JP2003017783A - 磁気検出素子 - Google Patents

磁気検出素子

Info

Publication number
JP2003017783A
JP2003017783A JP2001389107A JP2001389107A JP2003017783A JP 2003017783 A JP2003017783 A JP 2003017783A JP 2001389107 A JP2001389107 A JP 2001389107A JP 2001389107 A JP2001389107 A JP 2001389107A JP 2003017783 A JP2003017783 A JP 2003017783A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
magnetic
antiferromagnetic
ferromagnetic
track width
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001389107A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3889276B2 (ja
Inventor
Naoya Hasegawa
直也 長谷川
Masaji Saito
正路 斎藤
Eiji Umetsu
英治 梅津
Yosuke Ide
洋介 井出
Kenichi Tanaka
健一 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Alps Electric Co Ltd filed Critical Alps Electric Co Ltd
Priority to JP2001389107A priority Critical patent/JP3889276B2/ja
Publication of JP2003017783A publication Critical patent/JP2003017783A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3889276B2 publication Critical patent/JP3889276B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Magnetic Variables (AREA)
  • Magnetic Heads (AREA)
  • Thin Magnetic Films (AREA)
  • Hall/Mr Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 サイドリーディングを抑えることができる磁
気検出素子を提供することを目的としている。 【解決手段】 第2の反強磁性層18を貫通し、底面が
非磁性中間層16内に設けられ、この底面のトラック幅
方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい凹部21を形成
する。凹部21の底面21bに重なる部分でのみ、フリ
ー磁性層15の磁化方向を変化させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、磁気センサ
やハードディスクなどに用いられる磁気検出素子に係
り、特に磁界検出能力を向上させることができる磁気検
出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】図24は、従来の磁気検出素子の構造を
記録媒体との対向面から見た断面図である。
【0003】図24に示す磁気検出素子は、巨大磁気抵
抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素
子の1種であるスピンバルブ型磁気検出素子と呼ばれる
ものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録
磁界を検出するものである。
【0004】このスピンバルブ型磁気検出素子は、下か
ら基板8、反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinned)
磁性層)2、非磁性材料層3、フリー磁性層(Free)4
で構成された多層膜9と、この多層膜9の上層に形成さ
れた一対の縦バイアス層6,6及びこの縦バイアス層
6,6の上に形成された一対の電極層7,7とで構成さ
れている。
【0005】前記反強磁性層1及び縦バイアス層6,6
にはFe−Mn(鉄−マンガン)合金膜やNi−Mn
(ニッケル−マンガン)合金膜、固定磁性層2及びフリ
ー磁性層4にはNi−Fe(ニッケル−鉄)合金膜、非
磁性材料層3にはCu(銅)膜、また電極層7,7には
Cr膜が一般的に使用される。
【0006】図24に示すように、固定磁性層2の磁化
は、反強磁性層1との交換異方性磁界によりY方向(記
録媒体からの漏れ磁界方向;ハイト方向)に単磁区化さ
れ、フリー磁性層4の磁化は、前記縦バイアス層6,6
からの交換異方性磁界の影響を受けてX方向に揃えられ
ることが望ましい。
【0007】すなわち固定磁性層2の磁化と、フリー磁
性層4の磁化とが、直交することが望ましい。
【0008】このスピンバルブ型磁気検出素子では、縦
バイアス層6,6上に形成された電極層7,7から、フ
リー磁性層4、非磁性材料層3及び固定磁性層2に検出
電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクなど
の記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの
洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層4の磁
化がXからY方向へ向けて変化する。このフリー磁性層
4内での磁化の方向の変動と、固定磁性層2の固定磁化
方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果
という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化によ
り、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで図24に示す
ように、フリー磁性層4上に一対の縦バイアス層6を設
け、前記縦バイアス層6との交換結合磁界によって前記
フリー磁性層4の磁化を制御する、いわゆるエクスチェ
ンジバイアス方式は、前記フリー磁性層4のトラック幅
方向(図示X方向)の両側にハードバイアス層を設けて
前記フリー磁性層4の磁化制御を行う、いわゆるハード
バイアス方式に比べて、今後の狭トラック化に適切に対
応できる磁化制御方法であると考えられた。
【0010】しかしながら以下に説明するように、従来
の製法で形成されたエクスチェンジバイアス構造では、
次のような問題点があった。
【0011】図24のスピンバルブ型磁気検出素子を製
造するときには、多層膜9を形成した後、図25に示す
ように多層膜9上にリフトオフ用のレジスト層Rを形成
し、イオンビームスパッタ法などを用いて縦バイアス層
6,6、及び電極層7,7を成膜する。レジスト層R上
には、縦バイアス層6,6と同じ組成の層6a,6a及
び電極層7,7と同じ組成の層7a,7aが形成され
る。
【0012】レジスト層Rの両端部によって覆われてい
る領域は、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レ
ジスト層Rの両端部によって覆われている領域付近は、
縦バイアス層6,6及び電極層7,7は膜厚が薄く形成
され、図24及び図25に示されるように縦バイアス層
6,6及び電極層7,7の膜厚方向寸法がトラック両脇
部分S,Sにおいて減少する。
【0013】このため、トラック両脇部分S,Sにおけ
るフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交換結合の
効果が減少してしまう。その結果、図24におけるフリ
ー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X
方向に完全に固定されず、外部磁界が印加されたときに
変化してしまう。
【0014】特に、磁気記録媒体における記録密度を向
上させるために、狭トラック化を図った場合、本来トラ
ック幅Twの領域内で読み取るべき磁気記録トラックの
情報だけでなく、隣接する磁気記録トラックの情報を、
トラック両脇部分S,Sの領域において読み取ってしま
うという、サイドリーディングが発生する可能性が生じ
るという問題があった。
【0015】また上記した問題は、図26に示すCPP
(current perpendicular to the plane)型の磁気
検出素子の場合にも起こる。CPP型とは、図26に示
すように、多層膜9の上下に電極層70、71が設けら
れ、前記電極層70、71からの電流が前記多層膜9内
を膜面と垂直な方向に流れる構造のことである。一方、
図24、25に示す磁気検出素子は、電極層7からの電
流が前記多層膜9内を膜面と平行な方向に流れ、このよ
うな電流方向を有する磁気検出素子をCIP(current
in the plane)型の磁気検出素子と呼んでいる。
【0016】図26に示すCPP型の磁気検出素子の場
合も、縦バイアス層6の膜厚方向寸法がトラック両脇部
分S,Sにおいて減少するため、トラック両脇部分S,
Sにおけるフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交
換結合の効果が減少してしまい、前記フリー磁性層4の
トラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X方向に完全に
固定されず、外部磁界が印加されたときに変化してしま
うという問題を有していた。
【0017】しかもCPP型の磁気検出素子にエクスチ
ェンジバイアス方式を用いる場合、上記した問題に加え
て電流の分流ロスをより適切に抑制する必要性があっ
た。図26に示すCPP型の磁気検出素子では電極層7
0、71から多層膜9内を流れる電流が、一対の縦バイ
アス層6間の間隔で決定されるトラック幅Tw(光学的
なトラック幅)よりも両側に広がって流れるため、トラ
ック幅Tw以外の部分に流れる電流が分流ロスになって
再生出力の低下や実効トラック幅が広がる問題を招いた
のである。
【0018】そこで本発明は上記従来の課題を解決する
ためのものであり、サイドリーディングを抑えることの
できる磁気検出素子を提供することを目的とする。
【0019】また本発明は、CPP型の磁気検出素子に
おいて、サイドリーディングの発生を抑制すると共に、
電流の分流ロスや実効トラック幅の広がりを抑えること
が可能な磁気検出素子を提供することを目的としてい
る。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気検出素子
は、第1の反強磁性層と、この第1の反強磁性層によっ
て磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性材料層、及
び外部磁界により磁化方向が変化するフリー磁性層、非
磁性中間層、強磁性層及び第2の反強磁性層を有する多
層膜を有し、前記多層膜には、前記第2の反強磁性層及
び前記強磁性層を貫通し、底面が前記非磁性中間層内に
設けられ、この底面のトラック幅方向の幅寸法がトラッ
ク幅寸法に等しい凹部が形成されており、前記第2の反
強磁性層との磁気的結合により磁化方向が揃えられた、
前記強磁性層との磁気的結合により、前記フリー磁性層
の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向
へ向けられていることを特徴とするものである。
【0021】本発明の磁気検出素子では、前記第2の反
強磁性層が前記凹部の底面以外のすべての領域で反強磁
性を発揮するために十分な膜厚を有するようにできる。
そして、トラック幅が前記凹部の底面のトラック幅方向
の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底
面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁
界によって磁化方向が変化するフリー磁性層の磁化方向
を変化させることができる。
【0022】また、前記多層膜の形成時に設定されたト
ラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に
記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度
領域となる。すなわち、本発明の磁気検出素子は、磁気
検出素子の光学的トラック幅が磁気的トラック幅に等し
くなり、不感領域が生じないので、高記録密度化に対応
するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さ
くしていった場合の再生出力の低下を抑えることができ
る。
【0023】しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜さ
れた前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング
(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向
に対する垂直方向に削るだけで形成することができるの
で、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能にな
る。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定
できる。
【0024】また、本発明では、前記凹部の底面が前記
非磁性中間層内に位置しているので、前記第2の反強磁
性層の下層にある強磁性層が、前記第2の反強磁性層と
の磁気的結合によって磁化方向がそろえられ、さらに、
この強磁性層の下層に非磁性中間層を介して形成された
フリー磁性層の磁化方向が、前記強磁性層とのRKKY
相互作用によって、前記固定磁性層の磁化方向と交叉す
る方向に揃えられる。すなわち、前記第2の反強磁性層
の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び
前記フリー磁性層がシンセティックフェリ構造となって
おり、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃える
ことが容易になっている。従って、前記第2の反強磁性
層と前記強磁性層との交換結合磁界が比較的弱くても、
前記フリー磁性層の磁化方向を確実に、前記固定磁性層
の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0025】なお、前記フリー磁性層と前記強磁性層の
単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは異なってい
る必要がある。前記フリー磁性層及び強磁性層の単位面
積あたりの磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料
層の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。本
発明では、前記非磁性中間層を、例えば、Ru、Rh、
Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の
合金で形成することができる。
【0026】また、本発明では、前記強磁性層と前記フ
リー磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有す
る磁性材料で形成することが好ましい。
【0027】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比
は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比
はCoである。
【0028】また、本発明では、前記フリー磁性層と前
記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからな
る中間層を形成することが好ましい。
【0029】前記中間層が形成されるときには、前記強
磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層を、以
下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0030】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比
は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はC
oである。
【0031】本発明では、前記強磁性層及び前記フリー
磁性層の両方を前記CoFeNiで形成することが好ま
しい。
【0032】ところで本発明では、前記第2の反強磁性
層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及
び前記フリー磁性層が積層フェリ構造であり、前記非磁
性中間層を介して隣接する前記強磁性層とフリー磁性層
の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である。
【0033】この反平行磁化状態を適切に保つには、前
記強磁性層と前記フリー磁性層の材質を改良して前記強
磁性層と前記フリー磁性層間に働くRKKY相互作用に
おける交換結合磁界を大きくする必要性がある。
【0034】前記強磁性層と前記フリー磁性層を形成す
る磁性材料としてよく使用されるものにNiFe合金が
ある。NiFe合金は軟磁気特性に優れるため従来から
フリー磁性層などに使用されていたが、前記強磁性層と
前記フリー磁性層をNiFe合金を用いて積層フェリ構
造にした場合、これらの層間の反平行結合力はさほど強
くはない。
【0035】そこで本発明では、前記強磁性層と前記フ
リー磁性層の材質を改良し、前記強磁性層と前記フリー
磁性層間の反平行結合力を強め、トラック幅方向の両側
に位置するフリー磁性層の両側端部が外部磁界に対し揺
らがないようにし、サイドリーディングの発生を適切に
抑制できるようにすべく、前記強磁性層と前記フリー磁
性層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCo
FeNi合金を使用することとしたのである。Coを含
有させることで上記の反平行結合力を強めることができ
る。
【0036】図23は、強磁性材料からなる薄膜を非磁
性材料層を介して積層したいわゆる積層フェリ構造体の
ヒステリシスループの概念図である。例えば第1の強磁
性材料層(F1)の単位面積あたりの磁気モーメント
(飽和磁化Ms×膜厚t)は第2の強磁性材料層(F
2)の単位面積あたりの磁気モーメントよりも大きいと
する。また外部磁界を図示右方向に与えたとする。
【0037】第1の強磁性材料層の単位面積あたりの磁
気モーメントと第2の強磁性材料層の単位面積あたりの
磁気モーメントとのベクトル和(|Ms・t(F1)+
Ms・t(F2)|)で求めることができる単位面積あ
たりの合成磁気モーメントは、0磁界から外部磁界を大
きくしていってもある時点までは、一定の大きさであ
る。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが一定の
大きさである外部磁界領域Aでは、前記第1の強磁性材
料層と第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力が、前
記外部磁界よりも強いので、前記第1及び第2の強磁性
材料層の磁化は適切に単磁区化され反平行状態に保たれ
ている。
【0038】ところが、さらに図示右方向への外部磁界
を大きくしていくと、強磁性材料層の単位面積あたりの
合成磁気モーメントは傾斜角を有して大きくなってい
く。これは、前記外部磁界の方が、前記第1の強磁性材
料層及び第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力より
も強いから、単磁区化していた第1のフリー磁性層と第
2のフリー磁性層の磁化が別々の方向に回転して反平行
状態が崩れ、ベクトル和で求めることができる単位面積
あたりの合成磁気モーメントが大きくなっていくのであ
る。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きく
なっていく外部磁界領域Bでは、もはや前記強磁性材料
層の反平行状態は崩れた状態にある。この単位面積あた
りの合成磁気モーメントが大きくなり始める出発点の外
部磁界の大きさをスピンフロップ磁界(Hsf)と呼ん
でいる。
【0039】さらに図示右方向の外部磁界を大きくして
いくと、第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層の
磁化は、平行状態で単磁区化され、今度は外部磁界領域
Aの場合と異なり、共に図示右方向に磁化され、この外
部磁界領域Cでの単位面積あたりの合成磁気モーメント
は一定値となる。この単位面積あたりの合成磁気モーメ
ントが一定値となる時点での外部磁界の大きさを飽和磁
界(Hs)と呼んでいる。
【0040】前記CoFeNi合金を第1の強磁性材料
層及び第2の強磁性材料層に使用すると、NiFe合金
を使用した場合に比べて反平行状態が崩れるときの磁
界、いわゆるスピンフロップ磁界(Hsf)を十分に大
きくできることがわかった。
【0041】第1及び第2の強磁性材料層にNiFe合
金(比較例)及びCoFeNi合金(実施例)を用いて
上記したスピンフロップ磁界の大きさを求めるための実
験を以下の膜構成を用いて行った。
【0042】基板/非磁性材料層(Cu)/第1の強磁
性材料層(2.4)/非磁性中間層(Ru)/第2の強
磁性材料層(1.4)なお括弧書きは膜厚を示し単位は
nmである。
【0043】比較例での第1の強磁性材料層及び第2の
強磁性材料層には、Niの組成比が80原子%でFeの
組成比が20原子%からなるNiFe合金を使用した。
このときのスピンフロップ磁界(Hsf)は約59(k
A/m)であった。
【0044】次に実施例での第1の強磁性材料層及び第
2の強磁性材料層には、Coの組成比が87原子%で、
Feの組成比が11原子%で、Niの組成比が2原子%
からなるCoFeNi合金を使用した。このときのスピ
ンフロップ磁界(Hsf)は約293(kA/m)であ
った。
【0045】このように第1の強磁性材料層及び第2の
強磁性材料層にはNiFe合金を用いるよりもCoFe
Ni合金を用いる方が、スピンフロップ磁界を効果的に
向上させることができることがわかった。
【0046】すなわち、前記強磁性層と前記フリー磁性
層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCoF
eNi合金を使用すると、前記強磁性層と前記フリー磁
性層のスピンフロップ磁界を効果的に向上させることが
できる。
【0047】次に、CoFeNi合金の組成比について
説明する。CoFeNi合金は、非磁性中間層であるR
u層と接することでNiFe合金を用いる場合より、磁
歪が1×6-6〜6×10-6程度、正側にシフトすること
がわかっている。
【0048】前記磁歪は−3×10-6から3×10-6
範囲内であることが好ましい。また保磁力は790(A
/m)以下であることが好ましい。磁歪が大きいと、成
膜ひずみや、他層間での熱膨張係数の差などによって応
力の影響を受けやすくなるから前記磁歪は低いことが好
ましい。また保磁力は低いことが好ましく、これによっ
てフリー磁性層の外部磁界に対する磁化反転を良好にす
ることができる。
【0049】本発明では、非磁性材料層/フリー磁性層
/非磁性中間層/強磁性層の膜構成で形成されるとき、
前記CoFeNiのFe組成比は9原子%以上で17原
子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原
子%以下で、残りの組成比はCoであることが好まし
い。Feの組成比が17原子%よりも大きくなると、磁
歪が−3×10-6よりも負に大きくなると共に軟磁気特
性を劣化させて好ましくない。
【0050】またFeの組成比が9原子%よりも小さく
なると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟
磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0051】またNiの組成比が10原子%よりも大き
くなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、
非磁性材料層との間でNiの拡散等による抵抗変化量
(ΔR)及び抵抗変化率(ΔR/R)の低下を招き好ま
しくない。
【0052】またNiの組成比が0.5原子%よりも小
さくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなっ
て好ましくない。
【0053】また上記した組成範囲内であれば保磁力を
790(A/m)以下にすることができる。
【0054】次に、前記フリー磁性層と前記非磁性材料
層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形
成するとき、具体的には、例えば非磁性材料層/中間層
(CoFe合金)/フリー磁性層/非磁性中間層/強磁
性層の膜構成で形成されるとき、前記CoFeNiのF
e組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組
成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比
はCoであることが好ましい。Feの組成比が15原子
%よりも大きくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に
大きくなると共に軟磁気特性を劣化させて好ましくな
い。
【0055】またFeの組成比が7原子%よりも小さく
なると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟
磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0056】またNiの組成比が15原子%よりも大き
くなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなって好まし
くない。
【0057】またNiの組成比が5原子%よりも小さく
なると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなって好
ましくない。
【0058】また上記した組成範囲内であれば保磁力を
790(A/m)以下にすることができる。
【0059】なお、CoFeやCoで形成された中間層
はマイナス磁歪を有しているため、前記中間層を第1の
フリー磁性層と非磁性材料層間に介在させない膜構成の
場合に比べて、CoFeNi合金のFe組成をやや少な
くし、Ni組成をやや多くしている。
【0060】また上記の膜構成のように、非磁性材料層
とフリー磁性層間にCoFe合金あるいはCoからなる
中間層を介在させることで、フリー磁性層と非磁性材料
層間での金属元素の拡散をより効果的に防止することが
できて好ましい。
【0061】さらに、本発明では前記凹部の側面をトラ
ック幅方向に対して垂直面となるようにすることが可能
である。すなわち、トラック幅領域から外れた全領域に
おいて、第2の反強磁性層が反強磁性を発生するために
充分な膜厚を確実に有することができ、トラック幅領域
から外れた全領域において前記フリー磁性層の磁化方向
を確実に固定することができる。
【0062】従って、磁気検出素子のトラック幅領域で
のみ前記フリー磁性層の磁化方向を動かし、トラック幅
領域周辺におけるサイドリーディングを防止することが
できる。
【0063】また、前記強磁性層と前記第2の反強磁性
層の間に非磁性層が形成されていてもよい。このとき、
前記強磁性層は、前記非磁性層を介した前記第2の反強
磁性層とのRKKY結合により、その磁化方向が前記固
定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けられる。
【0064】前記第2の反強磁性層とのRKKY相互作
用によって前記強磁性層の磁化方向が揃えられるもの
は、前記第2の反強磁性層と前記強磁性層とが直に接し
ているものよりも交換結合力を強くすることができる。
【0065】なお、前記非磁性層は、例えば、Ru,C
u,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用い
て形成することができる。特に、前記非磁性層がRuに
よって形成され、膜厚が8〜11Åであることが好まし
い。
【0066】また本発明では、前記と前記第2の反強磁
性層の下層に、他の反強磁性層が積層されていてもよ
い。
【0067】前記他の反強磁性層は後に述べる本発明の
磁気検出素子の製造方法において、前記第1の反強磁性
層を磁場中熱処理するときに、前記他の反強磁性層の下
層にある層が大気に触れて酸化することを防止する機能
を有する。
【0068】前記他の反強磁性層の領域の厚さは、0よ
り大きく30Å以下であることが好ましい。
【0069】本発明のように、前記フリー磁性層の上面
に接して積層された前記非磁性中間層が導電性材料によ
って形成されていると、前記非磁性中間層をスピンフィ
ルター効果を有するバックド層(backedlaye
r)として機能させることが可能になる。
【0070】スピンバルブ型磁気検出素子にセンス電流
を印加すると、伝導電子はおもに電気抵抗の小さい非磁
性材料層付近を移動する。この伝導電子にはアップスピ
ンとダウンスピンの2種類の電子が確率的に等量存在す
る。
【0071】スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変
化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行
