JP3603023B2 - 磁気抵抗効果型素子およびその製造方法 - Google Patents

磁気抵抗効果型素子およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ヘッド、磁気式センサ等に用いられる磁気抵抗効果型素子に関し、特にスピンバルブ効果を利用した磁気抵抗効果型素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図17は、この種の磁気抵抗効果型素子の従来技術を説明するためのものであり、この磁気抵抗効果型素子31は、Al−TiCセラミック等の非磁性材料からなる基板32上に、下部シールド磁性膜(不図示)が形成され、さらにその上に形成されたAl等からなる非磁性絶縁層33上に、PtMn合金等からなる反強磁性層34、CoFe合金等からなる固定磁性層35、Cu等からなる非磁性導電層36、CoFe合金等からなるフリー磁性層37を順次積層した構造を有する積層体38が形成されて、積層体38上には、タンタル等からなる保護層39が積層され、Cr等からなる非磁性層40が積層体38の両端面から積層体38の両側領域に延びるように形成されており、非磁性層40上にCoPt合金等からなるバイアス層41が積層体38を両端から挟むように配設され、各バイアス層41上にはCr等からなる電極層42が形成され、バイアス層41と積層体38とが非磁性層40を介して接した状態となっている。この非磁性層40は、バイアス層41の保磁力を高めバイアス層41の発するバイアス磁界をトラック幅方向(図示X方向)に安定に向かせる働きをする。
【0003】
そして、固定磁性層35は、反強磁性層34との界面にて発生する交換結合磁界により磁化されて、反強磁性層34と固定磁性層35とが磁気的に結合されており、この結合によって固定磁性層35の磁化方向が、図示Y方向(図17の紙面に向かう)に固定されている。
【0004】
また、図示X方向に磁化されているバイアス層41の発する磁界がバイアス磁界としてフリー磁性層37に印加され、このバイアス磁界によってフリー磁性層37は、その磁化方向が固定磁性層35の磁化方向と交叉する図示X方向に揃えられ全体として単磁区化された状態となっている。
【0005】
このように構成された磁気抵抗効果型素子31は、例えば磁気ヘッドに適用されて磁気ディスク装置に組み込まれ、電極層42からバイアス層41及び非磁性層40を介して固定磁性層35、非磁性導電層36及びフリー磁性層37に検出電流が与えられた状態で、フリー磁性層37の幅で規定されるトラック幅Tw2で示される領域を矢印Z方向に回転走行する磁気ディスクの所望のトラックに位置決めし、外部磁界としてこの所望のトラックからの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、この漏れ磁界をフリー磁性層37の全体で感知してフリー磁性層37の全体の磁化が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。
【0006】
このとき、固定磁性層35と非磁性導電層36,及びフリー磁性層37を流れる電子が、固定磁性層35と非磁性導電層36との界面及びフリー磁性層37と非磁性導電層36との界面でスピンに依存した散乱を起こすことによって磁気抵抗効果型素子31の電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により上記所望トラックからの漏れ磁界が検出される。これによって、磁気抵抗効果型素子31は、上記所望トラックに記録された記録情報を読み出すことができる。
【0007】
そして、磁気抵抗効果型素子31の電気抵抗の変化は、固定磁性層35からフリー磁性層37に向かって移動しようとする電子のうちの、固定磁性層35と非磁性導電層36との界面で散乱を起こさずにフリー磁性層37内に進入する、フリー磁性層37の磁化方向に平行なスピンを持つアップスピン伝導電子の移動距離が長い程より大きなものとなり、この伝導電子の移動距離が延びる程外部磁界検出感度が向上する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
磁気ディスク装置の高密度化・大容量化に伴って、前述の磁気抵抗効果型素子31にあっては、図17に示すトラック幅Tw2を小さくして狭トラック化することが求められている。しかしながら、フリー磁性層37の両端面には非磁性層40を介してバイアス層41が接続されているため、トラック幅Tw2を小さくしていくと、トラック幅方向(図示X方向)における反磁界が大きくなり、フリー磁性層37を図示X方向に単磁区化させることができなくなって、フリー磁性層37の両端部分に磁壁が出現しこの磁壁の不規則な移動が原因であるバルクハウゼンノイズの発生を抑えることができなくなるという欠点があった。
【0009】
そこで、本発明者は上記要求に応えるため、図18に示すような磁気抵抗効果型素子51を試作した。この磁気抵抗効果型素子51は、非磁性層40をFeCo合金等の軟磁性膜からなるバイアス下地層52に置き換えた点以外は上述の磁気抵抗効果型素子31と同様である。このように構成された磁気抵抗効果型素子51は、図示X方向に磁化されているバイアス層41とバイアス下地層52とが磁気交換結合することによってバイアス下地層52の磁化方向が図示X方向に揃えられ、バイアス下地層52とフリー磁性層37とが磁気交換結合することによりフリー磁性層37の磁化方向が図示X方向に揃えられる。
【0010】
すなわち、本発明者はバイアス下地層52を介してバイアス層41とフリー磁性層37とを磁気交換結合させることでフリー磁性層37に上述したバイアス磁界を付与し、バイアス層41とフリー磁性層37とを非磁性層40を介することなく接続させることにより、トラック幅Tw2が小さくなってもフリー磁性層37の磁化方向を図示X方向に揃えて単磁区化し、フリー磁性層37の両端部分での反磁界の影響による磁壁の発生を抑えることを考えた。
【0011】
しかし、この磁気抵抗効果型素子51にあっては、点線で囲んで示す箇所F部分において、バイアス層41と反強磁性層34とがトラック幅方向(図示X方向)に対向しバイアス下地層52を介して接するようになっているため、反強磁性層34の影響を受けてバイアス層41の保磁力が低下して40KA/m程度となり、磁気ディスク装置に組み込まれて使用された際に、バイアス層41の保磁力の低下により、磁気ディスク上の上記所望トラックに隣接するトラックからの漏れ磁界を受けてバイアス層41の磁化が変動し、この変動が上記所望のトラックからの漏れ磁界の検出特性に悪影響を与え、上記所望トラックに記録された記録情報を正確に読み出すことができなくなることを本発明者は見出した。
