JP3771971B2 - 電気機器の碍子形端子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はコンデンサ等の電気機器に使用される碍子形端子に係り、特に比較的低電圧の機器に使用される碍子形端子に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
図3は、先に本願発明者等が開発した碍子形端子を一部断面で示すもので、低電圧、小容量のコンデンサに使用されるものである。図において、1は碍子、2は頭部に接続のためのネジ部を備えた導体で、その下端部のカシメ構造により碍子1と機械的に一体とされる。3は、このカシメ加工時に、導体2下端部が直接碍子1に触れて局部的に大きな応力が加わることを防止するための環状のカシメ金具である。4は、碍子1と導体2との接触面を経て油やガスが漏洩するのを防止するためのパッキン(0リング)である。
【0003】
5は絶縁油とともにコンデンサの本体を内部に収容するケースの天板で、その円形開口部分の周縁には、天板5をしぼり加工することにより天板5と一体の段付形状の円筒部6が形成されており、碍子1をこの円筒部6に圧入することにより天板5に固定される構造となっている。7は碍子1と天板5との接触面を経て油やガスが漏洩するのを防止するためのパッキン(0リング)である。
そして、コンデンサの本体との接続を行うためのリード線(図示せず)は、導体2の下端に半田付により接続される。
【0004】
以上、図3に示す碍子形端子は、小形でしかし漏洩に対して信頼性が高く、ごく低電圧、小容量のコンデンサには適したものである。
しかしながら、低電圧の範囲であっても、比較的電圧が高くなり(数KV程度)、また、コンデンサとしての構造や組立方法との関係からリード線をネジ留構造とする場合等には、次のような問題点がある。
【0005】
即ち、導体2とリード線との接続部分の構造が大きくなるとともに、リード線の曲がり等の影響も加わって、ケースの天板5とリード線ないしその接続部分との間で放電が発生して絶縁不良を生じる恐れがある。
【0006】
この発明は以上のような問題点を解消するためになされたもので、コンパクトでしかもリード線等課電部分とケースとの電気的絶縁強度の高い碍子形端子を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る電気機器の碍子形端子は、電気機器本体を収容するケースの開口を貫通して取り付けられる中空の碍子、この碍子を貫通する端子ボルト、この端子ボルトの、上記碍子のケース内方端から突出した部分に螺合し、上記碍子を締め付け上記碍子と端子ボルトとを一体化するナット、および上記端子ボルトのケース内方端に取り付けられた、リード線取付用の接続端子を備えた電気機器の碍子形端子において、
上記碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにし、かつ、その碍子のケース内方端面を、その径方向外側が凸面、その径方向内側が凹面となるよう段差を設けたものとするとともに、上記ナットの碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの螺合により上記ナットの凸面が上記碍子の凹面に圧接して上記碍子と端子ボルトとを一体化するとともに、上記碍子の凸面と上記ナットの凹面との間で上記絶縁板を挟持するようにしたものである。
【0008】
また、請求項2に係る碍子形端子は、電気機器本体を収容するケースの開口を貫通して取り付けられる中空の碍子、この碍子を貫通する端子ボルト、この端子ボルトの、上記碍子のケース内方端から突出した部分に螺合し、上記碍子を締め付け上記碍子と端子ボルトとを一体化するナット、および上記端子ボルトのケース内方端に取り付けられた、リード線取付用の接続端子を備えた電気機器の碍子形端子において、
上記碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにし、かつ、そのナットの反碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの凹面と接続端子との間で上記絶縁板を挟持するようにしたものである。
【0009】
また、請求項3に係る碍子形端子は、請求項1または2において、その碍子をケースの開口に圧入することにより上記碍子をケースに固定してなるものにおいて、上記碍子のケース内方端近傍を、その端部へいくに従い外径が減少するテーパ状に形成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるコンデンサ用の碍子形端子を一部断面で示す図である。図において、10はアルミナ等、機械的強度、硬度が共に高い材料からなる中空の碍子、11は両端に雄ネジ部が形成された端子ボルトで、碍子10をその上方から貫通している。そして、この端子ボルト11の頭部雄ネジ部の根元は正六角柱の形状に仕上げられており、同じく正六角柱の形状に形成された碍子10頭部の凹部に嵌合して碍子10と端子ボルト11との回り留めがなされている。12は端子ボルト11の頭部雄ネジ部に螺合する頭部ナット、13、14はバネ座金、平座金である。
なお、図示は省略しているが、外部との接続を行うときは、頭部ナット12、バネ座金13および平座金14を一旦外し、接続リード端部の圧着端子を挿入し、その上にバネ座金13、平座金14を挿入して頭部ナット12により締め付け固定する。
【0011】
15は端子ボルト11の下部雄ネジ部に螺合し碍子10を軸方向に締め付けて碍子10と端子ボルト11とを一体化する締付ナットで、同図A部拡大図に示すように、その碍子対向面は段差を設けたものとなっている。即ち、締付ナット15の径方向内側が凸面15a、その径方向外側が凹面15bに仕上げられている。また、碍子10の下端面も段差が設けられたものとなっており、その径方向内側は凹面10a、その径方向外側は凸面10bにそれぞれ仕上げられている。
