JP2002374018A - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法

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JP2002374018A
JP2002374018A JP2001181203A JP2001181203A JP2002374018A JP 2002374018 A JP2002374018 A JP 2002374018A JP 2001181203 A JP2001181203 A JP 2001181203A JP 2001181203 A JP2001181203 A JP 2001181203A JP 2002374018 A JP2002374018 A JP 2002374018A
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ferromagnetic
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JP2001181203A
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Inventor
Eiji Umetsu
英治 梅津
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Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絶縁酸化物からなる鏡面反射層を有する磁気
検出素子において、鏡面反射層の上下の層に鏡面反射層
に含まれる酸素が拡散することを防ぎ、鏡面反射層の界
面の均一性を保つことのできる磁気検出素子を提供す
る。 【解決手段】 鏡面反射層S1の上下に、鏡面反射層に
含まれる酸素の拡散を防止するNiFeやCoFeNi
などからなる拡散防止層P1,P2を形成することによ
り、鏡面反射層S1に含まれる酸素が拡散することを防
ぎ、鏡面反射層S1の界面を均一にして、鏡面反射効果
を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果を利
用して磁界を検出する磁気検出素子に係り、特に、磁気
抵抗変化率を高くでき、高記録密度化に対応することの
できる磁気検出素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図18は従来の磁気検出素子を記録媒体
との対向面側からみた断面図である。図18に示す磁気
検出素子では、図示しない下部シールド層上に下部ギャ
ップ層10が積層され、下部ギャップ層10上に下地層
11を介して反強磁性層12、固定磁性層13、鏡面反
射層14、固定磁性層13、非磁性導電層15、フリー
磁性層16、及び保護層17が形成され、下地層11か
ら保護層17までの積層体が多層膜18として構成され
ている。
【0003】反強磁性層12はPt−Mn(白金−マン
ガン)合金などの反強磁性材料により形成されている。
【0004】固定磁性層13およびフリー磁性層16
は、Co−Fe(コバルト−鉄)合金で形成されてお
り、非磁性導電層15は、Cu(銅)などの電気抵抗の
低い非磁性導電材料で形成されている。
【0005】そして多層膜18の反強磁性層12の延出
部上及び固定磁性層13、非磁性導電層15、及びフリ
ー磁性層16の側面にかけて、Crなどで形成された緩
衝膜及び配向膜となるバイアス下地層19が形成されて
おり、このバイアス下地層19の形成によって、後述す
るハードバイアス層20から発生するバイアス磁界を増
大させることができる。
【0006】バイアス下地層19の上には、例えばCo
−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コ
バルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバ
イアス層20が形成されている。
【0007】ハードバイアス層20は図示X方向(トラ
ック幅方向)に着磁されており、ハードバイアス層20
からのX方向へのバイアス磁界により、フリー磁性層1
5の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0008】またハードバイアス層20上には、Cr、
Au、Ta、Wなどで形成された電極層21が形成され
ている。
【0009】さらに、多層膜18及び電極層21上に絶
縁材料からなる上部ギャップ層22が積層され、上部ギ
ャップ層21上に図示しない上部シールド層が形成され
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】図18に示された磁気
検出素子は、いわゆるスピンバルブ型磁気検出素子であ
り、固定磁性層13の磁化方向が、適正に図示Y方向に
平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層16の磁化
が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層13
とフリー磁性層16の磁化が直交関係にある。そして記
録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層16の磁化
が変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層13の固
定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗
値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ
磁界が検出される。
【0011】図18に示された磁気検出素子の多層膜1
8には、固定磁性層13内に鏡面反射層14が形成され
ている。
【0012】鏡面反射層14は、固定磁性層13よりも
高い抵抗値を示すものであり、鏡面反射層14と固定磁
性層13の界面においてポテンシャル障壁を形成する。
このようなポテンシャル障壁が存在すると、アップスピ
ンの伝導電子を鏡面反射させて、アップスピンの伝導電
子の平均自由行程を延すことができ、磁気検出素子の磁
気抵抗変化率を高くすることができる。
【0013】図18に示された磁気検出素子は、反強磁
性層12をPt−Mn(白金−マンガン)合金を用いて
形成している。反強磁性層12をPt−MnやNiOな
どを用いて形成するときは、反強磁性層12と固定磁性
層13との間に交換異方性磁界を生じさせるために多層
膜18を磁場中熱処理にかける必要がある。
【0014】図18では、鏡面反射層14は固定磁性層
13の材料であるCoFeを酸化することによって形成
したCoFeO膜として形成されている。
【0015】このように、CoFe膜からなる固定磁性
層13と、CoFeの酸化物であるCoFeO膜からな
る鏡面反射層14が接合していると、前記磁場中熱処理
の工程によって、CoFeO膜に含まれる酸素原子がC
oFe膜からなる固定磁性層13に拡散し、固定磁性層
13と鏡面反射層14の界面が乱れるという現象が生じ
る。
【0016】固定磁性層13と鏡面反射層14の界面が
乱れると、この界面付近で電子がスピン状態を保存しな
い散乱をしたり、固定磁性層13の強磁性特性が不安定
になるという問題が生じていた。
【0017】本発明は、上記従来の課題を解決するため
のものであり、鏡面反射層の上面または下面の少なくと
も一方に接する拡散防止層を形成することにより、安定
した鏡面反射効果を発揮できる磁気検出素子及びその製
造方法を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に、反
強磁性層、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化
方向が固定される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化
が外部磁界に対し変動するフリー磁性層を有する多層膜
を有する磁気検出素子において、前記固定磁性層中、前
記フリー磁性層中、または前記フリー磁性層の前記非磁
性材料層に接する面と反対側の面に対向する領域中のう
ち、いずれか1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸化物か
らなる鏡面反射層が形成され、前記鏡面反射層の上面ま
たは下面の少なくとも一方に接して、強磁性材料からな
り、前記鏡面反射層に含まれる酸素の拡散を防止する拡
散防止層が形成されていることを特徴とするものであ
る。
【0019】本発明では、前記拡散防止層を前記鏡面反
射層の上面または下面の少なくとも一方に接するように
積層する。従って、前記鏡面反射層に含まれる酸素原子
の拡散が前記拡散防止層によって抑えられ、前記鏡面反
射層の界面が乱れることを防止できる。
【0020】すなわち、本発明では、前記鏡面反射層と
前記拡散防止層との界面付近において電子にスピン状態
を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させる
ことができる。また、前記固定磁性層や前記フリー磁性
層の強磁性特性の不安定化を抑えることができる。
【0021】なお、前記拡散防止層を形成する材料によ
って拡散防止膜を形成し、この拡散防止膜を常温または
加熱雰囲気に曝して酸化させたとき前記拡散防止膜の表
面に形成される酸化層の厚さは、前記鏡面反射層を形成
する材料から酸素を除いた組成を有する材料によって薄
膜を形成し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させたとき
に前記薄膜の表面に形成される酸化層の厚さよりも小さ
くなるように前記拡散防止層を形成する材料を選択する
ことが好ましい。
【0022】すなわち、前記拡散防止層を形成する材料
は、前記鏡面反射層を形成する材料から酸素を除いた組
成を有する材料よりも酸化しにくいものであることが好
ましい。
【0023】前記反強磁性層は、前記固定磁性層に接し
て積層された後、磁場中熱処理にかけられることによっ
て前記固定磁性層との間に交換異方性磁界を生じさせる
反強磁性材料によって形成することができる。
【0024】なお、前記拡散防止層を形成する材料によ
って拡散防止膜を形成し、また前記鏡面反射層を形成す
る材料から酸素を除いた組成を有する材料によって薄膜
を形成し、これらの拡散防止膜及び薄膜を常温または加
熱雰囲気に曝して酸化させたときに形成される酸化層の
厚さを測定するときの、前記加熱雰囲気の温度条件は、
例えば、前記反強磁性層と前記固定磁性層との間に交換
異方性磁界が発生する温度より高く、前記反強磁性層の
ブロッキング温度よりも低い温度に設定する。
【0025】また、前記加熱雰囲気の温度条件におい
て、前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における
活性化エネルギーは、前記鏡面反射層を形成する材料か
ら酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応における活
性化エネルギーよりも大きいと、前記拡散防止層を形成
する材料は、前記鏡面反射層を形成する材料から酸素を
除いた組成を有する材料よりも酸化しにくくなるので好
ましい。
【0026】さらに、前記加熱雰囲気の温度条件におい
て、前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における
自由エネルギー変化量は、前記鏡面反射層を形成する材
料から酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応におけ
る自由エネルギー変化量より大きいと、前記拡散防止層
を形成する材料は、前記鏡面反射層を形成する材料から
酸素を除いた組成を有する材料よりも酸化しにくくなる
ので好ましい。
【0027】また、前記拡散防止層よりも電子散乱のス
ピン依存性が大きい材料によって形成され、前記非磁性
材料層に接する強磁性散乱層が形成されていると、磁気
検出素子の磁気抵抗変化率が大きくなるので好ましい。
【0028】前記拡散防止層は、例えばNiFeまたは
CoFeNiによって形成され、前記強磁性散乱層は、
例えばCoまたはCoFeによって形成される。
【0029】また、前記鏡面反射層は、例えば、Al2
3、Al−Q−O(Qは、B、Si、N、Ti、V、
Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される一種以上
の元素)、R−O(RはTi、V、Cr、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ta、Wから選択される一種以上)、α−
Fe23、NiO、CoO、Co−Fe−O、Fe−
O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Mn、C
o、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少
なくとも一種以上である)の組成式で示される材料から
選択されるいずれか1種または2種以上からなるもので
ある。
【0030】また、本発明では、前記固定磁性層は、磁
気的膜厚の大きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁
性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層を介して
隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフ
ェリ磁性状態であることが好ましい。
【0031】または、前記フリー磁性層は、磁気的膜厚
の大きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁性中間層
を介して積層され、前記非磁性中間層を介して隣接する
前記強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性
状態であることが好ましい。
【0032】さらに、前記非磁性中間層に接する前記強
磁性材料層と前記鏡面反射層との間に前記拡散防止層が
形成されることにより、前記固定磁性層や前記フリー磁
性層のフェリ磁性状態を安定化できる。
【0033】前記非磁性中間層に接する前記強磁性材料
層は、CoFe合金またはCoFeNi合金で形成され
ることが好ましい。
【0034】なお、前記非磁性中間層は、例えばRu、
Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種
以上の合金で形成される。
【0035】また、本発明は、基板上に、反強磁性層、
前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化方向が固定
される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界
に対し変動するフリー磁性層を有する多層膜を有する磁
気検出素子において、前記固定磁性層は、前記反強磁性
層に接する第1固定磁性層と、前記第1固定磁性層に非
磁性中間層を介して積層される第2固定磁性層からなる
ものであり、前記第2の固定磁性層は、Al23、Al
−Q−O(Qは、B、Si、N、Ti、V、Cr、M
n、Fe、Co、Niから選択される一種以上の元
素)、R−O(RはTi、V、Cr、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wから選択される一種以上)、α−F
23、NiO、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、
またはFe−M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、N
i、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくと
も一種以上である)の組成式で示される材料から選択さ
れるいずれか1種または2種以上からなる鏡面反射層
と、前記非磁性材料層と前記鏡面反射層の間に積層され
たNiFe合金またはCoFeNi合金からなる第1強
磁性層と、前記非磁性材料層と前記第1強磁性層との間
に積層されたCoFe合金またはCoFeNi合金から
なる第2強磁性層と、前記鏡面反射層と前記非磁性中間
層との間に積層されたNiFe合金またはCoFeNi
合金からなる第3強磁性層と、前記非磁性中間層と前記
第3強磁性層との間に積層されたCoFe合金またはC
oFeNi合金からなる第4強磁性層からなるものであ
り、前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金からなり、
前記第1固定磁性層は、CoFe合金またはCoFeN
i合金からなることを特徴とするものである。
【0036】あるいは、本発明は、基板上に、反強磁性
層、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化方向が
固定される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化が外部
磁界に対し変動するフリー磁性層を有する多層膜を有す
る磁気検出素子において、前記フリー磁性層は、前記非
磁性材料層に接する第2フリー磁性層と、前記第2フリ
ー磁性層に非磁性中間層を介して積層される第1フリー
磁性層からなるものであり、前記第2フリー磁性層は、
Al23、Al−Q−O(Qは、B、Si、N、Ti、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される一種
以上の元素)、R−O(RはTi、V、Cr、Zr、N
b、Mo、Hf、Ta、Wから選択される一種以上)、
