JP2002329903A - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法

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JP2002329903A
JP2002329903A JP2001133975A JP2001133975A JP2002329903A JP 2002329903 A JP2002329903 A JP 2002329903A JP 2001133975 A JP2001133975 A JP 2001133975A JP 2001133975 A JP2001133975 A JP 2001133975A JP 2002329903 A JP2002329903 A JP 2002329903A
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康男 早川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の磁気検出素子では、センス電流が反強
磁性層内など非磁性材料層の周辺以外の部位に分流して
いた。 【解決手段】固定磁性層35内に鏡面反射層S1が設け
られ、さらに多層膜T1の両側部であって下部ギャップ
層32上に、第1絶縁層39が形成されている。第1絶
縁層39は、多層膜T1に対向する側端面39aの上端
縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向
する面と反対側の面S1aと重なるように成膜される。
従って、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁
性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層3
4、及びシード層33にセンス電流が分流することを防
ぐことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果を利
用して磁界を検出する磁気検出素子に係り、特に供給さ
れた電流の分流を抑え、磁気検出感度を向上させること
のできる磁気検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】図18は従来の磁気検出素子を記録媒体
との対向面側からみた断面図である。
【0003】図18に示す磁気検出素子では、図示しな
い下部シールド層上に下部ギャップ層10が積層され、
下部ギャップ層10上に下地層11を介して反強磁性層
12、固定磁性層13、非磁性導電層14、フリー磁性
層15、及び保護層16が形成され、下地層11から保
護層16までの積層体が多層膜17として構成されてい
る。
【0004】反強磁性層12はPt−Mn(白金−マン
ガン)合金などの反強磁性材料により形成されている。
【0005】固定磁性層13およびフリー磁性層15
は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金で形成されてお
り、非磁性導電層14は、Cu(銅)などの電気抵抗の
低い非磁性導電材料で形成されている。
【0006】そして多層膜17の両側部の下部ギャップ
層10上及び固定磁性層13、非磁性導電層14、及び
フリー磁性層15の側面にかけて、Crなどで形成され
た緩衝膜及び配向膜となるバイアス下地層18が形成さ
れており、このバイアス下地層18の形成によって、後
述するハードバイアス層19から発生するバイアス磁界
を増大させることができる。
【0007】バイアス下地層18の上には、例えばCo
−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コ
バルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバ
イアス層19が形成されている。
【0008】ハードバイアス層19は図示X方向(トラ
ック幅方向)に着磁されており、ハードバイアス層19
からのX方向へのバイアス磁界により、フリー磁性層1
5の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0009】またハードバイアス層19上には、Cr、
Au、Ta、Wなどで形成された電極層20が形成され
ている。
【0010】さらに、多層膜17及び電極層20上に絶
縁材料からなる上部ギャップ層21が積層され、上部ギ
ャップ層21上に図示しない上部シールド層が形成され
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】図18に示された磁気
検出素子は、いわゆるスピンバルブ型磁気検出素子であ
り、固定磁性層13の磁化方向が、適正に図示Y方向に
平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層15の磁化
が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層13
とフリー磁性層15の磁化が直交関係にある。そして記
録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層15の磁化
が変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層13の固
定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗
値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ
磁界が検出される。電極層20は、多層膜17にセンス
電流を供給するためのものである。
【0012】図18に示された磁気検出素子は、多層膜
17の両側に設けられたバイアス下地層18及びハード
バイアス層19が導電性を有する材料によって形成され
ているので、電極層20から供給された電流はバイアス
下地層18及びハードバイアス層19を介して、反強磁
性層12にも流れこむ。すなわち、センス電流の分流が
発生する。
【0013】図18に示されるような従来の磁気検出素
子では、反強磁性層12に分流する電流の大きさが、セ
ンス電流の10%程度になることがあり、磁気検出素子
の磁気検出感度を向上を図る際の妨げになっていた。
【0014】本発明は、上記従来の課題を解決するため
のものであり、センス電流を非磁性材料層周辺に集中し
て流すことができ、磁気検出感度を向上させることので
きる磁気検出素子及びその製造方法を提供することを目
的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に、反
強磁性層、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化
方向が固定される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化
が外部磁界に対し変動するフリー磁性層を含む多層膜を
有する磁気検出素子において、前記固定磁性層中、前記
フリー磁性層中、又は前記フリー磁性層の前記非磁性材
料層に接する面と反対側の面に対向する領域中のうち、
1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸化物からなる鏡面反
射層が形成されており、前記多層膜の両側部に形成され
る絶縁層であって、この絶縁層の前記多層膜に対向する
側端面の上端縁が前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に
対向する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反対側
の面より上側に位置するように形成される第1絶縁層
と、前記多層膜の両側部に形成される絶縁層であって、
この絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の下端縁が前
記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する面と反対側
の面に重なる位置に又は前記反対側の面より下側に位置
するように形成される第2絶縁層のどちらか一方または
両方が形成され、かつ前記第1絶縁層の上層または前記
第2絶縁層の下層に電極層が形成されていることを特徴
とするものである。
【0016】本発明では、前記固定磁性層中、前記フリ
ー磁性層中、前記フリー磁性層の前記非磁性材料層に接
する面と反対側の面に対向する領域中のうち、1箇所あ
るいは2箇所以上に絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形
成されている。
【0017】また、本発明では、前記多層膜に対向する
側端面の上端縁が前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に
対向する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反対側
の面より上側に位置するように形成される第1絶縁層
と、前記多層膜に対向する側端面の下端縁が前記鏡面反
射層の非磁性材料層に対向する面と反対側の面に重なる
位置に又は前記反対側の面より下側に位置するように形
成される第2絶縁層のどちらか一方または両方が形成さ
れている。
【0018】これら第1絶縁層と第2絶縁層が形成され
ているために、前記電極層から供給されるセンス電流
が、前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する反対
側に分流することを防ぐことができる。
【0019】また、前記非磁性材料層から前記固定磁性
層あるいは前記フリー磁性層に向って流れる伝導電子
は、前記鏡面反射層で反射させられる。
【0020】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0021】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0022】本発明では、前記第1絶縁層の上層または
前記第2絶縁層の下層に、前記フリー磁性層の磁化方向
を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるた
めのバイアス層が形成されるようにできる。
【0023】前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁
性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるためには、前記
フリー磁性層の側端面の少なくとも一部が、前記ハード
バイアス層の側端面と対向していることが好ましい。
【0024】また、前記バイアス層または前記電極層の
下面がバイアス下地層を介してまたは直接に、前記多層
膜の下層に形成された下部ギャップ層に対向している
と、放熱性が向上するので好ましい。本発明では、前記
バイアス層が前記電極層を兼ねてもよい。
【0025】前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、例
えばAlO、Al23、SiO2、Ta25、TiO、
AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si34、Ni
O、WO、WO3、BN、CrN、SiON、AlSi
Oから選択されるいずれか1種または2種以上によって
形成されることができる。
【0026】特に、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層
が、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいず
れか1種または2種以上によって形成されると放熱性、
平坦性、絶縁耐圧性が向上するので好ましい。
【0027】本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下
の工程を有することを特徴とするものである。 (a)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、反強磁
性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層を
有し、前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、又は前
記フリー磁性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側
の面に対向する領域中のうち、1箇所あるいは2箇所以
上に絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されている多
層膜を成膜する工程と、(b)形成される磁気検出素子
の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフト
オフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフ
トオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層
膜及び前記下部ギャップ層の一部を除去する工程と、
(c)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して第1
のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ
法を用いて、前記下部ギャップ層上から前記多層膜の両
側部かけて、前記多層膜に対向する側端面の上端縁が前
記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する面と反対側
の面に重なる位置に又は前記反対側の面より上側に位置
するように形成される絶縁層を形成する工程と、(d)
前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して前記第1の
スパッタ粒子入射角度よりも大きい第2のスパッタ粒子
入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前
記絶縁層上にバイアス層及び電極層を形成する工程と、
(e)前記リフトオフ用のレジスト層を除去する工程、
または、本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工
程を有することを特徴とするものである。(f)絶縁性
材料からなる下部ギャップ層上に、反強磁性層、固定磁
性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層を有し、前記固
定磁性層中、前記フリー磁性層中、又は前記フリー磁性
層の前記非磁性材料層に接する面と反対側の面に対向す
る領域中のうち、1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸化
物からなる鏡面反射層が形成されている多層膜を成膜す
る工程と、(g)形成される磁気検出素子の光学トラッ
ク幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジ
スト層を前記多層膜上に形成し、前記リフトオフ用のレ
ジスト層に覆われていない領域の前記多層膜及び前記下
部ギャップ層の一部を除去する工程と、(h)前記下部
ギャップ層表面の法線方向に対して第1のスパッタ粒子
入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前
記下部ギャップ層上から前記多層膜の両側面にかけて絶
縁層を形成する工程と、(i)前記絶縁層の前記多層膜
に対向する側端面の上端縁が、前記鏡面反射層の前記非
磁性材料層に対向する面と反対側の面に重なる位置に又
は前記反対側の面より上側に位置するように、前記絶縁
層の上端側を除去する工程と、(j)前記下部ギャップ
層表面の法線方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射
角度よりも小さい第2のスパッタ粒子入射角度を有する
イオンビームスパッタ法を用いて、前記絶縁層上にバイ
アス層及び電極層を形成する工程と、(k)前記リフト
オフ用のレジスト層を除去する工程、また、前記(h)
の工程において、前記絶縁層を、前記多層膜の側面に接
している突出部及び前記下部ギャップ層表面に対して平
行に重なっている平坦部を有するものとして形成するこ
とが好ましい。
【0028】上記製造方法によって、前記バイアス層ま
たは前記電極層の下面がバイアス下地層を介して、また
は直接、前記磁気抵抗効果素子の下層に形成された下部
ギャップ層に対向している磁気検出素子を容易に形成す
ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形
態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面
図である。
【0030】図1に示す磁気検出素子は、反強磁性層3
4、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層
37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバ
ルブ型磁気検出素子である。
【0031】図1に示された磁気検出素子は、固定磁性
層35の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に
固定され、しかもフリー磁性層37の磁化が適正に図示
X方向に揃えられており、固定磁性層35とフリー磁性
層37の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの
外部磁界に対し、フリー磁性層37の磁化が感度良く変
動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層35の固定磁
化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の
変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界
が検出される。
【0032】図1では、シード層33、反強磁性層3
4、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2
固定磁性層35cからなるシンセティックフェリピンド
型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第2フリー磁
性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層3
7cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁
性層37、保護層38が積層された多層膜T1が形成さ
れている。なお、多層膜T1の上面の幅寸法がトラック
幅寸法に対応する。
【0033】多層膜T1の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層
32が成膜されている。
【0034】シード層33は、面心立方晶の(111)
面あるいは体心立方晶の(110)面が優先配向する磁
性材料層あるいは非磁性材料層の単層構造であるか、ま
たは下地層の上に前記磁性材料層あるいは前記非磁性材
料層が形成された積層構造であることが好ましい。これ
によって反強磁性層34の結晶配向を、(111)面を
優先配向させることができ、磁気検出素子の抵抗変化率
を向上させることができる。
【0035】例えば本発明では、シード層33は、Ni
FeY合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,N
b,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種以上)で形
成され、またシード層33の下層にTa,Hf,Nb,
Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上からな
る下地層が形成されてもよい。
【0036】反強磁性層34は、PtMn合金、また
は、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,
Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素
である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただし
X′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,
Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1また
は2種以上の元素である)合金で形成する。
【0037】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0038】反強磁性層34の膜厚は、トラック幅方向
の中心付近において80〜300Å、例えば200Åで
ある。
【0039】ここで、反強磁性層34を形成するため
の、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される
合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範
囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び
前記X−Mnの式で示される合金において、Ptあるい
はXが47〜57at%の範囲であることがより好まし
い。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下
限は以下、以上を意味する。
【0040】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのい
ずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’
は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0041】これらの合金を使用し、これを熱処理する
ことにより、第1固定磁性層35aとの間で大きな交換
結合磁界を発生する反強磁性層34を得ることができ
る。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、
例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記
交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極め
て高い優れた反強磁性層34を得ることができる。
【0042】固定磁性層35は、第1固定磁性層35
a、第2固定磁性層35c、及び非磁性中間層35bか
らなる。本実施の形態では、第2固定磁性層35cは、
非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35c1、鏡
面反射層S1、及び非磁性材料層36に接する強磁性材
料層35c1から構成されている。
【0043】第1固定磁性層35a並びに第2固定磁性
層35cの強磁性材料層35c1は、強磁性材料により
形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoN
iFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形
成されるものであり、特にCoNiFe合金、CoFe
合金により形成されることが好ましい。また、第1固定
磁性層35a及び強磁性材料層35c1は同一の材料で
形成されることが好ましい。
【0044】また、鏡面反射層S1は、CoO、Co−
Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素
Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される絶縁酸化物から選択さ
れるいずれか1種または2種以上からなる。
【0045】強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、
強磁性材料層35c1は、強磁性結合によって磁気的に
結合しており磁化方向が同一方向を向いている。
【0046】また、非磁性中間層35bは、非磁性材料
により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形
成されている。特にRuによって形成されることが好ま
しい。
【0047】非磁性材料層36は、固定磁性層35とフ
リー磁性層37との磁気的な結合を防止し、またセンス
電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agな
ど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好
ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0048】フリー磁性層37は、第2フリー磁性層3
7a、非磁性中間層37b、及び第1フリー磁性層37
cからなる。
【0049】第2フリー磁性層37aの強磁性層37a
2及び第1フリー磁性層37cは、強磁性材料により形
成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoFe
Ni合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成
されるものであり、特にCoFeNi合金により形成さ
れることが好ましい。
【0050】非磁性中間層37bは、非磁性材料により
形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、C
uのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成され
ている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0051】なお、図1では、第2フリー磁性層37a
が拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層
S2、強磁性層37a2から形成されている。拡散防止
層37a1は強磁性材料からなるもので例えばCoによ
って形成されるものであり、強磁性層37a2と非磁性
材料層36の相互拡散を防止する。なお、拡散防止層3
7a1が形成されず強磁性層37a2が非磁性材料層に
接していてもよい。鏡面反射層S2は鏡面反射層S1と
同じ材料からなる。
【0052】鏡面反射層S1、S2は、後述する鏡面反
射効果によって多層膜T1中を流れる伝導電子のスピン
方向を保存したまま反射させ、アップスピンの伝導電子
の平均自由行程を延し、磁気抵抗変化率を大きくさせる
機能を有する。
【0053】拡散防止層37a1、強磁性層37a2、
鏡面反射層S2、強磁性層37a2は、強磁性結合によ
って磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いて
いる。
【0054】保護層38はTaからなるTa層38aと
酸化タンタルからなるTaO層38bからなる。
【0055】多層膜T1の両側部であって下部ギャップ
層32上に、第1絶縁層39が積層されている。第1絶
縁層39は、多層膜T1に対向する側端面39aの上端
縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向
する面と反対側の面S1aと重なる位置に形成されてい
る。第1絶縁層39は、非磁性材料層36よりも下側に
形成されている。第1絶縁層39の側端面39aは、反
強磁性層34の側端面に対向し、下面39bは下部ギャ
ップ層32の表面に接している。
【0056】第1絶縁層39は、AlO、Al23、S
iO2、Ta25、TiO、AlN、AlSiN、Ti
N、SiN、Si34、NiO、WO、WO3、BN、
CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか
1種または2種以上によって形成される。特に、AlS
iO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種ま
たは2種以上によって形成されると、放熱性、平坦性、
絶縁耐性が良好になるので好ましい。特に、AlSiO
の絶縁性材料中のSiは全体の2at%以上で9at%
以下含有されていることが好ましい。
【0057】第1絶縁層39上から、第2固定磁性層3
5cの鏡面反射層S1の側面、強磁性材料層35c1の
側面、非磁性材料層36の側面、及び第2フリー磁性層
37aの側面に接して、Cr、Ti、Mo、W50Mo50
などによってバイアス下地層40が形成されている。
【0058】バイアス下地層40の上には、ハードバイ
アス層41が形成されている。ハードバイアス層41は
例えば、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−C
r−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成さ
れており、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されて
いる。
【0059】ハードバイアス層41上には、Taなどの
非磁性材料で形成された中間層42が形成され、この中
間層42の上に、Cr,Au,Ta,W、などで形成さ
れた電極層43が形成されている。
【0060】多層膜T1の表面、及び電極層43の表面
に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44
上には上部シールド層45が形成されている。上部シー
ルド層45は、無機絶縁材料からなる図示しない保護層
によって覆われる。
【0061】電極層43とハードバイアス層41との間
に、TaまたはCrからなる中間層42が設けられる
と、熱拡散を防ぐことができ、ハードバイアス層41の
磁気特性の劣化を防止できる。
【0062】電極層43としてTaを用いる場合には、
Crの中間層42を設けることによってCrの上層に積
層されるTaの結晶構造を低抵抗の体心立方構造にしや
すくなる。
【0063】また、電極層43としてCrを用いる場合
には、Taの中間層42を設けることにより、Crがエ
ピタキシャルに成長して、抵抗値を低減できる。
【0064】バイアス下地層40を結晶構造がbcc
(体心立方格子)構造であるCr、Ti、Mo、W50
50などを用いて形成すると、ハードバイアス層41の
保磁力及び角形比が大きくなりバイアス磁界を大きくで
きる。
【0065】下部シールド層31、下部ギャップ層3
2、シード層33、反強磁性層34、固定磁性層35、
非磁性材料層36、フリー磁性層37、保護層38、第
1絶縁層39、バイアス下地層40、ハードバイアス層
41、中間層42、電極層43、上部ギャップ層44、
上部シールド層45、及び保護層はスパッタ法や蒸着法
などの薄膜形成プロセスによって形成される。
【0066】下部シールド層31及び上部シールド層4
5はNiFeなどの磁性材料を用いて形成される。な
お、下部シールド層31及び上部シールド層45は磁化
容易軸がトラック幅方向(図示X方向)を向いているこ
とが好ましい。なお、下部シールド層31と上部シール
ド層45は、メッキ法によって形成されても良い。
【0067】下部ギャップ層32、上部ギャップ層4
4、及び上部シールド層を覆う保護層はAl23やSi
2などの非磁性無機材料を用いて形成される。
【0068】本実施の形態では、第1絶縁層39が形成
されているために、電極層43から供給されるセンス電
流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反
対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c
1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強
磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐこ
とができる。
【0069】また、非磁性材料層36から固定磁性層3
5に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡
面反射させられる。
【0070】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0071】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0072】なお、本実施の形態では、フリー磁性層3
7中にも鏡面反射層S2を形成して、磁気抵抗変化率の
向上を図っているが、鏡面反射層S2は形成されなくと
もよい。
【0073】ここで、スピンバルブ型磁気検出素子が磁
気を検出する原理及び鏡面反射効果について説明する。
【0074】スピンバルブ型磁気検出素子にセンス電流
を印加すると、伝導電子はおもに電気抵抗の小さい非磁
性材料層付近を移動する。この伝導電子にはアップスピ
ンとダウンスピンの2種類の電子が確率的に等量存在す
る。
【0075】スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変
