JP3773320B2 - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空槽内でワーク表面に金属膜及び保護膜を効率的に成膜する成膜装置及び成膜方法に関する技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の成膜装置の一例として、例えば特開平3―202467号公報に示されるように、真空槽内に高周波スパッタ用の高周波電力が印加される電極及び基板を配設するとともに、真空槽内にプラズマCVD用の高周波プラズマを発生させるコイルと、マイクロ波プラズマを発生させるための導波管とを設け、1つの真空槽内で基板に対し高周波スパッタリングとプラズマCVDとを行い得るようにしたものが提案されている。
【0003】
ところで、例えば車両用ヘッドランプや照明器具の反射鏡等の光学的リフレクタの製造工程においては、そのリフレクタ表面に反射膜としてのアルミニウム等の金属膜を成膜した後、その金属膜上にプラズマ重合等によって保護膜を形成することが一般に行われている。
【0004】
このようなリフレクタ(ワーク)の表面に金属膜及び保護膜を成膜する場合、金属膜用の成膜装置でリフレクタ表面に金属膜を付けた後、そのリフレクタを保護膜用成膜装置に移し代えて保護膜を成膜する方法、或いは1つの蒸着装置中で、金属材料の蒸着によってリフレクタに金属膜表面を成膜した後、プラズマ重合によって保護膜を成膜する方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら従来の方法では、成膜装置が大掛かりな規模となり、成膜材料の供給系等のメンテナンスも面倒であり、さらには一度に多量のワークを処理する場合、前後の工程との接続のためにバッファ装置が必要となる。
【0006】
また、上記提案例の考え方を利用し、1つの真空槽内でリフレクタ表面にスパッタリングにより金属膜を成膜した後、その金属膜上に電極からの放電によるプラズマ重合により保護膜を成膜するようにしてもよいが、その場合、真空槽内にスパッタリング用及び放電用の各電極が必要となり、成膜装置の規模を小さくすることに限度がある。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記光学的リフレクタの如きワーク(基板)に対しスパッタリングと放電によるプラズマCVDとによりそれぞれ成膜を行う場合に、電極構成を簡単にして成膜装置の規模を小さくしながら、成膜を効率よく行い得るようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、ワークに対しスパッタリングによる成膜とプラズマCVDによる成膜とをそれぞれ1つの共通の真空槽内で行うに当たり、スパッタリング用のターゲットとなる電極をプラズマCVD用の放電電極として共用するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、真空槽内でワーク表面に金属膜及び保護膜を成膜するようにした成膜装置として、真空槽内に配設され、少なくとも一部が、上記金属膜材料からなるターゲット部とされた電極と、この電極に直流電圧を印加する直流電源と、真空槽内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、上記電極に高周波電力を印加する高周波電源と、真空槽内に上記保護膜材料となる反応ガスを供給する反応ガス供給手段とを備えている。
【0010】
そして、上記不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、直流電源により直流電圧を電極に印加することにより、該電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜を成膜する一方、上記不活性ガス供給手段による不活性ガスの供給及び直流電源による直流電圧の印加を停止し、かつ上記反応ガス供給手段により真空槽内に反応ガスを供給した状態で、高周波電源により上記電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させ、上記反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するように構成する。
【0011】
一方、請求項2の発明では、真空槽内でワーク表面に金属膜を成膜した後、その金属膜上に保護膜を成膜するようにした成膜装置として、上記請求項1の発明と同様に、電極、直流電源、不活性ガス供給手段、高周波電源及びる反応ガス供給手段を備えたものとし、上記不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、直流電源により直流電圧を電極に印加することにより、該電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜し、その後、上記不活性ガス供給手段による不活性ガスの供給及び直流電源による直流電圧の印加を停止し、かつ上記反応ガス供給手段により真空槽内に反応ガスを供給した状態で、高周波電源により上記電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させ、上記反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するように構成する。