α−Fe23、NiO、CoO、Co−Fe−O、Fe
−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Mn、C
o、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少
なくとも一種以上である)の組成式で示される材料から
選択されるいずれか1種または2種以上からなる鏡面反
射層と、前記非磁性材料層と前記鏡面反射層の間に積層
されたNiFe合金またはCoFeNi合金からなる第
1強磁性層と、前記非磁性材料層と前記第1強磁性層と
の間に積層されたCoFe合金またはCoFeNi合金
からなる第2強磁性層と、前記鏡面反射層と前記非磁性
中間層との間に積層されたNiFe合金またはCoFe
Ni合金からなる第3強磁性層と、前記非磁性中間層と
前記第3強磁性層との間に積層されたCoFe合金また
はCoFeNi合金からなる第4強磁性層からなるもの
であり、前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、C
r、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金から
なり、前記第1フリー磁性層は、CoFe合金またはC
oFeNi合金からなることを特徴とするものである。
【0037】本発明では、前記第2固定磁性層や前記第
2フリー磁性層に前記鏡面反射層が形成され、前記鏡面
反射層と前記第2強磁性層または前記第4強磁性層との
間に、前記第1強磁性層または前記第3強磁性層が積層
されることによって、前記鏡面反射層に含まれる酸素原
子の拡散を抑えることができる。
【0038】すなわち、本発明では、前記鏡面反射層の
界面が乱れることを防止でき、前記鏡面反射層と前記拡
散防止層との界面付近において電子にスピン状態を保存
する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させることが
できる。また、前記固定磁性層や前記フリー磁性層の強
磁性特性の不安定化を抑えることができる。
【0039】また、本発明は、基板上に、反強磁性層、
前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化方向が固定
される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界
に対し変動するフリー磁性層を有する多層膜を有する磁
気検出素子の製造方法において、前記固定磁性層中、前
記フリー磁性層中、または前記フリー磁性層の前記非磁
性材料層に接する面と反対側の面に対向する領域中のう
ち、いずれか1箇所あるいは2箇所以上に絶縁酸化物か
らなる鏡面反射層を形成する工程と、前記鏡面反射層の
上面または下面の少なくとも一方に接して、強磁性材料
によって、前記鏡面反射層に含まれる酸素の拡散を防止
する拡散防止層を形成する工程を有することを特徴とす
るものである。
【0040】なお、前記拡散防止層を形成する材料によ
って拡散防止膜を形成し、この拡散防止膜を常温または
加熱雰囲気に曝して酸化させたとき前記拡散防止膜の表
面に形成される酸化層の厚さが、前記鏡面反射層を形成
する材料から酸素を除いた組成を有する材料によって薄
膜を形成し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させたとき
に前記薄膜の表面に形成される酸化層の厚さよりも小さ
くなるように、前記拡散防止層及び前記鏡面反射層を形
成する材料を選択することが好ましい。
【0041】また、本発明では、前記多層膜の形成後、
前記多層膜を磁場中熱処理にかけて、前記反強磁性層と
前記固定磁性層との間に交換異方性磁界を生じさせる工
程を有することができる。このとき、前記加熱雰囲気の
温度条件は、前記磁場中熱処理の温度より高く、前記反
強磁性層のブロッキング温度よりも低くなるように設定
することが好ましい。
【0042】また、前記加熱雰囲気の温度条件におい
て、前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における
活性化エネルギーが、前記鏡面反射層を形成する材料か
ら酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応における活
性化エネルギーよりも大きくなるようにすることが好ま
しい。
【0043】さらに、前記加熱雰囲気の温度条件におい
て、前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における
自由エネルギー変化量が、前記鏡面反射層を形成する材
料から酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応におけ
る自由エネルギー変化量より大きくなるようにすること
が好ましい。
【0044】また、前記拡散防止層よりも電子散乱のス
ピン依存性が大きい材料を用いて、前記非磁性材料層に
接するように強磁性散乱層を形成することが好ましい。
【0045】本発明では、前記拡散防止層を例えばNi
FeまたはCoFeNiによって形成することができ、
また、前記強磁性散乱層をCoまたはCoFeによって
形成することができる。
【0046】また、本発明の磁気検出素子の製造方法で
は、前記鏡面反射層をAl23、Al−Q−O(Qは、
B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、N
iから選択される一種以上の元素)、R−O(RはT
i、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから
選択される一種以上)、α−Fe23、NiO、Co
O、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O
(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
種または2種以上によって形成することができる。
【0047】また、前記固定磁性層を、磁気的膜厚の大
きさが異なる複数の強磁性材料層が非磁性中間層を介し
て積層し、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁
性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態とな
るように形成することが好ましい。
【0048】また、前記フリー磁性層は、磁気的膜厚の
大きさが異なる複数の強磁性材料層を、非磁性中間層を
介して積層し、前記非磁性中間層を介して隣接する前記
強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態
となるように形成することが好ましい。
【0049】なお、前記非磁性中間層に接する前記強磁
性材料層と前記鏡面反射層との間に、前記拡散防止層を
形成することが好ましい。
【0050】また、前記非磁性中間層に接する前記強磁
性材料層を、CoFe合金またはCoFeNi合金で形
成することが好ましい。
【0051】前記非磁性中間層は、例えばRu、Rh、
Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の
合金で形成することができる。
【0052】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形
態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面
図である。
【0053】図1に示す磁気検出素子は、反強磁性層3
4、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層
37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバ
ルブ型磁気検出素子である。
【0054】図1に示されたスピンバルブ型磁気検出素
子は、固定磁性層35の磁化方向が、適正に図示Y方向
に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層37の磁
化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層3
5とフリー磁性層37の磁化が直交関係にある。そして
記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層37の磁
化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性
層35の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、こ
の電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体
からの洩れ磁界が検出される。
【0055】図1では、下地層32、シード層33、反
強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層3
5b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフ
ェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第
2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリ
ー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型
のフリー磁性層37、バックド層38、保護層39が積
層された多層膜T1が形成されている。なお、多層膜T
1の上面の幅寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0056】多層膜T1の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層30、下部ギャップ層
31が成膜されている。
【0057】多層膜T1中の反強磁性層34は、図示X
方向に延長され、この延出部34aの上面と固定磁性層
35の側面、非磁性材料層36の側面、及び第2フリー
磁性層37aの側面に接して、Cr、Ti、Mo、W50
Mo50などによってバイアス下地層40が形成されてい
る。
【0058】バイアス下地層40の上には、ハードバイ
アス層41が形成されている。ハードバイアス層41は
例えば、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−C
r−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成さ
れており、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されて
いる。
【0059】ハードバイアス層41上には、Taなどの
非磁性材料で形成された中間層42が形成され、この中
間層42の上に、Cr、Au、Ta、W、などで形成さ
れた電極層43が形成されている。
【0060】多層膜T1の表面、及び電極層43の表面
に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44
上には上部シールド(図示せず)が形成されている。上
部シールド層は、無機絶縁材料からなる図示しない保護
層によって覆われる。
【0061】図1のように反強磁性層34の延出部34
aが図示X方向に延長されて形成され、この上層にバイ
アス下地層40及びハードバイアス層41が積層される
と、ハードバイアス層41の膜厚の厚い部分が第2フリ
ー磁性層37aの側面に接し、第2フリー磁性層37a
に充分な大きさのバイアス磁界をかけることができるの
で好ましい。
【0062】下部シールド層30、下部ギャップ層3
1、下地層32、シード層33、反強磁性層34、固定
磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37、バ
ックド層38、保護層39、バイアス下地層40、ハー
ドバイアス層41、中間層42、電極層43、上部ギャ
ップ層44、上部シールド層、及び保護層はスパッタ法
や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって形成される。
【0063】下部シールド層30及び上部シールド層は
NiFeなどの磁性材料を用いて形成される。なお、下
部シールド層30及び上部シールド層は磁化容易軸がト
ラック幅方向(図示X方向)を向いていることが好まし
い。なお、下部シールド層30と上部シールド層は、メ
ッキ法によって形成されても良い。
【0064】下部ギャップ層31、上部ギャップ層4
4、及び上部シールド層を覆う保護層はAl23やSi
2などの非磁性無機材料を用いて形成される。
【0065】シード層33は、面心立方晶の(111)
面あるいは体心立方晶の(110)面が優先配向する磁
性材料層あるいは非磁性材料層の単層構造であるか、ま
たは下地層の上に前記磁性材料層あるいは前記非磁性材
料層が形成された積層構造であることが好ましい。これ
によって前記反強磁性層の結晶配向を、(111)面を
優先配向させることができ、磁気抵抗効果素子の抵抗変
化率を向上させることができる。
【0066】またシードレイヤ層は高抵抗であることが
好ましく、これによって前記電極層からのセンス電流を
前記シードレイヤ層に分流するのを抑制することができ
る。例えば本発明では、前記シードレイヤ層は、NiF
eY合金(ただしYは、Cr、Rh、Ta、Hf、N
b、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種以上)で形
成され、また前記下地層は、Ta、Hf、Nb、Zr、
Ti、Mo、Wのうち少なくとも1種以上で形成される
ことが好ましい。
【0067】下地層33はTaなどを用いて形成され
る。反強磁性層34は、PtMn合金、または、X―M
n(ただしXは、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Ni
Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金
で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd、
Ir、Rh、Ru、Au、Ag、Os、Cr、Ni、A
r、Ne、Xe、Krのいずれか1または2種以上の元
素である)合金で形成する。
【0068】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0069】反強磁性層34の膜厚は、トラック幅方向
の中心付近において80〜300Å、例えば200Åで
ある。
【0070】ここで、反強磁性層34を形成するため
の、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される
合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範
囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び
前記X−Mnの式で示される合金において、Ptあるい
はXが47〜57at%の範囲であることがより好まし
い。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下
限は以下、以上を意味する。
【0071】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd、Ir、Rh、Ru、Os、NiFeのいず
れか1種または2種以上の元素である場合には、X’は
0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0072】これらの合金を使用し、これを熱処理する
ことにより、第1固定磁性層35aとの間で大きな交換
結合磁界を発生する反強磁性層34を得ることができ
る。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、
例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記
交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極め
て高い優れた反強磁性層34を得ることができる。
【0073】固定磁性層35は、強磁性材料により形成
される第1固定磁性層(強磁性材料層)35a及び第2
固定磁性層35c、非磁性材料により形成される非磁性
中間層35bからなる。本実施の形態では、第2固定磁
性層35cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料
層35c1(第4強磁性層)、拡散防止層P1(第3強
磁性層)、拡散防止層P2(第1強磁性層)、鏡面反射
層S1、及び強磁性散乱層35c2(第2強磁性層)か
ら構成されている。
【0074】第1固定磁性層35a、強磁性材料層35
c1は、強磁性材料により形成されるもので、例えばN
iFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、
CoNi合金などにより形成されるものであり、特にC
oNiFe合金、CoFe合金により形成されることが
好ましい。
【0075】第1固定磁性層35a、強磁性材料層35
c1がCoNiFe合金、CoFe合金により形成され
ると、スピンフロップ磁界の値を大きくすることができ
るので好ましい。これにより、固定磁性層35がフェリ
磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、固定磁性層35
が安定してフェリ磁性状態を保つことができ、固定磁性
層35の磁化方向を一定方向に固定するように働く力
