JP4229618B2 - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主に、ハードディスク装置や磁気センサなどに用いられる磁気検出素子に係り、特に狭トラック化においても適切にフリー磁性層の磁化制御を行うことができ、再生特性に優れた磁気検出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図35は、従来の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0003】
符号1は基板であり、前記基板1の上に反強磁性層2、固定磁性層3、非磁性材料層4及びフリー磁性層5からなる多層膜8が形成されている。前記多層膜8の両側にはハードバイアス層6が形成され、前記ハードバイアス層6の上には電極層7が形成されている。
【0004】
前記固定磁性層3の磁化は前記反強磁性層2との間で発生する交換結合磁界によって図示Y方向に固定される。一方、フリー磁性層5の磁化は、ハードバイアス層6からの縦バイアス磁界によって図示X方向に揃えられる。
【0005】
図35に示すように前記フリー磁性層5のトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法でトラック幅Twが規制され、今後の高記録密度化に伴って前記トラック幅Twの寸法は益々小さくなっている。
【0006】
しかし狭トラック化が進むと、図35に示す磁気検出素子の構造では適切にフリー磁性層5の磁化制御を行うことができなかった。
【0007】
(1)まず図35に示す構造では、狭トラック化に伴ってフリー磁性層5の幅寸法が短くなっていくが、狭トラック化になるほど、ハードバイアス層6からの強い縦バイアス磁界の影響を受ける領域がフリー磁性層5内で大きな割合を占める。強い縦バイアス磁界を受けた領域は、外部磁界に対して磁化変動しにくい不感領域となり、狭トラック化に伴ってこの不感領域が大きくなるから再生感度が低下する。
【0008】
(2)ハードバイアス層6とフリー磁性層5間は磁気的に不連続状態となりやすい。特に前記ハードバイアス層6とフリー磁性層5間にCrなどで形成されたバイアス下地層が介在するとなおさらである。
【0009】
このような磁気的な不連続状態によってフリー磁性層5のトラック幅方向端部の反磁界の影響が強まり、フリー磁性層5の磁化を乱す現象(バックリング現象)が生じ易くなる。このバックリング現象は、狭トラック化になるほど、フリー磁性層5の広い領域に生じ易くなり、これにより再生波形の安定性が低下するといった問題が発生する。
【0010】
(3)狭ギャップ化に伴って、ハードバイアス層6からの縦バイアス磁界の一部が、図35に示す磁気検出素子の上下に形成されたシールド層(図示しない)に逃げてしまい、シールド層の磁化状態を乱すと共に、フリー磁性層5に供給されるはずの縦バイアス磁界が弱まり、フリー磁性層5の磁化制御を適切に行うことができない。
【0011】
上記した問題点を解消するため、最近では、フリー磁性層5の磁化制御は、フリー磁性層上に反強磁性層を用いたエクスチェンジバイアス方式が採用されつつある。
【0012】
エクスチェンジバイアス方式を用いた磁気検出素子は、例えば図36及び図37に示す製造工程を用いて製造される。図36及び図37は、磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0013】
図36に示す工程では、基板1上に例えばPtMn合金からなる反強磁性層2を形成し、さらに磁性材料製の固定磁性層3、非磁性材料層4及び磁性材料製のフリー磁性層5を積層形成する。そして前記フリー磁性層5上に前記フリー磁性層5表面が大気暴露されたときに酸化されるのを防止するためのTa膜9を形成する。
【0014】
次に図36に示す前記Ta膜9上にリフトオフ用のレジスト層10を形成し、前記レジスト層10に覆われていないトラック幅方向(図示X方向)の両側に露出した前記Ta膜9をイオンミリングですべて除去する。このとき前記Ta膜9下のフリー磁性層5も一部削られる(点線部分が削られる)。
【0015】
次に図37に示す工程ではレジスト層10の両側に露出したフリー磁性層5上に強磁性層11、IrMn合金などで形成された第2反強磁性層12、および電極層13を連続成膜する。そして図37に示すレジスト層10を除去すると、エクスチェンジバイアス方式を用いた磁気検出素子が完成する。
【0016】
そして図37に示す磁気検出素子では、強磁性層11間のトラック幅方向(図示X歩行)の間隔でトラック幅Twを規制でき、前記強磁性層11は前記第2反強磁性層12との間で発生する交換結合磁界によって図示X方向に強固に固定される。これにより前記強磁性層11下に位置するフリー磁性層5の両側端部Aは、前記強磁性層11との間の強磁性結合によって図示X方向に強固に固定され、トラック幅Tw領域のフリー磁性層5の中央部Bは外部磁界に対し磁化変動できる程度に弱く単磁区化されていると考えられた。
【0017】
このエクスチェンジバイアス方式を用いた磁気検出素子であれば、上記した(1)〜(3)の問題点を適切に解消できるものと期待された。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図36及び図37に示す製造工程で形成された磁気検出素子では以下のような課題が生じた。
【0019】
(1)まず第1に、図36に示す工程でのイオンミリング時に、Ta膜9のみならず、その下に形成されたフリー磁性層5の一部までも削れてしまい、またイオンミリング時に使用されるArなどの不活性ガスが露出したフリー磁性層5表面から内部に入り込みやすくなり、以上のようなイオンミリングによるダメージによって前記フリー磁性層5の表面部分5aの結晶構造が壊れたり、あるいは格子欠陥が発生しやすくなる(Mixing効果)。これによって前記フリー磁性層5の表面部分5aの磁気特性が劣化しやすい。
【0020】
図36工程のイオンミリング時にTa膜9のみを削り、フリー磁性層5が削られないようにできれば最も好ましいが、実際にそのようにミリング制御することは難しい。
【0021】
その理由は、フリー磁性層5上に形成されたTa膜9の膜厚にある。前記Ta膜9の膜厚は成膜時で30Å〜50Å程度で形成される。この程度の厚い膜厚でなければフリー磁性層5が酸化されるのを適切に防止できないからである。
【0022】
ところがTa膜9は、大気に曝されたり、固定磁性層3や強磁性層11と反強磁性層2、12間で交換結合磁界を発生させるための磁場中アニールによって酸化され、その酸化された部分の膜厚が膨張し、前記Ta膜9全体の膜厚は成膜段階よりも厚くなる。例えばTa膜9の膜厚が成膜時30Å程度であったとき、酸化によって前記Ta膜9の膜厚は45Å程度にまで大きくなってしまう。
【0023】
従って酸化によって膜厚が大きくなったTa膜9を効果的にミリングで除去するには、高エネルギーのイオンミリングを使用する必要がある。高エネルギーのイオンミリングであるからミリングレートは速く、膜厚の厚いTa膜9をイオンミリングで除去した瞬間に、ミリングを止めることは不可能に近い。すなわち高エネルギーになればなるほどミリング止め位置のマージンを広く取る必要がある。このため前記Ta膜の下に形成されたフリー磁性層5も一部削られてしまい、このとき高エネルギーのイオンミリングによって余計にフリー磁性層5は大きなダメージを受けやすく磁気特性の劣化が顕著になる。
【0024】
(2)また図36に示すようにフリー磁性層5の途中でイオンミリングを止めることも、高エネルギーのイオンミリングを使用することと合わせて、フリー磁性層5の膜厚が30Å〜40Å程度に薄く形成されるので難しい。すなわち最悪の場合、フリー磁性層5の両側端部Aがすべてイオンミリングで除去されることもある。このようにフリー磁性層5の膜厚が薄いために前記フリー磁性層5の途中でイオンミリングを止めること自体が難しい。
【0025】
(3)上記のようにイオンミリングで露出したフリー磁性層5表面は、前記イオンミリングによるダメージによって磁気特性が劣化している。このため前記フリー磁性層5上に積層される強磁性層11との間の磁気的な結合(強磁性的な交換相互作用)は十分ではなく、このため強磁性層11の膜厚を厚く形成する必要がある。
【0026】
しかし強磁性層11の膜厚を厚く形成すると今度は反強磁性層12間で発生する交換結合磁界が弱まるため、結局、フリー磁性層5の両側端部Aを強固に磁化固定できず、サイドリーディングの問題が発生し、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できなくなる。
【0027】
また強磁性層11を厚く形成しすぎると、前記強磁性層11の内側側面から前記フリー磁性層5の中央部Bに余分な静磁界が及びやすくなり、磁化反転可能なフリー磁性層5の中央部Bの外部磁界に対する感度が低下しやすい。
【0028】
以上のように、フリー磁性層5上にTa膜9を形成し、前記Ta膜9の両側を削って露出したフリー磁性層5上に強磁性層11及び第2反強磁性層12を重ね合わせる磁気検出素子の構造では、依然としてフリー磁性層5の磁化制御を適切に行えず、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することができなかった。
【0029】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、エクスチェンジバイアス方式において、フリー磁性層の磁化制御を適切に行うことができ、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明における磁気検出素子は、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層を有する多層膜が設けられ、
前記第1磁性層上には、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された合金層が形成され、前記合金層の膜厚は20Å以上で50Å以下であり、
前記合金層の両側端部上には第3反強磁性層が重ねられて、前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、前記合金層の中央部上には非磁性層が設けられ、前記合金層の中央部上に形成された非磁性層の膜厚は3Å以上で10Å以下であり、前記非磁性層は、前記合金層の両側端部と第3反強磁性層間にも介在しており、
前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間で交換結合磁界が生じて前記第1磁性層の両側端部の磁化は、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定され、一方、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能することを特徴とするものである。
【0031】
本発明では、上記のように第1磁性層上に合金層を設け、この合金層の両側端部上に第3反強磁性層を設けている。従って前記第1磁性層の両側端部上では、前記合金層と前記第3反強磁性層とを合わせた膜厚の厚い反強磁性層が形成されており、この反強磁性層との間で発生する交換結合磁界によって前記第1磁性層の両側端部は、適切にトラック幅方向に固定された状態になっている。一方、第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化されたフリー磁性層となっている。
【0032】
前記合金層の中央部上に設けられた非磁性層は、前記合金層を大気暴露による酸化から防止するためのものである。
【0033】
図37に示す従来の磁気検出素子では、フリー磁性層の両側端部が一部削られる構造であったが、本発明ではフリー磁性層上は第2反強磁性層で覆われているので、従来のようにイオンミリングによるダメージをフリー磁性層が受けるという問題は発生しない。
【0034】
本発明では、従来における磁気検出素子に比べてより効果的にフリー磁性層の磁化制御を行うことができる構造であり、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能である。
【0035】
また本発明では前記非磁性層の膜厚は、中央部の方が両側端部よりも厚いことが好ましい。
【0036】
本発明では、前記第3反強磁性層と合金層の両側端部間には、3Å以下の非磁性層が設けられることが好ましい。
【0037】
3Å以下の非磁性層の介在であれば、合金層の両側端部と第3反強磁性層間に反強磁性的な相互作用が生じ易くなり、前記合金層の両側端部と第3反強磁性層とが一体の反強磁性層のようになり、第1磁性層の両側端部を適切にトラック幅方向に強固に固定することができる。
【0039】
前記合金層の中央部が非反強磁性の性質を有していると、磁場中アニールによっても前記合金層の中央部は規則変態しづらく、よって前記合金層の中央部とフリー磁性層の中央部間で交換結合磁界は発生せず、前記フリー磁性層の中央部の磁化がトラック幅方向に強固に固定されるといったことが無い。一方、前記合金層の両側端部は、その上に形成される第3反強磁性層と合わせて一体の反強磁性層のようになり、磁場中アニールによって規則化変態しやすく、したがって、前記合金層の両側端部と第1磁性層の両側端部間では交換結合磁界が発生し、前記第1磁性層の両側端部をトラック幅方向に強固に固定することが可能になっている。
【0040】
なお本発明では、前記合金層の膜厚はより好ましくは、30Å以上で40Å以下である。この程度の膜厚であれば前記合金層の中央部とフリー磁性層の中央部間で交換結合磁界は発生しないし、発生してもその値は非常に小さい。
【0041】
また本発明の磁気検出素子は、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層を有する多層膜が設けられ、
前記第1磁性層の少なくとも両側端部上には、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された第1合金層が形成され、前記第1合金層の膜厚は20Å以上で50Å以下であり、
前記第1合金層上には非磁性層が設けられ、さらに前記非磁性層の上には第3反強磁性層が設けられ、
前記第3反強磁性層と前記非磁性層を介して重ねられた前記第1合金層は第2反強磁性層として機能して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間で交換結合磁界が生じて前記第1磁性層の両側端部の磁化は、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定され、一方、前記第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能することを特徴とするものである。
【0042】
上記の発明と異なり、この発明では必ず合金層と第3反強磁性層間に非磁性層が介在する。またフリー磁性層の中央部上に前記合金層が設けられていなくてもよい。このような構造の違いは製造方法に起因するものである。
【0043】
この実施形態では、前記第1磁性層の両側端部上には、合金層と第3反強磁性層とが積層されており、前記合金層と第3反強磁性層とが一体の反強磁性層のようになっている。従って前記第1磁性層の両側端部の磁化は前記合金層との間で発生する交換結合磁界によって強固にトラック幅方向に固定された状態になり、一方、フリー磁性層の中央部は外部磁界に対し磁化変動できる程度に弱く単磁区化された状態になっている。
【0044】
図37に示す従来の磁気検出素子では、フリー磁性層の両側端部が一部削られる構造であったが、本発明ではフリー磁性層上は第2反強磁性層で覆われているので、従来のような不具合が発生しない。
【0045】
本発明では、従来における磁気検出素子に比べてより効果的にフリー磁性層の磁化制御を行うことができる構造であり、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能である。
【0046】
また本発明では、前記第1磁性層の中央部上にも前記合金層が設けられていてもよい。これにより前記第1磁性層の上面全体が前記合金層で覆われた状態になり、前記第1磁性層をイオンミリングから適切に保護することができる。
【0047】
また本発明では、前記第1磁性層の中央部上にも前記合金層、および前記非磁性層が設けられていてもよい。
【0048】
なお本発明では、前記フリー磁性層の中央部と前記合金層の中央部間では交換結合磁界が発生せず、前記フリー磁性層の中央部の磁化がトラック幅方向に強固に固定されることが無い。一方、前記合金層の両側端部は、その上に形成された第3反強磁性層と合わせて一体の反強磁性層のようになるため、磁場中アニールによって前記合金層の両側端部は規則化変態し、前記合金層の両側端部と第1磁性層の両側端部間で適切な大きさの交換結合磁界が発生し、これによって、前記第1磁性層の両側端部はトラック幅方向に強固に固定された状態になる。
【0049】
本発明では、前記フリー磁性層の中央部上に形成された合金層の総合膜厚は50Å以下で形成され、または前記フリー磁性層の中央部上には合金層が設けられていないことが好ましい。
【0050】
前記フリー磁性層の中央部上に形成される合金層が50Å以下の膜厚であれば、前記反強磁性層とフリー磁性層の中央部間で交換結合磁界は発生しないか、発生してもその値は小さい。
【0051】
また本発明では、前記フリー磁性層の中央部上に形成された合金層の膜厚は、40Å以下で形成されることがより好ましい。
【0052】
また本発明では、前記第1磁性層の両側端部上に設けられた前記非磁性層の膜厚は、0.2Å以上で3Å以下であることが好ましい。この程度の薄い非磁性層の介在であれば、合金層と第3反強磁性層間で反強磁性的な相互作用が生じ、前記合金層と第3反強磁性層とが一体の反強磁性層のようになり、前記フリー磁性層の両側端部の磁化を適切にトラック幅方向に固定することが可能である。
【0053】
また本発明では、前記非磁性層は、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成されることが好ましい。これら貴金属は、酸化されにくい材質であると共に、これら貴金属元素が、アニール(熱処理)などによって反強磁性層の内部に拡散しても、反強磁性層の性質は劣化されない。従来使用されていたTa膜は、Ruなどに比べて酸化されやすく、また反強磁性層の内部に拡散すると、反強磁性層の性質(機能)が劣化しやすくなるので好ましくない。本発明ではTa膜に代えてRuなどの貴金属を使用することで、非磁性層の膜厚が薄くても十分な酸化防止効果を発揮するため、低エネルギーのイオンミリングを使用でき、効果的に狭トラック化に優れた磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0054】
また本発明では、前記第1磁性層は磁性層の3層構造で形成されることが好ましい。具体的には、前記第1磁性層は、CoFe/NiFe/CoFeの3層構造であることが好ましい。
【0055】
また本発明では、前記第3反強磁性層の上には電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に流れる形態であってもよい。
【0056】
このように電流が前記磁気検出素子の各層の膜面に対し平行な方向に流れる磁気検出素子を、CIP(current in the plane)型の磁気検出素子と呼んでいる。
【0057】
あるいは本発明では、前記多層膜の中央部上、および前記第3反強磁性層の上には上部電極層が設けられ、前記多層膜の下には下部電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れる形態であってもよく、このような磁気検出素子をCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子と呼んでいる。
【0058】
本発明では前記CPP型の磁気検出素子の場合、前記上部電極層は、磁性材料で形成された上部シールド層であることが好ましい。磁気検出素子の製造を容易化すると共に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0059】
また本発明では、前記第3反強磁性層と前記上部電極層との間には絶縁層が設けられていることが好ましい。
【0060】
あるいは本発明では、前記第3反強磁性層の上面には第1絶縁層が設けられ、この第1絶縁層と別体の第2絶縁層が前記第3反強磁性層の内側端面に設けられ、前記第3反強磁性層と前記上部電極層間には前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が介在していることが好ましい。これによって前記上部電極層から前記多層膜に流れる電流が前記第3反強磁性層に分流するのを適切に回避することができ再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い、高記録密度化に適した磁気検出素子を製造することができる。
【0061】
また本発明では前記CPP型の磁気検出素子である場合、前記下部電極層は磁性材料で形成された下部シールド層であることが好ましい。磁気検出素子の製造を容易化できると共に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0062】
また本発明では、前記下部電極層のトラック幅方向の中央には前記多層膜方向に突出した突出部が設けられ、この突出部の上面が前記多層膜の下面に接し、前記下部電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層膜との間には絶縁層が設けられることが好ましい。これによって前記下部電極層から前記多層膜に流れる電流がトラック幅から広がって流れ難く、前記電流の分流ロスを抑制し、再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0063】
また本発明では、前記突出部の上面と前記下部電極層の両側端部上に設けられた絶縁層の上面とは同一平面で形成されることが好ましい。
【0064】
また本発明では、前記非磁性材料層は非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性材料層が非磁性導電材料で形成された磁気検出素子を、スピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CIP−GMRあるいはCPP−GMR)と呼んでいる。
【0065】
また本発明では、前記非磁性材料層は絶縁材料で形成されてもよい。この磁気検出素子をスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果素子(CPP−TMR)と呼んでいる。
【0066】
本発明における磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
【0067】
以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
(a)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、合金層及び非磁性層の順に積層し、このとき前記合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
(b)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
(c)前記非磁性層の中央部上にレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記非磁性層の両側端部を削り、このとき前記非磁性層の両側端部を一部残す工程と、