化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行
程差に対して正の相関を示す。
【0076】ダウンスピンの伝導電子については、印加
される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフ
リー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移
動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はア
ップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いまま
である。
【0077】一方、アップスピンの伝導電子について
は、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁
性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料
層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自
由行程が長くなっている。
【0078】これは、アップスピンを持つ電子の平均自
由行程が、例えば、5.0nm程度であるのに対して、
ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程が0.6nm程
度であり、10分の1程度と極端に小さいためである。
【0079】フリー磁性層の膜厚は、0.6nm程度で
あるダウンスピンを持つ電子の平均自由行程よりも大き
く、5.0nm程度であるアップスピンを持つ電子の平
均自由行程よりも小さく設定されている。
【0080】従って、電子がフリー磁性層を通り抜けよ
うとするときに、この電子がフリー磁性層の磁化方向に
平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対
にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしま
う(フィルタアウトされる)。
【0081】同様に、フリー磁性層で発生した電子が非
磁性材料層を通過し、固定磁性層を通り抜けようとする
ときに、この電子が固定磁性層の磁化方向に平行なアッ
プスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンス
ピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィル
タアウトされる)。
【0082】固定磁性層またはフリー磁性層で発生し、
非磁性材料層を通過するダウンスピン電子は、フリー磁
性層と非磁性材料層との界面または固定磁性層と非磁性
材料層との界面付近で散乱される。つまり、このダウン
スピン電子は、フリー磁性層の磁化方向が回転しても平
均自由行程に変化はなく、GMR効果による抵抗変化率
に影響しない。従ってGMR効果にはアップスピン電子
の挙動のみを考えればよい。
【0083】ここで、外部磁界によってフリー磁性層の
磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対して平行状態から
変化すると、非磁性材料層とフリー磁性層との界面また
は固定磁性層と非磁性材料層との界面で散乱される確率
が増加し、アップスピンの伝導電子の平均自由行程が短
くなる。
【0084】このように外部磁界の作用によって、アッ
プスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝
導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が
大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程
も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵
抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0085】図1に示される本実施の形態の磁気検出素
子では、第2固定磁性層35cの強磁性材料層35c1
と鏡面反射層S1との界面では、これらの層の比抵抗に
大きな差があるためにポテンシャル障壁が形成される。
【0086】このポテンシャル障壁は、センス電流を流
した際に伝導電子を、そのスピンの方向を保存させたま
ま鏡面反射させ、第2固定磁性層35cの磁化方向と第
2フリー磁性層37aの磁化方向が平行となる状態での
アップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことが
できる。このため、外部磁界の印加によるアップスピン
電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバ
ルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をよ
り向上させることができる。
【0087】図17に、鏡面反射層S1による鏡面反射
効果を説明するための模式図を示す。
【0088】図17には、反強磁性層34、固定磁性層
35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第
2固定磁性層35c(強磁性材料層35c1、鏡面反射
層S1、強磁性材料層35c1)、非磁性材料層36、
フリー磁性層37(第2フリー磁性層37a、非磁性中
間層37b、第1フリー磁性層37c)、を順次積層し
た積層体G1を示す。
【0089】図17では、フリー磁性層37側から固定
磁性層35に向って移動する電子の磁気抵抗効果に対す
る寄与を考える。ここで、アップスピンの伝導電子を符
号e1で示し、ダウンスピンの伝導電子をe2で示して
いる。アップスピンの伝導電子e1とダウンスピンの伝
導電子e2は確率的に等量存在している。
【0090】ダウンスピンの伝導電子e2は、印加され
る外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層36と第
2固定磁性層35cとの界面で常に散乱され、固定磁性
層35に移動する確率は低いまま維持され、その平均自
由行程はアップスピンの伝導電子e1の平均自由行程に
比べて短いままである。
【0091】一方、アップスピン電子e1は、第2固定
磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁
化方向が平行となる状態では、非磁性材料層36から第
2固定磁性層35c内にまで到達する。そして、第2固
定磁性層35c内部を移動して強磁性材料層35c1と
鏡面反射層S1との界面付近に到達する。
【0092】強磁性材料層35c1と鏡面反射層S1と
の界面付近には、ポテンシャル障壁が形成されるため、
アップスピン電子e1が強磁性材料層35c1と鏡面反
射層S1との界面付近で鏡面反射(鏡面散乱)する。鏡
面反射よって、アップスピンe1の伝導電子のスピン状
態が維持されるので、再び第2固定磁性層35c中を移
動することになる。
【0093】これは、アップスピン電子e1が鏡面反射
した分、反射平均自由行程λ+sだけ平均自由行程が延
びたことを意味する。
【0094】鏡面反射層S1を有する本実施の形態で
は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性
層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピン
の伝導電子e1の平均自由行程を伸ばすことができる。
【0095】このため、外部磁界の印加によるアップス
ピン電子e1の平均自由行程の変化量が大きくなって、
スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/
R)をより向上させることができる。
【0096】また、図1では、磁気的膜厚が異なる第1
固定磁性層35aと第2固定磁性層35cが、非磁性中
間層35bを介して積層されたものが、一つの固定磁性
層35として機能する。第1固定磁性層35aの磁気的
膜厚は、第1固定磁性層35aの飽和磁束密度と膜厚と
の積の値である。
【0097】また、第2固定磁性層35cの磁気的膜厚
は、強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、及び強磁
性材料層35c1、それぞれの層の飽和磁束密度と膜厚
との積の和である。
【0098】第1固定磁性層35aは反強磁性層34と
接して形成され、磁場中アニールが施されることによ
り、第1固定磁性層35aと反強磁性層34との界面に
て交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1固定磁性
層35aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1固
定磁性層35aの磁化方向が図示Y方向に固定される
と、非磁性中間層35bを介して対向する第2固定磁性
層35cの磁化方向が、前記第1固定磁性層35aの磁
化方向と反平行の状態で固定される。
【0099】このように、第1固定磁性層35aと第2
固定磁性層35cの磁化方向が、反平行となるフェリ磁
性状態になっていると、第1固定磁性層35aと第2固
定磁性層35cとが互いに他方の磁化方向を固定しあう
ので、全体として固定磁性層35の磁化方向を一定方向
に強力に固定することができる。
【0100】なお、第1固定磁性層35aの磁気モーメ
ントと第2固定磁性層35cの磁気モーメントを足し合
わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層35の磁
化方向となる。
【0101】本実施の形態では、第2固定磁性層35c
の磁気的膜厚を第1固定磁性層35aの磁気的膜厚より
厚くしている。
【0102】また、第1固定磁性層35a及び第2固定
磁性層35cの固定磁化による反磁界(双極子磁界)
を、第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35cの
静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャン
セルできる。これにより、固定磁性層35の固定磁化に
よる反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層37の
変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0103】従って、フリー磁性層37の変動磁化の方
向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシ
ンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型薄膜
磁気素子を得ることが可能になる。
【0104】ここで、アシンメトリーとは、再生出力波
形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形
が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリー
が小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程
再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0105】前記アシンメトリーは、フリー磁性層37
の磁化の方向と固定磁性層35の固定磁化の方向とが直
交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくず
れるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなく
なり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメト
リーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上す
ることになり、スピンバルブ薄膜磁気素子として優れた
ものとなる。
【0106】また、固定磁性層の固定磁化による反磁界
(双極子磁界)は、素子高さ方向において、その端部で
大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリ
ー磁性層37内における単磁区化が妨げられる場合があ
るが、固定磁性層35を上記の積層構造とすることによ
り双極子磁界をほぼ0とすることができ、これによって
フリー磁性層37内に磁壁ができて磁化の不均一が発生
しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止する
ことができる。
【0107】フリー磁性層37は、磁気的膜厚の大きさ
が異なる第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性層3
7cが、非磁性中間層37bを介して積層され、第2フ
リー磁性層37aと第1フリー磁性層37cの磁化方向
が反平行となるフェリ磁性状態である。第1フリー磁性
層37cの磁気的膜厚は、その飽和磁束密度と膜厚との
積の値である。
【0108】なお、第2フリー磁性層37aの磁気的膜
厚は、拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反
射層S2、強磁性層37a2の磁気的膜厚(飽和磁束密
度×膜厚)の和である。
【0109】図1に示される磁気検出素子では、第2フ
リー磁性層37aの磁気的膜厚を第1フリー磁性層37
cの磁気的膜厚より大きくしている。
【0110】第2フリー磁性層37aの磁気的膜厚を第
1フリー磁性層37cの磁気的膜厚より大きくすること
で、フリー磁性層37のスピンフロップ磁界を大きくす
ることができ、これにより、フリー磁性層37がフェリ
磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層が
安定してフェリ磁性状態を保つことができる。
【0111】なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向
が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加し
たときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる
外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きい
ほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して
維持できる。
【0112】このとき、磁気的膜厚が大きい方、例え
ば、第2フリー磁性層37aの磁化方向が、ハードバイ
アス層41から発生する磁界の方向に向き、第1フリー
磁性層37cの磁化方向が、180度反対方向に向いた
状態になる。
【0113】第2フリー磁性層37aの磁気モーメント
と第2フリー磁性層37bの磁気モーメントを足し合わ
せた合成磁気モーメントの方向がフリー磁性層37の磁
化方向となる。
【0114】第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性
層37cの磁化方向が180度異なる反平行のフェリ磁
性状態になると、フリー磁性層37の膜厚を薄くするこ
とと同等の効果が得られ、飽和磁化が小さくなり、フリ
ー磁性層37の磁化が変動しやすくなって、磁気検出素
子の磁界検出感度が向上する。
【0115】ハードバイアス層41の多層膜T1と対向
する側の側面41aは、フリー磁性層37の第1フリー
磁性層37cと第2フリー磁性層37aのうち、第2フ
リー磁性層37aの側面とのみ対向している。
【0116】ハードバイアス層41は、フリー磁性層3
7を構成する第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性
層37cのうち、一方の磁化方向を揃えるだけでよい。
図1では、第2フリー磁性層37aの磁化方向のみをそ
ろえている。第2フリー磁性層37aの磁化方向が一定
方向に揃えられると、第1フリー磁性層37cは磁化方
向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層
37全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0117】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は図示X方向の静磁界を、主に第2フリー磁性層37a
に与える。従って、ハードバイアス層40から発生する
図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37c
