JP3774374B2 - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定磁性層の磁化の方向と外部磁界の影響を受けるフリー磁性層の磁化の方向との関係で電気抵抗が変化する磁気検出素子に係り、特に磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図るとともに、良好な再生波形及び再生出力を得ることができ、今後の高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図24は従来の磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0003】
符号1はTaなどの下地層であり、前記下地層1の上にはPtMn合金などの反強磁性層2、NiFe合金などの固定磁性層3、Cuなどの非磁性中間層4、NiFe合金などのフリー磁性層5及びTaなどの保護層6が形成されている。前記下地層1から前記保護層6までの各層で多層膜9が形成される。
【0004】
図24に示す従来例では、前記多層膜9のトラック幅方向(図示X方向)の両側には硬磁性材料製のハードバイアス層7が形成され、その上に電極層8が形成されている。
【0005】
しかしながら図24に示すスピンバルブ型薄膜素子では、以下のような問題点があった。
【0006】
前記フリー磁性層5の上面のトラック幅方向における幅寸法はトラック幅Twとして規定されるが、今後の高記録密度化に伴い前記トラック幅Twを狭くすると、前記フリー磁性層5の両側端部5a、5aが前記ハードバイアス層7からの強い縦バイアス磁界で磁化されて、前記両側端部5aは外部磁界に対して反転しづらくなる。いわゆる不感領域となる。このため、実質的に磁化反転でき、磁気抵抗効果を発揮する領域(いわゆる感度領域という)は、トラック幅Twよりも狭くなり、狭トラック化に伴って前記領域はますます狭くなるため再生出力が低下するといった問題が発生したのである。
【0007】
そこで従来では、フリー磁性層5の両側端部5aが不感領域となっても、ある所定の大きさの感度領域を確保すべく、スピンバルブ型薄膜素子の構造は以下のように改良された。
【0008】
図25は改良された従来におけるスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図24と同じ符号の層は、図24と同じ層を表している。
【0009】
この従来例では、前記フリー磁性層5の上面のトラック幅方向の幅寸法はT1であり、前記幅寸法T1が図24におけるトラック幅Twよりも長くなっている。
【0010】
そして前記電極層8は、前記ハードバイアス層7上から前記フリー磁性層5上に形成された保護層6上にオーバーラップして形成されている。前記電極層8がオーバーラップした下に形成されているフリー磁性層5の部分は不感領域である。
【0011】
一方の前記電極層8から他方の電極層8に流れるセンス電流は、最も短い電流経路を通るため、前記不感領域には前記センス電流は流れず前記不感領域は電気的に死んだ状態にあり、感度領域のみに前記センス電流が流れるようになっている。
【0012】
この従来例では、前記電極層8の間隔でトラック幅Twが規定され、前記トラック幅Tw領域内は前記フリー磁性層5における感度領域に該当するため、前記トラック幅Twの全領域が実質的に磁気抵抗効果に関与する。
【0013】
そしてこの従来例では、前記フリー磁性層5のトラック幅方向における幅寸法T1を適切に規制することで、今後の狭トラック化においても、所定の大きさの感度領域を確保することができるため、所定の大きさの再生出力を得ることができると期待された。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが図25に示す構造のスピンバルブ型薄膜素子であると以下のような問題点が発生した。
【0015】
それは前記フリー磁性層5の両側端部5aの不感領域は、確かに電気的には死んだ状態にあるが、磁気的には完全に死んだ状態にはなく、外部磁界の影響で磁化反転する場合があることがわかったのである。
【0016】
図26は前記フリー磁性層5を真上から見た部分模式図であり、不感領域及び感度領域における磁化方向を矢印で示したものである。
【0017】
図26に示すように、記録媒体に記録されたトラックが、図示右側における不感領域と対向したとき、前記不感領域の特に感度領域に近い位置での磁化Aは、前記トラックから出る磁界の影響を受けてトラック幅方向からやや磁化反転する。すなわち前記不感領域の前記感度領域に近い位置では、前記ハードバイアス層7からの縦バイアス磁界が弱く、完全にトラック幅方向(図示X方向)には固定されていない。
【0018】
このように、不感領域が磁化反転すると、その磁化反転が前記感度領域の磁化にも伝播し、前記感度領域における磁化Bもつられてトラック幅方向から磁化反転してしまうのである。
【0019】
このように不感領域が外部磁界の影響を受けて磁化反転をすると、前記電極層8のトラック幅方向の間隔で規定されていたトラック幅Twは磁気的には広がり、実質的に磁気抵抗効果に関与する磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができない。
【0020】
また不感領域の一部が隣接トラックから出た外部磁界の影響を受けて磁化反転するとクロストークの問題も発生する。
【0021】
また図27は、他の従来例におけるスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0022】
図27では図24及び図25のように前記フリー磁性層5のトラック幅方向の両側にハードバイアス層7を設けていない。
【0023】
図27では、前記フリー磁性層5の上にトラック幅方向に所定の間隔(トラック幅Tw)を開けた反強磁性層10が形成されている。そして前記反強磁性層10と前記フリー磁性層5間で発生する交換異方性磁界によって、前記フリー磁性層5の両側端部5aの磁化は適切にトラック幅方向に固定され、前記フリー磁性層5の中央領域5bの磁化は、適切にトラック幅方向に揃えられ、前記中央領域5bの磁化の磁化反転で磁気抵抗効果が発揮される。
【0024】
図28は、図27のスピンバルブ型薄膜素子の製造方法を示す一工程図である。
【0025】
図28の工程では、下地層1からフリー磁性層5までの多層膜11を連続成膜した後、前記フリー磁性層5の上にリフトオフ用のレジスト層Rを形成し、前記レジスト層Rに覆われていない前記フリー磁性層5の上に反強磁性層10及び電極層8をスパッタ成膜する。
【0026】
このとき前記レジスト層Rの上面及びトラック幅方向の側面にも反強磁性層10を構成する反強磁性材料層10aと電極層8を構成する導電性材料層8aが成膜される。そして前記レジスト層Rを除去すると図27に示すスピンバルブ型薄膜素子が完成する。
【0027】
しかしながら図27に示す構造のスピンバルブ型薄膜素子では以下のような問題点があった。
【0028】
すなわち図28に示すように、リフトオフ用のレジスト層Rを用いて成膜された反強磁性層10のトラック幅方向(図示X方向)の内側先端部10b,10bは先細るため、この内側先端部10bとフリー磁性層5間で発生する交換異方性磁界は非常に小さくなる。従って、先細った前記内側先端部10b下に位置するフリー磁性層5には十分な縦バイアス磁界は供給されず、よってトラック幅Tw間のフリー磁性層5は弱い縦バイアス磁界のために単磁区化されにくく、バルクハウゼンノイズの発生などの問題が生じる。
【0029】
またこの従来例でも磁気的なトラック幅(Mag−Tw)がトラック幅Twよりも広がり、前記磁気的なトラック幅の狭小化を適切に図ることができない。
【0030】
以上のように、図24ないし図26に示すハードバイアス方式によって前記フリー磁性層5の磁化を単磁区化する方法、および図27及び図28に示すエクスチェンジバイアス方式によって前記フリー磁性層5の磁化を単磁区化する方法では共に問題があり、今後の狭トラック化に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することはできなかった。
【0031】
そこで本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、特に磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ると共に、良好な再生波形及び再生出力を得ることが可能な磁気検出素子及びその製造方法を提供すること目的としている。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層を有して積層された多層膜を有する磁気検出素子において、
前記フリー磁性層のトラック幅方向の両側にはバイアス層が対向して形成され、前記バイアス層上からフリー磁性層上にかけて、トラック幅方向に間隔を開けて第2の反強磁性層が形成され、前記第2の反強磁性層と前記バイアス層及びフリー磁性層との間には強磁性層が形成されていることを特徴とするものである。
【0033】
本発明では、フリー磁性層のトラック幅方向の両側にバイアス層を設けることで、前記バイアス層から前記フリー磁性層に縦バイアス磁界を与えることができると同時に、前記フリー磁性層の上に形成された第2の反強磁性層との交換異方性磁界によって、前記フリー磁性層の両側端部を適切にトラック幅方向に固定することができる。
【0034】
これによって前記フリー磁性層の両側端部の特に感度領域に近い部分も、外部磁界によって磁化反転することがなくなり、前記フリー磁性層の中央領域の部分のみが適切に感度領域として働き磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法で形成することができる。
【0035】
したがって本発明では、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、良好な再生波形及び再生出力を得ることができ、今後の高記録密度化に優れた磁気再生素子を製造することが可能である。
【0037】
上記のように前記第2の反強磁性層を、前記バイアス層上から前記フリー磁性層上にかけて形成する形態であれば、前記フリー磁性層の両側端部の磁化を確実にトラック幅方向に固定できると共に製造方法も容易である。
【0038】
また本発明では、前記第2の反強磁性層と、前記バイアス層及びフリー磁性層との間には強磁性層が形成されているため、前記強磁性層と前記第2の反強磁性層間で交換異方性磁界を発生させて、前記強磁性層の磁化をトラック幅方向に固定し、前記強磁性層との強磁性結合によって、前記フリー磁性層の両側端部の磁化を確実にトラック幅方向に固定することができる。
【0039】
なお本発明では、前記強磁性層は、NiFeX(ただし元素Xは、Cr、Nb、Ta、Rh、Ir、Re、Ruのうちいずれか1種または2種以上)合金で形成されることが好ましい。
【0040】
また本発明では、前記強磁性層と前記バイアス層間には、非磁性の中間層が形成されていることが好ましい。これにより前記強磁性層の特性を高めることができる。具体的には前記強磁性層と前記第2の反強磁性層間で発生する交換異方性磁界とブロッキング温度を高めることができる。
【0041】
なお前記非磁性の中間層は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成されることが好ましい。
【0042】
また本発明では、前記第2の反強磁性層の上には電極層が形成されていることが好ましい。
【0043】
また本発明では、前記フリー磁性層は、単位面積当たりの磁気モーメントが異なる2層の磁性層とその間に非磁性の中間層が形成された人工フェリ磁性構造であることが好ましい。
【0044】
さらに本発明では、前記フリー磁性層上であって、前記第2の反強磁性層の間隔内には、バックド層が形成され、さらにその上に鏡面反射層が積層されているか、あるいは前記バックド層または前記鏡面反射層が形成されていることが好ましい。
【0045】
本発明における磁気再生素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)基板上に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層の順に多層膜を積層形成する工程と、