【0012】
このバイアス層41の保磁力が低下する問題は、図19に示すように、積層体38の両側領域に反強磁性層34を延出させて、バイアス下地層40と反強磁性層34との接触面積が大きくする程より顕著に現れる。
【0013】
本発明は叙上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、バイアス層の保磁力を充分に確保することができ、トラック幅を小さくして狭トラック化を実現することの可能な磁気抵抗効果型素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の磁気抵抗効果型素子は、非磁性導電層と、前記非磁性導電層の上面に形成されたフリー磁性層と、前記非磁性導電層の下面に形成された固定磁性層と、前記固定磁性層の前記非磁性導電層と反対側の下面に形成され、前記固定磁性層の磁化方向を固定する反強磁性層とを有する積層体を備え、前記積層体の両端面にはバイアス下地層が形成され、非磁性層と前記非磁性層の上面に形成されたバイアス層とを有する積層構造膜が、前記積層体を両端から前記バイアス下地層を介して挟むように配置されており、前記非磁性層の上面が前記反強磁性層よりも上方に位置し、前記バイアス層と前記バイアス下地層とが磁気交換結合し、前記バイアス下地層と前記フリー磁性層とが磁気交換結合することにより、前記フリー磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられており、前記積層構造膜は、非磁性の底上げ絶縁層を有し、前記底上げ絶縁層の上面に前記非磁性層が形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、上記構成において、前記積層体は非磁性絶縁層の上面に形成され、前記非磁性絶縁層の上面には前記積層体の両端を基点として前記積層体の両側領域に延びる凹部が形成され、前記凹部内に前記積層構造膜が配設されている構成とした。
【0016】
また、上記構成において、前記バイアス下地層が前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方に位置している構成とした。
【0018】
また、上記構成において、前記固定磁性層は、前記反強磁性層に接する下部固定磁性層と、前記下部固定磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部固定磁性層とで形成されている構成とした。
【0019】
また、上記構成において、前記フリー磁性層は、前記非磁性導電層に接する下部フリー磁性層と、前記下部フリー磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部フリー磁性層とで形成されている構成とした。
【0020】
また、上記構成において、バックド層が前記フリー磁性層上に設けられている構成とした。
【0021】
また、上記構成において、スペキュラー層が前記フリー磁性層上に設けられている構成とした。
【0022】
また、上記構成において、前記反強磁性層はPtMn合金で形成されている構成とした。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法は、基板上に形成された非磁性絶縁層上に反強磁性層,固定磁性層,非磁性導電層,及びフリー磁性層を順次積層した構造を有する多層膜を形成する工程と、前記多層膜上にフォトレジストを形成する工程と、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分をエッチングして除去することにより、前記多層膜で構成された積層体を形成する工程と、前記積層体の両端面にバイアス下地層を形成する工程と、前記多層膜が除去された前記積層体の両側領域に非磁性層をその上面が前記反強磁性層よりも上方に位置するように形成する工程と、前記非磁性層の上面にバイアス層を前記バイアス下地層に接するように形成し、前記バイアス層と前記フリー磁性層とを前記バイアス下地層を介して磁気交換結合させる工程と、を有し、前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方のみに前記バイアス下地層が存在するように、前記バイアス下地層にエッチングを施す工程を有することを特徴としている。
【0024】
また、上記製造方法において、前記積層体を形成する際に、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分に対応する前記非磁性絶縁層にもエッチングを施すようにした。
【0026】
また、上記製造方法において、前記非磁性層を形成した後に前記バイアス下地層の表面をエッチングし、その後に前記バイアス層を形成するようにした。
【0027】
また、上記目的を達成するために、本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法は、基板上に形成された非磁性絶縁層上に反強磁性層,固定磁性層,非磁性導電層、及びフリー磁性層を順次積層した構造を有する多層膜を形成する工程と、前記多層膜上にフォトレジストを形成する工程と、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分をエッチングして除去することにより、前記多層膜で構成された積層体を形成する工程と、前記積層体の両端面にバイアス下地層を形成する工程と、前記多層膜が除去された前記積層体の両側領域に非磁性層をその上面が前記反強磁性層よりも上方に位置するように形成する工程と、前記非磁性層の上面にバイアス層を前記バイアス下地層に接するように形成し、前記バイアス層と前記フリー磁性層とを前記バイアス下地層を介して磁気交換結合させる工程と、を有し、前記両側領域に前記非磁性層が搭載される非磁性の底上げ絶縁層を形成する工程を有することを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気抵抗効果型素子の一実施形態を図1乃至図11に基づいて説明する。
【0029】
