン走査される受像管CRTとを具える。
図3に示す本発明のダイオード変調器の実際の回路では、関連する素子は次の値:LD=1.3mH,LB=2.05mH,VB=148V,Vn=350V,CF1=12nF,CF2=15nF,CB=2.2μF,CSM=330nFを有する。Vn=350Vは、バイアス電圧Vnのピーク値が350Vの負値を有することを意味するものと理解されたい。これらの素子の値では、発生するS−補正量がフィリップス社のワイドスクリーン受像管W66ESF002X13の要求をフルスキャン(16/9)からこれより約33%小さい走査幅(4/3)までの走査幅範囲内で極めて良好に満足する。
図4は、ライン偏向電流Idの種々の振幅において本発明のダイオード変調器で得られるS−補正の量を示すグラフである。図2と同様に、垂直軸はS−補正の量を示し、水平軸はライン偏向電流Id、共通電流Im及び接続点T2における電流Vewを示す。実際上、本発明ではS−補正の総量は内方ピンクッションキャパシタCSMのみにより発生される。CSMで示す破線につき図2に説明したように、この場合にはS−補正の総量はライン偏向電流の最小値Idminにおいて零になり、ライン偏向電流の最大振幅Idmaxにおいて最大になる。16/9走査幅においては、ライン偏向電流Idが最大ライン偏向振幅Idmaxに近い高い値を有し、この走査幅におけるS−補正の量S16/9は偏向電流Idの前記高い値と内方ピンクッションキャパシタCSMの値に依存する。偏向電流Idの前記高い値は受像管−偏向コイル組合せ体の感度に依存して固定される。内方ピンクッションキャパシタCSMの値は、16/9走査幅において発生されるS−補正の量が正しい値を有するように選択する必要がある。4/3走査幅においては、ライン偏向電流Idが低い値を有し、この走査幅におけるS−補正の量S4/3は偏向電流Idの前記低い値とS−補正が零である偏向電流の最小値Idminとの差に依存する。従って、ダイオード変調器が平衡状態のときに発生する偏向電流の最小値Idminの正しい選択により3/4走査時におけるS−補正の正しい量を得ることができる。最小ライン偏向電流Idminは変調器コイルLBとライン偏向コイルLDのインダクタンスの比により決まる。
図5は本発明のダイオード変調器の他の実施例を示す。この実施例は、電圧源LVが変調器コイルLBと直列に付加され、且つ可調整電流源VAが阻止キャパシタCBと並列に配置されている点で図3に示す実施例と相違する。
電圧源LVはラインフライバック期間中は負のフライバック電圧であり且つ走査期間中は正の走査電圧であるバイアス電圧Vnを発生する。電圧源LVはライン偏向電流が流れる他のコイル、例えばチョークコイルLTと磁気結合されたコイルで構成することができる。Philips Technical Publication 201から既知のように、このような電圧源LVは追加ののこぎり波電流を発生して第2ダイオードD2を順方向バイアスに維持する。150V〜約250Vの負電圧がこの目的の達成に十分である。
本発明のこの実施例は、電圧源LVにより発生されるバイアス電圧Vnを所定の値にして最適なS−補正が得られるようにする必要があるという認識に基づくものである。本発明のこの実施例のバイアス電圧Vnの値の選択はS−補正に2つの効果を与えうる。
第1の効果を以下に説明する。ここでは阻止キャパシタCBは大きい値を有するものとし、且つ変調器コイルLBの値は、バイアス電圧Vnの異なる値において、開放E/W電圧Vew-openが変化しないように調整されているものとする。従って偏向電流の最小値Idminも変化しない。この状態では、ライン偏向電流Idと変調器電流Ibが内方ピンクッションキャパシタCSMを含む共通通路内で相殺されるためにS−補正は依然として零である。電圧源LVが変調器コイルLBにほぼのこぎり波状の電流を流し、この電流が内方ピンクッションキャパシタCSMをライン偏向電流Idと反対の方向に流れるため、零E/W電圧におけるS−補正の量は減少する。