程差に対して正の相関を示す。
【0072】ダウンスピンの伝導電子については、印加
される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフ
リー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移
動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はア
ップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いまま
である。
【0073】一方、アップスピンの伝導電子について
は、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁
性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料
層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自
由行程が長くなっている。これに対し、外部磁界によっ
てフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対
して平行状態から変化するに従って、非磁性材料層とフ
リー磁性層との界面で散乱される確率が増加し、アップ
スピンの伝導電子の平均自由行程が短くなる。
【0074】このように外部磁界の作用によって、アッ
プスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝
導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が
大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程
も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵
抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0075】ここで、フリー磁性層にバックド層が接続
されると、フリー磁性層中を移動するアップスピンの伝
導電子がバックド層内にまで移動することが可能にな
り、バックド層の膜厚に比例してアップスピンの伝導電
子の平均自由行程をさらに伸ばすことができる。このた
め、いわゆるスピンフィルター効果を発現させることが
可能となり、伝導電子の平均自由行程の行程差が大きく
なって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率
(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0076】本発明では、前記フリー磁性層の膜厚が1
5〜45Åの範囲に設定されることが好ましい。
【0077】スピンフィルター効果によるアップスピン
の伝導電子とダウンスピンの伝導電子の平均自由行程差
の拡大はフリー磁性層の膜厚が比較的薄い場合により効
果を発揮する。
【0078】フリー磁性層の膜厚が15Åより薄いと強
磁性材料層として機能するように形成することが難しく
なり充分な磁気抵抗効果を得ることができない。また、
鏡面反射(specular reflection)せずに通常の散乱(d
iffusive scattering)をする伝導電子も存在するた
め、抵抗変化率が低下してしまうので好ましくない。
【0079】また、フリー磁性層の膜厚が45Åより厚
いと前記非磁性中間層に到達する前に散乱されてしまう
アップスピンの伝導電子が増加してスピンフィルター効
果によって抵抗変化率が変化する割合が減少するため好
ましくない。
【0080】また、前記固定磁性層は、単位面積あたり
の磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層
が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層
を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行
となるフェリ磁性状態であることが好ましい。
【0081】固定磁性層が非磁性中間層の上下に強磁性
材料層が積層されたものとして形成されると、これら複
数層の強磁性材料層が互いの磁化方向を固定しあい、全
体として固定磁性層の磁化方向を一定方向に強力に固定
することができる。すなわち、第2の反強磁性層と固定
磁性層との交換結合磁界Hexを大きな値として得るこ
とができる。
【0082】また、固定磁性層の固定磁化による反磁界
(双極子磁界)を、複数層の強磁性材料層の静磁界結合
同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルでき
る。これにより、固定磁性層の固定磁化による反磁界
(双極子磁界)からの、フリー磁性層の変動磁化への寄
与を減少させることができる。
【0083】従って、フリー磁性層の変動磁化の方向を
所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメ
トリーの小さい対称性の優れた磁気検出素子を得ること
が可能になる。
【0084】ここで、アシンメトリーとは、再生出力波
形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形
が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリー
が小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程
再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0085】前記アシンメトリーは、フリー磁性層の変
動磁化の方向と固定磁性層の固定磁化の方向とが直交し
ているときに0となる。アシンメトリーが大きくずれる
とメディアからの情報の読み取りが正確にできなくな
り、エラーの原因となる。このため、前記アシンメトリ
ーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上する
ことになり、スピンバルブ磁気検出素子として優れたも
のとなる。
【0086】また、固定磁性層の固定磁化による反磁界
(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端
部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、
フリー磁性層内における単磁区化が妨げられる場合があ
るが、固定磁性層を上記の積層構造とすることにより双
極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これに
よってフリー磁性層内に磁壁ができて磁化の不均一が発
生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止す
ることができる。
【0087】なお、前記強磁性材料層の単位面積あたり
の磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料層の飽和
磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
【0088】前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、
Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で
形成されることができる。
【0089】なお、本発明では、前記第1の反強磁性層
と前記第2の反強磁性層を同じ組成の反強磁性材料を用
いて形成しても、前記第1の反強磁性層の磁化方向と前
記第2の反強磁性層の磁化方向を直交させることが容易
に可能となり、外部磁界が印加されていない状態で、前
記フリー磁性層と前記固定磁性層の磁化方向を直交させ
ることができる。
【0090】前記第1の反強磁性層及び/又は前記第2
の反強磁性層は、PtMn合金により形成されているこ
とが好ましい。または前記反強磁性層は、X―Mn(た
だしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Fe
のいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、
あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,I
r,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,A
r,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金で形成されることができる。
【0091】ここで、前記PtMn合金及び前記X−M
nの式で示される合金において、PtあるいはXが37
〜63at%の範囲であることが好ましい。特に規定し
ない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上
を意味する。
【0092】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式
で示される合金において、X’が0.2〜10at%の
範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,I
r,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種また
は2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40
at%の範囲であることが好ましい。
【0093】第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層と
して、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを
熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する
第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることがで
きる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以
上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、
前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と
極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性
層を得ることができる。
【0094】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0095】本発明における磁気検出素子は、前記多層
膜のトラック幅方向の両側端部上には電極層が設けら
れ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に
流れる、いわゆるCIP(current in the plane)
型の磁気検出素子であってもよいし、あるいは前記多層
膜の上下に電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層
の膜面に対し垂直方向に流れる、いわゆるCPP(curr
ent perpendicular tothe plane)型の磁気検出素子
であってもよい。
【0096】本発明では前記CPP型の磁気検出素子の
場合、前記多層膜の上に設けられた上部電極層は、磁性
材料で形成された上部シールド層であることが好まし
い。磁気検出素子の製造を容易化することができると共
に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度化
に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できる。
【0097】かかる場合、前記第2反強磁性層上、およ
び前記凹部のトラック幅方向の両側端面には絶縁層が設
けられ、前記上部電極層は、前記絶縁層上から前記凹部
の底面にかけて形成されていることが好ましい。これに
よって前記上部電極層から前記多層膜に流れる電流が前
記第2反強磁性層に分流するのを適切に回避でき再生出
力が大きく実効再生トラック幅の狭い、高密度化に適し
た磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0098】なお本発明では、前記第2の反強磁性層上
に形成された絶縁層と、前記凹部のトラック幅方向の両
側端面に形成された絶縁層は、別体で形成されることが
好ましい。
【0099】また本発明では前記CPP型の磁気検出素
子の場合、前記多層膜の下に設けられた下部電極層は、
磁性材料で形成された下部シールド層であることが好ま
しい。磁気検出素子の製造を容易化することができると
共に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度
化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できる。
【0100】かかる場合、前記下部電極層のトラック幅
方向の中央には、前記多層膜方向に突出した突出部が設
けられ、この突出部の上面が前記多層膜の下面と接し、
前記下部電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層
膜間には絶縁層が設けられることが好ましい。これによ
って前記下部電極層から前記多層膜に流れる電流がトラ
ック幅寸法から広がって流れ難く、前記電流の分流ロス
を抑制し、再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い
磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0101】また本発明では、前記突出部の上面と、前
記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上
面とは同一平面で形成されることが好ましい。
【0102】また本発明では、前記非磁性材料層は非磁
性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性材
料層が非磁性導電材料で形成された磁気検出素子を、ス
ピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GM
R)と呼んでいる。
【0103】また本発明では、CPP型の磁気検出素子
である場合、前記非磁性材料層は絶縁材料で形成されて
もよい。この磁気検出素子をスピンバルブトンネル型磁
気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼んでいる。
【0104】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形
態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面
図である。
【0105】図1の磁気検出素子は、基板11上に第1
の反強磁性層12が積層され、さらに第1の固定磁性層
13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13c
からなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層1
3、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間
層16、強磁性層17、第2の反強磁性層18、及び電
極層19が、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセ
スによって成膜されたものである。ここで、第2の反強
磁性層18と強磁性層17がフリー磁性層15に対する
縦バイアス層となる。
【0106】第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性
層18は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしX
は、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいず
れか1種または2種以上の元素である)合金で、あるい
はPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,R
h,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,N
e,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素であ
る)合金で形成する。
【0107】第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性
層18として、これらの合金を使用し、これを熱処理す
ることにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反
強磁性層12及び第2の反強磁性層18を得ることがで
きる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間
に、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交
換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキン
グ温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層
12、及び第2の反強磁性層18を得ることができる。
【0108】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0109】第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック
幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば20
0Åである。なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第
1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成
の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0110】ここで、第1の反強磁性層12及び第2の
反強磁性層18を形成するための、前記PtMn合金及
び前記X−Mnの式で示される合金において、Ptある
いはXが37〜63at%の範囲であることが好まし
い。また、Pt−Mn−X’の式で示される合金におい
て、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが
好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示され
る合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であ
ることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,
Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上
の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範
囲であることが好ましい。特に規定しない限り、〜で示
す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0111】また、後の記述において図1の磁気検出素
子の製造方法を説明するときに、第1の反強磁性層12
と第2の反強磁性層18の磁化方向を直交させるために
適した、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層1
8を形成するための前記PtMn合金及び前記X−Mn
の式で示される合金の組成範囲を示す。
【0112】第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層
13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えば
NiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合
金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特
にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ま
しい。また、第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層
13cは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0113】また、非磁性中間層13b及び16は、非
磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、
Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の
合金で形成されている。特にRuによって形成されるこ
とが好ましい。
【0114】非磁性材料層は、固定磁性層13とフリー
磁性層15との磁気的な結合を防止し、またセンス電流
が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導
電性を有する非磁性材料により形成されることが好まし
い。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0115】フリー磁性層15及び強磁性層17は、強
磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合
金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi
合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合
金またはCoにより形成されることが好ましい。また、
フリー磁性層15及び強磁性層17は同一の材料で形成
されることが好ましい。電極層19は、例えば、Au、
W、Cr、Taなどを用いて成膜される。
【0116】本実施の形態の磁気検出素子は電極層1
9,19と凹部21との間にトラック幅方向の段差がで
きる。なお、第2の反強磁性層18上に前述したTa,
Crなどからなる保護層を介して電極層19,19が積
層されてもよい。このとき前記保護層は電極下地層とし
て機能する。
【0117】図1の磁気検出素子では、第2の反強磁性
層18及び強磁性層17を貫通する凹部21が形成され
ている。凹部21の側面21a,21aは、基板11の
表面に対して垂直になっている。すなわち、凹部21の
側面21a,21aは、トラック幅方向(図示X方向)
に対して垂直になっている。図1では、底面21bが非
磁性中間層16内に位置するように、凹部21が形成さ
れている。また、凹部21の底面21bのトラック幅方
向の幅寸法はトラック幅寸法Twに等しい。
【0118】図1に示される磁気検出素子では、強磁性
層17が、第2の反強磁性層18との磁気的結合(交換
結合)によって磁化方向がトラック幅方向(図示X方
向)と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層1
7の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー
磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相
互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃え
られる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層の領域
(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層1
7、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセ
ティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の
磁化方向をトラック幅方向方向に揃えることが容易にな
っている。
【0119】従って、第2の反強磁性層18と強磁性層
17との交換結合磁界が比較的弱くても、フリー磁性層
15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交
叉する方向に揃えることが容易になる。
【0120】本実施の形態では、第2の反強磁性層18
のトラック幅領域に対向した部位が先細りしないので、
フリー磁性層15の磁化方向は凹部21の底面21bに
重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dで、反強
磁性を発揮するために十分な膜厚を有する第2の反強磁
性層18との磁気的結合によって固定される。
【0121】凹部21の底面21bに重なるフリー磁性
層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おい
て、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示
X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方
向が変化する。
【0122】従って、磁気検出素子のトラック幅Tw
は、凹部21の底面21bの幅寸法によって決定され、
しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読
み取ってしまうサイドリーディングを防止することがで
きる。
【0123】上述したように、本発明では、凹部21は
一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イ
オンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、
基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成する
ことができるので、正確な幅寸法Twで凹部21を形成
することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラ
ック幅を正確に規定できる。
【0124】また、磁気検出素子の形成時に設定された
トラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域
が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検
出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合
の再生出力の低下を抑えることができる。
【0125】さらに、本実施の形態では磁気検出素子の
側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるよう
に形成されることが可能なので、フリー磁性層15のト
ラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0126】また本実施の形態では、フリー磁性層15
及び強磁性層17の少なくとも一方を、以下の組成を有
する磁性材料で形成することが好ましい。
【0127】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比
は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成は
Coである。
【0128】これによりフリー磁性層15と強磁性層1
7間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界
を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩
れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hs
f)を約293(kA/m)にまで大きくすることがで
きる。
【0129】よって、フリー磁性層15及び強磁性層1
7の両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めで
き、サイドリーディングの発生を抑制することができ
る。
【0130】なおフリー磁性層15及び強磁性層17の
双方を前記CoFeNi合金で形成することが好まし
い。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界
を得ることができ、フリー磁性層15と強磁性層17と
を適切に反平行状態に磁化できる。
【0131】また上記した組成範囲内であると、フリー
磁性層15と強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3
×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を7
90(A/m)以下に小さくできる。
【0132】さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の
向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変
化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を
適切に図ることが可能である。
【0133】また、図1に示される磁気検出素子では、