(一方向性交換バイアス磁界)が大きくなる。
【0076】なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向
が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加し
たときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる
外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きい
ほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して
維持できる。
【0077】また特に、第1固定磁性層35a、強磁性
材料層35c1をCoNiFe合金、で形成すると、第
1固定磁性層35a、強磁性材料層35c1をCoFe
合金で形成したときよりも、スピンフロップ磁界の値を
大きくすることができる。また、第1固定磁性層35a
及び強磁性材料層35c1は同一の材料で形成されるこ
とが好ましい。
【0078】本実施の形態では、拡散防止層P1,P2
はNiFeまたはCoFeNiによって形成される。
【0079】また、鏡面反射層S1は、CoO、Co−
Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素
Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、C
u、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で
示される材料から選択されるいずれか1種または2種以
上からなる。
【0080】強磁性散乱層35c2は、Co、CoF
e、またはCoFeNiによって形成される。
【0081】第1固定磁性層35aの膜厚は1.0〜
2.0nm、強磁性材料層35c1の膜厚は0.5〜
1.5nm、拡散防止層P1,P2の膜厚は0.3〜
1.0nm、鏡面反射層S1の膜厚は0.5〜2.0n
m、及び強磁性散乱層35c2の膜厚は0.3〜1.0
nmとした。
【0082】具体的には、例えば第1固定磁性層35a
の膜厚を1.5nm、強磁性材料層35c1の膜厚を
1.0nm、拡散防止層P1,P2の膜厚を0.5n
m、鏡面反射層S1の膜厚を1.0nm、及び強磁性散
乱層35c2の膜厚を0.5nmとする。
【0083】拡散防止層P1,P2を形成する材料であ
るNiFeまたはCoFeNiによって拡散防止膜を形
成し、この拡散防止膜を常温または加熱雰囲気に曝して
酸化させたとき前記拡散防止膜の表面に形成される酸化
層の厚さを測定する。
【0084】また、鏡面反射層S1を形成する材料から
酸素を除いた組成を有する材料、すなわち、Co、Co
−Fe、Fe、またはFe−M(ただし元素Mは、M
n、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znの
うち少なくとも一種以上である)によって薄膜を形成
し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させて前記薄膜の表
面に形成される酸化層の厚さを測定する。
【0085】その結果、NiFeまたはCoFeNiか
らなる拡散防止膜の表面に形成される酸化層の厚さは、
Co、Co−Fe、Fe、またはFe−M(ただし元素
Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、C
u、Znのうち少なくとも一種以上である)からなる薄
膜の表面に形成される酸化層の厚さより小さくなる。
【0086】上述した酸化層を形成させる加熱雰囲気の
温度条件は、反強磁性層34と固定磁性層35との間に
交換異方性磁界が発生する温度より高く、反強磁性層3
4のブロッキング温度よりも低いものであり、反強磁性
層34がPtMnからなるときには、240℃以上38
0℃以下である。
【0087】この加熱雰囲気の温度条件において、拡散
防止層P1,P2を形成する材料の酸化反応における活
性化エネルギーは、鏡面反射層S1を形成する材料から
酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応における活性
化エネルギーよりも大きい。
【0088】さらに、前記加熱雰囲気の温度条件におい
て、拡散防止層P1,P2を形成する材料の酸化反応に
おける自由エネルギー変化量は、鏡面反射層S1を形成
する材料から酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応
における自由エネルギー変化量より大きい。
【0089】すなわち、拡散防止層P1,P2を形成す
る材料(NiFeまたはCoFeNi)は、鏡面反射層
S1を形成する材料(CoO、Co−Fe−O、Fe−
O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Mn、C
o、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少
なくとも一種以上である)の組成式で示される材料から
選択されるいずれか1種または2種以上)から酸素を除
いた組成を有する材料(Co、Co−Fe、Fe、また
はFe−M(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される材料から選択されるい
ずれか1種または2種以上)よりも酸化しにくいもので
ある。
【0090】非磁性材料層36に接する強磁性散乱層3
5c2を形成する材料であるCo、CoFeは、拡散防
止層P1,P2を形成する材料であるNiFe、CoF
eNiよりも電子散乱のスピン依存性が大きい材料であ
る。
【0091】磁性材料層35c1、拡散防止層P1,P
2、鏡面反射層S1、及び強磁性散乱層35c2は、強
磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一
方向を向いている。
【0092】また、非磁性中間層35bは、非磁性材料
により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形
成されている。特にRuによって形成されることが好ま
しい。
【0093】また、図1では、磁気的膜厚が異なる第1
固定磁性層(強磁性材料層)35aと第2固定磁性層3
5cが、非磁性中間層35bを介して積層されたもの
が、一つの固定磁性層35として機能する。第1固定磁
性層35aの磁気的膜厚は、第1固定磁性層(強磁性材
料層)35aの飽和磁化Msと膜厚との積の値である。
【0094】また、第2固定磁性層35cの磁気的膜厚
は、強磁性材料層35c1、拡散防止層P1,P2、鏡
面反射層S1、及び強磁性散乱層35c2、それぞれの
層の飽和磁化Msと膜厚との積の和である。
【0095】第1固定磁性層35aは反強磁性層34と
接して形成され、磁場中アニールが施されることによ
り、第1固定磁性層35aと反強磁性層34との界面に
て交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1固定磁性
層35aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1固
定磁性層35aの磁化方向が図示Y方向に固定される
と、非磁性中間層35bを介して対向する第2固定磁性
層35cの磁化方向が、前記第1固定磁性層35aの磁
化方向と反平行の状態で固定される。
【0096】このように、第1固定磁性層35aと第2
固定磁性層35cの磁化方向が、反平行となるフェリ磁
性状態になっていると、第1固定磁性層35aと第2固
定磁性層35cとが互いに他方の磁化方向を固定しあう
ので、全体として固定磁性層35の磁化方向を一定方向
に強力に固定することができる。
【0097】なお、第1固定磁性層35aの磁気モーメ
ントと第2固定磁性層35cの磁気モーメントを足し合
わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層35の磁
化方向となる。なお、磁気モーメントの大きさは飽和磁
化Msと膜厚の積であり、磁気モーメントの方向は磁化
方向である。
【0098】本実施の形態では、第2固定磁性層35c
の磁気的膜厚を第1固定磁性層35aの磁気的膜厚より
厚くしている。
【0099】また、第1固定磁性層35a及び第2固定
磁性層35cの固定磁化による反磁界(双極子磁界)
を、第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35cの
静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャン
セルできる。これにより、固定磁性層35の固定磁化に
よる反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層37の
変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0100】従って、フリー磁性層37の変動磁化の方
向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシ
ンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型薄膜
磁気素子を得ることが可能になる。
【0101】ここで、アシンメトリーとは、再生出力波
形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形
が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリー
が小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程
再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0102】前記アシンメトリーは、フリー磁性層37
の磁化の方向と固定磁性層35の固定磁化の方向とが直
交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくず
れるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなく
なり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメト
リーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上す
ることになり、スピンバルブ薄膜磁気素子として優れた
ものとなる。
【0103】また、固定磁性層の固定磁化による反磁界
(双極子磁界)は、素子高さ方向において、その端部で
大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリ
ー磁性層37内における単磁区化が妨げられる場合があ
るが、固定磁性層35を上記の積層構造とすることによ
り双極子磁界をほぼ0とすることができ、これによって
フリー磁性層37内に磁壁ができて磁化の不均一が発生
しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止する
ことができる。
【0104】非磁性材料層36は、固定磁性層35とフ
リー磁性層37との磁気的な結合を防止し、またセンス
電流が主に流れる層であり、Cu、Cr、Au、Agな
ど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好
ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0105】第2フリー磁性層37aの磁性層37a2
及び第1フリー磁性層37cは、強磁性材料により形成
されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoFeN
i合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成さ
れるものであり、特にCoFeNi合金により形成され
ると、スピンフロップ磁界の値を大きくすることができ
るので好ましい。
【0106】これにより、フリー磁性層37がフェリ磁
性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層が安
定してフェリ磁性状態を保つことができる。
【0107】なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向
が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加し
たときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる
外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きい
ほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して
維持できる。
【0108】非磁性中間層37bは、非磁性材料により
形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、C
uのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成され
ている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0109】なお、図1では、第2フリー磁性層37a
が拡散防止層37a1と磁性層37a2とから形成され
ている。拡散防止層37a1は強磁性材料からなるもの
で例えばCoによって形成されるものであり、磁性層3
7a2と非磁性材料層36の相互拡散を防止する。な
お、拡散防止層37a1が形成されず第2フリー磁性層
37aが磁性層37a2のみで構成されてもよい。
【0110】保護層39はTaからなるTa層39aと
酸化タンタルからなるTaO層39bからなるなお、電
極層43とハードバイアス層41との間に、Taまたは
Crからなる中間層42が設けられると、熱拡散を防ぐ
ことができ、ハードバイアス層41の磁気特性の劣化を
防止できる。
【0111】電極層43としてTaを用いる場合には、
Crの中間層42を設けることによってCrの上層に積
層されるTaの結晶構造を低抵抗の体心立方構造にしや
すくなる。
【0112】また、電極層43としてCrを用いる場合
には、Taの中間層42を設けることにより、Crがエ
ピタキシャルに成長して、抵抗値を低減できる。
【0113】バイアス下地層40を結晶構造がbcc
(体心立方格子)構造であるCr、Ti、Mo、W50
50などを用いて形成すると、ハードバイアス層41の
保磁力及び角形比が大きくなりバイアス磁界を大きくで
きる。
【0114】フリー磁性層37は、磁気的膜厚の大きさ
が異なる第2フリー磁性層(強磁性材料層)37aと第
1フリー磁性層(強磁性材料層)37cが、非磁性中間
層37bを介して積層され、第2フリー磁性層37aと
第1フリー磁性層37cの磁化方向が反平行となるフェ
リ磁性状態である。第1フリー磁性層37cの磁気的膜
厚は、その飽和磁化Msと膜厚との積の値である。
【0115】なお、第2フリー磁性層37aの磁気的膜
厚は、拡散防止層37a1の磁気的膜厚(飽和磁化Ms
×膜厚)と磁性層37a2の磁気的膜厚(飽和磁化Ms
×膜厚)の和である。
【0116】図1に示される磁気検出素子では、第2フ
リー磁性層37aの磁気的膜厚を第1フリー磁性層37
cの磁気的膜厚より大きくしている。
【0117】第2フリー磁性層37aの磁気的膜厚を第
1フリー磁性層37cの磁気的膜厚より大きくすること
で、フリー磁性層37のスピンフロップ磁界を大きくす
ることができ、これにより、フリー磁性層37がフェリ
磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層が
安定してフェリ磁性状態を保つことができる。
【0118】なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向
が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加し
たときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる
外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きい
ほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して
維持できる。
【0119】このとき、磁気モーメントが大きい方、例
えば、第2フリー磁性層37aの磁化方向が、ハードバ
イアス層41から発生する磁界の方向に向き、第1フリ
ー磁性層37cの磁化方向が、180度反対方向に向い
た反平行のフェリ状態になる。
【0120】第2フリー磁性層37aの磁気モーメント
と第2フリー磁性層37bの磁気モーメントを足し合わ
せた合成磁気モーメントの方向がフリー磁性層37の磁
化方向となる。なお、磁気モーメントの大きさは飽和磁
化Msと膜厚の積であり、磁気モーメントの方向は磁化
方向である。
【0121】第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性
層37cの磁化方向が180度異なる反平行のフェリ磁
性状態になると、フリー磁性層37の膜厚を薄くするこ
とと同等の効果が得られ、飽和磁化が小さくなり、フリ
ー磁性層37の磁化が変動しやすくなって、磁気検出素
子の磁界検出感度が向上する。
【0122】ハードバイアス層41の多層膜T1と対向
する側の側面41aは、反強磁性層34の側面、固定磁
性層35の側面、非磁性材料層36の側面、及び第2フ