これは、内方ピンクッションキャパシタCSMの値を減少させることができる利点をもたらす。実際には、内方ピンクッションキャパシタCSMは一連の使用可能な個別の値から選択する必要がある。電圧源LVの他の利点は、バイアス電圧Vnの正しい値を選択することにより、内方ピンクッションキャパシタCSMの所定の値における正しいS−補正量を得ることができる。それゆえ、本発明は、バイアス電圧Vnは第2ダイオードD2が走査の第1部分中導通状態に維持されるように適切な範囲内に選択する必要があるのみならず、バイアス電圧VnはS−補正の量を制御するパラメータの1つでもあるという認識に基づくものである。変調器コイルLBのある固定値において、バイアス電圧Vnも用いてダイオード変調器の平衡状態における最小ライン偏向電流の値Idminを決定することができる。これはダイオード変調器の構成素子の最適設計に追加の自由度をもたらす。
第2の効果は阻止キャパシタCBを小さい値に選択することにより得られる。阻止キャパシタを流れる電流は電圧源LVにより生ずるほぼのこぎり波状の電流の値により影響される。従って、阻止キャパシタCBの両端間のほぼパラボラ状の電圧の振幅はバイアス電圧Vnの値に依存する。変調器コイルLBを流れる変調器電流Ibの波形は阻止キャパシタCBの両端間のパラボラ電圧の量に依存する。従って、共通通路内の電流Imの波形も阻止キャパシタCBの値及びバイアス電圧Vnの値により影響され、バイアス電圧Vnの方がライン偏向電圧Idの大きな振幅において大きな影響を有する。従って、阻止キャパシタCBの値及びバイアス電圧Vnを、S−補正の形状の補正が得られるように決定することができる。この形状の補正は大きいライン走査幅のときに大きく、小さいライン走査幅のときに小さくなるようにする。こうすると、画像スクリーンのエッジ部における僅かに大きすぎるS−補正を補正することができる。画像スクリーンの大きさに合致する画像を表示する必要がある表示装置では、ただ1つのライン走査幅を発生する必要があるだけである。大きすぎるS−補正がオーバスキャンにおいて発生してもこれは眼に見えない。16/9走査幅と4/3走査幅との間の連続ズームが可能である場合には、スクリーンのエッジ部における大きすぎるS−補正が眼に見えることになる。
阻止キャパシタCBと並列に配置された可調整電流源VAはライン走査期間中ライン偏向コイルを流れる小さなDC電流を発生する。このようにすると、表示画像の可調整のラインシフトが可能になる。可調整電流源VAは、阻止キャパシタCBの一端を基準電位(大地又は電源電圧VB)に接続する場合には、極めて簡単なコンジャンクションを有するものとなる。図3に示す本発明のダイオード変調器にも、可調整電流源VAのみを、又はバイアス電圧源Vnのみを設けることができること勿論である。
図6は本発明の詳細なラインシフト回路を具えるダイオード変調器の実施例を示す。この回路は、変調器コイルLBとバイアス電圧源LVと阻止キャパシタCBの直列配置を、阻止キャパシタCBの一端が電源電圧VBに接続された形に変更した点で図5に示す回路と相違する。可調整電流源VAは、チョークコイルLTに磁気結合された変成器巻線LRと、第1端が変成器巻線LRの第1端に結合され、整流電圧VRを供給する整流素子D3と、整流素子D3の第2端と変成器巻線LRの第2端との間に結合された第1及び第2抵抗R1及びR2の直列配置と、この第1及び第2抵抗R1,R2の直列配置と並列に接続された可変抵抗RVとを具え、第1及び第2抵抗R1,R2の接続点を阻止キャパシタCBの一端に結合し、可変抵抗RVのスライダ接点を阻止キャパシタCBの他端に結合する。