【0012】
これら請求項1又は2の発明では、上記の構成により、ワーク表面に金属膜を成膜する際、不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスが供給されて、その状態で直流電源により直流電圧が電極に印加され、その電極のターゲット部のスパッタリングによりワーク表面に金属膜がスパッタ成膜される。これに対し、ワーク表面に保護膜を成膜する際、不活性ガスの供給及び直流電圧の印加が停止されるとともに、反応ガス供給手段により真空槽内に反応ガスが供給され、その状態で高周波電源により同じ電極に高周波電力が印加されて電極から放電が発生し、反応ガスのプラズマ反応によりワーク表面上に保護膜が成膜される。従って、1つの真空槽内でワーク表面にスパッタリングによる金属膜とプラズマCVDによる保護膜とがそれぞれ成膜されるので、成膜装置の規模を小さくすることができるとともに、成膜効率を高めることができる。しかも、スパッタリング用のターゲットとなる電極がプラズマCVD用の放電電極として共用されるので、電極の構成を簡素化することができる。
【0013】
請求項3の発明では、少なくとも真空槽及びその内部の電極をそれぞれ複数設け、各真空槽内でのワークに対する金属膜及び保護膜の成膜を、他の真空槽内での成膜と時間的にずらして交互に行うように構成する。こうすれば、各真空槽内でワークの金属膜及び保護膜の成膜が他の真空槽と重ならないので、各真空槽の稼働率を向上できるとともに、連続してワークが流れる生産工程であってもバッファ装置を要することなく生産ラインを組むことができる。
【0014】
請求項4の発明では、ワーク表面に金属膜をスパッタ成膜する前に、ワークを表面が電極に対し反対側に向くように反転させかつ不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、高周波電源により電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させて電極のターゲット部をスパッタリングするように構成する。このことで、ワーク表面にスパッタ成膜により金属膜を成膜する際のターゲットとなる電極ターゲット部がスパッタリングされ、そのターゲット部表面上の酸化物等の絶縁層や、前回のワークに対するプラズマCVDによる成膜工程での保護膜材料成分等を除去することができる。しかも、このときには、ワークは電極に対し反転されているので、上記電極から除去される不純物がワーク表面に付着して金属膜の品質不良を招くことはない。
【0015】
請求項5の発明では、電極は、通電により磁界を発生させる電磁石を有するマグネトロン電極とする。こうすると、マグネトロン電極をターゲットとしてスパッタ成膜するマグネトロンスパッタリングを行うに当たり、上記請求項1又は2の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
請求項6の発明では、上記反応ガス供給手段は、反応ガスとしてモノマーを供給するように構成する。そして、この反応ガス供給手段により真空槽内にモノマーを供給した状態で、高周波電源により電極に高周波電力を印加することにより、電極から高周波グロー放電を発生させ、上記モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜するように構成する。
【0017】
この構成によると、真空槽内で電極からの高周波グロー放電によりモノマーをプラズマ状態としてワーク表面上にプラズマ重合成膜させるに当たり、上記請求項1又は2の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0018】
請求項7の発明では、上記請求項6の成膜装置において、ワークは光学的リフレクタとし、金属膜はアルミニウムからなし、保護膜はヘキサメチルジシロキサン(シリコン)からなす。このことで、光学的リフレクタの表面に、反射膜としてアルミニウム膜とヘキサメチルジシロキサンからなる保護膜とを成膜する場合に、請求項1又は2の発明と同様の効果が得られる。
【0019】
請求項8の発明は、真空槽内でワーク表面に金属膜を成膜した後、その金属膜上に保護膜を成膜する成膜方法の発明である。
【0020】
