JP3773693B2 - ワークの打ち抜き成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製板材から所定形状のワークを打ち抜いて形成するワークの打ち抜き成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一側面に凸部を備え他側面に該凸部に対応する凹部を備える所定形状のワークを金属製板材から打ち抜くとき、先ず、図2(a)に示すように、上型11のパッド12が下型13のダイ14に板材Xを介して圧接することにより板材Xをクランプする。板材Xの打ち抜き位置に対応する上方には板材Xをワーク形状に打ち抜くための成形パンチ15が設けられており、該成形パンチ15に対向する下方には下降自在のカウンターパンチ16が設けられている。成形パンチ15には、前記ワークの凹部W2 を成形するための押圧ピン17が該成形パンチ15の下方に突出して設けられている。カウンターパンチ16には、押圧ピン17に対応して前記ワークの凸部W1 を成形するための成形凹部18が形成されている。
【0003】
次いで、図2(b)に示すように、成形パンチ15が下降する。該成形パンチ15が下降することにより、前記押圧ピン17が板材Xに押入して凹部W2 が成形され、同時にカウンターパンチ16の成形凹部18により凸部W1 が成形される。
【0004】
その後、図2(c)に示すように、成形パンチ15が更に下降して板材Xが打ち抜かれ、所定形状のワークWが成形される。
【0005】
しかし、以上のような打ち抜き成形によると、図2(b)に示すように前記押圧ピン17が成形パンチ15の打ち抜きに先立って凹部W2 を成形し始めるために、カウンターパンチ16の成形凹部18周辺に向かって肉が流動し、凸部W1 の基端周縁部Yに余肉が集中する。この状態で打ち抜きが行われると、凸部W1 の基端周縁部Yに集中した余肉を所定の厚みに潰すことができず、カウンターパンチ16の成形凹部18に対応する正確な凸部W1 の成形が行われない不都合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる不都合を解消して、本発明は、ワークの打ち抜き成形に際して、該ワークの両面において互い対応する凸部と凹部とを成形するとき、凸部の基端周縁部への余肉の集中を抑制して、高精度に凸部と凹部とを成形することができるワークの打ち抜き成形装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、一側面に凸部を備え他側面に該凸部に対応する凹部を備える所定形状のワークを金属製板材から打ち抜いて形成するワークの打ち抜き成形装置において、前記板材を載置するダイと、該ダイ上に載置された前記板材をクランプするパッドと、前記ダイに載置した板材の前記ワーク形状に対応する打ち抜き位置をその上部から押し下げ成形しながらワークを打ち抜く成形パンチと、該成形パンチに対向して上下移動自在に設けられ、前記パッドによってダイ上にクランプされた前記板材に下方から当接し、前記成形パンチによるワークの押し下げに追従して該ワークに圧接した状態で下降するカウンターパンチとを備え、該カウンターパンチは、前記パッドによって前記板材がダイ上にクランプされたときに、前記成形パンチの板材への当接に先立って該板材の所定位置に押入しつつ該板材の上面側に盛り上がりを形成し、前記成形パンチの板材への当接により前記凹部を形成する成形凸部を備え、前記成形パンチは、該成形パンチによる打ち抜き時のワークへの圧接により前記ワークの凸部を形成する成形凹部を前記カウンターパンチの成形凸部に対向する位置に備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記ダイ上に載置された板材は、前記パッドによってクランプされる。このとき、前記カウンターパンチに備える成形凸部が前記成形パンチの板材への当接に先立って該板材の所定位置に押入する。これにより、該板材の下面側には前記凹部となる凹みが形成され、該板材の上面側は前記凹部となる凹みが形成されたことに伴う盛り上がりが形成される。
【0009】
そして、前記成形パンチが下降され、該板材の盛り上がり部分に該成形パンチの成形凹部が圧接されることによって前記凸部が成形される。このとき、既に、前記カウンターパンチの成形凸部が板材の下面側に凹部となる凹みを成形することによって板材の上面側に盛り上がりを形成しているので、当該部分の肉流が分散して、前記凸部の基端周縁部への余肉の集中が抑制される。これにより、前記凸部の基端周縁部の潰しが十分に行え、精度の高い凸部を形成することができる。