このDCシフト回路の動作を以下に説明する。整流電圧VRが第1及び第2抵抗R1,R2の直列配置を流れる電流を発生する。可変抵抗RVのスライダ接点を電源電圧VBが抵抗R1の端子に接続される位置にすると、阻止キャパシタCBの両端間の電圧VAは正になる。可変抵抗VRのスライダ接点を電源電圧VBが第2抵抗R2の端子に接続される位置にすると、阻止キャパシタCBの両端間の電圧VAは負になる。従って、スライダ接点の位置を調整することによりラインシフトを公称ライン位置に対し両方向に行うことができる。本発明のこのDCシフト回路は極めて簡単である。S−キャパシタCSがライン偏向コイルLDと直列に配置され、阻止キャパシタCBが変調器コイルLBと直列に配置されていない既知のダイオード変調器では、同一のDCシフト回路をS−キャパシタCSの両端間に配置することができる。しかし、この場合にはDCシフト回路がかなりの大きな電力消費を生じ、またS−補正に影響を与える欠点があり、且つDCシフト回路の変成器巻線LRを一層良好に絶縁してS−補正キャパシタCSの端子に発生する高電圧パルスに対処させなければならない欠点がある。更に、高電圧パルスのために寄生効果が一層妨害になる。本発明の簡単なDCシフト回路は、阻止キャパシタCB以外のキャパシタがライン偏向コイルLD及び変調器コイルLBの直列配置と直列に配置されない場合にのみ、従ってS−キャパシタCSがライン偏向コイルLDと直列に配置されない場合にのみ、機能すること明らかである。第1及び第2抵抗R1,R2の直列配置と並列に平滑キャパシタ(図示せず)を付加することにより幾分大きなラインシフト範囲を得ることができる。
本発明は、表示スクリーンを通常の如く垂直方向に順次の水平走査ラインにより走査する画像表示装置に使用することができる。本発明は、表示スクリーンを所謂転換走査モードにおいて水平方向に順次の垂直走査ラインにより走査する画像表示装置にも使用することができる。
本発明は16/9のアスペクト比を有するTV信号と4/3のアスペクト比を有するTV信号とを表示するよう構成されたワイドスクリーンテレビジョン装置に適用するのが好適であるが、本発明は4/3のアスペクト比のテレビジョン装置に使用することもできる。後者の場合には、S−補正が別個のS−補正キャパシタを具えないダイオード変調器で達成することができる利点が得られる。上述の実施例は本発明を限定するものでなく、当業者であれば本発明の範囲を逸脱することなく多くの変形例を設計することができる。
本発明の主な特徴は次のように要約することができる。本発明は大きく異なるライン走査幅において受像管CRTのライン走査のS−直線性誤差の許容S−補正を供給するようにしたダイオード変調器回路を提供する。既知のダイオード変調器は2つのループを具える。第1のループは第1フライバックキャパシタCF1及び第1ダイオードD1と並列に配置されたライン偏向コイルLDとS−キャパシタCSの直列配置を具える。第2のループは第2フライバックキャパシタCF2及び第2ダイオードD2と並列に配置された変調器コイルLBを具える。両ループは直列に配置される。内方ピンクッションキャパシタCSMが、ライン偏向電流Idと変調器コイルLBを流れる変調器電流Ibが互いに反対方向に流れる共通通路内に配置される。S−補正の量はS−補正キャパシタCS及び内方ピンクッションキャパシタCSMの値に依存する。本発明のダイオード変調器ではS−補正キャパシタCSを省略した。こうすると、ダイオード変調器が平衡状態の場合に共通通路を流れる共通電流Imは零であるために、最小走査幅におけるS−補正の量は零になる。従って、本発明のダイオード変調器は小さい走査幅のときに極めて少量のS−補正を必要とする受像管CRTに対処することができ、小さい走査幅のときにS−補正の量を下げるための追加のキャパシタとこの追加のキャパシタを附勢するサイリスタスイッチング回路を必要としない。本発明は、16/9アスペクト比を有する表示管上に16/9走査幅と4/3走査幅との間の連続ズームを簡単に達成する必要がある場合に特に有用である。
請求項の括弧内の参照符号は実施例との対応を明瞭にするためにのみ付加したものであって、発明の範囲を限定するものではない。
Claims (7)
- 第1ダイオードと第1キャパシタの第1並列配置と、