この発明方法では、真空槽内に、少なくとも一部が上記金属膜材料からなるターゲット部とされた電極を配置し、真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、上記電極に直流電圧を印加することにより、電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜する。
【0021】
次いで、上記不活性ガスの供給及び電極への直流電圧の印加を停止し、かつ真空槽内に上記保護膜材料からなるモノマーを供給した状態で、上記同じ電極に高周波電力を印加することにより、電極から高周波グロー放電を発生させ、上記モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜する。この発明でも、上記請求項5又は6の発明と同様の作用効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る成膜装置Aを示し、この成膜装置Aは、光学的リフレクタである車両用ヘッドランプの反射鏡となるワークW(基板)の成膜対象面たる内側表面にアルミニウム膜(金属膜)を成膜した後、そのアルミニウム膜上に保護膜を成膜する用途に用いられる。この保護膜は例えばシリコンオイルの一種であるヘキサメチルジシロキサン(化学式(CH3 )3 ・SiO・Si(CH3 )3 )からなる。
【0023】
図1において、1は内部に真空チャンバ2を有する真空槽で、この真空槽1の側壁にはゲート3によって開閉される開口2aがあけられており、複数のワークW,W,…を取付固定したワーク支持ホルダ(図示せず)を真空チャンバ2内に対し開口2aを経由して出し入れする。尚、各ワークWはその内側表面(成膜対象面)を上向きにした状態でホルダに固定されて真空チャンバ2内に出し入れされる。また、図示しないが、真空槽1内にはホルダに取付支持されている各ワークWをホルダ毎反転させる反転機構が設けられている。
【0024】
上記真空槽1には、真空チャンバ2の空気を排出して該チャンバ2を真空状態にする真空排気装置5が接続されている。この真空排気装置5は真空チャンバ2に連通する第1排気通路6を備え、この第1排気通路6の下流端は真空ポンプとしての油回転ポンプ7に接続されている。第1排気通路6の途中には粗引き弁8と、その下流側に真空ポンプとしてのメカニカルブースタポンプ9とが配設されており、粗引き弁8を開けた状態でメカニカルブースタポンプ9及び油回転ポンプ7により真空チャンバ2の真空粗引きを行う。また、上記粗引き弁8及びメカニカルブースタポンプ9の間の第1排気通路6と真空チャンバ2とは第2排気通路10により接続され、この第2排気通路10の途中には主弁11と、その下流側に高真空ポンプ12と、その下流側の本引き弁13とが配設されており、粗引き弁8を閉じて主弁11及び本引き弁13を開けた状態で、高真空ポンプ12、メカニカルブースタポンプ9及び油回転ポンプ7により真空チャンバ2を高真空まで真空引きを行うようにしている。
【0025】
尚、真空チャンバ2に後述のアルゴンガスやモノマーガスが導入されて成膜が行われる際、第2排気通路10での排気量を調整することで、真空チャンバ2の圧力を成膜に適正な圧力に保つようにしている。
【0026】
真空槽1には、真空チャンバ2に大気を導入してチャンバ2を真空状態から大気圧に戻す大気導入通路15が接続されている。この大気導入通路15の途中には大気導入弁16が配設されており、この大気導入弁16の開弁により、真空状態にある真空チャンバ2を大気に開放して真空チャンバ2に大気を導入するようにしている。
【0027】
さらに、真空槽1には、真空状態の真空チャンバ2に不活性ガスとしてのアルゴンガス(Arガス)を供給する不活性ガス供給装置20と、同様に上記ワークWの内側表面に成膜される保護膜の材料となる反応ガスとしてのモノマーガスを供給する反応ガス供給装置25とが接続されている。上記不活性ガス供給装置20は真空チャンバ2に連通するアルゴン供給通路21を備え、このアルゴン供給通路21の上流端はアルゴンガスボンベ22に接続されている。また、アルゴン供給通路21の途中にはアルゴンガス導入弁23が配設されており、この導入弁23の開弁によってアルゴンガスボンベ22から真空チャンバ2にアルゴンガスを供給するようにしている。
【0028】
一方、上記反応ガス供給装置25は真空チャンバ2に連通するモノマー供給通路26を備え、このモノマー供給通路26の上流端はモノマーボンベ27に接続され、モノマー供給通路26の途中にはモノマー導入弁28が配設されており、このモノマー導入弁28の開弁によってモノマーボンベ27から真空チャンバ2にモノマーガスを供給するようにしている。
【0029】
真空槽1の上壁内面にはマグネトロン電極30が配置され、このマグネトロン電極30は、その内部に通電により磁界を発生させる電磁石31を有する。また、電極30の下部には、真空チャンバ2に臨むアルミニウム(金属膜材料)からなるターゲット部30aが形成されている(尚、電極30全体をアルミニウムで構成することもできる)。
