JP3778667B2 - リング状成形品の成形用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リング状成形品の成形用金型、特には後加工でのバリ取りが不要な、トランスファー成形及び射出成形で有用な成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、リング状成形品を得る成形法には、図6(a)に示すような、複数のキャビティaが配列された開閉可能な上下2枚の成形用金型b、cの間に沿って材料dを充填して型を閉じ、材料dを型内からキャビティaに充填する、いわゆる圧縮成形による方法が一般的で、金型や成形機などの設備が安価であることから広く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、圧縮成形では、数本のシート状に予備成形された材料dを金型のキャビティaの配列数に合わせてチャージする必要があり、作業に不慣れな作業者ではスコーチや未充(キャビティ容量に対して材料の容量が不足すること)などの不良を起こす原因となるほか、図6(b)、(c)に示すように、成形品fは内バリgや外バリhと一緒に成形されるため、後加工で成形品fを、これらのバリから切り離す必要があり、多大な労力を強いられていた(図中のeはエア抜きである)。
【0004】
したがって、本発明の目的は、後加工でのバリ取りが不要なリング状成形品の成形用金型を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のリング状成形品の成形用金型は、リング状キャビティを形成する一対の型板を有する成形用金型であって、一方の型板に設けたスプルーの末端部の外周側面を、微小間隙で微小長さのフィルムゲート部を介して、リング状キャビティの内周側面と、全周にわたって、特には両型板のPL面に沿って、連通させてなることを特徴とする。
【0006】
上記フィルムゲート部は、その間隙及び長さが0.01〜 0.5mmの範囲内であり、リング状キャビティは、リングの(横断面での)内周径が1〜20mmで、縦断面径が 0.5〜15mmの範囲内であることが好ましい。
【0007】
成形用金型を、本発明のように、上型、中型、下型の3枚の型板を有し、上型の下面中央部に材料を圧縮しキャビティに充填するためのプランジャーを備え、中型の上面中央部に材料入れポットを備え、スプルーが材料入れポットの底から中型の型板を貫通して下型の上面部に達する構造にしたものが、特にトランスファー成形に好適に使用される。
【0008】
トランスファー成形は圧縮成形に比べて予備成形された材料を金型のキャビティの数に合わせてチャージする必要がなく、スコーチや未充などの不良の発生も少なく利点が多いが、その反面、材料ロスが大きいこと、上下2枚型の圧縮成形より成形作業が若干煩雑なため、一般には複雑な形状のもの、寸法精度の厳しいものの成形に限定される場合が多いが、本発明では後加工でのバリ取りが不要になることのメリットが大きい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の成形用金型について、その一例をトランスファー成形用金型で示した図1〜図5に基づいて説明する。図1(a)は全体の分解斜視図、図1(b)はその分解縦断面図、図2は中型と下型を閉じたときのスプルー末端部付近の拡大縦断面図、図3は得られた成形品とバリの状態を示す斜視図、図4は図2のフィルムゲート部をさらに拡大して示す縦断面図、図5は中型の要部の拡大縦断面図である。
【0010】
図1に示したトランスファー成形用金型1は、上型2、中型3、下型4の3枚の型板からなっている。上型2は底面中央部に材料5を圧縮しリング状キャビティ6に充填するためのプランジャー部7を備えている。中型3は上面中央部のプランジャー部7を受け入れる位置に材料5を充填するための材料入れポット8を備え、材料入れポット8の底から型板を貫通して下型4の上面部に達するスプルー9を備えている。図2に示すように、中型3と下型4の両型板のPL面に沿う、スプルー9の末端部(図では下端部)の外周側面は、微小間隙で微小長さのフィルムゲート部10を介して、スプルー9を中心としたリング状キャビティ6の内周側面と、全周にわたって連通している。同様に、PL面に沿うリング状キャビティ6の外周側面にも全周にわたってフィルムゲート部12が設けられ、中型3と下型4の両型板の間隙13と連通している。