非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、
フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁
性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成する
ことにより、スピンフィルター効果を有するバックド層
(backedlayer)として機能させることが可
能になる。
【0134】スピンフィルター効果について説明する。
図21及び図22はスピンバルブ型磁気検出素子におい
てバックド層によるスピンフィルター効果を説明するた
めの模式説明図であり、図21はバックド層がない構造
例を示す模式図であり、図22はバックド層のある構造
例を示す模式図である。
【0135】巨大磁気抵抗GMR効果は、主として電子
の「スピンに依存した散乱」によるものである。つまり
磁性材料、ここではフリー磁性層の磁化方向に平行なス
ピン(例えばアップスピン)を持つ伝導電子の平均自由
行程λ+と、磁化方向に逆平行なスピン(例えばダウン
スピン)を持つ伝導電子の平均自由行程λ−の差を利用
したものである。図21及び図22では、アップスピン
を持つ伝導電子を上向き矢印で表わし、ダウンスピンを
持つ伝導電子を下向き矢印で表わしている。電子がフリ
ー磁性層を通り抜けようとするときに、この電子がフリ
ー磁性層の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由
に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには
直ちに散乱されてしまう。
【0136】これは、アップスピンを持つ電子の平均自
由行程λ+が、例えば、50オングストローム程度であ
るのに対して、ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程
λ−が6オングストローム程度であり、10分の1程度
と極端に小さいためである。フリー磁性層115の膜厚
は、6オングストローム程度であるダウンスピンを持つ
電子の平均自由行程λ−よりも大きく、50オングスト
ローム程度であるアップスピンを持つ電子の平均自由行
程λ+よりも小さく設定されている。
【0137】従って、電子がフリー磁性層115を通り
抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層115
の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動で
きるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散
乱されてしまう(フィルタアウトされる)。
【0138】固定磁性層113で発生し、非磁性材料層
114を通過するダウンスピン電子は、フリー磁性層1
15と非磁性材料層114との界面付近で散乱され、フ
リー磁性層115にはほとんど到達しない。つまり、こ
のダウンスピン電子は、フリー磁性層115の磁化方向
が回転しても平均自由行程に変化はなく、GMR効果に
よる抵抗変化率に影響しない。従ってGMR効果にはア
ップスピン電子の挙動のみを考えればよい。
【0139】固定磁性層115で発生したアップスピン
電子はこのアップスピン電子の平均自由行程λ+より薄
い厚さの非磁性材料層114中を移動し、フリー磁性層
115に到達し、アップスピン電子はフリー磁性層11
5内を自由に通過できる。これは、アップスピン電子が
フリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持って
いるためである。
【0140】固定磁性層の磁化方向とフリー磁性層の磁
化方向が反平行となる状態では、アップスピン電子はフ
リー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持った電
子でなくなる。すると、アップスピン電子は、フリー磁
性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱さ
れることになり、アップスピン電子の有効平均自由行程
が急激に減少する。すなわち、抵抗値が増大する。抵抗
変化率は、アップスピン電子の有効平均自由行程の変化
量と正の相関関係を有する。
【0141】図22に示すように、バックド層Bsが設
けられている場合には、フリー磁性層115を通過した
アップスピン電子はバックド層Bsにおいて、このバッ
クド層Bsの材料で決定される追加平均自由行程λ+b
を移動した後散乱する。すなわち、バックド層Bsを設
けたことにより、アップスピン電子の平均自由行程λ+
が追加平均自由行程λ+b分だけ延びる。
【0142】バックド層として機能する非磁性中間層1
6を有する本実施の形態では、アップスピンの伝導電子
の平均自由行程を伸ばすことができる。このため、外部
磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変
化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁
気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができ
る。
【0143】また、本実施の形態では、第1の反強磁性
層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材
料を用いて形成した場合でも、第1の反強磁性層12の
交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2
の反強磁性層18の交換異方性磁界を図示X方向と反平
行方向に向けることができる。すなわち、本実施の形態
では、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13
の磁化方向と直交する方向に固定できる。
【0144】また、本実施の形態では、基板11上に直
接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11
上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して第1
の反強磁性層12が積層されてもよい。
【0145】スピンフィルター効果によるアップスピン
の伝導電子とダウンスピンの伝導電子の平均自由行程差
の拡大はフリー磁性層の膜厚が比較的薄い場合により効
果を発揮する。
【0146】フリー磁性層15の膜厚が15Åより薄い
と強磁性材料層として機能するように形成することが難
しくなり充分な磁気抵抗効果を得ることができない。
【0147】また、フリー磁性層15の膜厚が45Åよ
り厚いと前記鏡面反射層に到達する前に散乱されてしま
うアップスピンの伝導電子が増加して鏡面反射効果(sp
ecular effect)によって抵抗変化率が変化する割合が
減少するため好ましくない。
【0148】また、図1では、単位面積あたりの磁気モ
ーメントが異なる前記第1固定磁性層13aと前記第2
固定磁性層13cが、前記非磁性中間層13bを介して
積層されたものが、一つの固定磁性層13として機能す
る。
【0149】第1固定磁性層13aは反強磁性層12と
接して形成され、磁場中アニールが施されることによ
り、第1固定磁性層13aと反強磁性層12との界面に
て交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1固定磁性
層13aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1固
定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定される
と、非磁性中間層13bを介して対向する第2固定磁性
層13cの磁化方向が、第1固定磁性層13aの磁化方
向と反平行の状態で固定される。
【0150】なお、第1固定磁性層13aの磁気モーメ
ントと第2固定磁性層13cの磁気モーメントを足し合
わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層13の磁
化方向となる。
【0151】このように、第1固定磁性層13aと第2
固定磁性層13cの磁化方向は、反平行となるフェリ磁
性状態になっており、第1固定磁性層13aと第2固定
磁性層13cとが互いに他方の磁化方向を固定しあうの
で、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に
安定させることができるので好ましい。
【0152】第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層
13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えば
NiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合
金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特
にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ま
しい。また、第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層
13cは同一の材料で形成されることが好ましい。図1
では、前記第1固定磁性層13a及び前記第2固定磁性
層13cを同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれ
の膜厚を異ならせることにより、それぞれの単位面積あ
たりの磁気モーメントを異ならせている。
【0153】また、非磁性中間層13bは、非磁性材料
により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形
成されている。特にRuによって形成されることが好ま
しい。
【0154】固定磁性層13が非磁性中間層13bの上
下に第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13bが
積層されたものとして形成されると、第1固定磁性層1
3a及び第2固定磁性層13bが互いの磁化方向を固定
しあい、全体として固定磁性層113の磁化方向を一定
方向に強力に固定することができる。すなわち、第1の
反強磁性層12と固定磁性層13との交換結合磁界He
xを、例えば80〜160kA/mと、大きな値として
得ることができる。
【0155】また、本実施の形態では、固定磁性層13
の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、第1の固定
磁性層13a及び第2の固定磁性層13cの静磁界結合
同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルでき
る。これにより、固定磁性層13の固定磁化による反磁
界(双極子磁界)からの、フリー磁性層15の変動磁化
への寄与を減少させることができる。
【0156】従って、フリー磁性層15の変動磁化の方
向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシ
ンメトリーの小さい対称性の優れた磁気検出素子を得る
ことが可能になる。
【0157】また、固定磁性層13の固定磁化による反
磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、そ
の端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持
ち、フリー磁性層15内における単磁区化が妨げられる
場合があるが、固定磁性層13を上記の積層構造とする
ことにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることが
でき、これによってフリー磁性層15内に磁壁ができて
磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生
することを防止することができる。
【0158】ただし、固定磁性層13が単層の強磁性材
料層として形成されてもよい。このスピンバルブ型磁気
検出素子においては、電極層19、19からフリー磁性
層15、非磁性材料層14、固定磁性層13に定常電流
が与えられ、図示Z方向に走行する磁気記録媒体からの
漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、フリー磁性層1
5の磁化方向が図示X方向から図示Y方向に向けて変動
する。このフリー磁性層15内での磁化方向の変動と第
2の固定磁性層13bの磁化方向との関係で電気抵抗が
変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録
媒体からの漏れ磁界が検出される。
【0159】なお、フリー磁性層15と非磁性材料層1
4の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていて
もよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材
料層14の相互拡散を防止する。また、第2固定磁性層
13bと非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散
防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2
固定磁性層13bと非磁性材料層14の相互拡散を防止
する。
【0160】本実施の形態の磁気検出素子の製造方法を
説明する。図1に示された磁気検出素子の第1の製造方
法を説明する。
【0161】まず、基板11上に第1の反強磁性層12
を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中
間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセテ
ィックフェリピンド型の固定磁性層13が積層され、固
定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー磁性層
15、非磁性中間層16、強磁性層17、第2の反強磁
性層18まで積層された多層膜A1を、スパッタ法や蒸
着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装
置中で連続成膜する。
【0162】第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性
層18は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしX
は、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいず
れか1種または2種以上の元素である)合金で、あるい
はPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,R
h,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,N
e,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素であ
る)合金で形成する。
【0163】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0164】第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック
幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0165】第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層
13cが、同一の材料で形成されることが好ましい。ま
た、フリー磁性層15及び強磁性層17が、同一の材料
で形成されることが好ましい。
【0166】本発明では、このように、反強磁性層12
から第2の反強磁性層18まで連続して成膜する。した
がって各層の表面を大気に触れさせることがなく、前記
各層の表面が大気に触れた場合のように、大気に触れた
表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリーニング
してからその上の層を形成する必要がないため、容易に
製造することができる。また、再現性が良好な製造方法
とすることができる。さらに、前記各層の表面をイオン
ミリングや逆スパッタによりクリーニングする必要がな
いため、再付着物によるコンタミや、表面の結晶状態の
乱れによる交換結合磁界の発生に対する悪影響など、ク
リーニングすることに起因する不都合が生じない製造方
法とすることができる。また本発明では連続成膜のた
め、クリーニング工程が無くても、反強磁性層12と第
1の固定磁性層13a間、および第2の反強磁性層18
と強磁性層17間に適切に交換結合磁界を発生させるこ
とができる。
【0167】次に、第1の熱処理工程を行う。まずトラ
ック幅Tw(図示X方向)と直交する方向である第1の
磁界(図示Y方向)を印加しつつ、第1の熱処理温度で
熱処理し、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層1
3aとの間、および第2の反強磁性層18と強磁性層1
7との間に交換結合磁界を発生させて、第1の固定磁性
層13aおよび強磁性層17の磁化を同一方向に固定す
ると共に、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層1
3aとの間の交換結合磁界を、第2の反強磁性層18と
強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大とする。
【0168】第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層
13aとの間の交換結合磁界を、第2の反強磁性層18
と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大とするた
めに、前記第1の熱処理温度を220℃以上で245℃
以下にすることが好ましい。
【0169】これにより第1の反強磁性層12と第1の
固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を1.58×1
4(A/m)以上にでき、またより好ましくは230
℃以上とすれば4.74×104(A/m)以上の高い
交換結合磁界を得ることができる。
【0170】一方、第2の反強磁性層18と強磁性層1
7との間の交換結合磁界は、第1の反強磁性層12と第
1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小さ
くなる。
【0171】次に、第2の熱処理工程を行う。この工程
では第1の磁界と直交する方向の第2の磁界(トラック
幅方向)を印加しつつ、前記第1の熱処理温度よりも高
い第2の熱処理温度を施す。また前記第2の印加磁界の
大きさを、前記第1の熱処理工程時の第2の反強磁性層
18と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大き
く、且つ第1の熱処理工程時の第1の反強磁性層12と
第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小
さくする。なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー
磁性層及び強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及
び強磁性層の反磁界より大きくまた、前記フリー磁性層
と強磁性層の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁
界より小さくすることがより好ましい。
【0172】本発明では、第2の熱処理温度を250℃
以上で270℃以下に設定することが好ましい。
【0173】これにより第2の反強磁性層18と強磁性
層17との間の交換結合磁界を3.16×104(A/
m)以上にでき、先の第1の熱処理工程にて発生した交
換結合磁界よりも大きくできる。
【0174】またこのとき、第2の印加磁界を先の第1
の熱処理工程時にて発生した第1の反強磁性層12と第
1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小さ
くすることで、第1の反強磁性層12に第2の印加磁界
が印加されても、第1の反強磁性層12と第1の固定磁
性層13aとの間の交換結合磁界が劣化することがな
く、固定磁性層13の磁化方向をハイト方向に固定した
ままにすることが可能になる。なお固定磁性層13はシ
ンセティックフェリ構造であるので、磁化状態は安定化
し、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13b
の磁化は反平行状態になる。
【0175】以上のように2回の熱処理工程の温度と印
加磁界の大きさ及び方向を適切に調整することで、固定
磁性層13の磁化方向とフリー磁性層15の磁化方向を
適切にしかも容易に交叉するように調整することが可能
である。
【0176】なお上記した第1の反強磁性層12と第1
の固定磁性層13a及び第2の反強磁性層18と強磁性
層17との間の交換結合磁界の大きさは、それぞれの層
の組成比に大きく左右されるため、第1の反強磁性層1
2及び第2の反強磁性層18の成膜の際に組成比の調整
を行うことが好ましい。
【0177】例えば、第1の反強磁性層12をXmMn
100-m(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、
Osのうちの少なくとも1種以上の元素)からなる合金
で形成したとき、組成比を示すmを、46原子%≦m≦
53.5原子%とすることが好ましい。またより好まし
い組成範囲は、mが48.5原子%以上で52.7原子%
以下である。
【0178】また第1の反強磁性層12をPtmMn
100-m-nn(但し、Zは、Pd、Ir、Rh、Ru、O
sのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形
成したとき、組成比を示すm、nを、46原子%≦m+
n≦53.5原子%、0.2原子%≦n≦40原子%と
することが好ましい。またより好ましいm+nの組成範
囲は、48.5原子%以上で52.7原子%以下である。
【0179】また第1の反強磁性層12をPtqMn
100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すq、j
を、46原子%≦q+j≦53.5原子%、0.2原子
%≦j≦10原子%とすることが好ましい。またより好
ましいq+jの組成範囲は、48.5原子%以上で5
2.7原子%以下である。
【0180】また第2の反強磁性層18をXmMn100-m
(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osの
うちの少なくとも1種以上の元素)からなる合金で形成
したとき、組成比を示すmを、49原子%≦m≦55.
5原子%とすることが好ましい。またより好ましいm
は、49.5原子%以上で54.5原子%以下である。
【0181】また前記第2の反強磁性層18をPtm
100-m-nn(但し、Zは、Pd、Ir、Rh、Ru、
Osのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で
形成したとき、組成比を示すm、nを、49原子%≦m
+n≦55.5原子%、0.2原子%≦n≦40原子%
とすることが好ましい。またm+nは49.5原子%以
上で54.5原子%以下であることがより好ましい。
【0182】また前記第2の反強磁性層18をPtq
100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、
Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または
2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すq、j
は、49原子%≦q+j≦55.5原子%、0.2原子
%≦j≦10原子%とすることが好ましい。なおq+j
のより好ましい範囲は49.5原子%以上で54.5原
子%以下である。
【0183】また本発明では、第1の反強磁性層12及
び第2の反強磁性層18の双方の組成を同じにしてもよ
い。かかる場合、以下の組成比を有することが好まし
い。
【0184】すなわち第1の反強磁性層12及び第2の
反強磁性層18を、XmMn100-m(但し、Xは、Pt、
Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種
以上の元素)からなる合金で形成するとき、第1の反強
磁性層12および第2の反強磁性層18の組成比を示す
mを、49原子%≦m≦53.5原子%とすることが好
ましい。なおより好ましい組成範囲はmは49.5原子
%以上で52.7原子%以下である。また上限は51.
2原子%以下であることが最も好ましい。
【0185】また、第1の反強磁性層12および第2の
反強磁性層18を、PtmMn100-m -nn(但し、Z
は、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を
示すm、nを、49原子%≦m+n≦53.5原子%、
0.2原子%≦n≦40原子%とすることが好ましい。
なおより好ましい組成範囲はmは49.5原子%以上で
52.7原子%以下である。また上限は51.2原子%
以下であることが最も好ましい。
【0186】また第1の反強磁性層12および第2の反
強磁性層18を、PtqMn100-q-jj(但し、Lは、
Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのう
ちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成した
とき、組成比を示すq、jを、49原子%≦q+j≦5
3.5原子%、0.2原子%≦j≦10原子%とするこ
とが好ましい。なおより好ましい組成範囲はmは49.
5原子%以上で52.7原子%以下である。また上限は
51.2原子%以下であることが最も好ましい。
【0187】また第1の反強磁性層12の組成と、第2
の反強磁性層18の組成を異ならしめ、例えば第1の反
強磁性層12のMn濃度を第2の反強磁性層のMn濃度
よりも多くすることにより、第1の熱処理後の両者の交
換結合磁界の差をより顕著にでき、第2の熱処理後にフ
リー磁性層15と固定磁性層13の磁化をより確実に直
交状態とすることが可能となる。またかかる場合、交換
結合磁界の差を顕著にできる組み合わせを多数選択で
き、設計の自由度が向上する。
【0188】以上説明した組成範囲内であれば、第1の
熱処理を施したとき、第1の反強磁性層12と第1の固
定磁性層13aとの間の交換結合磁界を大きくできると
共に、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13a
との間の交換結合磁界を第2の反強磁性層18と強磁性
層17との間の交換結合磁界よりも大きくでき、さらに
第2の熱処理を施したとき、第2の反強磁性層18と強
磁性層17との間の交換結合磁界を先の交換結合磁界よ
りも大きくすることができる。
【0189】よって上記した固定磁性層13とフリー磁
性層15の磁化の直交化を適切に行うことが可能であ
る。
【0190】次に、第2の反強磁性層18上にレジスト
を積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの
間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の
前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミ
リングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などに
よって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちト
ラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削り込
むことにより凹部21を形成する。凹部21の側面21
a,21aは、トラック幅方向に対して垂直になってい
る。凹部21の底面21bが非磁性中間層16内に位置
するように、凹部21を形成する。
【0191】すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹
部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向
両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層18との交換結
合によって固定される。従って、強磁性層17の下層に
非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層
15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ
強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0192】凹部21の底面21bに重なるフリー磁性
層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おい
て、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示
X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方
向が変化する。
【0193】従って、磁気検出素子のトラック幅は、前
記凹部の幅寸法Twによって決定される。