【0030】
上記マグネトロン電極30の電磁石31にはコイル電源33が接続されている。また、マグネトロン電極30自体には電極30に高圧の直流電圧を印加する直流電源34と、電極30に高周波電力を印加する高周波電源35(RF電源)とが接続されている。
【0031】
そして、上記ゲート3の開閉、真空排気装置5における各ポンプ7,9,12のON/OFF作動及び各弁8,11,13の開閉作動、大気導入弁16、アルゴンガス導入弁23及びモノマー導入弁28の開閉作動、各電源33〜35のON/OFF作動は図外の制御ユニットにより制御されるようになっており、この制御ユニットの制御により、図2(a)に示すように、真空槽1内の真空状態にある真空チャンバ2に不活性ガス供給装置20によりアルゴンガスを供給した状態で、マグネトロン電極30の電磁石31にコイル電源33から電流を流して電極30にマグネトロン磁界を発生させ、かつ直流電源34により直流電圧をマグネトロン電極30に印加することにより、その電極30のターゲット部30aをスパッタリングしてワークWの内側表面にアルミニウム膜をスパッタ成膜し、その後、引き続いて、図2(b)に示す如く、上記不活性ガス供給装置20によるアルゴンガスの供給、コイル電源33による電流の供給及び直流電源34による直流電圧の印加を停止し、かつ反応ガス供給装置25により真空槽1内にモノマーガスを供給した状態で、高周波電源35により同じマグネトロン電極30に高周波電力を印加することにより、そのマグネトロン電極30(スパッタ成膜時のターゲット)を平行平板電極として、マグネトロン電極30及び真空槽1の間で高周波グロー放電を発生させ、モノマーガスを分解重合反応させてワークWの内側表面の上記アルミニウム膜上に保護膜をプラズマ重合成膜するようにしている。
【0032】
尚、上記マグネトロン電極30と直流電源34との間にはフィルタ36が直列に接続されており、上記高周波電源35からの高周波電力が直流電源34に流れずにマグネトロン電極30に有効に流れるようにするために、直流電源34へ流れる高周波電力をフィルタ36にて遮断している。
【0033】
また、電極30と高周波電源35との間にはインピーダンス整合用の整合器37(マッチングボックス)が直列に接続されている。
【0034】
ここで、上記制御ユニットの制御により行われる成膜装置Aの動作(ワークWに対する成膜方法)について図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。まず、真空槽1のゲート3をあけて真空チャンバ2に開口2aから、ワーク支持ホルダに取付支持されたワークW,W,…をロードする(ステップS1)。このとき、各ワークWは、その成膜しようとする内側表面が上向き(真空チャンバ2上部のマグネトロン電極30側に向いた状態)になるように正転状態に配置される。
【0035】
次に、上記ゲート3を閉じて真空チャンバ2を気密密閉した後(ステップS2)、真空排気を行う(ステップS3〜S8)。つまり、最初に、油回転ポンプ7及びメカニカルブースタポンプ9をそれぞれON作動させかつ粗引き弁8を開くことで、粗真空系をON作動させる(ステップS3)。その後、真空チャンバ2が所定の真空度に達したかどうかを判定し(ステップS4)、この判定がYESになると、上記粗引き弁8を閉じ(ステップS5)、次いで、高真空ポンプ12をON作動させかつ本引き弁13を開き(ステップS6)、さらに主弁11を開く(ステップS7)。
【0036】
この後、真空チャンバ2が目的の真空度に達したか否かを判定し(ステップS8)、この判定がYESになると、チャンバ2の反転機構により各ワークWを図1で仮想線にて示すように反転して成膜対象面たる内側表面が下向き(マグネトロン電極30と反対側に向いた状態)になるように裏返す(ステップS9)。
【0037】
次いで、不活性ガス供給装置20のアルゴンガス導入弁23を開き、真空チャンバ2の圧力を適正圧力に保ちながら高周波電源35をON作動させて、マグネトロン電極30と真空槽1との間で高周波グロー放電を起こし、マグネトロン電極30におけるターゲット部30aの表面部分を蒸発させる電極クリーニングを行う(ステップS10)。
【0038】
すなわち、後述するようにワークWの内側表面に直流スパッタ成膜によりアルミニウム膜を成膜する前に、各ワークWをその内側表面がマグネトロン電極30に対し反対側に向くように反転させかつ不活性ガス供給装置20により真空槽1内のチャンバ2にアルゴンガスを供給した状態で、高周波電源35により電極30に高周波電力を印加し、電極30から放電を発生させる。このことで、マグネトロン電極30のターゲット部30a表面がスパッタリングされて蒸発し、ターゲット部30a表面上に形成されている酸化物等の絶縁層や、前回のプラズマ重合による保護膜の成膜工程で付着していた保護膜材料成分等が効果的に除去される。
【0039】