リー磁性層37aの側面とのみ対向しており、第1フリ
ー磁性層37bの側面とは対向していない。ハードバイ
アス層41からのX方向へのバイアス磁界により、第2
フリー磁性層37aの磁化は図示X方向に揃えられる。
【0123】ハードバイアス層41は、フリー磁性層3
7を構成する第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性
層37cのうち、一方の磁化方向を揃えるだけでよい。
図1では、第2フリー磁性層37aの磁化方向のみをそ
ろえている。第2フリー磁性層37aの磁化方向が一定
方向に揃えられると、第1フリー磁性層37cは磁化方
向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層
37全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0124】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は図示X方向の静磁界を、主に第2のフリー磁性層37
aに与える。従って、ハードバイアス層41から発生す
る図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37
cの磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを
抑えることができる。
【0125】ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接
寄与するのは第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フ
リー磁性層37aの磁化方向の相対角であり、これらの
相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が
印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0126】本実施の形態では、第2固定磁性層35c
中に鏡面反射層S1が形成されている。
【0127】ここで、スピンバルブ型磁気検出素子が磁
気を検出する原理を説明する。スピンバルブ型磁気検出
素子にセンス電流を印加すると、伝導電子はおもに電気
抵抗の小さい非磁性材料層付近を移動する。この伝導電
子にはアップスピンとダウンスピンの2種類の電子が確
率的に等量存在する。
【0128】スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変
化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行
程差に対して正の相関を示す。
【0129】ダウンスピンの伝導電子については、印加
される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフ
リー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移
動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はア
ップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いまま
である。
【0130】一方、アップスピンの伝導電子について
は、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁
性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料
層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自
由行程が長くなっている。
【0131】これは、アップスピンを持つ電子の平均自
由行程が、例えば、5.0nm程度であるのに対して、
ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程が0.6nm程
度であり、10分の1程度と極端に小さいためである。
【0132】フリー磁性層の膜厚は、0.6nm程度で
あるダウンスピンを持つ電子の平均自由行程よりも大き
く、5.0nm程度であるアップスピンを持つ電子の平
均自由行程よりも小さく設定されている。
【0133】従って、電子がフリー磁性層を通り抜けよ
うとするときに、この電子がフリー磁性層の磁化方向に
平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対
にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしま
う(フィルタアウトされる)。
【0134】同様に、フリー磁性層で発生した電子が非
磁性材料層を通過し、固定磁性層を通り抜けようとする
ときに、この電子が固定磁性層の磁化方向に平行なアッ
プスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンス
ピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィル
タアウトされる)。
【0135】固定磁性層またはフリー磁性層で発生し、
非磁性材料層を通過するダウンスピン電子は、フリー磁
性層と非磁性材料層との界面または固定磁性層と非磁性
材料層との界面付近で散乱される。つまり、このダウン
スピン電子は、フリー磁性層の磁化方向が回転しても平
均自由行程に変化はなく、GMR効果による抵抗変化率
に影響しない。従ってGMR効果にはアップスピン電子
の挙動のみを考えればよい。
【0136】ここで、外部磁界によってフリー磁性層の
磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対して平行状態から
変化すると、非磁性材料層とフリー磁性層との界面また
は固定磁性層と非磁性材料層との界面で散乱される確率
が増加し、アップスピンの伝導電子の平均自由行程が短
くなる。
【0137】このように外部磁界の作用によって、アッ
プスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝
導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が
大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程
も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵
抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0138】図1に示される本実施の形態の磁気検出素
子では、第2固定磁性層35cが非磁性材料層36に接
する側から、強磁性散乱層35c1、拡散防止層P2、
鏡面反射層S1、拡散防止層P1、強磁性材料層35c
2が順に積層されたものとされている。ここで、拡散防
止層P2と鏡面反射層S1との界面では、これらの層の
比抵抗に大きな差があるためにポテンシャル障壁が形成
される。
【0139】このポテンシャル障壁は、センス電流を流
した際に伝導電子を、そのスピンの方向を保存させたま
ま鏡面反射させる。
【0140】鏡面反射効果について説明する。図1に示
された実施の形態の磁気検出素子は、第2固定磁性層3
5c内に鏡面反射層S1を有するので、第2固定磁性層
35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向
が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子の平均自
由行程を伸ばすことができる。このため、外部磁界の印
加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大
きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変
化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0141】図2に、鏡面反射層S1による鏡面反射効
果を説明するための模式図を示す。図2には、反強磁性
層34、固定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁
性中間層35b、第2固定磁性層35c(強磁性材料層
35c1、拡散防止層P1、鏡面反射層S1、拡散防止
層P2、強磁性散乱層35c2)、非磁性材料層36、
フリー磁性層37(第2フリー磁性層37a(拡散防止
層37a1、磁性層37a2)、非磁性中間層37b、
第1フリー磁性層37c)、を順次積層した積層体G1
を示す。
【0142】図2では、フリー磁性層37側から固定磁
性層35に向って移動する電子の磁気抵抗効果に対する
寄与を考える。ここで、アップスピンの伝導電子を符号
e1で示し、ダウンスピンの伝導電子をe2で示してい
る。アップスピンの伝導電子e1とダウンスピンの伝導
電子e2は確率的に等量存在している。
【0143】ダウンスピンの伝導電子e2は、印加され
る外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層36と第
2固定磁性層35cとの界面で常に散乱され、固定磁性
層35に移動する確率は低いまま維持され、その平均自
由行程はアップスピンの伝導電子e1の平均自由行程に
比べて短いままである。
【0144】一方、アップスピン電子e1は、第2固定
磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁
化方向が平行となる状態では、非磁性材料層36から第
2固定磁性層35c内にまで到達する。そして、第2固
定磁性層35c内部を移動して拡散防止層P2と鏡面反
射層S1との界面付近に到達する。
【0145】拡散防止層P2と鏡面反射層S1との界面
付近には、ポテンシャル障壁が形成されるため、アップ
スピン電子e1が拡散防止層P2と鏡面反射層S1との
界面付近で鏡面反射(鏡面散乱)する。鏡面反射よっ
て、アップスピンe1の伝導電子のスピン状態が維持さ
れるので、再び第2固定磁性層35c中を移動すること
になる。
【0146】これは、アップスピン電子e1が鏡面反射
した分、反射平均自由行程λ+sだけ平均自由行程が延
びたことを意味する。
【0147】鏡面反射層S1を有する本実施の形態で
は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性
層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピン
の伝導電子e1の平均自由行程を伸ばすことができる。
【0148】このため、外部磁界の印加によるアップス
ピン電子e1の平均自由行程の変化量が大きくなって、
スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/
R)をより向上させることができる。
【0149】図1に示された磁気検出素子には、フリー
磁性層37の非磁性材料層36に接する面の反対側、即
ち第1フリー磁性層37cの上面に接してバックド層3
8が形成されている。バックド層38は第1フリー磁性
層37cよりも導電性が高いことが好ましく、具体的に
はCu、Au、Ag、Cr、Ruなどの非磁性導電性材
料を用いて形成される。特にCuからなることが好まし
い。
【0150】バックド層38の厚さは0.3nm〜2.
5nmの範囲であることが好ましい。バックド層38の
厚さが0.3nmより小さいと、アップスピン電子の平
均自由行程を延ばす効果が小さくなるため、後述するス
ピンフィルター効果において磁気抵抗変化率を向上させ
る効果が低くなる。
【0151】また、バックド層38の厚さが2.5nm
を越えると、センス電流が非磁性材料層36に加えてバ
ックド層38にも流れやすくなり、センス電流の分流が
起きるので好ましくない。
【0152】バックド層38が第1フリー磁性層37c
に接して積層されることにより、本成施の形態の磁気検
出素子は、いわゆるスピンフィルター効果を示し、磁気
抵抗変化率が大きくなる。
【0153】スピンフィルター効果を図3に示した模式
図を参照して説明する。図3には、反強磁性層34、固
定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層3
5b、第2固定磁性層35c)、非磁性材料層36、フ
リー磁性層37(第2フリー磁性層37a(拡散防止層
37a1、磁性層37a2)、非磁性中間層37b、第
1フリー磁性層37c)、バックド層38、保護層39
を順次積層した積層体G2を示す。
【0154】また、アップスピンの伝導電子を符号e1
で示し、ダウンスピンの伝導電子をe2で示している。
アップスピンの伝導電子e1とダウンスピンの伝導電子
e2は確率的に等量存在している。
【0155】ダウンスピンの伝導電子e2は、印加され
る外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層36と第
2フリー磁性層37aとの界面で常に散乱され、フリー
磁性層37に移動する確率は低いまま維持され、その平
均自由行程はアップスピンの伝導電子e1の平均自由行
程に比べて短いままである。
【0156】一方、アップスピン電子e1は、第2固定
磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁
化方向が平行となる状態では、非磁性材料層36からフ
リー磁性層37にまで到達する。そして、フリー磁性層
37内部を移動してフリー磁性層37とバックド層38
との界面付近に到達する。
【0157】図3に示すように、バックド層38が設け
られている場合には、フリー磁性層37を通過したアッ
プスピン電子e1はバックド層38において、このバッ
クド層38の材料で決定される追加平均自由行程λ+
を移動する。すなわち、バックド層38を設けたことに
より、アップスピン電子e1の平均自由行程λ+が追加
平均自由行程λ+b分だけ延びる。
【0158】バックド層38を有する本実施の形態で
は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性
層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピン
の伝導電子e1の平均自由行程を伸ばすことができる。
このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子e1
の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ
型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向
上させることができる。
【0159】本実施の形態では、鏡面反射層S1を形成
する材料(CoO、Co−Fe−O、Fe−O、または
Fe−M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される材料から選択されるい
ずれか1種または2種以上)から酸素を除いた組成を有
する材料(Co、Co−Fe、Fe、またはFe−M
(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
種または2種以上)よりも酸化しにくい材料(NiFe
またはCoFeNi)からなる拡散防止層P1,P2を
鏡面反射層S1の上面及び下面に接して積層している。
従って、鏡面反射層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡
散防止層P1,P2によって抑えられ、鏡面反射層S1
と拡散防止層P1,P2との界面が乱れることを防止で
きる。
【0160】すなわち、本発明では、鏡面反射層S1と
拡散防止層P2との界面付近において電子にスピン状態
を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させる
ことができる。
【0161】さらに、非磁性中間層35bを介した第1
固定磁性層(強磁性材料層)35aと強磁性材料層35
c1との反強磁性的な結合を確実にすることで安定した
フェリ磁性状態とすることができ、固定磁性層35の磁
化方向を一定方向に固定するように働く力(一方向性交
換バイアス磁界)が大きくなる。従って、固定磁性層3
5の磁化方向が、変動する外部磁界によって揺らぐこと
が防止できるようにその磁化方向を一定方向に確実に固
定することができる。これにより再生信号の出力波形の
対称性を向上でき、再生信号処理の信頼性を向上させる
ことができる。
【0162】また、固定磁性層35全体の強磁性特性の
不安定化を抑えることができる。また、非磁性材料層3
6に接する強磁性散乱層35c2を形成する材料である
Co、CoFeは、拡散防止層P1,P2を形成する材
料であるNiFe、CoFeNiよりも電子散乱のスピ
ン依存性が大きい材料である。
【0163】従って、非磁性材料層36と強磁性散乱層
35c2の界面において、ダウンスピンの電子のみが選
択的に散乱させられる確率を高くでき、伝導電子全体の
平均自由行程変化量を大きくできる。
【0164】また、図1に示される磁気検出素子の固定
磁性層35では、非磁性中間層35bに接する強磁性材
料層35c1と鏡面反射層S1との間に、拡散防止層P
1が形成されている。すなわち、Ru、Rh、Ir、C
r、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合
金で形成される非磁性中間層35bを介して、CoNi
Fe合金、CoFe合金などからなる第1固定磁性層3
5aと強磁性材料層35c1が積層された構造を有して
おり、これによって非磁性中間層35bを介した強磁性