(b)前記フリー磁性層上にリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記多層膜のトラック幅方向の両側端部を除去する工程と、
(c)前記多層膜の両側にバイアス層とその上に非磁性の中間層を形成する工程と、
(d)前記レジスト層を除去し、前記フリー磁性層上に前記レジスト層よりもトラック幅方向の幅寸法が小さいリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記フリー磁性層の両側端部及び中間層上に強磁性層及び第2の反強磁性層を連続成膜し、さらに前記第2の反強磁性層上に電極層を形成した後、前記レジスト層を除去する工程。
【0046】
上記の製造方法により、前記フリー磁性層のトラック幅方向の両側にバイアス層を形成できると共に、前記フリー磁性層の上面にトラック幅方向に所定の間隔を開けた第2の反強磁性層を容易にしかも適切に形成することが可能である。
【0047】
また本発明における磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(e)基板上に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層の順に多層膜を積層形成し、さらに前記フリー磁性層上にバックド層、鏡面反射層を順に積層するか、あるいは前記フリー磁性層上に、バックド層または前記鏡面反射層を形成し、あるいはさらに前記バックド層上または鏡面反射層上に保護層を形成する工程と、
(f)前記保護層、バックド層あるいは鏡面反射層上にリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない、保護層、バックド層、鏡面反射層、及び前記多層膜のトラック幅方向の両側端部を除去する工程と、
(g)少なくとも前記多層膜の両側にバイアス層とその上に非磁性の中間層を形成する工程と、
(h)前記保護層、鏡面反射層上あるいはバックド層上に、前記レジスト層よりもトラック幅方向の幅寸法が小さいリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない、前記バックド層、鏡面反射層及び保護層を除去し、前記フリー磁性層の両側端部を露出させる工程と、
(g)前記フリー磁性層の両側端部及び中間層上に強磁性層及び第2の反強磁性層を連続成膜し、さらに前記第2の反強磁性層上に電極層を形成した後、前記レジスト層を除去する工程。
【0048】
上記工程を施すことで、前記フリー磁性層上に形成された第2の反強磁性層間の間隔内に、バックド層と鏡面反射層、あるいはバックド層または鏡面反射層を容易に形成することができる。
【0049】
また本発明では、前記(a)工程と前記(b)工程の間に、あるいは前記(e)工程と(f)工程の間に、前記多層膜にハイト方向の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、前記第1の反強磁性層と固定磁性層間に交換異方性磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化を前記ハイト方向に固定し、
前記(d)工程あるいは前記(g)工程で第2の反強磁性層を積層形成した後、トラック幅方向に前記第1の反強磁性層の交換異方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、前記第1の反強磁性層のブロッキング温度よりも低い第2の熱処理温度で熱処理して、前記第2の反強磁性層と強磁性層間に交換異方性磁界を発生させ、前記軟磁性層の磁化をトラック幅方向に固定することが好ましい。
【0050】
上記の製造方法では、印加磁界と熱処理温度の大きさを適切に制御することで、前記第1の反強磁性層に接する固定磁性層の磁化をトラック幅方向と交叉する方向(ハイト方向)に固定し、第2の反強磁性層と接する強磁性層の磁化を前記トラック幅方向に固定することができる。
【0051】
このように、前記固定磁性層の磁化制御と強磁性層の磁化制御を、印加磁界と熱処理温度を調整するのみで簡単に行うことができる。
【0052】
また本発明では、前記第1の反強磁性層と第2の反強磁性層を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成することが好ましい。
【0053】
また本発明では、前記第1の反強磁性層と第2の反強磁性層をX−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成しても良い。
【0054】
【発明の実施の形態】
図1は本発明における第1実施形態の磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)を備えた薄膜磁気ヘッドの構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0055】
図1に示す薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に記録された外部信号を再生するためのMRヘッドである。図1には前記MRヘッドのみが開示されているが、前記MRヘッドの上に記録用のインダクティブヘッドが積層されていてもよい。前記インダクティブヘッドは磁性材料製のコア層とコイル層とを有して構成される。
【0056】
また前記薄膜磁気ヘッドは、例えばアルミナ−チタンカーバイト(Al23−TiC)で形成されたスライダのトレーリング側端面上に形成される。前記スライダは、記録媒体との対向面と逆面側で、ステンレス材などによる弾性変形可能な支持部材と接合され、磁気ヘッド装置が構成される。
【0057】
図1に示す符号20は、下部シールド層である。前記下部シールド層20はNiFe合金やセンダストなどの磁性材料によって形成される。
【0058】
前記下部シールド層20上にはAl23やSiO2などの絶縁材料製の下部ギャップ層21が形成されている。
【0059】
そして前記下部ギャップ層21上に磁気検出素子22が形成される。図1に示す磁気検出素子22は、いわゆるシングルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれる構成である。以下、前記磁気検出素子22を構成する各層について説明する。
【0060】
まず、前記下部ギャップ層21の図面中央の上面には下地層23が形成される。前記下地層23は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成されることが好ましい。前記下地層23は50Å以下程度の膜厚で形成される。なおこの下地層23は形成されていなくても良い。
【0061】
次に前記下地層23の上には第1の反強磁性層26が形成される。前記第1の反強磁性層26は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。あるいは前記第1の反強磁性層26は、元素Xと元素X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnを含有する反強磁性材料により形成されることが好ましい。
【0062】
これらの反強磁性材料は、耐食性に優れしかもブロッキング温度も高く次に説明する固定磁性層27との界面で大きな交換異方性磁界を発生し得る。また前記第1の反強磁性層26は80Å以上で250Å以下の膜厚で形成されることが好ましい。
【0063】
次に前記反強磁性層26の上には固定磁性層27が形成されている。この実施形態では前記固定磁性層27は3層構造で形成されている。
【0064】
前記固定磁性層27を構成する符号51及び53の層は磁性層であり、例えばCo、CoFe、NiFe、CoFeNiなどで形成される。前記磁性層51,53間にはRuなどで形成された中間層52が介在し、この構成により、前記磁性層51と前記磁性層53の磁化方向は互いに反平行状態にされる。これはいわゆる人工フェリ磁性状態と呼ばれる。
【0065】
前記第1の反強磁性層26と前記固定磁性層27の前記第1の反強磁性層26と接する磁性層51間には磁場中熱処理によって交換異方性磁界が発生し、例えば前記磁性層51の磁化がハイト方向(図示Y方向)に固定された場合、もう一方の磁性層53はハイト方向とは逆方向(図示Y方向と逆方向)に磁化され固定される。この構成により前記固定磁性層27の磁化を安定した状態にでき、また前記固定磁性層27と第1の反強磁性層26との界面で発生する交換異方性磁界を見かけ上大きくすることができる。
【0066】
なお例えば、前記磁性層51,53の膜厚はそれぞれ10〜70Å程度で形成される。また中間層52の膜厚は3Å〜10Å程度で形成で形成される。
【0067】
また前記磁性層51、53はそれぞれ単位面積当たりの磁気モーメントが異なるように、前記磁性層51、53の材質や膜厚がそれぞれ異なっている。前記磁気モーメントは飽和磁化Ms×膜厚tで設定され、例えば前記磁性層51、53を共に同じ材質で同じ組成の材料で形成するとき、前記磁性層51、53の膜厚を異ならせることで、前記磁性層51、53の磁気モーメントを異ならせることができる。これによって適切に前記磁性層51、53を人工フェリ磁性構造にすることが可能である。
【0068】
なお本発明では前記固定磁性層27は人工フェリ磁性構造ではなくNiFe合金、NiFeCo合金、あるいはCoFe合金などの単層膜あるいは積層膜で形成されていても良い。
【0069】
前記固定磁性層27の上には非磁性中間層28が形成されている。前記非磁性中間層28は例えばCuなどの電気抵抗の低い導電性材料によって形成される。前記非磁性中間層28は例えば18〜30Å程度の膜厚で形成される。
【0070】
次に前記非磁性中間層28の上にはフリー磁性層29が形成される。前記フリー磁性層29は、NiFe合金、CoFe合金、Co、CoNiFe合金などにより形成される。また前記フリー磁性層29は、20Å以上で40Å以下程度の膜厚で形成されることが好ましい。また前記フリー磁性層29は2層構造で形成され、前記非磁性中間層28と対向する側にCo膜あるいはCoFe膜が形成されていることが好ましい。これにより前記非磁性中間層28との界面での金属元素等の拡散を防止でき、抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることができる。
【0071】
次に前記フリー磁性層29の図面中央上には金属材料あるいは非磁性金属のCu,Au,Agからなるバックド層57が形成されている。また前記バックド層57の上には、鏡面反射層30が形成されている。前記鏡面反射層30は、Fe−O、Ni−O、Co−O、Co−Fe−O、Co−Fe−Ni−O、Al−O、Al−Q−O(ここでQはCu、B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−O(ここでRはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)等の酸化物、Al−N、Al−Q−N(ここでQはB、Si、O、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−N(ここでRはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)等の窒化物等で形成できる。
【0072】
本発明では、前記フリー磁性層29の上にバックド層57及び鏡面反射層30が形成されることによって、磁気抵抗効果に関与する+スピン(上向きスピン)の電子における平均自由行程(mean free path)を延ばし、いわゆるスピンフィルター効果(spin filter effect)により磁気抵抗効果素子において、大きな抵抗変化率が得られ、高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することができる。
【0073】
ただし本発明では、前記バックド層57か鏡面反射層30のどちらか一方のみが形成される形態であっても良い。また図1に示す鏡面反射層30の上にTaなどからなる保護層(この保護層の表面は酸化されていることが好ましい)が形成されていても良い。
【0074】
本発明では、図1に示すように上記した前記第1の反強磁性層26の下側端部26a、26aは、トラック幅方向(図示X方向)に延びて形成され、前記下側端部26aの付け根部分からフリー磁性層29までの多層膜の両側端面31,31が、前記下部シールド層20から離れる方向(図示Z方向)に向けて幅寸法が小さくなる連続した傾斜面となっている。