の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑
えることができる。
【0118】ただし、ハードバイアス層41の多層膜T
1と対向する側の側面41aが、第1フリー磁性層37
cと第2フリー磁性層37aの両方の側面と対向しても
よい。
【0119】なお、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄
与するのは第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリ
ー磁性層37aの磁化方向の相対角であり、これらの相
対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印
加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0120】図2は、本発明の第2の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。図2に示された磁気検出素子は、図1に示された磁
気検出素子と、第1絶縁層39、ハードバイアス層41
の積層高さが異っている。
【0121】本発明では、図2に示される本発明の第2
の実施の形態の磁気検出素子のように、第1絶縁層39
の多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1
が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反
対側の面S1aより上側に形成されてもよい。
【0122】このとき、第1絶縁層39の上面39c
は、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と
反対側の面S1aの仮想延長平面Aよりも上側に位置す
る。
【0123】ただし、フリー磁性層37の磁化方向を固
定磁性層35の磁化方向と交叉する方向へ揃えるため
に、フリー磁性層37の側端面の少なくとも一部が、ハ
ードバイアス層41の側端面41aと対向している必要
がある。すなわち、ハードバイアス層41の側端面41
aの上端部41a1がフリー磁性層37の下面37dよ
り上側に位置し、かつハードバイアス層41の下面41
bがフリー磁性層37の上面37eよりも下側に位置す
ることが必要である。
【0124】好ましくは、ハードバイアス層41の側端
面41aの上端部41a1がフリー磁性層37の上面3
7eより上側に位置し、かつハードバイアス層41の下
面41bがフリー磁性層37の下面37dよりも下側に
位置することである。このとき、フリー磁性層37の側
端面の全部が、ハードバイアス層41の側端面41aと
対向する。
【0125】より好ましくは、ハードバイアス層41の
側端面41aの上端部41a1が第2フリー磁性層37
の下面37c1より下側に位置し、かつハードバイアス
層41の下面41bがフリー磁性層37の下面37dよ
りも下側に位置することである。このとき、ハードバイ
アス層41からのバイアス磁界はおもに第2フリー磁性
層37aにのみかけられるので、第1フリー磁性層37
cの磁化方向の乱れを抑えることができる。
【0126】本実施の形態でも、第1絶縁層39が形成
されているために、電極層43から供給されるセンス電
流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反
対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c
1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強
磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐこ
とができる。
【0127】また、非磁性材料層36から固定磁性層3
5に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡
面反射させられる。
【0128】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0129】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0130】図3は、本発明の第1の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0131】図3に示される磁気検出素子では、鏡面反
射層S3がフリー磁性層37の非磁性材料層36に対向
する面の反対側に形成されている多層膜T2が形成さ
れ、多層膜T2の両側部であって電極層43上に第2絶
縁層50が形成されている点で図1に示された磁気検出
素子と異っている。
【0132】第2絶縁層50の多層膜T2に対向する側
端面50aの下端縁50a1が鏡面反射層S3の非磁性
材料層36に対向する面と反対側の面S3aと重なる位
置に形成されている。第2絶縁層50の上面は上部ギャ
ップ層44に接している。
【0133】なお、フリー磁性層37の側面の一部がハ
ードバイアス層41の側端面に対向するのであれば、下
端縁50a1が面S3aより下側に位置するように第2
絶縁層50が形成されてもよい。また、第1絶縁層39
の多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1
が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反
対側の面S1aより上側に形成されてもよい。
【0134】本実施の形態では、第1絶縁層39及び第
2絶縁層50が形成されているために、電極層43から
供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1と鏡面反射層
S2に挟まれた領域内に集中して流されるので、磁気抵
抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向
上させることができる。
【0135】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0136】また、本実施の形態では、電極層43と上
部ギャップ層44の間に第2絶縁層50が形成されるの
で、電極層43と上部シールド層45間の電気的絶縁性
を向上させることができる。
【0137】図4は、本発明の第4の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0138】図4に示される磁気検出素子では、多層膜
T3中に形成される鏡面反射層が固定磁性層35中に形
成される鏡面反射層S1のみである点、電極層43が、
多層膜T3の不感領域D,D上にまで延ばされて形成さ
れている点、及びフリー磁性層37の非磁性材料層36
と接する反対側の面に導伝性材料からなるバックド層B
1が形成されている点で図1に示される磁気検出素子と
異なる。
【0139】ハードバイアス層41からのX方向へのバ
イアス磁界により、フリー磁性層37の磁化は図示X方
向に揃えられている。
【0140】ところで図4に示すように多層膜T3中央
に位置する領域は、感度領域Eであり、その両側は、不
感領域D,Dである。
【0141】感度領域Eでは、固定磁性層35の磁化
が、適正に図示Y方向に固定され、しかもフリー磁性層
37の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定
磁性層35とフリー磁性層37の磁化が直交関係にあ
る。そして記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性
層37の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動
と、固定磁性層35の固定磁化方向との関係で電気抵抗
が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化によ
り、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0142】すなわち多層膜T3の感度領域Eは、実質
的に磁気抵抗効果が発揮される部分であり、この部分で
良好に再生機能が働く。
【0143】これに対し、感度領域Eの両側に位置する
不感領域D,Dでは、固定磁性層35及びフリー磁性層
37の磁化が、ハードバイアス層41からの磁化の影響
を強く受け、フリー磁性層37の磁化は、外部磁界に対
し変動しにくくなっている。すなわち不感領域D,D
は、磁気抵抗効果が弱く、再生機能が低下した領域であ
る。
【0144】図4では、電極層43が、多層膜T3の不
感領域D,D上にまで延ばされて形成されているので、
多層膜T3と、電極層43との接合面積も大きくなるた
め直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性
を向上させることが可能である。
【0145】また、電極層43が不感領域D,D上に延
ばされて形成されると、センス電流が不感領域D,Dに
流れ込みノイズを発生させることを抑えることができ
る。
【0146】また、電極層43からのセンス電流が、ハ
ードバイアス層41に流れにくくなり、直接多層膜T3
に、前記センス電流を流す割合を多くできる。
【0147】すなわち、本実施の形態では、第1絶縁層
39が形成されていることによるセンス電流の分流の防
止効果と電極層43からのセンス電流を多層膜T3内を
より多く流すことができるという両方の効果によって、
磁気抵抗変化率を図1に示された磁気検出素子よりもさ
らに向上させることができる。
【0148】なお、バックド層B1は、第2固定磁性層
35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向
が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子の平均自
由行程を伸ばすことにより、外部磁界の印加によるアッ
プスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくして、ス
ピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/
R)をより向上させるためのものである。
【0149】図5は、本発明の第5の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0150】図5に示す磁気検出素子は、反強磁性層3
4、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層
37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバ
ルブ型磁気検出素子である。
【0151】図5では、シード層33、反強磁性層3
4、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2
固定磁性層35cからなるシンセティックフェリピンド
型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第2フリー磁
性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層3
7cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁
性層37、保護層38が積層された多層膜T4が形成さ
れている。なお、多層膜T4の上面の幅寸法がトラック
幅寸法に対応する。
【0152】多層膜T4の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層
32が成膜されている。
【0153】図5では、第2フリー磁性層37aが拡散
防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S4、
強磁性層37a2から形成されている。拡散防止層37
a1は強磁性材料からなるもので例えばCoによって形
成されるものであり、強磁性層37a2と非磁性材料層
36の相互拡散を防止する。なお、拡散防止層37a1
が形成されず第2フリー磁性層37aが強磁性層37a
2のみで構成されてもよい。
【0154】また鏡面反射層S4は、Al23、Al−
Q−O(Qは、B,Si、N,Ti,V,Mn,Fe,
Co,Niから選択される一種以上の元素)、R−O
(RはTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,T
a.Wから選択される一種以上)などの絶縁酸化物によ
って形成されている。このとき鏡面反射層S4の上下に
積層される第1フリー磁性層37cと第2フリー磁性層
37aは、反強磁性的に結合して、磁化方向が反平行に
なる。
【0155】ただし、鏡面反射層S4は、CoO、Co
−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元
素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、
Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一
種以上である)の組成式で示される絶縁酸化物から選択
されるいずれか1種または2種以上から形成されてもよ
い。
【0156】鏡面反射層S4が上述した強磁性材料によ
って形成されるときには、第2フリー磁性層37a、鏡
面反射層S4、第1フリー磁性層37cは、強磁性結合
によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向
いている。
【0157】多層膜T4中の反強磁性層34は、図示X
方向に延長され延出部34aが形成されている。反強磁
性層34の延出部34a上から固定磁性層35非磁性材
料層36の側面、及び第2フリー磁性層37aの側面に
接して、Cr、Ti、Mo、W50Mo50などによってバ
イアス下地層40が形成されている。
【0158】バイアス下地層40の上には、ハードバイ
アス層60が形成されている。ハードバイアス層60は
例えば、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−C
r−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成さ
れており、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されて
いる。本実施の形態では、ハードバイアス層60が多層
膜T4にセンス電流を供給する電極層としても機能す
る。
【0159】図5のように反強磁性層34の延出部34
aが図示X方向に延長されて形成され、この上層にバイ
アス下地層40及びハードバイアス層60が積層される
と、ハードバイアス層60の膜厚の厚い部分がフリー磁
性層37の側面に接し、フリー磁性層37に充分な大き
さのバイアス磁界をかけることができるので好ましい。
【0160】ハードバイアス層60上には、多層膜T4
の両側部に、第2絶縁層61が積層されている。第2絶
縁層61は、多層膜T4に対向する側端面61aの下端
縁61a1が鏡面反射層S4の非磁性材料層36に対向
する面と反対側の面S4aと重なる位置に形成されてい
る。第2絶縁層61は、非磁性材料層36よりも上側に
形成されている。
【0161】第2絶縁層61は、AlO、Al23、S
iO2、Ta25、TiO、AlN、AlSiN、Ti
N、SiN、Si34、NiO、WO、WO3、BN、
CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか
1種または2種以上によって形成される。特に、AlS
iO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種ま
たは2種以上によって形成されると、放熱性、平坦性、
絶縁耐性が良好になるので好ましい。
【0162】多層膜T4の表面、及び絶縁層61の表面
に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44
上には上部シールド45が形成されている。上部シール
ド層45は、図示しない保護層によって覆われる。
【0163】なお、下部シールド層31、下部ギャップ
層32、シード層33、反強磁性層34、非磁性材料層
36、保護層38、バイアス下地層40上部ギャップ層
44、上部シールド層45、及び保護層の材料は図1に
示された磁気検出素子の材料と同じなので説明を省略す
る。
【0164】本実施の形態では、第2絶縁層61が形成
されているために、電極層をかねるハードバイアス層6
0から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S4の非磁