材料層35aと強磁性材料層35c1との反強磁性的な
結合を確実にして安定したフェリ磁性状態とすることが
でき、固定磁性層35の磁化方向を一定方向に固定する
ように働く力(一方向性交換バイアス磁界)を大きくす
ることができている。すなわち、変動する外部磁界によ
って、固定磁性層35の磁化方向が揺らぐことを防止で
きるようにその磁化方向を一定方向に確実に固定するこ
とができる。
【0165】本発明の磁気検出素子の第2固定磁性層3
5cの構成は、図1の構成に限るものではない。
【0166】例えば、図4に示されるように、第2固定
磁性層35cが、非磁性中間層35bに接する拡散防止
層P1、鏡面反射層S1、拡散防止層P2及び強磁性散
乱層35c2から構成されてもよい。図4では、拡散防
止層P1が非磁性中間層35bに直接接している点での
み図1の磁気検出素子と異っている。
【0167】図4に示される磁気検出素子でも、鏡面反
射層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P1,
P2によって抑えられ、鏡面反射層S1と拡散防止層P
1,P2との界面が乱れることを防止できる。すなわ
ち、本発明では、鏡面反射層S1と拡散防止層P2との
界面付近において電子にスピン状態を保存する散乱をさ
せるスペキュラー効果を向上させることができる。
【0168】さらに、非磁性中間層35bを介した強磁
性材料層35aと強磁性材料層35cとの反強磁性的な
結合を確実にすることで安定したフェリ磁性状態とする
ことができ、固定磁性層35の磁化方向を一定方向に固
定するように働く力(一方向性交換バイアス磁界)を大
きくすることができている。すなわち、変動する外部磁
界によって、固定磁性層35の磁化方向が揺らぐことを
防止できるようにその磁化方向を一定方向に確実に固定
することができる。また、固定磁性層35全体の強磁性
特性の不安定化を抑えることができる。
【0169】ただし、図1に示される磁気検出素子のよ
うに非磁性中間層35bに強磁性材料層35c1が積層
された構造でないため、強磁性材料層35aと強磁性材
料層35cとの反強磁性的な結合の安定性がいくらか低
下する。
【0170】または、図5に示されるように、第2固定
磁性層35cが、非磁性中間層35bに接する強磁性材
料層35c1、鏡面反射層S1、拡散防止層P2及び強
磁性散乱層35c2から構成されてもよい。図5では、
拡散防止層P1が形成されない点でのみ図1の磁気検出
素子と異っている。
【0171】図5に示される磁気検出素子は、鏡面反射
層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P2によ
って抑えられ、鏡面反射層S1と拡散防止層P2との界
面が乱れることを防止できる。すなわち、本発明では、
鏡面反射層S1と拡散防止層P2との界面付近において
電子にスピン状態を保存する散乱をさせるスペキュラー
効果を向上させることができる。
【0172】ただし、鏡面反射層S1と強磁性材料層3
5c1との界面の乱れを抑えることはできない。
【0173】あるいは、図6に示されるように、第2固
定磁性層35cが、非磁性中間層35bに接する強磁性
材料層35c1、鏡面反射層S1、拡散防止層P2から
構成されてもよい。図6では、拡散防止層P1、及び強
磁性散乱層35c2が形成されない点でのみ図1の磁気
検出素子と異っている。
【0174】図6に示される磁気検出素子は、鏡面反射
層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P2によ
って抑えられ、鏡面反射層S1と拡散防止層P2との界
面が乱れることを抑止できる。すなわち、鏡面反射層S
1と拡散防止層P2との界面付近において電子にスピン
状態を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上さ
せることができる。
【0175】本実施の形態の磁気検出素子では、図1の
磁気検出素子のようにCoやCoFeからなる強磁性散
乱層35c2が非磁性材料層36に接していない。すな
わち、フリー磁性層37で発生したダウンスピンの伝導
電子は非磁性材料層36と拡散防止層P2との界面で散
乱するが、NiFeなどからなる拡散防止層P2は散乱
のスピン依存性がCoまたはCoFeからなる強磁性散
乱層37c2より低いので、図6の磁気検出素子は、図
1の磁気検出素子よりも伝導電子全体の平均自由行程変
化量がいくらか小さくなる。
【0176】また、図6に示される磁気検出素子は、鏡
面反射層S1と強磁性材料層35c1との界面の乱れを
抑えることはできない。
【0177】また、固定磁性層35は、第1固定磁性層
と第2固定磁性層が非磁性中間層を介して反強磁性的に
結合するフェリ磁性状態でなく、磁化方向が一方向にそ
ろえられたものであってもよい。
【0178】図7に示される磁気検出素子では、固定磁
性層35が、強磁性材料層35d、拡散防止層P1、鏡
面反射層S1、拡散防止層P2、強磁性材料層35dか
ら構成されている。図7の磁気検出素子は、図1の磁気
検出素子と固定磁性層35の構成以外は、同じ構成であ
る。
【0179】強磁性材料層35dは、CoやCoFeな
どから形成される。拡散防止層P1、鏡面反射層S1、
拡散防止層P2の材料は、図1の磁気検出素子と同じで
ある。
【0180】図7の磁気検出素子では、強磁性材料層3
5d、拡散防止層P1、鏡面反射層S1、拡散防止層P
2、強磁性材料層35dが強磁性的に結合し、磁化方向
が同一方向を向いている。
【0181】図7に示される磁気検出素子でも、鏡面反
射層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P1,
P2によって抑えられ、鏡面反射層S1と拡散防止層P
1,P2との界面が乱れることを抑止できる。すなわ
ち、鏡面反射層S1と拡散防止層P2との界面付近にお
いて電子にスピン状態を保存する散乱をさせるスペキュ
ラー効果を向上させることができる。
【0182】さらに、図7の磁気検出素子の固定磁性層
35から拡散防止層P1を除いた図8に示されるような
磁気検出素子でも、鏡面反射層S1に含まれる酸素原子
の拡散が拡散防止層P2によって抑えることができ、鏡
面反射層S1と拡散防止層P2との界面が乱れることを
抑止できる。すなわち、鏡面反射層S1と拡散防止層P
2との界面付近において電子にスピン状態を保存する散
乱をさせるスペキュラー効果を向上させることができ
る。
【0183】図1から図8に示された磁気検出素子で
は、絶縁酸化物からなる鏡面反射層S1が固定磁性層3
5内に形成されているために、電極層43から供給され
たセンス電流が、反強磁性層34にまで分流して流れる
ことを抑えることができる。鏡面反射層S1が固定磁性
層35内に形成されないと、センス電流の約10%が反
強磁性層34に流れる。
【0184】本発明は、鏡面反射層がフリー磁性層中に
形成される磁気検出素子にも適用することができる。
【0185】図9に示される磁気検出素子は、反強磁性
層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁
性層37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピ
ンバルブ型磁気検出素子である。
【0186】図9では、下地層32、シード層33、反
強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層3
5b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフ
ェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第
2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリ
ー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型
のフリー磁性層37、バックド層38、保護層39が積
層された多層膜T2が形成されている。なお、多層膜T
2の上面の幅寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0187】多層膜T2の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層30、下部ギャップ層
31が成膜されている。
【0188】多層膜T2中の反強磁性層34は、図示X
方向に延長され、この延出部34aの上面と固定磁性層
35の側面、非磁性材料層36の側面、及び第2フリー
磁性層37aの側面に接してバイアス下地層40が形成
されている。
【0189】バイアス下地層40の上には、ハードバイ
アス層41が形成されている。ハードバイアス層41
は、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。
【0190】ハードバイアス層41上には中間層42が
形成され、この中間層42の上に電極層43が形成され
ている。
【0191】多層膜T1の表面、及び電極層43の表面
に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44
上には上部シールド(図示せず)が形成されている。上
部シールド層は図示しない保護層によって覆われる。
【0192】下部シールド層30、下部ギャップ層3
1、下地層32、シード層33、反強磁性層34、固定
磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37、バ
ックド層38、保護層39、バイアス下地層40、ハー
ドバイアス層41、中間層42、電極層43、上部ギャ
ップ層44、上部シールド層、及び保護層はスパッタ法
や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって形成される。
【0193】なお、下部シールド層30、下部ギャップ
層31、下地層32、シード層33、反強磁性層34、
非磁性材料層36、バックド層38、保護層39、バイ
アス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、
電極層43、上部ギャップ層44、上部シールド層、及
び保護層の材料は図1に示された磁気検出素子の材料と
同じなので説明を省略する。
【0194】図9の磁気検出素子では、固定磁性層35
は、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2
固定磁性層35cからなる3層構造である。第1固定磁
性層35a及び第2固定磁性層35cは、例えばNiF
e合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、Co
Ni合金などにより形成されるものであり、特にCoN
iFe合金、CoFe合金により形成されることが好ま
しい。
【0195】第1固定磁性層35a、第2固定磁性層3
5cがCoNiFe合金、CoFe合金により形成され
ると、スピンフロップ磁界の値を大きくすることができ
るので好ましい。これにより、固定磁性層35がフェリ
磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、固定磁性層35
が安定してフェリ磁性状態を保つことができ、固定磁性
層35の磁化方向を一定方向に固定するように働く力
(一方向性交換バイアス磁界)が大きくなる。
【0196】また特に、第1固定磁性層35a、第2固
定磁性層35cをCoNiFe合金、で形成すると、第
1固定磁性層35a、第2固定磁性層35cをCoFe
合金で形成したときよりも、スピンフロップ磁界の値を
大きくすることができる。
【0197】また、第1固定磁性層35a及び強磁性材
料層35c1は同一の材料で形成されることが好まし
い。非磁性中間層35bは、非磁性材料により形成され
るもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち
1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。
特にRuによって形成されることが好ましい。
【0198】第1固定磁性層35aと非磁性中間層35
bを介して対向する第2固定磁性層35cの磁化方向
は、第1固定磁性層35aの磁化方向と反平行の状態で
固定される。すなわち、第1固定磁性層35aと第2固
定磁性層35cの磁化方向が、反平行となるフェリ磁性
状態になっている。
【0199】本実施の形態では、フリー磁性層37は、
第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フ
リー磁性層37cからなっている。第2フリー磁性層3
7aは、非磁性材料層36に接する強磁性散乱層37a
3(第2強磁性層)、拡散防止層P3(第1強磁性
層)、鏡面反射層S1、拡散防止層P4(第3強磁性
層)及び強磁性材料層37a4(第4強磁性層)から構
成されている。
【0200】第1フリー磁性層(強磁性材料層)37c
と強磁性材料層37a4は、強磁性材料により形成され
るもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合
金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成される
ものであり、特にCoNiFe合金により形成される
と、スピンフロップ磁界の値を大きくすることができる
ので好ましい。
【0201】これにより、フリー磁性層37がフェリ磁
性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層が安
定してフェリ磁性状態を保つことができる。
【0202】なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向
が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加し
たときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる
外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きい
ほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して
維持できる。
【0203】また、第1フリー磁性層37cと強磁性材
料層37a4は同一の材料で形成されることが好まし
い。
【0204】本実施の形態では、拡散防止層P3,P4
はNiFeまたはCoFeNiによって形成される。
【0205】また、鏡面反射層S2は、CoO、Co−
Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素
Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、C
u、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で
示される材料から選択されるいずれか1種または2種以
上からなる。
【0206】強磁性散乱層37a3は、Co、CoFe
またはCoFeNiによって形成される。
【0207】強磁性材料層37a4、拡散防止層P3,
P4、鏡面反射層S1、及び強磁性散乱層37a3は、
強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同
一方向を向いている。
【0208】また、非磁性中間層37bは、非磁性材料
により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形
成されている。特にRuによって形成されることが好ま
しい。
【0209】図9の磁気検出素子では、磁気的膜厚が異
なる第1フリー磁性層(強磁性材料層)37cと第2固
定磁性層37aが、非磁性中間層37bを介して積層さ
れたものが、シンセティックフェリ構造をとり、一つの
フリー磁性層37として機能する。第1フリー磁性層3
7cの磁気的膜厚は、第1フリー磁性層(強磁性材料
層)37cの飽和磁化Msと膜厚との積の値である。
【0210】また、第2フリー磁性層37aの磁気的膜
厚は、強磁性材料層37a4、拡散防止層P3,P4、
鏡面反射層S1、及び強磁性散乱層37a3、それぞれ
の層の飽和磁化Msと膜厚との積の和である。
【0211】このとき、磁気モーメントが大きい方、例
えば、第2フリー磁性層37aの磁化方向が、ハードバ
イアス層41から発生する磁界の方向に向き、第1フリ
ー磁性層37cの磁化方向が、180度反対方向の反平
行に向いたフェリ磁性状態になる。
【0212】第2フリー磁性層37aの磁気モーメント
と第2フリー磁性層37bの磁気モーメントを足し合わ
せた合成磁気モーメントの方向がフリー磁性層37の磁
化方向となる。
【0213】第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性
層37cの磁化方向が180度異なる反平行のフェリ磁
性状態になると、フリー磁性層37の膜厚を薄くするこ
とと同等の効果が得られ、飽和磁化が小さくなり、フリ
ー磁性層37の磁化が変動しやすくなって、磁気検出素
子の磁界検出感度が向上する。
【0214】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は図示X方向の静磁界を、主に第2のフリー磁性層37
aに与える。従って、ハードバイアス層40から発生す
る図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37
cの磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを
抑えることができる。
【0215】ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接