【0010】
そして、前記成形パンチがカウンターパンチと共に板材の圧接状態を維持して該板材を押し下げ、前記ワークを所定形状に打ち抜くことができる。
【0011】
本発明において、前記カウンターパンチの成形凸部は、前記成形パンチによる打ち抜きに先立って、前記パッドによってダイ上にクランプされた前記板材に下方から圧接して該板材の所定位置に前記凹部となる凹みを形成すると同時に該板材の打ち抜き位置を該板材の下方から押し上げた状態とすることにより前記成形パンチの板材への当接に先立って該板材に引張応力を付与することを特徴とする。
【0012】
このように、前記カウンターパンチの成形凸部が前記凹部を成形する際に当該部分を押し上げて板材に引張応力を付与することにより、成形パンチの成形凹部の圧接に先立って十分に肉の流れを分散させておくことができ、成形凹部の圧接によって前記凸部が形成される際には、凸部の基端周縁部への余肉の集中を一層確実に抑制することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)乃至(d)は、本実施形態のワークの打ち抜き成形装置の構成を模式的に示すと共に該装置によるワークの打ち抜き成形工程を示す説明図である。
【0014】
本実施形態におけるワークWは、図1(a)に示す金属製板材Xを打ち抜くことにより、図1(d)に断面形状で示すように、一側面(図中下面側)に凸部W1 が形成され、他側面(図中上面側)に凹部W2 が形成されるものである。この種の形状を有するワークWとしては、例えば、図示しないが、自動車の無段変速機構に用いられるVベルトを構成するエレメントが挙げられる。この種のVベルトの場合、複数の同一形状のエレメントを重ね合わせることが行われ、互いに重ね合わせたときに、凸部W1 が隣接する他のエレメントの凹部W2 に係合して相互の位置決めが行われる。このため、凸部W1 が凹部W2 に確実に密着係合するように高精度な凸部W1 を成形する必要がある。
【0015】
本実施形態の打ち抜き成形装置1は、高精度な凸部W1 を成形する構成を備えるものであり、図1(a)に示すように、材料となる金属製板材Xの下方に位置する下型2と、該板材Xを介して下型2の上方に位置する上型3とを備えている。前記下型2は、ダイ4とカウンターパンチ5とを備え、前記上型3は、パッド6と成形パンチ7とを備えている。
【0016】
前記パッド6は、昇降自在に設けられており、ダイ4上に前記板材Xをクランプする際に図示しない昇降駆動手段の駆動により下降する。前記成形パンチ7は、前記板材Xの打ち抜き形状に対応する形状を備えており、パッド6とは別体に昇降自在に設けられている。該成形パンチ7は、パッド6によってダイ4上にクランプされた前記板材Xの打ち抜き位置に当接して、更に下降され、ダイ4の下方に向かって板材Xを押し下げることにより、前記ワークWを打ち抜き成形する。該成形パンチ7には、ワークWの凸部W1 を形成する成形凹部8が形成されている。
【0017】
前記カウンターパンチ5は、成形パンチ7に対向して昇降自在に設けられ、図示しない付勢手段によって上方に付勢されている。該カウンターパンチ5の上部には、前記成形パンチ7の成形凹部8に対向する位置に、ワークWの凹部W2 を形成する成形凸部9が形成されている。そして、該カウンターパンチ5は、前記成形凸部9がダイ4の上面から突出するように付勢されて下型2に保持されている。
【0018】
また、該カウンターパンチ5は、後述するようにパッド6によってクランプされた板材Xがカウンターパンチ5の成形凸部9に当接したときに、該成形凸部9が板材Xに押入すると共に、該板材Xを湾曲形状に変形させることができる付勢力をもってダイ4の上面から突出されている。一方、前記成形パンチ7は、カウンターパンチ5の上方に向かう付勢力よりも大きな押圧力をもって下降する。これにより、成形パンチ7が板材Xを打ち抜くときには、カウンターパンチ5が板材Xの下方から圧接した状態で、成形パンチ7の下降に追従して下降する。
【0019】
次に、以上の構成の装置1による打ち抜き成形工程を説明する。先ず、図1(a)に示すように、上型3と下型2との間に板材Xを介入させ、図1(b)に示すように、前記パッド6を下降させて板材Xの打ち抜き位置を除く部分をダイ4の上面に圧接させることにより、板材Xをクランプする。
【0020】