【0075】
次に前記多層膜31のトラック幅方向(図示X方向)の両側領域には、前記第1の反強磁性層26の下側端部26a上から前記多層膜の両側端面31上にかけて、バイアス下地層35が形成されており、前記バイアス下地層35の上にハードバイアス層36が形成されている。前記ハードバイアス層36は例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されている。
【0076】
なお前記ハードバイアス層36は、少なくとも前記フリー磁性層29と対向する位置まで形成される。
【0077】
次に前記ハードバイアス層36の上には非磁性の中間層58が形成されている。前記中間層58は、例えばTa,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成されている。この実施形態では前記フリー磁性層29の上面から前記中間層58の上面にかけては連続面となっている。
【0078】
さらにこの実施形態では、前記中間層58上から前記フリー磁性層29上にかけて強磁性層59が形成され、前記強磁性層59の上には第2の反強磁性層60が形成されている。
【0079】
前記第2の反強磁性層60は、前記第1の反強磁性層26と同様に、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。あるいは前記第2の反強磁性層60は、元素Xと元素X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnを含有する反強磁性材料により形成されることが好ましい。
【0080】
また前記第2の反強磁性層60の上には電極層32、32が形成されている。前記電極層32は、例えばα−Ta、Au、Cr、Cu(銅)、Rh、Ir、RuやW(タングステン)などで形成されている。
【0081】
次に前記電極層32上から前記鏡面反射層30上にかけて上部ギャップ層38が形成され、前記上部ギャップ層38の上に上部シールド層39が形成される。前記上部ギャップ層38は前記下部ギャップ層21として使用可能な非磁性材料で形成され、また上部シールド層39は下部シールド層20として使用可能な磁性材料で形成される。なお前記上部シールド層39の上にインダクティブヘッドも形成される場合には、前記上部シールド層39は前記インダクティブヘッドの下部コア層として兼用されても良いし、前記下部コア層を別に形成しても良い。
【0082】
この磁気検出素子では、前記電極層32,32から、固定磁性層27、非磁性中間層28及びフリー磁性層29に検出電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクなどの記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層29の磁化が図示X方向の一方向からY方向へ向けて変化する。このフリー磁性層29内での磁化の方向の変動と、固定磁性層27の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0083】
ところで図1に示す実施形態では、前記フリー磁性層29のトラック幅方向における上面の幅寸法はT2で形成されている。この幅寸法T2は、予めマイクロトラックプロファイル法などによって設定される。前記幅寸法T2は、走査型電子顕微鏡や光学顕微鏡によって測定される光学的なトラック幅(Opti−Tw)よりも長く形成されている。
【0084】
また図1に示すフリー磁性層29のトラック幅方向の両側にはハードバイアス層36が対向している。さらに前記フリー磁性層29の上面には所定の間隔を開けて強磁性層59と第2の反強磁性層が積層されており、光学顕微鏡によって測定される光学的なトラック幅(Opti−Tw)は、前記電極層32、32のトラック幅方向(図示X方向)への間隔で設定される。なお一般的にトラック幅Twというときは、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)を指している。
【0085】
本発明は、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)よりもトラック幅方向の両側に位置するフリー磁性層29の両側端部29aが、磁気抵抗効果に関与しないように、前記両側端部29aの磁化を適切にトラック幅方向に固定し、前記両側端部29aを確実に不感領域にし、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)内のフリー磁性層29のみが実質的に磁気抵抗効果に関与する感度領域となるようにして、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)が前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)よりも広がらないようにすべく発明されたものである。
【0086】
図2は図1に示す磁気検出素子22の図示右側部分のみを拡大した部分拡大断面図である。
【0087】
図2に示すように、前記フリー磁性層29の側面には、バイアス下地層35を介してハードバイアス層36が対向している。このため、前記フリー磁性層29の両側端部29aの磁化は、前記ハードバイアス層36からの強い縦バイアス磁界を受けてトラック幅方向に固定される。
【0088】
しかし前記両側端部29aの光学的なトラック幅(Opti−Tw)に近い位置C、Cでは、前記ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界が弱まるため前記位置Cでの磁化はトラック幅方向に強固に固定されにくい。
【0089】
このため本発明では、前記フリー磁性層29の前記両側端部29a上に第2の反強磁性層60を形成し、前記位置Cでの磁化を前記第2の反強磁性層60との交換異方性磁界によって強固にトラック幅方向に固定している。
【0090】
この実施形態では、前記フリー磁性層29の上には強磁性層59が形成され、その上に第2の反強磁性層60が形成されている。
【0091】
かかる形態では、前記強磁性層59と第2の反強磁性層60間で発生する交換異方性磁界によって前記強磁性層59の磁化は適切にトラック幅方向(図示X方向)に固定される。そして前記強磁性層59と直接接合するフリー磁性層29の両側端部29aは、前記強磁性層59との強磁性結合によってトラック幅方向に磁化されて固定されるようになっている。
【0092】
このように本発明によれば、前記フリー磁性層29の両側端部29aの磁化は適切にトラック幅方向(図示X方向)に固定されるため、この部分に外部磁界が侵入してきても磁化反転は起こらず、したがって実質的に磁気抵抗効果に関与する磁気的トラック幅(Mag−Tw)を前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に小さくでき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を実現できると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法の範囲内で適切に形成することができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさの再生出力を有する磁気検出素子22を製造することが可能である。
【0093】
次に本発明における好ましい形態について以下に説明する。
まず図1、2に示すように、前記フリー磁性層29と前記第2の反強磁性層60との間には強磁性層59が形成されていることが好ましい。
【0094】
磁性層と第2の反強磁性層60との間で交換異方性磁界を適切に発生させるには、前記磁性層と前記第2の反強磁性層60とを連続成膜する必要性がある。
【0095】
しかし図1に示す実施形態では、後で製造方法で説明するように、前記フリー磁性層29と第2の反強磁性層60とを連続成膜しないため、前記フリー磁性層29に直接、前記第2の反強磁性層60を成膜すると、前記フリー磁性層29と第2の反強磁性層60との間に所定の大きさの交換異方性磁界を発生させることができない場合がある。
【0096】
このため本発明では、前記フリー磁性層29の上に、強磁性層59と第2の反強磁性層60とを連続成膜し、前記強磁性層59と前記第2の反強磁性層60との間で所定の大きさの交換異方性磁界を発生させて、前記強磁性層59を確実にトラック幅方向に固定する。そして前記強磁性層59と重ねられたフリー磁性層29の両側端部29aの磁化は前記強磁性層59との強磁性結合によって、適切にトラック幅方向に固定されるので、本発明では前記両側端部29aを確実に磁気的に殺すことができ、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができ、今後の高記録密度化に対応可能な磁気検出素子22を製造することが可能である。
【0097】
次にこの図1、2に示す実施形態では、前記強磁性層59及び第2の反強磁性層60は、前記ハードバイアス層36からフリー磁性層29上にかけて形成されている。このような形態となるのは、後述する製造方法に起因するものである。なお本発明では、このような形態とすることで、前記強磁性層59の磁化を適切にトラック幅方向に固定でき、前記強磁性層59との間で強磁性結合する前記フリー磁性層29の両側端部29aの磁化を確実にトラック幅方向に固定できる。
【0098】
次に、この図2に示す実施形態では、前記第2の反強磁性層60のトラック幅方向(図示X方向)における内側端面60aが傾斜面となって、前記第2の反強磁性層60の内側先端部60bは先細り形状となっているが、前記フリー磁性層29の両側端部29aの磁化は適切にトラック幅方向に固定される。つまり前記先細り形状の部分と対向する前記フリー磁性層29の両側端部29aの位置Cにおいて、強磁性層59との強磁性結合が弱まり、前記位置Cでの磁化が適切にトラック幅方向に固定されないということはない。
【0099】
それは本発明では、前記フリー磁性層29の両側端部29aには、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界と、第2の反強磁性層60と強磁性層59間に発生した交換異方性磁界によって磁化された前記強磁性層59との強磁性結合の双方が働くため、前記第2の反強磁性層60の内側先端部60bが先細り形状であっても、前記フリー磁性層29の両側端部29aの位置Cでの磁化を確実にトラック幅方向に固定することが可能である。
【0100】
次に、前記ハードバイアス層36と前記強磁性層59との間には非磁性の中間層58が形成されているが、これにより前記強磁性層59の特性を向上させることができる。具体的には前記強磁性層と前記第2の反強磁性層間で発生する交換異方性磁界とブロッキング温度を高めることができる。なお前記中間層58は形成されていなくてもかまわない。
【0101】
次に、本発明では、前記強磁性層59の膜厚は20〜100Å程度で形成されることが好ましい。また前記第2の反強磁性層60の前記フリー磁性層29上に形成された位置での先細り形状以外の部分の膜厚H1は150〜500Å程度で形成されることが好ましい。
【0102】
次に図1、2に示す実施形態では、前記ハードバイアス層36の下側にバイアス下地層35が形成されているが、前記バイアス下地層35は前記ハードバイアス層36の特性(保磁力Hc、角形比S)を向上させるために設けられたものである。
【0103】
本発明では、前記バイアス下地層35は、結晶構造が体心立方構造(bcc構造)の金属膜で形成されることが好ましい。なおこのとき前記バイアス下地層35の結晶配向は(100)面が優先配向するのが好ましい。
【0104】
また前記ハードバイアス層36は、CoPt合金やCoPtCr合金などで形成される。これら合金の結晶構造は、一般的にはバルクにおいて面心立方構造(fcc)と稠密六方構造(hcp)の混相となるような組成付近の膜組成に設定される。
【0105】
ここで上記の金属膜で形成されたバイアス下地層35とハードバイアス層36を構成するCoPt系合金のhcp構造の格子定数は近い値となるために、CoPt系合金はfcc構造を形成しづらくhcp構造で形成されやすくなる。このときhcp構造のc軸はCoPt系合金とバイアス下地層35の境界面内に優先配向される。前記hcp構造はfcc構造に比べてc軸方向に大きな磁気異方性を生じるため、ハードバイアス層に磁界を与えたときの保磁力Hcは大きくなるのである。さらにhcpのc軸はCoPt系合金とバイアス下地層との境界面内で優先配向となっているため、残留磁化が増大し、残留磁化/飽和磁化で求められる角形比Sは大きくなる。その結果、前記ハードバイアス層36の特性を向上させることができ、前記ハードバイアス層36から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0106】