(d)前記残された前記非磁性層の両側端部上に第3反強磁性層を形成し、前記レジスト層を除去する工程と、
(e)前記第3反強磁性層下に前記非磁性層を介して対向する前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程
【0068】
前記(a)工程では、基板上に連続して第1反強磁性層から非磁性層までを成膜している。前記(c)工程でレジスト層に覆われていない非磁性層の両側端部を除去するが、このとき前記非磁性層の両側端部の一部が残るようにミリング制御する。非磁性層の両側端部を一部残すことで、その下に形成された合金層をイオンミリングによるダメージから保護でき、また非磁性層の両側端部を薄く削り込むことで、前記非磁性層の両側端部上に形成される第3反強磁性層と合金層の両側端部とを一体の反強磁性層のようにでき、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記合金層の両側端部との間で発生する交換結合磁界によってトラック幅方向に適切に固定することができる。一方、フリー磁性層の中央部の磁化は、両側端部の磁化に比べてトラック幅方向に強固に固定されることはなく、外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く磁化されている。
【0069】
上記した発明であれば、従来のようにフリー磁性層までをイオンミリングで削り込むといったことが無く、第1磁性層の両側端部を強固に固定でき、中央部の磁化を外部磁界に対し磁化反転可能な程度に揃えることができ、従来に比べて前記フリー磁性層の磁化制御を適切に行うことが可能である。
【0070】
従って本発明では狭トラック化においても再生感度がよく再生特性に優れた磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0072】
また本発明では、前記(a)工程で、前記合金層をより好ましくは、30Å以上で40Å以下で形成する。
【0073】
本発明では前記合金層をあまり厚く形成してはいけない。前記合金層を厚く形成すると、磁場中アニールによって規則化しやすくなり、前記フリー磁性層の中央部と前記合金層の中央部間でも大きな交換結合磁界が発生しやすいからである。
【0074】
従って本発明では上記の程度に合金層の膜厚を抑え、前記合金層の中央部とフリー磁性層の中央部間で大きな交換結合磁界が発生するのを防止している。
【0075】
また本発明では、前記(a)工程で、前記非磁性層を3Å以上で10Å以下で形成することが好ましい。この程度の薄い膜厚であれば、非磁性層を前記(c)工程で低エネルギーのイオンミリングで削って容易に膜厚調整でき、前記非磁性層下の第2反強磁性層に前記イオンミリングにおけるダメージを与える心配がない。
【0076】
なお本発明では、前記(c)工程で、前記非磁性層の両側端部の膜厚が3Å以下となるまで、前記非磁性層の両側端部を削り込むことが好ましい。これによって前記(d)工程で形成される第3反強磁性層と前記合金層間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第3反強磁性層と合金層とを一体の反強磁性層のようにでき、第1磁性層の両側端部の磁化を適切にトラック幅方向に固定することが可能になる。またかかる場合、前記非磁性層下の第2反強磁性層に対する前記イオンミリングにおけるダメージは小さい。
【0077】
また本発明では、前記(a)工程における基板は下部電極層であり、前記(d)工程で、前記第3反強磁性層の上に絶縁層を形成し、前記(d)工程と(e)工程の間で、前記絶縁層上から前記非磁性層の中央部上にかけて上部電極層を形成してもよい。かかる場合、磁気検出素子はCPP型の磁気検出素子となり、また前記絶縁層が上部電極層と前記第3反強磁性層との間に介在することで、前記上部電極層から前記多層膜に流れる電流が前記第3反強磁性層に分流することを適切に防止することができ、再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い、高記録密度かに適した磁気検出素子を製造することが可能になる。
また本発明における磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、合金層及び非磁性層の順に積層し、このとき前記合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
(b)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
(c)´前記非磁性層の中央部上にレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない非磁性層の両側端部を全て削り、前記合金層の両側端部表面を露出させる工程と、
(d)´前記露出した合金層の両側端部上に第3反強磁性層を形成し、前記レジスト層を除去する工程と、
(e)前記第3反強磁性層下に前記非磁性層を介して対向する前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程。
【0078】
また本発明における磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
【0079】
(f)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、第1合金層及び非磁性層の順で積層し、このとき前記第1合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記第1合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
(g)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
(h)前記非磁性層表面を一部削る工程と、
(i)前記非磁性層上に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された第2合金層から成る第3反強磁性層を形成する工程と、
(j)前記第3反強磁性層の両側端部上に第1マスク層を形成し、前記第1磁性層の中央部上に位置する前記第1合金層と前記第2合金層との合計膜厚が50Å以下となるまで、前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を削る工程と、
(k)前記第1マスク層下に残された第3反強磁性層下に位置する前記第1合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層の両側端部と、第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程
【0080】
前記(f)工程では、基板上に連続して第1反強磁性層から非磁性層までを成膜している。前記(h)工程で非磁性層を一部残すことで、その下に形成された第1合金層をイオンミリングによるダメージから保護でき、また非磁性層を薄く削り込むことで、前記非磁性層上に形成される第3反強磁性層と前記非磁性層下の第1合金層間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第1合金層と第3反強磁性層とを一体の反強磁性層のようにすることができる。
【0081】
前記(j)工程では、マスク層に覆われていない中央部の前記第2合金層を削り込み、前記第1磁性層の両側端部上に、第2反強磁性層と第3反強磁性層からなる膜厚の厚い反強磁性層を残し、これによって前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記第2反強磁性層との間で発生する交換結合磁界によってトラック幅方向に適切に固定することができる。一方、第1磁性層の中央部の磁化は、トラック幅方向に強固に固定されることはなく、外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く磁化されている。
【0082】
上記した発明であれば、従来のようにフリー磁性層までをイオンミリングで削り込むといったことが無く、第1磁性層の両側端部に十分な縦バイアス磁界を供給でき、前記フリー磁性層の磁化制御を適切に行うことが可能である。
【0083】
従って本発明では狭トラック化においても再生感度がよく再生特性に優れた磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0084】
また本発明では、前記(f)工程で、前記第第1合金層を、より好ましくは30Å以上で40Å以下で形成するこれによって磁場中アニールによっても前記第1合金層の中央部は規則化変態しにくく、前記第1合金層の中央部とフリー磁性層の中央部間で交換結合磁界が発生するのを適切に抑制することができ、前記フリー磁性層の中央部の磁化を外部磁界に対し適切に磁化反転できる程度に弱く単磁区化することができる。
【0085】
また本発明では、前記(f)工程で、前記非磁性層を3Å以上で10Å以下で形成することが好ましい。この程度の薄い膜厚であれば、非磁性層を前記(h)工程で低エネルギーのイオンミリングで削って容易に膜厚調整でき、前記非磁性層下の第2反強磁性層に前記イオンミリングにおけるダメージを与える心配がない。
【0086】
また本発明では、前記(h)工程で、前記非磁性層を0.2Å以上で3Å以下残すことが好ましい。これによって第1磁性層の両側端部上に残される第3反強磁性層と前記第1合金層間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第3反強磁性層と第1合金層とを一体の反強磁性層のようにでき、フリー磁性層の両側端部の磁化を適切にトラック幅方向に固定することが可能になる。
【0087】
また本発明では、前記(j)工程で、前記マスク層に覆われていない第2合金層を全て除去して、前記非磁性層表面を露出させてもよい。
【0088】
また本発明では、前記(j)工程で、前記マスク層に覆われていない前記第2合金層を全て除去し、さらに露出した前記非磁性層も除去して、第1合金層表面を露出させてもよい。
【0089】
また本発明では、前記(k)工程における第2の磁場中アニールを、(i)工程と(j)工程の間で行ってもよい。
【0090】
また本発明では、前記(f)工程での基板は下部電極層であり、
前記(i)工程で前記第3反強磁性層の上に第1絶縁層を形成し、
前記(j)工程で前記第1絶縁層の両側端部上に前記第1マスク層を形成し、前記第1マスク層に覆われていない前記第1絶縁層、および第2合金層の中央部を削り、
前記(j)工程後、前記第1絶縁層上、前記第3反強磁性層の内側端面上、および前記第3反強磁性層間の中央部上にかけて第2絶縁層を形成し、次に前記第3反強磁性層の内側端面上に形成された第2絶縁層を一部残し、それ以外の第2絶縁層を削って除去し、
前記第1絶縁層上から、第2絶縁層上及び前記中央部上にかけて上部電極層を形成してもよい。かかる場合、磁気検出素子はCPP型の磁気検出素子となり、また前記第1絶縁層と第2絶縁層とが上部電極層と前記第3反強磁性層との間に介在することで、前記上部電極層から前記多層膜に流れる電流が前記第3反強磁性層に分流することを適切に防止することができ、再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い、高記録密度化に適した磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0091】
また本発明では、前記(f)工程での基板は下部電極層であり、
前記(j)工程で第1絶縁層からなる前記第1マスク層を形成し、第1絶縁層からなる前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を削り、
前記(j)工程後、第1絶縁層からなる前記第1マスク層上、前記第3反強磁性層の内側端面上、および前記第3反強磁性層間の中央部上にかけて第2絶縁層を形成し、次に前記第3反強磁性層の内側端面上に形成された第2絶縁層を一部残し、それ以外の第2絶縁層を削って除去し、
第1絶縁層からなる前記第1マスク層上から、第2絶縁層上及び前記中央部上にかけて上部電極層を形成してもよい。
【0092】
また本発明では前記第2絶縁層の形成の際の成膜角度を、下部電極層の表面の垂直方向に対し斜めに傾いた角度θ1とし、前記第2絶縁層を削る際の入射角度を、前記角度θ1よりも小さい角度θ2として、前記垂直方向あるいは前記垂直方向によりに近い方向から前記第2絶縁層を削り取ることが好ましい。これにより前記第1合金層を前記第3反強磁性層の内側端面上に一部残しやすく、一方、前記第3反強磁性層間の中央部上に形成された第2絶縁層などを適切に削って除去しやすく、電流が適切に上部電極層から多層膜内に流れ、且つ前記電流が前記第3反強磁性層に分流しないCPP型の磁気検出素子を容易に製造することが可能になる。
【0093】
また本発明では、前記下部電極層の両側端部を削り込んで、その両側端部上に絶縁層を形成し、前記第1反強磁性層を、前記下部電極層の中央部に形成された突出部上、および絶縁層上に形成してもよい。
また本発明では、前記下部電極層及び上部電極層を磁性材料で形成してもよい。
【0094】
また本発明では、前記非磁性層を、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成することが好ましい。これら貴金属は、酸化されにくい材質であり、Ta膜のように酸化によって膜厚が大きくなるとったことがなく、また前記貴金属元素がアニールなどによって反強磁性層の内部に拡散しても、反強磁性層の性質が劣化することがない。従来使用されていたTa膜は、Ruなどに比べて反強磁性層の内部に拡散すると、反強磁性層の性質(機能)を劣化させやすいので好ましくない。本発明ではTa膜に代えてRuなどの貴金属を使用することで、低エネルギーのイオンミリングによってRuなどで形成された非磁性層の膜厚調整を行うことができ、前記非磁性層の下に形成された第2反強磁性層を前記イオンミリングによるダメージから適切に保護できると共に、非磁性層を介して、第1磁性層の両側端部上における第1合金層と第3反強磁性層を一体の反強磁性層のように機能させることができ、前記第1磁性層の両側端部の磁化をより効果的にトラック幅方向に固定することが可能である。
【0095】
また本発明では、前記(a)工程、あるいは前記(f)工程で、前記フリー磁性層を磁性層の3層構造で形成することが好ましい。具体的には、前記フリー磁性層をCoFe/NiFe/CoFeの3層構造で形成することが好ましい。
【0096】
【発明の実施の形態】
図1は本発明における磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0097】
符号20は基板である。前記基板20上には、NiFe合金、NiFeCr合金あるいはCrなどで形成されたシードレイヤ21が形成されている。前記シードレイヤ21は、例えば(Ni0.8Fe0.260at%Cr40at%の膜厚60Åで形成される。
【0098】
前記シードレイヤ21の上には第1反強磁性層22が形成されている。第1反強磁性層22は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。
【0099】
第1反強磁性層22として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1反強磁性層22及び固定磁性層23の交換結合膜を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1反強磁性層22及び固定磁性層23の交換結合膜を得ることができる。
【0100】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0101】
第1反強磁性層22の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0102】
前記第1反強磁性層22の上には、固定磁性層23が形成されている。前記固定磁性層23は人工フェリ構造である。前記固定磁性層23は磁性層24、26とその間に介在する非磁性中間層25の3層構造である。
【0103】
前記磁性層24、26は、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などの磁性材料で形成される。前記磁性層24と磁性層26は、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0104】
また、非磁性中間層25は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0105】
前記固定磁性層23の上には、非磁性材料層27が形成されている。非磁性材料層27は、固定磁性層23とフリー磁性層28との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0106】
前記非磁性材料層27の上にはフリー磁性層28が形成されている。図1に示す実施形態では前記フリー磁性層28は2層構造である。符号29の層は、CoやCoFeなどからなる拡散防止層である。この拡散防止層29はフリー磁性層28と非磁性材料層27の相互拡散を防止する。そして、この拡散防止層29の上にNiFe合金などで形成された磁性材料層30が形成されている。
【0107】
前記フリー磁性層28の上には第2反強磁性層31が形成される。第2反強磁性層31は、第1反強磁性層22と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。
【0108】
図1に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31の上に、非磁性層32が形成される。さらに前記非磁性層32の両側端部32a上には、第3反強磁性層33が形成される。前記第3反強磁性層33は、第1反強磁性層22と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。前記第3反強磁性層33は前記第2反強磁性層31と同じ材質で形成されていることが好ましい。
【0109】
そして前記第3反強磁性層33上には電極層34が形成される。前記電極層34は、例えば、Au、W、Cr、Ru、Taなどで形成される。
【0110】
図1に示す実施形態では、前記第3反強磁性層33の内側端部33a及び電極層34の内側端部34aは、下面から上面に向う(図示Z方向)にしたがって、徐々に前記第3反強磁性層33間の間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。このような形状は図2及び図3も同じである。
【0111】
図1に示す実施形態の磁気検出素子の特徴的部分について以下に説明する。
図1に示すように、前記フリー磁性層28上には第2反強磁性層31が形成され、この第2反強磁性層31の両側端部C、C上には非磁性層32を介して第3反強磁性層33が形成されている。前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33との間に介在する非磁性層32の両側端部32aの膜厚は薄く、本発明では3Å以下で形成されることが好ましい。
【0112】
前記非磁性層32が上記の程度に薄く形成されると、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間に前記非磁性層32を介して反強磁性的な相互作用が働き、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33とが一体の反強磁性層のように機能しやすくなる。
【0113】
従って図1に示す実施形態は、前記フリー磁性層28の両側端部C、C上に反強磁性の性質を有する膜厚の厚い反強磁性層が形成されている形態と類似構成となっており、前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化は、第2反強磁性層31の両側端部Cとの間で発生する交換結合磁界によってトラック幅方向(図示X方向)に適切に固定される。
【0114】
図1に示す実施形態では、フリー磁性層28の中央部D上にも第2反強磁性層31が形成されている。しかし前記中央部D上には第3反強磁性層33は設けられていない。
【0115】
本発明では、前記第2反強磁性層31の中央部Dが、反強磁性の性質を失う(非反強磁性または非磁性)ように、成膜段階で前記第2反強磁性層31の膜厚h1を適切に調整している。
【0116】
本発明では、前記第2反強磁性層31の膜厚h1は20Å以上で50Å以下であることが好ましい。より好ましくは30Å以上で40Å以下である。この程度に薄い膜厚で形成されると、前記第2反強磁性層31の中央部Dは、磁場中アニールによっても規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31の中央部Dと前記フリー磁性層28の中央部Dとの間で交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さい。
【0117】
また第2反強磁性層31の膜厚を20Å以上、好ましくは30Å以上としたのは、前記第2反強磁性層31が薄すぎると、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で発生する交換結合磁界が弱まり、前記フリー磁性層28の両側端部Cを適切にトラック幅方向に磁化固定できない虞があるからである。
【0118】
上記したように、第2反強磁性層31の両側端部Cは、その上に非磁性層32を介して形成された第3反強磁性層33との間で反強磁性的な相互作用が働き、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33とが一体の反強磁性層のように機能する。しかし物理的には完全に一体化するわけではないので、第2反強磁性層31の膜厚が薄いとこの第2反強磁性層31の規則化変態は弱く、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で生じる交換結合磁界が弱くなる。このため、前記第2反強磁性層31を20Å以上、好ましくは30Å以上と設定した。
【0119】
また前記第2反強磁性層31の膜厚を20Å以上で50Å以下、より好ましくは30Å以上で40Å以下に設定することで、中央部Dでのシャントロスを低減でき再生出力を大きくできる。
【0120】
なお前記第2反強磁性層31の両側端部Cの膜厚と第3反強磁性層33の膜厚を合わせた総合膜厚は80Å以上で300Å以下であることが好ましい。これによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは適切に反強磁性の性質を有し、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記フリー磁性層28の両側端部Cとの間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部Cをトラック幅方向に磁化固定することが可能になる。
【0121】
次に非磁性層32について説明する。前記非磁性層32は、後述する製造方法で説明するように、大気暴露によって第2反強磁性層31が酸化されるのを防止するために設けられた保護層的役割を有している。
【0122】
しかし前記非磁性層32はTa膜に比べて大気暴露によって酸化しにくい材質であることが好ましい。次に前記非磁性層32を構成する元素が、成膜段階や、あるいは固定磁性層23やフリー磁性層28の磁化方向を調整するための磁場中アニールによって第2反強磁性層31や第3反強磁性層33に拡散しても、反強磁性層としての性質が劣化しない材質であることが好ましい。
【0123】