このとき、ダイ4の上面からは前記カウンターパンチ5の成形凸部9が突出しており、前記パッド6による板材Xのクランプに伴い前記カウンターパンチ5の成形凸部9によって板材Xに凹部W2 となる凹みが成形され、同時に、該板材Xの打ち抜き位置が押し上げられる。該カウンターパンチ5は前述したように、パッド6によって板材Xが押し下げられても、板材Xの下降に対抗し得る付勢力を有するので、板材Xは成形凸部9の圧接により上方に膨出するように変形され、この押し上げ変形によって、該板材Xの打ち抜き位置に引張応力が発生する。
【0021】
次いで、図1(c)に示すように、前記成形パンチ7が下降し、該成形パンチ7とその成形凹部8が引張応力が付与されている板材Xの上面に圧接される。該板材Xの下面には前記カウンターパンチ5が当接されて既に凹部W2 となる凹みが成形されており、板材Xが押し上げられた状態とされているので、成形パンチ7が板材に圧接されたときには、該成形パンチ7の成形凹部8に板材Xが侵入する。これにより、板材Xに凹部W2 と凸部W1 とが成形される。このとき、板材Xに付与されていた引張応力によって該板材Xの肉流が分散し、成形凹部8により成形される凸部W1 の基端周縁部Yへの肉の集中が抑制される。これによって、成形凹部8に沿って精度よく凸部W1 が成形される。
【0022】
そして、図1(d)に示すように、前記成形パンチ7が更に下降し、板材Xの打ち抜き位置を下方に押し下げる。前記カウンターパンチ5は、成形パンチ7の押し下げに追従して板材Xに圧接した状態で下降し、これによって所定形状のワークWが打ち抜き成形される。
【0023】
なお、本実施形態においては、図1(a)に示すように、前記カウンターパンチ5の成形凸部9をダイ4の上面から突出させておき、パッド6を下降させることにより、図1(b)に示すように、板材Xを押し上げ状態として該板材Xに引張応力を付与したが、本発明はそれに限るものではない。他の例を示すならば、図示しないが、前記カウンターパンチ5の成形凸部9をダイ4の上面よりも下方に後退させておき、次いで、パッド6により板材Xをクランプした後に、前記カウンターパンチ5の成形凸部9をダイ4の上面から突出させる。こうすることによって、板材Xは下方から押し上げられた状態で引張応力が付与される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のワークの打ち抜き成形装置の構成を模式的に示すと共に該装置によるワークの打ち抜き成形工程を示す説明図。
【図2】従来のワークの打ち抜き成形工程を示す説明図。
【符号の説明】
W…ワーク、W1 …凸部、W2 …凹部、X…金属製板材、4…ダイ、5…カウンターパンチ、6…パッド、7…成形パンチ、8…成形凹部、9…成形凸部。

Claims (2)

  1. 一側面に凸部を備え他側面に該凸部に対応する凹部を備える所定形状のワークを金属製板材から打ち抜いて形成するワークの打ち抜き成形装置において、
    前記板材を載置するダイと、
    該ダイ上に載置された前記板材をクランプするパッドと、
    前記ダイに載置した板材の前記ワーク形状に対応する打ち抜き位置をその上部から押し下げ成形しながらワークを打ち抜く成形パンチと、
    該成形パンチに対向して上下移動自在に設けられ、前記パッドによってダイ上にクランプされた前記板材に下方から当接し、前記成形パンチによるワークの押し下げに追従して該ワークに圧接した状態で下降するカウンターパンチとを備え、
    該カウンターパンチは、前記パッドによって前記板材がダイ上にクランプされたときに、前記成形パンチの板材への当接に先立って該板材の所定位置に押入しつつ該板材の上面側に盛り上がりを形成し、前記成形パンチの板材への当接により前記凹部を形成する成形凸部を備え、
    前記成形パンチは、該成形パンチによる打ち抜き時のワークへの圧接により前記ワークの凸部を形成する成形凹部を前記カウンターパンチの成形凸部に対向する位置に備えることを特徴とするワークの打ち抜き成形装置。
  2. 前記カウンターパンチの成形凸部は、前記成形パンチによる打ち抜きに先立って、前記パッドによってダイ上にクランプされた前記板材に下方から圧接して該板材の所定位置に前記凹部となる凹みを形成すると同時に該板材の打ち抜き位置を該板材の下方から押し上げた状態とすることにより前記成形パンチの板材への当接に先立って該板材に引張応力を付与することを特徴とする請求項1記載のワークの打ち抜き成形装置。
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