【0011】
このトランスファー成形用金型1において、中型3の材料入れポット8に充填された材料5は、上型2のプランジャー部7に圧縮されてスプルー9を通り、その下端部の外周側面に全周にわたって設けられた、内側のフィルムゲート部10を経てリング状キャビティ6内に充填される。リング状キャビティ6をオーバーフローした材料5は、この外周側面に全周にわたって設けられた外側のフィルムゲート部12を経て、中型3と下型4の型面間の間隙13に流出し、図3に示すように、シート状の外バリ14になるので、成形終了時に簡単に取り出すことができる。
一方、多数のスプルー9内の材料5は材料入れポット8内の材料5と共に固化して内バリ15となり、成形終了時に一体のものとして同様に簡単に取り出すことができる。こうしてリング状成形品Pのみが下型4上に残っているため、吸引などの手段で効率よく回収することができる。
【0012】
(スプルー9とリング状キャビティ6との間にある)内側のフィルムゲート部10の間隙S及び長さL(図4参照)は0.01〜 0.5mm、特には0.03〜 0.3mmとすることが好ましい。これが0.01mm未満では材料が流れにくくなり、未充の原因となる場合があり、また 0.5mmを超えると成形終了時に成形品とバリを分離する際の切れが悪くなり、成形品にバリが残ったりバリと一緒に成形品の一部がえぐり取られたりする場合があり、成形品の品質を損なうことになる。
【0013】
(リング状キャビティ6と型面間の間隙13との間にある)外側のフィルムゲート部12の間隙及び長さも、上記した内側のフィルムゲート部10の場合と同様に0.01〜 0.5mm、特には0.03〜 0.3mmとすることが好ましい。これが0.01mm未満では材料が流れにくくなるために、オーバーフローする材料が逃げにくくなり、材料と同時に排出される筈のエアがキャビティに残ってしまうという不具合が発生する。また 0.5mmを超えると内側の場合と同様にバリ取り時に成形品の一部がえぐり取られる場合が発生してしまう。
【0014】
リング状キャビティ6のリングの縦断面形状は、求める成形品の形状に合わせて円形、角形、異型形状など任意の形状を選択できるが、リングの大きさはスプルー9の太さ(内径)とリングの縦断面径(または縦断面積)から自ら決定される。
すなわち、リングの(横断面での)内周径が1mm未満になると、これにつれてスプルーも細くなるため、スプルー内で加硫、硬化した材料の強度が低下し、内バリを取る際に硬化物が折れて、バリ取り作業性を損ねることになり、また内周径が20mmを超えるとスプルーの内径も大きくなるため、材料ロスが増加し、バリ取り工程が省略される効果より材料ロスによるコストアップの方が大きくなる。この結果、リングの内周径は1〜20mmが好ましい範囲となる。
一方、リングの縦断面径が 0.5mm未満では成形品を金型から取り出す際の作業性が悪くなり、15mmを超えると成形時に未充などの不具合が発生し易くなる。このためリングの縦断面径は 0.5〜15mm(平均縦断面積で 0.2〜176.6mm2)、特には2〜5mm(平均縦断面積で3.14〜19.62mm2)の範囲内が好ましい。
リングの内周径と縦断面径から、リングの外周径は2〜50mmが好ましい範囲となる。
【0015】
本発明の成形用金型におけるリング状成形品の取り数は16個取り以上であることが好ましく、これが16個取り未満では圧縮成形でもバリ取りに要する時間が短くなるためトランスファー成形にするメリットが少なくなり、通常の圧縮成形の後にバリ取り作業を行う労力よりも材料ロスによるデメリットの方が大きくなる。これに反し、成形取り数が多いときは、成形機の能力(成形圧力、適応金型サイズ)などの設備面での制約が許容される限り取り数に制約はなく、特には成形品が小さく、成形取り数が多いほど、その効果が大きい。
