JP3771644B2 - 末梢静脈投与用輸液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元糖、アミノ酸及び電解質を含む栄養補給用の輸液に関し、更に詳細には、使用時に混合した際、中性に近いpHとなるため、静脈炎を惹起しない末梢静脈投与用輸液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
消化器手術の術後患者等は、経口摂取が不可能な場合が多いため、このような患者の栄養管理は、一般に中心静脈からの高カロリー輸液(IVH)により行われている。IVHは、上記患者の栄養状態を改善しかつ良好に保つことにより、患者の回復、治癒を促進することができるものであり、その効果は絶大なものであるため、今や外科治療の分野で広く普及している。
【0003】
一方、IVHは、厳重な管理が必要なことや、感染等の危険性、高血糖等の代謝的合併症の心配などのデメリットも有するため、IVH禁忌の患者以外においても、例えば術前の栄養状態が良好で侵襲度も比較的軽度な患者や、経口摂取不能な期間があまり長期でない患者に対しては、できるだけ末梢静脈から栄養補給を行おうとする傾向もある。
【0004】
いずれにしても、上記栄養補給に用いる製剤としては、糖質、アミノ酸及び電解質を全て含んだ1剤形態のものが理想的である。しかし、糖質としてブドウ糖のような還元糖を用いる場合、アミノ酸とメイラード反応を起こして褐変の原因となるため、通常、2室容器の一方の室に還元糖を電解質と共に収容し、他方の室にアミノ酸を分離収容して製剤化することが行われている。そして、この種製剤では、それぞれの液のpHが、アミノ酸側は通常pH6〜7程度に調整され、還元糖側は糖の安定化、及びリンとカルシウムやマグネシウムとの沈殿防止のため、pH5程度或いはそれより若干低いpHに調整されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記製剤は、使用前に混合して投与されるが、混合後の液は、pH6未満(通常pH5〜5.5程度)の酸性となる。ところが、このような酸性の溶液は、末梢静脈から投与する場合、静脈炎を引き起こす原因となり、投与時間が長くなればなるほどその傾向は高まる一方である。静脈炎は、ひどい痛みを伴い、言語を絶する苦痛を患者に強いるばかりでなく、血栓を生じて肺塞栓や脳塞栓にまで至るおそれがあり、決して軽視できる問題ではない。
【0006】
そこで、現在医療現場では、静脈炎を防止するために、点滴部位を頻繁に変更する等の手段を講じているが、作業が増加、煩雑化し、看護婦に多大な負担を強いているのが実状である。
【0007】
従って、本発明は、還元糖側溶液とアミノ酸側溶液を混合した際、中性に近いpHとなり、静脈炎を惹起しない末梢静脈投与用輸液を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、還元糖側の液の滴定酸度と、還元糖側及びアミノ酸側の両液のpHを特定範囲に調整することにより、混合後の液を中性に近いpHとすることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、還元糖を含有する溶液(A)と、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する溶液(B)の2液からなる脂肪乳剤を含まない輸液において、溶液(A)はその滴定酸度が1以下になるように電解質の一部を含有し、かつpH3.7〜5.0に調整されており、溶液(B)は電解質の残部を含有し、かつpH6.5〜7.4に調整されており、電解質のうち、カルシウム塩及びマグネシウム塩が溶液 (A) に、リン化合物が溶液 (B) に配合され、溶液 (A) に配合される電解質が全て塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛及び塩化亜鉛から選ばれる強電解質であり、両液の体積比(A):(B)が3:1〜1:1であり両液を混合したときpH6.5〜7.2となることを特徴とする末梢静脈投与用輸液を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、還元糖側の溶液(A)は、滴定酸度10以下とすることが必要であるが、滴定酸度1以下とするのがより好ましい。溶液(A)の滴定酸度が10を超えると、両液を混合したときのpHが上記至適範囲から外れがちになる。このような滴定酸度の調整は、還元糖側に配合する電解質の種類を選択することによって行うことができ、具体的には、電解質中の強電解質を溶液(A)にできるだけ多く配合することによって行われるが、特に強電解質のみを配合するのが好ましい。
【0011】
ここで、本発明輸液に用いられる電解質としては、一般の電解質輸液などに用いられる化合物と同様のものを使用できる。具体的には、ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が、カリウム源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が、カルシウム源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等が、マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等が、リン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が、塩素源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルウシム、塩化マグネシウム等が、また亜鉛源としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等がそれぞれ例示され、これらは水和物形態であってもよい。
【0012】
上記電解質のうち、還元糖側の溶液(A)には、前述のようにできるだけ多くの強電解質を配合することが好ましく、強電解質の具体例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を挙げることができる。また、配合すべき残余の電解質は、アミノ酸側の溶液(B)に配合される。なお、溶液(B)に配合される電解質は、強電解質であるか否かを問わない。
【0013】
なお、カルシウム源及びリン源の電解質を配合するにあたっては、両者による沈殿を防ぐために、それぞれ分離して配合するのが好ましく、例えば、カルシウム源を還元糖側溶液(A)に配合し、リン源をアミノ酸側溶液(B)に配合することが好ましい。また更に、マグネシウム源もリン源との沈殿形成のおそれがあるので、上記と同様に、マグネシウム源を還元糖側溶液(A)に配合することが好ましい。
【0014】
また、本発明輸液において、溶液(A)に用いられる還元糖としては、ブドウ糖、フルクトース、マルトース等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を配合することができる。これらのうち、血糖管理の面などの点からいえばブドウ糖を用いるのが好ましく、更に必要に応じて、キシリトール、ソルビトール、グリセリン等の非還元糖の至適量を配合してもよい。還元糖の配合量は、投与経路等の使用目的に応じて適宜決定できるが、溶液(A)及び(B)の混合後の濃度が、3〜10w/v%となる濃度範囲で配合するのが好適である。
【0015】
上記還元糖溶液(A)は、必要に応じてpH調整剤を少量使用して、pH3.7〜5.0、好ましくはpH4.0〜4.5に調整される。溶液(A)のpHが3.7に満たないと、両液を混合したときのpHを前記の範囲に留めるのが困難となり、5.0を超えると、還元糖の分解により液の着色等の品質劣化を来すおそれがある。
【0016】
一方、アミノ酸側溶液(B)は、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含むことが必要であり、使用される各アミノ酸は、一般のアミノ酸輸液と同様、純粋結晶状アミノ酸であるのが好ましい。これらは、通常遊離アミノ酸の形態で用いられるが、特に遊離形態でなくてもよく、薬理学的に許容される塩、エステル、N-アシル誘導体、2種のアミノ酸の塩やペプチドの形態で用いることもできる。
【0017】
アミノ酸側溶液(B)は、必要に応じてpH調整剤を少量添加して、pH6.5〜8.0、好ましくはpH6.5〜7.4に調整される。溶液(B)のpHが6.5に満たないと、上記と同様、混合後のpHを至適範囲に維持できなくなり、8.0を超えると、L-システイン等の酸化され易いアミノ酸がより不安定となり、好ましくない。
【0018】
また、溶液(A)及び(B)の体積比は、(A):(B)=5:1〜1:1の範囲、好ましくは(A):(B)=3:1〜1:1の範囲に調製される。当該体積比が上記範囲を外れると、アミノ酸や還元糖の必要投与量と水への溶解度を考慮すれば、安定な製剤を製造することは困難である。
【0019】
かくして調製される本発明輸液において、溶液(A)はpH3.7〜5.0と従来の輸液に比べてより酸性側にあるため、糖の分解、電解質の沈殿等を有利に防止することができる。それにもかかわらず、この溶液(A)に溶液(B)を混合すると、pH6.0〜7.2という中性に近いpHの溶液となり、静脈炎を惹起するおそれのない輸液を得ることができる。また、本発明輸液は、混合後のpHが6.5〜7.2の範囲となるように設定するのがより好ましい。
【0020】
なお、本発明輸液は、両液とも特定pH域に設定することにより安定化が図られているが、更に必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム等の安定化剤などを、溶液(A)及び(B)のいずれにも適宜添加することができる。
【0021】
本発明輸液のより好ましい例としては、混合後の液の組成として下記の範囲のものが挙げられる。
【0022】
【表2】
ブドウ糖 3〜10 w/v%
Na+ 25〜70 mEq/l
K+ 15〜50 mEq/l
Ca2+ 3〜15 mEq/l
Mg2+ 3〜10 mEq/l
Cl- 25〜70 mEq/l
P 5〜20 mmol/l
Zn2+ 0〜30 μmol/l
L-イソロイシン 1.0〜4.0 g/l
L-ロイシン 2.0〜7.0 g/l
L-リジン 1.5〜7.5 g/l
L-メチオニン 0.5〜2.5 g/l
L-フェニルアラニン 1.0〜4.0 g/l
L-スレオニン 0.8〜3.0 g/l
L-トリプトファン 0.2〜1.2 g/l
L-バリン 0.7〜4.2 g/l
L-アラニン 1.0〜4.2 g/l
L-アルギニン 1.4〜5.5 g/l
L-アスパラギン酸 0.1〜1.7 g/l
L-システイン 0.1〜0.7 g/l
L-グルタミン酸 0.1〜3.0 g/l
L-ヒスチジン 0.8〜2.7 g/l
L-プロリン 0.6〜2.6 g/l
L-セリン 0.3〜1.7 g/l
L-チロシン 0〜0.5 g/l
グリシン 1.0〜4.5 g/l
【0023】
本発明輸液を収容する容器としては特に限定されないが、例えば易剥離性溶着により隔壁が形成されたもの(特開平2-4671号公報、実開平5-5138号公報等)、室間をクリップで挟むことにより隔壁が形成されたもの(特開昭63-309263号公報等)、隔壁に開封可能な種々の連通手段を設けたもの(特公昭63-20550号公報等)などの連通可能な隔壁で隔てられた2室容器が挙げられる。これらのうち、隔壁が易剥離性溶着により形成されたものが、大量生産に適しておりまた連通作業も容易であるので好ましい。
【0024】
また、上記容器の材質としては、医療用容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、これら各ポリマーのブレンドや積層体などが挙げられる。
【0025】
なお、容器への本発明輸液の充填、収容は、常法に従って行うことができ、例えば、各液を各室に不活性ガス雰囲気下で充填後、施栓し、加熱滅菌する方法が挙げられる。ここで、加熱滅菌は、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の公知の方法を採用することができ、必要に応じて二酸化炭素、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
【0026】
更に、上記容器に収容された本発明輸液は、変質、酸化等を確実に防止するために、該容器を脱酸素剤と共にガス非透過性外装容器で包装するのが好ましく、とりわけ容器として隔壁が易剥離性溶着により形成されたものを採用した場合は、外圧により隔壁が連通しないように該隔壁部にて折り畳まれた状態で包装するのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装等を行うこともできる。
【0027】
上記包装に適したガス非透過性外装容器の材質としては、一般に汎用されてる各種材質のフィルム、シート等を使用できる。その具体例としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ホリエステル等、又はこれらの少なくとも1種を含む材質からなるフィルム、シート等が挙げられる。
【0028】
また、脱酸素剤としては、公知の各種のもの、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものを使用することができる。その代表的な市販品の商品名としては、「エージレス」(三菱ガス化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明輸液の投与時には、必要に応じて他の配合薬、例えば各種ビタミン類、微量元素(ミネラル)等を任意に添加配合することもできる。該ビタミン類としては、水溶性及び脂溶性を問わず各種のもの、例えばパルミチン酸レチノール、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸、コレカシフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、フィトナジオン等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1
ブドウ糖、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムを注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖74g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、塩化カルシウム0.61g/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.5、滴定酸度は0.1であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0032】
【表3】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
塩化ナトリウム 8.79 g/l
クエン酸ナトリウム 2.4 g/l
酢酸カリウム 3.93 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
硫酸亜鉛 28.8 mg/l
【0033】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の200mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.7であった。
【0034】
実施例2
ブドウ糖、硫酸マグネシウム及びグルコン酸カルシウムを注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖74g/l、硫酸マグネシウム0.82g/l、グルコン酸カルシウム1.49g/lの組成の糖電解質液(溶液(A))を調製した。なお、この液には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを500ppm添加した。この液のpHは4.5、滴定酸度は1.2であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0035】
【表4】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
塩化ナトリウム 4.22 g/l
酢酸ナトリウム 8.96 g/l
塩化カリウム 5.06 g/l
リン酸水素二カリウム 2.71 g/l
硫酸亜鉛 9.1 mg/l
【0036】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の200mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.7であった。
【0037】
実施例3
ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを4.0として、ブドウ糖74g/l、塩化ナトリウム2.93g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、塩化カルシウム0.61g/l、硫酸亜鉛9.6mg/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液の滴定酸度は0.2であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0038】
【表5】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
クエン酸ナトリウム 2.4 g/l
酢酸カリウム 3.93 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
【0039】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の200mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.7であった。
【0040】
実施例4
ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを4.0として、ブドウ糖74g/l、塩化ナトリウム1.76g/l、塩化カリウム2.11g/l、硫酸マグネシウム0.82g/l、グルコン酸カルシウム1.49g/l、硫酸亜鉛3.8mg/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液の滴定酸度は7.5であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0041】
【表6】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
酢酸ナトリウム 8.96 g/l
リン酸水素二カリウム 2.71 g/l
【0042】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の250mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.7であった。
【0043】
実施例5
ブドウ糖、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムを注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖107g/l、硫酸マグネシウム1.23g/l、塩化カルシウム0.73g/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.5、滴定酸度は0.1であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0044】
【表7】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
塩化ナトリウム 5.66 g/l
クエン酸ナトリウム 1.94 g/l
酢酸カリウム 2.30 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
硫酸亜鉛 19.2 mg/l
【0045】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0046】
実施例6
ブドウ糖、硫酸マグネシウム及びグルコン酸カルシウムを注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖107g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、グルコン酸カルシウム1.87g/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.5、滴定酸度は1.6であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0047】
【表8】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
塩化ナトリウム 2.72 g/l
酢酸ナトリウム 9.27 g/l
塩化カリウム 5.22 g/l
リン酸水素二カリウム 2.72 g/l
硫酸亜鉛 9.6 mg/l
【0048】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0049】
実施例7
ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを4.0として、ブドウ糖107g/l、塩化ナトリウム2.83g/l、硫酸マグネシウム1.23g/l、塩化カルシウム0.73g/l、硫酸亜鉛9.6mg/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液の滴定酸度は0.2であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0050】
【表9】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
クエン酸ナトリウム 1.94 g/l
酢酸カリウム 2.30 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
【0051】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0052】
実施例8
ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを4.0として、ブドウ糖107g/l、塩化ナトリウム1.36g/l、塩化カリウム2.61g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、グルコン酸カルシウム1.87g/l、硫酸亜鉛4.8mg/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液の滴定酸度は8.0であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0053】
【表10】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
酢酸ナトリウム 9.27 g/l
リン酸水素二カリウム 2.72 g/l
【0054】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0055】
実施例9
ブドウ糖、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを5.0として、ブドウ糖107g/l、塩化ナトリウム1.14g/l、乳酸ナトリウム3.27g/l、硫酸マグネシウム0.89g/l、グルコン酸カルシウム1.60g/l、硫酸亜鉛2.0mg/lの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液の滴定酸度は2.0であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH8.0の下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。
【0056】
【表11】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 13.1 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
リン酸水素二カリウム 5.8 g/l
【0057】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の700ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれポリエチレン製2室容器の各室に充填し、溶液(B)については窒素置換を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、末梢静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、7.2であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の末梢静脈投与用輸液は、使用時に還元糖側溶液とアミノ酸側溶液を混合した際中性に近いpHとなるため、静脈炎の発症を防止することができる。
Claims (2)
- 還元糖を含有する溶液(A)と、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する溶液(B)の2液からなる脂肪乳剤を含まない輸液において、溶液(A)はその滴定酸度が1以下になるように電解質の一部を含有し、かつpH3.7〜5.0に調整されており、溶液(B)は電解質の残部を含有し、かつpH6.5〜7.4に調整されており、電解質のうち、カルシウム塩及びマグネシウム塩が溶液(A)に、リン化合物が溶液(B)に配合され、溶液(A)に配合される電解質が全て塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛及び塩化亜鉛から選ばれる強電解質であり、両液の体積比(A):(B)が3:1〜1:1であり、溶液 (A) 及び (B) の混合後の組成が、
ブドウ糖 3〜 10 w/v %
Na + 25 〜 70 mEq/l
K + 15 〜 50 mEq/l
Ca 2+ 3〜 15 mEq/l
Mg 2+ 3〜 10 mEq/l
Cl - 25 〜 70 mEq/l
P 5〜 20 mmol/l
Zn 2+ 0〜 30 μ mol/l
L- イソロイシン 1.0 〜 4.0 g/l
L- ロイシン 2.0 〜 7.0 g/l
L- リジン 1.5 〜 7.5 g/l
L- メチオニン 0.5 〜 2.5 g/l
L- フェニルアラニン 1.0 〜 4.0 g/l
L- スレオニン 0.8 〜 3.0 g/l
L- トリプトファン 0.2 〜 1.2 g/l
L- バリン 0.7 〜 4.2 g/l
L- アラニン 1.0 〜 4.2 g/l
L- アルギニン 1.4 〜 5.5 g/l
L- アスパラギン酸 0.1 〜 1.7 g/l
L- システイン 0.1 〜 0.7 g/l
L- グルタミン酸 0.1 〜 3.0 g/l
L- ヒスチジン 0.8 〜 2.7 g/l
L- プロリン 0.6 〜 2.6 g/l
L- セリン 0.3 〜 1.7 g/l
L- チロシン 0〜 0.5 g/l
グリシン 1.0 〜 4.5 g/l
であり、かつ当該混合液がpH6.5〜7.2となることを特徴とする末梢静脈投与用輸液。 - 易剥離性溶着により形成された隔壁で隔てられたガス透過性プラスチック製2室容器の各室に、溶液(A)と溶液(B)がそれぞれ収容され、加熱滅菌後、該隔壁部にて折り畳まれた状態で、脱酸素剤と共にガス非透過性外装容器で包装された請求項1記載の末梢静脈投与用輸液。
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