しかも、このときには、各ワークWはその成膜しようとする内側表面がマグネトロン電極30と反対側である下側に向くように反転されているので、上記電極30のターゲット部30aから除去される不純物がワークWの内側表面に付着せず、後述のアルミニウム膜の成膜時に不純物の混入による品質不良を招くことはない。
【0040】
このような電極クリーニングの後は、上記電極ターゲット部30aに対するスパッタリングが一定時間継続したかどうかを判定し(ステップS11)、一定時間の経過によってこの判定がYESになると、上記高周波電源35をOFF作動させる(ステップS12)。次いで、真空チャンバ2の反転機構によりワークWを内側表面が上向き(マグネトロン電極30側に向いた状態)となるように元の姿勢に正転させる(ステップS13)。
【0041】
この後、コイル電源33及び直流電源34をそれぞれON作動させる(ステップS14)。つまり、図2(a)に示すように、真空チャンバ2に上記不活性ガス供給装置20によりアルゴンガスを供給した状態で、マグネトロン電極30の電磁石31にコイル電源33から電流を流して電極30にマグネトロン磁界を発生させ、かつ直流電源34により直流電圧をマグネトロン電極30に印加することにより、その電極30のターゲット部30aをスパッタしてワークWの内側表面にアルミニウム膜をスパッタ成膜する。
【0042】
そのとき、上記の如く、前工程で、ターゲット部30a表面の酸化物等の絶縁層や保護膜材料成分等が除去されて清浄にされているので、上記スパッタリングによるアルミニウム膜を安定して良好に成膜することができる。
【0043】
この後、上記アルミニウム膜のスパッタリングが終了したかどうかを判定し(ステップS15)、この判定がYESになると、上記コイル電源33及び直流電源34を共にOFF作動させるとともに、アルゴンガス導入弁23を閉じてアルゴンガスの供給を停止する(ステップS16)。
【0044】
次いで、反応ガス供給装置25のモノマー導入弁28を開き、真空チャンバ2の圧力を適正圧力に保ちつつ上記高周波電源35をON作動させる(ステップS17)。このことで、図2(b)に示す如く、マグネトロン電極30のターゲット部30aを平行平板電極として、該電極ターゲット部30aと真空槽1との間で高周波グロー放電を発生させ、このグロー放電によりチャンバ2のモノマーガスをプラズマ状態として分解重合反応させ、ワークWの内側表面のアルミニウム膜上にモノマーによる保護膜をプラズマ重合成膜する。
【0045】
この後は上記プラズマ重合が終了したか否かを判定し(ステップS18)、この判定がYESになると、上記高周波電源35をOFF作動させるとともに、モノマー導入弁28を閉じてモノマーガスの供給を停止する(ステップS19)。次いで、大気導入弁16を開いて真空チャンバ2を大気中に開放する大気ベントを行った後、大気導入弁16を閉じ状態に戻し(ステップS20)、真空槽1のゲート3を開けて真空チャンバ2から、ホルダに取付支持されたワークWをアンロードする(ステップS21)。以上でワークWに対する1サイクルの成膜工程が終了し、以後は、最初(ステップS1)に戻ってワークW毎に同様のサイクルを繰り返す。
【0046】
したがって、この実施形態では、1つの同一の真空槽1内で各ワークWの内側表面にスパッタリングによるアルミニウム膜の成膜が行われ、引き続き真空状態を保ったままで、そのアルミニウム膜上にプラズマ重合による保護膜の成膜が行われるので、真空槽1のチャンバ2をスパッタ成膜用及びプラズマ重合成膜用として共用でき、その分、成膜装置Aの規模を小さくし、かつ成膜効率を高めることができる。
【0047】
また、スパッタ成膜用のターゲットとなるマグネトロン電極30がプラズマ重合用の平行平板放電電極としても共用されるので、真空チャンバ2に配置する必要のある電極30は1つのみで済み、電極30の構成を簡素化することができる。
【0048】
(実施形態2)
図4及び図5は本発明の実施形態2を示し(尚、図1〜図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、真空槽1を2基並べて交互に稼働させることで、連続成膜できるようにしたものである。
【0049】
すなわち、この実施形態では、図4に示すように、第1及び第2の2基の真空槽1A,1Bが設けられており、各真空槽1A,1B内の真空チャンバ2,2にそれぞれマグネトロン電極30,30が配置されている。フィルタ36及び整合器37は各真空槽1A,1Bの電極30毎に接続されているが、コイル電源33、直流電源34及び高周波電源35は両真空槽1A,1Bで共用とされ、各真空槽1A,1Bの電極30に選択的に切り換えて接続するためにコイル電源33、直流電源34及び高周波電源35と各真空槽1A,1Bの電極30との分岐接続部には切換スイッチ39〜41が接続されている。
【0050】