本発明では、結晶構造が体心立方構造(bcc構造)の金属膜は、Cr,W,Mo,V,Mn,Nb,Taのいずれか1種または2種以上の元素で形成されることが好ましい。
【0107】
なお図1、2に示す実施形態では、前記バイアス下地層35は、前記ハードバイアス層36とフリー磁性層29間にも形成されているが、これによって前記フリー磁性層29の両側端部29aの前記ハードバイアス層36に近い側では、反磁界が大きくなって、バックリング現象が起こりやすくなる。前記バックリング現象とは反磁界の影響で、前記フリー磁性層29の磁化が乱れて磁壁が生じるという磁化不連続現象のことであり、これにより再生波形の安定性が低下する虞がある。
【0108】
このような問題を解決するには、前記ハードバイアス層36とフリー磁性層29とを磁気的な連続体とすべく、前記フリー磁性層29の両側に直接、前記ハードバイアス層36を形成すれば良い。したがって本発明では、前記フリー磁性層29の両側に前記ハードバイアス層36を直接接合させることが好ましい。
【0109】
なお前記ハードバイアス層36とフリー磁性層29間に前記バイアス下地層35が介在していても前記バイアス下地層35のトラック幅方向(図示X方向)における膜厚が1nm以下であれば、前記バックリング現象の発生を抑えることができる。
【0110】
次に前記強磁性層59の材質について説明する。
前記強磁性層59は前記フリー磁性層29と同様にNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Coなどで形成されてもよいが、例えばNiFeX(ただし元素Xは、(ただし元素Xは、Cr、Nb、Ta、Rh、Ir、Re、Ruのうちいずれか1種または2種以上)合金で形成することもできる。元素Xの添加によって、NiFeX合金は、NiFe合金などの磁性材料に比べて比抵抗が高くなるとともにNiFeX合金そのものが持つ異方性磁気抵抗効果(AMR効果)が著しく低下する。
【0111】
前記フリー磁性層29はその中央領域が、実質的に磁気抵抗効果に関与する感度領域であり、そのため前記フリー磁性層29の比抵抗は低いことが、磁気抵抗効果を大きくできて好ましい。
【0112】
これに対し前記強磁性層59は、前記フリー磁性層29の両側端部29aをトラック幅方向に適切に磁化させるために設けられた層であり、本発明では、前記強磁性層59は磁気抵抗効果に関与しない。前記強磁性層59の磁化は前記第2の反強磁性層60との間で発生する交換異方性磁界によってトラック幅方向に固定され、また前記ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界もある程度受けるものと考えられるため、前記強磁性層59の磁化は確実にトラック幅方向に固定された状態にあり、前記強磁性層59の磁化は外部磁界の影響を受けても変動しない。
【0113】
しかし前記強磁性層59を確実に磁気抵抗効果に関与しないようにするには、前記強磁性層59の比抵抗を前記フリー磁性層29の比抵抗よりも大きくしておき、前記強磁性層59から発生するAMR効果を低減しておくことが好ましく、したがって本発明では、上記したNiFeX合金で前記強磁性層59を形成することとしている。
【0114】
以下、本発明における別の実施形態について説明する。なお図1と同じ符号が付けられた層は図1と同じ層を示している。
【0115】
図3は本発明における第2実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0116】
図3は図1と異なり、フリー磁性層29が3層構造となっている。前記フリー磁性層29を構成する符号61及び63の層は磁性層であり、例えばCo、CoFe、NiFe、CoFeNiなどで形成される。前記磁性層61,63間にはRuなどで形成された中間層62が介在し、この構成により、前記磁性層61と前記磁性層63の磁化方向は互いに反平行状態にされる。これはいわゆる人工フェリ磁性状態と呼ばれる。
【0117】
前記磁性層61,63の膜厚はそれぞれ10〜70Å程度で形成される。また中間層62の膜厚は3Å〜10Å程度で形成で形成される。
【0118】
なお前記磁性層61、63はそれぞれ単位面積当たりの磁気モーメントが異なるように、前記磁性層61、63の材質や膜厚はそれぞれ異なっている。前記単位面積当たりの磁気モーメントは飽和磁化Ms×膜厚tで設定され、例えば前記磁性層61、63を共に同じ材質で同じ組成の材料で形成するとき、前記磁性層61、63の膜厚を異ならせることで、前記磁性層61、63の磁気モーメントを異ならせることができる。これによって適切に前記磁性層61、63を人工フェリ磁性構造にすることが可能である。
【0119】
図3のように前記フリー磁性層29を人工フェリ磁性構造とすることで、前記フリー磁性層29を適切に単磁区化でき、バルクハウゼンノイズが少なく、再生出力の高い磁気検出素子を製造することが可能である。なお前記フリー磁性層29の磁性層61、63のうち、磁気抵抗効果に関与するのは、非磁性中間層28に接する磁性層61である。
【0120】
この図3に示す実施形態では、前記フリー磁性層29を構成する上側の磁性層63の両側端部63a上に強磁性層59及び第2の反強磁性層60が積層され、前記強磁性層59及び第2の反強磁性層60間の間隔内に、バックド層57及び鏡面反射層30が積層されている。
【0121】
この図3に示す実施形態では、前記フリー磁性層29を構成する磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界を受ける。また前記磁性層63の両側端部63aの磁化は、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向の一方向(図示X方向の一方向)に固定され、またもう一方の磁性層61には、前記磁性層63とのRKKY相互作用が作用し、前記磁性層61の両側端部61aは、前記磁性層63の磁化方向と逆方向に固定される。
【0122】
これによって前記フリー磁性層29の磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化はトラック幅方向(図示X方向)に反平行状態になって確実に固定される。
【0123】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度にでき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0124】
図4は本発明における第3実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0125】
図4に示す構造は、デュアル型のスピンバルブ型薄膜素子である。デュアル型では、フリー磁性層29の上下に非磁性中間層28、64を介して固定磁性層27、68が形成される。
【0126】
図4に示す下地層23からフリー磁性層29までの積層構造は図1と同じであるが、図4では、前記フリー磁性層29の上に、非磁性中間層64が形成され、前記非磁性中間層64の上に固定磁性層68が形成されている。この実施形態でも前記固定磁性層68は、下側に形成された固定磁性層27と同様に、磁性層65、67にRuなどの非磁性の中間層66を介した人工フェリ磁性構造となっている。また前記固定磁性層68の上には、前記固定磁性層68の磁化をハイト方向(図示Y方向)に固定するための上側の反強磁性層69が形成されている。
【0127】
図4に示す構造のデュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合、フリー磁性層29よりも下側に形成された固定磁性層27のうち磁気抵抗効果に関与する磁性層53が、例えばハイト方向(図示Y方向)に固定されていた場合、前記フリー磁性層29よりも上側に形成された固定磁性層68のうち磁気抵抗効果に関与する磁性層65も、ハイト方向(図示Y方向)に固定される。
【0128】
この実施形態でも、前記電極層32、32間の間隔によって光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決められる。
【0129】
この図4に示す実施形態では、前記フリー磁性層29の両側端部29a上には、強磁性層59及び第2の反強磁性層60が積層され、前記フリー磁性層29の中央部分上に、非磁性中間層64、固定磁性層68、反強磁性層69が積層されている。
【0130】
なおこの図4に示す実施形態では、図1と同様に、前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向(図示X方向)に確実に固定される。
【0131】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に形成でき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0132】
図5は本発明における第4実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0133】
図5では、図4と同様にデュアル型のスピンバルブ型薄膜素子であるが、フリー磁性層29が図3と同様に人工フェリ磁性構造である。
【0134】
前記フリー磁性層29を構成する磁性層61、63は、互いに反平行に磁化されているが、このようにフリー磁性層29と固定磁性層27、68がすべて人工フェリ磁性構造であるときは、前記フリー磁性層29よりも下側に形成された固定磁性層27の磁気抵抗効果に関与する磁性層53が例えばハイト方向(図示Y方向)に磁化されているとき、前記フリー磁性層29よりも上側に形成された固定磁性層68の磁気抵抗効果に関与する磁性層65はハイト方向とは逆方向(図示Y方向と逆方向)に磁化されている。
【0135】
この図5に示す実施形態でも、前記電極層32、32間の間隔によって光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決められる。
【0136】
この図5に示す実施形態では、前記フリー磁性層29の磁性層63の両側端部63a上には、強磁性層59及び第2の反強磁性層60が積層され、前記フリー磁性層29の中央部分上に、非磁性中間層64、固定磁性層68、反強磁性層69が積層されている。
【0137】
なおこの図5に示す実施形態では、図3と同様に、前記フリー磁性層29を構成する磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界を受ける。また前記磁性層63の両側端部63aの磁化は、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向の一方向(図示X方向の一方向)に固定され、またもう一方の磁性層61には、前記磁性層63とのRKKY相互作用が作用し、前記磁性層61は、前記磁性層63の磁化方向と逆方向に固定される。
【0138】
これによって前記フリー磁性層29の磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化はトラック幅方向(図示X方向)に反平行状態になって確実に固定される。
【0139】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に形成でき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0140】
図6は本発明における第5実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0141】
図6に示す磁気検出素子は、トンネル型磁気抵抗効果型素子と呼ばれる構造である。
【0142】
符号70は第1の電極層であり、この第1の電極層70の上に第1の反強磁性層26、固定磁性層27、非磁性中間層72、フリー磁性層29が積層されている。
【0143】
トンネル型磁気抵抗効果型素子の場合、前記非磁性中間層72は、図1ないし図5に示す非磁性中間層28、64と異なり、Al23やSiO2などの絶縁材料である。