寄与するのは第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フ
リー磁性層37aの磁化方向の相対角であり、これらの
相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が
印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0216】本実施の形態では、第2フリー磁性層37
a中に鏡面反射層S2が形成されている。
【0217】ここで、拡散防止層P3と鏡面反射層S2
との界面では、これらの層の比抵抗に大きな差があるた
めにポテンシャル障壁が形成される。
【0218】このポテンシャル障壁は、センス電流を流
した際に伝導電子を、そのスピンの方向を保存させたま
ま鏡面反射させる。
【0219】鏡面反射層S2を有する本実施の形態で
は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性
層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピン
の伝導電子の平均自由行程を伸ばすことができる。
【0220】このため、外部磁界の印加によるアップス
ピン電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピ
ンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)
をより向上させることができる。
【0221】本実施の形態では、鏡面反射層S2を形成
する材料(CoO、Co−Fe−O、Fe−O、または
Fe−M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される材料から選択されるい
ずれか1種または2種以上)から酸素を除いた組成を有
する材料(Co、Co−Fe、Fe、またはFe−M
(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
種または2種以上)よりも酸化しにくい材料(NiFe
またはCoFeNi)からなる拡散防止層P3,P4を
鏡面反射層S2の上面及び下面に接して積層している。
従って、鏡面反射層S2に含まれる酸素原子の拡散が拡
散防止層P3,P4によって抑えられ、鏡面反射層S2
と拡散防止層P3,P4との界面が乱れることを防止で
きる。
【0222】すなわち、本発明では、鏡面反射層S2と
拡散防止層P3との界面付近において電子にスピン状態
を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させる
ことができる。
【0223】さらに、非磁性中間層37bを介した第1
フリー磁性層(強磁性材料層)37cと強磁性材料層3
7a4との反強磁性的な結合を確実にすることで安定し
たフェリ磁性状態とすることができ、外部磁界の検出感
度をより高くすることができる。また、フリー磁性層3
7全体の強磁性特性の不安定化を抑えることができる。
【0224】また、非磁性材料層36に接する強磁性散
乱層37a3を形成する材料であるCo、CoFeは、
拡散防止層P3を形成する材料であるNiFe、CoF
eNiよりも電子散乱のスピン依存性が大きい材料であ
る。
【0225】従って、非磁性材料層36と強磁性散乱層
37a3の界面において、ダウンスピンの電子のみが選
択的に散乱させられる確率を高くでき、伝導電子全体の
平均自由行程変化量を大きくできる。
【0226】また、図9に示される磁気検出素子のフリ
ー磁性層37では、非磁性中間層37bに接する強磁性
材料層37a4と鏡面反射層S2との間に、拡散防止層
P4が形成されている。すなわち、Ru、Rh、Ir、
Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の
合金で形成される非磁性中間層37bを介して、CoN
iFe合金、CoFe合金などからなる第1フリー磁性
層37cと強磁性材料層37a4が積層された構造を有
しており、これによって非磁性中間層37bを介した第
1フリー磁性層37cと強磁性材料層37a4との反強
磁性的な結合を確実にして安定したフェリ磁性状態とす
ることができ、外部磁界の検出感度をより高くすること
ができる。
【0227】また、フリー磁性層37は、第1フリー磁
性層と第2フリー磁性層が非磁性中間層を介して反強磁
性的に結合するフェリ磁性状態でなく、磁化方向が一方
向にそろえられたものであってもよい。
【0228】図10に示される磁気検出素子では、フリ
ー磁性層37が、強磁性材料層37d、拡散防止層P
3、鏡面反射層S2、拡散防止層P4、強磁性材料層3
7dから構成されている。図10の磁気検出素子は、図
9の磁気検出素子とフリー磁性層37の構成以外は、同
じ構成である。
【0229】強磁性材料層37dは、CoやCoFeな
どから形成される。拡散防止層P3、鏡面反射層S2、
拡散防止層P4の材料は、図9の磁気検出素子と同じで
ある。
【0230】図10の磁気検出素子では、強磁性材料層
37d、拡散防止層P3、鏡面反射層S2、拡散防止層
P4、強磁性材料層37dが強磁性的に結合し、磁化方
向が同一方向を向いている。
【0231】図10に示される磁気検出素子でも、鏡面
反射層S2に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P
3,P4によって抑えられ、鏡面反射層S2と拡散防止
層P3,P4との界面が乱れることを抑止できる。すな
わち、鏡面反射層S2と拡散防止層P3との界面付近に
おいて電子にスピン状態を保存する散乱をさせるスペキ
ュラー効果を向上させることができる。
【0232】また、本発明では、図11に示される磁気
検出素子のように、拡散防止層と鏡面反射層がフリー磁
性層の非磁性材料層と接する面と反対側の面に対向する
領域中に設けられてもよい。
【0233】図11では、フリー磁性層37の上面に拡
散防止層P5と鏡面反射層S3が積層されている。拡散
防止層P5と鏡面反射層S3を形成する材料は、図9に
示された拡散防止層P3,P4と鏡面反射層S2を形成
する材料と同じである。
【0234】フリー磁性層37は、第2フリー磁性層3
7a(拡散防止層37a1、磁性層37a2)、非磁性
中間層37b、及び第1フリー磁性層37cからなるシ
ンセティックフェリフリー構造を有している。
【0235】また、固定磁性層35は、第1固定磁性層
35a、非磁性中間層35b、及び第2固定磁性層35
cからなるシンセティックフェリピンド構造を有してい
る。
【0236】図11に示される磁気検出素子でも、鏡面
反射層S3に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P5
によって抑えられ、鏡面反射層S3と拡散防止層P5と
の界面が乱れることを抑止できる。すなわち、鏡面反射
層S3と拡散防止層P5との界面付近において電子にス
ピン状態を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向
上させることができる。
【0237】図12に示す磁気検出素子は、図9に示さ
れた磁気検出素子とは逆に、フリー磁性層37、非磁性
材料層36、固定磁性層35、反強磁性層34が順次積
層されてなるいわゆるトップ型のスピンバルブ型磁気検
出素子である。
【0238】図12では、下地層32、第1フリー磁性
層37c、非磁性中間層37b、第2フリー磁性層37
aからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性
層37、非磁性材料層36、第2固定磁性層35c、非
磁性中間層35b、第1固定磁性層35aからなるシン
セティックフェリピンド型の固定磁性層35、反強磁性
層34、及び保護層39が積層された多層膜T3が形成
されている。
【0239】多層膜T3の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層30、下部ギャップ層
31が成膜されている。
【0240】なお、下部シールド層30、下部ギャップ
層31、下地層32、反強磁性層34、固定磁性層3
5、非磁性材料層36、フリー磁性層37、保護層39
は、図9に示された磁気検出素子と同等の材料からな
る。
【0241】下部ギャップ層31の上面と下地層32の
側面、及び第1フリー磁性層37cの側面に接してバイ
アス下地層40が形成されている。
【0242】バイアス下地層40の上には、ハードバイ
アス層41が形成されている。ハードバイアス層41は
図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。
【0243】ハードバイアス層41上には、Taなどの
非磁性材料で形成された中間層42が形成され、この中
間層42の上に、電極層43が形成されている。
【0244】バイアス下地層40、ハードバイアス層4
1、及び電極層43を形成する材料は、図9に示された
磁気検出素子のバイアス下地層40、ハードバイアス層
41、及び電極層43と同等の材料であるので説明を省
略する。
【0245】多層膜T3の表面、及び電極層43の表面
に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44
上には上部シールド(図示せず)が形成されている。上
部シールド層は、無機絶縁材料からなる図示しない保護
層によって覆われる。
【0246】ハードバイアス層41は、第1フリー磁性
層37cの磁化方向のみをそろえている。第1フリー磁
性層37cの磁化方向が一定方向に揃えられると、第2
フリー磁性層37aは磁化方向が反平行となるフェリ磁
性状態となり、フリー磁性層37全体の磁化方向が一定
方向に揃えられる。
【0247】この実施例においては、多層膜T3の第1
フリー磁性層37cは、反強磁性層34よりも下方に形
成されており、ハードバイアス層41の膜厚の厚い部分
と隣接しており、従って第1フリー磁性層37cの磁化
は容易にX方向に揃えられる。これにより、バルクハウ
ゼンノイズの発生を低減させることができる。
【0248】本実施の形態でも、フリー磁性層37は、
第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フ
リー磁性層37cからなっている。第2フリー磁性層3
7aは、非磁性材料層36に接する強磁性散乱層37a
3、拡散防止層P3、鏡面反射層S1、拡散防止層P4
及び強磁性材料層37a4から構成されている。
【0249】本実施の形態でも、第2フリー磁性層37
a中に鏡面反射層S2が形成されており、第2固定磁性
層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方
向が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子の平均
自由行程を伸ばすことができる。 このため、外部磁界
の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量
が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵
抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0250】本実施の形態でも、鏡面反射層S2を形成
する材料(CoO、Co−Fe−O、Fe−O、または
Fe−M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、B
a、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種
以上である)の組成式で示される材料から選択されるい
ずれか1種または2種以上)から酸素を除いた組成を有
する材料(Co、Co−Fe、Fe、またはFe−M
(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
種または2種以上)よりも酸化しにくい材料(NiFe
またはCoFeNi)からなる拡散防止層P3,P4を
鏡面反射層S2の上面及び下面に接して積層している。
従って、鏡面反射層S2に含まれる酸素原子の拡散が拡
散防止層P3,P4によって抑えられ、鏡面反射層S2
と拡散防止層P3,P4との界面が乱れることを防止で
きる。
【0251】すなわち、本発明では、鏡面反射層S2と
拡散防止層P3との界面付近において電子にスピン状態
を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させる
ことができる。
【0252】さらに、非磁性中間層37bを介した第1
フリー磁性層(強磁性材料層)37cと強磁性材料層3
7a4との反強磁性的な結合を確実にすることで安定し
たフェリ磁性状態とすることができ、外部磁界の検出感
度をより高くすることができる。
【0253】図13に示す磁気検出素子は、反強磁性層
34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性
層37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピン
バルブ型磁気検出素子である。
【0254】図13では、下地層32、シード層33、
反強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層
35b、第2固定磁性層35cからなるシンセティック
フェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、
第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フ
リー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー
型のフリー磁性層37、バックド層38、保護層39が
積層された多層膜T4が形成されている。
【0255】本実施の形態の磁気検出素子は図1に示さ
れた磁気検出素子と同様に、固定磁性層35が、強磁性
材料により形成される第1固定磁性層35a及び第2固
定磁性層35c、非磁性材料により形成される非磁性中
間層35bからなっており、さらに、第2固定磁性層3
5cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35
c1、拡散防止層P1,P2、鏡面反射層S1、及び強
磁性散乱層35c2から構成されている。
【0256】第1固定磁性層35a、非磁性中間層35
b、第2固定磁性層35c(強磁性材料層35c1、拡
散防止層P1,P2、鏡面反射層S1、及び強磁性散乱
層35c2)の材料は、図1に示された磁気検出素子と
同じであるので説明を省略する。
【0257】多層膜T4の下層には、基板(図示せず)
上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示
せず)を介して、下部シールド層30、下部ギャップ層
31が成膜されている。
【0258】なお、下部シールド層30、下部ギャップ
層31、下地層32、シード層33、反強磁性層34、
固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37
及び上部ギャップ層44は、図1の磁気検出素子と同等
の構成及び材質であるので、説明を省略する。また、上
部ギャップ層44上には、磁性材料からなる図示しない
上部シールド層が形成されている。
【0259】図13に示される本実施の形態の磁気検出
素子は、第1フリー磁性層37c上に、第2の反強磁性
層50が積層され、第1フリー磁性層37cの磁化が、
第2の反強磁性層50との間の交換異方性磁界によって
X方向に揃えられる、いわゆるエクスチェンジバイアス
方式の磁気検出素子である。
【0260】第1フリー磁性層37cの磁化方向が図示
X方向を向くと、第2フリー磁性層37aは磁化方向が
反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層37
全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0261】このように、本実施の形態でもフリー磁性
層37はシンセティックフェリフリー状態になってい
る。
【0262】また、固定磁性層35全体の磁化方向は、
反強磁性層34との間の交換異方性磁界によって図示Y
方向にそろえられている。
【0263】第2反強磁性層50,50は、PtMn合
金、または、X―Mn(ただしXは、Pd、Ir、R
h、Ru、Osのいずれか1種または2種以上の元素で
ある)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′
は、Pd、Ir、Rh、Ru、Au、Ag、Os、C
r、Ni、Ar、Ne、Xe、Krのいずれか1または
2種以上の元素である)合金で形成する。
【0264】第2反強磁性層50,50を形成するため
の、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される
合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範
囲であることが好ましい。また、Pt−Mn−X’の式
で示される合金において、X’+Ptが37〜63at
%の範囲であることが好ましい。さらに、前記Pt−M
n−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜
10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’
がPd、Ir、Rh、Ru、Os、NiFeのいずれか
1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.