この磁気抵抗効果型素子1は、図1に示すように、Al−TiCセラミック等の非磁性材料からなる基板13上に、下部シールド磁性膜(不図示)が形成され、さらにその上に形成されたAl等からなる非磁性絶縁層14の上面に、非磁性導電層4と、非磁性導電層4の上面に形成されたフリー磁性層5と、非磁性導電層4の下面に形成された固定磁性層3と、固定磁性層3の非磁性導電層4と反対側の下面に形成された反強磁性層2との4層からなり、反強磁性層2、固定磁性層3、非磁性導電層4、及びフリー磁性層5をこの順番に積層した構造を有する積層体11が形成されており、積層体11上にバックド層6及びスペキュラー層7が積層され、積層体11の両端面にはバイアス下地層8が形成されている。
【0030】
また、非磁性絶縁層14の上面には積層体11の両端を基点として積層体11の両側領域に延びる凹部14aが形成され、この凹部14a内に、非磁性層9と非磁性層9の上面に形成されたバイアス層10とを有する積層構造膜12が、積層体11を両端からバイアス下地層8を介して挟むように配設されており、非磁性層9の上面が反強磁性層2よりも上方に位置し、各バイアス層10上にCr等の電気抵抗の小さい非磁性導電材料によって形成された電極層15が形成されている。
【0031】
反強磁性層2は、固定磁性層3の磁化方向を固定する磁化方向固定膜であって、PtMn合金等で形成されており、その膜厚は12nm程度である。
【0032】
固定磁性層3は、反強磁性層2に接する下部固定磁性層3aと、下部固定磁性層3a上に設けられた非磁性中間層3bと、非磁性中間層3b上に設けられた上部固定磁性層3cとの3層で構成されて、上部・下部両固定磁性層3c,3aが、例えばCo膜、NiFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金等で形成され、非磁性中間層3bが、Ru,Rh,Ir,Cr,Re,Cuのうちの1種あるいは2種以上の合金で形成されており、これら3層の合計膜厚は5nm程度である。
【0033】
そして、下部固定磁性層3aと反強磁性層2との界面にて発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、下部固定磁性層3aの磁化方向が図示Y方向(図1の紙面に向かう)に固定され、上部固定磁性層3cの磁化方向が、上部固定磁性層3cと下部固定磁性層3aとの間で発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)により図示Y方向と反対方向に固定されている。
【0034】
非磁性導電層4は、Cu等の非磁性導電材料で形成されており、その膜厚は2.5nm程度である。
【0035】
フリー磁性層5は、CoFe合金やNiFe合金等の軟磁性材料で形成されてなるもので、バイアス層10がバイアス下地層8と磁気交換結合し、このバイアス下地層8とフリー磁性層5とが磁気交換結合することによりフリー磁性層5にバイアス磁界が付与されて、フリー磁性層5が全体として単磁区化され、フリー磁性層5の磁化が固定磁性層3の磁化方向と交叉する図示X方向に揃えられており、図示X方向におけるフリー磁性層5の幅でトラック幅Tw1が規定され、このトラック幅Tw1は従来技術で述べたトラック幅Tw2と比較して小さなものとなっている。
【0036】
バックド層6は、Au,Ag,Cu等の非磁性導電材料で形成されてなるもので、1.7nm程度の膜厚を有しており、その膜厚内にフリー磁性層5を突き抜けたアップスピン伝導電子を進入させて、このアップスピン伝導電子の平均自由行程を延ばすことにより、所謂スピンフィルター効果により磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗変化率を高めるように機能する。
【0037】
スペキュラー層7は、Ta等で形成されて3nm程度の膜厚を有し、バックド層6を通過した上述のアップスピン伝導電子を反射して、その平均自由行程を更に延ばすことで、磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗変化率の向上に寄与する。
【0038】
バイアス下地層8は、FeCo合金等の軟磁性材料で形成されてなるもので、バイアス層10及びフリー磁性層5とそれぞれ磁気交換結合しており、バイアス層10と磁気交換結合することで磁化方向が図示X方向に揃えられ、フリー磁性層5との磁気交換結合によりフリー磁性層5に磁壁が出現するのを抑えバルクハウゼンノイズの発生を防止している。
【0039】
非磁性層9は、バイアス層10の保磁力(Hc)を高めバイアス層10の残留磁化(Br)を増大させる働きをするもので、体心立方(bcc)構造で且つ(110)や(200)配向性を有するCr等の金属膜で形成され、その膜厚は3nm程度である。
【0040】
バイアス層10は、CoPt合金等で形成されてなるもので、8nm程度の膜厚を有し、着磁が施されて図示X方向に磁化され、バイアス下地層8を介してフリー磁性層5と磁気交換結合してフリー磁性層5にバイアス磁界を付与しており、CoPt合金の結晶構造は、面心立方(fcc)構造と稠密六方(hcp)構造の混晶となっていて、格子定数がCrの格子定数と近似しているため、非磁性層9の影響を受けて(hcp)構造のc軸がCoPt合金とCrの境界面内に優先配向されて成長している。そして、(hcp)構造は(fcc)構造に比べc軸方向に大きな磁気異方性を生じる。図1に示す構成は非磁性層9の(bcc)構造のCr等の上にバイアス層10を積層するので、バイアス層10の着磁したときの保磁力(Hc)はより大きな144KA/m程度となっている。さらに、(hcp)構造のc軸は、CoPt合金とCrとの境界面内で優先配向となっているため、バイアス層10の残留磁化(Br)は増大し、残留磁化(Br)/飽和磁束密度(Bs)で与えられる角形比Sも大きな値となる。
【0041】
次に、このように構成された磁気抵抗効果型素子1の製造方法について説明すると、先ず、基板13上に下部シールド磁性膜(不図示)を形成し、さらにその上に非磁性絶縁層14を形成し、次いで、スパッタリング法により、図2に示すように、非磁性絶縁層14上に、反強磁性層2、下部固定磁性層3a、非磁性中間層3b、上部固定磁性層3c、非磁性導電層4及びフリー磁性層5を順次積層して、上部固定磁性層3c、非磁性中間層3b、下部固定磁性層3aで固定磁性層3を構成し、反強磁性層2、固定磁性層3、非磁性導電層4及びフリー磁性層5を順次積層した構造を有する多層膜16を形成する。次に、フリー磁性層5上に、バックド層6及びスペキュラー層7を同じくスパッタリング法によって順次形成する。
【0042】