【0144】
図6に示すように、前記フリー磁性層29のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法はT3であり、この幅寸法T3は予めマイクロトラックプロファイル法などによって設定される。前記フリー磁性層29の中央上面には、保護層33が形成されており、前記保護層33のトラック幅方向における幅寸法は前記フリー磁性層29の幅寸法T3よりも小さい。これにより前記保護層33のトラック幅方向における両側には前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aが露出する。
【0145】
前記第1の反強磁性層26の下側端部26aは、その上に形成された各層よりも図示X方向に延びて形成され、前記第1の反強磁性層26の前記下側端部26a上から、非磁性中間層72までの各層の両側端面上に絶縁層50、50が形成されている。前記絶縁層50の上面は、前記非磁性中間層72の上面以上で形成されていれば良い。前記絶縁層50は、例えばAl23やSiO2などの絶縁材料で形成される。
【0146】
また前記絶縁層50上にはバイアス下地層35を介してハードバイアス層36が形成され、前記ハードバイアス層36は、前記フリー磁性層29の両側端面と対向した位置で形成される。
【0147】
さらに前記ハードバイアス層36上には非磁性の中間層58が形成される。さらに前記中間層58上から前記フリー磁性層29の両側端部29a上には、強磁性層59が形成される。
【0148】
前記強磁性層59上には第2の反強磁性層60が形成されており、前記強磁性層59との間で発生する交換異方性磁界によって前記強磁性層59の磁化は図示X方向の一方向に固定される。
【0149】
図6に示す実施形態では、前記第2の反強磁性層60の上から前記保護層33上にかけて第2の電極層71が形成されている。
【0150】
図6に示すトンネル型磁気抵抗効果型素子と図1ないし図5に示すスピンバルブ膜と構造上大きく異なる点は、フリー磁性層29と固定磁性層27との間に、例えばAl23(アルミナ)などで形成された絶縁性の非磁性中間層72が形成されていることと、電極層70,71が、第1の反強磁性層26から保護層333までの多層膜の膜面に対し、垂直方向(図示Z方向)の両側に設けられていることである。
【0151】
トンネル型磁気抵抗効果型素子では、2つの強磁性層(フリー磁性層29と固定磁性層27)に電圧を印加すると、非磁性中間層72を電流(トンネル電流)が流れ、トンネル効果が発揮される。
【0152】
また図6に示すように、トンネル型磁気抵抗効果型素子では、前記第1の反強磁性層26から前記非磁性中間層72までの多層膜の両側には、絶縁層50が形成され、センス電流の分流を抑制している。
【0153】
なおこの図6に示す実施形態では、光学的なトラック幅(Opti−Tw)は、第2の反強磁性層60の間隔で決められ、またこの実施形態でも図1と同様に前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向に確実に固定される。
【0154】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度にでき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、また所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0155】
図7は本発明における第6実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0156】
図6との違いはフリー磁性層29が3層の人工フェリ磁性構造となっている点のみである。
【0157】
符号61及び63はNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Coなどの磁性層であり、前記磁性層61、63の間にRuなどの中間層62が形成されている。
【0158】
前記磁性層61,63の膜厚はそれぞれ10〜70Å程度で形成される。また中間層62の膜厚は3Å〜10Å程度で形成で形成される。また前記磁性層61と磁性層63の単位面積当たりの磁気モーメントは異なっている。
【0159】
この実施形態では、前記ハードバイアス層36上の中間層58上から前記フリー磁性層29の磁性層63の両側端部63a上にかけて、強磁性層59及び第2の反強磁性層60が積層形成されている。そして前記磁性層63の上面であって、前記強磁性層59及び第2の反強磁性層60間には保護層33が形成されていてもよい。
【0160】
なおこの図7に示す実施形態では、光学的なトラック幅(Opti−Tw)は、第2の反強磁性層60の間隔で決められ、またこの実施形態でも図2と同様に前記フリー磁性層29の磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界を受ける。また前記磁性層63の両側端部63aの磁化は、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向の一方向(図示X方向)に固定され、またもう一方の磁性層61には、前記磁性層63とのRKKY相互作用が作用し、前記磁性層61は前記磁性層63の磁化方向とは逆方向に固定される。
【0161】
これによって前記フリー磁性層29の磁性層61、63の両側端部61a、63aの磁化はトラック幅方向(図示X方向)に反平行状態になって確実に固定される。
【0162】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度にでき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができるので、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0163】
図8は本発明における第7実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0164】
図8に示す磁気検出素子は、図1と同じスピンバルブ型薄膜素子であるが、構造上、いくつかの相違点がある。以下に説明する相違点は、製造方法に起因するものである。
【0165】
図8に示すように、Taなどで形成された下地層23の上には第1の反強磁性層26が形成され、その上には3層の人工フェリ磁性構造の固定磁性層27が形成されている。前記固定磁性層27の上にはCuなどの非磁性中間層28を介してフリー磁性層29が形成されている。前記フリー磁性層29の上にはトラック幅方向に所定の間隔(光学的なトラック幅Opti−Twと一致する)を開けて図示X方向に第2の反強磁性層60が形成されている。
【0166】
この実施形態では、前記第1の反強磁性層26の下側端部26aは図示X方向に延びて形成され、前記下側端部26aの付け根部分から、第2の反強磁性層60までの各層の両側端面31、31は、連続した傾斜面で形成されている。
【0167】
そして図8に示すように、図示X方向に延びた前記第1の反強磁性層26の下側端部26a上から前記両側端面31上にかけてバイアス下地層35を介してハードバイアス層36が形成されている。この実施形態では、前記ハードバイアス層36の上面36aの内側縁部36bは、前記第2の反強磁性層60の上面60cと接している。
【0168】
また図8に示すように、前記第2の反強磁性層60上から前記ハードバイアス層36上にかけて電極層32が形成されている。前記ハードバイアス層36と電極層32間にはTaなどの中間層が設けられていても良い。
【0169】
またこの実施形態では、前記第2の反強磁性層60、前記電極層32の図示X方向における内側端面73が、前記第1の反強磁性層26から離れる方向(図示Z方向)に向かうにしたがって徐々に間隔が広がる傾斜面で形成されているが、前記傾斜面でなくても良く例えば湾曲面であっても良いし、あるいは図示Z方向と同じ方向の垂直面であってもよい。
【0170】
なお前記第2の反強磁性層60間に形成された間隔で光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決定される。
【0171】
またこの実施形態では図1ないし図7のように、前記フリー磁性層29の両側端部29aと第2の反強磁性層60間に強磁性層59が形成されていないが、形成されていても良い。またこの実施形態では、前記強磁性層59は、第2の反強磁性層60、60間の間隔内にも形成されていても良く、ただしかかる場合、前記第2の反強磁性層60間から露出する強磁性層59は磁気抵抗効果に関与するため、前記強磁性層59をNiFeX合金などの比抵抗が高く飽和磁化の小さい磁性材料で形成する。なおこの実施形態で、前記強磁性層59を形成しなくても良いのは後述する製造方法に起因するものである。
【0172】
なおこの図8に示す実施形態では、前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって、トラック幅方向(図示X方向)に確実に固定される。
【0173】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に形成でき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0174】
また前記フリー磁性層29は図3と同じ3層の人工フェリ磁性構造であってもよい。
【0175】
図9は本発明における第8実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0176】
図9に示す実施形態では図8と同様に、前記第1の反強磁性層26の下側端部26aは図示X方向に延びて形成され、前記下側端部26aの付け根部分から、固定磁性層27、非磁性中間層28、フリー磁性層29、強磁性層59及び第2の反強磁性層60までの各層の両側端面31、31は、連続した傾斜面で形成されている。
【0177】
そして図9に示すように、図示X方向に延びた前記第1の反強磁性層26の下側端部26a上から前記両側端面31上にかけてバイアス下地層35を介してハードバイアス層36が形成されている。この実施形態では、前記ハードバイアス層36の上面36aの内側縁部36bは、前記第2の反強磁性層60の上面60cと接している。
【0178】
また図9に示すように、前記第2の反強磁性層60上から前記ハードバイアス層36上にかけて電極層32が形成されているが、図8と異なって、前記電極層32は第2の反強磁性層60の内側端面60aに向かうほど徐々に膜厚が薄くなる先細った形状になり、前記電極層32の内側縁部32a、32aは、前記第2の反強磁性層60の内側端面60aよりも図示X方向に離れて形成されている。
【0179】
またこの実施形態では、前記第2の反強磁性層60の内側端面60aが、第1の反強磁性層26から離れる方向(図示Z方向)と同じ向きの垂直面となっているが、前記内側端面60aが、図示Z方向に向かうにしたがって徐々に間隔が広がる傾斜面や湾曲面で形成されていても良い。
【0180】
なお前記第2の反強磁性層60間の下面間隔で光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決定される。
【0181】
またこの実施形態では図1ないし図7と同様に、前記フリー磁性層29の両側端部29aと第2の反強磁性層60間に強磁性層59が形成されているが、形成されていなくても良い。また前記強磁性層59は第2の反強磁性層60間の間隔内にも形成されていても良く、かかる場合、前記強磁性層59は磁気抵抗効果に関与するので、NiFeX合金などの比抵抗が高く飽和磁化の小さい磁性材料で形成される。またこの実施形態で、前記強磁性層59を形成しなくても良いのは後述する製造方法に起因するものである。
【0182】
なおこの図9に示す実施形態では、前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向(図示X方向)に確実に固定される。
【0183】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に形成でき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0184】
また前記フリー磁性層29は図3と同じ3層の人工フェリ磁性構造であってもよい。
【0185】