【0194】凹部21の形成後、凹部21の幅寸法(=
トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオ
フ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第
2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレ
ジストによって覆われていない領域に電極層19,19
をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,
19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成
膜される。電極層19,19の成膜後、レジスト層21
を除去して磁気検出素子を得る。
【0195】この磁気検出素子は電極層19,19と凹
部21との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、
第2の反強磁性層18上に前述したTa,Crなどから
なる保護層を介して電極層19,19が積層されてもよ
い。
【0196】なお、上記説明では第2の反強磁性層18
の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層1
8に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に
電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18
の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスク
として第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図6
に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部21
の側面21aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0197】また、前記第2の磁場中アニールは、第2
の反強磁性層18に凹部21を形成した後行ってもよ
い。
【0198】また、本実施の形態では、基板11上に直
接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11
上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強
磁性層12が積層されてもよい。
【0199】図1に示された磁気検出素子の第2の製造
方法を説明する。まず、基板11上に第1の反強磁性層
12を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁
性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシン
セティックフェリピンド型の固定磁性層13が積層さ
れ、固定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー
磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17が積層さ
れて、多層膜A2が形成される。なお、図示されていな
いが、強磁性層17上にTaなどからなる保護層を積層
してもよい。第1の反強磁性層12、固定磁性層13、
非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層1
6、強磁性層17及び前記保護層はスパッタ法や蒸着法
などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置内
で形成される。
【0200】第1の反強磁性層12、第1の固定磁性層
13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13
c、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間
層16、強磁性層17の材料及び膜厚は前記第1の製造
方法と同じである。
【0201】次に、強磁性層17または前記保護層まで
積層された前記多層膜を第1の熱処理温度、Y方向を向
いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを
行い、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13a
との間に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の
磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、
前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさ
を800k(A/m)としている。
【0202】前記多層膜を第1の磁場中アニールにかけ
たときに、前記保護層は、その表面から10〜20Å程
度酸化する。そこで、前記保護層をイオンミリングまた
は反応性イオンエッチング(RIE)によって除去す
る。
【0203】さらに、強磁性層17を所定の厚さ削る。
強磁性層17を削るのは、次の工程において、強磁性層
17上に第2の反強磁性層18を積層するときに、強磁
性層17上に第2の反強磁性層18を真空中で連続成膜
することが必要なためである。
【0204】次に、強磁性層17の研削後の表面上に、
強磁性層17を再成膜し、さらに強磁性層17上に第2
の反強磁性層18を連続成膜する。強磁性層17を再成
膜するときには、最初に強磁性層17を成膜したときに
用いた強磁性材料と同じ強磁性材料を用いると磁気的結
合を良好にできるので好ましい。第2の反強磁性層18
の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜3
00Å、例えば200Åである。
【0205】第2の反強磁性層18の材料も上述した第
1の製造方法で用いた材料と同じである。ここで、第1
の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を形成する
ための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示さ
れる合金において、PtあるいはXが37〜63at%
の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金
及び前記X−Mnの式で示される合金において、Ptあ
るいはXが47〜57at%の範囲であることがより好
ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限
と下限は以下、以上を意味する。
【0206】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのい
ずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’
は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0207】第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性
層18として、これらの適切な組成範囲の合金を使用
し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界
を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得
ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性
層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越
える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロ
ッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強
磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0208】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。なお、本実施の形態の磁気検出素子は、
第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組
成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0209】また、第2の反強磁性層18の上層にTa
などの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0210】次に第2の反強磁性層18まで形成された
多層膜を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大
きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2
の反強磁性層18と強磁性層17との間に交換異方性磁
界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と
反平行方向に固定する。本実施の形態では、前記第2の
熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k
(A/m)としている第2の反強磁性層18と強磁性層
17との間の交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール
工程において始めて生じる。従って、第1の反強磁性層
12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界
の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層1
8と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向
と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度
を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失す
るブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の
磁界の大きさを第1の反強磁性層12と固定磁性層13
aとの間の交換異方性磁界より小さくするだけでよい。
なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び
強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層
の反磁界より大きく、また前記フリー磁性層と強磁性層
の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さ
くすることがより好ましい。また、第2の磁場中アニー
ルをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と
第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用い
て形成しても、第1の反強磁性層12と固定磁性層13
aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けた
まま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交
換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることが
できる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固
定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定すること
が容易になる。
【0211】次に、第2の反強磁性層18上にレジスト
を積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの
間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の
前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミ
リングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などに
よって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちト
ラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削り込
むことにより凹部21を形成する。凹部21の側面21
a,21aは、トラック幅方向に対して垂直になってい
る。凹部21の底面21bが非磁性中間層16内に位置
するように、凹部21を形成する。
【0212】強磁性層17の磁化方向は、凹部21の底
面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,
Dでのみ、第2の反強磁性層18との交換結合によって
固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間
層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化
方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層1
7とのRKKY相互作用により固定される。
【0213】凹部21の底面21bに重なるフリー磁性
層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おい
て、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示
X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方
向が変化する。
【0214】従って、磁気検出素子のトラック幅は、前
記凹部の幅寸法Twによって決定される。上述したよう
に、本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第
2の反強磁性層42を、反応性イオンエッチング(RI
E)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対す
る垂直方向に削るだけで形成することができるので、正
確な幅寸法Twで凹部21を形成することが可能にな
る。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に
規定できる。
【0215】凹部21の形成後、凹部21の幅寸法(=
トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオ
フ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第
2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレ
ジストによって覆われていない領域に電極層19,19
をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,
19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成
膜される。電極層19,19の成膜後、レジスト層21
を除去して磁気検出素子を得る。
【0216】本製造方法によって形成された磁気検出素
子は電極層19,19と凹部21との間にトラック幅方
向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前
述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層1
9,19が積層されてもよい。
【0217】なお、上記説明では第2の反強磁性層18
の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層1
8に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に
電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18
の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスク
として第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図6
に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部21
の側面21aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0218】また、前記第2の磁場中アニールは、第2
の反強磁性層18に凹部21を形成した後行ってもよ
い。
【0219】また、本実施の形態では、基板11上に直
接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11
上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強
磁性層12が積層されてもよい。
【0220】図2は、本発明の第2の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図であ
る。
【0221】図2の磁気検出素子でも図1の磁気検出素
子と同様に、基板11側から第1の反強磁性層12、第
1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固
定磁性層13c、非磁性材料層14、フリー磁性層1
5、非磁性中間層16、及び強磁性層17が順に積層さ
れている。
【0222】第1の反強磁性層12、固定磁性層13、
非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層1
6、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出
素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0223】本実施の形態の薄膜磁気素子は、フリー磁
性層15と非磁性材料層14との間に中間層61が設け
られている点で図1に示された薄膜磁気素子と異なって
いる。中間層61はCoFe合金やCo合金で形成され
ることが好ましい。特にCoFe合金で形成されること
が好ましい。
【0224】中間層61が形成されたことで、非磁性材
料層14との界面での金属元素等の拡散防止、及び、抵
抗変化量(ΔR)、抵抗変化率(ΔR/R)の向上を図
ることができる。なお中間層61は5Å程度で形成され
る。
【0225】特に非磁性材料層14と接するフリー磁性
層15を上記組成比のCoFeNi合金で形成すれば、
非磁性材料層14との間における金属元素の拡散を適切
に抑制できるから、フリー磁性層15と非磁性材料層1
4間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層61を
形成する必要性は、フリー磁性層15をNiFe合金な
どのCoを含まない磁性材料で形成する場合に比べて少
ない。
【0226】しかしフリー磁性層15をCoFeNi合
金で形成する場合でも、フリー磁性層15と非磁性材料
層14との間にCoFe合金やCoからなる中間層61
を設けることが、フリー磁性層15と非磁性材料層14
間での金属元素の拡散をより確実に防止できる観点から
好ましい。
【0227】またフリー磁性層15と非磁性材料層14
間に中間層61を設け、フリー磁性層15及び強磁性層
17の少なくとも一方をCoFeNi合金で形成すると
き、前記CoFeNi合金のFeの組成比は7原子%以
上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で
15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好
ましい。
【0228】これによりフリー磁性層15と強磁性層1
7間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界
を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩
れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hs
f)を約293(kA/m)にまで大きくすることがで
きる。
【0229】よって、フリー磁性層15及び強磁性層1
7cの両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めで
き、サイドリーディングの発生を抑制することができ
る。
【0230】なお本発明では、フリー磁性層15及び強
磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成するこ
とが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフ
ロップ磁界を得ることができる。
【0231】また上記した組成範囲内であると、フリー
磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から
3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を
790(A/m)以下に小さくできる。さらに、前記フ
リー磁性層15の軟磁気特性の向上を図ることができ
る。
【0232】図3は、本発明の第3の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図であ
る。
【0233】図3の磁気検出素子でも図1の磁気検出素
子と同様に、基板11側から第1の反強磁性層12、第
1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固
定磁性層13B、非磁性材料層14、フリー磁性層1
5、非磁性中間層16、及び強磁性層17が順に積層さ
れている。
【0234】第1の反強磁性層12、固定磁性層13、
非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層1
6、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出
素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0235】図3では、強磁性層17と第2の反強磁性
層18の間に、非磁性層30及び他の反強磁性層31が
形成されている。
【0236】他の反強磁性層31は、PtMn合金、ま
たは、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,R
u,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただ
しX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,O
s,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1
または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0237】他の反強磁性層31は、後述する図3の磁
気検出素子の製造方法において、第1の反強磁性層12
に交換異方性磁界を発生されるために磁場中熱処理する
工程において、非磁性層30の酸化を防ぐためのもので
ある。
【0238】非磁性層30は、Ruによって形成され、
膜厚は8〜11Åである。また、非磁性層は、Ru,C
u,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用い
て形成することもできる。また、第2の反強磁性層18
と電極層19の間にTa,CRなどからなる電極下地層
(保護層)が形成されてもよい。
【0239】なお、フリー磁性層15と非磁性材料層1
4の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていて
もよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材
料層14の相互拡散を防止する。また、第2固定磁性層
13cと非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散
防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2
固定磁性層13cと非磁性材料層14の相互拡散を防止
する。
【0240】図3に示される磁気検出素子では、強磁性
層17が、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層3
1との非磁性層30を介したRKKY相互作用によって
磁化方向がトラック幅方向と反平行方向に固定され、さ
らに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介
して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性
層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向
に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層
の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性
層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシ
ンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層1
5の磁化方向をトラック幅方向に平行な方向に揃えるこ
とが容易になっている。
【0241】従って、第2の反強磁性層18及び他の反
強磁性層31と強磁性層17とのRKKY相互作用が比
較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固
定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが
容易になる。なお、フリー磁性層15の磁化方向が固定
磁性層13の磁化方向に対して直交していることが好ま
しい。
【0242】本実施の形態では、第2の反強磁性層1
8、他の反強磁性層31、非磁性層30及び強磁性層1
7を貫通し、底面41bが非磁性中間層16内に位置し
ている凹部41が形成されている。凹部41の底面41
bのトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等し
い。凹部41の側面41a,41aは、トラック幅方向
に対する垂直面となっている。
【0243】本実施の形態でも、第2の反強磁性層18
のトラック幅領域に対向した部位が先細りしない。フリ
ー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下
部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dで
反強磁性を発揮するために十分な膜厚を有する第2の反
強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によ
って固定される。
【0244】フリー磁性層15の凹部41の底面41b
の下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状
態おいて、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層3
1との交換結合によって磁化方向が固定された両端部
D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印
加されるとその磁化方向が変化する。
【0245】従って、磁気検出素子のトラック幅Tw
は、凹部41の底面41bのトラック幅方向の幅寸法に
よって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領
域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを
防止することができる。
【0246】上述したように、本発明では、凹部41は
一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イ
オンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、
基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成する
ことができるので、正確な幅寸法Twで凹部41を形成
することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラ
ック幅を正確に規定できる。
【0247】また、磁気検出素子の形成時に設定された
トラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域
が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検
出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合
の再生出力の低下を抑えることができる。
【0248】さらに、本実施の形態では磁気検出素子の