次に、図2に示す状態で、多層膜16に磁場中で熱処理を施し、反強磁性層2と下部固定磁性層3aとの界面にて交換結合磁界を発生させ、下部固定磁性層3aの磁化方向を図示Y方向に固定する。そして、下部固定磁性層3aの磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層3bを介して対向する上部固定磁性層3cの磁化方向が図示Y方向と反対方向に下部固定磁性層3aの磁化と反平行の状態で固定される。次に、図3に示すように、バックド層6及びスペキュラー層7を介して多層膜16上に、切欠部17aが設けられたT字形状のフォトレジスト17を形成し、フォトレジスト17で多層膜16を部分的に被覆する。
【0043】
次に、図3に示す状態で、バックド層6、スペキュラー層7、多層膜16及び非磁性絶縁層14に、IBE(イオン・ビーム・エッチング)法によりイオンビームの入射角度θ1を基板13の垂線Aに対し0°〜5°の範囲で傾けた矢印B,C方向からエッチング加工を行い、フォトレジスト17で覆われていない部分、及びこの部分に対応する非磁性絶縁層14をエッチングして除去することにより、図4に示すように、多層膜16で構成された積層体11と非磁性絶縁層14の上面に積層体11の両端を基点として積層体11の両側領域に延びる凹部14aとを形成し、この凹部14aを形成することで積層体11の両側領域における反強磁性層2を完全に除去する。
【0044】
次に、図4に示す状態で、IBD(イオン・ビーム・デポジション)法により、FeCo粒子をその入射角度θ2が基板13の垂線Aに対し70°となるように傾けた矢印D,E方向から放射して、図5に示すように、積層体11の両端面にバイアス下地層8を多層膜16が除去された積層体11の両側領域に至るように形成する。次に、図5に示す状態で、バイアス下地層8に、IBE(イオン・ビーム・エッチング)法によりイオンビームの入射角度θ1を基板13の垂線Aに対し0°〜5°の範囲で傾けた矢印B,C方向からエッチング加工を行い、図6に示すように、非磁性導電層4に接する固定磁性層3の上面よりも上方にバイアス下地層8を残してそれ以外の部分を除去する。
【0045】
次に、図6に示す状態で、IBD(イオン・ビーム・デポジション)法により、Cr粒子を、その入射角度θ2を基板13の垂線Aに対し0°〜5°の範囲で傾けた矢印D,E方向から放射して、図7に示すように、非磁性絶縁層14の凹部14aに非磁性層9をその上面が反強磁性層2よりも上方に位置し非磁性導電層4の上面と面一となるように形成する。次に、図7に示す状態で、バイアス下地層8の表面に、IBE(イオン・ビーム・エッチング)法によりイオンビームの入射角度θ1を基板13の垂線Aに対し70°となるように傾けた矢印B,C方向からエッチング加工を行い、非磁性層9の形成の際にバイアス下地層8に付着したCr粒子を除去する。
【0046】
次に、図7に示す状態で、IBD(イオン・ビーム・デポジション)法により、CoPt粒子及びCr粒子を、各々その入射角度θ2を基板13の垂線Aに対し20°〜35°の範囲で傾けた矢印D,E方向から放射して、非磁性層9上にバイアス層10及び電極層15を順次積層する。
【0047】
しかる後、基板13ごとアセトン等の有機溶剤に浸し、切欠部17a内に流れ込んだ有機溶剤でフォトレジスト17のスペキュラー層7に接触する部分を溶解させることによってフォトレジスト17を取り除き、磁気抵抗効果型素子1の製造が完了する。その工程でX方向(Tw方向)に800KA/m程度の外部磁界を印加し着磁することでバイアス層10とフリー磁性層5とをバイアス下地層8を介して磁気交換結合させる。すなわちフリー磁性層5に固定磁性層2の磁化方向と交叉する図示Y方向のバイアス磁界を付与する。
【0048】
このように構成・製造された磁気抵抗効果型素子1は、例えば磁気ヘッドに適用されて磁気ディスク装置に組み込まれ、電極層15からバイアス層10及び非磁性層9を介して固定磁性層3、非磁性導電層4及びフリー磁性層5に検出電流が与えられた状態で、フリー磁性層5の幅で規定されるトラック幅T1で示される領域を矢印Z方向に回転走行する磁気ディスクの所望のトラックに位置決めし、外部磁界としてこの所望のトラックからの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、この漏れ磁界をフリー磁性層5の全体で感知してフリー磁性層5の全体の磁化が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。
【0049】
このとき、固定磁性層3と非磁性導電層4、及びフリー磁性層5を流れる電子が、固定磁性層3と非磁性導電層4との界面及びフリー磁性層5と非磁性導電層4との界面でスピンに依存した散乱を起こすことによって磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により上記所望トラックからの漏れ磁界が検出される。
【0050】
そして、固定磁性層3からフリー磁性層5に向かって移動しようとする電子のうちの、フリー磁性層5の磁化方向に平行なスピンを持つアップスピン伝導電子は、固定磁性層3と非磁性導電層4との界面で散乱を起こさずにフリー磁性層5を通過してバックド層6内に進入してスペキュラー層7で反射され、その移動距離をバックド層6及びスペキュラー層7により延ばすことができるため、磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗の変化率が高められ外部磁界検出感度が一層向上する。これによって、磁気抵抗効果型素子1は、上記所望トラックに記録された記録情報をより精度良く読み出すことができるようになっている。
【0051】
しかして、この磁気抵抗効果型素子1にあっては、バイアス層10とフリー磁性層5とがバイアス下地層8を介して接続されているため、バイアス層10とバイアス下地層8とが磁気交換結合し、バイアス下地層8とフリー磁性層5とが磁気交換結合することによってフリー磁性層5の両端部分での反磁界の影響による磁壁の発生を抑え、小さなトラック幅Tw1においてもフリー磁性層5の磁化方向を固定磁性層2の磁化方向と交叉する図示X方向に揃えることができるとともに、非磁性層9の上面が反強磁性層2よりも上方に位置し、この非磁性層9の上面上にバイアス層10が設けられて、バイアス層10がトラック幅方向(矢印X方向)にバイアス下地層8を介して反強磁性層2と対向することなく配置されているため、バイアス層10の保磁力の低下を招くことがなく、磁気ディスク装置に組み込まれて使用された際に、バイアス層10の磁化が磁気ディスクの所望トラックに隣接するトラックからの漏れ磁界の影響を受けて変動するのを抑制でき、磁気ディスクの所望トラックに記録された記録情報を正確に読み出すことができる出力特性の安定したスタビリティの高い素子とすることができる。
【0052】