図10は、本発明における第9実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0186】
この実施形態は図8の構造とよく似ているが以下の点に相違点がある。
すなわち図10では、フリー磁性層29の上にRuなどで形成された非磁性の中間層74が形成されている。前記非磁性の中間層74の上には所定の間隔(トラック幅Opti−Tw)を開けて強磁性層59が形成されているが、この実施形態では、前記フリー磁性層29の両側端部29aでは、非磁性の中間層74及び前記強磁性層59との間で人工フェリ磁性構造を構成し、前記両側端部29aの単磁区化が促進され、また前記強磁性層59間の間隔内から露出した前記非磁性の中間層74はバックド層57(図1を参照のこと)と同じスピンフィルター効果を発揮する。
【0187】
なおこの図10に示す実施形態でも、前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向に確実に固定される。
【0188】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度に形成でき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0189】
図11は本発明における第10実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0190】
図11に示す磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)の構造は図1と似た構造であるが、以下の点に相違点がある。
【0191】
図11では、前記強磁性層59、第2の反強磁性層60、電極層32の内側端面73、73は、第1の反強磁性層26から離れる方向(図示Z方向)と同じ方向の垂直面である。ただし図1のように前記内側端面73、73が図示Z方向に向かうにしたがって徐々に間隔が広がる傾斜面、あるいは湾曲面で形成されていても良い。
【0192】
また前記強磁性層59は、前記第2の反強磁性層60間の間隔内に形成されていてもよい。かかる場合、前記第2の反強磁性層60間から露出する前記強磁性層59は磁気抵抗効果に関与するため、前記強磁性層59をNiFeX合金などの比抵抗が高く飽和磁化の小さな磁性材料で形成する。
【0193】
図11は図1と製造方法が異なることで、上記した構造上の違いが現れている。
【0194】
図11に示す実施形態では、前記強磁性層59間の下面間隔で光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決定される。
【0195】
なおこの図11に示す実施形態でも、前記フリー磁性層29の両側端部29a、29aの磁化は、ハードバイアス層36からの縦バイアス磁界及び、第2の反強磁性層60との間で発生した交換異方性磁界によって単磁区化された強磁性層59との強磁性結合によって、トラック幅方向に確実に固定される。
【0196】
したがって、磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を光学的なトラック幅(Opti−Tw)と同程度にでき、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を、前記光学的なトラック幅(Opti−Tw)の幅寸法に合わせて設定できるため、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法内に確実に収めることができ、再生波形にばらつきが無く、所定の大きさを有する再生出力を得ることが可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0197】
なお図11に示すフリー磁性層29は図2と同様の3層の人工フェリ磁性構造であってもよい。また図10と同じように、前記フリー磁性層29上には非磁性の中間層74が形成されても良く、かかる場合、前記強磁性層59とのRKKY相互作用によって前記フリー磁性層29の磁化の単磁区化は促進され、また前記非磁性の中間層74の前記強磁性層59間から露出する部分はスピンフィルター効果を発揮し得る。
【0198】
なお図1ないし11に示す実施形態では、すべて第1の反強磁性層26の下側端部26aが図示X方向に延出形成されているが、前記第1の反強磁性層26の全体が、その上に形成される各層との両側端面と連続面となるように前記下側端部26aが削り込まれていてもよい。
【0199】
また本発明における実施形態で、フリー磁性層29の中央上面にバックド層57及び鏡面反射層30が形成されている場合、これらは形成されていなくても良い。
【0200】
次に本発明における磁気検出素子の製造方法について説明する。図12ないし図23に示す工程図は、すべて磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図であり、図12ないし図16は、図1に示す磁気検出素子の製造工程を示している。なお随時、図3ないし図7に示す磁気検出素子の製造方法についても説明する。
【0201】
図12に示す工程では基板75上に、Taなどで形成された下地層23、第1の反強磁性層26、Coなどで形成された磁性層51、53とRuなどで形成された非磁性の中間層52との3層人工フェリ磁性構造で形成される固定磁性層27、Cuなどで形成された非磁性中間層28、及びNiFeなどで形成されたフリー磁性層29、Cuなどで形成されたバックド層57、Ta−Oなどで形成された鏡面反射層30を連続してスパッタ成膜する。スパッタ成膜では、例えばDCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法のいずれか、またはそれらを組み合せたスパッタ法などを使用できる。なお前記鏡面反射層30上にTaなどからなる保護層(この保護層の表面は酸化されていることが好ましい)を形成してもよい。
【0202】
本発明では前記第1の反強磁性層26を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成することが好ましい。あるいは、前記第1の反強磁性層26を、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成することが好ましい。
【0203】
前記元素Xの組成比、あるいは元素X+元素X′の組成比を、例えば37原子%以上で63原子%以下に設定する。または前記元素Xの組成比、あるいは前記元素X+元素X′の組成比を47原子%以上で57原子%以下に設定することが好ましい。
【0204】
次に第1の熱処理工程を行う。まずハイト方向(図示Y方向)に第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、前記第1の反強磁性層26に交換異方性磁界を発生させる。これにより前記固定磁性層27の磁性層51の磁化が例えばハイト方向(図示Y方向)に固定される場合、他方の磁性層53の磁化はハイト方向と逆方向(図示Y方向と逆方向)に固定される。例えば前記第1の熱処理温度を270℃とし、磁界の大きさを800k(A/m)とする。
【0205】
なお図3のようにフリー磁性層29を3層人工フェリ磁性構造にするには、前記フリー磁性層29のスパッタ成膜のときに、磁性層61を形成した後、その上に非磁性の中間層62を形成し、さらに前記中間層62の上に磁性層63を形成する。
【0206】
また図4、5のデュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合には、フリー磁性層29の上に非磁性中間層64、3層人工フェリ磁性構造の固定磁性層68、反強磁性層69を連続スパッタ成膜する。
【0207】
また図6、7のトンネル型磁気抵抗効果型素子の場合には、基板上にまず第1の電極層70を形成した後、前記第1の電極層70上に第1の反強磁性層26から保護層33までを連続スパッタ成膜する。ただし非磁性中間層72をAl23やSiO2などの絶縁材料で形成する。
【0208】
図13に示す工程では、前記鏡面反射層30上にリフトオフ用のレジスト層76を形成する。なおこのとき前記レジスト層76のトラック幅方向(図示X方向)における下面の幅寸法T4を、図1に示すフリー磁性層29の上面の幅寸法T2と同程度で形成するか、あるいは若干小さ目に形成してもよい。
【0209】
なお、例えば前記幅寸法T4の設定は、マイクロトラックプロファイル法で求められる。マイクロトラックプロファイル法によれば、フリー磁性層29のトラック幅方向における幅寸法がある所定値のとき、前記フリー磁性層29の感度領域となる部分の幅と不感領域となる部分の幅を求めることができ、従って予めマイクロトラックプロファイル法によって、得たい感度領域の幅からフリー磁性層29全体の幅寸法を求め、それに合わせて、前記レジスト層76の下面の幅寸法T4を決定する。
【0210】
図13に示す工程では、前記レジスト層76によって覆われていない、第1の反強磁性層26の上側端部26b、固定磁性層27、非磁性中間層28、フリー磁性層29、バックド層57、鏡面反射層30を例えば矢印F方向からのイオンミリングで除去する(図13に示す点線部分)。
【0211】
これによって前記第1の反強磁性層26の下側端部26aの付け根部分から鏡面反射層30までのトラック幅方向における両側端面31、31は連続した傾斜面となる。なお前記イオンミリングによって、前記第1の反強磁性層26の図示X方向に延びた下側端部26aをすべて除去してもよい。
【0212】
次に図14に示す工程では、前記第1の反強磁性層26の図示X方向に延びた下側端部26a上から前記多層膜の両側端面31、31上にかけてCrなどのバイアス下地層35を形成した後、前記バイアス下地層35上にCoCrTaなどのハードバイアス層36をスパッタ成膜する。そして前記ハードバイアス層36上にTaなどの非磁性の中間層58をスパッタ成膜する。なお前記ハードバイアス層36を、少なくとも前記フリー磁性層29と対向する高さ位置までスパッタ成膜する。スパッタ成膜では、例えばDCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法のいずれか、またはそれらを組み合せたスパッタ法などを使用できる。
【0213】
なお前記レジスト層76上にもハードバイアス層36と同じ材料のバイアス材料層36c及び中間層58と同じ材料の非磁性材料層58cが形成される。
【0214】
なお前記ハードバイアス層36及び中間層58は少なくとも、前記フリー磁性層29と対向する位置まで形成すればよいが、この実施形態では前記中間層58をバックド層57及び鏡面反射層30の両側端面にもスパッタ形成している。
【0215】
なお図6及び図7のトンネル型磁気抵抗効果型素子の場合には、前記第1の反強磁性層26の図示X方向に延出した下側端部26a上から絶縁層50を形成した後、バイアス下地層35、ハードバイアス層36及び中間層58を連続成膜する。
【0216】
なお前記絶縁層50の上面の内側縁部50aは、前記フリー磁性層29の下面以上となるように、前記絶縁層50の膜厚を調整して形成する(図6を参照のこと)。
【0217】
図15に示す工程では、一旦、前記レジスト層76を除去した後、前記鏡面反射層30の上にリフトオフ用のレジスト層77を形成する。
【0218】
前記レジスト層77の下面の幅寸法T5は、既にマイクロトラックプロファイル法で測定した、フリー磁性層29の感度領域のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法と同程度、あるいはそれよりも若干小さ目とする。
【0219】
図15に示す工程では、前記レジスト層77に覆われていない、前記鏡面反射層30及びバックド層57を例えば矢印F方向のイオンミリングなどで除去する(点線部分)。またこのとき、前記バックド層57を除去したことによって露出するフリー磁性層29の両側端部29aの上面も若干削る。
【0220】
このときハードバイアス層36上の中間層58も若干削られるが、前記中間層58は完全に除去されないように予め厚さ寸法及び形成位置が適切に設定されている。
【0221】