前記第1並列配置と直列に配置された、第2ダイオードと第2キャパシタの第2並列配置と、
前記第1及び第2並列配置の直列配置の両端間に結合されたスイッチング素子とを具え、該スイッチング素子の第1端子が第1ダイオードのカソードに接続され、第2ダイオードのカソードが前記第1及び第2並列配置の接続点において第1ダイオードのアノードに接続され、更に、
前記第1端子に結合された第1端と、他の端子に結合された第2端を有する偏向コイルと、
前記他の端子と基準端子との間に結合された変調器コイルと、
前記接続点と前記他の端子との間に結合された第3キャパシタとを具え、互いに反対方向の偏向コイルを流れる偏向電流と変調器コイルを流れる変調器電流とからなる共通電流が第3キャパシタを経て流れるようにしたダイオード変調器において、偏向コイルの第2端を前記他の端子に非容量結合し、ラインS−補正の量を共通電流と第3キャパシタの値のみで決め、基準端子と変調器コイルの前記他の端子に結合されてない方の端との間に、ライン走査期間中正のDC値を有し、フライバック期間中負のフライバック電圧を有する電圧を発生する電圧源を結合したことを特徴とするダイオード変調器。 - 前記電圧源は電源端子と第1端子との間に結合されたチョークコイルに磁気結合された第3のコイルを具えることを特徴とする請求項1記載のダイオード変調器。
- 当該ダイオード変調器は、更に、
変調器コイルと直列に配置された阻止キャパシタと、
該阻止キャパシタと並列に配置され、ライン走査の走査期間中ライン偏向コイルに可調整DC電流を流す可調整電流源と、
を具えることを特徴とする請求項1記載のダイオード変調器。 - 阻止キャパシタの一端を基準端子に接続したことを特徴とする請求項3記載のダイオード変調器。
- 前記可調整電流源は、
チョークコイルに磁気結合された巻線と、
該巻線の第1端に結合された第1端を有する整流素子と、
該整流素子の第2端と前記巻線の第2端との間に直列に配置された第1及び第2抵抗の接続点が阻止キャパシタの一端に結合された第1及び第2抵抗の直列配置と、
該第1及び第2抵抗の直列配置と並列に配置され、スライダ接点が阻止キャパシタの他端に結合された可変抵抗と、
を具えることを特徴とする請求項4記載のダイオード変調器。 - 基準端子が電源端子に結合されていることを特徴とする請求項1記載のダイオード変調器。
- 第1ダイオードと第1キャパシタの第1並列配置と、
前記第1並列配置と直列に配置された、第2ダイオードと第2キャパシタの第2並列配置と、
前記第1及び第2並列配置の直列配置の両端間に結合されたスイッチング素子とを具え、該スイッチング素子の第1端子が第1ダイオードのカソードに接続され、第2ダイオードのカソードが前記第1及び第2並列配置の接続点において第1ダイオードのアノードに接続され、更に、
前記第1端子に結合された第1端と、他の端子に結合された第2端を有する偏向コイルと、
前記他の端子と基準端子との間に結合された変調器コイルと、
前記接続点と前記他の端子との間に結合された第3キャパシタとを具え、互いに反対方向の偏向コイルを流れる偏向電流と変調器コイルを流れる変調器電流とからなる共通電流が第3キャパシタを経て流れるようにしたダイオード変調器を具え、更に、
ビデオソースから同期情報を受信し、半導体スイッチング素子の制御入力端子に駆動パルスを供給する同期回路と、
ライン偏向コイルを流れるライン偏向電流に応答してライン走査される受像管とを具える画像表示装置において、
偏向コイルの第2端を前記他の端子に非容量結合し、ラインS−補正の量を共通電流と第3キャパシタの値のみで決め、基準端子と変調器コイルの前記他の端子に結合されてない方の端との間に、ライン走査期間中正のDC値を有し、フライバック期間中負のフライバック電圧を有する電圧を発生する電圧源を結合したことを特徴とする画像表示装置。
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