本発明では、前記非磁性層32は、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成されることが好ましい。この中でも特にRuを選択することが好ましい。これら貴金属で形成された非磁性層32は大気暴露によっても酸化されにくい材質である。従ってTa膜のように大気暴露による酸化によって膜厚が大きくなるといった現象も生じない。
【0124】
またこれら貴金属で形成された非磁性層32を構成する元素が、前記第2反強磁性層31や第3反強磁性層33中に拡散しても、反強磁性層の性質は劣化しない。
【0125】
前記非磁性層32を構成する元素が前記第2反強磁性層31や第3反強磁性層33中に拡散しているか否かは、例えばSIMS分析装置などによって測定できる。拡散領域では、例えば成膜段階で第2反強磁性層31がPtMn合金で形成され、非磁性層32がRuで形成されていると、磁場中アニールなどでRu−Pt−Mnなる合金の拡散層が形成される。Ru−Pt−Mn合金は適切に反強磁性層として機能する。
【0126】
次に前記非磁性層32の膜厚について以下に説明する。前記非磁性層32の膜厚は成膜時、3Å以上で10Å以下の薄い膜厚で形成される。上記したRuなどからなる非磁性層32は、大気暴露によっても酸化されにくい緻密な層であるため、薄い膜厚であっても適切に第2反強磁性層31を大気暴露による酸化から防止することが可能である。
【0127】
成膜時の膜厚は、前記非磁性層32の中央部32bにそのまま残される。前記中央部32bは後述する製造方法で説明するようにイオンミリングの影響を受けないからである。
【0128】
一方、前記非磁性層32の両側端部32aはイオンミリングの影響で削られ、前記両側端部32aの膜厚は、前記非磁性層32の中央部32bの膜厚よりも薄くなっている。前記両側端部32aの膜厚を、前記中央部32bの膜厚よりも薄くする理由は、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと、その上に非磁性層32を介して形成される第3反強磁性層33間で適切に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第3反強磁性層33と第2反強磁性層31の両側端部Cとを一体の反強磁性層のように機能させるためである。前記非磁性層32の膜厚が厚く形成されると、Ruなどの非磁性物質の濃度が拡散によって適度に薄まることなく、アニール後も厚い非磁性層32が残ってしまうので、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用が生じなくなり、上記したように第2反強磁性層31単独では、フリー磁性層28との間で交換結合磁界が発生しないほど薄く形成されているから、前記フリー磁性層28の両側端部Cを適切に磁化固定できなくなるといった不具合が発生する。
【0129】
前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚は既に説明したように3Å以下であることが好ましい。この程度にまで前記非磁性層32を薄くすることで、第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33とを一体の反強磁性層のように機能させることが可能になる。
【0130】
また非磁性層32の両側端部32aが一部残されることで、前記第2反強磁性層31がイオンミリングのダメージを受けることがなく、前記第2反強磁性層31の磁気特性を劣化させるといった問題が生じない。
【0131】
また図1のように非磁性層32の両側端部32aを3Å以下の非常に薄い膜厚で残すことができるのは、低エネルギーのイオンミリングを使用できるからである。元々、前記非磁性層32は成膜段階で3Å〜10Åと薄い膜厚で形成されている。このため低エネルギーのイオンミリングであっても十分に前記非磁性層32の膜厚調整をすることができ、低エネルギーであるからミリングレートは、高エネルギーの場合に比べて遅く、非磁性層32の途中まで削った段階でミリングを止めるように制御することも比較的簡単に行える。
【0132】
図1に示す実施形態では、第3反強磁性層33の下面間のトラック幅方向(図示X方向)における間隔がトラック幅Twとして設定される。前記トラック幅Twは0.2μm以下で形成されることが好ましい。
【0133】
図1に示す実施形態では、前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化はトラック幅方向(図示X方向)に適切に固定され、一方、前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態になっている。前記フリー磁性層28の中央部Dのトラック幅方向における幅とトラック幅Twはほぼ同程度であり、従ってトラック幅Tw領域のフリー磁性層28の磁化が適切に外部磁界に対し磁化反転可能な領域となっている。
【0134】
図1に示す実施形態では、フリー磁性層28上に第2反強磁性層31が形成され、イオンミリングで削られる層は非磁性層32である。従って図1では、従来のようにフリー磁性層28がイオンミリングなどで削られるといったことがなく、フリー磁性層28がイオンミリングによるダメージによって磁気特性が劣化するといった問題は発生しない。
【0135】
本発明では、前記フリー磁性層28上に第2反強磁性層31を形成し、前記第2反強磁性層31の両側端部C上に非磁性層32を介して第3反強磁性層33を重ねあわせる構成とすることで、狭トラック化においても適切にフリー磁性層28の磁化制御を行うことができ、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0136】
図2は第2形態(参考例)の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0137】
図2に示す磁気検出素子は図1に示す磁気検出素子の構造と異なって、非磁性層32が、第3反強磁性層33間にのみ設けられており(すなわちトラック幅Twの間隔内にのみ設けられており)、前記第3反強磁性層33と第2反強磁性層31の両側端部C間には設けられていない。
【0138】
図2に示す非磁性層32は、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成されることが好ましく、これら貴金属で形成された前記非磁性層32は大気暴露によっても酸化されにくい材質である。Ruなどで形成された前記非磁性層32は、薄い膜厚であっても適切に第2反強磁性層31を大気暴露による酸化から防止でき、本発明では前記非磁性層32は、成膜段階で3Å以上で10Å以下の薄い膜厚で形成されることが好ましい。
【0139】
後述する製造方法で説明するように、前記第2反強磁性層31上全面に形成された前記非磁性層32の両側端部はイオンミリングで削られ、露出した前記第2反強磁性層31の両側端部C上に第3反強磁性層が積層されるが、前記非磁性層32は3Å〜10Å程度の薄い膜厚であるため、低エネルギーのイオンミリングでも前記非磁性層32を適切に除去でき、高エネルギーの場合に比べて前記第2反強磁性層31が削られないようにミリング制御しやすい。このため前記非磁性層32下の第2反強磁性層31にイオンミリングによるダメージを与えることが少ない。
【0140】
このように図2に示す第2反強磁性層31の両側端部C表面にはイオンミリングによるダメージが少なく、前記第2反強磁性層31の磁気特性は良好に保たれている。
【0141】
図2に示す形態においても、図1に示す磁気検出素子と同様に、第2反強磁性層31は、好ましくは20Å以上で50Å以下の薄い膜厚で形成されており、前記第2反強磁性層31の中央部Dは非反強磁性の性質を有し、前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部D間で交換結合磁界は発生せずあるいは発生してもその値は小さく、したがって前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化はトラック幅方向(図示X方向)に適切に揃えられ、外部磁界に対し磁化反転できるようになっている。
【0142】
一方、前記フリー磁性層28の両側端部C上には第2反強磁性層31とこの第2反強磁性層31と直接接して第3反強磁性層33が形成されており、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間で生じる反強磁性的な相互作用によって、前記第2反強磁性層31は反強磁性の性質を帯びている。従って磁場中アニールを施すと、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記フリー磁性層28の両側端部C間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部Cはトラック幅方向(図示X方向)に強固に固定された状態となっている。
【0143】
図2に示す形態では、フリー磁性層28上に第2反強磁性層31が形成され、イオンミリングで削られる層は非磁性層32である。従って図2では、従来のようにフリー磁性層28がイオンミリングなどで削られるといったことがなく、フリー磁性層28がイオンミリングによるダメージによって磁気特性が劣化するといった問題は発生しない。
【0144】
図2に示す磁気検出素子の構造では、狭トラック化においても適切にフリー磁性層28の磁化制御を行うことができ、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0145】
なお図2に示すように前記第2反強磁性層31の両側端部C表面が点線Eのように若干削られ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cの膜厚が前記第2反強磁性層31の中央部Dの膜厚より薄くなっていても、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは低エネルギーのイオンミリングで削られるため、高エネルギーの場合に比べて前記両側端部Cのダメージは小さく、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは反強磁性の性質を帯び、前記フリー磁性層28の両側端部Cとの間で、前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化を強固に固定できる程度の交換結合磁界を発生させることができるものと考えられる。
【0146】
図3は本発明における第3実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0147】
図3は図1と異なって、第2反強磁性層31上には一定の膜厚を有する非磁性層32が形成されている。すなわち前記非磁性層32の中央部32b及び両側端部32aも同じ膜厚で形成されている。前記非磁性層32の膜厚は1Å以上で3Å以下の薄い膜厚で形成されることが好ましい。
【0148】
前記非磁性層32の膜厚が1Åよりも小さいと、第2反強磁性層31を大気暴露による酸化から守る保護層としての役割が低減し好ましくない。
【0149】
一方、前記非磁性層32の膜厚が3Åよりも厚くなると、Ruなどの非磁性物質の濃度が拡散によって適度に薄まることなく、アニール後も厚い非磁性層32が残ってしまうので、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用が働きにくくなり、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33とが一体の反強磁性層のように機能しにくくなる。かかる場合、前記第2反強磁性層31はフリー磁性層28との間で交換結合磁界が発生しない程度の薄い膜厚で形成されているから、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは、適切に規則化変態せず、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の両側端部Cがトラック幅方向(図示X方向)に強固に固定されない。
【0150】
従って本発明では前記非磁性層32の膜厚を1Å以上3Å以下の範囲内に設定している。
【0151】
図3に示す実施形態においても、図1に示す磁気検出素子と同様に、第2反強磁性層31は、好ましくは20Å以上で50Å以下の薄い膜厚で形成されており、前記第2反強磁性層31の中央部Dは非反強磁性(あるいは非磁性)の性質を有し、前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部D間で交換結合磁界は発生せずあるいは発生してもその値は小さく、したがって前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度にトラック幅方向(図示X方向)に揃えられた状態になっている。
【0152】
一方、前記フリー磁性層28の両側端部C上には第2反強磁性層31と、前記第2反強磁性層31上に非磁性層32を介して第3反強磁性層33が形成されており、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間には反強磁性的な相互作用が働き、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは反強磁性の性質を帯びている。従って磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記フリー磁性層28の両側端部C間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部Cはトラック幅方向(図示X方向)に強固に固定された状態となっている。
【0153】
図3に示す実施形態では、従来のようにフリー磁性層28がイオンミリングなどで削られるといったことはなく、フリー磁性層28がイオンミリングによるダメージによって磁気特性が劣化するといった問題は発生しない。
【0154】
図3に示す磁気検出素子の構造では、狭トラック化においても適切にフリー磁性層28の磁化制御を行うことができ、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0155】
図4は本発明における第4実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0156】
図4では、基板20上にシードレイヤ21、第1反強磁性層22、固定磁性層23、非磁性材料層27、フリー磁性層28、第2反強磁性層31及び非磁性層32が積層形成されている。各層の材質は図1で説明したものと同じである。
【0157】
図4に示す実施形態では、前記非磁性層32の両側端部32a上に第3反強磁性層33が形成されている。さらに前記第3反強磁性層33上にはTaなどで形成された中間層35を介して電極層34が形成されている。
【0158】
図4に示す実施形態では前記第3反強磁性層33間の下面の間隔でトラック幅Twが規定される。前記トラック幅Twは0.2μm以下で形成されることが好ましい。
【0159】
図4に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31の全面に非磁性層32が形成されており、前記非磁性層32の膜厚は薄く形成される。前記非磁性層32は大気暴露によっても酸化されにくい材質であることが好ましく、さらに前記非磁性層32を構成する元素が、第2反強磁性層31や第3反強磁性層33に拡散しても反強磁性層としての性質を劣化しない材質であることが好ましい。具体的には前記非磁性層32は、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上の貴金属で形成され、前記非磁性層32は0.2Å以上で3Å以下で形成されることが好ましい。なおここでいう「0.2Å」の膜厚は前記非磁性層32全体の平均値である。0.2Åは、原子層の厚みよりも薄いことから、非磁性層32の原子が存在している場所と、存在していない場所とが島状に分布する。このため0.2Åの膜厚は非磁性層32全体の平均値である。
【0160】
この程度に薄く形成された非磁性層32であれば、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記第3反強磁性層33間に前記非磁性層32が介在しても、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用が生じ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性としての性質を帯びる。従って磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記フリー磁性層28の両側端部Cとの間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部28はトラック幅方向(図示X方向)に強く固定された状態になっている。
【0161】
一方、前記フリー磁性層28の中央部D上には前記第2反強磁性層31が形成されているものの、前記第2反強磁性層31は単独では反強磁性の性質を帯びない程度に薄く形成されており、本発明では前記第2反強磁性層31の膜厚は、20Å以上で50Å以下であることが好ましく、より好ましくは30Å以上で40Å以下である。
【0162】
このため磁場中アニールによっても前記第2反強磁性層31の中央部Dは規則化変態しにくく、前記フリー磁性層28の中央部Dと第2反強磁性層31の中央部D間には交換結合磁界が発生せず発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態になっている。
【0163】
また前記非磁性層32は上記したようにRuなどの貴金属で形成されるが、前記非磁性層32を構成する材質が、フリー磁性層28や固定磁性層23の磁化制御を行うときの磁場中アニールなどによって第2反強磁性層31や第3反強磁性層33に拡散することがある。すなわち例えば第2反強磁性層31や第3反強磁性層33がPtMn合金で形成され、非磁性層32がRuで形成されているとき、熱拡散によって前記第2反強磁性層31の特に表面近くや第3反強磁性層33の下面近くはRu−Pt−Mnからなる反強磁性層となる。
【0164】
この貴金属を含んだRu−Pt−Mnからなる材質は反強磁性として機能するため、非磁性層32が第2反強磁性層31や第3反強磁性層33に拡散することは、反強磁性の性質を劣化させるものではなく、非磁性層32の反強磁性層31、33への熱拡散によっても前記第2反強磁性層31や第3反強磁性層33は反強磁性層として適切に機能するものである。
【0165】
図4に示す実施形態は、図1ないし図3に示す実施形態と異なって、第3反強磁性層33の内側端部33aは、基板20表面に対して垂直方向(図示Z方向)に延びて形成されている。このような形状の違いは、後述するように製造方法の違いに起因するものである。
【0166】
なお図4においても図1ないし3と同様に、前記第3反強磁性層33の内側端部33aを、第3反強磁性層33間の間隔が下面から上面に向うにしたがって徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成することもできる。
【0167】
図1ないし図3に示す磁気検出素子は、同じ製造工程を用いて製造されたものであり、一方、図4ないし図6に示す磁気検出素子は、図1ないし図3とは異なる製造方法で形成された構造である。図1ないし図3に示す磁気検出素子の構造で共通する部分は、必ず第3反強磁性層33間の間隔内に非磁性層32の中央部32bが残ることである。一方、図4ないし図6に示す磁気検出素子の構造で共通する部分は、必ず、第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間に非磁性層32が残ることである。
【0168】
以下、図4と同じ製造方法を用いて形成された他の実施形態の磁気検出素子の構造について説明する。
【0169】
図5は、本発明における第5実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0170】
図5に示す磁気検出素子の構造は図4と異なって、非磁性層32の中央部32b上にも一部、第3反強磁性層33が形成されている。
【0171】
図5に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間が、0.2Å(平均値)〜3Å程度の薄い膜厚の非磁性層32を介して反強磁性的な相互作用により一体の反強磁性層のようになり、前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性の性質を帯びている。従って磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部Cはトラック幅方向(図示X方向)に強固に固定された状態となっている。
【0172】
この実施形態では、前記第2反強磁性層31の中央部D上にも第3反強磁性層33が、その両側に比べて薄い膜厚であるが形成されている。
【0173】
したがって前記第2反強磁性層31の中央部Dの膜厚h2とその上に形成された第3反強磁性層33の膜厚h3とを足した総合膜厚が薄く形成されないと、前記第2反強磁性層31は、前記第3反強磁性層33との間で反強磁性的な相互作用によって反強磁性の性質を帯びてしまい、前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部Dとの間で交換結合磁界が発生してしまい好ましくない。
【0174】
本発明では前記総合膜厚は20Å以上で50Å以下で形成されることが好ましく、より好ましくは30Å以上で40Å以下である。ただし前記第2反強磁性層31の膜厚は少なくとも20Å以上であることが好ましく、より好ましくは30Åである。前記第2反強磁性層31の膜厚が20Å以上ないと、前記第2反強磁性層31の両側端部Cはその上に第3反強磁性層33が形成されても反強磁性の性質が弱く、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で大きな交換結合磁界が発生せず、前記フリー磁性層28の両側端部Cをトラック幅方向に強固に固定できないからである。
【0175】
上記程度に前記第2反強磁性層31の中央部Dの膜厚h2とその上に形成された第3反強磁性層33の膜厚h3との総合膜厚が薄く形成されると、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の中央部Dは規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31と第3反強磁性層33間には反強磁性的な相互作用は生じ難く、前記第2反強磁性層31は反強磁性の性質を帯びにくい。このため前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部Dとの間で交換結合磁界は発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化が、その両側の両側端部Cの磁化のように強固に固定されるといったことが無い。
【0176】
図5に示す実施形態では、前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態になっており、狭トラック化においても再生感度に優れた磁気検出素子の構造となっている。
【0177】
図6は本発明における第6実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0178】
図6に示す磁気検出素子の構造は図4と異なって、第3反強磁性層33間の間隔内に露出した非磁性層32は除去され、さらに前記非磁性層32下の第2反強磁性層31の表面の一部も除去されている。