性材料層36に対向する反対側、すなわち、第1フリー
磁性層37c及び保護層38に分流することを防ぐこと
ができる。
【0165】また、非磁性材料層36からフリー磁性層
37に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S4で
鏡面反射させられる。
【0166】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層36周辺に集中して流すことがで
き、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検
出感度を向上させることができる。
【0167】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0168】また、本実施の形態では、ハードバイアス
層60と上部ギャップ層44の間に第2絶縁層61が形
成されるので、ハードバイアス層60と上部シールド層
45間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0169】なお、固定磁性層35内に鏡面反射層S1
を形成し、反強磁性層34の延出部34aの上面に接し
て、多層膜T4に対向する側端面の上端縁が、鏡面反射
層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面に
重なる位置に又は前記反対側の面より上側に位置するよ
うに、形成される第1絶縁層が形成されてもよい。
【0170】図6は、本発明の第6の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0171】図6に示された磁気検出素子の、下部シー
ルド層31、下部ギャップ層32、多層膜T1、上部ギ
ャップ層44、及び上部シールド層45の構成及び材料
は、図1に示された磁気検出素子と同じであるので説明
を省略する。
【0172】図6に示された磁気検出素子でも、多層膜
T1の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶
縁層70が積層されている。第1絶縁層70上にはバイ
アス下地層71を介してハードバイアス層72が積層さ
れ、ハードバイアス層72上には中間層73を介して電
極層74が積層されている。第1絶縁層70、バイアス
下地層71、ハードバイアス層72、中間層73、及び
電極層74の材料は、図1に示された磁気検出素子の第
1絶縁層39、バイアス下地層40、ハードバイアス層
41、中間層42、及び電極層43と同じである。
【0173】第1絶縁層70は、多層膜T1に対向する
側端面70aの上端縁70a1が鏡面反射層S1の非磁
性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側
に形成されている。ただし、上端縁70a1が鏡面反射
層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S
1aに重なる位置に形成されてもよい。
【0174】本実施の形態では、ハードバイアス層72
の下面がバイアス下地層71を介して、多層膜T1の下
層であって下部シールド層31の上に形成されている下
部ギャップ層32に対向している。
【0175】すなわち、ハードバイアス層72の下層の
第1絶縁層70の体積が小さくなり、磁気検出素子の放
熱性が向上するので好ましい。
【0176】本実施の形態でも、第1絶縁層70が形成
されているために、電極層74から供給されるセンス電
流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反
対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c
1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強
磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐこ
とができる。
【0177】また、非磁性材料層36から固定磁性層3
5に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡
面反射させられる。
【0178】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0179】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0180】図7は、本発明の第7の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0181】図7に示す磁気検出素子は、図1に示され
た磁気検出素子とは逆に、フリー磁性層37、非磁性材
料層36、固定磁性層35、反強磁性層34が順次積層
されてなるいわゆるトップ型のスピンバルブ型磁気検出
素子である。
【0182】図7では、下地層80、第1フリー磁性層
37c、非磁性中間層37b、第2フリー磁性層37a
からなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層
37、非磁性材料層36、第2固定磁性層35c、非磁
性中間層35b、第1固定磁性層35aからなるシンセ
ティックフェリピンド型の固定磁性層35、反強磁性層
34、及び保護層39が積層された多層膜T5が形成さ
れている。
【0183】多層膜T5の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層
32が成膜されている。
【0184】なお、下部シールド層31、下部ギャップ
層32、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料
層36、フリー磁性層37、保護層38は、図1に示さ
れた磁気検出素子と同等の材料からなる。下地層80は
Taなどからなる。
【0185】固定磁性層35は、強磁性材料により形成
される第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35
c、非磁性材料により形成される非磁性中間層35bか
らなる。本実施の形態では、第2固定磁性層35cは、
非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35c1、鏡
面反射層S1、及び非磁性材料層36に接する強磁性材
料層35c1から構成されている。
【0186】フリー磁性層37は、第2フリー磁性層3
7a、第1フリー磁性層37c及び非磁性中間層37b
からなる。
【0187】第2フリー磁性層37aは拡散防止層37
a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S2、強磁性層3
7a2から形成されている。なお、拡散防止層37a1
が形成されず強磁性層37a2が非磁性材料層36に接
していてもよい。
【0188】下部ギャップ層31の上面と下地層80の
側面、及び第1フリー磁性層37cの側面に接してバイ
アス下地層81が形成されている。
【0189】バイアス下地層81の上には、ハードバイ
アス層82が形成されている。ハードバイアス層82は
図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。
【0190】ハードバイアス層82上には、Taなどの
非磁性材料で形成された中間層83が形成され、この中
間層83の上に、電極層84が形成されている。
【0191】多層膜T5の両側部であって電極層84上
に第2絶縁層85が形成されている。第2絶縁層85の
多層膜T5に対向する側端面85aの下端縁85a1が
鏡面反射層S1の非磁性材料層に対向する面と反対側の
面S1aと重なるように形成されている。
【0192】バイアス下地層81、ハードバイアス層8
2、中間層84、電極層84、及び第2絶縁層85を形
成する材料は、図1に示された磁気検出素子のバイアス
下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極
層43、及び第1絶縁層39と同等の材料であるので説
明を省略する。
【0193】多層膜T5の表面、及び第2絶縁層85の
表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層
44上には上部シールド45が形成されている。上部シ
ールド層45は、無機絶縁材料からなる図示しない保護
層によって覆われる。
【0194】ハードバイアス層41は、第1フリー磁性
層37cの磁化方向のみをそろえている。第1フリー磁
性層37cの磁化方向が一定方向に揃えられると、第2
フリー磁性層37aは磁化方向が反平行となるフェリ磁
性状態となり、フリー磁性層37全体の磁化方向が一定
方向に揃えられる。
【0195】この実施例においては、多層膜T5の第1
フリー磁性層37cは、反強磁性層34よりも下方に形
成されており、ハードバイアス層82の膜厚の厚い部分
と隣接しており、従って第1フリー磁性層37cの磁化
は容易にX方向に揃えられる。これにより、バルクハウ
ゼンノイズの発生を低減させることができる。
【0196】なお、側端面85aの下端縁85a1は、
鏡面反射層S1の非磁性材料層に対向する面と反対側の
面S1aより下側に位置するように形成されてもよい。
【0197】本実施の形態では、第2絶縁層85が形成
されているために、電極層84から供給されるセンス電
流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反
対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c
1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強
磁性層34、及び保護層38に分流することを防ぐこと
ができる。
【0198】また、非磁性材料層36から固定磁性層3
5に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡
面反射させられる。
【0199】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0200】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0201】また、本実施の形態では、電極層84と上
部ギャップ層44の間に第2絶縁層50が形成されるの
で、電極層43と上部シールド層45間の電気的絶縁性
を向上させることができる。
【0202】なお、図7に示された磁気検出素子のハー
ドバイアス層82上に、多層膜T5に対向する側端面の
上端縁が、フリー磁性層37中に形成されている鏡面反
射層S2の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面
S2aに重なる位置にまたは面S2aより上側に位置す
るような第1絶縁層が形成されてもよい。
【0203】図8は、本発明の第8の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0204】このスピンバルブ型薄膜素子は、非磁性中
間層106を中心として、その上下に第1フリー磁性層
105、第2フリー磁性層107、非磁性材料層10
4,108、第1固定磁性層103,第3固定磁性層1
09、非磁性中間層102,110、第2固定磁性層1
01,第4固定磁性層111及び反強磁性層100,1
12が形成された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄
膜素子と呼ばれるものであり、図1ないし図7に示すス
ピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素
子と呼ばれる)よりも高い再生出力を得ることが可能で
ある。なお最も下側に形成されている層がシード層33
で、最も上側に形成されている層が保護層38であり、
シード層33から保護層38までの積層体によって多層
膜T6が構成されている。
【0205】図8に示される磁気検出素子では、第1固
定磁性層103は、非磁性中間層102に接する強磁性
材料層103a、鏡面反射層S5、及び非磁性材料層1
04に接する強磁性材料層103aから構成されてい
る。また、第3固定磁性層109は、非磁性中間層11
0に接する強磁性材料層109a、鏡面反射層S6、及
び非磁性材料層108に接する強磁性材料層109aか
ら構成されている。
【0206】非磁性材料層104,108、及び反強磁
性層100,112、シード層33及び保護層38の材
料は、図1に示された磁気検出素子の非磁性材料層3
6、反強磁性層34、シード層33及び保護層38の材
料と同じである。
【0207】また、第1フリー磁性層105、及び第2
フリー磁性層107は、強磁性材料により形成されるも
ので、例えばNiFe合金、Co、CoFeNi合金、
CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるもの
であり、特にCoFeNi合金により形成されることが
好ましい。
【0208】非磁性中間層106は、非磁性材料により
形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、C
uのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成され
ている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0209】第1固定磁性層103を構成する強磁性材
料層103a、鏡面反射層S5、第3固定磁性層109
は、非磁性中間層110に接する強磁性材料層109
a、鏡面反射層S6、及び非磁性材料層108に接する
強磁性材料層109aから構成されている。
【0210】第2固定磁性層101及び第1固定磁性層
103の強磁性材料層103a、並びに第4固定磁性層
111及び第3固定磁性層109の強磁性材料層109
aは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNi
Fe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、C
oNi合金などにより形成されるものであり、特にCo
FeNi合金、CoFe合金により形成されることが好
ましい。また、第2固定磁性層101及び強磁性材料層
103a並びに第4固定磁性層101及び強磁性材料層
109aは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0211】第1固定磁性層103の強磁性材料層10
3a、鏡面反射層S5、強磁性材料層103aは、強磁
性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方
向を向いている。同様に、第3固定磁性層の強磁性材料
層109a、鏡面反射層S6、強磁性材料層109a
も、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向
が同一方向を向いている。
【0212】また、非磁性中間層102、110は、非
磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、
Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の
合金で形成されている。特にRuによって形成されるこ
とが好ましい。
【0213】なお、鏡面反射層S5、鏡面反射層S6
は、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−
M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、M
n、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znの
うち少なくとも一種以上である)の組成式で示される絶
縁酸化物から選択されるいずれか1種または2種以上か
らなる。
【0214】多層膜T6の両側部であって下部ギャップ
層32上に、第1絶縁層113が積層されている。第1
絶縁層113は、多層膜T6に対向する側端面113a
の上端縁113a1が鏡面反射層S6の非磁性材料層1
08に対向する面と反対側の面S6aと重なる位置に形
成されている。
【0215】第1絶縁層113上には、Crなどで形成
された緩衝膜及び配向膜となるバイアス下地層114,
115を介してハードバイアス層115が積層されてい
る。
【0216】ハードバイアス層115,115は、Co
−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コ
バルト−クロム−白金)合金などによって形成される。