そして図16に示す工程では、前記レジスト層77を利用して、前記レジスト層77に覆われていない、前記フリー磁性層29上から中間層58上にかけてNiFeX(ただし元素Xは、Cr、Nb、Ta、Rh、Ir、Re、Ruのうちいずれか1種または2種以上)合金やNiFe合金などで形成された強磁性層59をスパッタ成膜し、さらに連続して第2の反強磁性層60をスパッタ成膜する。また前記第2の反強磁性層60上に電極層32を形成する。なおこのとき、前記レジスト層77の上にも強磁性層59と同じ強磁性材料層59c、第2の反強磁性層60と同じ反強磁性材料層60d、および電極層32と同じ電極材料層32cが形成される。
【0222】
なお図6及び図7に示すトンネル型磁気抵抗効果型素子の場合には、前記電極層32を形成せず、第2の反強磁性層60を形成した後、前記レジスト層77を除去し、前記第2の反強磁性層60上から保護層33上にかけて第2の電極層71を形成する(図6を参照のこと)。
【0223】
なお本発明では前記第2の反強磁性層60を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成することが好ましい。あるいは、前記第1の反強磁性層26を、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成することが好ましい。
【0224】
このとき、前記元素Xの組成比、あるいは元素X+元素X′の組成比を、例えば37原子%以上で63原子%以下に設定し、または前記元素Xの組成比、あるいは前記元素X+元素X′の組成比を47原子%以上で57原子%以下に設定することが好ましい。
【0225】
また少なくとも前記第2の反強磁性層60を形成した後に、第2の熱処理工程を行う。この工程では第1の印加磁界と交叉する方向、すなわちトラック幅方向(図示X方向)に、前記第1の反強磁性層26の交換異方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、前記第1の反強磁性層26のブロッキング温度よりも低い熱処理温度で処理する。
【0226】
この工程により、第2の反強磁性層60には交換異方性磁界が発生し、前記強磁性層59の磁化をトラック幅方向の一方向(図示X方向の一方向)に固定することができる。
【0227】
なおこの第2の熱処理工程では、第2の印加磁界は、第1の反強磁性層26の交換異方性磁界よりも小さく、しかも熱処理温度は、前記第1の反強磁性層26のブロッキング温度よりも低いから、前記第1の反強磁性層26の交換異方性磁界の方向をハイト方向に向けたまま、前記第2の反強磁性層60の交換異方性磁界をトラック幅方向に向けることができる。なお前記第1の反強磁性層26と第2の反強磁性層60の組成は同じであっても良いし異なっていても良い。
【0228】
なお第2の熱処理温度は例えば250℃であり、磁界の大きさは24k(A/m)である。また上記した組成比で形成された反強磁性層26、60では、48k(A/m)以上の交換結合磁界を得ることができ、またブロッキング温度を380℃程度にすることができる。
【0229】
また本発明では、図12の工程時に、前記バックド層57及び鏡面反射層30をスパッタ成膜せず、前記フリー磁性層29の上に直接、前記レジスト層76を形成し、図15工程時に若干前記フリー磁性層29の両側端部29aを削った後、図16に示す、強磁性層59、第2の反強磁性層60及び電極層32の形成を行ってもよい。
【0230】
かかる場合、前記フリー磁性層29上には前記バックド層57及び鏡面反射層30が形成されていない形態の磁気検出素子を製造することができる。
【0231】
図17及び図18に示す工程図は、図8に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。
【0232】
図17に示す工程では、基板75上に下地層23、第1の反強磁性層26、3層人工フェリ磁性構造の固定磁性層27、非磁性中間層28、フリー磁性層29、及び第2の反強磁性層60をスパッタ成膜する。
【0233】
なお、まずフリー磁性層29まで、あるいは固定磁性層27までを積層形成した後、上記した第1の熱処理工程を行って、前記第1の反強磁性層26にハイト方向の交換異方性磁界を発生させ、前記固定磁性層27の磁性層51、53の磁化を、ハイト方向とハイト方向と逆方向の反平行状態に固定する。
【0234】
また上記の第1熱処理工程時に前記フリー磁性層29まで成膜した場合は、一旦前記フリー磁性層29の上面を所定膜厚削った後、前記フリー磁性層29の上に強磁性層59及び第2の反強磁性層60を連続成膜する。かかる場合、完成した磁気検出素子の形態は、図8のフリー磁性層29と第2の反強磁性層60間に強磁性層59が介在する。
【0235】
あるいは固定磁性層27まで積層して上記熱処理を行った場合には、前記固定磁性層27の上面を若干削った後、前記固定磁性層27上に非磁性中間層28、フリー磁性層29、及び第2の反強磁性層60を連続成膜する。かかる場合、強磁性層59を形成する必要はなく、完成した磁気検出素子の形態は、図8と同じになる。
【0236】
前記第2の反強磁性層60まで成膜した後、上記した第2の熱処理工程を行う。これにより前記第2の反強磁性層60にトラック幅方向の一方向(図示X方向の一方向)の交換異方性磁界を発生させ、前記フリー磁性層29の磁化をトラック幅方向に向ける。
【0237】
次に図17に示す工程では、前記第2の反強磁性層60の上にリフトオフ用のレジスト層80を形成する。前記レジスト層80のトラック幅方向(図示X方向)における下面の幅寸法T6は、既に説明したマイクロトラックプロファイル法によって求められたフリー磁性層29のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法と同程度か、あるいはそれよりもやや小さ目に形成する。
【0238】
そして前記レジスト層80に覆われていない、第1の反強磁性層26の上側端部26bから第2の反強磁性層60までの両側端部をイオンミリングや反応性イオンエッチング(RIE)などで除去する(図17に示す点線部分)。
【0239】
次に図18に示す工程では、図17工程時で形成された、図示X方向に延出する第1の反強磁性層26の下側端部26a上からその上に形成された各積層膜の両側端面上にかけてバイアス下地層35を形成し、さらに前記バイアス下地層35上にハードバイアス層36をスパッタ成膜する。
【0240】
さらにスパッタ角度を、前記ハードバイアス層36を形成していたときよりも基板75に対し斜めに傾けて、前記ハードバイアス層36上に電極層32をスパッタ成膜し、このとき前記電極層32を前記レジスト層80の下面に形成された窪み部分80a内にもスパッタ成膜する。
【0241】
そして前記レジスト層80を除去し、前記電極層32をマスクとして、前記電極層32間から露出する、第2の反強磁性層60をイオンミリングなどで除去する(点線部分)。これによって残された第2の反強磁性層60間から前記フリー磁性層29の上面を露出させる。
【0242】
なお、前記フリー磁性層29と第2の反強磁性層60間に強磁性層59が形成された場合であるが、かかる場合、上記のイオンミリングによって前記第2の反強磁性層60が除去されたことによって露出する前記強磁性層59も削りフリー磁性層29を露出させる。あるいは前記強磁性層59がNiFeXなどの比抵抗が高く飽和磁化の小さな磁性材料で形成された場合には、上記のイオンミリングによって前記第2の反強磁性層60が除去されたことによって露出する前記強磁性層59をすべて除去しなくても良く、一部を残すこともできる。これによって前記強磁性層59をすべて除去したときに露出するフリー磁性層29を削りすぎることは無くなり、前記強磁性層59がイオンミリング時におけるストッパとして機能する。また残された一部の強磁性層59もフリー磁性層29の中央領域と同様に感度領域として機能する。
【0243】
なお図18に示す工程では、前記電極層32の内側端面32bは、基板方向に向かうにしたがって徐々に間隔が狭くなる傾斜面あるいは湾曲面で形成されているので、それに追従して、残される前記第2の反強磁性層60の内側端面60aも前記電極層32の内側端面32bと連続面となり、前記第2の反強磁性層60間の間隔は前記レジスト層80の下面の幅寸法T6よりも狭くなり、前記第2の反強磁性層60間の下面間隔で光学的なトラック幅(Opti−Tw)が決定される。
【0244】
なおこの製造方法では、一つのレジスト層80のみで磁気検出素子を製造でき、製造方法を容易化できて好ましい。
【0245】
また図19に示す工程のように前記第2の反強磁性層60上からハードバイアス層36上にかけて形成される電極層32の内側端面32bを、第1の反強磁性層26から離れる方向(図示Z方向)と平行な垂直面で形成した場合、前記電極層32、32間から露出する第2の反強磁性層60を、残される第2の反強磁性層60の内側端面60aが、図示Z方向に垂直な垂直面となるように除去することができる。
【0246】
図20及び図21に示す工程は図9に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。
【0247】
図20に示す工程の前に、まず図17及び図18の一部の工程を利用して、基板75上に下地層23、第1の反強磁性層26、固定磁性層27、非磁性中間層28、フリー磁性層29、強磁性層59、第2の反強磁性層60およびバイアス下地層35、ハードバイアス層36を形成する。
【0248】
次に図20に示すように、前記第2の反強磁性層60上から前記ハードバイアス層36上にかけてレジスト層81を形成し、前記レジスト層81の中央部分に、前記第2の反強磁性層60の上面にまで通じる穴部81aを露光現像で形成する。
【0249】
そして前記穴部81aから露出する第2の反強磁性層60、強磁性層59を除去し(点線部分)、前記穴部81aからフリー磁性層29の上面を露出させる。
【0250】
次に図21に示す工程では、前記第2の反強磁性層60間の間隔内にレジスト層82を形成する。図21では前記レジスト層82は、残された第2の反強磁性層60の上面の一部に延出して形成されている。そして前記レジスト層82に覆われていない、前記第2の反強磁性層60上から前記ハードバイアス層36上にかけて電極層32を形成する。そして前記レジスト層82を除去する。これにより図9に示す磁気検出素子が完成する。
【0251】
なお、図21の工程において、前記レジスト層82を、残された第2の反強磁性層60の上面の一部に延出しないように形成した場合、前記電極層32の内側縁部32aは、前記第2の反強磁性層60の上面の内側縁部60dと一致する位置に形成される。
【0252】
なおこの製造方法では、強磁性層59を形成しているが、前記フリー磁性層29と第2の反強磁性層60とを連続成膜できるときは、前記強磁性層59を形成しなくてもよい。
【0253】
また前記強磁性層59がNiFeXなどの比抵抗が高く飽和磁化の小さな磁性材料で形成された場合には、上記のイオンミリングや反応性イオンエッチング(RIE)などによって前記第2の反強磁性層60が除去されたことによって露出する前記強磁性層59をすべて除去しなくても良く、一部を残すこともできる。これによって前記強磁性層59をすべて除去したときに露出するフリー磁性層29を削りすぎることは無くなり、前記強磁性層59がイオンミリングやRIE時におけるストッパとして機能する。また残された一部の強磁性層59もフリー磁性層29の中央領域と同様に感度領域として機能する。
【0254】
なお図10に示す磁気検出素子の製造方法であるが、図10の構造に形成するには、図17工程時に、フリー磁性層29の上にCuやRuなどの非磁性の中間層74を形成し、その上に強磁性層59を形成する。そして図18、図19あるいは図20工程時で、前記非磁性中間層74が露出するまで、その上に形成された強磁性層59及び第2の反強磁性層60を削れば良い。
【0255】
図22及び図23は、図11に示す磁気検出素子の製造方法の一工程図である。
【0256】
図22に示す工程よりも前段階で、図17及び図18の一部の工程を利用して、前記基板上に、下地層23、第1の反強磁性層26、固定磁性層27、非磁性中間層28、フリー磁性層29、バイアス下地層35、ハードバイアス層36、中間層58をスパッタ成膜する。
【0257】
次に図22に示す工程では、前記フリー磁性層29上から前記中間層58上にかけて強磁性層59及び第2の反強磁性層60、電極層32を連続してスパッタ成膜する。そして第2の熱処理工程を行う。なおこの熱処理工程は次の図23に示す工程後に行ってもよい。
【0258】
次に図23に示す工程では、前記電極層32上にレジスト層83を形成し、前記レジスト層83の中央部分に前記電極層32にまで通じる穴部83aを形成する。