側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるよう
に形成されることが可能なので、フリー磁性層15の幅
方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0249】また、図3に示される磁気検出素子では、
非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、
フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁
性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成する
ことにより、スピンフィルター効果を有するバックド層
(backedlayer)として機能させることが可
能になる。
【0250】また、図4に示されるように、強磁性層1
7の上層に直接、他の反強磁性層31が積層されてもよ
い。図4の磁気検出素子では、強磁性層17の磁化方向
は、他の反強磁性層31及び第2の反強磁性層18との
交換結合によって図示X方向と反平行方向にそろえられ
る。
【0251】さらに、この強磁性層17の下層に非磁性
中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化
方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、
トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわ
ち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方
向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層
16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構
造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラッ
ク幅方向に揃えることが容易になっている。
【0252】従って、第2の反強磁性層18及び他の反
強磁性層31と強磁性層17との交換結合が比較的弱く
ても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層
13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易にな
る。なお、フリー磁性層15の磁化方向が固定磁性層1
3の磁化方向に対して直交していることが好ましい。
【0253】フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41
の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方
向両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18及
び他の反強磁性層31との交換結合によって固定され
る。
【0254】フリー磁性層15の凹部41の底面41b
の下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状
態おいて、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層3
1との交換結合によって磁化方向が固定された両端部
D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印
加されるとその磁化方向が変化する。
【0255】また、図4に示される磁気検出素子でも、
非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、
フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁
性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成する
ことにより、スピンフィルター効果を有するバックド層
(backedlayer)として機能させることが可
能になる。
【0256】また、第1の反強磁性層12と第2の反強
磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成して
も、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12
と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図
示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18、他の反
強磁性層31と強磁性層17との間の交換異方性磁界を
図示X方向と反平行方向に向けることができるまた、図
5に示されるように、非磁性層30の上層に第2の反強
磁性層18が直接積層されてもよい。図5の磁気検出素
子では、強磁性層17の磁化方向は、第2の反強磁性層
18とのRKKY相互作用によって図示X方向と反平行
方向にそろえられる。
【0257】さらに、この強磁性層17の下層に非磁性
中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化
方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、
トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわ
ち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方
向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層
16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構
造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラッ
ク幅方向に揃えることが容易になっている。
【0258】従って、第2の反強磁性層18と強磁性層
17とのRKKY相互作用が比較的弱くても、フリー磁
性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向
と交叉する方向に揃えることが容易になる。なお、フリ
ー磁性層15の磁化方向が固定磁性層13の磁化方向に
対して直交していることが好ましい。
【0259】フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41
の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方
向両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18と
の磁気的結合によって固定される。
【0260】フリー磁性層15の凹部41の底面41b
の下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状
態おいて、第2の反強磁性層18とのRKKY相互作用
によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって
図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁
化方向が変化する。
【0261】また、図5に示される磁気検出素子でも、
非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、
フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁
性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成する
ことにより、スピンフィルター効果を有するバックド層
(backedlayer)として機能させることが可
能になる。
【0262】また、第1の反強磁性層12と第2の反強
磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成して
も、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12
と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図
示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性
層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方
向に向けることができる。
【0263】このスピンバルブ型磁気検出素子において
は、電極層19、19からフリー磁性層15、非磁性材
料層14、固定磁性層13に定常電流が与えられ、図示
Z方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y
方向に与えられると、フリー磁性層15の磁化方向が図
示X方向から図示Y方向に向けて変動する。このフリー
磁性層15内での磁化方向の変動と第2の固定磁性層1
3cの磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗
変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁
界が検出される。
【0264】図3に示された磁気検出素子の製造方法を
説明する。まず、基板11側から第1の反強磁性層1
2、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層
15、非磁性中間層16、強磁性層非磁性層16、他の
反強磁性層31からなる多層膜A2を形成する。
【0265】第1の反強磁性層12、固定磁性層13、
非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層1
6、強磁性層17、非磁性層30及び他の反強磁性層3
1はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによっ
て同一真空成膜装置中で連続成膜される。
【0266】第1の反強磁性層12、固定磁性層13、
非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層1
6、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出
素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0267】非磁性層30は、Ruによって形成され、
膜厚は8〜11Åである。また、非磁性層は、Ru,C
u,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用い
て形成することもできる。
【0268】他の反強磁性層31は、PtMn合金、ま
たは、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,R
u,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただ
しX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,O
s,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1
または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0269】次に、多層膜A2を第1の熱処理温度、Y
方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中ア
ニールを行い、第1の反強磁性層12に交換異方性磁界
を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に
固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を
270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)と
している。
【0270】ここで、他の反強磁性層31の膜厚は0Å
よりも大きく30Å以下である。他の反強磁性層31の
膜厚が30Å以下であると、他の反強磁性層31を磁場
中アニールにかけても不規則構造から規則構造への変態
が生じず、非磁性層30を介した強磁性層17との間に
RKKY相互作用に基づく交換異方性磁界が発生しな
い。従って、多層膜A2を第1の磁場中アニールにかけ
たときに、他の反強磁性層31には交換異方性磁界が発
生せず、強磁性層17の磁化方向が図示Y方向に固定さ
れることはない。
【0271】多層膜A2を第1の磁場中アニールにかけ
たときに、他の反強磁性層31は、その表面から10〜
20Å程度酸化する。そこで、多層膜A2の状態で他の
反強磁性層31の表面をイオンミリングによって20Å
程削り、酸化した部分を除去する。
【0272】次に、多層膜A2上に、第2の反強磁性層
である第2の反強磁性層18を成膜する。
【0273】第2の反強磁性層18は、第1の反強磁性
層12と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(た
だしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Fe
のいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、
あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,I
r,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,A
r,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元
素である)合金で形成する。
【0274】第2の反強磁性層18の膜厚は、トラック
幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば20
0Åである。
【0275】ここで、第1の反強磁性層12及び第2の
反強磁性層18を形成するための、前記PtMn合金及
び前記X−Mnの式で示される合金において、Ptある
いはXが37〜63at%の範囲であることが好まし
い。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示
される合金において、PtあるいはXが47〜57at
%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限
り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味
する。
【0276】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのい
ずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’
は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0277】第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性
層18として、これらの適切な組成範囲の合金を使用
し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界
を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得
ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性
層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越
える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロ
ッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強
磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0278】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0279】なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第
1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成
の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0280】また、第2の反強磁性層18の上層にTa
などの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0281】次に第2の反強磁性層18まで形成された
多層膜を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大
きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、非磁
性層30を介したRKKY相互作用によって第2の反強
磁性層18と強磁性層17との間に交換異方性磁界を発
生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行
方向に固定する。強磁性層17の磁化方向が図示X方向
と反平行方向に固定されると、フリー磁性層15の磁化
方向も非磁性中間層16を介した強磁性層17とのRK
KY相互作用によって、図示X方向に固定される。本実
施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界
の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0282】第2の反強磁性層18の交換異方性磁界
は、第2の磁場中アニール工程において始めて生じる。
従って、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13
aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けた
まま、非磁性層30を介した第2の反強磁性層18と強
磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平
行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第
1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロ
ッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の
大きさを第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13
aとの間の交換異方性磁界より小さくするだけでよい。
なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び
強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層
の反磁界より大きく、また前記フリー磁性層と強磁性層
の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さ
くすることがより好ましい。また、第2の磁場中アニー
ルをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と
第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用い
て形成しても、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性
層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に
向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との
間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向ける
ことができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向
を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定す
ることが容易になる。
【0283】次に、第2の反強磁性層18上にレジスト
を積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの
間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の
前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミ
リングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などに
よって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちト
ラック幅方向に対する垂直方向に削り込むことにより凹
部41を形成する。凹部41の側面41a,41aは、
トラック幅方向に対して垂直になっている。凹部41の
底面41bが非磁性中間層16内に位置するように、凹
部41を形成する。
【0284】すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹
部41の底面41bに重なる領域以外のトラック幅方向
両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18及び
他の反強磁性層31との交換結合によって固定される。
従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介し
て積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラ
ック幅方向両端部D,Dでのみ確実に強磁性層17との
RKKY相互作用により固定される。
【0285】凹部41の底面41bに重なるフリー磁性
層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おい
て、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示
X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方
向が変化する。
【0286】従って、磁気検出素子のトラック幅は、前
記凹部の幅寸法Twによって決定される。上述したよう
に、本発明では、凹部41は一様の厚さで成膜された第
2の反強磁性層42を、反応性イオンエッチング(RI
E)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対す
る垂直方向に削るだけで形成することができるので、正
確な幅寸法Twで凹部41を形成することが可能にな
る。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に
規定できる。
【0287】凹部41の形成後、凹部41の幅寸法(=
トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオ
フ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第
2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレ
ジストによって覆われていない領域に電極層19,19
をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,
19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成
膜される。電極層19,19の成膜後、前記レジスト層
を除去して磁気検出素子を得る。
【0288】本製造方法によって製造された磁気検出素
子は電極層19,19と凹部41との間にトラック幅方
向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前
述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層1
9,19が積層されてもよい。このとき前記保護層は電
極下地層として機能する。
【0289】なお、上記説明では第2の反強磁性層18
の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層1
8に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に
電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18
の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスク
として第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図7
に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部41
の側面41aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0290】また、前記第2の磁場中アニールは、第2
の反強磁性層18に凹部41を形成した後行ってもよ
い。
【0291】また、本実施の形態では、基板11上に直
接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11
上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強
磁性層12が積層されてもよい。
【0292】また図8に示される磁気検出素子のように
電極層50,50が第1の反強磁性層12から第2の反
強磁性層18まで積層された積層体の両側端部に接続さ
れてもよい。
【0293】本実施の形態の磁気検出素子は、非磁性材
料層14やフリー磁性層15に比べて抵抗値の高い第2
の反強磁性層18を介さずに、電極層50,50から非
磁性材料層14及びフリー磁性層15付近にセンス電流
を与える割合を向上させることができる。また、磁気抵
抗変化率に寄与する前記積層体と電極層50,50との
間の接続抵抗を低減させることができ、スピンバルブ型
磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)を大きくさ
せることができる。
【0294】また、フリー磁性層15の単磁区化を保っ
た状態で電極層50,50からフリー磁性層15付近に
直接センス電流を与えることができるため、サイドリー
ディングを防止することができ、一層の高記録密度化に
対応することができる。
【0295】なお、一対の電極層50,50は、少なく
ともフリー磁性層15、非磁性材料層14、固定磁性層
13の膜面方向両側に配置されるものであってもよい。
【0296】なお、上述した実施の形態の磁気検出素子
磁気検出素子において、固定磁性層13が単層の強磁性
材料層として形成されてもよい。
【0297】また、図3ないし図8に示された磁気検出
素子でも、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なく
とも一方を、以下の組成を有する磁性材料で形成するこ
とが好ましい。
【0298】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比
は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成は
Coである。
【0299】これにより、フリー磁性層15と強磁性層
17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁
界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が
崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hs
f)を約293(kA/m)にまで大きくすることがで
きる。
【0300】また上記した組成範囲内であると、フリー
磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から
3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を
790(A/m)以下に小さくできる。
【0301】さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の
向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変
化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を
適切に図ることが可能である。
【0302】また、フリー磁性層15と非磁性材料層1
4との間に、CoFe合金やCo合金で形成される中間
層91が設けられてもよい。
【0303】中間層91が設けられる場合には、前記C
oFeNi合金のFeの組成比を7原子%以上で15原
子%以下で、Niの組成比を5原子%以上で15原子%
以下で、残り組成比をCoとすることが好ましい。
【0304】図1から図8に示された磁気検出素子を用
いて磁気ヘッドを構成するときには、基板11と第1の
反強磁性層12の間に、アルミナなどの絶縁性材料から
なる下地層、この下地層上に積層される磁性合金からな