また、真空排気装置5の第1排気通路6は各真空槽1A,1B毎の粗引き弁8下流側で互いに集合され、その集合された第1排気通路6に共通のメカニカルブースタポンプ9及び油回転ポンプ7が配置されている。また、第2排気通路10は各真空槽1A,1B毎に設けられ、その下流端は上記第1排気通路6とは別の油回転ポンプ7′に接続されている。
【0051】
さらに、不活性ガス供給装置20のアルゴン供給通路21は各真空槽1A,1B毎のアルゴンガス導入弁23上流側で互いに集合されて1つのアルゴンガスボンベ22に、また反応ガス供給装置25のモノマー供給通路26は各真空槽1A,1B毎のモノマー導入弁28上流側で互いに集合されて1つのモノマーボンベ27にそれぞれ接続されている。
【0052】
図4中、43は上記制御ユニットにより制御されるワーク着脱機構(このワーク着脱機構43は上記実施形態1にも同様のものが設けられているが、図示していない)であって、真空槽1A,1B側方のステージで各ワークWをホルダに対し取り付け又は取り外すものである。この実施形態では実施形態1とは異なり、両真空槽1A,1Bについて共用された1つのワーク着脱機構43が設けられている。
【0053】
図5は制御ユニットの制御に基づいて行われる2基の真空槽1A,1Bのタクト動作を示しており、各真空槽1A,1Bのチャンバ2についてみれば実施形態1と同じ動作が行われる(図3参照)。そして、各真空槽1A(又は1B)内でワークWに対するアルミニウム膜及び保護膜の成膜を、他の真空槽1B(又は1A)での成膜と時間的にずらして交互に行うようにしている。
【0054】
したがって、この実施形態によると、2基の真空槽1A,1Bの各々のチャンバ2,2で、ワークWのアルミニウム膜の成膜、次いでその上に保護膜の成膜が交互に行われるので、電源やガス供給系、真空排気系の共用化を図るとともに、各真空槽1A,1Bの稼働率を向上させることができる。また、連続してワークWが流れる生産工程であってもバッファ装置を要することなく生産ラインを組むことができる。
【0055】
(他の実施形態等について)
尚、上記実施形態1では、真空チャンバ2に対するワークWのロード時、各ワークWをその成膜しようとする内側表面が上向き(マグネトロン電極30側に向いた状態)になるように配置してロードし、スパッタリングによるアルミニウム膜の成膜前に、チャンバ2の反転機構によりワークWを反転させるようにしているが、予め各ワークWを反転させてロードするようにしてもよく、その場合には、アルミニウム膜の成膜前にワークWを反転させる動作(図3のステップS9)は不要となる。
【0056】
また、上記各実施形態では、成膜するワークWを車両用ヘッドランプの反射鏡としているが、本発明は、車両用以外の各種ランプの反射鏡や反射鏡以外の光学的リフレクタに成膜する場合も適用することができる。さらには、光学的リフレクタ以外のワークに成膜するようにしてもよい。
【0057】
また、ワークWにスパッタ成膜する金属膜はアルミニウム膜以外であってもよく、そのスパッタ成膜に真空チャンバ2に供給する不活性ガスについてもアルゴンガスに限定されない。また、プラズマ重合成膜されて保護膜となる材料はヘキサメチルジシロキサン(シリコン)以外のモノマーであってもよい。
【0058】
さらに、スパッタ成膜を行うための電極は上記各実施形態の如きマグネトロン電極30の他、平板スパッタ電極であってもよい。また、本発明は、上記各実施形態のようにプラズマ重合により保護膜を成膜するのに代えて、プラズマCVDにより保護膜を成膜する場合にも適用することができる。
【0059】
また、真空槽1(電極30)を複数設けて連続成膜する場合、その数は上記実施形態2のように2基に限定されず、3基以上であってもよく、各真空槽1内でワークWに対する金属膜及び保護膜の成膜を順に交互に行えばよい。
【0060】
さらに、上記各実施形態では、まず、ワークWの表面に金属膜を成膜し、次いで、その金属膜上に保護膜を成膜するようにしているが、本発明は、ワーク表面に対し金属膜及び保護膜を互いに別の箇所にそれぞれ独立して成膜する場合にも適用することができ、同様の作用効果が得られる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明では、真空槽内でワーク表面に金属膜及び保護膜を成膜する場合、真空槽内に、金属膜となる材料からなるターゲット部を有する電極を配置し、真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、電極に直流電圧を印加して、電極ターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜する一方、不活性ガスの供給及び電極への直流電圧の印加を停止し、かつ真空槽内に反応ガスを供給した状態で、同じ電極に高周波電力を印加することにより、電極で高周波放電を発生させ、反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するようにした。