2〜40at%の範囲であることが好ましい。特に規定
しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以
上を意味する。
【0265】第2反強磁性層50,50上には、Ta、
Cr、W、Auなどによって形成される電極層51が形
成される。
【0266】なお、第2反強磁性層50,50間の間隔
寸法がトラック幅寸法Twに対応する。
【0267】本実施の形態の磁気検出素子では、磁気検
出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラッ
ク幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密
度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅
Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑える
ことができる。
【0268】さらに、本実施の形態では磁気検出素子の
側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるよう
に形成されることが可能なので、フリー磁性層37のト
ラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0269】第1フリー磁性層37c上であって、第2
反強磁性層50,50にはさまれる領域には、バックド
層38及び保護層39が順次積層されている。
【0270】バックド層38は図1に示されたバックド
層38と同様の材料を用いて形成され、バックド層38
と同様にスピンフィルター効果を有する。
【0271】図13に示される磁気検出素子でも、鏡面
反射層S1に含まれる酸素原子の拡散が拡散防止層P
1,P2によって抑えられ、鏡面反射層S1と拡散防止
層P1,P2との界面が乱れることを抑止できる。すな
わち、鏡面反射層S1と拡散防止層P2との界面付近に
おいて電子にスピン状態を保存する散乱をさせるスペキ
ュラー効果を向上させることができる。
【0272】なお、図1から図13に示された本発明の
実施の形態の磁気検出素子において、鏡面反射層S1、
S2、S3を強磁性材料である、CoO、Co−Fe−
O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、
Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Zn
のうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される
材料から選択されるいずれか1種または2種以上を用い
て形成した。
【0273】ただし、鏡面反射層S1、S2、S3をA
23、Al−Q−O(Qは、B、Si、N、Ti、
V、Mn、Fe、Co、Niから選択される一種以上の
元素)、R−O(RはTi、V、Cr、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wから選択される一種以上)などの絶
縁酸化物によって形成してもよい。この場合、鏡面反射
層S1、S2、S3の上下に積層される強磁性材料から
なる層は、反強磁性的に結合して、磁化方向が反平行に
なる。
【0274】また、鏡面反射層S1、S2、S3をα−
Fe23、NiOなどの反強磁性材料によって形成して
もよい。
【0275】ただし、拡散防止層P1,P2,P3,P
4,P5を形成する材料は、鏡面反射層S1,S2,S
3を形成する材料から酸素を除いた組成を有する材料よ
り酸化しにくいことが必要である。
【0276】拡散防止層P1,P2,P3,P4,P5
を形成する材料によって拡散防止膜を形成し、この拡散
防止膜を常温または加熱雰囲気に曝して酸化させたとき
前記拡散防止膜の表面に形成される酸化層の厚さを測定
し、また、鏡面反射層S1,S2,S3を形成する材料
から酸素を除いた組成を有する材料によって薄膜を形成
し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させて前記薄膜の表
面に形成される酸化層の厚さを測定する。
【0277】その結果、前記拡散防止膜の表面に形成さ
れる酸化層の厚さが、前記薄膜の表面に形成される酸化
層の厚さより小さくなるように、拡散防止層P1,P
2,P3,P4,P5を形成する材料及び鏡面反射層S
1,S2,S3を形成する材料を選択する。
【0278】図1に示された磁気検出素子の製造方法に
ついて説明する。図14に示されるように下部ギャップ
31上に下地層32及びシード層33を介して反強磁性
層34を積層する。さらに第1固定磁性層35a、非磁
性中間層35b、強磁性材料層35c1、拡散防止層P
1をスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによっ
て、同一真空成膜装置中で連続成膜する。
【0279】次に、拡散防止層P1上に、組成式がCo
O、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O
(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
種または2種以上を用いて鏡面反射層S1を成膜する。
【0280】鏡面反射層S1を、例えばCo−Fe−O
を用いて形成するときには、例えばターゲットとしてC
oFeで形成されたターゲットを使用する。前記ターゲ
ットにはO(酸素)が含まれていないので、スパッタで
形成される鏡面反射層S1内に酸素を含有させるため
に、スパッタ装置内にArガス以外にO2ガスを導入
し、反応性スパッタ法によってCo−Fe−O膜を成膜
する。
【0281】この製造方法ではCo−Fe−Oターゲッ
ト形成のとき、Feの含有量をCoの含有量との比のみ
で調整することができる。
【0282】また本発明では上記した製造方法に限ら
ず、ターゲットとして予め組成比が所定範囲内に調整さ
れたCo−Fe−Oからなる焼結ターゲットを形成して
もよい。この場合、導入ガスとしては不活性なArガス
のみでもよいし、あるいはO2ガスを導入して、Oの組
成比を適切に調整してもよい。
【0283】または、Feの含有量をCoの含有量との
比で調整したCo−Feターゲットを形成し、DCスパ
ッタ法、イオンビームスパッタ法(IBD法)などのス
パッタ法または蒸着法によって、拡散防止層P1上にC
o−Fe膜を成膜し、このCo−Fe膜を酸化させてC
o−Fe−O膜を得ることもできる。
【0284】Co−Fe膜を酸化させる方法として、O
2ガス中で自然酸化させる方法、O2プラズマ中で酸化さ
せる方法、O2プラズマ中からO2ラジカルを引出し、こ
のO 2ラジカル中で酸化させる方法、やイオンアシスト
酸化法(Ion Asisit Oxdation)を
使用することができる。
【0285】特に、O2ラジカル中で酸化させる方法は
酸化速度を適切に調節することが容易であり、Co−F
e膜を均一に酸化させることが容易になるので好まし
い。
【0286】Co−Fe膜を酸化させてCo−Fe−O
膜を得る方法では、Co−Feターゲット形成のとき、
Feの含有量をCoの含有量との比のみで調整すること
ができる。
【0287】あるいは、気相成長法(CVD法)によっ
て、例えば、AL−CVD(Atomic Layer
CVD)法によって、Co−Fe−O膜を成膜するこ
ともできる。
【0288】鏡面反射層S1をCo−Fe−O以外のC
oO、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素M
は、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、
Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示さ
れる材料を用いて形成するときにも、同様の方法を用い
ることができる。
【0289】さらに、鏡面反射層S1上に、拡散防止層
P2、強磁性散乱層35c2を積層してシンセティック
フェリピンド型の固定磁性層35を形成し、さらに非磁
性材料層36、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層
37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティッ
クフェリフリー型のフリー磁性層37、バックド層3
8、保護層39を積層することにより多層膜T1を形成
する。
【0290】多層膜T1の形成後、多層膜T1を磁場中
熱処理にかけて、反強磁性層34と固定磁性層35との
間に交換異方性磁界を生じさせる。
【0291】次に、形成する磁気検出素子の光学トラッ
ク幅の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層R1を、多
層膜T1上にパターン形成する。
【0292】図15に示すように、レジスト層R1に
は、その下面に切り込み部R1a,R1aが形成されて
いる。
【0293】次に図16に示す工程では、エッチングに
より多層膜T1の両側を削り込む。本工程では、エッチ
ングレート及びエッチング時間を制御し、反強磁性層3
4の側面を完全に削り取らず延出部34aが形成される
ようにしている。
【0294】さらに図17に示す工程では、多層膜T1
の両側に、バイアス下地層40、ハードバイアス層4
1、中間層42、電極層43を成膜する。本実施の形態
では、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中
間層42、電極層43を下部ギャップ層32の膜面垂直
方向(多層膜T1が形成される図示しない基板の面垂直
方向)からスパッタ粒子を入射させた。
【0295】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は多層膜T1と対向する側の側面41aの最上部41b
が第2フリー磁性層37aの上面37Aと重なる高さ位
置に形成される。ただし、ハードバイアス層41の側面
41aが、固定磁性層35の側面、非磁性材料層36の
側面、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、
及び第1フリー磁性層37cの側面と対向するようにし
てもよい。
【0296】本実施の形態では、ハードバイアス層41
は図示X方向の静磁界を、主に第2フリー磁性層37a
に与える。従って、ハードバイアス層40から発生する
図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37c
の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑
えることができる。
【0297】さらに、レジスト層R1が除去され、多層
膜T1の表面、及び電極層43の表面に上部ギャップ層
44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シール
ド(図示せず)が形成され、この上部シールド層が、無
機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われる
ことにより第1の実施の形態の磁気検出素子が形成され
る。
【0298】なお、下部シールド層30、下部ギャップ
層31、下地層32、シード層33反強磁性層34、固
定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層3
5b、強磁性材料層35c1、拡散防止層P1,P2、
鏡面反射層S1、強磁性散乱層35c2)、非磁性材料
層36、フリー磁性層37(第2フリー磁性層37a、
非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37c)、バッ
クド層38、保護層39、バイアス下地層40、ハード
バイアス層41、中間層42、電極層43、及び上部ギ
ャップ層44は、前述した材料を用いて形成する。な
お、上述した本発明の実施の形態では、固定磁性層35
中、フリー磁性層37中、またはフリー磁性層37の非
磁性材料層36に接する面と反対側に対向する領域中の
うち、いずれか1箇所に絶縁酸化物からなる鏡面反射層
S1、S2、S3が形成されるものを示したが、固定磁
性層35中、フリー磁性層37中、またはフリー磁性層
37の非磁性材料層36に接する面と反対側に対向する
領域中のうち、2箇所以上に鏡面反射層を形成してもよ
い。
【0299】
【発明の効果】以上詳細に説明した本発明によれば、前
記鏡面反射層を形成する材料から酸素を除いた組成を有
する材料よりも酸化しにくい材料からなる前記拡散防止
層を前記鏡面反射層の上面または下面の少なくとも一方
に接するように積層する。従って、前記鏡面反射層に含
まれる酸素原子の拡散が前記拡散防止層によって抑えら
れ、前記鏡面反射層の界面が乱れることを防止できる。
【0300】すなわち、本発明では、前記鏡面反射層と
前記拡散防止層との界面付近において電子にスピン状態
を保存する散乱をさせるスペキュラー効果を向上させる
ことができる。また、前記固定磁性層や前記フリー磁性
層の強磁性特性の不安定化を抑えることができる。
【0301】また、前記拡散防止層よりも電子散乱のス
ピン依存性が大きい材料によって形成され、前記非磁性
材料層に接する強磁性散乱層が形成されると、磁気検出
素子の磁気抵抗変化率が大きくすることができる。
【0302】また、本発明では、前記固定磁性層や前記
フリー磁性層を、磁気的膜厚の大きさが異なる複数の強
磁性材料層が、非磁性中間層を介して積層され、前記非
磁性中間層を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方
向が反平行となるフェリ磁性状態とすることができる。
【0303】さらに、前記非磁性中間層に接する前記強
磁性材料層と前記鏡面反射層との間に前記拡散防止層が
形成されることにより、前記固定磁性層や前記フリー磁
性層のフェリ磁性状態を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図2】図1に示された磁気検出素子の鏡面反射層の作
用を説明するための模式図、
【図3】図1に示された磁気検出素子のバックド層の作
用を説明するための模式図、
【図4】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図5】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図6】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図7】本発明の第5の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図8】本発明の第6の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図9】本発明の第7の実施の形態の磁気検出素子を記
録媒体との対向面側からみた断面図、
【図10】本発明の第8の実施の形態の磁気検出素子を
記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図11】本発明の第9の実施の形態の磁気検出素子を
記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図12】本発明の第10の実施の形態の磁気検出素子
を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図13】本発明の第11の実施の形態の磁気検出素子
を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図14】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図15】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図16】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図17】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一
工程図、
【図18】従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側
からみた断面図、
【符号の説明】
32 下地層 3シード層 34 反強磁性層 35a 第1固定磁性層 35b 非磁性中間層 35c 第2固定磁性層 35 固定磁性層 35c1 強磁性材料層 P1,P2,P3,P4,P5 拡散防止層 S1,S2,S3 鏡面反射層 35c2 強磁性散乱層 36 非磁性材料層 37a 第2フリー磁性層 37b 非磁性中間層 37c 第1フリー磁性層 37 フリー磁性層 38 バックド層 39 保護層 41 ハードバイアス層 50 第2反強磁性層 43、51 電極層 e1 アップスピン電子 e2 ダウンスピン電子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 43/12 G01R 33/06 R

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、反強磁性層、前記反強磁性層
    との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性
    層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動する
    フリー磁性層を有する多層膜を有する磁気検出素子にお
    いて、 前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、または前記フ
    リー磁性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側の面
    に対向する領域中のうち、いずれか1箇所あるいは2箇
    所以上に絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成され、前