【0179】
図6に示す実施形態では、第2反強磁性層31の両側端部C上に、Ruなどで形成された0.2Å〜3Å程度の薄い膜厚の非磁性層32を介して第3反強磁性層33が形成され、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記第3反強磁性層33とを足した総合膜厚は80Å以上で300Å以下の厚い膜厚となっていることが好ましい。
【0180】
したがって、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記第3反強磁性層33間には非磁性層32を介して反強磁性的な相互作用が生じ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33とが一体の反強磁性層のように機能している。よって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは反強磁性的な性質を有し、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の両側端部Cはトラック幅方向(図示X方向)に強固に固定された状態になっている。
【0181】
一方、前記フリー磁性層28の中央部D上にも前記第2反強磁性層31が形成されているが、前記第2反強磁性層31の中央部Dの膜厚は薄く5Å以上で50Å以下、好ましくは10Å以上で40Å以下である。この程度の薄い膜厚であれば、前記第2反強磁性層31の中央部Dは、反強磁性の性質を帯びず、磁場中アニールによっても前記第2反強磁性層31の中央部Dは規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部D間に交換結合磁界が発生しないかあるいは発生してもその値は小さい。従って前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態となっており、狭トラック化においても再生感度に優れた磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0182】
また図6の点線Fに示すように、前記第2反強磁性層31の中央部Dを完全に除去して、フリー磁性層28の中央部D表面を露出させてもよいが、かかる場合、露出したフリー磁性層28の中央部D表面がイオンミリングやRIEのダメージを受けやすくなるので、前記フリー磁性層28の中央部D上には若干でも第2反強磁性層31を残しておく方が好ましい。
【0183】
また図6に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31の中央部Dをイオンミリングで削っているため、前記第2反強磁性層31の中央部Dはイオンミリングによるダメージを受けて磁気特性の劣化を招きやすくなるが、前記第2反強磁性層31の中央部Dは反強磁性を帯びない程度に薄く形成され、実質的に磁気的作用がフリー磁性層28等の各層に及ばない領域となっている。このため前記第2反強磁性層31の中央部Dがイオンミリングによるダメージを受けても再生特性にさほどの影響はないものと考えられる。
【0184】
ところで図1ないし図6に示す磁気検出素子は、基板20から第2反強磁性層31までの多層膜の両側端部上に第3反強磁性層33を介して電極層34が設けられ、前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜内を各層の膜面に対して平行な方向に流れるCIP(current in the plane)型の磁気検出素子と呼ばれる構造である。
【0185】
一方、図7に示す磁気検出素子は、多層膜(シードレイヤ21から第2反強磁性層31まで)の上下に電極層65、68が設けられ、前記電極層65、68から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型と呼ばれる構造であり、本発明は、前記CPP型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0186】
なお多層膜の積層構造は、図1と同じであるので説明を省略する。なお図7に示すシードレイヤ21は設けられていなくてもよい。
【0187】
図7に示す実施形態では、前記シードレイヤ21の下には下部電極を兼ねた下部シールド層65が設けられている。前記下部シールド層65はパーマロイ(NiFe)などの磁性材料でメッキ形成されたものである。
【0188】
また図7に示すように前記多層膜のトラック幅方向(図示X方向)の両側端部C上には非磁性層32を介して第3反強磁性層33が形成され、さらに前記第3反強磁性層33の上面33b及び内側端部33a上に絶縁層67が形成されている。
【0189】
図7に示すように前記絶縁層67上から非磁性層32の中央部32b上にかけて上部電極を兼ねた上部シールド層68が設けられている。
【0190】
このように図7に示す磁気検出素子では多層膜の上下に電極を兼ねたシールド層65、68が設けられ、前記シールド層65、68間に流れる電流は、前記多層膜内を膜面に対し垂直な方向に流れるようになっている。
【0191】
図7に示す磁気検出素子では、前記第3反強磁性層33の上面33b及び内側端部33aが絶縁層67によって覆われているので、前記上部シールド層68から前記多層膜内に流れる電流が、前記第3反強磁性層33に分流せず、前記電流は多層膜内を適切に流れる。よって図7に示す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅Twから広がるのを抑制でき再生出力の大きいCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0192】
前記絶縁層67の内側先端部67aは、図7に示す一点鎖線で示すように、非磁性層32の中央部32bの両端部上にまで延びて形成されていることが、より電流の前記第3反強磁性層33への分流を抑制できて好ましい。
【0193】
また必要であれば、前記絶縁層67上から前記非磁性層32の中央部32b上にかけて非磁性層69(点線)が形成されていてもよい。前記非磁性層69は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性層69は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、前記非磁性層69は前記多層膜の中央部D上にも形成されるため、電流経路の出入口となる前記多層膜の中央部D上を例えば絶縁材料からなる非磁性層69で覆うことは前記電流が磁気検出素子内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では前記非磁性層69を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0194】
また図7に示す磁気検出素子では磁気検出素子を構成する非磁性材料層27がCuなどの非磁性導電材料で形成されてもよいし、あるいは前記非磁性材料層27がAl23やSiO2などの絶縁材料で形成されてもよい。前者の磁気検出素子はスピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼ばれる構造であり、後者の磁気検出素子はスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼ばれる構造である。
【0195】
トンネル型磁気抵抗効果型素子は、スピントンネル効果を利用して抵抗変化を生じさせるものであり、固定磁性層23とフリー磁性層28との磁化が反平行のとき、最も前記非磁性材料層27を介してトンネル電流が流れにくくなって、抵抗値は最大になり、一方、前記固定磁性層23とフリー磁性層28との磁化が平行のとき、最もトンネル電流は流れ易くなり抵抗値は最小になる。
【0196】
この原理を利用し、外部磁界の影響を受けてフリー磁性層28の磁化が変動することにより、変化する電気抵抗を電圧変化(定電流動作時)あるいは電流変化(定電圧動作時)としてとらえ、記録媒体からの洩れ磁界が検出されるようになっている。
【0197】
図8は、図2に示す磁気検出素子を図7と同様にCPP型の磁気検出素子にした形態、図9は、図3に示す磁気検出素子を図7と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。
【0198】
図10は、図4に示す磁気検出素子を図7と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。図10に示す磁気検出素子は図7と異なり、第3反強磁性層33の上面33bに第1絶縁層70が形成され、この第1絶縁層70と別体の第2絶縁層71が前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成されている。このような違いは後述するように製造方法の違いによるものである。
【0199】
前記第1絶縁層70及び第2絶縁層71の機能は、図7に示した絶縁層67と同じで、前記上部シールド層68から多層膜に流れる電流が前記第3反強磁性層33に分流するのを適切に防止する役割を有している。
【0200】
前記第1絶縁層70及び第2絶縁層71は、例えばAl23、SiO2、AlN、Al−Si−O−N、Al−Si−O、Ti23、Ti35などの絶縁材料で形成される。
【0201】
なお図10に示す実施形態では、前記第3反強磁性層33の内側端部33aは、トラック幅方向(図示X方向)に対して垂直面となっているが、前記フリー磁性層28から離れるに従って徐々に前記第3反強磁性層33間の間隔が、トラック幅方向へ広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されていてもよい。
【0202】
このように前記内側端面33aを傾斜面や湾曲面で形成すると、前記内側端面33a上に適切な膜厚を有する第2絶縁層71を形成しやすくなり、分流ロスの低減を適切に図ることができて好ましい。
【0203】
図10に示す磁気検出素子では、前記第3反強磁性層33の上面33b、および内側端部33aが絶縁層70、71によって覆われているので、前記上部シールド層68から前記多層膜内に流れる電流が、第3反強磁性33に分流せず、前記電流は前記第2絶縁層71間のトラック幅方向への間隔で決定されるトラック幅Tw内を適切に流れる。よって図10に示す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅Twから広がるのを抑制でき再生出力の大きいCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0204】
また図10に示すように前記第1絶縁層70上から第2絶縁層71上、および多層膜の中央部D上にかけて点線で描かれた非磁性層69が設けられていてもよい。前記非磁性層69は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性層69は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、前記非磁性層69は前記多層膜の中央部D上にも形成されるため、電流経路の出入口となる前記多層膜の中央部D上を例えば絶縁材料からなる非磁性層69で覆うことは前記電流が磁気検出素子内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では前記非磁性層69を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0205】
また図10に示す磁気検出素子では磁気検出素子を構成する非磁性材料層27がCuなどの非磁性導電材料で形成されてもよいし、あるいは前記非磁性材料層27がAl23やSiO2などの絶縁材料で形成されてもよい。前者の磁気検出素子はスピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼ばれる構造であり、後者の磁気検出素子はスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼ばれる構造である。
【0206】
図11は、図5に示す磁気検出素子を図10と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図12は、図6に示す磁気検出素子を図10と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。
【0207】
図13及び図14に示す磁気検出素子は、図7ないし図12と同様にCPP型の磁気検出素子であるが、下部シールド層65の形状が図7ないし図12のそれとは異なっている。
【0208】
図13に示す実施形態は、図7と同じ膜構成のCPP型の磁気検出素子であるが、下部電極を兼用した下部シールド層65のトラック幅方向(図示X方向)の中央部Dに、前記多層膜方向(図示Z方向)に突出した突出部65aが設けられ、この突出部65aの上面65a1が前記シードレイヤ21の下面に接しており、前記突出部65aから前記多層膜内に(あるいは多層膜から前記突出部65aに)電流が流れるようになっている。
【0209】
そして図13に示す実施形態では前記下部シールド層65のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部65bと前記シードレイヤ21間に絶縁層78が設けられている。前記絶縁層78は、Al23、SiO2、AlN、Al−Si−O−N、Al−Si−O、Ti23、Ti35などの絶縁材料で形成される。
【0210】
図13に示す実施形態では、下部シールド層65は、突出部65aの形成によって電流経路が絞り込まれ、さらに前記下部シールド層65の両側端部65bと多層膜間に絶縁層78が設けられたことで、前記両側端部65bから前記多層膜内に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力が大きく実効トラック幅が狭い磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0211】
図13に示す実施形態では、前記下部シールド層65の突出部65aの上面65a1のトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法は中央部Dのトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法と一致しているが、前記上面65a1の幅寸法が前記中央部Dの幅寸法より広くてもよい。より好ましくは前記上面65a1の幅寸法がトラック幅Twと一致することである。これによってより効果的に磁気検出素子に対しトラック幅Twの領域内にのみ電流を流すことができ再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能である。
【0212】
また図13に示す実施形態では、前記下部シールド層65に形成された突出部65aのトラック幅方向(図示X方向)における両側面65a2は、前記突出部65aのトラック幅方向における幅寸法が、前記多層膜から離れる(図示Z方向と逆方向)にしたがって徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されているが、前記両側面65a2は、トラック幅方向(図示X方向)に対して垂直面であってもかまわない。
【0213】
図14に示す実施形態は、図13に示す実施形態と同じ形状の下部シールド層65を有している。すなわち図14に示す下部シールド層65のトラック幅方向(図示X方向)の中央部Dには、前記多層膜方向(図示Z方向)に突出した突出部65aが設けられ、この突出部65aの上面65a1が前記シードレイヤ21の下面に接しており、前記突出部65aから前記多層膜内に(あるいは多層膜から前記突出部65aに)電流が流れるようになっている。そして前記下部シールド層65のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部65bと前記シードレイヤ21間に絶縁層78が設けられている。
【0214】
図14に示す実施形態では図13と異なって、第3反強磁性層33の上面33b及び両側端部33a上に絶縁層67が設けられていない。そして上部電極を兼用した上部シールド層68は前記第3反強磁性層33上から前記多層膜の中央部D上にかけて直接接合されている。
【0215】
図14に示す実施形態では、図13に示す実施形態に比べて上部シールド層68と第3反強磁性層33間が絶縁されていないので、電流経路はトラック幅Twよりも広がりやすく再生出力は劣るものと考えられるが、磁気検出素子の下面側で、下部シールド層65に突出部65aを形成したことによって電流経路を絞り込むことができ、電流経路の広がりを抑えて再生出力の低下を抑制することができる。
【0216】
また図13及び図14に示す磁気検出素子では、下部シールド層65に形成された突出部65aの上面65a1と、その両側に形成された絶縁層78の上面とが同一平面で形成されていることが好ましい。これによって前記突出部65a上から絶縁層78上にかけて形成される多層膜の各層の膜面をトラック幅方向に、より平行に形成でき、再生特性に優れた磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0217】
なお図13、図14に示す実施形態は、図8ないし図12におけるCPP型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0218】
また図7ないし図14に示すCPP型の磁気検出素子ではいずれも下部シールド層65及び上部シールド層68を多層膜の上下に接して形成し、前記シールド層65、68に電極層の機能を持たせているが、このような構成によって電極層とシールド層とを別々に形成する必要性が無くなり、CPP型の磁気検出素子の製造を容易化することが可能になる。
【0219】
しかも前記電極機能とシールド機能とを兼用させれば、シールド層間の間隔で決定されるギャップ長G1を非常に短くすることができ(図7を参照、なお非磁性層69が設けられる場合は、非磁性層69の膜厚も含めてギャップ長Glが決定される)、今後の高記録密度化により適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0220】
ただし本発明では、図7ないし図14に示す実施形態に限るものではなく、前記多層膜の上面及び/または下面に、例えばAu、W、Cr、Taなどからなる電極層を設け、前記磁気検出素子と反対側の前記電極層の面にギャップ層を介して磁性材料製のシールド層を設ける構成であってもかまわない。
【0221】
次に本発明におけるフリー磁性層28の形態について説明する。
図1ないし図14に示す磁気検出素子では、すべてフリー磁性層28は2層構造であり、非磁性材料層27と接する側の層が、CoFeやCoなどの拡散防止層29となっている。磁性材料層30はNiFe合金などの磁性材料で形成されている。
【0222】
前記フリー磁性層28は磁性材料の単層で形成されていてもよい。磁性材料としてはNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Co、CoNi合金などを選択できる。このうち特に前記フリー磁性層28をCoFeNi合金で形成することが好ましい。
【0223】
図15は、前記フリー磁性層28の部分を中心に図示した部分拡大断面図である。断面は記録媒体との対向面側から見ている。
【0224】
図15に示す形態ではフリー磁性層28は3層構造である。前記フリー磁性層28を構成する符号36、37、38の各層はすべて磁性材料の層であり、磁性材料層36は、非磁性材料層27との間で元素の拡散を防止するための拡散防止層である。前記磁性材料層36はCoFeやCoなどで形成される。
【0225】
磁性材料層38は、第2反強磁性層31と接して形成されている。前記磁性材料層38は、CoFe合金で形成されることが好ましく、これによって前記磁性材料層38と前記第2反強磁性層31間で発生する交換結合磁界を大きくできる。
【0226】
図15に示す3層構造の材質の組合わせとしては、例えば磁性材料層36:CoFe/磁性材料層37:NiFe/磁性材料層38:CoFeを提示できる。
【0227】
磁性材料のみで形成されたフリー磁性層28の膜厚は30Å〜40Å程度で形成されることが好ましい。またフリー磁性層28に使用されるCoFe合金の組成比は、例えばCoが90at%、Feが10at%である。
【0228】
図16は、前記フリー磁性層28の別の実施形態を示す部分拡大断面図である。図16に示すフリー磁性層28は積層フェリ構造と呼ばれる構造である。これにより前記フリー磁性層28の物理的な厚みを極端に薄くすることなしに、磁気的な実効的フリー磁性層の膜厚を薄くでき、外部磁界に対する感度を向上させることができる。
【0229】
符号39、41の層は磁性層であり、符号40の層は非磁性中間層である。磁性層39および磁性層41は、例えばNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Co、CoNi合金などの磁性材料で形成される。このうち特に前記磁性層39及び/または磁性層41は、CoFeNi合金で形成されることが好ましい。組成比としては、Feが9at%以上で17at%以下、Niが0.5at%以上で10at%以下、残りがCoのat%であることが好ましい。
【0230】
これにより前記磁性層39、41間に働くRKKY相互作用による結合磁界を大きくできる。具体的にはスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)以上にできる。以上により、磁性層39と磁性層41との磁化を適切に反平行状態にできる。また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層28の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。
【0231】
さらに、前記フリー磁性層28の軟磁気特性の向上、非磁性材料層27間でのNiの拡散による抵抗変化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を適切に図ることが可能である。
【0232】
また前記非磁性中間層40は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種または2種以上で形成されることが好ましい。
【0233】
前記磁性層39の膜厚は例えば35Å程度で、非磁性中間層40は例えば9Å程度で、前記磁性層41の膜厚は例えば15Å程度で形成される。
【0234】
上記したフリー磁性層28が積層フェリ構造で形成されたとき、図19に示すように、中央部Dでは、磁性層41まで完全に除去され、第3反強磁性層33間から非磁性中間層40が露出するように構成することもできる。これにより前記フリー磁性層28の中央部Dは積層フェリ構造ではなく、通常の磁性層のみで形成されたフリー磁性層として機能し、一方、フリー磁性層28の両側端部Cでは積層フェリ構造となり、一方向性バイアス磁界を増強し、より確実にフリー磁性層28の両側端部Cをトラック幅方向に固定させ、サイドリーディングの発生を防ぐことができる。
【0235】
また前記磁性層39と非磁性材料層27との間には、CoFe合金やCoで形成された拡散防止層が設けられていてもよい。さらには、前記磁性層41と第2反強磁性層31間にCoFe合金で形成された磁性層が介在していてもよい。
【0236】
かかる場合、磁性層39及び/または磁性層41がCoFeNi合金で形成されるとき、前記CoFeNi合金のFeの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。