また、積層体11を形成する際に、非磁性絶縁層14の上面に積層体11の両端を基点として積層体11の両側領域に延びる凹部14aを同時に形成するようにしたので、積層体11の両側領域において反強磁性層2を完全に取り除くことができるため、積層構造膜12は非磁性絶縁層14上に設けられて反強磁性層2上に配設されることがないことから、PtMn合金で形成された反強磁性層2上に非磁性層9を介してバイアス層10が積層されることに起因するバイアス層10の保磁力の低下を防ぐことができる。
【0053】
また、バイアス下地層8は固定磁性層3の上面よりも上方の部分を残してそれ以外の部分を除去するようにしたが、このバイアス下地層8の部分的な除去は必ずしも必要なものではなく、例えば、バイアス下地層8が積層体11の両端面から積層体11の両側領域にかけて形成された図5に示す状態で、積層体11の両側領域に非磁性層9及びバイアス層10を上述の方法で形成するようにしても構わないが、バイアス下地層8に上述したエッチング加工を行いバイアス下地層8が固定磁性層3の上面よりも上方にのみ残存するようにすると、固定磁性層3及び反強磁性層2とバイアス層10とがバイアス下地層8を介して接続されることにより懸念される固定磁性層3及び反強磁性層2への悪影響を防止することができる。
【0054】
また、バイアス下地層8は固定磁性層3の上面よりも上方に残存するように形成されるため、固定磁性層3及び反強磁性層2とバイアス層10とがバイアス下地層8を介して接続されることに起因する固定磁性層3及び反強磁性層2への悪影響を防止することができる。
【0055】
また、非磁性絶縁層14の凹部14aに非磁性層9を形成した後、バイアス下地層8の表面に付着したCr粒子等の付着物をIBE(イオン・ビーム・エッチング)法により除去するようにしたので、この付着物によって後に形成されるバイアス層10とバイアス下地層8との磁気交換結合が妨げられることがなく、バイアス層10とバイアス下地層8とを確実に磁気交換結合させることができる。
【0056】
また、固定磁性層3を上部・下部両固定磁性層3c,3aとこれら両層の間に挟まれた非磁性中間層3bとの3層で構成したので、上部・下部両固定磁性層3c,3aのうちの一方の層が他方の層の磁化を適正な方向に固定する役割を担い、固定磁性層3全体の磁化の状態を非常に安定した状態に保つことが可能となる。
【0057】
また、反強磁性層2は、PtMn合金で形成されているため、交換結合磁界を失うブロッキング温度が高く、下部固定磁性層3aとの界面で大きな交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させることができ、下部固定磁性層3a及び上部固定磁性層3cの磁化状態を熱的にも安定して保つことができる。
【0058】
尚、この実施形態では、固定磁性層3を上部・下部両固定磁性層3c,3aとこれら両層の間に挟まれた非磁性中間層3bとの3層で構成したもので説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、固定磁性層3を、図9に示すように、CoFe合金やNiFe合金等の軟磁性材料で形成されてなり、反強磁性層2との界面にて発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって磁化方向が図示Y方向(図9の紙面に向かう)に固定された単層膜で構成してもよい。
【0059】
また、この実施形態では、フリー磁性層5を1層構造としたもので説明したが、図10に示すように、フリー磁性層5を、非磁性導電層4に接する下部フリー磁性層5aと、下部フリー磁性層5a上に設けられた非磁性中間層5bと、非磁性中間層5b上に設けられた上部フリー磁性層5cとの3層構造とし、下部フリー磁性層5aがバイアス層10と磁気交換結合したバイアス下地層8と磁気交換結合することにより下部フリー磁性層5aにバイアス磁界が付与されて、下部フリー磁性層5aの磁化方向が図示X方向に揃えられ、上部フリー磁性層5cの磁化方向が、上部フリー磁性層5cと下部フリー磁性層5aとの間で発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)により図示X方向と反対方向にされた構成としてもよい。
【0060】
そして、上部・下部両フリー磁性層5c,5aの膜厚を適切に調整することにより、フリー磁性層5の磁化を僅かな大きさの外部磁界により変動させることができ、磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗の変化率が高められ外部磁界検出感度が一層向上する。この場合、上部・下部両フリー磁性層5c,5aは、例えばCo膜、NiFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金等で形成するのが好ましく、非磁性中間層5bは、Ru,Rh,Ir,Cr,Re,Cuのうちの1種あるいは2種以上の合金で形成するのが好ましい。
【0061】
また、図11に示すように、固定磁性層3とフリー磁性層5とをそれぞれ前述の3層構造としてもよく、このように構成した場合には、固定磁性層3全体の磁化の状態を非常に安定した状態に保つことが可能となるとともに、上部・下部両フリー磁性層5c,5aの膜厚を適切に調整することで、磁気抵抗効果型素子1の電気抵抗の変化率を高め外部磁界検出感度を一層向上させることができる。
【0062】
図12は本発明の他の応用例を示す図であって、この磁気抵抗効果型素子21が上述した磁気抵抗効果型素子1と異なる点は、積層体11の両側領域に積層体11を両端から挟むようにAl等の非磁性絶縁材料で形成された30nm程度の膜厚を有する底上げ絶縁層22を配設して、底上げ層22の上面に、非磁性層9、バイアス層10、及び電極層15を順次積層して搭載し、積層構造膜12を、バイアス層10、非磁性層9、及び底上げ絶縁層22の3層で構成した点が異なるのみで、他は磁気抵抗効果型素子1と同様である。
【0063】
この磁気抵抗効果型素子21の製造は、磁気抵抗効果型素子1と同様の工程により図6に示す状態とし、IBD(イオン・ビーム・デポジション)法により、Al粒子を、その入射角度θ2を基板13の垂線Aに対し0°〜5°の範囲で傾けた矢印D,E方向から放射して、図13に示すように、非磁性絶縁層14の凹部14aに底上げ絶縁層22をその上面が反強磁性層2よりも上方に位置するように形成した後、IBD(イオン・ビーム・デポジション)法により、非磁性層9、バイアス層10、及び電極層15を順次形成し、磁気抵抗効果型素子1と同様の工程を経て製造される。