また、請求項2の発明では、真空槽内でワーク表面に金属膜を成膜して、その上に保護膜を成膜する場合、真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、金属膜となる材料からなるターゲット部を有する電極に直流電圧を印加して、電極ターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜し、その後、不活性ガスの供給及び電極への直流電圧の印加を停止し、かつ真空槽内に反応ガスを供給した状態で、同じ電極に高周波電力を印加することにより、電極で高周波放電を発生させ、反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するようにした。従って、これら発明によると、1つの真空槽内でワークに金属膜及び保護膜をそれぞれ成膜でき、成膜装置の規模を小さくしかつ電極の構成を簡素化しつつ、成膜効率を高めることができる。
【0062】
請求項3の発明によると、真空槽及び電極を複数設け、ワークに対する金属膜及び保護膜の成膜を各真空槽内で時間的にずらして交互に行うようにしたことにより、各真空槽の稼働率の向上を図ることができるとともに、ワークの連続生産工程でバッファ装置を要することなく生産ラインを組むことができる。
【0063】
請求項4の発明によると、ワーク表面に対する金属膜の成膜前に、ワークを電極に対し反転させかつ真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、電極に高周波電力を印加して電極で放電を発生させ、電極をスパッタリングするようにしたことにより、金属膜を成膜する際のターゲットとなる電極を容易に清浄化することができる。
【0064】
請求項5の発明によると、電極は、通電により磁界を発生させる電磁石を有するマグネトロン電極としたことにより、マグネトロンスパッタリングで成膜する場合に、請求項1又は2の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
請求項6の発明によると、真空槽内に反応ガスとしてモノマーを供給し、このモノマーの供給状態で電極により高周波グロー放電を発生させ、モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜するようにしたことにより、ワークの金属膜表面上にプラズマ重合成膜させる場合に、請求項1又は2の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
請求項7の発明によると、ワークは光学的リフレクタとし、金属膜はアルミニウムからなし、保護膜はヘキサメチルジシロキサンからなしたことにより、光学的リフレクタの表面に反射膜としてのアルミニウム膜とヘキサメチルジシロキサンからなる保護膜とを成膜する場合に、請求項1又は2の発明と同様の効果が得られる。
【0067】
請求項8の発明によると、真空槽内でワーク表面に金属膜をスパッタ成膜した後、その金属膜上に保護膜を成膜する成膜方法として、真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、金属膜材料からなるターゲット部を有する電極に直流電圧を印加して、電極ターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜し、次いで、不活性ガスの供給及び電極への直流電圧の印加を停止し、かつ真空槽内に保護膜材料からなるモノマーを供給した状態で、同じ電極に高周波電力を印加して、電極で高周波グロー放電を発生させ、モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜することにより、請求項5又は6の発明と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る成膜装置を概略的に示す図である。
【図2】成膜装置の電極の動作状態を示す模式説明図である。
【図3】実施形態1の成膜装置の動作を示すフローチャート図である。
【図4】実施形態2を示す図1相当図である。
【図5】実施形態2の成膜装置のタクト動作を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
A 成膜装置
1,1A,1B 真空槽
2 真空チャンバ
20 不活性ガス供給装置(不活性ガス供給手段)
25 反応ガス供給装置(反応ガス供給手段)
30 マグネトロン電極
30a ターゲット部
31 電磁石
33 コイル電源
34 直流電源
35 高周波電源
W ワーク
Claims (8)
- 真空槽内でワーク表面に金属膜及び保護膜を成膜するようにした成膜装置であって、
真空槽内に配設され、少なくとも一部が、上記金属膜材料からなるターゲット部とされた電極と、
上記電極に直流電圧を印加する直流電源と、