【0237】
これにより前記磁性層39、41間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、スピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。よって磁性層39、41の磁化を適切に反平行状態にすることができる。
【0238】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層28の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。さらに、前記フリー磁性層28の軟磁気特性の向上を図ることができる。
【0239】
図17は本発明におけるフリー磁性層28の別の形態を示す部分拡大断面図である。図17に示すフリー磁性層28には、磁性材料層42、44間にスペキュラー膜43が形成されている。前記スペキュラー膜43には、図17に示すように欠陥部(ピンホール)Gが形成されていてもよい。また図17に示す実施形態ではスペキュラー膜(鏡面反射層)43を挟んだ磁性層42及び磁性層44は同じ方向(矢印方向)に磁化されている。
【0240】
磁性層42、44にはNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Co、CoNi合金などの磁性材料が使用される。
【0241】
図17のようにスペキュラー膜43がフリー磁性層28内に形成されていると前記スペキュラー膜43に達した伝導電子(例えばアップスピンを持つ伝導電子)は、そこでスピン状態(エネルギー、量子状態など)を保持したまま鏡面反射する。そして鏡面反射した前記アップスピンを持つ伝導電子は、移動向きを変えてフリー磁性層内を通り抜けることが可能になる。
【0242】
このため本発明では、スペキュラー膜43を設けることで、前記アップスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ+を従来に比べて伸ばすことが可能になり、よって前記アップスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ+と、ダウンスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ−との差を大きくすることができ、従って抵抗変化率(ΔR/R)の向上とともに、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0243】
前記スペキュラー膜43の形成は、例えば磁性層42までを成膜し、前記磁性層42表面を酸化する。この酸化層をスペキュラー膜43として機能させることができる。そして前記スペキュラー膜43上に磁性層44を成膜する。
【0244】
前記スペキュラー膜43の材質としては、Fe−O、Ni−O、Co−O、Co−Fe−O、Co−Fe−Ni−O、Al−O、Al−Q−O(ここでQはB、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−O(ここでRはCu、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)の酸化物、Al−N、Al−Q−N(ここでQはB、Si、O、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−N(ここでRはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)の窒化物、半金属ホイッスラー合金などを提示できる。
【0245】
図18は本発明におけるフリー磁性層28の別の形態を示す部分拡大断面図である。
図18に示すフリー磁性層28は、磁性層45及び第2反強磁性層31間にバックド層46が形成されている。前記バックド層46は例えばCu、Au、Cr、Ruなどで形成される。前記磁性層45、47はNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、Co、CoNi合金などの磁性材料で形成される。
【0246】
前記バックド層46が形成されることによって、磁気抵抗効果に寄与するアップスピンの伝導電子(上向きスピン:up spin)における平均自由行程(mean free path)を延ばし、いわゆるスピンフィルター効果(spin filter effect)によりスピンバルブ型磁気素子において、大きな抵抗変化率が得られ、高記録密度化に対応できるものとなる。また前記バックド層46は交換結合を媒介する作用も有するため、第2反強磁性層31と磁性層45間の交換結合磁界は若干、減少するものの十分な値に保たれる。
【0247】
図20は図19に示す磁気検出素子を図10のようにCPP型の磁気検出素子とした構成である。すなわち図20では、第3反強磁性層33の上面33bに第1絶縁層70が形成され、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上及び第2反強磁性層31の内側端部上に第2絶縁層71が設けられている。そして多層膜の下には電極を兼ねた磁性材料製の下部シールド層65が設けられ、また前記第1絶縁層70上から第2絶縁層71上及び前記多層膜の中央部D上にかけて電極を兼ねた磁性材料製の上部シールド層68が設けられる。
【0248】
また前記第1絶縁層70、第2絶縁層71及び前記多層膜の中央部Dと前記上部シールド層68との間にはTaなどの非磁性導電材料で形成された非磁性層69が設けられていてもよい。
【0249】
図21ないし図23は図1に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。図21ないし図23に示す各工程は記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0250】
図21に示す工程では、基板20上に、シードレイヤ21、第1反強磁性層22、固定磁性層23、非磁性材料層27、フリー磁性層28、第2反強磁性層31、および非磁性層32を連続成膜する。成膜にはスパッタや蒸着法が使用される。図21に示す固定磁性層23は、例えばCoFe合金などで形成された磁性層24と磁性層26と、両磁性層24、26間に介在するRuなどの非磁性の中間層25との積層フェリ構造である。前記フリー磁性層28は、CoFe合金などの拡散防止層29とNiFe合金などの磁性材料層30との積層構造である。
【0251】
本発明では前記第1反強磁性層22及び第2反強磁性層31を、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成することが好ましい。
【0252】
また前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0253】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0254】
また本発明では前記第1反強磁性層22の膜厚を80Å以上で300Å以下で形成することが好ましい。この程度の厚い膜厚で前記第1反強磁性層22を形成することにより磁場中アニールで、前記第1反強磁性層22と固定磁性層23間に大きな交換結合磁界を発生させることができる。具体的には、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を発生させることができる。
【0255】
また本発明では前記第2反強磁性層31の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成することが好ましく、より好ましくは30Å以上で40Å以下で形成する。
【0256】
本発明では、このように第2反強磁性層31を薄い膜厚で形成することに第1の特徴点がある。
【0257】
上記のように前記第2反強磁性層31を50Å以下の薄い膜厚で形成することにより、前記第2反強磁性層31は非反強磁性の性質を帯びる。このため下記の第1の磁場中アニールを施しても、前記第2反強磁性層31は規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31とフリー磁性層28間に交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の磁化が、固定磁性層23と同じように強固に固定されることがない。
【0258】
また前記第2反強磁性層31が20Å以上、好ましくは30Å以上で形成されるとしたのは、この程度の膜厚がないと、後工程で前記第2反強磁性層31の両側端部C上に第3反強磁性層33を形成しても、前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性の性質を帯び難く、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間に適切な大きさの交換結合磁界が発生しないからである。
【0259】
また図21工程のように前記第2反強磁性層31上に非磁性層32を形成することで、図21に示す積層体が大気暴露されても前記第2反強磁性層31が酸化されるのを適切に防止できる。
【0260】
ここで前記非磁性層32は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である必要がある。また熱拡散などにより前記非磁性層32を構成する元素が第2反強磁性層31内部に侵入しても反強磁性層としての性質を劣化させない材質である必要がある。
【0261】
本発明では前記非磁性層32をRu、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上からなる貴金属で形成することが好ましい。
【0262】
Ruなどの貴金属からなる非磁性層32は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である。したがって前記非磁性層32の膜厚を薄くしても前記第2反強磁性層31が大気暴露によって酸化されるのを適切に防止できる。
【0263】
本発明では前記非磁性層32を3Å以上で10Å以下で形成することが好ましい。この程度の薄い膜厚の非磁性層32によっても適切に前記第2反強磁性層31が大気暴露によって酸化されるのを適切に防止することが可能である。
【0264】
本発明では上記のように前記非磁性層32をRuなどの貴金属で形成し、しかも前記非磁性層32を3Å〜10Å程度の薄い膜厚で形成したことに第2の特徴点がある。このように薄い膜厚で前記非磁性層32を形成したことによって図22工程でのイオンミリングを低エネルギーで行うことができミリング制御を従来に比べて向上させることができる。この点については図22工程で詳しく説明する。
【0265】
図21に示すように基板20上に非磁性層32までの各層を積層した後、第1の磁場中アニールを施す。トラック幅Tw(図示X方向)と直交する方向である第1の磁界(図示Y方向)を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、第1の反強磁性層22と固定磁性層23を構成する磁性層24との間に交換結合磁界を発生させて、前記磁性層24の磁化を図示Y方向に固定する。もう一方の磁性層26の磁化は、前記磁性層24との間で働くRKKY相互作用による交換結合によって図示Y方向とは逆方向に固定される。なお例えば前記第1の熱処理温度を270℃とし、磁界の大きさを800k(A/m)とする。
【0266】
また上記したように、この第1の磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31とフリー磁性層28を構成する磁性材料層30との間には交換結合磁界は発生しないかあるいは発生してもその値は小さい。前記第2反強磁性層31は50Å以下の薄い膜厚で形成されており、反強磁性としての性質を有していないからである。
【0267】
また上記した第1の磁場中アニールによって、非磁性層32を構成するRuなどの貴金属元素が、第2反強磁性層31内部に拡散するものと考えられる。従って熱処理後における前記第2反強磁性層31の表面近くの構成元素は、反強磁性層を構成する元素と貴金属元素とから構成される。また前記第2反強磁性層31内部に拡散した貴金属元素は、前記第2反強磁性層31の下面側よりも前記第2反強磁性層31の表面側の方が多く、拡散した貴金属元素の組成比は、前記第2反強磁性層31の表面から下面に向うに従って徐々に減るものと考えられる。このような組成変調は、SIMS分析装置などで確認することが可能である。
【0268】
次に図22に示す工程では前記非磁性層32の上面にレジスト層を形成し、このレジスト層を露光現像することによって図22に示す形状のレジスト層49を前記非磁性層32上に残す。前記レジスト層49は例えばリフトオフ用のレジスト層である。
【0269】
次に前記レジスト層49に覆われていない前記非磁性層32の両側端部32aを、図22に示す矢印H方向からのイオンミリングで一部削る(図22に示す点線部分の非磁性層32が除去される)。
【0270】
ここで前記非磁性層32の両側端部32aを一部削る理由は、できる限り前記両側端部32aの膜厚を薄くしておかないと、次工程で前記両側端部32a上に形成される第3反強磁性層33と第2反強磁性層31の両側端部Cとの間で反強磁性的な相互作用を生じさせることができず、前記第2反強磁性層31の両側端部Cに反強磁性の性質を与えることができず、前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化を強固に固定できないからである。
【0271】
本発明では、このイオンミリング工程で、前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚を3Å以下にすることが好ましい。この程度にまで前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚を薄くすることで、次工程で、前記第2反強磁性層31の両側端部C上に第3反強磁性層33を形成したとき、第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第2反強磁性層31の両側端部と前記第3反強磁性層33とを一体の反強磁性層のように機能させることができ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cに反強磁性の性質を帯びさせることが可能になる。
【0272】
図22に示すイオンミリング工程では、低エネルギーのイオンミリングを使用できる。その理由は、前記非磁性層32が3Å〜10Å程度の非常に薄い膜厚で形成されているからである。
【0273】
これに対し、例えば図37に示す従来例のようにTa膜9を使用すると、このTa膜9自体、大気暴露によって酸化されるので、30Å〜50Å程度の厚い膜厚で形成しないと、十分にその下の層を酸化から保護できず、しかも前記Ta膜9は酸化によって体積が大きくなり、前記Ta膜9の膜厚は約50Å以上にまで膨れ上がる。
【0274】
このような厚い膜厚のTa膜9をイオンミリングで除くには、高エネルギーのイオンミリングで前記Ta膜9を除去する必要があり、高エネルギーのイオンミリングを使用すると、Ta膜9のみが除去されるようにミリング制御することは非常に難しく、その下に形成されているフリー磁性層5表面も一部削られ、前記フリー磁性層5表面がイオンミリングによるダメージを受けてしまうのである。
【0275】
本発明では、Ruなどで形成された非磁性層32は3Å〜10Å程度の薄い膜厚であっても、第2反強磁性層31が酸化されるのを十分に防止でき、低エネルギーのイオンミリングによって前記非磁性層32の途中でミリングを止めるようにミリング制御しやすい。
【0276】
このように本発明では低エネルギーのイオンミリングを使用でき、従来に比べてミリング制御を向上させることができるのである。
【0277】
また後述する実験結果によれば、ミリング時間は20秒から40秒程度、ミリング角度は、基板20表面の垂直方向に対し30°から70°、好ましくは40°から60°傾いた角度で行うことが好ましい。これにより前記第2反強磁性層31の両側端部Cとその上に形成される第3反強磁性層33間で発生する反強磁性的な相互作用を強め、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間で発生する交換結合磁界を強めることができることが確認されている。
【0278】
次に図23工程を施す。図23工程では、前記非磁性層32の両側端部32a上に第3反強磁性層33、電極層34を連続成膜する。成膜にはスパッタや蒸着法を使用できる。成膜された前記第3反強磁性層33の内側端部33a及び電極層34の内側端部34aは、下面から上面に向うにしたがって(図示Z方向)、徐々に前記第3反強磁性層34間の間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。
【0279】
またこの実施形態では前記第3反強磁性層34の下面間の間隔でトラック幅Twが規定される。
【0280】
前記第3反強磁性層33に使用される材質は、第2反強磁性層31に使用される反強磁性材料と同じものであることが好ましい。
【0281】
また図23に示す工程では、前記第3反強磁性層33と、その下に形成されている第2反強磁性層31の両側端部とを足した総合膜厚が80Å以上で300Å以下の厚い膜厚となるように、前記第3反強磁性層33の膜厚を調整することが好ましい。
【0282】
前記第2反強磁性層31の膜厚と第3反強磁性層33の膜厚とを足した総合膜厚が80Å以上で300Å以下程度の厚い膜厚で形成されると、単独では反強磁性の性質を有さなかった前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性の性質を帯びやすくなるからである。
【0283】
図23に示すように電極層34まで積層形成した後、前記第3反強磁性層33を構成する元素からなる反強磁性材料の膜33b及び電極層34を構成する元素からなる電極材料の膜34bが付着した前記レジスト層49をリフトオフで除去する。
【0284】
次に第2の磁場中アニールを施す。このときの磁場方向は、トラック幅方向(図示X方向)である。なおこの第2の磁場中アニールは、第2の印加磁界を、第1反強磁性層22の交換異方性磁界よりも小さく、しかも熱処理温度を、前記第1反強磁性層22のブロッキング温度よりも低くする。なお前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層28の飽和磁界及び前記フリー磁性層28の反磁界より大きくすることがより好ましい。これによって前記第1反強磁性層22の交換異方性磁界の方向をハイト方向(図示Y方向)に向けたまま、前記第2反強磁性層31の交換異方性磁界をトラック幅方向(図示X方向)に向けることができる。なお第2の熱処理温度は例えば250℃であり、磁界の大きさは24k(A/m)である。
【0285】
上記のように第2反強磁性層31の両側端部C上に非磁性層32を介して第3反強磁性層33が形成されることで、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間の反強磁性的な相互作用が強まり、単独では反強磁性の性質を有さなかった前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性の性質を帯びる。
【0286】
このため上記の第2の磁場中アニールによって、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは適切に規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部Cとの間に適切な大きさの交換結合磁界が発生する。これによって前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化は、トラック幅方向(図示X方向)に固定される。
【0287】
一方、上記の第2の磁場中アニールによっても、フリー磁性層28の中央部D上に形成された第2反強磁性層31と前記フリー磁性層28の中央部D間には交換結合磁界が発生せずあるいはその値は小さく、前記フリー磁性層28の中央部Dが両側端部Cと同様にトラック幅方向に強固に固定されるといったことがない。
【0288】
前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態である。
【0289】
また上記の第2の磁場中アニールで、非磁性層32を構成するRuなどの貴金属元素が、第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33内部に拡散するものと考えられる。従って熱処理後における前記第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33の構成元素は、反強磁性層を構成する元素と貴金属元素とから構成される。また前記第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33内部に拡散した貴金属元素は、前記第2反強磁性層31の下面側よりも前記第2反強磁性層31の表面側の方が多く、第3反強磁性層33の表面側よりも下面側の方が多い。拡散した貴金属元素の組成比は、前記第2反強磁性層31の表面から下面に向うに従って、及び第3反強磁性層33の下面から表面に向うにしたがって従って徐々に減るものと考えられる。このような組成変調は、SIMS分析装置などで確認することが可能である。
【0290】
上記のように本発明の製造方法によれば従来に比べて適切にフリー磁性層28の磁化制御を行うことができ、狭トラック化においても再生感度に優れた磁気検出素子を製造することができる。
【0291】
以上の製造工程によって図1に示す磁気検出素子を製造することが可能である。図2に示す磁気検出素子の製造方法は、図21ないし図23に示す工程で行なわれるが、図22のイオンミリング工程時に、Ruなどで形成された非磁性層32の両側端部32aを完全に除去する。上記したように本発明では、成膜段階における非磁性層32の膜厚が非常に薄いので低エネルギーのイオンミリング工程を使用して前記非磁性層32の研削作業を行える。この低エネルギーによるイオンミリングでは、高エネルギーの場合に比べてミリングレートが遅くなるため、ちょうど非磁性層32の両側端部32aが除去された時点でミリングを止めやすい。すなわちミリング制御が従来に比べて容易となり、非磁性層32を除去したことで露出する第2反強磁性層31の表面が受けるミリングの影響を十分に小さくできる。
【0292】
よって図22工程で、前記非磁性層32の両側端部32aのみをイオンミリングで削り、その下の第2反強磁性層31が削られないようにミリング制御を行いやすい。前記第2反強磁性層31がミリングされなければ、前記第2反強磁性層31表面にはミリングによるダメージが発生せず、前記第2反強磁性層31の磁気特性を良好に保つことができる。
【0293】
また図2の点線Eで示すように若干、第2反強磁性層31の表面が削られても低エネルギーのイオンミリングであるため、前記第2反強磁性層31表面はさほど前記イオンミリングによるダメージを受けないものと考えられる。従って図23工程で前記第2反強磁性層31の両側端部C上に第3反強磁性層33を形成することで、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33とを一体の反強磁性層のように機能させることができ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cに適切に反強磁性の性質を帯びさせることができる。よって上記の第2の磁場中アニールにより、前記第2反強磁性層31の両側端部Cを規則化変態でき、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28間に交換結合磁界を生じさせることができ、前記フリー磁性層28の両側端部Cを適切にトラック幅方向(図示X方向)に固定できる。