【0259】
そして前記穴部83aから露出した、電極層32を除去し、さらに第2の反強磁性層60、及びその下に形成された強磁性層59を除去する。ただし前記強磁性層59がNiFeX合金などの高い比抵抗を有し小さな飽和磁化を有する材料で形成されている場合、前記強磁性層59は完全に除去されず一部残されていてもよい。これによって前記強磁性層59をすべて除去したときに露出するフリー磁性層29を削りすぎることは無くなり、前記強磁性層59がイオンミリング時やRIE時におけるストッパとして機能する。また残された一部の強磁性層59もフリー磁性層29の中央領域と同様に感度領域として機能する。
【0260】
本発明では、上記した製造方法を用いることで、前記フリー磁性層29のトラック幅方向(図示X方向)の両側にハードバイアス層36を形成できると共に、前記フリー磁性層29の上面にトラック幅方向に所定の間隔を開けた強磁性層59及び第2の反強磁性層60を容易にしかも適切に形成することが可能である。
【0261】
なお本発明における磁気検出素子は、ハードディスク装置に搭載される薄膜磁気ヘッドにのみ使用可能なものではなく、テープ用磁気ヘッドや磁気センサなどにも使用可能なものである。
【0262】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、フリー磁性層のトラック幅方向の両側にバイアス層を設けることで、前記バイアス層から前記フリー磁性層に縦バイアス磁界を与えることができると同時に、前記フリー磁性層の上に形成された第2の反強磁性層との交換異方性磁界によって、前記フリー磁性層の両側端部を適切にトラック幅方向に固定することができる。
【0263】
これによって前記フリー磁性層の両側端部は、外部磁界によって磁化反転することがなくなり、前記フリー磁性層の中央領域の部分のみが適切に感度領域として働き磁気的なトラック幅(Mag−Tw)を所定寸法で形成することができる。
【0264】
したがって本発明では、前記磁気的なトラック幅(Mag−Tw)の狭小化を図ることができると共に、良好な再生波形及び再生出力を得ることができ、今後の高記録密度化に優れた磁気再生素子を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施形態の磁気検出素子を備えた薄膜磁気ヘッドを記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図2】図1の右側部分のみを拡大した部分拡大断面図、
【図3】本発明における第2の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図4】本発明における第3の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図5】本発明における第4の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図6】本発明における第5の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図7】本発明における第6の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図8】本発明における第7の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図9】本発明における第8の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図10】本発明における第9の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図11】本発明における第10の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図12】図1に示す薄膜磁気ヘッドの製造方法を示す一工程図、
【図13】図12に示す工程の次に行われる一工程図、
【図14】図13に示す工程の次に行われる一工程図、
【図15】図14に示す工程の次に行われる一工程図、
【図16】図15に示す工程の次に行われる一工程図、
【図17】図8に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図18】図17に示す工程の次に行われる一工程図、
【図19】図18に代えて別の工程を示す一工程図、
【図20】図9に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図21】図20に示す工程の次に行われる一工程図、
【図22】図11に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図23】図22に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図24】従来における磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図25】従来における別の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図26】図25に示す磁気検出素子の問題点を説明するためのフリー磁性層の部分模式図、
【図27】従来における別の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図28】図27に示す磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【符号の説明】
26 第1の反強磁性層
27、68 固定磁性層
28、64、72 非磁性中間層
29 フリー磁性層
30 鏡面反射層
32 電極層
33 保護層
35 バイアス下地層
36 ハードバイアス層
50 絶縁層
57 バックド層
58 中間層
59 強磁性層
60 第2の反強磁性層
69 反強磁性層
70 第1の電極層
71 第2の電極層
76、77、80、82、83 レジスト層
Mag−Tw 磁気的なトラック幅
Opti−Tw 光学的なトラック幅

Claims (12)

  1. 下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層を有して積層された多層膜を有する磁気検出素子において、
    前記フリー磁性層のトラック幅方向の両側にはバイアス層が対向して形成され、前記バイアス層上からフリー磁性層上にかけて、トラック幅方向に間隔を開けて第2の反強磁性層が形成され、前記第2の反強磁性層と前記バイアス層及びフリー磁性層との間には強磁性層が形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記強磁性層は、NiFeX(ただし元素Xは、Cr、Nb、Ta、Rh、Ir、Re、Ruのうちいずれか1種または2種以上)合金で形成される請求項記載の磁気検出素子。
  3. 前記強磁性層と前記バイアス層間には、非磁性の中間層が形成されている請求項またはに記載の磁気検出素子。
  4. 前記非磁性の中間層は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成される請求項記載の磁気検出素子。
  5. 前記第2の反強磁性層の上には電極層が形成されている請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  6. 前記フリー磁性層は、単位面積当たりの磁気モーメントが異なる2層の磁性層とその間に非磁性の中間層が形成された人工フェリ磁性構造である請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  7. 前記フリー磁性層上であって、前記第2の反強磁性層の間隔内には、バックド層が形成され、さらにその上に鏡面反射層が積層されているか、あるいは前記バックド層または前記鏡面反射層が形成されている請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  8. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (a)基板上に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層の順に多層膜を積層形成する工程と、
    (b)前記フリー磁性層上にリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記多層膜のトラック幅方向の両側端部を除去する工程と、
    (c)前記多層膜の両側にバイアス層とその上に非磁性の中間層を形成する工程と、
    (d)前記レジスト層を除去し、前記フリー磁性層上に前記レジスト層よりもトラック幅方向の幅寸法が小さいリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記フリー磁性層の両側端部及び中間層上に強磁性層及び第2の反強磁性層を連続成膜し、さらに前記第2の反強磁性層上に電極層を形成した後、前記レジスト層を除去する工程。
  9. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (e)基板上に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層及びフリー磁性層の順に多層膜を積層形成し、さらに前記フリー磁性層上にバックド層、鏡面反射層を順に積層するか、あるいは前記フリー磁性層上に、前記バックド層または鏡面反射層を形成し、あるいはさらに前記バックド層上または鏡面反射層上に保護層を形成する工程と、
    (f)前記保護層、バックド層あるいは鏡面反射層上にリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない、保護層、バックド層、鏡面反射層、及び前記多層膜のトラック幅方向の両側端部を除去する工程と、
    (g)少なくとも前記多層膜の両側にバイアス層とその上に非磁性の中間層を形成する工程と、
    (h)前記保護層、鏡面反射層上あるいはバックド層上に、前記レジスト層よりもトラック幅方向の幅寸法が小さいリフトオフ用のレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない、前記バックド層、鏡面反射層及び保護層を除去し、前記フリー磁性層の両側端部を露出させる工程と、
    (g)前記フリー磁性層の両側端部及び中間層上に強磁性層及び第2の反強磁性層を連続成膜し、さらに前記第2の反強磁性層上に電極層を形成した後、前記レジスト層を除去する工程。
  10. 前記(a)工程と前記(b)工程の間に、あるいは前記(e)工程と(f)工程の間に、前記多層膜にハイト方向の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、前記第1の反強磁性層と固定磁性層間に交換異方性磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化を前記ハイト方向に固定し、
    前記(d)工程あるいは前記(g)工程で第2の反強磁性層を積層形成した後、トラック幅方向に前記第1の反強磁性層の交換異方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、前記第1の反強磁性層のブロッキング温度よりも低い第2の熱処理温度で熱処理して、前記第2の反強磁性層と強磁性層間に交換異方性磁界を発生させ、前記軟磁性層の磁化をトラック幅方向に固定する請求項またはに記載の磁気検出素子の製造方法。
  11. 前記第1の反強磁性層と第2の反強磁性層を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成する請求項ないし10のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  12. 前記第1の反強磁性層と第2の反強磁性層をX−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成する請求項ないし10のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
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