【0064】
このように構成・製造された磁気抵抗効果型素子21にあっては、非磁性層9及びバイアス層10が底上げ絶縁層22によって上方に押し上げられて反強磁性層2よりも上方に位置しているため、電極層15からバイアス層10及び非磁性層9を介して固定磁性層3、非磁性導電層4及びフリー磁性層5に与えられる検出電流の中心を上方に引き上げ、フリー磁性層5により多くの検出電流を通電することができ、検出電流が上部固定磁性層3cよりも下方に位置する非磁性中間層3b、下部固定磁性層3c、及び反強磁性層2に分流するシャントロス(電流ロス)を抑えることができるので、磁気ディスク装置に組み込まれて使用されたときの再生出力波形の非対称性(所謂アシンメトリ)を改善し磁気ディスクに記録された記録情報を正確に読み出すことができる。
【0065】
尚、この応用例においても固定磁性層3を上部・下部両固定磁性層3c,3aとこれら両層の間に挟まれた非磁性中間層5bとの3層で構成したもので説明したが、磁気抵抗効果型素子1と同様に、固定磁性層3を、図14に示すように、CoFe合金やNiFe合金等の軟磁性材料で形成されてなり、反強磁性層2との界面にて発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって磁化方向が図示Y方向(図14の紙面に向かう)に固定された単層膜で構成してもよい。
【0066】
また、この応用例では、フリー磁性層5を1層構造としたもので説明したが、図15に示すように、フリー磁性層5を、上部・下部両フリー磁性層5c,5aとこれら両層の間に挟まれた非磁性中間層5bとの上述した3層構造とし、下部フリー磁性層5aがバイアス層10と磁気交換結合したバイアス下地層8と磁気交換結合することにより下部フリー磁性層5aにバイアス磁界が付与されて、下部フリー磁性層5aの磁化方向が図示X方向に揃えられ、上部フリー磁性層5cの磁化方向が、上部フリー磁性層5cと下部下部磁性層5aとの間で発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)により図示X方向と反対方向に揃えられた構成としてもよく、このようにすると、上部・下部両フリー磁性層5c,5aの膜厚を適切に調整することにより、フリー磁性層5の磁化を僅かな大きさの外部磁界により変動させることができ、磁気抵抗効果型素子21の電気抵抗の変化率が高められ外部磁界検出感度が一層向上する。
【0067】
また、図16に示すように、固定磁性層3とフリー磁性層5とをそれぞれ前述の3層構造としてもよく、このように構成した場合には、固定磁性層3全体の磁化の状態を非常に安定した状態に保つことが可能となるとともに、上部・下部両フリー磁性層5c,5aの膜厚を適切に調整することで、磁気抵抗効果型素子21の電気抵抗の変化率を高め外部磁界検出感度を一層向上させることができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0069】
本発明の磁気抵抗効果型素子は、非磁性導電層と、前記非磁性導電層の上面に形成されたフリー磁性層と、前記非磁性導電層の下面に形成された固定磁性層と、前記固定磁性層の前記非磁性導電層と反対側の下面に形成され、前記固定磁性層の磁化方向を固定する反強磁性層とを有する積層体を備え、前記積層体の両端面にはバイアス下地層が形成され、非磁性層と前記非磁性層の上面に形成されたバイアス層とを有する積層構造膜が、前記積層体を両端から前記バイアス下地層を介して挟むように配置されており、前記非磁性層の上面が前記反強磁性層よりも上方に位置し、前記バイアス層と前記バイアス下地層とが磁気交換結合し、前記バイアス下地層と前記フリー磁性層とが磁気交換結合することにより、前記フリー磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられているので、前記バイアス層がトラック幅方向に前記バイアス下地層を介して前記反強磁性層と対向することなく配置することができるため、前記バイアス層の保磁力の低下を招くことがなく、前記バイアス層と前記フリー磁性層とが前記バイアス下地層を介して磁気交換結合により、前記フリー磁性層の両端部分での反磁界の影響による磁壁の発生を抑えることができため、狭トラック化に対応した素子とすることができるとともに、磁気ディスクの所望トラックに記録された記録情報を正確に読み出すことができる出力特性の安定したスタビリティの高い素子とすることができる。
【0070】
また、前記積層体は非磁性絶縁層の上面に形成され、前記非磁性絶縁層の上面には前記積層体の両端を基点として前記積層体の両側領域に延びる凹部が形成され、前記凹部内に前記積層構造膜が配設されているので、前記積層体を形成する際に、前記積層体の両側領域において前記反強磁性層を完全に取り除くことができるため、前記反強磁性層上に前記非磁性層を介して前記バイアス層が積層されることによる前記バイアス層の保磁力の低下を防ぐことができる。
【0071】
また、前記バイアス下地層が前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方に位置しているので、前記固定磁性層及び前記反強磁性層と前記バイアス層とが前記バイアス下地層を介して接続されることにより懸念される前記固定磁性層及び前記反強磁性層への悪影響を防止することができる。
【0072】
また、前記積層構造膜は、非磁性の底上げ絶縁層を有し、前記底上げ絶縁層の上面に前記非磁性層が搭載されているので、前記固定磁性層、前記非磁性導電層及び前記フリー磁性層に与えられる検出電流の中心を上方に引き上げ、前記フリー磁性層により多くの検出電流を通電することができ、検出電流が前記反強磁性層に分流するシャントロスを抑えることができるので、磁気ディスク装置に組み込まれて使用されたときの再生出力波形のアシンメトリを改善し磁気ディスクに記録された記録情報を正確に読み出すことができる。
【0073】
また、前記固定磁性層は、前記反強磁性層に接する下部固定磁性層と、前記下部固定磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部固定磁性層とで形成されているので、前記上部・下部両固定磁性層のうちの一方の層が他方の層の磁化を適正な方向に固定する役割を担い、前記固定磁性層全体の磁化の状態を非常に安定した状態に保つことが可能となる。
【0074】