【0012】
そして、碍子10の凸面10bと締付ナット15の凹面15bとの間には所定の隙間が設定され、ここにプレスボード等からなる鍔状の絶縁板16が挿入される。17は平座金、18、19はリード線(図示せず)が接続される圧着端子、20はバネ座金、21は端子ボルト11の下端雄ネジ部に螺合するナットで、平座金17、バネ座金20を介して圧着端子18、19を一体に締め付け固定する。
【0013】
22は絶縁油とともにコンデンサの本体を内部に収容するケースの天板で、碍子10の圧入部が貫通する円形の開口が形成されている。23はその天板22の開口の周縁に溶接で一体に固定された段付形状のリング金具で、その凹部にパッキン24(0リング)を嵌め込むことにより、天板22と碍子10との接触面を経て油やガスが漏洩するのを防止している。25は碍子10の中部に形成された段部と天板22との間に挿入された石綿ワッシャで、碍子10が天板22に直接圧接されるのを防止している。26は碍子10と端子ボルト11との接触面を経て油やガスが漏洩するのを防止するためのパッキン(0リング)である。
【0014】
次に、この碍子形端子の組立要領について説明する。先ず、リング金具23にパッキン24を嵌め込んだ状態で、リング金具23を天板22にスポット溶接で一体に接合する。しかる後、石綿ワッシャ25を挟み込んだ状態で碍子10を天板22外方の上方から挿入、リング金具23の小径部に押し込んで圧入し、取付け固定する。この場合、碍子10の下端近傍は、図1に示すように、その端部へいくに従い外径が減少するテーパ部10cに仕上げられているので、圧入操作が円滑になされるとともに、このテーパ部10cには、圧入による金属が付着せずその表面の絶縁性が保たれる。
【0015】
次に、パッキン26を嵌め込んだ状態で、端子ボルト11を碍子10の上端から挿入する。そして、絶縁板16を介在させた状態で端子ボルト11の下部雄ネジ部に締付ナット15を螺合する。これにより、締付ナット15の凸面15aが碍子10の凹面10aに圧接して碍子10と端子ボルト11とを一体化するとともに、碍子10の凸面10bと締付ナット15の凹面15bとの間で絶縁板16を挟持する。
【0016】
ここで重要なことは、碍子10と端子ボルト11とを一体化するための締付ナット15の締付部分に絶縁板16を介在させることなく、絶縁板16を所定位置、姿勢に固定している点である。一般に、絶縁板16はコンデンサの製造段階における、加熱を伴う乾燥工程や、使用後の経年劣化でいわゆる枯れが生じ、その厚さが減少するが、以上の構造を採用することにより、絶縁板16の枯れに影響されることなく、碍子10と端子ボルト11との一体構造が高い信頼性のもとに保たれる。
あとは、平座金17、圧着端子18、19、そしてバネ座金20を挿入、最後にナット21を螺合、締め付けると組立は完了する。
【0017】
以上のように、この実施の形態1の碍子形端子においては、接続端子である圧着端子18、19とケースの天板22との間に絶縁板16を介在させるようにしたので、この間の電気的絶縁強度が増大し、リード線と、ケースとの間における放電発生等の不具合が解消される。また、碍子10の下端はテーパ部10cに仕上げられているので、この部分には碍子10の圧入による金属が付着することがなく、その表面の絶縁性が保たれる。
更に、絶縁板16の存在にかかわらず、締付ナット15が碍子10に直接当接して締め付ける構成となっているので、締付力が長期にわたって保持され、漏洩に対しても信頼性の高い碍子形端子が得られる。
【0018】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2におけるコンデンサ用の碍子形端子を一部断面で示す図である。実施の形態1(図1)と同一または相当する部分には同一の符号を付すことで細部の説明は省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
27は締付ナットで、その上面側(碍子対向側)の形状は図1の締付ナット15のものとほぼ同様であるが、その下面側(反碍子対向側)の形状が異なる。
【0019】
即ち、その径方向内側が凸面27a、その径方向外側が凹面27bに仕上げられている。そして、絶縁板16は、締付ナット27の凹面27bと接続端子の一部である平座金17との間に挟持される形で取り付けられている。
なお、ここでは、パッキン24を嵌め込む段付形状部を、しぼり加工による天板22との一体構造のものとしているが、機能上は図1のものと同様である。
【0020】
次に、組立要領について説明する。ここでは、碍子10を天板22に圧入する前に、碍子10と端子ボルト11との組み合わせが可能となる。即ち、先ず、パッキン26を嵌め込んだ状態で、端子ボルト11を碍子10の上端から挿入し、貫通した端子ボルト11の下部雄ネジ部に締付ナット27を螺合して締め付け、碍子10と端子ボルト11とを一体とする。
次に、パッキン24を嵌め込んだ状態で碍子10を圧入し、天板22に取付け固定する。しかる後、絶縁板16を介在させた状態で、平座金17、圧着端子18、19、そしてバネ座金20を挿入、最後にナット21を螺合、締め付けることにより、絶縁板16と圧着端子18、19とを同時に取付け固定して組立は完了する。
【0021】
以上のように、実施の形態1においては、碍子10への端子ボルト11の取付作業は、碍子10を天板22に圧入した後行う必要があるので、天板22の存在で端子ボルト11取付の作業性がよくないのに対し、この実施の形態2においては、碍子10の圧入作業の前に、単独で碍子10へ端子ボルト11を取り付けることができるので、その分、作業性が向上する。