る下部シールド層、及びこの下部シールド上に積層され
る絶縁性材料からなる下部ギャップ層が形成される。磁
気検出素子は前記下部ギャップ層上に積層される。ま
た、この磁気検出素子上には、絶縁性材料からなる上部
ギャップ層、及びこの上部ギャップ層上に積層される磁
性合金からなる上部シールド層が形成される。また、前
記上部シールド層上に書き込み用のインダクティブ素子
が積層されてもよい。
【0305】ところで図1ないし図8に示す磁気検出素
子は、多層膜A1、A2のトラック幅方向(図示X方
向)の両端部D上に電極層19が設けられ、前記電極層
19から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜内を
各層の膜面に対して平行な方向に流れるCIP(curren
t in the plane)型の磁気検出素子と呼ばれる構造
である。
【0306】一方、図9以降で説明する磁気検出素子
は、前記多層膜の上下に電極層が設けられ、前記電極層
から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜の各層の
膜面に対し垂直方向に流れるCPP(current perpend
icular to the plane)型と呼ばれる構造であり、本
発明は、前記CPP型の磁気検出素子にも適用可能であ
る。
【0307】CPP型の磁気検出素子においても、図1
ないし図8のCIP型の磁気検出素子と同じ効果を期待
することができる。
【0308】すなわち本発明では、凹部21は一様の厚
さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イオンエッ
チング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック
幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削るだけで形
成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部21
を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子
のトラック幅を正確に規定できる。
【0309】また、磁気検出素子の形成時に設定された
トラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域
が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検
出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合
の再生出力の低下を抑えることができる。
【0310】さらに、本実施の形態では磁気検出素子の
側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるよう
に形成されることが可能なので、フリー磁性層15のト
ラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。以
上によってサイドリーディングの発生を適切に抑制する
ことが可能になる。
【0311】ところで図9に示す磁気検出素子の多層膜
A1の構造は図1に示す多層膜A1と同じ膜構成である
が、以下の点で構造が異なる。
【0312】図9に示す多層膜A1の下には下部電極を
兼ねた下部シールド層74が設けられている。前記下部
シールド層74はパーマロイ(NiFe)などの磁性材
料でメッキ形成されたものである。
【0313】また図9に示すように前記第2反強磁性層
18上には絶縁層72が設けられている。前記絶縁層7
2は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなど
の絶縁材料で形成される。
【0314】また前記凹部21は、前記絶縁層72、第
2の反強磁性層18及び強磁性層17を貫通し、前記凹
部21の側面21aは、前記絶縁層72、第2の反強磁
性層18及び強磁性層17の内側端面の連続面として形
成されている。前記側面21aはトラック幅方向に対し
て垂直面となっている。
【0315】図9に示すように前記凹部21の側面21
aには、絶縁層73が形成されている。前記絶縁層73
は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなどの
絶縁材料で形成される。
【0316】本発明では、前記第2の反強磁性層18上
に形成された絶縁層72と、前記凹部21の側面21a
に形成された絶縁層73とは別体で形成される。後述す
る製造方法によれば、絶縁層72、73を別々に形成す
ることができ、それぞれの絶縁層72、73は分流ロス
を防ぐことができる適度な膜厚を有して形成される。
【0317】また図9に示すように、前記絶縁層73上
から前記凹部21の底面21bにかけて上部電極を兼ね
た上部シールド層75が設けられている。
【0318】このように図9に示す磁気検出素子では前
記多層膜A1の上下に電極を兼ねたシールド層74、7
5が設けられ、前記シールド層74、75間に流れる電
流は、前記多層膜A1内を膜面に対し垂直な方向に流れ
るようになっている。
【0319】図9に示す磁気検出素子では、前記第2反
強磁性層18の上面、および凹部21の側面21aが絶
縁層72、73によって覆われているので、前記上部シ
ールド層75から前記多層膜A1内に流れる電流が、第
2反強磁性層18等に分流せず、前記電流は前記凹部2
1の底面21b上の絶縁層73、73間の間隔で決定さ
れるトラック幅Tw内を適切に流れる。よって図9に示
す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅
Twから広がるのを抑制でき再生出力の大きいCPP型
の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0320】また図9に示すように前記絶縁層72上か
ら絶縁層73上、および凹部21の底面21b上にかけ
て点線で描かれた非磁性層76が設けられていてもよ
い。前記非磁性層76は、Ta、Ru、Rh、Ir、C
r、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されること
が好ましい。前記非磁性層76は、上部ギャップ層とし
ての役割を有するものであるが、前記非磁性層76は前
記凹部21の底面21b上にも形成されるため、電流経
路の出入口となる凹部21の底面21b上を例えば絶縁
材料からなる非磁性層76で覆うことは前記電流が多層
膜A1内に流れにくくなるため好ましくない。よって本
発明では前記非磁性層76を非磁性導電材料で形成する
ことが好ましい。
【0321】また図9に示す磁気検出素子では多層膜A
1を構成する非磁性材料層14がCuなどの非磁性導電
材料で形成されてもよいし、あるいは前記非磁性材料層
14がAl23やSiO2などの絶縁材料で形成されて
もよい。前者の磁気検出素子はスピンバルブGMR型磁
気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼ばれる構造であ
り、後者の磁気検出素子はスピンバルブトンネル型磁気
抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼ばれる構造であ
る。
【0322】トンネル型磁気抵抗効果型素子は、スピン
トンネル効果を利用して抵抗変化を生じさせるものであ
り、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が反平
行のとき、最も前記非磁性材料層14を介してトンネル
電流が流れにくくなって、抵抗値は最大になり、一方、
前記固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が平行
のとき、最もトンネル電流は流れ易くなり抵抗値は最小
になる。
【0323】この原理を利用し、外部磁界の影響を受け
てフリー磁性層15の磁化が変動することにより、変化
する電気抵抗を電圧変化(低電流動作時)あるいは電流
変化(低電圧動作時)としてとらえ、記録媒体からの洩
れ磁界が検出されるようになっている。
【0324】図10は、図2に示す磁気検出素子を図9
と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図1
1は、図3に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型
の磁気検出素子にした実施形態、図12は、図4に示す
磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子に
した実施形態、図13は図5に示す磁気検出素子を図9
と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図1
4は図6に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の
磁気検出素子にした実施形態、および図15は図7に示
す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子
にした実施形態である。
【0325】すなわち図10ないし図15に示す磁気検
出素子ではいずれも、第1反強磁性層12の下に下部電
極を兼用した下部シールド層74が設けられ、また第2
の反強磁性層18上には絶縁層72が設けられ、凹部2
1、41の側面21a、41aに絶縁層73が設けら
れ、さらに前記絶縁層72上、及び絶縁層73上から前
記凹部21、41の底面21b、41b上にかけて上部
電極を兼用した上部シールド層75が設けられている。
【0326】図14及び図15に示す磁気検出素子での
凹部21の側面21aは、底面21bから図示Z方向に
離れるにしたがって徐々にトラック幅方向(図示X方
向)の間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されて
いるが、このように前記側面21aを傾斜面や湾曲面で
形成すると、前記側面21aに適切な膜厚を有する絶縁
層73を形成しやすくなり、分流ロスの低減を適切に図
ることができて好ましい。
【0327】図16及び図17に示す磁気検出素子は、
図9ないし図15と同様にCPP型の磁気検出素子であ
るが、下部シールド層74の形状が図9ないし図15の
それとは異なっている。
【0328】図16に示す実施形態は、図9と同じ多層
膜A1の膜構成を有し、しかも第2の反強磁性層18上
には絶縁層72が形成され、凹部21の側面21aには
絶縁層73が形成され、さらに前記絶縁層72、73及
び凹部21の底面21b上にかけて上部電極を兼用した
上部シールド層75が設けられており、この点で図9と
一致している。
【0329】図9と異なるのは、下部電極を兼用した下
部シールド層74のトラック幅方向(図示X方向)の中
央部に、前記多層膜A1方向(図示Z方向)に突出した
突出部74aが設けられ、この突出部74aの上面74
a1が前記多層膜A1の下面に接しており、前記突出部
74aから前記多層膜A1内に(あるいは多層膜A1か
ら前記突出部74aに)電流が流れるようになっている
点である。
【0330】そして図16に示す実施形態では前記下部
シールド層75のトラック幅方向(図示X方向)におけ
る両側端部74bと前記多層膜A1間に絶縁層77が設
けられている。前記絶縁層77は、Al23、Si
2、AlNやTiCなどの絶縁材料で形成される。
【0331】図16に示す実施形態では、下部シールド
層74は、突出部74aの形成によって多層膜A1に対
する電流経路が絞り込まれ、さらに前記下部シールド層
74の両側端部74bと多層膜A1間に絶縁層77が設
けられたことで、前記両側端部74bから前記多層膜A
1内に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果
的に再生出力が大きく実効トラック幅が狭い磁気検出素
子を製造することが可能になる。
【0332】図16に示す実施形態では、前記下部シー
ルド層74の突出部74aの上面74a1のトラック幅
方向(図示X方向)の幅寸法は領域Eのトラック幅方向
(図示X方向)における幅寸法と一致しているが、前記
上面74a1の幅寸法が前記領域Eの幅寸法より広くて
もよい。より好ましくは前記上面74a1の幅寸法がト
ラック幅Twと一致することである。これによってより
効果的に多層膜A1に対しトラック幅Twの領域内にの
み電流を流すことができ再生出力の大きい磁気検出素子
を製造することが可能である。
【0333】また図16に示す実施形態では、前記下部
シールド層74に形成された突出部74aのトラック幅
方向(図示X方向)における両側面74a2は、前記突
出部74aのトラック幅方向における幅寸法が、前記多
層膜A1から離れる(図示Z方向と逆方向)にしたがっ
て徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されている
が、前記両側面74a2は、トラック幅方向(図示X方
向)に対して垂直面であってもかまわない。
【0334】図17に示す実施形態は、図16に示す実
施形態と同じ形状の下部シールド層74を有している。
すなわち図17に示す下部シールド層74のトラック幅
方向(図示X方向)の中央部には、前記多層膜A1方向
(図示Z方向)に突出した突出部74aが設けられ、こ
の突出部74aの上面74a1が前記多層膜A1の下面
に接しており、前記突出部74aから前記多層膜A1内
に(あるいは多層膜A1から前記前記突出部74aに)
電流が流れるようになっている。そして前記下部シール
ド層74のトラック幅方向(図示X方向)における両側
端部74bと前記多層膜A1間に絶縁層77が設けられ
ている。
【0335】図17に示す実施形態では図16と異なっ
て、第2の反強磁性層18上に絶縁層72が設けられて
おらず、また凹部21の両側面21aに絶縁層73が設
けられていない。そして上部電極を兼用した上部シール
ド層75は前記第2の反強磁性層18上から前記凹部2
1の両側面21a上及び底面21b上にかけて直接接合
されている。
【0336】図17に示す実施形態では、図16に示す
実施形態に比べて上部シールド層75と第2の反強磁性
層18間、及び前記上部シールド層75と凹部21の両
側面21a間が絶縁されていないので、電流経路はトラ
ック幅Twよりも広がりやすく再生出力は劣るものと考
えられるが、図26に示す従来に比べて、多層膜A1の
下面側で、下部シールド層74に突出部74aの形成に
よって電流経路を絞り込むことができ、電流経路の広が
りを抑えて再生出力の低下を抑制することができる。
【0337】また図16及び図17に示す磁気検出素子
では、下部シールド層74に形成された突出部74aの
上面74a1と、その両側に形成された絶縁層77の上
面とが同一平面で形成されていることが好ましい。これ
によって前記突出部74a上から絶縁層77上にかけて
形成される多層膜A1の各層の膜面をトラック幅方向
に、より平行に形成でき、再生特性に優れた磁気検出素
子を製造することが可能になる。
【0338】なお図9ないし図17に示すCPP型の磁
気検出素子ではいずれも下部シールド層74及び上部シ
ールド層75を多層膜の上下に接して形成し、前記シー
ルド層74、75に電極層の機能を持たせているが、こ
のような構成によって電極層とシールド層とを別々に形
成する必要性が無くなり、CPP型の磁気検出素子の製
造を容易化することが可能になる。
【0339】しかも前記電極機能とシールド機能とを兼
用させれば、シールド層間の間隔で決定されるギャップ
長G1を非常に短くすることができ(図9を参照、なお
非磁性層76が設けられる場合は、非磁性層76の膜厚
も含めてギャップ長Glが決定される)、今後の高記録
密度化により適切に対応可能な磁気検出素子を製造する
ことが可能になる。
【0340】ただし本発明では、図9ないし図17に示
す実施形態に限るものではなく、前記多層膜の上面及び
/または下面に、例えばAu、W、Cr、Taなどから
なる電極層を設け、前記多層膜と反対側の前記電極層の
面にギャップ層を介して磁性材料製のシールド層を設け
る構成であってもかまわない。
【0341】次に代表的に図14に示すCPP型の磁気
検出素子の製造方法について以下に説明する。
【0342】まずメッキ形成された磁性材料製の下部シ
ールド層74上に、第1の反強磁性層12、固定磁性層
13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中
間層16、強磁性層17、第2の反強磁性層18及び絶
縁層72を連続スパッタ成膜する。熱処理条件等につい
ては上述した通りである。
【0343】次に図18に示すように前記絶縁層72の
上に露光現像によってトラック幅方向(図示X方向)の
中央部に穴部78aが設けられたレジスト層78を形成
する。前記レジスト層78の内側端面78bは、下面か
ら上面にかけて徐々に前記穴部78aのトラック幅方向
への間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。
【0344】次に図18に示す矢印F方向からのイオン
ミリングによって前記レジスト層78に覆われていない
絶縁層72、第2反強磁性層18、強磁性層17を完全
に削り込み、さらに非磁性中間層16を途中まで削り込
む(図18に示す点線部分の各層が除去される)。
【0345】なお前記レジスト層78の内側端面78b
が傾斜面あるいは湾曲面であるため、またイオンミリン
グのイオンビーム入射角Fが垂直方向から傾いているた
め、前記イオンミリングによる削り込みによって多層膜
に形成された凹部21の両側端面21aも傾斜面あるい
は湾曲面として形成される。そして前記レジスト層78
を除去する。
【0346】図19に示す工程では、前記絶縁層72上
から前記凹部21の側面21a及び底面21bにかけて
Al23、SiO2、AlNあるいはTiCなどの絶縁
材料からなる絶縁層73をスパッタ成膜する。スパッタ
法には、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッ
タ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。
【0347】ここで注意すべき点は、前記絶縁層73を
形成する際のスパッタ角度θ1にある。図19に示すよ
うにスパッタ方向Gは、多層膜の各層の膜面の垂直方向
に対しθ1のスパッタ角度を有しているが本発明では前
記スパッタ角度θ1をできる限り大きくして(すなわち
より寝かせて)、凹部21の側面21aに絶縁層73が
成膜されやすいようにすることが好ましい。例えば前記
スパッタ角度θ1は50〜70°である。
【0348】このように前記スパッタ角度θ1を大きく
することで、前記凹部21の側面21aに形成される絶
縁層73のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚T1
を、第2反強磁性層72の上面及び凹部21の底面21
bに形成される絶縁層73の膜厚T2よりも厚く形成で
きる。このように前記絶縁層73の膜厚を調整しないと
次工程でのイオンミリングで、前記凹部21の側面21
aの絶縁層73がすべて除去されてしまい、あるいは絶
縁層73が残ってもその膜厚は非常に薄くなり、適切に
分流ロスを低減させるための絶縁層として機能させるこ
とができない。
【0349】次に図19に示すように多層膜の各層の膜
面と垂直方向(図示Z方向と平行な方向)あるいは垂直
方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0
°〜20°程度)からイオンミリングを施す。このとき
前記凹部21の底面21bに形成された絶縁層73を適
切に除去するまでイオンミリングを施す。このイオンミ
リングによって第2反強磁性層72の上面に形成された
絶縁層73も除去される。一方、前記凹部21の側面2
1aに形成された絶縁層73も若干削れるものの、前記
凹部21の底面21bに形成された絶縁層73よりも厚
い膜厚T1を有し、しかもイオンミリングのミリング方
向Hは、前記凹部21の側面21aに形成された絶縁層
73から見ると斜め方向になるため、凹部21の側面2
1aに形成された絶縁層73は、凹部21の底面21b
に形成された絶縁層73に比べて削られ難く、よって前
記凹部21の側面21aには適度な膜厚の絶縁層73が
残される。
【0350】その状態が図20である。前記凹部21の
側面21aに残される絶縁層73のトラック幅方向にお
ける膜厚T3は5〜10nm程度であることが好まし
い。
【0351】図20に示すように前記第2反強磁性層1
8上面は絶縁層72によって覆われ、また前記凹部21
の側面21aは前記絶縁層73によって覆われた状態に
なっている。そして必要ならば、前記絶縁層72、73
から前記凹部21の底面21bにかけて図14に示す非
磁性層76を形成した後、上部電極を兼ね備えた上部シ
ールド層75をメッキ形成する。
【0352】以上のようにして形成された磁気検出素子
では、第2反強磁性層18上、および凹部21の側面2
1a上を適切に絶縁層72、73によって覆うことがで
き、シールド層から流れる電流の分流ロスを適切に抑制
できるCPP型の磁気検出素子を製造することが可能に
なる。
【0353】なお図9ないし図13、および図15、1
6に示す多層膜の上側領域も図18ないし図20と同じ
工程によって形成することができるので、説明を省略す
る。
【0354】図16及び図17に示す磁気検出素子では
下部シールド層74に突出部74a及び前記下部シール
ド層74の両側端部74bと多層膜間に絶縁層77を形
成するものであるが、これはまず下部シールド層74を
メッキやスパッタで形成し表面を平滑化するポリシング
を施した後、前記下部シールド層74のトラック幅方向
(図示X方向)の中央部上にレジスト層を形成し、この
レジスト層に覆われていない前記下部シールド層74の
両側端部74bをイオンミリングで途中まで削り込む。
これによって前記下部シールド層74のトラック幅方向
の中央部に突出部74aを形成することができる。
【0355】さらに前記レジスト層に覆われていない前
記下部シールド層74の両側端面74a上に絶縁層77
をスパッタ成膜し、前記絶縁層77の上面が前記下部シ
ールド層74の突出部74aの上面74a1とほぼ同一
平面となった時点で前記スパッタ成膜を終了する。そし
て前記レジスト層を除去する。なお前記レジスト層を除
去した後、前記下部シールド層74の突出部74aの上
面74a1及び絶縁層77の上面をCMPなどを用いて
研磨し、前記突出部74aの上面74a1と絶縁層77
の上面を高精度に同一平面となるようにしてもよい。こ
の場合、最初のポリシング工程は不要である。
【0356】以上詳述した図9ないし図17に示すCP
P型磁気検出素子では、その上に書き込み用のインダク
ティブ素子が積層されていてもよい。
【0357】また図1ないし図17に示す磁気検出素子
は、磁気センサやハードディスクなどに用いられる。
【0358】
【発明の効果】以上詳細に説明した本発明によれば、前
記第2の反強磁性層及び前記強磁性層を貫通し、底面が
前記非磁性中間層内に設けられ、この底面のトラック幅
方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい凹部が形成され
ており、トラック幅が前記凹部の底面のトラック幅方向
の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底
面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁
界によって磁化方向が変化するフリー磁性層の磁化方向
を変化させることができる。
【0359】従って、トラック幅Twから外れた領域で
記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止
することができる。
【0360】また、前記多層膜の形成時に設定されたト
ラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に
記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度
領域となる。すなわち、本発明の磁気検出素子は、磁気
検出素子の光学的トラック幅が磁気的トラック幅に等し
くなり、不感領域が生じないので、高記録密度化に対応
するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さ
くしていった場合の再生出力の低下を抑えることができ
る。
【0361】しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜さ
れた前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング
(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向
に対する垂直方向に削るだけで形成することができるの
で、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能にな
る。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定
できる。
【0362】また、本発明では、前記凹部の底面が前記
非磁性中間層内に位置しているので、前記第2の反強磁
性層の下層にある強磁性層が、前記第2の反強磁性層と
の磁気的結合によって磁化方向がそろえられ、さらに、
この強磁性層の下層に非磁性中間層を介して形成された
フリー磁性層が、前記強磁性層とのRKKY相互作用に
よって磁化方向が、前記固定磁性層の磁化方向と交叉す
る方向に、揃えられる。すなわち、前記第2の反強磁性
層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及
び前記フリー磁性層がシンセティックフェリ構造となっ
ており、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃え
ることが容易になっている。従って、前記第2の反強磁
性層と前記強磁性層との交換結合磁界が比較的弱くて
も、前記フリー磁性層の磁化方向を確実に、前記固定磁
性層の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易にな
る。
【0363】また本発明における磁気検出素子はCIP
型の磁気検出素子でもCPP型の磁気検出素子でもどち
らにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図5】本発明の第5の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図6】本発明の第6の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図7】本発明の第7の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図8】本発明の第8の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図9】本発明の第9の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図10】本発明の第10の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図11】本発明の第11の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図12】本発明の第12の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図13】本発明の第13の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図14】本発明の第14の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図15】本発明の第15の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図16】本発明の第16の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図17】本発明の第17の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図18】図14に示す磁気検出素子の製造方法を示す
一工程図、
【図19】図18の次に行なわれる一工程図、
【図20】図19の次に行なわれる一工程図、
【図21】バックド層によるスピンフィルター効果を説
明するための様式説明図、
【図22】バックド層によるスピンフィルター効果を説
明するための様式説明図、
【図23】フリー磁性層を積層フェリ構造としたときの
前記フリー磁性層のヒステリシスループの概念図、
【図24】従来の磁気検出素子の断面図、
【図25】従来の磁気検出素子の製造工程を示す一工程
図、
【図26】従来のCPP型の磁気検出素子の断面図、
【符号の説明】
11 基板 12 第1の反強磁性層 13 固定磁性層 13a 第1の固定磁性層 13b 非磁性中間層 13c 第2の固定磁性層 14 非磁性材料層 15 フリー磁性層 16 非磁性中間層 17 強磁性層 18 第2の反強磁性層 19 電極層 21、41 凹部 21a、41a (凹部の)側面 72、73、77 絶縁層 74 下部シールド層 74a 突出部 75 上部シールド層 76 非磁性層 78 レジスト層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 10/32 G01R 33/06 R (72)発明者 梅津 英治 東京都大田区雪谷大塚1番7号 アルプス 電気株式会社社内 (72)発明者 井出 洋介 東京都大田区雪谷大塚1番7号 アルプス 電気株式会社社内 (72)発明者 田中 健一 東京都大田区雪谷大塚1番7号 アルプス 電気株式会社社内 Fターム(参考) 2G017 AA10 AD54 5D034 BA04 CA05 5E049 AA04 BA16 CB02 DB12