また、前記フリー磁性層は、前記非磁性導電層に接する下部フリー磁性層と、前記下部フリー磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部フリー磁性層とで形成されているので、前記フリー磁性層の磁化を僅かな大きさの外部磁界により変動させることができ、素子の電気抵抗の変化率を高め外部磁界検出感度を一層向上させることができる。
【0075】
また、前記フリー磁性層を突き抜ける伝導電子が進入するバックド層が前記フリー磁性層上に設けられているので、前記伝導電子の平均自由行程を延ばし、素子の電気抵抗変化率を高め外部磁界検出感度を一層向上させることができる。
【0076】
また、前記フリー磁性層を突き抜ける伝導電子を反射するスペキュラー層が前記フリー磁性層上に設けられているので、前記伝導電子の平均自由行程を延ばし、素子の電気抵抗変化率を高め外部磁界検出感度を一層向上させることができる。
【0077】
また、前記反強磁性層はPtMn合金で形成されているので、前記固定磁性層との界面で大きな交換結合磁界を発生させることができ、前記固定磁性層の磁化状態を熱的にも安定して保つことができる。
【0078】
また、本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法は、基板上に形成された非磁性絶縁層上に反強磁性層,固定磁性層,非磁性導電層,及びフリー磁性層を順次積層した構造を有する多層膜を形成する工程と、
前記多層膜上にフォトレジストを形成する工程と、
前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分をエッチングして除去することにより、前記多層膜で構成された積層体を形成する工程と、
前記積層体の両端面にバイアス下地層を形成する工程と、
前記多層膜が除去された前記積層体の両側領域に非磁性層をその上面が前記反強磁性層よりも上方に位置するように形成する工程と、
前記非磁性層の上面にバイアス層を前記バイアス下地層に接するように形成し、前記バイアス層と前記フリー磁性層とを前記バイアス下地層を介して磁気交換結合させる工程と、を有するので、前記フリー磁性層の両端部分での反磁界の影響による磁壁の発生を抑え、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えることのできる狭トラック化に対応した素子を得ることができる。
【0079】
また、前記積層体を形成する際に、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分に対応する前記非磁性絶縁層にもエッチングを施すので、前記積層体の両側領域において前記反強磁性層を完全に取り除くことができるため、前記反強磁性層上に前記非磁性層を介して前記バイアス層が積層されることによる前記バイアス層の保磁力の低下を防ぐことができる。
【0080】
また、前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方のみに前記バイアス下地層が存在するのように、前記バイアス下地層にエッチングを施す工程を有するので、前記固定磁性層及び前記反強磁性層と前記バイアス層とが前記バイアス下地層を介して接続されることに起因する前記固定磁性層及び前記反強磁性層への悪影響を防止することができる。
【0081】
また、前記両側領域に前記非磁性層が搭載される非磁性の底上げ絶縁層を形成する工程を有するので、前記非磁性層及び前記バイアス層を上方に押し上げ前記フリー磁性層に近接して配置させることができるため、検出電流が前記反強磁性層に分流するシャントロスを抑え、磁気ディスク装置に組み込まれて使用されたときの再生出力波形のアシンメトリが小さい素子を得ることができる。
【0082】
また、前記非磁性層を形成した後に前記バイアス下地層の表面をエッチングし、その後に前記バイアス層を形成するので、前記バイアス層を形成する前工程で前記バイアス下地層の表面に付着した付着物を完全に除去することができ、この付着物によって前記バイアス層と前記バイアス下地層との磁気交換結合が妨げられることがなく、前記バイアス層と前記バイアス下地層とを確実に磁気交換結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗効果型素子の断面図。
【図2】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、基板上に、非磁性絶縁層、多層膜、バックド層、及びスペキュラー層を形成した状態を示す断面図。
【図3】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、スペキュラー層上に、フォトレジストを形成した状態を示す断面図。
【図4】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、非磁性絶縁層、多層膜、バックド層、及びスペキュラー層を部分的に除去し積層体を形成した状態を示す断面図。
【図5】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、積層体の両端面及びその両側領域にバイアス下地層を形成した状態を示す断面図。
【図6】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、バイアス下地層を部分的に除去した状態を示す断面図。
【図7】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、積層体の両側領域に非磁性層を形成した状態を示す断面図。
【図8】本発明の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、非磁性層上にバイアス層及び電極層を形成した状態を示す断面図。
【図9】本発明の磁気抵抗効果型素子に備わる固定磁性層を単層膜で構成した場合の断面図。
【図10】本発明の磁気抵抗効果型素子に備わるフリー磁性層を3層構造とした場合の断面図。
【図11】本発明の磁気抵抗効果型素子に備わるフリー磁性層及び固定磁性層を各々3層構造とした場合の断面図。
【図12】本発明の磁気抵抗効果型素子の他の応用例を示す断面図。
【図13】本発明の他の応用例の磁気抵抗効果型素子の製造方法を説明するための図であって、積層体の両側領域に底上げ絶縁層を形成した状態を示す断面図。
【図14】本発明の他の応用例の磁気抵抗効果型素子に備わる固定磁性層を単層膜で構成した場合の断面図。
【図15】本発明の他の応用例の磁気抵抗効果型素子に備わるフリー磁性層を3層構造とした場合の断面図。
【図16】本発明の他の応用例の磁気抵抗効果型素子に備わるフリー磁性層及び固定磁性層を各々3層構造とした場合の断面図。