勿論、締付ナット27によって碍子10と端子ボルト11とを一体に締め付ける部分に絶縁板16が介在しないので、絶縁板16の枯れによって締付力が低下する恐れはない。
【0022】
なお、以上の各実施の形態では、圧入形の碍子形端子について説明したが、例えば、碍子にフランジを取り付けこのフランジによりケースに固定する構造の碍子形端子にも、この発明は同様に適用することができ同等の効果を奏する。
また、コンデンサ用に限らず、リアクトルなど他の種類の電気機器を収容するケースに取り付ける碍子形端子にも、同様に適用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る電気機器の碍子形端子においては、碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにしたので、簡単な構造で、リード線等とケースとの間における放電の発生等の絶縁上の不具合を解消することができる。さらに、その碍子のケース内方端面を、その径方向外側が凸面、その径方向内側が凹面となるよう段差を設けたものとするとともに、上記ナットの碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの螺合により上記ナットの凸面が上記碍子の凹面に圧接して上記碍子と端子ボルトとを一体化するとともに、上記碍子の凸面と上記ナットの凹面との間で上記絶縁板を挟持するようにしたので、絶縁板のいわゆる枯れによる厚さ減少の影響を受けることなく、ナットの締め付けによる碍子と端子ボルトとの強固な一体構造が長期にわたって保たれ、漏れに対して信頼性の高い碍子形端子が得られる。
【0024】
また、請求項2に係る電気機器の碍子形端子においては、碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにしたので、簡単な構造で、リード線等とケースとの間における放電の発生等の絶縁上の不具合を解消することができる。さらに、そのナットの反碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの凹面と接続端子との間で上記絶縁板を挟持するようにしたので、碍子のケースへの取付け作業前に、端子ボルトを碍子に取付け固定することができ、この端子ボルトの碍子への取付時の作業性が向上する。
【0025】
また、請求項3に係る電気機器の碍子形端子は、碍子をケースの開口に圧入することにより上記碍子をケースに固定してなるものにおいて、上記碍子のケース内方端近傍を、その端部へいくに従い外径が減少するテーパ状に形成したので、このテーパ状の部分には、圧入により金属が付着することはなく、その表面の絶縁性が確保され、絶縁の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1における電気機器の碍子形端子を一部断面で示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態2における電気機器の碍子形端子を一部断面で示す図である。
【図3】 従来の電気機器の碍子形端子を一部断面で示す図である。
【符号の説明】
10 碍子、11 端子ボルト、15 締付ナット、16 絶縁板、
18,19 圧着端子、21 ナット、22 天板、27 締付ナット。
Claims (3)
- 電気機器本体を収容するケースの開口を貫通して取り付けられる中空の碍子、この碍子を貫通する端子ボルト、この端子ボルトの、上記碍子のケース内方端から突出した部分に螺合し、上記碍子を締め付け上記碍子と端子ボルトとを一体化するナット、および上記端子ボルトのケース内方端に取り付けられた、リード線取付用の接続端子を備えた電気機器の碍子形端子において、
上記碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにし、
かつ、上記碍子のケース内方端面を、その径方向外側が凸面、その径方向内側が凹面となるよう段差を設けたものとするとともに、上記ナットの碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの螺合により上記ナットの凸面が上記碍子の凹面に圧接して上記碍子と端子ボルトとを一体化するとともに、上記碍子の凸面と上記ナットの凹面との間で上記絶縁板を挟持するようにしたことを特徴とする電気機器の碍子形端子。 - 電気機器本体を収容するケースの開口を貫通して取り付けられる中空の碍子、この碍子を貫通する端子ボルト、この端子ボルトの、上記碍子のケース内方端から突出した部分に螺合し、上記碍子を締め付け上記碍子と端子ボルトとを一体化するナット、および上記端子ボルトのケース内方端に取り付けられた、リード線取付用の接続端子を備えた電気機器の碍子形端子において、
上記碍子のケース内方端と接続端子との間に、鍔状の絶縁板を挿入することにより、上記接続端子およびにこれに接続されるリード線と上記ケースとの間の電気的絶縁強度を補強するようにし、
かつ、上記ナットの反碍子対向面を、その径方向内側が凸面、その径方向外側が凹面となるよう段差を設けたものとし、上記ナットの凹面と接続端子との間で上記絶縁板を挟持するようにしたことを特徴とする電気機器の碍子形端子。 - 碍子をケースの開口に圧入することにより上記碍子をケースに固定してなるものにおいて、上記碍子のケース内方端近傍を、その端部へいくに従い外径が減少するテーパ状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器の碍子形端子。
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