【0217】バイアス下地層114,114の形成によ
って、ハードバイアス層115,115から発生するバ
イアス磁界を増大させることができる。
【0218】またハードバイアス層115,115上に
は、Taなどの非磁性材料で形成された中間層116,
116が形成され、この中間層116,116の上に、
Cr、Au、Ta、W、Rh、Ir、Ru、Cuなどで
形成された電極層117が形成されている。電極層11
7の上面には第2絶縁層118が形成されている。
【0219】第2絶縁層118の多層膜T6に対向する
側端面118aの下端縁118a1が鏡面反射層S5の
非磁性材料層に対向する面と反対側の面S5aと重なる
位置に形成されている。
【0220】多層膜T6の表面、第2絶縁層118の表
面には、上部ギャップ層119が成膜され、上部ギャッ
プ層119上には上部シールド層45が形成されてい
る。上部シールド層45は、無機絶縁材料からなる保護
層46によって覆われる。
【0221】下部シールド層31、上部シールド層45
の材料は、図1に示された磁気検出素子の材料と同じで
ある。
【0222】第1絶縁層113、第2絶縁層118、下
部ギャップ層32及び上部ギャップ層119は、Al
O、Al23、SiO2、Ta25、TiO、AlN、
AlSiN、TiN、SiN、Si34、NiO、W
O、WO3、BN、CrN、SiON、AlSiOから
選択されるいずれか1種または2種以上によって形成さ
れることができる。
【0223】特に、AlSiO、SiON、AlNから
選択されるいずれか1種または2種以上によって形成さ
れると放熱性、平坦性、絶縁耐圧性が向上するので好ま
しい。
【0224】また、図8では、単位面積当りの磁気モー
メントが異なる第1固定磁性層103と第2固定磁性層
101が、非磁性中間層102を介して積層されたもの
が、一つの固定磁性層P1として機能する。また、単位
面積当りの磁気モーメントが異なる第3固定磁性層10
9と第4固定磁性層111が、非磁性中間層110を介
して積層されたものが、一つの固定磁性層P2として機
能する。
【0225】第1固定磁性層103と第2固定磁性層1
01の磁化方向は、180度異なる反平行のフェリ磁性
状態になっており、第1固定磁性層103と第2固定磁
性層101とが互いに他方の磁化方向を固定しあうの
で、全体として固定磁性層P1の磁化方向を一定方向に
安定させることができる。
【0226】図8では、第1固定磁性層103及び第2
固定磁性層101を同じ材料を用いて形成し、さらに、
それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単
位面積当りの磁気モーメントを異ならせている。
【0227】また、第3固定磁性層109と第4固定磁
性層111の磁化方向も、180度異なる反平行のフェ
リ磁性状態になっており、第3固定磁性層109と第4
固定磁性層111とが互いに他方の磁化方向を固定しあ
っている。
【0228】なお、非磁性中間層102、110は、R
u、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは
2種以上の合金で形成されている。
【0229】第2固定磁性層101及び第4固定磁性層
111は、それぞれ反強磁性層100及び112と接し
て形成され、磁場中アニールが施されることにより、第
2固定磁性層101及び反強磁性層100との界面並び
に第4固定磁性層111及び反強磁性層112との界面
にて交換結合による交換異方性磁界が生じる。
【0230】第2固定磁性層101の磁化方向は、図示
Y方向に固定される。第2固定磁性層101の磁化方向
が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層102を介
して対向する第1固定磁性層103の磁化方向が、第2
固定磁性層101の磁化方向と反平行の状態で固定され
る。なお第2固定磁性層101の単位面積当りの磁気モ
ーメントと第1固定磁性層103の単位面積当りの磁気
モーメントを足し合わせた合成単位面積当りの磁気モー
メントの方向が前記固定磁性層P1の磁化方向となる。
【0231】第2固定磁性層101の磁化方向が図示Y
方向に固定されるとき、第4固定磁性層111の磁化方
向は、図示Y方向と反平行方向に固定されることが好ま
しい。このとき、非磁性中間層110を介して対向する
第3固定磁性層109の磁化方向が、第4固定磁性層1
11の磁化方向と反平行方向に、すなわち、Y方向に固
定される。なお第4固定磁性層111の単位面積当りの
磁気モーメントと第3固定磁性層109の単位面積当り
の磁気モーメントを足し合わせた単位面積当りの合成磁
気モーメントの方向が固定磁性層P2の磁化方向とな
る。
【0232】すると、第1フリー磁性層105、非磁性
材料層106、第2フリー磁性層107を介して対向す
る、第1固定磁性層103と第3固定磁性層109の磁
化方向は、互いに180度異なる反平行状態になる。
【0233】図7では、後述するように、フリー磁性層
Fが第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107
が、非磁性材料層106を介して積層されたものとして
形成され、第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層
107の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっ
ている。
【0234】第1フリー磁性層105と第2フリー磁性
層107は、外部磁界の影響を受けて、フェリ磁性状態
を保ったまま磁化方向を変化させる。このとき、第1固
定磁性層103と第3固定磁性層109の磁化方向が、
互いに180度異なる反平行状態になっていると、フリ
ー磁性層Fより上層部分の抵抗変化率とフリー磁性層F
より下層部分の抵抗変化の位相が等しくなる。
【0235】さらに、前記固定磁性層P1の磁化方向と
前記固定磁性層P2の磁化方向が、反平行方向であるこ
とが好ましい。
【0236】例えば、磁化方向が図示Y方向に固定され
ている第2固定磁性層101の単位面積当りの磁気モー
メントの大きさを第1固定磁性層103の単位面積当り
の磁気モーメントの大きさよりも大きくし、固定磁性層
P1の磁化方向を図示Y方向にする。一方、磁化方向が
図示Y方向に固定されている第3固定磁性層109の単
位面積当りの磁気モーメントの大きさを第4固定磁性層
111の単位面積当りの磁気モーメントの大きさよりも
小さくし、固定磁性層P2の磁化方向を図示Y方向と反
平行方向にする。
【0237】すると、センス電流を図示X方向と反対向
きに流したときに発生するセンス電流磁界の方向と、固
定磁性層P1の磁化方向及び固定磁性層P2の磁化方向
が一致し、第1固定磁性層103と第2固定磁性層10
1のフェリ磁性状態、及び第3固定磁性層109と第4
固定磁性層111のフェリ磁性状態が安定する。
【0238】また、第1フリー磁性層105及び第2フ
リー磁性層107は、それぞれの単位面積当りの磁気モ
ーメントが異なるように形成されている。ここでも、第
1フリー磁性層105及び第2フリー磁性層107を同
じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異な
らせることにより、第1フリー磁性層105及び第2フ
リー磁性層107の単位面積当りの磁気モーメントを異
ならせている。
【0239】図8では、第1フリー磁性層105と第2
フリー磁性層107が、非磁性材料層106を介して積
層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能す
る。
【0240】第1フリー磁性層105と第2フリー磁性
層107の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態に
なっており、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同
等の効果が得られ、フリー磁性層F全体の単位面積あた
りの実効的な単位面積当りの磁気モーメントが小さくな
って磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界
検出感度が向上する。
【0241】第1フリー磁性層105の単位面積当りの
磁気モーメントと第2フリー磁性層107の単位面積当
りの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメント
の方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0242】ハードバイアス層115は図示X方向(ト
ラック幅方向)に着磁されており、ハードバイアス層1
15,115からのX方向へのバイアス磁界により、フ
リー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0243】ハードバイアス層115は、フリー磁性層
Fを構成する第1フリー磁性層105と第2フリー磁性
層107のうち、一方の磁化方向を揃えるだけでよい。
図7ではハードバイアス層115の多層膜T6に対向す
る側端面115aは、第2フリー磁性層107の側端面
と対向し、第1フリー磁性層105の側端面とは対向し
ていない。
【0244】すなわち、ハードバイアス層115は第2
フリー磁性層107の磁化方向のみを揃えている。第2
フリー磁性層107の磁化方向が一定方向に揃えられる
と、第1フリー磁性層105は磁化方向が反平行となる
フェリ磁性状態となり、フリー磁性層F全体の磁化方向
が一定方向に揃えられる。
【0245】本実施の形態では、ハードバイアス層11
5は図示X方向の静磁界を、主に第2フリー磁性層10
7に与える。従って、ハードバイアス層115から発生
する図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層1
05の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されること
を抑えることができる。
【0246】ただし、ハードバイアス層115から発生
する図示X方向の静磁界が第1フリー磁性層105に印
加されてもよい。
【0247】図8に示される磁気検出素子では、固定磁
性層P1、P2の磁化方向が、適正に図示Y方向あるい
はYと反対方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁
化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層P
1、P2とフリー磁性層Fの磁化方向が交差している。
【0248】そして記録媒体からの外部磁界に対し、フ
リー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の
変動と、固定磁性層P1、P2の固定磁化方向との関係
で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電
圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは
第1固定磁性層103の磁化方向と第1フリー磁性層1
05の磁化方向の相対角、及び第3固定磁性層109の
磁化方向と第2フリー磁性層107の磁化方向の相対角
であり、これらの相対角が検出電流が通電されている状
態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交している
ことが好ましい。
【0249】本実施の形態でも、第1絶縁層113及び
第2絶縁層118が形成されているために、電極層11
7から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S5と鏡面
反射層S6に挟まれた領域内に集中して流されるので、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0250】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0251】また、本実施の形態では、電極層117と
上部ギャップ層119の間に第2絶縁層118が形成さ
れるので、電極層117と上部シールド層45間の電気
的絶縁性を向上させることができる。
【0252】図9は、本発明の第9の実施の形態の磁気
検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図であ
る。
【0253】図9に示す磁気検出素子は、反強磁性層3
4、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層
37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバ
ルブ型磁気検出素子である。
【0254】図9では、下地層32、シード層33、反
強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層3
5b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフ
ェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第
2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリ
ー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型
のフリー磁性層37、バックド層B1、保護層39が積
層された多層膜T7が形成されている。
【0255】本実施の形態の磁気検出素子は図1に示さ
れた磁気検出素子と同様に、固定磁性層35が、強磁性
材料により形成される第1固定磁性層35a及び第2固
定磁性層35c、非磁性材料により形成される非磁性中
間層35bからなっており、さらに、第2固定磁性層3
5cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35
c1、鏡面反射層S1、及び非磁性材料層36に接する
強磁性材料層35c1から構成されている。
【0256】第1固定磁性層35a、非磁性中間層35
b、第2固定磁性層35c(強磁性材料層35c1、鏡
面反射層S1)の材料は、図1に示された磁気検出素子
と同じであるので説明を省略する。
【0257】多層膜T7の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層
32が成膜されている。
【0258】なお、下部シールド層31、下部ギャップ
層32、シード層33、反強磁性層34、非磁性材料層
36、フリー磁性層37及び上部ギャップ層44は、図
1の磁気検出素子と同等の構成及び材質であるので、説
明を省略する。また、上部ギャップ層44上には、磁性
材料からなる図示しない上部シールド層が形成されてい
る。
【0259】図9に示される本実施の形態の磁気検出素
子は、第1フリー磁性層37c上に、第2の反強磁性層
120が積層され、第1フリー磁性層37cの磁化が、
第2の反強磁性層120との間の交換異方性磁界によっ
てX方向に揃えられる、いわゆるエクスチェンジバイア
ス方式の磁気検出素子である。
【0260】第1フリー磁性層37cの磁化方向が図示
X方向を向くと、第2フリー磁性層37aは磁化方向が
反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層37
全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0261】このように、本実施の形態でもフリー磁性
層37はシンセティックフェリフリー状態になってい
る。
【0262】また、固定磁性層35全体の磁化方向は、
反強磁性層34との間の交換異方性磁界によって図示Y
方向にそろえられている。
【0263】第2の反強磁性層120は、PtMn合
金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,R
h,Ru,Osのいずれか1種または2種以上の元素で
ある)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′
は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,C
r,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または
2種以上の元素である)合金で形成する。
【0264】第2の反強磁性層120を形成するため
の、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される
合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範