【0294】
また図3に示す磁気検出素子は、図21に示す工程を施した後、図22に示す工程でレジスト層49を形成し、次に図23工程を施すことで製造できる。つまり図22工程でイオンミリング工程を施さない。
【0295】
図3に示す磁気検出素子の製造方法では、図21工程で予め非磁性層32の膜厚を3Å以下程度に薄くして形成しており、あるいは図21に示す工程で、3Å〜10Å程度の非磁性層32を形成した後、前記非磁性層32の上面全体をイオンミリングによって膜厚が3Å以下となるようにする。
【0296】
前記非磁性層32の膜厚が3Å以下の薄い膜厚であれば、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと、その上に前記非磁性層32を介して形成される第3反強磁性層33との間に反強磁性的な相互作用を生じさせることができ、したがって図22に示す工程で、あらためてイオンミリングを施して、前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚を薄くする、あるいは前記両側端部32aを完全に除去する必要性がない。
【0297】
上記した製造方法により、図3のように第2反強磁性層31上に中央部32b及び両側端部32aともに同じ膜厚を有する非磁性層32を残すことができる。
【0298】
また図16や図18に示す形態のフリー磁性層28を図21ないし図23工程での磁気検出素子の製造方法で使用した場合、図23工程後、第3反強磁性層33及び電極層34上をレジスト層で覆い、レジスト層から露出した非磁性層32の中央部32b、第2反強磁性層31の中央部、および図16に示す磁性層41や図19に示すバックド層46の中央部までをミリング等で削り込んでもよい。
【0299】
以上、図1ないし図3のCIP型の磁気検出素子の製造方法について説明したが、次に図7ないし図9に示すCPP型の磁気検出素子の製造方法を、特に図1ないし図3の磁気検出素子の製造方法と異なる工程について詳述する。
【0300】
図7ないし図9に示す磁気検出素子の製造方法において、まず上記した図21ないし図22に示す工程を施す。次に図24に示す工程で、前記非磁性層32の両側端部32a上に矢印N方向からのスパッタ角度θ1(図示Z方向に対する傾き)で、第3反強磁性層33をスパッタ成膜する。次に前記第3反強磁性層33の上面33b及び内側端部33a上にかけて矢印K方向からのスパッタ角度θ2(図示Z方向に対する傾き)で絶縁層67をスパッタ成膜する。
【0301】
なお前記スパッタ角度θ1及びθ2は同じ角度でもよいが、好ましくは、スパッタ角度θ2をスパッタ角度θ1よりも大きくする(すなわちより寝かせる)。これにより前記非磁性層32の中央部32bの両端部上にまで前記絶縁層67の内側先端部67aを形成しやすくなる。なおスパッタ角度θ1及びθ2は、図示Z方向に対しある程度の傾きを持っていることが好ましい。
【0302】
図25ないし図27に示す製造工程は図10に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。各図は記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0303】
まず図25工程では、基板20上に、シードレイヤ21、第1反強磁性層22、固定磁性層23、非磁性材料層27、フリー磁性層28、第2反強磁性層31、および非磁性層32を連続成膜する。成膜にはスパッタや蒸着法が使用される。図25に示す固定磁性層23は、例えばCoFe合金などで形成された磁性層24と磁性層26と、両磁性層24、26間に介在するRuなどの非磁性の中間層25との積層フェリ構造である。前記フリー磁性層28は、CoFe合金などの拡散防止層29とNiFe合金などの磁性材料層30との積層構造である。
【0304】
本発明では前記第1反強磁性層22及び第2反強磁性層31を、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成することが好ましい。
【0305】
また前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0306】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0307】
また本発明では前記第1反強磁性層22の膜厚を80Å以上で300Å以下で形成することが好ましい。この程度の厚い膜厚で前記第1反強磁性層22を形成することにより磁場中アニールで、前記第1反強磁性層22と固定磁性層23間に大きな交換結合磁界を発生させることができる。具体的には、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を発生させることができる。
【0308】
また本発明では前記第2反強磁性層31の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成することが好ましく、より好ましくは30Å以上で40Å以下で形成する。
【0309】
本発明では、このように第2反強磁性層31を薄い膜厚で形成することに第1の特徴点がある。
【0310】
上記のように前記第2反強磁性層31を50Å以下の薄い膜厚で形成することにより、前記第2反強磁性層31は反強磁性の性質を有さなくなり、磁場中アニールを施しても、前記第2反強磁性層31が規則化変態しにくく前記第2反強磁性層31とフリー磁性層28間に交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の磁化が、固定磁性層23と同じように強固に固定されることがない。
【0311】
また前記第2反強磁性層31が20Å以上、好ましくは30Å以上で形成されるとしたのは、この程度の膜厚がないと、後工程で前記第2反強磁性層31の両側端部C上に第3反強磁性層33を形成しても、前記第2反強磁性層31の両側端部Cが反強磁性の性質を帯び難く、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部C間に適切な大きさの交換結合磁界が発生しないからである。
【0312】
また図25工程のように前記第2反強磁性層31上に非磁性層32を形成することで、図25に示す多層膜が大気暴露されても前記第2反強磁性層31が酸化されるのを適切に防止できる。
【0313】
ここで前記非磁性層32は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である必要がある。また熱拡散などにより前記非磁性層32が第2反強磁性層31内部に侵入しても反強磁性層としての性質を劣化させない材質である必要がある。
【0314】
本発明では前記非磁性層32をRu、Re、Pd、Os、Irのいずれか1種または2種以上からなる貴金属で形成することが好ましい。
【0315】
Ruなどの貴金属からなる非磁性層32は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である。したがって前記非磁性層32の膜厚を薄くしても前記第2反強磁性層31が大気暴露によって酸化されるのを適切に防止できる。
【0316】
本発明では前記非磁性層32を3Å以上で10Å以下で形成することが好ましい。この程度の薄い膜厚の非磁性層32によっても適切に前記第2反強磁性層31が大気暴露によって酸化されるのを適切に防止することが可能である。
【0317】
本発明では上記のように前記非磁性層32をRuなどの貴金属で形成し、しかも前記非磁性層32を3Å〜10Å程度の薄い膜厚で形成したことに第2の特徴点がある。このように薄い膜厚で前記非磁性層32を形成したことによって次工程のイオンミリング制御を適切に且つ容易に行うことができるのである。
【0318】
図25に示すように基板20上に非磁性層32までの各層を積層した後、第1の磁場中アニールを施す。トラック幅Tw(図示X方向)と直交する方向である第1の磁界(図示Y方向)を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、第1の反強磁性層12と固定磁性層23を構成する磁性層24との間に交換結合磁界を発生させて、前記磁性層24の磁化を図示Y方向に固定する。もう一方の磁性層26の磁化は、前記磁性層24との間で働くRKKY相互作用による交換結合によって図示Y方向とは逆方向に固定される。なお例えば前記第1の熱処理温度を270℃とし、磁界の大きさを800k(A/m)とする。
【0319】
また上記したように、この第1の磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31は膜厚が薄いため規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31とフリー磁性層28を構成する磁性材料層30との間には交換結合磁界は発生しない。前記第2反強磁性層31は50Å以下の薄い膜厚で形成されており、反強磁性としての性質を有していないからである。
【0320】
また上記した第1の磁場中アニールによって、非磁性層32を構成するRuなどの貴金属元素が、第2反強磁性層31内部に拡散するものと考えられる。従って熱処理後における前記第2反強磁性層31の構成元素は、反強磁性層を構成する元素と貴金属元素とから構成される。また前記第2反強磁性層31内部に拡散した貴金属元素は、前記第2反強磁性層31の下面側よりも前記第2反強磁性層31の表面側の方が多く、拡散した貴金属元素の組成比は、前記第2反強磁性層31の表面から下面に向うに従って徐々に減るものと考えられる。このような組成変調は、SIMS分析装置などで確認することが可能である。
【0321】
次に図25工程で前記非磁性層32の表面全体をイオンミリングし、前記非磁性層32を点線Jの位置まで削る。
【0322】
ここで前記非磁性層32を一部削る理由は、できる限り前記非磁性層32の膜厚を薄くしておかないと前記非磁性層32の両側端部32a上に形成される第3反強磁性層33と第2反強磁性層31の両側端部Cとの間で反強磁性的な相互作用を生じさせることができず、フリー磁性層28の磁化制御を適切に行うことができなくなるからである。
【0323】
本発明では、このイオンミリング工程で、前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚を0.2Å(平均値)以上で3Å以下にすることが好ましい。この程度にまで前記非磁性層32の両側端部32aの膜厚を薄くすることで、第2反強磁性層31の両側端部Cと第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記第2反強磁性層31とを一体の反強磁性層のように機能させることができ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cに反強磁性の性質を帯びさせることが可能になる。
【0324】
図25に示すイオンミリング工程では、低エネルギーのイオンミリングを使用できる。その理由は、成膜段階で前記非磁性層32が3Å〜10Å程度の非常に薄い膜厚で形成されているからである。このため本発明では、低エネルギーのイオンミリングによって前記非磁性層32の途中でミリングを止めやすく、従来に比べてミリング制御を向上させることができるのである。
【0325】
次に図26に示す工程では、前記非磁性層32上に第3反強磁性層33を成膜し、さらに連続して前記第3反強磁性層33の上にTaなどで形成された中間層(保護層)35を成膜する。中間層35は、第3反強磁性層33を大気暴露によって酸化されないように保護するためのものである。
前記第3反強磁性層33を第2反強磁性層31と同じ材質で形成することが好ましい。
【0326】
また図26に示す工程では、前記第3反強磁性層33と、その下に非磁性層32を介して形成されている第2反強磁性層31とを足した総合膜厚が80Å以上で300Å以下の厚い膜厚となるように、前記第3反強磁性層33の膜厚を調整することが好ましい。
【0327】
前記第2反強磁性層31の膜厚と第3反強磁性層33の膜厚とを足した総合膜厚が80Å以上で300Å以下程度の厚い膜厚で形成されると、単独では反強磁性の性質を有さなかった前記第2反強磁性層31が反強磁性の性質を帯びるからである。
【0328】
次に図27に示す工程では、前記中間層35上にトラック幅方向(図示X方向)に所定の間隔50aを開けて例えば無機材料で形成されたマスク層50を形成する。前記無機材料としては、Ta、Ti、Si、Zr、Nb、Mo、Hf、W、Al−O、Al−Si−O、Si−Oなどを選択できる。このうち金属材料で前記マスク層50を形成する場合には、前記マスク層50を製造工程後においてもそのまま残して電極層34として機能させることもできる。
【0329】
前記マスク層50の形成は、例えば前記中間層35の中央部上にレジスト層(図示しない)を立てておき、その両側を前記マスク層50で埋めた後、前記レジスト層を除去して前記マスク層50に所定幅の間隔50aを形成する。あるいは前記中間層35上全体にマスク層50を形成した後、レジスト層(図示しない)を前記マスク層50上に重ねて形成し、前記レジスト層の中央部に露光現像によって穴部を形成した後、この穴部から露出する前記マスク層50をRIEなどで削って、前記マスク層50に所定幅の間隔50aを形成する。
あるいは本発明ではマスク層50をレジストで形成してもよい。
【0330】
図27に示す工程では、前記マスク層50aの間隔50a内から露出する中間層35をRIEやイオンミリングによって削り、さらに前記中間層35下の第3反強磁性層33を点線Kの位置まで削り込む。このとき点線K下の第3反強磁性層33の膜厚と第2反強磁性層31の膜厚を足した総合膜厚が50Å以下になるまで前記第3反強磁性層33を削り込むことが好ましい。より好ましくは40Å以下である。そうしないと、前記第2反強磁性層31の中央部Dが反強磁性の性質を残してしまい、次工程の第2磁場中アニールで、前記第2反強磁性層31の中央部Dとフリー磁性層28の中央部D間で交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化が強固に固定されてしまうからである。
【0331】
図27の点線Kのように第3反強磁性層33の途中まで削り込み、フリー磁性層28の中央部D上に前記第3反強磁性層33を一部残す場合、図5に示す磁気検出素子を製造することができる。
【0332】
また前記マスク層50の間隔50a内から露出する前記第3反強磁性層33をすべて除去し、非磁性層32を前記間隔50a内から露出させてもよい。このとき、前記非磁性層32が途中まで削られてもよい。前記非磁性層32を前記間隔50a内から露出させた段階でミリングを止めると図4に示す磁気検出素子が完成する。
【0333】
さらに前記非磁性層32もすべて削り、その下に形成されている第2反強磁性層31を一点鎖線Lまで除去してミリングを止めると、図6に示す磁気検出素子が完成する。
【0334】
図27に示すように、前記第3反強磁性層33は、基板20表面に対し垂直方向に削り込まれるので、前記第3反強磁性層33の内側端部33aは前記基板20表面に対し垂直方向(図示Z方向)に形成される。なお当然に、前記第3反強磁性層33の下側に形成された層まで削り込むときには、削り込まれた各層の内側端面は前記基板20表面に対し垂直方向に形成された状態になっている。
【0335】
なお例えば図27の点線Mのように、マスク層50の内側端部50bが、下面から上面に向け徐々に前記間隔50aが広がる傾斜面や湾曲面で形成されている場合、第3反強磁性層33等の内側端部33aも傾斜面あるいは湾曲面として形成される。
【0336】
マスク層50の内側端部50bが傾斜面あるいは湾曲面として形成されていると、削り込まれる間隔50a内のトラック幅方向(図示X方向)への幅寸法は下面に向うほど狭くなっていく。このためトラック幅Twを、前記マスク層50の間隔50aの幅よりもさらに小さくでき、より狭トラック化に対応可能な磁気検出素子を製造することができる。
【0337】
またどこまで削り込むかは任意であるが、少なくとも前記フリー磁性層28の中央部D上に反強磁性を帯びる程度の厚い膜厚の反強磁性層を残さないこと、およびフリー磁性層28が前記RIEやイオンミリング工程で削り込まれないようにすることが重要である。フリー磁性層28がイオンミリング等で削り込まれると、従来と同じように、前記フリー磁性層28がミリングによるダメージを受けて磁気特性の劣化を招きやすくなり好ましくない。
【0338】
なお図19に示す形態では、磁性層41をすべて除き、非磁性中間層40の途中まで削り込んでもよい。また図18に示した形態のフリー磁性層28を使用する場合、バックド層46の途中まで削り込んでもよい。
【0339】
上記したRIEやイオンミリング工程が終了した後、第2の磁場中アニールを施す。このときの磁場方向は、トラック幅方向(図示X方向)である。なおこの第2の磁場中アニールは、第2の印加磁界を、第1反強磁性層22の交換異方性磁界よりも小さく、しかも熱処理温度を、前記第1反強磁性層22のブロッキング温度よりも低くする。なお前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層28の飽和磁界及び前記フリー磁性層28の反磁界より大きくすることがより好ましい。これによって前記第1反強磁性層22の交換異方性磁界の方向をハイト方向(図示Y方向)に向けたまま、前記第2反強磁性層31の両側端部Cの交換異方性磁界をトラック幅方向(図示X方向)に向けることができる。なお第2の熱処理温度は例えば250℃であり、磁界の大きさは24k(A/m)である。
【0340】
前記第2反強磁性層31の両側端部Cは、その上に形成された第3反強磁性層33との間で発生する反強磁性的な相互作用によって反強磁性の性質を帯びているから、この第2の磁場中アニールによって、前記第2反強磁性層31の両側端部Cは規則化変態し、前記第2反強磁性層31の両側端部Cとフリー磁性層28の両側端部Cとの間に大きな交換結合磁界が発生する。これによって前記フリー磁性層28の両側端部Cの磁化は、トラック幅方向(図示X方向)に固定される。
【0341】
一方、前記フリー磁性層28の中央部D上には反強磁性の性質を帯びない程度の薄い膜厚の反強磁性層しか形成されていないから、上記の第2の磁場中アニールによっても、フリー磁性層28の中央部D上に形成された第2反強磁性層31の中央部Dは規則化変態せず、前記第2反強磁性層31の中央部Dと前記フリー磁性層28の中央部D間には交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の中央部Dが両側端部Cと同様にトラック幅方向に強固に固定されるといったことがない。
【0342】
前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態である。
【0343】
このように本発明では、従来に比べてフリー磁性層28の磁化制御を適切に行うことができ、狭トラック化においても再生感度に優れた磁気検出素子を製造することができる。
【0344】
また上記の第2の磁場中アニールで、非磁性層32を構成するRuなどの貴金属元素が、第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33内部に拡散するものと考えられる。従って熱処理後における前記第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33の構成元素は、反強磁性層を構成する元素と貴金属元素とから構成される。また前記第2反強磁性層31及び第3反強磁性層33内部に拡散した貴金属元素は、前記第2反強磁性層31の下面側よりも前記第2反強磁性層31の表面側の方が多く、第3反強磁性層33の表面側よりも下面側の方が多い。拡散した貴金属元素の組成比は、前記第2反強磁性層31の表面から下面に向うに従って、及び第3反強磁性層33の下面から表面に向うにしたがって従って徐々に減るものと考えられる。このような組成変調は、SIMS分析装置などで確認することが可能である。
【0345】
またこの第2の磁場中アニールを図26工程の後、すなわち非磁性層32上に第3反強磁性層33及び中間層35を成膜した後、施してもよい。かかる場合、前記第2反強磁性層31は第3反強磁性層33が重ねて形成されたことで、反強磁性の性質を帯びており、第2の磁場中アニールで前記第2反強磁性層31は規則化変態し、前記第2反強磁性層31とフリー磁性層28との間で大きな交換結合磁界が生じ、一旦、フリー磁性層28全体の磁化がトラック幅方向に固定されやすくなるが、図27工程で、第3反強磁性層33の中央部Dや前記第3反強磁性層33及び第2反強磁性層31の中央部Dを削り込むことで、前記フリー磁性層28の中央部D上に形成された反強磁性層との間で発生する交換結合磁界は弱まり、前記フリー磁性層28の中央部Dを磁化反転しやすい程度に弱い磁化に変えることができるものと考えられる。
【0346】
図28は、電極層34の形成工程を示す一工程図である。図面は記録媒体との対向面側から部分拡大断面図である。
【0347】
図27に示すマスク層50がレジストなど、残しておいても電極層とはなり得ない材質の場合、前記マスク層50を除去した後、電極層34を前記第3反強磁性層33上に形成しなければならない。
【0348】
図28工程に示すように、前記第3反強磁性層33間の間隔50aから、さらに前記第3反強磁性層33の一部の上面にまでレジスト層51を形成する。なお前記間隔50a内にのみレジスト層51を設けてもよい。そして前記レジスト層51に覆われていない前記第3反強磁性層33上に電極層34を成膜し、前記レジスト層51を除去する。これによって前記第3反強磁性層33上に電極層34を形成できる。
【0349】
以上図4ないし図6に示すCIP型の磁気検出素子の製造方法について説明したが、次に図11ないし図12に示すCPP型の磁気検出素子の製造方法を、特に図4ないし図6に示す磁気検出素子の製造方法と異なる部分について詳述する。
【0350】
図25工程後、図26工程で、第3反強磁性層33の上に第1絶縁層70を連続スパッタ成膜する。
【0351】
次に図29に示すように前記第1絶縁層70の上に露光現像によってトラック幅方向(図示X方向)の中央部に穴部80aが設けられたレジスト層80を形成する。
【0352】
次に図29に示す矢印O方向からのイオンミリングによって前記レジスト層80に覆われていない第1絶縁層70及び第3反強磁性層33を削り込む(図29に示す点線部分の各層が除去される)。この削り込みをどこまでにするかによって形態が図10ないし図12のように変化する。
【0353】
なお、第3反強磁性層33の両側端部C上に第1絶縁層70を形成し、前記第1絶縁層70をマスクとして、前記第1絶縁層に70覆われていない前記第3反強磁性層33の中央部Dを削ってもよい。
【0354】
なお図29に示す前記レジスト層80の内側端面80bは、垂直面であるが、これが傾斜面あるいは湾曲面であるかまたは、イオンビーム時のビーム入射角が基板面から傾いていると、前記イオンミリングによる削り込みによって第3反強磁性層33の両側端部33aも傾斜面あるいは湾曲面として形成される。そして前記レジスト層80を除去する。
【0355】
図30に示す工程では、前記第1絶縁層70上から前記第3反強磁性層33及び第1絶縁層の内側端部、および磁気検出素子の中央部DにかけてAl23、SiO2、AlN、Al−Si−O−N、Al−Si−O、Ti23、Ti35などの絶縁材料からなる第2絶縁層71をスパッタ成膜する。スパッタ法には、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。