    記鏡面反射層の上面または下面の少なくとも一方に接し
    て、強磁性材料からなり、前記鏡面反射層に含まれる酸
    素の拡散を防止する拡散防止層が形成されていることを
    特徴とする磁気検出素子。
  2. 【請求項2】 前記拡散防止層を形成する材料によって
    拡散防止膜を形成し、この拡散防止膜を常温または加熱
    雰囲気に曝して酸化させたとき前記拡散防止膜の表面に
    形成される酸化層の厚さが、前記鏡面反射層を形成する
    材料から酸素を除いた組成を有する材料によって薄膜を
    形成し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させたときに前
    記薄膜の表面に形成される酸化層の厚さよりも小さくな
    るように前記拡散防止層を形成する材料を選択する請求
    項1記載の磁気検出素子。
  3. 【請求項3】 前記反強磁性層は、前記固定磁性層に接
    して積層された後、磁場中熱処理にかけられることによ
    って前記固定磁性層との間に交換異方性磁界を生じさせ
    る反強磁性材料からなる請求項1または2記載の磁気検
    出素子。
  4. 【請求項4】 前記加熱雰囲気の温度条件は、前記反強
    磁性層と前記固定磁性層との間に交換異方性磁界が発生
    する温度より高く、前記反強磁性層のブロッキング温度
    よりも低い請求項3記載の磁気検出素子。
  5. 【請求項5】 前記加熱雰囲気の温度条件において、前
    記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における活性化
    エネルギーは、前記鏡面反射層を形成する材料から酸素
    を除いた組成を有する材料の酸化反応における活性化エ
    ネルギーよりも大きい請求項4記載の磁気検出素子。
  6. 【請求項6】 前記加熱雰囲気の温度条件において、前
    記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における自由エ
    ネルギー変化量は、前記鏡面反射層を形成する材料から
    酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応における自由
    エネルギー変化量より大きい請求項4または5記載の磁
    気検出素子。
  7. 【請求項7】 前記拡散防止層よりも電子散乱のスピン
    依存性が大きい材料によって形成され、前記非磁性材料
    層に接する強磁性散乱層が形成されている請求項1ない
    し6のいずれかに記載の磁気検出素子。
  8. 【請求項8】 前記拡散防止層がNiFeまたはCoF
    eNiによって形成される請求項1ないし7のいずれか
    に記載の磁気検出素子。
  9. 【請求項9】 前記拡散防止層に接する前記強磁性散乱
    層がCoまたはCoFeによって形成される請求項7ま
    たは8記載の磁気検出素子。
  10. 【請求項10】 前記鏡面反射層がAl23、Al−Q
    −O(Qは、B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Niから選択される一種以上の元素)、R−
    O(RはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、T
    a、Wから選択される一種以上)、α−Fe23、Ni
    O、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−
    M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、S
    r、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上で
    ある)の組成式で示される材料から選択されるいずれか
    1種または2種以上からなる請求項1ないし9のいずれ
    かに記載の磁気検出素子。
  11. 【請求項11】 前記固定磁性層は、磁気的膜厚の大き
    さが異なる複数の強磁性材料層が、非磁性中間層を介し
    て積層され、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強
    磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態で
    ある請求項1ないし10のいずれかに記載の薄膜磁気素
    子。
  12. 【請求項12】 前記フリー磁性層は、磁気的膜厚の大
    きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁性中間層を介
    して積層され、前記非磁性中間層を介して隣接する前記
    強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態
    である請求項1ないし11のいずれかに記載の薄膜磁気
    素子。
  13. 【請求項13】 前記非磁性中間層に接する前記強磁性
    材料層と前記鏡面反射層との間に、前記拡散防止層が形
    成されている請求項11または12に記載の磁気検出素
    子。
  14. 【請求項14】 前記非磁性中間層に接する前記強磁性
    材料層は、CoFe合金またはCoFeNi合金で形成
    されている請求項11ないし13のいずれかに記載の磁
    気検出素子。
  15. 【請求項15】 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、I
    r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
    金で形成されている請求項11ないし14のいずれかに
    記載の磁気検出素子。
  16. 【請求項16】 基板上に、反強磁性層、前記反強磁性
    層との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁
    性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動す
    るフリー磁性層を有する多層膜を有する磁気検出素子に
    おいて、 前記固定磁性層は、前記反強磁性層に接する第1固定磁
    性層と、前記第1固定磁性層に非磁性中間層を介して積
    層される第2固定磁性層からなるものであり、 前記第2の固定磁性層は、Al23、Al−Q−O(Q
    は、B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
    o、Niから選択される一種以上の元素)、R−O(R
    はTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W
    から選択される一種以上)、α−Fe23、NiO、C
    oO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O
    (ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
    Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
    る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
    種または2種以上からなる鏡面反射層と、 前記非磁性材料層と前記鏡面反射層の間に積層されたN
    iFe合金またはCoFeNi合金からなる第1強磁性
    層と、 前記非磁性材料層と前記第1強磁性層との間に積層され
    たCoFe合金または、CoFeNi合金からなる第2
    強磁性層と、 前記鏡面反射層と前記非磁性中間層との間に積層された
    NiFe合金またはCoFeNi合金からなる第3強磁
    性層と、 前記非磁性中間層と前記第3強磁性層との間に積層され
    たCoFe合金または、CoFeNi合金からなる第4
    強磁性層からなるものであり、 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、
    Cuのうち1種あるいは2種以上の合金からなり、 前記第1固定磁性層は、CoFe合金またはCoFeN
    i合金からなることを特徴とする磁気検出素子。
  17. 【請求項17】 基板上に、反強磁性層、前記反強磁性
    層との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁
    性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動す
    るフリー磁性層を有する多層膜を有する磁気検出素子に
    おいて、 前記フリー磁性層は、前記非磁性材料層に接する第2フ
    リー磁性層と、前記第2フリー磁性層に非磁性中間層を
    介して積層される第1フリー磁性層からなるものであ
    り、 前記第2フリー磁性層は、Al23、Al−Q−O(Q
    は、B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
    o、Niから選択される一種以上の元素)、R−O(R
    はTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W
    から選択される一種以上)、α−Fe23、NiO、C
    oO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O
    (ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、
    Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上であ
    る)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1
    種または2種以上からなる鏡面反射層と、 前記非磁性材料層と前記鏡面反射層の間に積層されたN
    iFe合金またはCoFeNi合金からなる第1強磁性
    層と、 前記非磁性材料層と前記第1強磁性層との間に積層され
    たCoFe合金または、CoFeNi合金からなる第2
    強磁性層と、 前記鏡面反射層と前記非磁性中間層との間に積層された
    NiFe合金またはCoFeNi合金からなる第3強磁
    性層と、 前記非磁性中間層と前記第3強磁性層との間に積層され
    たCoFe合金または、CoFeNi合金からなる第4
    強磁性層からなるものであり、 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、
    Cuのうち1種あるいは2種以上の合金からなり、 前記第1フリー磁性層は、CoFe合金またはCoFe
    Ni合金からなることを特徴とする磁気検出素子。
  18. 【請求項18】 基板上に、反強磁性層、前記反強磁性
    層との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁
    性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動す
    るフリー磁性層を有する多層膜を有する磁気検出素子の
    製造方法において、 前記固定磁性層中、前記フリー磁性層中、または前記フ
    リー磁性層の前記非磁性材料層に接する面と反対側の面
    に対向する領域中のうち、いずれか1箇所あるいは2箇
    所以上に絶縁酸化物からなる鏡面反射層を形成する工程
    と、 前記鏡面反射層の上面または下面の少なくとも一方に接
    して、強磁性材料によって、前記鏡面反射層に含まれる
    酸素の拡散を防止する拡散防止層を形成する工程を有す
    ることを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記拡散防止層を形成する材料によっ
    て拡散防止膜を形成し、この拡散防止膜を常温または加
    熱雰囲気に曝して酸化させたとき前記拡散防止膜の表面
    に形成される酸化層の厚さが、前記鏡面反射層を形成す
    る材料から酸素を除いた組成を有する材料によって薄膜
    を形成し、この薄膜を同じ温度条件で酸化させたときに
    前記薄膜の表面に形成される酸化層の厚さよりも小さく
    なるように、前記拡散防止層及び前記鏡面反射層を形成
    する材料を選択する請求項18記載の磁気検出素子の製
    造方法。
  20. 【請求項20】 前記多層膜の形成後、前記多層膜を磁
    場中熱処理にかけて、前記反強磁性層と前記固定磁性層
    との間に交換異方性磁界を生じさせる工程を有する請求
    項18または19に記載の磁気検出素子の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記加熱雰囲気の温度条件は、前記磁
    場中熱処理の温度より高く、前記反強磁性層のブロッキ
    ング温度よりも低い請求項20に記載の磁気検出素子の
    製造方法。
  22. 【請求項22】 前記加熱雰囲気の温度条件において、
    前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における活性
    化エネルギーが、前記鏡面反射層を形成する材料から酸
    素を除いた組成を有する材料の酸化反応における活性化
    エネルギーよりも大きくなるようにする請求項21に記
    載の磁気検出素子の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記加熱雰囲気の温度条件において、
    前記拡散防止層を形成する材料の酸化反応における自由
    エネルギー変化量が、前記鏡面反射層を形成する材料か
    ら酸素を除いた組成を有する材料の酸化反応における自
    由エネルギー変化量より大きくなるようにする請求項2
    1または22に記載の磁気検出素子の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記拡散防止層よりも電子散乱のスピ
    ン依存性が大きい材料を用いて、前記非磁性材料層に接
    するように強磁性散乱層を形成する請求項18ないし2
    3のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  25. 【請求項25】 前記拡散防止層をNiFeまたはCo
    FeNiによって形成する請求項18ないし24のいず
    れかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  26. 【請求項26】 前記強磁性散乱層をCoまたはCoF
    eによって形成する請求項24または25に記載の磁気
    検出素子の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記鏡面反射層をAl23、Al−Q
    −O(Qは、B、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Niから選択される一種以上の元素)、R−
    O(RはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、T
    a、Wから選択される一種以上)、α−Fe23、Ni
    O、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−
    M−O(ただし元素Mは、Mn、Co、Ni、Ba、S
    r、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上で
    ある)の組成式で示される材料から選択されるいずれか
    1種または2種以上によって形成する請求項18ないし
    26のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記固定磁性層を、磁気的膜厚の大き
    さが異なる複数の強磁性材料層を非磁性中間層を介して
    積層し、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁性
    材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となる
    ように形成する請求項18ないし27のいずれかに記載
    の磁気検出素子の製造方法。
  29. 【請求項29】 前記フリー磁性層を、磁気的膜厚の大
    きさが異なる複数の強磁性材料層を、非磁性中間層を介
    して積層し、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強
    磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態と
    なるように形成する請求項18ないし28のいずれかに
    記載の磁気検出素子の製造方法。
  30. 【請求項30】 前記非磁性中間層に接する前記強磁性
    材料層と前記鏡面反射層との間に、前記拡散防止層を形
    成する請求項28または29に記載の磁気検出素子の製
    造方法。
  31. 【請求項31】 前記非磁性中間層に接する前記強磁性
    材料層を、CoFe合金またはCoFeNi合金で形成
    する請求項28ないし30のいずれかに記載の磁気検出
    素子の製造方法。
  32. 【請求項32】 前記非磁性中間層を、Ru、Rh、I
    r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
    金で形成する請求項28ないし31のいずれかに記載の
    磁気検出素子の製造方法。
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