【0016】
スプルー9の形状は、内部の材料の離型性を向上させるために、図1(b)に示すように、下方へ向けテーパーを付けた濾斗状としたものが好ましい。
図5に拡大図で示すように、スプルー9の入口側の直径pと出口側の直径qが 0.5≦q/p≦1となるようなテーパー形状にするのが好ましく、これがq/p< 0.5であると、リング状キャビティの形状(リングの縦断面径の大きさ)によっては、スプルー9がリングの内側の壁をえぐり取る構造になる場合が生ずるほか、材料ロスが大きくなって不都合であり、1<q/pではスプルーの形状が逆テーパーになり、本来の目的に反することになる。また中型3のスプルー部分の厚さtは2mm≦t≦20mmの範囲で、かつリングの縦断面径の1/2より大であり、t<2では中型の強度が不充分で、20<tでは材料ロスが大となり、また中型が重く作業性が悪くなる。
【0017】
本発明の成形用金型に適用される成形材料としては、各種の熱可塑性または熱硬化性の樹脂及びエラストマーが有用であり、特に成形時の材料の流れの点からシリコーンゴムのようなグリーン強度の低い材料が好適である。
【0018】
【実施例】
次に、本発明の具体的態様を実施例及び比較例を挙げて説明する。
(実施例)
内径3mm、外径5mm(縦断面径1mm)の円形シリコーンゴムリングを81個取り(9列×9列)のトランスファ成形用金型にて 810個成形したところ、バリ取りまでに要した時間は60分であった。なお、この金型のスプルー部の寸法はp=4mm、q=3mm、r=10mm、フィルムゲート部の間隙及び長さは 0.1mmであった。
【0019】
(比較例)
実施例と同形状の円形シリコーンゴムリングを81個取りの圧縮成形用金型にて 810個成形したところ、バリ取りまでに要した時間は 121分であった。
上記実施例及び比較例の結果を表1に示した。これより、トランスファ成形用金型の生産性は圧縮成形用金型の2倍であった。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明の成形用金型によれば、通常の圧縮成形による成形品で不可欠なバリ取り作業が不要となり、バリ残りもなく作業性、生産性、品質を向上し、作業者の疲労を軽減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形用金型の全体を示すもので、(a)はその分解斜視図、(b)は縦断面図である。
【図2】図1におけるスプルー末端部付近の拡大縦断面図である。
【図3】図1の成形用金型で得られた成形品とバリの状態を示す斜視図である。
【図4】図2における内側のフィルムゲート部をさらに拡大して示す縦断面図である。
【図5】図1における中型の要部の拡大縦断面図である。
【図6】従来の圧縮成形用金型に係り、(a)はその斜視図、(b)は得られた成形品とバリの状態を示す斜視図、(c)は型板を閉じた状態における要部の縦断面図である。
【符号の説明】
1‥トランスファー成形用金型、 2‥上型、
3‥中型、 4‥下型、
5‥材料、 6‥リング状キャビティ、
7‥プランジャー部、 8‥材料入れポット、
9‥スプルー、 10‥(内側の)フィルムゲート部、
12‥(外側の)フィルムゲート部、 13‥間隙、
14‥外バリ、 15‥内バリ、
P‥成形品(リング状成形品)、 S‥間隙、
L‥長さ、 p‥スプルー入口側直径、
q‥スプルー出口側直径、 t‥中型の厚さ。
Claims (1)
- リング状キャビティを形成する一対の型板を有する成形用金型であって、上型、中型、下型の3枚の型板を有し、上型の下面中央部に材料を圧縮しキャビティに充填するためのプランジャーを備え、中型の上面中央部に材料入れポットを備え、材料入れポットの底から中型の型板を貫通して下型の上面部に達するスプルーを備え、一方の型板に設けたスプルーの末端部の外周側面を、微小間隙で微小長さのフィルムゲート部を介して、リング状キャビティの内周側面と、全周にわたって連通させてなることを特徴とするリング状成形品の成形用金型。
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