【図17】従来の磁気抵抗効果型素子の断面図。
【図18】発明が解決しようとする課題を説明するための断面図。
【図19】発明が解決しようとする課題を説明するための断面図。
【符号の説明】
1 磁気抵抗効果型素子
2 反強磁性層
3 固定磁性層
3a 下部固定磁性層
3b 非磁性中間層
3c 上部固定磁性層
4 非磁性導電層
5 フリー磁性層
6 バックド層
7 スペキュラー層
8 バイアス下地層
9 非磁性層
10 バイアス層
11 積層体
12 積層構造膜
13 基板
14 非磁性絶縁層
14a 凹部
15 電極層
16 多層膜
17 フォトレジスト
21 磁気抵抗効果型素子
22 底上げ絶縁層

Claims (13)

  1. 非磁性導電層と、前記非磁性導電層の上面に形成されたフリー磁性層と、前記非磁性導電層の下面に形成された固定磁性層と、前記固定磁性層の前記非磁性導電層と反対側の下面に形成され、前記固定磁性層の磁化方向を固定する反強磁性層とを有する積層体を備え、前記積層体の両端面にはバイアス下地層が形成され、非磁性層と前記非磁性層の上面に形成されたバイアス層とを有する積層構造膜が、前記積層体を両端から前記バイアス下地層を介して挟むように配置されており、前記非磁性層の上面が前記反強磁性層よりも上方に位置し、前記バイアス層と前記バイアス下地層とが磁気交換結合し、前記バイアス下地層と前記フリー磁性層とが磁気交換結合することにより、前記フリー磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられており、前記積層構造膜は、非磁性の底上げ絶縁層を有し、前記底上げ絶縁層の上面に前記非磁性層が形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果型素子。
  2. 前記積層体は非磁性絶縁層の上面に形成され、前記非磁性絶縁層の上面には前記積層体の両端を基点として前記積層体の両側領域に延びる凹部が形成され、前記凹部内に前記積層構造膜が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果型素子。
  3. 前記バイアス下地層が前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果型素子。
  4. 前記固定磁性層は、前記反強磁性層に接する下部固定磁性層と、前記下部固定磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部固定磁性層とで形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子。
  5. 前記フリー磁性層は、前記非磁性導電層に接する下部フリー磁性層と、前記下部フリー磁性層上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層上に設けられた上部フリー磁性層とで形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子。
  6. バックド層が前記フリー磁性層上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子。
  7. スペキュラー層が前記フリー磁性層上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子。
  8. 前記反強磁性層はPtMn合金で形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子。
  9. 基板上に形成された非磁性絶縁層上に反強磁性層,固定磁性層,非磁性導電層,及びフリー磁性層を順次積層した構造を有する多層膜を形成する工程と、前記多層膜上にフォトレジストを形成する工程と、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分をエッチングして除去することにより、前記多層膜で構成された積層体を形成する工程と、前記積層体の両端面にバイアス下地層を形成する工程と、前記多層膜が除去された前記積層体の両側領域に非磁性層をその上面が前記反強磁性層よりも上方に位置するように形成する工程と、前記非磁性層の上面にバイアス層を前記バイアス下地層に接するように形成し、前記バイアス層と前記フリー磁性層とを前記バイアス下地層を介して磁気交換結合させる工程と、を有し、前記非磁性導電層に接する前記固定磁性層の上面よりも上方のみに前記バイアス下地層が存在するように、前記バイアス下地層にエッチングを施す工程を有することを特徴とする磁気抵抗効果型素子の製造方法。
  10. 前記積層体を形成する際に、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分に対応する前記非磁性絶縁層にもエッチングを施すことを特徴とする請求項に記載の磁気抵抗効果型素子の製造方法。
  11. 前記両側領域に前記非磁性層が搭載される非磁性の底上げ絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする請求項9または10に記載の磁気抵抗効果型素子の製造方法。
  12. 前記非磁性層を形成した後に前記バイアス下地層の表面をエッチングし、その後に前記バイアス層を形成することを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の磁気抵抗効果型素子の製造方法。
  13. 基板上に形成された非磁性絶縁層上に反強磁性層,固定磁性層,非磁性導電層,及びフリー磁性層を順次積層した構造を有する多層膜を形成する工程と、前記多層膜上にフォトレジストを形成する工程と、前記多層膜の前記フォトレジストで覆われていない部分をエッチングして除去することにより、前記多層膜で構成された積層体を形成する工程と、前記積層体の両端面にバイアス下地層を形成する工程と、前記多層膜が除去された前記積層体の両側領域に非磁性層をその上面が前記反強磁性層よりも上方に位置するように形成する工程と、前記非磁性層の上面にバイアス層を前記バイアス下地層に接するように形成し、前記バイアス層と前記フリー磁性層とを前記バイアス下地層を介して磁気交換結合させる工程と、を有し、前記両側領域に前記非磁性層が搭載される非磁性の底上げ絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする磁気抵抗効果型素子の製造方法。
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