囲であることが好ましい。また、Pt−Mn−X’の式
で示される合金において、X’+Ptが37〜63at
%の範囲であることが好ましい。さらに、前記Pt−M
n−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜
10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’
がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれ
か1種または2種以上の元素である場合には、X’は
0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。特に
規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以
下、以上を意味する。なお、第2反強磁性層120の間
隔寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0265】本実施の形態の磁気検出素子では、磁気検
出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラッ
ク幅)の領域に不感領域が生じないので、高記録密度化
に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅を小
さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることがで
きる。
【0266】さらに、本実施の形態では磁気検出素子の
側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるよう
に形成されることが可能なので、フリー磁性層37のト
ラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0267】第1フリー磁性層37c上であって、第2
の反強磁性層120にはさまれる領域には、バックド層
B1及び保護層38が順次積層されている。
【0268】バックド層B1は図4に示されたバックド
層B1と同様の材料を用いて形成され、バックド層38
と同様にスピンフィルター効果を有する。
【0269】多層膜T7の両側部であって下部ギャップ
層32上に、第1絶縁層121が積層されている。第1
絶縁層121は、多層膜T7に対向する側端面121a
の上端縁121a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層3
6に対向する面と反対側の面S1aと重なる位置に形成
されている。第1絶縁層121は、非磁性材料層36よ
りも下側に形成されている。第1絶縁層121の上に
は、電極層122が積層されている。
【0270】本実施の形態でも、第1絶縁層121が形
成されているために、電極層122から供給されるセン
ス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向す
る反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層3
5c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、
反強磁性層34、及びシード層33に分流することを防
ぐことができる。
【0271】また、非磁性材料層36から固定磁性層3
5に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡
面反射させられる。
【0272】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0273】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【0274】図1に示された磁気検出素子の製造方法に
ついて説明する。図10に示されるように下部ギャップ
31上に下地層32及びシード層33を介して反強磁性
層34を積層する。さらに第1固定磁性層35a、非磁
性中間層35b、強磁性材料層35c1をスパッタ法や
蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜
装置中で連続成膜する。
【0275】次に、強磁性材料層35c1上に、組成式
がCoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M
−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、M
n、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znの
うち少なくとも一種以上である)の組成式で示される材
料から選択されるいずれか1種または2種以上を用いて
鏡面反射層S1を成膜する。
【0276】鏡面反射層S1を、例えばCo−Fe−O
を用いて形成するときには、例えばターゲットとしてC
oFeで形成されたターゲットを使用する。前記ターゲ
ットにはO(酸素)が含まれていないので、スパッタで
形成される鏡面反射層S1内に酸素を含有させるため
に、スパッタ装置内にArガス以外にO2ガスを導入
し、反応性スパッタ法によってCo−Fe−O膜を成膜
する。
【0277】この製造方法ではCo−Fe−Oターゲッ
ト形成のとき、Feの含有量をCoの含有量との比のみ
で調整することができる。
【0278】また本発明では上記した製造方法に限ら
ず、ターゲットとして予め組成比が所定範囲内に調整さ
れたCo−Fe−Oからなる焼結ターゲットを形成して
もよい。この場合、導入ガスとしては不活性なArガス
のみでもよいし、あるいはO2ガスを導入して、Oの組
成比を適切に調整してもよい。
【0279】または、Feの含有量をCoの含有量との
比で調整したCo−Feターゲットを形成し、DCスパ
ッタ法などのスパッタ法によって、強磁性材料層34上
にCo−Fe膜を成膜し、このCo−Fe膜を酸化させ
てCo−Fe−O膜を得ることもできる。
【0280】Co−Fe膜を酸化させる方法として、O
2ガス中で自然酸化させる方法、O2プラズマ中で酸化さ
せる方法、O2プラズマ中からO2ラジカルを引出し、こ
のO 2ラジカル中で酸化させる方法を使用することがで
きる。
【0281】特に、O2ラジカル中で酸化させる方法は
酸化速度を適切に調節することが容易であり、Co−F
e膜を均一に酸化させることが容易になるので好まし
い。
【0282】Co−Fe膜を酸化させてCo−Fe−O
膜を得る方法では、Co−Feターゲット形成のとき、
Feの含有量をCoの含有量との比のみで調整すること
ができる。
【0283】あるいは、気相成長法(CVD法)によっ
て、Co−Fe−O膜を成膜することもできる。
【0284】鏡面反射層S1をCo−Fe−O以外のC
oO、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素M
は、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される材料を用いて形成する
ときにも、同様の方法を用いることができる。
【0285】さらに、鏡面反射層S1上に、強磁性材料
層35c1を積層してシンセティックフェリピンド型の
固定磁性層35を形成する。
【0286】さらに非磁性材料層36、強磁性材料層3
7a1、鏡面反射層S2、強磁性材料層37a1からな
る第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1
フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリ
ー型のフリー磁性層37、保護層38を積層することに
より多層膜T1を形成する。
【0287】多層膜T1の形成後、多層膜T1を磁場中
熱処理にかけて、反強磁性層34と固定磁性層35との
間に交換異方性磁界を生じさせる。
【0288】次に、形成する磁気検出素子の光学トラッ
ク幅の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層R1を、多
層膜T1上にパターン形成する。
【0289】図10に示すように、レジスト層R1に
は、その下面に切り込み部R1a,R1aが形成されて
いる。
【0290】次に図11に示す工程では、エッチングに
より多層膜T1の両側を削り込む。本工程では、反強磁
性層34の側面を完全に削り取っている。ただし、エッ
チングレート及びエッチング時間を制御し、反強磁性層
34の側面を完全に削り取らず延出部34aが形成され
るようにすると図5に示されたような磁気検出素子を得
ることができる。
【0291】さらに図12に示す工程では、多層膜T1
の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層
39を成膜する。第1絶縁層39は、多層膜T1に対向
する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の
非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aと重
なるように成膜する。なお、第1絶縁層39は、非磁性
材料層36よりも下側に形成される。
【0292】第1絶縁層39の成膜は、異方性を有する
イオンビームスパッタ法を用いて、下部ギャップ層32
の表面に対する法線方向に対して角度θ1の方向から行
った。ここで角度θ1は0°〜20°の範囲とした。
【0293】なお、多層膜T1に対向する側端面39a
の上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36
に対向する面と反対側の面S1aより上側に位置するよ
うに第1絶縁層39を成膜してもよい。
【0294】第1絶縁層39形成後、多層膜T1の側面
に付着した第1絶縁層の材料をドライエッチングによっ
て除去する。
【0295】次に、図13に示す工程において、第1絶
縁層39上に、バイアス下地層40、ハードバイアス層
41、中間層42、電極層43を成膜する。本実施の形
態では、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、
中間層42、電極層43を下部ギャップ層32の表面の
法線方向(多層膜T1が形成される図示しない基板の面
垂直方向)に対して角度θ2の方向からからスパッタ粒
子を入射させた。ここで角度θ2は20°〜50°の範
囲とした。
【0296】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は多層膜T1と対向する側の側面41aの最上部41b
が第2フリー磁性層37aの上面37a3と重なる高さ
位置に形成される。ただし、ハードバイアス層41の側
面41aが、固定磁性層35の側面、非磁性材料層36
の側面、第2のフリー磁性層37a、非磁性中間層37
b、及び第1フリー磁性層37cの側面と対向するよう
にしてもよい。
【0297】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は図示X方向の静磁界を、主に第2のフリー磁性層37
aに与える。従って、ハードバイアス層40から発生す
る図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37
の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑
えることができる。
【0298】さらに、レジスト層R1が除去され、多層
膜T1の表面、及び電極層43の表面に上部ギャップ層
44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シール
ド(図示せず)が形成され、この上部シールド層が、無
機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われる
ことにより第1の実施の形態の磁気検出素子が形成され
る。
【0299】なお、図3、図7、または図8に示される
磁気検出素子のように、電極層43、84または117
上に第2絶縁層50、85、または118を形成すると
きには、電極層43、84または117の成膜後、レジ
スト層R1を除去する前にレジスト層R1をマスクとし
て第2絶縁層50、85、または118を成膜する。
【0300】なお、下部シールド層31、下部ギャップ
層31、シード層32、反強磁性層34、固定磁性層3
5(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁
性材料層35c1、鏡面反射層S1)、非磁性材料層3
6、フリー磁性層37(拡散防止層37a1、強磁性材
料層37a2、鏡面反射層S2、非磁性中間層37b、
第1フリー磁性層37c)、保護層38、第1絶縁層3
9、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間
層42、電極層43、及び上部ギャップ層44は、前述
した材料を用いて形成する。
【0301】図6に示された磁気検出素子の製造方法に
ついて説明する。まず、図10に示されるように下部ギ
ャップ31上に下地層32及びシード層33を介して反
強磁性層34を積層する。さらに第1固定磁性層35
a、非磁性中間層35b、強磁性材料層35c1、鏡面
反射層S1、強磁性材料層35c1、非磁性材料層3
6、強磁性材料層37a1、鏡面反射層S2、強磁性材
料層37a1からなる第2フリー磁性層37a、非磁性
中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセ
ティックフェリフリー型のフリー磁性層37、保護層3
8をスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによっ
て、同一真空成膜装置中で連続成膜して多層膜T1を形
成する。
【0302】さらに、形成される磁気抵抗効果素子の光
学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆う、リフトオ
フ用レジスト層R1を、多層膜T1上に形成する。
【0303】次に、図14に示されるように、リフトオ
フ用レジスト層R1に覆われていない領域の多層膜T1
及び下部ギャップ層32の一部を、イオンミリングなど
のミリング法によって削って除去する。
【0304】次に、図15に示す工程では、下部ギャッ
プ層32表面の法線方向(多層膜T1が形成される図示
しない基板の面垂直方向)に対して第1のスパッタ粒子
入射角度θ3を有するイオンビームスパッタ法を用い
て、多層膜T1の両側部の下部ギャップ層32上から多
層膜T1の両側面にかけて、第1絶縁層70を成膜す
る。ここで角度θ3は20°〜50°の範囲とした。
【0305】次に、第1絶縁層70の多層膜T1に対向
する側端面70aの上端縁70a1が鏡面反射層S1の
非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより
上側に位置するように第1絶縁層70の上端側をイオン
ミリングなどのドライエッチング法により削って除去す
る。このイオンミリングは、下部ギャップ層32表面の
法線方向に対して前記θ3よりも大きな角度、例えば5
0°〜80°の入射角度で行われる。
【0306】第1絶縁層70の多層膜T1の側面に接し
ている突出部70a以外の、下部ギャップ層32表面に
対して平行に重なっている平坦部70dは、下部ギャッ
プ層32の一部になる。
【0307】なお、側端面70aの上端縁70a1が鏡
面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側
の面S1aに重なる位置に第1絶縁層70を形成しても
よい。第1絶縁層70形成後、多層膜T1の側面に付着
した第1絶縁層の材料をドライエッチングによって除去
する。
【0308】次に、下部ギャップ層32表面の法線方向
(多層膜T1が形成される図示しない基板の面垂直方
向)に対して第1のスパッタ粒子入射角度θ3よりも小
さい第2のスパッタ粒子入射角度θ4を有するイオンビ
ームスパッタ法を用いて、第1絶縁層70上にハードバ
イアス層72、中間層73及び電極層74を形成する。
ここで角度θ4は20°〜40°である。
【0309】さらに、レジスト層R1が除去され、多層
膜T1の表面、及び電極層74の表面に上部ギャップ層
44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シール
ド(図示せず)が形成され、この上部シールド層が、無
機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われる
ことにより図6に示された磁気検出素子が形成される。
【0310】なお、下部シールド層31、下部ギャップ
層32、シード層33、反強磁性層34、固定磁性層3