真空槽内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
上記電極に高周波電力を印加する高周波電源と、
真空槽内に上記保護膜材料となる反応ガスを供給する反応ガス供給手段とを備え、
上記不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、直流電源により直流電圧を電極に印加することにより、該電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜を成膜する一方、上記不活性ガス供給手段による不活性ガスの供給及び直流電源による直流電圧の印加を停止し、かつ上記反応ガス供給手段により真空槽内に反応ガスを供給した状態で、高周波電源により上記電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させ、上記反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するように構成されていることを特徴とする成膜装置。 - 真空槽内でワーク表面に金属膜を成膜した後、その金属膜上に保護膜を成膜するようにした成膜装置であって、
真空槽内に配設され、少なくとも一部が、上記金属膜材料からなるターゲット部とされた電極と、
上記電極に直流電圧を印加する直流電源と、
真空槽内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
上記電極に高周波電力を印加する高周波電源と、
真空槽内に上記保護膜材料となる反応ガスを供給する反応ガス供給手段とを備え、
上記不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、直流電源により直流電圧を電極に印加することにより、該電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜を成膜した後、上記不活性ガス供給手段による不活性ガスの供給及び直流電源による直流電圧の印加を停止し、かつ上記反応ガス供給手段により真空槽内に反応ガスを供給した状態で、高周波電源により上記電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させ、上記反応ガスをプラズマ状態で反応させてワーク表面に保護膜を成膜するように構成されていることを特徴とする成膜装置。 - 請求項1又は2の成膜装置において、
少なくとも真空槽及びその内部の電極がそれぞれ複数設けられており、
各真空槽内でのワークに対する金属膜及び保護膜の成膜を、他の真空槽での成膜と時間的にずらして交互に行うように構成されていることを特徴とする成膜装置。 - 請求項1〜3のいずれかの成膜装置において、
ワーク表面に金属膜をスパッタ成膜する前に、ワークを表面が電極に対し反対側に向くように反転させかつ不活性ガス供給手段により真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、高周波電源により電極に高周波電力を印加することにより、電極から放電を発生させて電極のターゲット部をスパッタリングするように構成されていることを特徴とする成膜装置。 - 請求項1〜4のいずれかの成膜装置において、
電極は、通電により磁界を発生させる電磁石を有するマグネトロン電極であることを特徴とする成膜装置。 - 請求項1〜5のいずれかの成膜装置において、
反応ガス供給手段は、反応ガスとしてモノマーを供給するように構成されていて、
上記反応ガス供給手段により真空槽内にモノマーを供給した状態で、高周波電源により電極に高周波電力を印加することにより、電極から高周波グロー放電を発生させ、上記モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜するように構成されていることを特徴とする成膜装置。 - 請求項6の成膜装置において、
ワークは光学的リフレクタであり、
金属膜はアルミニウムからなり、
保護膜はヘキサメチルジシロキサンからなることを特徴とする成膜装置。 - 真空槽内でワーク表面に金属膜を成膜した後、その金属膜上に保護膜を成膜する成膜方法であって、
真空槽内に、少なくとも一部が上記金属膜材料からなるターゲット部とされた電極を配置し、
真空槽内に不活性ガスを供給した状態で、上記電極に直流電圧を印加することにより、該電極のターゲット部をスパッタリングしてワーク表面に金属膜をスパッタ成膜し、
その後、上記不活性ガスの供給及び電極への直流電圧の印加を停止し、かつ真空槽内に上記保護膜材料となるモノマーを供給した状態で、上記電極に高周波電力を印加することにより、電極から高周波グロー放電を発生させ、上記モノマーを分解重合させてワーク表面に保護膜をプラズマ重合成膜することを特徴とする成膜方法。
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