【0356】
ここで注意すべき点は、前記第2絶縁層71を形成する際のスパッタ角度θ3(図示Z方向からの傾き)にある。図30に示すようにスパッタ方向Pは、多層膜の各層の膜面の垂直方向に対しθ3のスパッタ角度を有しているが本発明では前記スパッタ角度θ3をできる限り大きくして(すなわちより寝かせて)、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に第2絶縁層71が成膜されやすいようにすることが好ましい。例えば前記スパッタ角度θ3は50〜70°である。
【0357】
このように前記スパッタ角度θ3を大きくすることで、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成される第2絶縁層71のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚T3を、磁気検出素子の上面や第1絶縁層70に形成される第2絶縁層71の膜厚T4よりも厚く形成できる。このように前記第2絶縁層71の膜厚を調整しないと次工程でのイオンミリングで、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成された第2絶縁層71がすべて除去されてしまい、あるいは第2絶縁層71が残ってもその膜厚は非常に薄くなり、適切に分流ロスを低減させるための絶縁層として機能させることができない。
【0358】
次に図30に示すように多層膜の各層の膜面と垂直方向(図示Z方向と平行な方向)あるいは垂直方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0°〜20°程度)からイオンミリングQを施す。このとき磁気検出素子の中央部D上に形成された第2絶縁層71を適切に除去するまでイオンミリングを施す。このイオンミリングによって第3反強磁性層33の上面33bに形成された第2絶縁層71も除去される。一方、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成された第2絶縁層71も若干削れるものの、前記磁気検出素子の中央部D上に形成された第2絶縁層71よりも厚い膜厚T3を有し、しかもイオンミリングのミリング方向Qは、前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成された第2絶縁層71から見ると斜め方向になるため、第3反強磁性層33の内側端部33a上に形成された第2絶縁層71は、磁気検出素子の中央部D上に形成された第2絶縁層71に比べて削られ難く、よって前記第3反強磁性層33の内側端部33a上には適度な膜厚の第2絶縁層71が残される。
【0359】
その状態が図31である。前記第3反強磁性層33の内側端部33a上に残される第2絶縁層71のトラック幅方向における膜厚T3は5〜10nm程度であることが好ましい。
【0360】
図31に示すように前記第3反強磁性層33の上面33bは第1絶縁層70によって覆われ、また前記第3反強磁性層33の内側端部33aは前記第2絶縁層71によって覆われた状態になっている。そして必要ならば、前記絶縁層70、71から前記磁気検出素子の中央部Dにかけて図10に示す非磁性層69を形成した後、上部電極を兼ね備えた上部シールド層68をメッキ形成する。
【0361】
以上のようにして形成された磁気検出素子では、第3反強磁性層33の上面33b、および内側端部33a上を適切に絶縁層70、71によって覆うことができ、シールド層から流れる電流の分流ロスを適切に抑制できるCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0362】
図13及び図14に示す磁気検出素子では下部シールド層65に突出部65a及び前記下部シールド層65の両側端部65bとシードレイヤ21間に絶縁層78を形成するものであるが、これはまず下部シールド層65をメッキやスパッタで形成し表面を平滑化するポリシングを施した後、前記下部シールド層65のトラック幅方向(図示X方向)の中央部上にレジスト層を形成し、このレジスト層に覆われていない前記下部シールド層65の両側端部65bをイオンミリングで途中まで削り込む。これによって前記下部シールド層65のトラック幅方向の中央部に突出部65aを形成することができる。
【0363】
さらに前記レジスト層に覆われていない前記下部シールド層65の両側端面65b上に絶縁層78をスパッタ成膜し、前記絶縁層78の上面が前記下部シールド層65の突出部65aの上面65a1とほぼ同一平面となった時点で前記スパッタ成膜を終了する。そして前記レジスト層を除去する。なお前記レジスト層を除去した後、前記下部シールド層65の突出部65aの上面65a1及び絶縁層78の上面をCMPなどを用いて研磨し、前記突出部65aの上面65a1と絶縁層78の上面を高精度に同一平面となるようにしてもよい。この場合、最初のポリシング工程は不要である。
【0364】
以上、各実施形態の磁気検出素子の製造方法について説明したが、本発明では、まず第2反強磁性層31を単独では反強磁性の性質を有さない程度に薄い膜厚で且つ第3反強磁性層33が重ねて形成されることで、反強磁性の性質を適切に帯びる膜厚、具体的には20Å以上で50Å以下、好ましくは30Å以上で40Å以下の膜厚で形成している。
【0365】
また非磁性層32をRuなど、大気暴露によっても酸化されにくい材質で形成し、この非磁性層32を3Åから10Å程度の薄い膜厚で成膜している。このため前記非磁性層32をイオンミリングで削る工程のとき、低エネルギーによるイオンミリングを使用でき、前記非磁性層32の途中でイオンミリンを止めやすく、あるいは前記非磁性層32がすべて除去されても、その下に形成された第2反強磁性層31がイオンミリングによって削られないようにミリング制御をしやすく、よって前記第2反強磁性層31に与えられるミリングによるダメージを少なくできる。
【0366】
またこのように非磁性層32をイオンミリングでさらに薄く形成することで、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと、その上に前記非磁性層32を介して形成された第3反強磁性層33間に反強磁性的な相互作用を生じさせ、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記第3反強磁性層33とを一体の反強磁性層のように機能させることができる。従って本発明では前記第2反強磁性層31の両側端部Cにのみ反強磁性の性質を帯びさせることができ、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31の両側端部Cを規則化変態でき、前記第2反強磁性層31の両側端部Cと前記フリー磁性層28の両側端部C間に交換結合磁界を生じさせることができる。
【0367】
一方、前記フリー磁性層28の中央部D上には、反強磁性の性質を帯びない薄い膜厚の第2反強磁性層31が形成されているのみであるから、磁場中アニールによっても前記第2反強磁性層31の中央部Dは規則化変態しづらく前記フリー磁性層28の中央部Dとフリー磁性層28の中央部D間には交換結合磁界は発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記フリー磁性層28の中央部Dの磁化は外部磁界に対し磁化反転可能な程度に弱く単磁区化される。
【0368】
以上のように本発明における磁気検出素子の製造方法によれば、Ruなどで形成された膜厚の薄い非磁性層32の存在によって、低エネルギーのイオンミリングを使用でき、また単独層なら反強磁性の性質を有さない第2反強磁性層31と、前記第2反強磁性層31の両側端部C上に形成された第3反強磁性層33との積層構造によって適切にフリー磁性層28の磁化制御を行うことができ、本発明では狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になっている。
【0369】
なお上述したCIP型の磁気検出素子を用いて磁気ヘッドを構成するときには、基板20とシードレイヤ21の間に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層、この下地層上に積層される磁性合金からなる下部シールド層、及びこの下部シールド上に積層される絶縁性材料からなる下部ギャップ層が形成される。磁気検出素子は前記下部ギャップ層上に積層される。また、この磁気検出素子上には、絶縁性材料からなる上部ギャップ層、及びこの上部ギャップ層上に積層される磁性合金からなる上部シールド層が形成される。また、前記上部シールド層上に書き込み用のインダクティブ素子が積層されてもよい。
【0370】
また本発明における磁気検出素子はハードディスク装置に内蔵される磁気ヘッドに装備されるほか磁気センサなどにも使用可能である。
【0371】
【実施例】
図32は、CoFe合金で形成されたフリー磁性層上にPtMn合金からなる第2反強磁性層及びTaからなる非磁性層を形成し、この時点で前記フリー磁性層にかかる交換バイアス磁界(Hbf)を測定したときの「実験1」の結果と、さらに、前記非磁性層をイオンミリングにてすべて除去し、さらに前記第2反強磁性層の表面も一部削り込んだ後、残された前記第2反強磁性層の膜厚と合わせて300Åの膜厚となるように前記第2反強磁性層上にPtMn合金からなる第3反強磁性層を形成した後に前記フリー磁性層にかかる交換バイアス磁界(Hbf)を測定したときの「実験2」の結果とを示すグラフである。
【0372】
ここで交換バイアス磁界(Hbf)とは、フリー磁性層と第2反強磁性層間で発生する交換結合磁界の他、固定磁性層との間で作用する静磁界など、前記フリー磁性層に及ぼす全ての磁界のことである。
【0373】
実験に使用された成膜段階における膜構成は以下の通りである。積層膜は下から、
基板/下地層:Ta(32)/シードレイヤ:(Ni0.8Fe0.277at%Cr23at%(30)/第1反強磁性層Pt50at%Mn50at%(160)/固定磁性層:[Co90at%Fe10at%(18)/Ru(8.7)/Co90at%Fe10at%(22)]/非磁性材料層:Cu(21)/フリー磁性層:[Co90at%Fe10at%(8)/Ni80at%Fe20at%(24)]/第2反強磁性層:Pt50at%Mn50at%(X)/非磁性層:Ta(15)である。なお括弧書きは膜厚を示しており、単位はÅである。
【0374】
実験では、第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)を変化させ、前記第2反強磁性層の膜厚の異なる個々のサンプルに対して第1回目の磁場中アニールを施した。
【0375】
磁場中アニール条件は、790(kA/m)の磁場をハイト方向にかけながら、300℃、約4時間の熱処理を行った。
【0376】
そして前記フリー磁性層にかかる交換バイアス磁界(Hbf)がどの程度の大きさであるかを測定した。その結果は、図32における「実験1」のグラフに表されている。
【0377】
図32に示すように、第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)が50Å程度以下であると交換バイアス磁界(Hbf)は0(A/m)に近い数値になることがわかる。
【0378】
このことから前記第2反強磁性層の膜厚が50Å以下であれば、前記フリー磁性層と第2反強磁性層間にはほとんど交換結合磁界が発生せず、前記フリー磁性層の磁化が、磁場中アニールによって固定されるといったことが起きないことがわかった。
【0379】
前記第2反強磁性層の膜厚が50Åよりも大きくなるにつれ、前記交換バイアス磁界(Hbf)は絶対値で大きくなっていく。これはフリー磁性層と第2反強磁性層間に交換結合磁界が生じ、その値が大きくなっていることを意味する。
【0380】
次に実験では、上記した膜構成の最上層であるTa膜からなる非磁性層をイオンミリングで除去する。Ta膜は大気暴露による酸化によって成膜段階よりも膜厚が大きくなっており、高エネルギーのイオンミリングを使用しないと、前記Ta膜を適切に除去できない。
【0381】
実験では前記Ta膜をイオンミリングで除去するが、このときTa膜を除去したときに露出する第2反強磁性層表面の一部までも削り込まれる。高エネルギーのイオンミリングのためミリング制御が非常に困難であるからである。そして前記第2反強磁性層上に第3反強磁性層を形成するが、このとき残された前記第2反強磁性層と第3反強磁性層との総合膜厚が300Åとなるように、前記第3反強磁性層を成膜する。
【0382】
そして2回目の磁場中アニールを行う。2回目の磁場中アニールはハイト方向に約10(kA/m)の磁場をかけ、290℃で約4時間の熱処理を行う。そして前記フリー磁性層にかかる交換バイアス磁界(Hbf)を測定した。その実験結果は図19の「実験2」のグラフに示されている。
【0383】
図32に示すように、「実験2」における交換バイアス磁界は、第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)が100Å程度であっても0(A/m)に近い数値であり、「実験1」の交換バイアス磁界と「実験2」の交換バイアス磁界を比べると、「実験2」の方が「実験1」に比べて絶対値で小さいことがわかる。
【0384】
この実験結果からわかったことは、「実験2」で使用したサンプルのように、高エネルギーのイオンミリングによって第2反強磁性層の一部までも削り込まれた場合には、前記第2反強磁性層にイオンミリングによるダメージが生じ、前記第2反強磁性層に磁気特性の劣化が生じやすくなり、前記第2反強磁性層の上に第3反強磁性層を形成しても、前記第2反強磁性層と第3反強磁性層とが一体の反強磁性層のように機能しにくく、前記第2反強磁性層が適切に反強磁性の性質を帯びないものと考えられる。
【0385】
あるいは非磁性層を構成するTa元素が成膜段階、あるいは磁場中アニールの影響で、第2反強磁性層内部に拡散してしまい、前記第2反強磁性層の反強磁性の性質を劣化させるものと考えられる。
【0386】
例えば図32の第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)が100Åのときの交換バイアス磁界(Hbf)を見てみると、「実験1」、すなわち非磁性層まで成膜し、1回目の磁場中アニールを施した後に測定した交換バイアス磁界は、絶対値で約12k(A/m)であり、第2反強磁性層とフリー磁性層間にはかなり大きな交換結合磁界が発生していると推測できる。
【0387】
ところが、「実験2」、すなわち非磁性層、および第2反強磁性層の一部を除去し、次に第3反強磁性層を付け足して、2回目の磁場中アニールを施した後に測定した交換バイアス磁界は、「実験1」よりも絶対値で小さくなってしまうことがわかる。
【0388】
本来なら「実験1」の場合よりも「実験2」の場合の方が、反強磁性層の膜厚が厚くなっているのだから、「実験2」の方が「実験1」よりも絶対値で大きな交換バイアス磁界が得られてもよさようなものであるが、「実験2」の場合、絶対値で急激に交換バイアス磁界が小さくなるのは、上記したように、イオンミリングによるダメージによって第2反強磁性層の磁気特性が劣化し、さらにはTa元素の拡散によって前記第2反強磁性層の反強磁性としての性質が劣化したからであると考えられる。
【0389】
以上のことから、非磁性層としてTa膜を使用すると、第2反強磁性層へのイオンミリングによるダメージが大きくなり、あるいはTa元素の拡散によって、第3反強磁性層を付け足しても交換バイアス磁界が小さくなってしまい、良好なフリー磁性層の磁化制御が行えないことがわかった。
【0390】
次に非磁性層としてRuを用い、フリー磁性層の膜厚及び第2反強磁性層の膜厚が異なる複数のサンプルを用意し、前記非磁性層に対するイオンミリング時間と、フリー磁性層への交換バイアス磁界(Hbf)との関係を測定した。
【0391】
実験に使用した膜構成は以下の通りである。膜構成は下から、
基板/シードレイヤ:(Ni0.8Fe0.260at%Cr40at%(60)/第1反強磁性層Pt50at%Mn50at%(120)/固定磁性層:[Co90at%Fe10at%(14)/Ru(8.7)/Co90at%Fe10at%(20)]/非磁性材料層:Cu(21)/フリー磁性層:[Co90at%Fe10at%(16)/Ni80at%Fe20at%(18)]/第2反強磁性層:Pt50at%Mn50at%(Y)/非磁性層:Ru(8)である。なお括弧書きは膜厚を示しており、単位はÅである。
【0392】
第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)が30Å、40Åからなる2種類のサンプルを作成した。
【0393】
まず上記した膜構成のサンプルに対し一回目の磁場中アニールを行う。磁場中アニールの条件は、ハイト方向に790(kA/m)の磁場をかけ、290℃で約4時間の熱処理を行った。
【0394】
次に前記非磁性層をイオンミリングで削る。実験ではイオンミリング時間を10秒から50秒の範囲とした。
【0395】
その後、前記Ruからなる非磁性層上に第3反強磁性層を成膜し、このとき前記第2反強磁性層の膜厚と前記第3反強磁性層の膜厚を足し合わせた総合膜厚が300Åとなるように前記第3反強磁性層の膜厚を調整した。さらに前記第3反強磁性層の上に30ÅのTaからなる保護層を設けた。
【0396】
次に、790k(A/m)で着磁した後、ハイト方向に約24k(A/m)の磁場をかけて熱処理温度が290℃で4時間の磁場中アニールを施した。
【0397】
そして前記フリー磁性層にかかる交換バイアス磁界(Hbf)を測定した。その実験結果が図20に示されている。
【0398】
図33に示すように、成膜段階での第2反強磁性層の膜厚が40Åのとき、Ruからなる非磁性層に対するイオンミリング時間が30秒のとき最も交換バイアス磁界が大きくなることがわかった。
【0399】
また成膜段階での第2反強磁性層の膜厚が30Åのときも、イオンリング時間を30秒とすれば、最も交換バイアス磁界を大きくできることがわかった。
【0400】
図33を全体的に見ると、成膜段階での第2反強磁性層の膜厚が30Åの場合、成膜段階での第2反強磁性層の膜厚が40Åに比べて交換バイアス磁界が小さくなるが、これは成膜段階での第2反強磁性層の膜厚が小さいほど、前記第2反強磁性層上に第3反強磁性層を重ねて形成しても、磁場中アニールによる前記反強磁性層の規則化が弱くなり、前記第2反強磁性層とフリー磁性層間で発生する交換結合磁界が小さくなるためと考えられる。しかしながら成膜段階での前記第2反強磁性層の膜厚が30Å程度であっても、イオンミリング時間を20秒以上にすれば十分にフリー磁性層の磁化制御を行うことができるものと考えられる。
【0401】
またイオンミリング時間が30秒のとき最も交換バイアス磁界が大きくなるのは、この時点でほぼRuからなる非磁性層が削り取られているためであると考えられる。すなわちイオンミリング時間が30秒よりも短いほど第2反強磁性層上にRuからなる非磁性層が残りやすく、第2反強磁性層と第3反強磁性層間の反強磁性的な相互作用が弱まり、前記第2反強磁性層を磁場中アニールによっても規則化が弱まるため、前記第2反強磁性層とフリー磁性層間に発生する交換結合磁界が小さくなってしまうものと考えられる。
【0402】
一方、イオンミリング時間を30秒よりも長くすると、Ruからなる非磁性層が完全に除去され、さらに第2反強磁性層までも一部削られ、前記第2反強磁性層がイオンミリングによるダメージを受けて磁気特性が劣化し、そのために交換バイアス磁界が低下するものと考えられる。
【0403】
図33の実験結果によれば、Ruの非磁性層が8Åのとき、イオンミリング時間を20秒から40秒程度にすると、フリー磁性層に対する交換バイアス磁界を大きくできることがわかった。
【0404】
次に本発明では、Ruからなる非磁性層をイオンミリングするときのミリング角度を変えて、フリー磁性層にかかる縦バイアス磁界を測定した。
【0405】
実験に使用した膜構成は以下の通りである。膜構成は下から、
基板/シードレイヤ:(Ni0.8Fe0.260at%Cr40at%(60)/第1反強磁性層Pt50at%Mn50at%(120)/固定磁性層:[Co90at%Fe10at%(14)/Ru(8.7)/Co90at%Fe10at%(20)]/非磁性材料層:Cu(21)/フリー磁性層:Co90at%Fe10at%(24)/第2反強磁性層:Pt50at%Mn50at%(30)/非磁性層:Ru(8)である。なお括弧書きは膜厚を示しており、単位はÅである。
【0406】
次に上記膜構成からなるサンプルに対し第1の磁場中アニールを施し、Ruからなる非磁性層をイオンミリングした。イオンミリングの角度は基板表面の垂直方向に対し40°、50°、60°傾いた角度の3種類である。またイオンミリング時間を20秒〜50秒とした。その後、第3反強磁性層の付け足しや第2の磁場中アニールを施すが、その条件はすべて図33に示す実験での条件と同じである。
【0407】
実験では、各イオンミリング角度時において、イオンミリング時間が20秒、30秒、40秒及び50秒のときにフリー磁性層にかかる交換バイアス磁界を求めた。その実験結果は図34に表されている。
【0408】
図34に示すように、ミリング角度が40°のとき、ミリング時間を20秒以上にすると交換バイアス磁界が絶対値で小さくなっていくことがわかる。ミリング角度を40°とするとミリングレートが、50°、60°のミリング角度時に比べて速いため、ミリング時間を長くしすぎると、Ruからなる非磁性層が削られるのみならず第2反強磁性層も削られやすくなりミリングによるダメージを受け、前記第2反強磁性層の磁気特性が劣化しやすくなる。このためミリング角度が40°のときは、50°や60°の場合に比べてミリング時間を長くすると交換バイアス磁界が低下しやすくなる。
【0409】
ミリング角度が60°のときは、ミリング時間を30秒程度にすると最も絶対値で大きい交換バイアス磁界を得られることがわかった。ミリング時間を30秒より長くしていくと徐々に交換バイアス磁界の絶対値は小さくなっていくことがわかる。
【0410】
これは上記したように、Ruからなる非磁性層のみならず第2反強磁性層もイオンミリングによるダメージを受けて磁気特性が劣化するためであると考えられる。
【0411】
図34に示す実験結果では、ミリング角度を40°〜60°としてもミリング時間を適切に調整することで、大きな交換バイアス磁界を得られることがわかった。なおミリング角度は30°以上で70°以下程度であってもミリング時間の調整によって大きな交換バイアス磁界を得られるものと考えられる。
【0412】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明の第1の磁気検出素子は、フリー磁性層上には第2反強磁性層が設けられ、少なくとも前記第2反強磁性層の中央部上には非磁性層が設けられ、前記第2反強磁性層の両側端部上には、第3反強磁性層が設けられることを特徴とするものである。
【0413】
また本発明の第2の磁気検出素子は、前記フリー磁性層の少なくとも両側端部上には第2反強磁性層が設けられ、前記第2反強磁性層上には非磁性層が設けられ、さらに前記非磁性層の上には第3反強磁性層が設けられることを特徴とするものである。
【0414】
上記の本発明による磁気検出素子によれば、前記フリー磁性層の両側端部上には、第2反強磁性層と第3反強磁性層とが積層されており、前記第2反強磁性層と第3反強磁性層とが一体の反強磁性層のようになっている。従って前記フリー磁性層の両側端部の磁化は前記第2反強磁性層との間で発生する交換結合磁界によって強固にトラック幅方向に固定された状態になり、一方、フリー磁性層の中央部は外部磁界に対し磁化変動できる程度に弱く単磁区化された状態になっている。
【0415】
本発明におけるフリー磁性層の磁化制御の方法は以下の点に特徴点がある。