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の反強磁性層と、この第1の反強磁
    性層によって磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性
    材料層、及び外部磁界により磁化方向が変化するフリー
    磁性層、非磁性中間層、強磁性層及び第2の反強磁性層
    を有する多層膜を有し、 前記多層膜には、前記第2の反強磁性層及び前記強磁性
    層を貫通し、底面が前記非磁性中間層内に設けられ、こ
    の底面のトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等
    しい凹部が形成されており、 前記第2の反強磁性層との磁気的結合により磁化方向が
    揃えられた、前記強磁性層との磁気的結合により、前記
    フリー磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と
    交叉する方向へ向けられていることを特徴とする磁気検
    出素子。
  2. 【請求項2】 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、I
    r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
    金で形成されている請求項1に記載の磁気検出素子。
  3. 【請求項3】 前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち
    少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成
    する請求項1または2に記載の磁気検出素子。組成式が
    CoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で
    17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で
    10原子%以下で、残りの組成比はCoである。
  4. 【請求項4】 前記フリー磁性層と前記非磁性材料層と
    間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成す
    る請求項1または2に記載の磁気検出素子。
  5. 【請求項5】 前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち
    少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成
    する請求項4記載の磁気検出素子。組成式がCoFeN
    iで示され、Feの組成比は7原子%以上で15原子%
    以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下
    で、残りの組成比はCoである。
  6. 【請求項6】 前記強磁性層及び前記フリー磁性層を前
    記CoFeNiで形成する請求項3または5に記載の磁
    気検出素子。
  7. 【請求項7】 前記凹部の側面はトラック幅方向に対す
    る垂直面となっている請求項1ないし6のいずれかに記
    載の磁気検出素子。
  8. 【請求項8】前記強磁性層と前記第2の反強磁性層の間
    に、非磁性層が形成されている請求項1ないし7のいず
    れかに記載の磁気検出素子。
  9. 【請求項9】 前記非磁性層がRu,Cu,Ag,Au
    のうち1種または2種以上の元素を用いて形成されてい
    る請求項8に記載の磁気検出素子。
  10. 【請求項10】 前記非磁性層がRuによって形成さ
    れ、膜厚が8〜11Åである請求項9に記載の磁気検出
    素子。
  11. 【請求項11】 前記第2の反強磁性層の下層に、他の
    反強磁性層が形成されている請求項1ないし10のいず
    れかに記載の磁気検出素子。
  12. 【請求項12】 前記他の反強磁性層の厚さが0より大
    きく30Å以下である請求項11に記載の磁気検出素
    子。
  13. 【請求項13】 前記固定磁性層は、単位面積あたりの
    磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層
    が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層
    を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行
    となるフェリ磁性状態である請求項1ないし12のいず
    れかに記載の磁気検出素子。
  14. 【請求項14】 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、I
    r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
    金で形成されている請求項13に記載の磁気検出素子。
  15. 【請求項15】 前記第1の反強磁性層と前記第2の反
    強磁性層が、同じ組成の反強磁性材料を用いて形成され
    ている請求項1ないし14のいずれかに記載の磁気検出
    素子。
  16. 【請求項16】 前記第1の反強磁性層及び/又は前記
    第2の反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn
    (ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,
    Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金
    で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,
    Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,A
    r,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の
    元素である)合金で形成される請求項1ないし15のい
    ずれかに記載の磁気検出素子。
  17. 【請求項17】 前記多層膜のトラック幅方向の両側端
    部上には電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の
    膜面に対し平行な方向に流れる請求項1ないし16に記
    載の磁気検出素子。
  18. 【請求項18】 前記多層膜の上下に電極層が設けら
    れ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流
    れる請求項1ないし16記載の磁気検出素子。
  19. 【請求項19】 前記多層膜の上に設けられた上部電極
    層は、磁性材料で形成された上部シールド層である請求
    項18記載の磁気検出素子。
  20. 【請求項20】 前記第2の反強磁性層上、および前記
    凹部のトラック幅方向の両側端面には絶縁層が設けら
    れ、前記上部電極層は、前記絶縁層上から前記凹部の底
    面にかけて形成されている請求項18または19に記載
    の磁気検出素子。
  21. 【請求項21】 前記第2の反強磁性層上に形成された
    絶縁層と、前記凹部のトラック幅方向の両側端面に形成
    された絶縁層は、別体で形成される請求項20記載の磁
    気検出素子。
  22. 【請求項22】 前記多層膜の下に設けられた下部電極
    層は、磁性材料で形成された下部シールド層である請求
    項18ないし21のいずれかに記載の磁気検出素子。
  23. 【請求項23】 前記下部電極層のトラック幅方向の中
    央には、前記多層膜方向に突出した突出部が設けられ、
    この突出部の上面が前記多層膜の下面と接し、前記下部
    電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層膜間には
    絶縁層が設けられる請求項18ないし22のいずれかに
    記載の磁気検出素子。
  24. 【請求項24】 前記突出部の上面と、前記下部電極層
    の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面とは同一平
    面で形成される請求項23記載の磁気検出素子。
  25. 【請求項25】 前記非磁性材料層は非磁性導電材料で
    形成される請求項1ないし24のいずれかに記載の磁気
    検出素子。
  26. 【請求項26】 前記非磁性材料層は絶縁材料で形成さ
    れる請求項18ないし24のいずれかに記載の磁気検出
    素子。
JP2001389107A 2000-12-22 2001-12-21 磁気検出素子 Expired - Fee Related JP3889276B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001389107A JP3889276B2 (ja) 2000-12-22 2001-12-21 磁気検出素子