5(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁
性材料層35c1、鏡面反射層S1)、非磁性材料層3
6、フリー磁性層37(拡散防止層37a1、強磁性材
料層37a2、鏡面反射層S2、非磁性中間層37b、
第1フリー磁性層37c)、保護層38、第1絶縁層7
0、バイアス下地層71、ハードバイアス層72、中間
層73、電極層74、及び上部ギャップ層44は、前述
した材料を用いて形成する。
【0311】上述した製造方法を用いることにより、ハ
ードバイアス層72の下面がバイアス下地層71を介し
て、前記磁気抵抗効果素子の下層であって下部シールド
層31の上に形成されている下部ギャップ層32に対向
している磁気検出素子を形成できる。
【0312】すなわち、ハードバイアス層72の下層の
第1絶縁層70の体積が小さくなり、磁気検出素子の放
熱性が向上させることができる。
【0313】また、フリー磁性層37、Fは単層あるい
は2層(CoFe/NiFeなど)の強磁性材料層とし
て形成されてもよい。この場合、ハードバイアス層4
1、72、83、115、60はフリー磁性層37、F
の両側端面の全部に対向することが好ましい。
【0314】また、固定磁性層35、Pは単層あるいは
2層(CoFe/NiFeなど)の強磁性材料層として
形成されてもよい。
【0315】また鏡面反射層S1、S2、S3、S4は
Al23、Al−Q−O(Qは、B,Si、N,Ti,
V,Mn,Fe,Co,Niから選択される一種以上の
元素)、R−O(RはTi,V,Cr,Zr,Nb,M
o,Hf,Ta.Wから選択される一種以上)などの絶
縁酸化物によって形成してもよい。この場合、鏡面反射
層S1、S2、S3、S4の上下に積層される強磁性材
料からなる層は、反強磁性的に結合して、磁化方向が反
平行になる。
【0316】また、鏡面反射層S1、S2、S3、S4
をα−Fe23、NiOなどの反強磁性材料によって形
成してもよい。
【0317】なお、本発明の磁気検出素子に重ねて記録
用のインダクティブヘッドが形成されてもよい。
【0318】
【発明の効果】以上、詳細に説明した本発明によれば、
前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、前記フリー磁
性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側の面に対向
する領域中のうち、1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸
化物からなる鏡面反射層が形成されている。
【0319】また、本発明では、前記多層膜に対向する
側端面の上端縁が前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に
対向する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反対側
の面より上側に位置するように形成される第1絶縁層
と、前記多層膜に対向する側端面の下端縁が前記鏡面反
射層の非磁性材料層に対向する面と反対側の面に重なる
位置に又は前記反対側の面より下側に位置するように形
成される第2絶縁層のどちらか一方または両方が形成さ
れている。さらに、前記第1絶縁層の上層または前記第
2絶縁層の下層に電極層が形成されている。
【0320】これら第1絶縁層と第2絶縁層が形成され
ているために、前記電極層から供給されるセンス電流
が、前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する反対
側に分流することを防ぐことができる。
【0321】さらに、前記非磁性材料層から前記固定磁
性層あるいは前記フリー磁性層に向って流れる伝導電子
は、前記鏡面反射層で反射させられる。
【0322】従って、本発明の磁気検出素子では、セン
ス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、
磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感
度を向上させることができる。
【0323】また、センス電流を効率よく磁気の検出に
用いることができるので素子の低消費電力化を図ること
ができ、また発熱量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図5】本発明の第5の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図6】本発明の第6の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図7】本発明の第7の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図8】本発明の第8の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図9】本発明の第9の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図10】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図11】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図12】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図13】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図14】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図15】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図16】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図17】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図18】図1に示された磁気検出素子における鏡面反
射効果を説明するための説明図、
【図19】従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側
からみた断面図、
【符号の説明】
33シード層 34 反強磁性層 35a 第1固定磁性層 35b 非磁性中間層 35c 第2固定磁性層 35 固定磁性層 35c1 強磁性材料層 S1,S2,S3 鏡面反射層 36 非磁性材料層 37a 第2フリー磁性層 37b 非磁性中間層 37c 第1フリー磁性層 37 フリー磁性層37 38 保護層 39、70、113、121 第1絶縁層 50、61、85、118 第2絶縁層 41、60、72、82、115 ハードバイアス層 120 第2の反強磁性層 43、74、84、117、122、 電極層 e1 アップスピン電子 e2 ダウンスピン電子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 41/18 H01L 43/12 H01L 43/12 G01R 33/06 R Fターム(参考) 2G017 AA01 AB07 AD55 AD65 5D034 BA03 BA04 BA05 BA08 BA12 CA08 DA07 5E049 AA01 AA04 AA07 AC05 BA05 DB12 FC01 GC01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、反強磁性層、前記反強磁性層
    との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性
    層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動する
    フリー磁性層を含む多層膜を有する磁気検出素子におい
    て、 前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、又は前記フリ
    ー磁性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側の面に
    対向する領域中のうち、1箇所あるいは2箇所以上に絶
    縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されており、 前記多層膜の両側部に形成される絶縁層であって、この
    絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記
    鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する面と反対側の
    面に重なる位置に又は前記反対側の面より上側に位置す
    るように形成される第1絶縁層と、前記多層膜の両側部
    に形成される絶縁層であって、この絶縁層の前記多層膜
    に対向する側端面の下端縁が、前記鏡面反射層の前記非
    磁性材料層に対向する面と反対側の面に重なる位置に又
    は前記反対側の面より下側に位置するように形成される
    第2絶縁層のどちらか一方または両方が形成され、 かつ前記第1絶縁層の上層または前記第2絶縁層の下層
    に電極層が形成されていることを特徴とする磁気検出素
    子。
  2. 【請求項2】 前記第1絶縁層の上層または前記第2絶
    縁層の下層に、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定
    磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるためのバイア
    ス層が形成されている請求項1に記載の磁気検出素子。
  3. 【請求項3】 前記フリー磁性層の側端面の少なくとも
    一部が、前記バイアス層の側端面と対向している請求項
    2に記載の磁気検出素子。
  4. 【請求項4】 前記バイアス層または前記電極層の下面
    がバイアス下地層を介してまたは直接に、前記多層膜の
    下層に形成された下部ギャップ層に対向している請求項
    2または3に記載の磁気検出素子。
  5. 【請求項5】 前記バイアス層が前記電極層を兼ねてい
    る請求項2ないし4のいずれかに記載の磁気検出素子。
  6. 【請求項6】 前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層が、
    AlO、Al23、SiO2、Ta25、TiO、Al
    N、AlSiN、TiN、SiN、Si34、NiO、
    WO、WO3、BN、CrN、SiON、AlSiOか
    ら選択されるいずれか1種または2種以上によって形成
    される請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気検出素
    子。
  7. 【請求項7】 前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層が、
    AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか
    1種または2種以上によって形成される請求項6に記載
    の磁気検出素子。
  8. 【請求項8】 以下の工程を有することを特徴とする磁
    気検出素子の製造方法。 (a)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、反強磁
    性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層を
    有し、前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、又は前
    記フリー磁性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側
    の面に対向する領域中のうち、1箇所あるいは2箇所以
    上に絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されている多
    層膜を成膜する工程と、(b)形成される磁気検出素子
    の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフト
    オフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフ
    トオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層
    膜を除去する工程と、(c)前記下部ギャップ層表面の
    法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有する
    イオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層
    上から前記多層膜の両側面にかけて、前記多層膜に対向
    する側端面の上端縁が前記鏡面反射層の前記非磁性材料
    層に対向する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反
    対側の面より上側に位置するように形成される絶縁層を
    形成する工程と、(d)前記下部ギャップ層表面の法線
    方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも大
    きい第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビーム
    スパッタ法を用いて、前記絶縁層上にバイアス層及び電
    極層を形成する工程と、(e)前記リフトオフ用のレジ
    スト層を除去する工程、
  9. 【請求項9】 以下の工程を有することを特徴とする磁
    気検出素子の製造方法。(f)絶縁性材料からなる下部
    ギャップ層上に、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料
    層、及びフリー磁性層を有し、前記固定磁性層中、前記
    フリー磁性層中、又は前記フリー磁性層の前記非磁性材
    料層に接する面と反対側の面に対向する領域中のうち、
    1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸化物からなる鏡面反
    射層が形成されている多層膜を成膜する工程と、(g)
    形成される磁気検出素子の光学トラック幅に相当する幅
    寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層を前記多層
    膜上に形成し、前記リフトオフ用のレジスト層に覆われ
    ていない領域の前記多層膜及び前記下部ギャップ層の一
    部を除去する工程と、(h)前記下部ギャップ層表面の
    法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有する
    イオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層
    上から前記多層膜の両側面にかけて絶縁層を形成する工
    程と、(i)前記絶縁層の前記多層膜に対向する側端面
    の上端縁が、前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向
    する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反対側の面
    より上側に位置するように、前記絶縁層の上端側を除去
    する工程と、(j)前記下部ギャップ層表面の法線方向
    に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも小さい
    第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパ
    ッタ法を用いて、前記絶縁層上にバイアス層及び電極層
    を形成する工程と、(k)前記リフトオフ用のレジスト
    層を除去する工程、
  10. 【請求項10】 前記(h)の工程において、前記絶縁
    層を、前記多層膜の側面に接している突出部及び前記下
    部ギャップ層表面に対して平行に重なっている平坦部を
    有するものとして形成する請求項9に記載の磁気検出素
    子の製造方法。
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