本発明では、成膜段階で第2反強磁性層を単独では反強磁性の性質を有さない程度の薄い膜厚で形成することに第1の特徴点がある。これによって完成した磁気検出素子のフリー磁性層の中央部と前記第2反強磁性層の中央部との間で交換結合磁界が発生するのを抑制でき、前記フリー磁性層の中央部の磁化を外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化できるのである。
【0416】
次に本発明では、成膜段階で前記第2反強磁性層の上に非磁性層を成膜するが、この非磁性層をRuなど大気暴露によっても酸化しにくい材質で形成し、前記非磁性層を薄い膜厚で形成している点に第2の特徴点がある。本発明では、前記非磁性層の両側端部を低エネルギーのイオンミリングで削って膜厚調整を行うことができ、従来に比べて前記非磁性層の下側の層に対してイオンミリングによるダメージを与え難い。
【0417】
また前記非磁性層の両側端部を薄い膜厚にイオンミリングすることで、第2反強磁性層の両側端部と第3反強磁性層間に反強磁性的な相互作用を生じさせることができ、前記第2反強磁性層の両側端部が反強磁性の性質を帯び、磁場中アニールによって前記第2反強磁性層の両側端部とフリー磁性層の両側端部間に大きな交換結合磁界が発生し、前記フリー磁性層の両側端部の磁化を適切に固定することが可能になる。
【0418】
以上のように本発明では、従来における磁気検出素子に比べてより効果的にフリー磁性層の磁化制御を行うことができる構造であり、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図2】本発明の第2形態(参考例)である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図5】本発明の第5の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図6】本発明の第6の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図7】本発明の第7の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図8】本発明の第8形態(参考例)である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図9】本発明の第9の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図10】本発明の第10の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図11】本発明の第11の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図12】本発明の第12の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図13】本発明の第13の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図14】本発明の第14の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図15】本発明におけるフリー磁性層の形態を記録媒体との対向面側から見た部分拡大断面図、
【図16】本発明におけるフリー磁性層の別の形態を記録媒体との対向面側から見た部分拡大断面図、
【図17】本発明におけるフリー磁性層の別の形態を記録媒体との対向面側から見た部分拡大断面図、
【図18】本発明におけるフリー磁性層の別の形態を記録媒体との対向面側から見た部分拡大断面図、
【図19】本発明の第15の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図20】本発明の第16の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図21】図1の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図
【図22】図21の次に行なわれる一工程図、
【図23】図22の次に行なわれる一工程図、
【図24】図7の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【図25】図4の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【図26】図25の次に行なわれる一工程図、
【図27】図26の次に行なわれる一工程図、
【図28】電極層を形成するための工程を示す一工程図、
【図29】図10の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【図30】図29の次に行なわれる一工程図、
【図31】図30の次に行なわれる一工程図、
【図32】非磁性層としてTa膜を用いたときの第2反強磁性層の膜厚(成膜段階)とフリー磁性層にかかる交換バイアス磁界との関係を示すグラフ、
【図33】非磁性層としてRuを用いたときの前記非磁性層に対するイオンミリング時間と交換バイアス磁界との関係を示すグラフ、
【図34】非磁性層としてRuを用いたときの前記非磁性層に対するイオンミリング角度及びミリング時間と交換バイアス磁界との関係を示すグラフ、
【図35】従来における磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図36】従来における別の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【図37】図36の次に行なわれる一工程図、
【符号の説明】
20 基板
21 シードレイヤ
22 第1反強磁性層
23 固定磁性層
27 非磁性材料層
28 フリー磁性層
31 第2反強磁性層
32 非磁性層
33 第3反強磁性層
34 電極層
49、80 レジスト層
50 マスク層
65 下部シールド層
67 絶縁層
68 上部シールド層
70 第1絶縁層
71 第2絶縁層
C 両側端部
D 中央部

Claims (46)

  1. 下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層を有する多層膜が設けられ、
    前記第1磁性層上には、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された合金層が形成され、前記合金層の膜厚は20Å以上で50Å以下であり、
    前記合金層の両側端部上には第3反強磁性層が重ねられて、前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、前記合金層の中央部上には非磁性層が設けられ、前記合金層の中央部上に形成された非磁性層の膜厚は3Å以上で10Å以下であり、前記非磁性層は、前記合金層の両側端部と第3反強磁性層間にも介在しており、
    前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間で交換結合磁界が生じて前記第1磁性層の両側端部の磁化は、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定され、一方、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能することを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記非磁性層の膜厚は、中央部の方が両側端部よりも厚い請求項1記載の磁気検出素子。
  3. 前記第3反強磁性層と前記合金層の両側端部間には、3Å以下の非磁性層が設けられる請求項1又は2に記載の磁気検出素子。
  4. 前記合金層の膜厚は30Å以上で40Å以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気検出素子。
  5. 下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層を有する多層膜が設けられ、
    前記第1磁性層の少なくとも両側端部上には、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された第1合金層が形成され、前記第1合金層の膜厚は20Å以上で50Å以下であり、
    前記第1合金層上には非磁性層が設けられ、さらに前記非磁性層の上には第3反強磁性層が設けられ、
    前記第3反強磁性層と前記非磁性層を介して重ねられた前記第1合金層は第2反強磁性層として機能して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間で交換結合磁界が生じて前記第1磁性層の両側端部の磁化は、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定され、一方、前記第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能することを特徴とする磁気検出素子。
  6. 前記第1磁性層の中央部上にも20Å以上で50Å以下の膜厚で形成された前記第1合金層が設けられ、前記第1合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部は、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能する請求項5記載の磁気検出素子。
  7. 前記第1磁性層の中央部上にも前記第1合金層を介して前記非磁性層が設けられる請求項6記載の磁気検出素子。
  8. 前記第3反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された第2合金層で形成されており、
    前記第1磁性層の中央部上に、前記第2合金層が、前記第1合金層及び前記非磁性層を介して形成され、前記中央部上の前記第2合金層は、その両側に位置する前記第3反強磁性層の膜厚よりも薄く、前記中央部上に位置する前記第1合金層と前記第2合金層の総合膜厚は、50Å以下で形成されている請求項7記載の磁気検出素子。
  9. 前記総合膜厚は、40Å以下で形成される請求項8記載の磁気検出素子。
  10. 前記第1磁性層の両側端部上に設けられた前記非磁性層の膜厚は、0.2Å以上で3Å以下である請求項5ないし9のいずれかに記載の磁気検出素子。
  11. 前記非磁性層は、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成される請求項1ないし10のいずれかに記載の磁気検出素子。
  12. 前記第1磁性層は磁性層の3層構造で形成される請求項1ないし11のいずれかに記載の磁気検出素子。
  13. 前記第1磁性層は、CoFe/NiFe/CoFeの3層構造である請求項12記載の磁気検出素子。
  14. 前記第3反強磁性層の上には電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に流れる請求項1ないし13のいずれかに記載の磁気検出素子。
  15. 前記多層膜の中央部上、および前記第3反強磁性層の上には上部電極層が設けられ、前記多層膜の下には下部電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れる請求項1ないし13のいずれかに記載の磁気検出素子。
  16. 前記上部電極層は、磁性材料で形成された上部シールド層である請求項15記載の磁気検出素子。
  17. 前記第3反強磁性層と前記上部電極層との間には絶縁層が設けられている請求項16記載の磁気検出素子。
  18. 前記第3反強磁性層の上面には第1絶縁層が設けられ、この第1絶縁層と別体の第2絶縁層が前記第3反強磁性層の内側端面に設けられ、前記第3反強磁性層と前記上部電極層間には前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が介在している請求項16記載の磁気検出素子。
  19. 前記下部電極層は磁性材料で形成された下部シールド層である請求項15ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子。
  20. 前記下部電極層のトラック幅方向の中央には前記多層膜方向に突出した突出部が設けられ、この突出部の上面が前記多層膜の下面に接し、前記下部電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層膜との間には絶縁層が設けられる請求項15ないし19のいずれかに記載の磁気検出素子。
  21. 前記突出部の上面と前記下部電極層の両側端部上に設けられた絶縁層の上面とは同一平面で形成される請求項20記載の磁気検出素子。
  22. 前記非磁性材料層は非磁性導電材料で形成される請求項1ないし21のいずれかに記載の磁気検出素子。
  23. 前記非磁性材料層は絶縁材料で形成される請求項15ないし21のいずれかに記載の磁気検出素子。
  24. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (a)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、合金層及び非磁性層の順に積層し、このとき前記合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
    (b)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
    (c)前記非磁性層の中央部上にレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記非磁性層の両側端部を削り、このとき前記非磁性層の両側端部を一部残す工程と、
    (d)前記残された前記非磁性層の両側端部上に第3反強磁性層を形成し、前記レジスト層を除去する工程と、
    (e)前記第3反強磁性層下に前記非磁性層を介して対向する前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程。
  25. 前記合金層を30Å以上で40Å以下で形成する請求項24記載の磁気検出素子の製造方法。
  26. 前記(a)工程で、前記非磁性層を3Å以上で10Å以下で形成する請求項24又は25に記載の磁気検出素子の製造方法。
  27. 前記(c)工程で、前記非磁性層の両側端部の膜厚が3Å以下となるまで、前記非磁性層の両側端部を削り込む請求項24ないし26のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  28. 前記(a)工程における基板は下部電極層であり、前記(d)工程で、前記第3反強磁性層の上に絶縁層を形成し、前記(d)工程と(e)工程の間で、前記絶縁層上から前記非磁性層の中央部上にかけて上部電極層を形成する請求項24ないし2のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  29. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (a)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、合金層及び非磁性層の順に積層し、このとき前記合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
    (b)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
    (c)´前記非磁性層の中央部上にレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない非磁性層の両側端部を全て削り、前記合金層の両側端部表面を露出させる工程と、
    (d)´前記露出した合金層の両側端部上に第3反強磁性層を形成し、前記レジスト層を除去する工程と、
    (e)前記第3反強磁性層下に前記非磁性層を介して対向する前記合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層と前記第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記合金層の中央部下に位置する前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程。
  30. 前記(a)工程で、前記第1磁性層を磁性層の3層構造で形成する請求項24ないし29のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  31. 前記第1磁性層をCoFe/NiFe/CoFeの3層構造で形成する請求項30記載の磁気検出素子の製造方法。
  32. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (f)基板上に、下から第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、第1合金層及び非磁性層の順で積層し、このとき前記第1合金層をPtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成するとともに、前記第1合金層の膜厚を20Å以上で50Å以下で形成する工程と、
    (g)第1の磁場中アニールを施して、前記第1反強磁性層と固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記固定磁性層の磁化をハイト方向に固定する工程と、
    (h)前記非磁性層表面を一部削る工程と、
    (i)前記非磁性層上に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成された第2合金層から成る第3反強磁性層を形成する工程と、
    (j)前記第3反強磁性層の両側端部上に第1マスク層を形成し、前記第1磁性層の中央部上に位置する前記第1合金層と前記第2合金層との合計膜厚が50Å以下となるまで、前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を削る工程と、
    (k)前記第1マスク層下に残された第3反強磁性層下に位置する前記第1合金層の両側端部は第2反強磁性層として機能し、第2の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁性層の両側端部と、第1磁性層の両側端部間に交換結合磁界を発生させ、前記第1磁性層の両側端部の磁化を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に固定するとともに、前記第1磁性層の中央部を、外部磁界に対し磁化方向が変動するフリー磁性層として機能させる工程。
  33. 前記(f)工程で、前記第1合金層を30Å以上で40Å以下で形成する請求項32記載の磁気検出素子の製造方法。
  34. 前記(f)工程で、前記非磁性層を3Å以上で10Å以下で形成する請求項32又は33に記載の磁気検出素子の製造方法。
  35. 前記(h)工程で、前記非磁性層を0.2Å以上で3Å以下残す請求項32ないし34のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  36. 前記(j)工程で、前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を全て除去して、前記非磁性層表面を露出させる請求項32ないし35のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  37. 前記(j)工程で、前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を全て除去し、さらに露出した前記非磁性層も除去して、第1合金層表面を露出させる請求項32ないし35のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  38. 前記(k)工程における第2の磁場中アニールを、(i)工程と(j)工程の間で行う請求項32ないし37のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  39. 前記(f)工程での基板は下部電極層であり、
    前記(i)工程で前記第3反強磁性層の上に第1絶縁層を形成し、
    前記(j)工程で前記第1絶縁層の両側端部上に前記第1マスク層を形成し、前記第マスク層に覆われていない前記第1絶縁層、および第2合金層の中央部を削り、
    前記(j)工程後、前記第1絶縁層上、前記第3反強磁性層の内側端面上、および前記第3反強磁性層間の中央部上にかけて第2絶縁層を形成し、次に前記第3反強磁性層の内側端面上に形成された第2絶縁層を一部残し、それ以外の第2絶縁層を削って除去し、
    前記第1絶縁層上から、第2絶縁層上及び前記中央部上にかけて上部電極層を形成する請求項32ないし38のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  40. 前記(f)工程での基板は下部電極層であり、
    前記(j)工程で第1絶縁層からなる前記第1マスク層を形成し、第1絶縁層からなる前記第1マスク層に覆われていない前記第2合金層の中央部を削り、
    前記(j)工程後、第1絶縁層からなる前記第1マスク層上、前記第3反強磁性層の内側端面上、および前記第3反強磁性層間の中央部上にかけて第2絶縁層を形成し、次に前記第3反強磁性層の内側端面上に形成された第2絶縁層を一部残し、それ以外の第2絶縁層を削って除去し、
    第1絶縁層からなる前記第1マスク層上から、第2絶縁層上及び前記中央部上にかけて 上部電極層を形成する請求項32ないし38のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  41. 前記第2絶縁層の形成の際の成膜角度を、下部電極層の表面の垂直方向に対し斜めに傾いた角度θ1とし、前記第2絶縁層を削る際の入射角度を、前記角度θ1よりも小さい角度θ2として、前記垂直方向あるいは前記垂直方向により近い方向から前記第2絶縁層を削り取る請求項39記載の磁気検出素子の製造方法。
  42. 前記(f)工程で、前記第1磁性層を磁性層の3層構造で形成する請求項32ないし41のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  43. 前記第1磁性層をCoFe/NiFe/CoFeの3層構造で形成する請求項42記載の磁気検出素子の製造方法。
  44. 前記下部電極層の両側端部を削り込んで、その両側端部上に絶縁層を形成し、前記第1反強磁性層を、前記下部電極層の中央部に形成された突出部上、および絶縁層上に形成する請求項29、39ないし41のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  45. 前記下部電極層及び上部電極層を磁性材料で形成する請求項29、39ないし41、44のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  46. 前記非磁性層を、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rhのいずれか1種または2種以上で形成する請求項24ないし45のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
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