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-390815 2000-12-22
JP2000390815 2000-12-22
JP2001-125605 2001-04-24
JP2001125605 2001-04-24
JP2001389107A JP3889276B2 (ja) 2000-12-22 2001-12-21 磁気検出素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003017783A true JP2003017783A (ja) 2003-01-17
JP3889276B2 JP3889276B2 (ja) 2007-03-07

Family

ID=27345511

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001389107A Expired - Fee Related JP3889276B2 (ja) 2000-12-22 2001-12-21 磁気検出素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3889276B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004289100A (ja) * 2003-01-31 2004-10-14 Japan Science & Technology Agency Cpp型巨大磁気抵抗素子及びそれを用いた磁気部品並びに磁気装置
JP2004335699A (ja) * 2003-05-07 2004-11-25 Tohoku Ricoh Co Ltd 磁気センサ及び磁気エンコーダ
US7609490B2 (en) 2005-07-22 2009-10-27 Tdk Corporation Magnetoresistive device, thin film magnetic head, head gimbal assembly, head arm assembly, magnetic disk apparatus, synthetic antiferromagnetic magnetization pinned layer, magnetic memory cell, and current sensor

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004289100A (ja) * 2003-01-31 2004-10-14 Japan Science & Technology Agency Cpp型巨大磁気抵抗素子及びそれを用いた磁気部品並びに磁気装置
JP2004335699A (ja) * 2003-05-07 2004-11-25 Tohoku Ricoh Co Ltd 磁気センサ及び磁気エンコーダ
US7609490B2 (en) 2005-07-22 2009-10-27 Tdk Corporation Magnetoresistive device, thin film magnetic head, head gimbal assembly, head arm assembly, magnetic disk apparatus, synthetic antiferromagnetic magnetization pinned layer, magnetic memory cell, and current sensor

Also Published As

Publication number Publication date
JP3889276B2 (ja) 2007-03-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6714388B2 (en) Magnetic sensing element having improved magnetic sensitivity
JP2003282997A (ja) 磁気検出素子
US6764778B2 (en) Thin film magnetic element with accurately controllable track width and method of manufacturing the same
JP3657487B2 (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびその製造方法、およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP3908554B2 (ja) 磁気検出素子の製造方法
JP3973442B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
US7573675B2 (en) Thin film magnetic head
US6760200B2 (en) Spin-valve thin-film magnetic element suitable for track narrowing and thin-film magnetic head using the same
US6765769B2 (en) Magnetoresistive-effect thin film, magnetoresistive-effect element, and magnetoresistive-effect magnetic head
US7283335B2 (en) Magnetic detecting element
JP4229618B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP2000348309A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子及び薄膜磁気ヘッド及びスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法
JP3774375B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法、ならびに前記磁気検出素子を用いた薄膜磁気ヘッド
JP2001160208A (ja) 磁気抵抗効果素子及びその製造方法
JP2001345495A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP3774374B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP3904447B2 (ja) 磁気検出素子の製造方法
JP3859959B2 (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP3889276B2 (ja) 磁気検出素子
JP3854167B2 (ja) 磁気検出素子の製造方法
JP3939519B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP3839684B2 (ja) 薄膜磁気素子の製造方法
JP2001084530A (ja) 磁気抵抗効果素子及びその製造方法
JP3961251B2 (ja) 磁気検出素子の製造方法
JP3839683B2 (ja) 薄膜磁気素子

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060707

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060829

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061019

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061114

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20061129

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091208

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091208

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees