JP4171216B2 - 含硫化合物と微量金属元素を含む輸液製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時変化を受けることなく保存でき、使用時に細菌による汚染なく薬剤の配合を行うことができる複数の室を有する輸液容器に収容されている輸液製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
経口・経腸管栄養補給が不能または不十分な患者には、経静脈からの高カロリー輸液の投与が行われている。このときに使用される輸液製剤としては、糖製剤、アミノ酸製剤、電解質製剤、混合ビタミン製剤、脂肪乳剤などが市販されており、病態などに応じて用時に病院で適宜混合して使用されていた。
しかし、病院におけるこのような混注操作は煩雑なうえに、かかる混合操作時に細菌汚染の可能性が高く不衛生であるという問題がある。このため連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器が開発され病院で使用されるようになった。
【0003】
一方、輸液中には、通常、微量金属元素(銅、鉄、亜鉛、マンガンなど)が含まれていないことから輸液の投与が長期になると、患者の唇がひび割れたり、造血機能が低下したりする、いわゆる微量金属元素欠乏症を発症する。微量金属元素は輸液と混合した状態で保存すると、化学反応によって品質劣化の原因となる。このため病院では、細菌汚染の問題をかかえながらも依然として輸液を投与する直前に微量金属元素が混合されているのが現状である。
【0004】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器を用い、用時に細菌汚染の可能性なく微量金属元素を混入することができ、かつ、保存安定性にも優れた輸液製剤の創製研究を開始した。
本発明者らは、システインまたはシスチンなどの含硫アミノ酸を含むアミノ酸輸液と微量金属元素とを隔離して保存することを試みた。しかしながら、含硫アミノ酸を含むアミノ酸輸液を一室に充填し、微量金属元素収容容器を同室に収容すると、該アミノ酸輸液と微量金属元素とは隔離してあるにもかかわらず、微量金属元素を含む溶液が不安定であるという問題が生じることを知見した。上記室と微量金属元素収容容器を構成する材料を種々変更して検討したが、通常入手し得る樹脂材料である限り、微量金属元素溶液を安定化することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微量金属元素が安定に存在していることを特徴とする含硫化合物を含む溶液を有する輸液製剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、連通可能な隔壁手段で区画されている複室からなる輸液容器において、その一室に硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が収容され、微量金属元素収容容器は他の室に収容することにより、微量金属元素を含む溶液が安定であるという思いがけない知見を得た。
本発明者らは、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室に硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が充填され、他の室に微量金属元素収容容器が収納されていることを特徴とする輸液製剤、
(2) 硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が、含硫アミノ酸または/および亜硫酸塩を含むアミノ酸輸液であり、微量金属元素が銅であることを特徴とする前記(1)に記載の輸液製剤、
(3) 微量金属元素収容容器が収納されている第1室と、硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が充填されている第2室とが、連通可能な隔壁手段を介して隣接していることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の輸液製剤、
(4) 微量金属元素収容容器を収納している室に、糖質輸液または/および電解質輸液が充填されていることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の輸液製剤、
に関する。
【0008】
また、本発明は、
(5) 第1室または第2室に、ビタミン収容容器が収納されていることを特徴とする前記(3)または(4)に記載の輸液製剤、
(6) 微量金属元素収容容器またはビタミン収容容器と、それを収納している室とが、外部からの押圧によって連通可能であることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の輸液製剤、
(7) 第1室または第2室に充填されている溶液が、さらにビタミンを含有していることを特徴とする前記(3)〜(5)に記載の輸液製剤、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(8) 複数の全ての室および収容容器を、外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄2〜200μmol/L、銅0.5〜40μmol/L、マンガン0〜10μmol/L、亜鉛2〜200μmol/L、ヨウ素0〜5μmol/Lであることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の輸液製剤、
に関する。
【0010】
また、本発明は、
(9) さらに、ビタミンB10.4〜30mg/L、ビタミンB20.5〜6.0mg/L、ビタミンB60.5〜8.0mg/L、ビタミンB120.5〜50μg/L、ニコチン酸類5〜80mg/L、パントテン酸類1.5〜35mg/L、葉酸50〜800μg/L、ビタミンC12〜200mg/L、ビタミンA400〜6500IU/L、ビタミンD0.5〜10μg/L、ビタミンE1.0〜20mg/L、ビタミンK0.2〜4mg/L、ビオチン5〜120μg/Lを含有することを特徴とする前記(8)に記載の輸液製剤、
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(10) 複室輸液製剤において、含硫アミノ酸溶液を収容している室と別室に微量金属元素収容容器を収納することを特徴とする輸液製剤の保存安定化方法、
(11) 微量金属元素が、銅であることを特徴とする前記(10)に記載の輸液製剤の保存安定化方法、
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる輸液製剤においては、連通可能な隔壁手段で区画されている複室からなる輸液容器を用いる。かかる輸液容器としては、特に限定されず、公知のものを用いてよい。具体的には、例えば、複数の室が弱シール部により区画され、輸液容器の一室を外部より押圧することにより当該室が隣接する他の室と連通する輸液容器が、好適な例として挙げられる。また、輸液容器を複数の室に区画する隔壁に破断可能な流路閉塞体が設けられている構造のものなども挙げられる。
【0013】
上記輸液容器における各室の形成材料としては、貯蔵する薬剤の安定性上問題のない樹脂であればよく、比較的大容量の室を形成する部分は、柔軟な熱可塑性樹脂、例えば軟質ポリプロピレンやそのコポリマー、ポリエチレンおよび/またはそのコポリマー、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル類もしくは軟質塩化ビニル樹脂など、またはそれらの内適当な樹脂を混合した素材、またナイロンなど他の素材も含めて前記素材を多層に成型したシートなどが利用可能である。
【0014】
本発明にかかる輸液製剤は、上述のような連通可能な隔壁手段で区画されている複室からなる輸液容器において、その一室に硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が充填され、他の室に微量金属元素収容容器が収納されていることを特長とする。このようにすることにより、硫黄原子を含む化合物を含有する溶液を有する輸液製剤において、微量金属元素、特に銅イオンを安定化することができる。
【0015】
上記「硫黄原子を含む化合物(本発明において、含硫化合物ともいう。)」としては、特に限定されないが、システインまたはシスチンなどの含硫アミノ酸が挙げられる。また、かかる化合物としては、安定化剤として用いられている亜硫酸塩なども挙げられる。前記亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウムまたはロンガリットなどが挙げられる。本発明の輸液製剤には、上記の含硫化合物が単独で含有されていてもよいし、2種以上の含硫化合物が含有されていてもよい。
上記含硫化合物の含有量は、特に限定されないが、含硫アミノ酸の場合、その含有量は約0.1〜10g/Lであることが好ましく、亜硫酸塩の場合、その含有量は約0.02〜0.5g/Lであることが好ましい。
【0016】
上記「含硫化合物を含む溶液」としては、上記含硫化合物を含めば、特に限定されないが、含硫アミノ酸または/および亜硫酸塩を含むアミノ酸輸液が好適な例として挙げられる。
前記アミノ酸輸液としては、公知のものを用いてよい。例えば、アミノ酸輸液中に含有されるアミノ酸としては、必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。より具体的には、例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシンまたはL−グリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩等の無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でも良い。
【0017】
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されていることが好ましい。
すなわち、L−ロイシン約0.8〜10.0g/L、好ましくは約2.0〜5.0g/L、L−イソロイシン約0〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−バリン約0.3〜8.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−リジン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜4.5g/L、L−トレオニン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−トリプトファン約0.08〜1.5g/L、好ましくは約0.2〜1.0g/L、L−メチオニン約0.2〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、L−フェニルアラニン約0.4〜6.0g/L、好ましくは約1.0〜2.5g/L、
【0018】
L−システイン約0.03〜1.0g/L、好ましくは約0.15〜0.5g/L、L−チロシン約0.02〜1.0g/L、好ましくは約0.05〜0.20g/L、L−アルギニン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜3.5g/L、L−ヒスチジン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アラニン約0.4〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−プロリン約0.2〜5.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−セリン約0〜3.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、グリシン約0.3〜6.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アスパラギン酸約0〜2.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、L−グルタミン酸約0〜3.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0019】
上記アミノ酸輸液のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約2.5〜10、好ましくは約5〜8に調製するのが好ましい。
【0020】
本発明の輸液製剤において、微量金属元素を含有する液(以下、「微量金属元素含有溶液」ともいう)を収容する微量金属元素収容容器は、含硫化合物を含有する溶液を充填する室と異なる室に収納されている。微量金属元素収容容器の収納方法としては、例えば室内の液中に微量金属元素収容容器を浮遊させてもよいが、微量金属元素収容容器の周縁シール部の端を、収納する室の周縁に挟み込んでシールすることにより、吊着するのが好ましい。この場合、シールをしやすくするために、微量金属元素含有溶液が収納されている室の素材を、微量金属元素収容容器の最内層の素材と同一にするのが一般的である。
また、微量金属元素収容容器は、それを収納している室と連通可能であることが好ましい。そのための手段としては、公知手段を用いてよく、具体的には、上述したように、微量金属元素収容容器とそれを収納している室が弱シール部または肉厚が約100μm以下の薄膜により区画され、微量金属元素収容容器を外部より押圧することにより当該容器がそれを収納している室と連通する構造となっていることが好ましい。また、微量金属元素収容容器は、それを収納している室との隔壁に破断可能な流路閉塞体を有していてもよい。
【0021】
上記微量金属元素としては、例えば銅、鉄、マンガン、亜鉛などが挙げられる。微量金属元素収容容器内の微量金属元素は、微量金属元素もしくは微量金属元素を含む化合物またはそれらを含有する溶液もしくは懸濁液などであってよい。また、所望によって、その他の成分が微量金属元素収容容器内に存在していても良い。微量金属元素収容容器内において、鉄はコロイドとして、また銅、マンガン、亜鉛は水に溶解させて、微量金属元素収容容器に充填するのが好ましい。但し、マンガン、亜鉛は、アミノ酸含有溶液または糖含有溶液と混合して用いることもできる。
【0022】
微量金属元素含有溶液において、銅の供給源としては、例えば硫酸銅などが挙げられ、製剤中の全ての溶液を混合した溶液中に約0.5〜40μmol/L、好ましくは約1〜20μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
鉄の供給源としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄などが挙げられ、製剤中の全ての溶液を混合した溶液中に約2〜200μmol/L、好ましくは約5〜100μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
マンガンの供給源としては、例えば塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、製剤中の全ての溶液を混合した溶液中に約0〜10μmol/L、好ましくは約0〜5μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
亜鉛の供給源としては、例えば塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられ、製剤中の全ての溶液を混合した溶液中に約2〜300μmol/L、好ましくは約5〜150μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0023】
微量金属元素含有溶液のpHは、約4.0〜7.5、好ましくは約4.5〜6.5に調製するのが好ましい。
【0024】
上記「微量金属元素収容容器を収納している室」には、溶液が充填されていてもよいし、充填されていなくてもよい。なかでも、前記室には、糖質輸液もしくは電解質輸液のいずれかまたはそれらの混合物が収納されていることが好ましい。
【0025】
上記糖質輸液は、公知のものを用いてよい。かかる糖質輸液中に含有される糖としては、従来から各種輸液に慣用されるものでよく、例えばブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示される。その中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースなどの還元糖が好ましく、特に血糖管理などの点で、ブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0026】
上記糖質輸液は、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約2〜6、好ましくは約3.5〜5に調製されていることが好ましい。
また、本発明の輸液製剤において全ての溶液を混合した溶液中にこれらの糖は、約50〜400g/L、好ましくは約100〜200g/Lとなるように配合するのが好ましい。
さらに、上記糖質輸液は、下記する電解質が、下記する濃度で含有されていても良い。
【0027】
上記電解質輸液は、公知のものを用いてよい。かかる電解質輸液中に含有される電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、リンなど無機成分の水溶性塩、例えば塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリセロリン酸塩などが挙げられる。
【0028】
ナトリウムイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは乳酸ナトリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カリウムイオン供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウムまたは乳酸カルシウムなどがあげられ、全ての溶液を混合した溶液中に約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/L、さらに好ましくは約15〜30mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0029】
カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウムまたは酢酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0030】
リン供給源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはグリセロリン酸カリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/L、さらに好ましくは約3〜10mmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
クロルイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0031】
本発明に係る輸液製剤の好ましい態様として、微量金属元素収容容器が収納されている第1室と、硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が充填されている第2室とが、連通可能な隔壁手段を介して隣接している輸液製剤が挙げられる。
かかる輸液製剤の具体的態様を、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る輸液製剤を収納する輸液容器の平面図である。該輸液容器は、外袋2内に第1室(図中の符号4)と第2室(図中の符号5)を有する。第1室と第2室は連通可能部3が形成されており、第1室4または第2室5を押圧することにより、連通可能部3が剥離して薬剤が外気に触れることなく第1室4と第2室5が連通される。
【0032】
また、微量金属元素収容容器6が、第1室4内に吊着されており、外側から押圧することにより破袋され、第1室4と連通する。より具体的には、微量金属元素収容容器6の周縁シール部の端を、第1室4の周縁に挟み込んでシールすることにより吊着されている。また、用時に室の外側から押圧して破袋できるように、微量金属元素収容容器は、易開封性シールで第1室4と区画されているか、または肉厚約100μm以下の薄膜からなることが好ましい。
【0033】
本態様の輸液製剤では、図1に示す輸液容器の第1室4に、溶液が充填されていてもよいし、充填されていなくてもよい。なかでも、上述のように、前記第1室4には、糖質輸液または/および電解質輸液が充填されていることが好ましい。また、微量金属元素収容容器6には、上述したような微量金属元素の液が充填されている。さらに、図1に示す輸液容器の第2室5には、上述したような含硫化合物を含有する溶液が充填されている。
【0034】
図1に示す輸液容器には、さらに、第2室5と連通する閉塞された薬液流出口8が設けられており、患者への内部薬液の注入のための輸液セットとの接続、さらにはシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられる。
【0035】
本発明の輸液製剤を収納する輸液容器の各室は気体および液体を通さない性質の外袋2に収納されていることが好ましい。さらに、脱酸素剤9がガスバリヤー性外袋2に収納されているのが好ましい。このようにすることにより、本発明の輸液製剤の成分、特にアミノ酸などの酸化分解されやすい成分の酸化分解を抑えることができるという利点がある。脱酸素剤9を封入する代わりに、または脱酸素剤9を封入するとともに、所望により外袋2内に不活性ガスを充填してもよい。さらに、光分解性ビタミンなどの光安定性に乏しい成分を充填する場合には、外袋に遮光性をもたせるのが好ましい。
【0036】
上記外袋に適した材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルムもしくはシートを使用することができる。例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなどガスバリヤー素材のうち少なくとも1種を含むフィルムもしくはシートなどから適宜に選択し、使用することができる。また、上記外袋に遮光性をもたせる場合には、例えば上記フィルムまたはシートにアルミラミネートを施すことにより実施できる。
【0037】
上記外袋内に封入する脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性炭と水、結晶水を有する化合物の無水物、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用いることができる。本発明においては、これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。
【0038】
また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えばエージレス(三菱ガス化学社製)、モデュラン(日本化薬社製)などが挙げられる。
上記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋にいれて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
【0039】
また、上記外袋内に不活性ガスを充填することで酸素を取り除いてもよく、そのような不活性ガスとしては、例えばヘリウムガス、窒素ガスなどが挙げられる。
【0040】
本発明に係る輸液製剤は、さらにビタミンを含むことができる。第1室または第2室にビタミンを溶解してもよいし、さらに、第1室または第2室に、ビタミン収容容器を収納させることができる。かかるビタミン収容容器は、それを収納している室と、外部からの押圧によって連通可能であることが好ましい。その手段は、上述のような公知手段を用いてよい。
より具体的には、図2または図3に示す輸液容器に収納されている輸液製剤が挙げられる。図2に示す輸液容器では、第1室4に、微量金属元素収容容器6とは別に、ビタミン収容容器(図中の符号7)が、上述した微量金属元素収容容器6の収納手段と全く同様にして収納されている。また、図3に示す輸液容器では、第2室5に、ビタミン収容容器(図中の符号7)が、上述した微量金属元素収容容器6の収納手段と全く同様にして収納されている。
【0041】
上記ビタミン収容容器に充填されているビタミン溶液としては、公知のものであってよい。具体的には、上記ビタミン収容容器に脂溶性ビタミン溶液を充填する場合が挙げられる。前記脂溶性ビタミンとしては、例えばビタミンA、ビタミンDまたはビタミンEが挙げられ、所望によりビタミンKを配合することもできる。
ビタミンAとしては、例えばパルミチン酸エステル、酢酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンDとしては例えばビタミンD1、ビタミンD2、ビタミンD3(コレカルシフェロール)およびそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられる。ビタミンE(トコフェロール)としては、例えば酢酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンK(フィトナジオン)としては、例えばフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオンなどの誘導体が挙げられる。
【0042】
これらの脂溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンAを約400〜6500IU/L、好ましくは約800〜4000IU/L、ビタミンD(コレカルシフェノールとして)を約0.5〜10μg/L、好ましくは約1.0〜6.0μg/L、ビタミンE(酢酸トコフェノールとして)を約1.0〜20mg/L、好ましくは約2.5〜12.0mg/L、ビタミンK(フィトナジオンとして)を約0.2〜4mg/L、好ましくは約0.5〜2.5mg/L、配合するのが好ましい。
【0043】
上記ビタミン収容容器には、上記脂溶性ビタミン溶液とともに、または脂溶性ビタミン溶液の代わりに、水溶性ビタミンを充填してもよい。かかる水溶性ビタミンとしては、例えばビタミンB1、ビタミンB2、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミン12、パントテン酸類、ビタミンB6、ニコチン酸類またはビタミンHなどが挙げられる。
かかるビタミンは誘導体であってもよく、具体的にはビタミンB1としては例えば塩酸チアミン、プロスルチアミンまたはオクトチアミンなどが挙げられる。ビタミンB2としては、例えばリン酸エステル、そのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチドまたはフラビンアデニンジヌクレオチドなどが挙げられる。ビタミンCとしては例えばアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。パントテン酸類としては、遊離体に加え、カルシウム塩や還元体であるパンテノールの形態などが挙げられる。ビタミンB6としては、例えば塩酸ピリドキシンなどの塩の形態などが挙げられる。ニコチン酸類としては、例えば、ニコチン酸またはニコチン酸アミドなどが挙げられる。ビタミンB12としては、例えばシアノコバラミンなどが挙げられる。
【0044】
上記水溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に以下の配合割合で配合されるのが好ましい。ビタミンB1(塩酸チアミンとして)を約0.4〜30mg/L、好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB2(リボフラビンとして)を約0.5〜6.0mg/L、好ましくは約0.8〜4.0mg/L、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンとして)を約0.5〜8.0mg/L、好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB12(シアノコバラミンとして)を約0.5〜50μg/L、好ましくは約1.0〜10μg/L、ニコチン酸類(ニコチン酸アミドとして)を約5〜80mg/L、好ましくは約8〜50mg/L、パントテン酸類(パントテン酸として)を約1.5〜35mg/L、好ましくは約3.0〜20mg/L、葉酸を約50〜800μg/L、好ましくは約40〜120μg/L、ビタミンC(アスコルビン酸として)を約12〜200mg/L、好ましくは約20〜120mg/L、ビオチンを約5〜120μg/L、好ましくは約10〜70μg/L、配合するのが好ましい。
【0045】
上記水溶性ビタミンは、ビタミン収容容器に限定されず、図1〜3に示す輸液容器の第1室または第2室に含有されていても良い。
【0046】
本発明の輸液製剤を患者に投与するに際して、外袋を破り、複数の室、すなわち、図1に示す輸液製剤においては、第1室、第2室および微量金属元素収容容器、図2または3に示す輸液製剤においては、第1室、第2室、微量金属元素収容容器およびビタミン収容容器を連通させることにより、各室の薬液を混合する。
本発明の輸液製剤においては、複数の全ての室および収容容器を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、下記の組成であることが好ましい。
【0047】
すなわち、ブドウ糖約50〜400g/L、好ましくは約100〜200g/L、L−ロイシン約0.8〜10.0g/L、好ましくは約2.0〜5.0g/L、L−イソロイシン約0〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−バリン約0.3〜8.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−リジン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜4.5g/L、L−トレオニン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−トリプトファン約0.08〜1.5g/L、好ましくは約0.2〜1.0g/L、L−メチオニン約0.2〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、L−フェニルアラニン約0.4〜6.0g/L、好ましくは約1.0〜2.5g/L、
【0048】
L−システイン約0.03〜1.0g/L、好ましくは約0.15〜0.5g/L、L−チロシン約0.02〜1.0g/L、好ましくは約0.05〜0.20g/L、L−アルギニン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜3.5g/L、L−ヒスチジン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アラニン約0.4〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−プロリン約0.2〜5.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−セリン約0〜3.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、グリシン約0.3〜6.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アスパラギン酸約0〜2.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、L−グルタミン酸約0〜3.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/Lである。
【0049】
さらに、本発明の輸液製剤においては、電解質、微量金属元素として下記成分を含んでいる。すなわち、ナトリウム約20〜80mEq/L、カリウム約10〜40mEq/L、マグネシウム約2〜20mEq/L、カルシウム約2〜20mEq/L、リン約2〜20mmol/L、塩素約20〜80mEq/L、鉄約2〜200μmol/L、銅約0.5〜40μmol/L、マンガン約0〜10μmol/L、亜鉛約2〜200μmol/L、ヨウ素約0〜5μmol/Lである。
【0050】
本発明にかかる輸液製剤は、さらに、下記成分を下記濃度で含有することが好ましい。
すなわち、ビタミンB1(塩酸チアミンとして)を約0.4〜30mg/L、好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB2(リボフラビンとして)を約0.5〜6.0mg/L、好ましくは約0.8〜4.0mg/L、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンとして)を約0.5〜8.0mg/L、好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB12(シアノコバラミンとして)を約0.5〜50μg/L、好ましくは約1.0〜10μg/L、ニコチン酸類(ニコチン酸アミドとして)を約5〜80mg/L、好ましくは約8〜50mg/L、パントテン酸類を約1.5〜35mg/L、好ましくは約3.0〜20mg/L、葉酸を約50〜800μg/L、好ましくは約40〜120μg/L、ビタミンC(アスコルビン酸として)を約12〜200mg/L、好ましくは約20〜120mg/L、ビタミンAを約400〜6500IU/L、好ましくは約800〜4000IU/L、ビタミンD(コレカルシフェノールとして)を約0.5〜10μg/L、好ましくは約1.0〜6.0μg/L、ビタミンE(酢酸トコフェノールとして)を約1.0〜20mg/L、好ましくは約2.5〜12.0mg/L、ビタミンK(フィトナジオンとして)を約0.2〜4.0mg/L、好ましくは約0.5〜2.5mg/L、ビオチンを約5〜120μg/L、好ましくは約10〜70μg/L、含有していることが好ましい。
【0051】
本発明にかかる輸液製剤において、複数の全ての室および収容容器を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物のpHは、約4〜7となるようにするのが好ましい。
【0052】
【実施例】
〔実施例1〕
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質溶液を溶解し、酢酸でpHを4.4とした後、ろ過して、表1に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸および電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを6.5とした後、ろ過し、表2に示した組成の溶液(B)を調製した。
これとは別に、コンドロイチン硫酸ナトリウムの注射用蒸留水溶液に、塩化第二鉄の注射用蒸留水溶液と水酸化ナトリウムの注射用蒸留水溶液を交互に添加しながら、所定量の塩化第二鉄を添加した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガンを添加した後、pHを水酸化ナトリウムまたは塩酸で5.3に調整し、注射用蒸留水で液量を調整し、表3に示した組成の溶液(C)を調製した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムは濃度5.0g/Lとなるように添加した。
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した小袋に、溶液(C)2mLを充填し、溶着した。この小袋を微量金属元素収容容器(図1の符号6)としてポリエチレン製容器第1室(図1の符号4)に予め挟着した。該第1室4と第2室(図1の符号5)のそれぞれに、溶液(A)の600mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い、108℃で20分間、高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。このようにして、図1に示した輸液容器に収納された本発明に係る輸液製剤を製造した。
【0053】
〔実施例2〕
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質水溶液を溶解し、酢酸でpHを4.4とし、糖電解質液を調製した。さらに、ビタミンB1(塩酸チアミン)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、パンテノールおよびビオチンを注射用蒸留水に溶解し、これを上記の糖電解質液と混合後、ろ過して表1に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸、ニコチン酸アミド、葉酸および電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを6.0とした後、ろ過し、下記表に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には安定剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度200mg/Lとなるように添加した。
【0054】
これとは別に、ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)およびビタミンK(フィトナジオン)を、ポリソルベート80(溶液(D)中の濃度10g/L)、ポリソルベート20(溶液(D)中の濃度2g/L)およびマクロゴール400(溶液(D)中の濃度40g/L)に可溶化した後、注射用蒸留水に溶解した。ビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)、ビタミンC(アスコルビン酸)およびD−ソルビトール(溶液(D)中の濃度20g/L)を加え、水酸化ナトリウムでpH6とした後、ろ過して表4に示した組成の溶液(D)を調製した。
別に、実施例1と同様にして、表3に示した組成の溶液(C)を調製した。
【0055】
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した2つの小袋に、それぞれ溶液(C)2mLおよび溶液(D)2mLを充填し、溶着した。これらの小袋を図2に示される微量金属元素収容容器(図2中の符号6)およびビタミン収容容器(図2中の符号7)のように、ポリエチレン製容器第1室(図2中の符号4)に挟着した。該第1室4および第2室(図2中の符号5)に、溶液(A)の600mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い、108℃で20分間、高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。このようにして、図2に示した輸液容器に収納された本発明に係る輸液製剤を製造した。
【0056】
〔実施例3〕
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質水溶液を溶解し、酢酸でpHを4.4とし、糖電解質液を調製した。さらに、ビタミンB1(塩酸チアミン)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)およびパンテノールを注射用蒸留水に溶解し、これを上記の糖電解質液と混合後、ろ過して表1に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸、ニコチン酸アミド、葉酸および電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを6.0とした後、ろ過し、下記表に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には安定剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
【0057】
これとは別に、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)およびビタミンK(フィトナジオン)を、ポリソルベート80、ポリソルベート20、D−ソルビトールおよびマクロゴール400に可溶化した後、注射用蒸留水に溶解し、更にビタミンC(アスコルビン酸)を加え、水酸化ナトリウムでpH6とした後、ろ過して表4に示した組成の溶液(D)を調製した。
別に、実施例1と同様にして、表3に示した組成の溶液(C)を調製した。
【0058】
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した2つの小袋に、それぞれ溶液(C)2mLおよび溶液(D)4mLを充填し、溶着した。これらの小袋を図2に示される微量金属元素収容容器(図2中の符号6)およびビタミン収容容器(図2中の符号7)のように、ポリエチレン製容器第1室(図2中の符号4)に挟着した。該第1室4および第2室(図2中の符号5)に、溶液(A)の700mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い、108℃で20分間、高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。このようにして、図2に示した輸液容器に収納された本発明に係る輸液製剤を製造した。
【0059】
〔実施例4〕
溶液(A)、(B)、(C)および(D)は、実施例3と全く同様にして調整した。
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した2つの小袋に、それぞれ溶液(C)2mLおよび溶液(D)2mLを充填し、溶着した。溶液(C)が入っている小袋を図3に示される微量金属元素収容容器(図3中の符号6)のように、ポリエチレン製容器第1室(図3中の符号4)に挟着した。また、溶液(D)が入っている小袋を図3に示されるビタミン収容容器(図3中の符号7)のように、ポリエチレン製容器第2室(図3中の符号5)に挟着した。該第1室4および第2室5に、溶液(A)の700mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い、108℃で20分間、高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。このようにして、図3に示した輸液容器に収納された本発明に係る輸液製剤を製造した。
【0060】
〔比較例〕
溶液(A)、(B)および(C)を、その組成を下記表のように変更した以外は、実施例1と全く同様にして調整した。但し、溶液(B)には安定剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した小袋に、溶液(C)2mLを充填し、溶着した。この小袋を微量金属元素収容容器(図4の符号6)としてポリエチレン製容器第2室(図4の符号4)に予め挟着した。該第1室4と第2室(図4の符号5)のそれぞれに、溶液(A)の600mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い、108℃で20分間、高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。このようにして、図4に示した輸液容器に収納された輸液製剤を製造した。
【0061】
実施例1〜4および比較例における溶液(A)、(B)、(C)および(D)の組成を下記表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【表4】
【0065】
〔安定性試験〕
実施例1〜4および比較例で製造された輸液製剤を、60℃で2週間保存した。保存後の容器の外観を肉眼で観察したところ、比較例の輸液製剤においてのみ、微量金属元素収容容器に着色が見られた。
【表5】
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、含硫化合物と微量金属元素を含有する輸液製剤において、微量金属元素を用時に輸液に混合する際に細菌による汚染を全くは排除することができ、かつ、経時変化を受けることなく保存できる輸液製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る輸液製剤の一実施態様で用いる輸液容器の平面図である。
【図2】 本発明に係る輸液製剤の他の実施態様で用いる輸液容器の平面図である。
【図3】 本発明に係る輸液製剤の他の実施態様で用いる輸液容器の平面図である。
【図4】 比較例で製造される輸液製剤において用いる輸液容器の平面図である。
【符号の説明】
1 輸液容器
2 外袋
3 連通可能部
4 輸液容器の第1室
5 輸液容器の第2室
6 微量金属元素収容容器
7 ビタミン収容容器
8 薬液流出口
9 脱酸素剤
Claims (11)
- 外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室に含硫アミノ酸および亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する溶液が充填され、他の室に鉄、マンガンおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の微量金属元素収容容器が収納されていることを特徴とする輸液製剤。
- 微量金属元素が銅であることを特徴とする請求項1に記載の輸液製剤。
- 微量金属元素収容容器が収納されている第1室と、含硫アミノ酸および亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する溶液が充填されている第2室とが、連通可能な隔壁手段を介して隣接していることを特徴とする請求項1または2に記載の輸液製剤。
- 微量金属元素収容容器を収納している室に、糖質輸液または/および電解質輸液が充填されていることを特徴とする請求項1〜3に記載の輸液製剤。
- 第1室または第2室に、ビタミン収容容器が収納されていることを特徴とする請求項3または4に記載の輸液製剤。
- 微量金属元素収容容器またはビタミン収容容器と、それを収納している室とが、外部からの押圧によって連通可能であることを特徴とする請求項1〜5に記載の輸液製剤。
- 第1室または第2室に充填されている溶液が、さらにビタミンを含有していることを特徴とする請求項3〜5に記載の輸液製剤。
- 複数の全ての室および収容容器を、外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄2〜200μmol/L、銅0.5〜40μmol/L、マンガン0〜10μmol/L、亜鉛2〜300μmol/L、ヨウ素0〜5μmol/Lであることを特徴とする請求項1〜7に記載の輸液製剤。
- さらに、ビタミンB10.4〜30mg/L、ビタミンB20.5〜6.0mg/L、ビタミンB60.5〜8.0mg/L、ビタミンB120.5〜20μg/L、ニコチン酸類5〜80mg/L、パントテン酸類1.5〜35mg/L、葉酸50〜800μg/L、ビタミンC12〜200mg/L、ビタミンA400〜6500IU/L、ビタミンD0.5〜10μg/L、ビタミンE1.0〜20mg/L、ビタミンK0.2〜4mg/L、ビオチン5〜120μg/Lを含有することを特徴とする請求項8に記載の輸液製剤。
- 複室輸液製剤において、含硫アミノ酸および亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくと も1種を含有する溶液を収容している室と別室に鉄、マンガンおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の微量金属元素収容容器を収納することを特徴とする輸液製剤の保存安定化方法。
- 微量金属元素が、銅であることを特徴とする請求項10に記載の輸液製剤の保存安定化方法。
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