JP2005035962A - 鉄配合輸液製剤 - Google Patents

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Shigeaki Arita
重明 有田
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晴仁 谷
Yasuhiro Mitsumoto
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Abstract

【課 題】 用時、複数の溶液を混合するに際し、細菌による汚染がない、安定な鉄配合総合輸液製剤を提供すること。
【解決手段】 外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室にアミノ酸溶液が収容され、他の室に糖溶液が収容され、アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれか一方に鉄が配合されていることを特徴とする輸液製剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鉄配合輸液製剤に関し、さらに詳しくは、安定でかつ構造が簡単な鉄配合輸液製剤に関する。
経口・経腸管栄養補給が不能または不十分な患者には、経静脈からの高カロリー輸液の投与が行われている。このときに使用される輸液製剤としては、糖製剤、アミノ酸製剤、電解質製剤、混合ビタミン製剤、脂肪乳剤などが市販されており、病態などに応じて用時に病院で適宜混合して使用されていた。
しかし、病院におけるこのような混注操作は煩雑なうえに、かかる混合操作時に細菌汚染の可能性が高く不衛生であるという問題がある。このため連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器が開発され病院で使用されるようになった。
一方、輸液中には、通常、微量金属元素(鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素など)が含まれていないことから輸液の投与が長期になると、患者の唇がひび割れたり、造血機能が低下したりする、いわゆる微量金属元素欠乏症を発症する。微量金属元素は輸液と混合した状態で保存すると、化学反応によって品質劣化の原因となる。このため病院では、細菌汚染の問題をかかえながらも依然として輸液を投与する直前に微量金属元素が混合されているのが現状である。
かかる現状に鑑み、本発明者らは、先に、酸素の非存在下において、ヨウ素とそれ以外の微量金属元素(鉄など)とを同じ一室に収容すると、意外にも、従来安定と考えられていたヨウ素とそれ以外の微量金属が反応し、沈殿を生じるという知見を得た。そして、この問題を解決するために、研究を重ね、鉄などの微量金属溶液とヨウ素イオン溶液を別々に収納することができる複室輸液容器を有する輸液容器を採用し、用時に複数の輸液容器に保存されている各種溶液を連通させることによって混合し、前記課題を解決し、特許出願した(特許文献1)。
しかし、前記既知輸液製剤は、アミノ酸溶液、糖溶液、および鉄含有溶液をそれぞれ別の室に収納するものであるため、少なくとも3つの室を有し、ヨウ素イオン含有溶液をさらに独立して収納するものでは4つの室を有し、輸液製剤の構成が複雑になるという難点がある。
特開平2003−160501号公報。
本発明の目的は、用時、複数の溶液を混合するに際し、細菌による汚染がない、鉄配合輸液製剤を提供するものである。本発明の他の目的は、経時変化を受けることなく保存できる鉄配合輸液製剤を提供するものである。本発明のさらに他の目的は、公知の鉄配合輸液製剤よりも簡単な構成である鉄配合輸液製剤を提供するものである。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、外部からの押圧によって連結可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室にアミノ酸溶液を、他の室に糖溶液を収納し、アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれか一方に鉄を配合した輸液製剤は、その構成が既知のものよりも簡単であるにもかかわらず、意外にも鉄が長期に安定であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)外部からの押圧によって連結可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室にアミノ酸溶液が収容され、他の室に糖溶液が収容され、アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれか一方に鉄が配合されていることを特徴とする輸液製剤、
(2)複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄1〜200μmol/L、銅0〜40μmol/L、マンガン0〜10μmol/L、亜鉛0〜300μmol/L、ヨウ素0〜5μmol/Lであることを特徴とする前記(1)記載の輸液製剤、
(3)糖溶液にビタミンBが配合されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の輸液製剤、
(4)複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物のビタミンB濃度が、0.1〜30mg/Lであることを特徴とする前記(3)に記載の輸液製剤、
(5)前記輸液容器がガスバリアー性外袋に収容され、輸液容器とガスバリアー性外袋との空間部が、実質上酸素の存在しない状態にあることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の輸液製剤、
(6)前記輸液容器がガスバリアー性外袋に収容され、輸液容器とガスバリアー性外袋との空間部に、酸素検知剤が配置されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の輸液製剤、
に関する。
本発明の輸液製剤は、鉄欠乏症の発症を伴わない輸液製剤であり、また長期に保存しても安定な輸液製剤であり、さらに従来の鉄配合輸液製剤に較べて室数が少ない簡単な構成の鉄配合輸液製剤であるという優れた効果を有するものである。
本発明にかかる輸液製剤においては、連通可能な隔壁手段で区画されている複室からなる輸液容器を用いる。かかる輸液容器としては、特に限定されず、公知のものを用いてよい。具体的には、例えば、複数の室が弱シール部により区画され、輸液容器の一室を外部より押圧することにより当該室が隣接する他の室と連通する輸液容器が、好適な例として挙げられる。また、輸液容器を複数の室に区画する隔壁に破断可能な流路閉塞体が設けられている構造のものなども挙げられる。
前記輸液容器における各室の形成材料としては、貯蔵する薬剤の安定性上問題のない樹脂であればよく、比較的大容量の室を形成する部分は、柔軟な熱可塑性樹脂、例えば軟質ポリプロピレンやそのコポリマー、ポリエチレンおよび/またはそのコポリマー、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル類もしくは軟質塩化ビニル樹脂など、またはそれらの内適当な樹脂を混合した素材、またナイロンなど他の素材も含めて前記素材を多層に成型したシートなどが利用可能である。
本発明にかかる輸液製剤は、上述のような連通可能な隔壁手段で区画されている複室からなる輸液容器において、その一室にアミノ酸溶液が収容され、他の室に糖溶液が収容されており、かつアミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれかに鉄が配合されていることを特長とする。このようにすることにより、長期に安定なアミノ酸溶液と糖溶液とを有し、かつ鉄が配合されてなる輸液製剤が得られる。
前記アミノ酸溶液としては、公知のアミノ酸輸液を用いてよい。例えば、アミノ酸溶液中に含有されるアミノ酸としては、必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。より具体的には、例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシンまたはグリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩等の無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオニンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でも良い。
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されていることが好ましい。
すなわち、L−ロイシン約0.8〜10.0g/L、好ましくは約2.0〜5.0g/L、L−イソロイシン約0〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−バリン約0.3〜8.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−リジン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜4.5g/L、L−スレオニン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−トリプトファン約0.08〜1.5g/L、好ましくは約0.2〜1.0g/L、L−メチオニン約0.2〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、L−フェニルアラニン約0.4〜6.0g/L、好ましくは約1.0〜2.5g/L、L−システイン約0.03〜1.0g/L、好ましくは約0.15〜0.5g/L、L−チロシン約0.02〜1.0g/L、好ましくは約0.05〜0.20g/L、L−アルギニン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜3.5g/L、L−ヒスチジン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アラニン約0.4〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−プロリン約0.2〜5.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−セリン約0〜3.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、グリシン約0.3〜6.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アスパラギン酸約0〜2.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、L−グルタミン酸約0〜3.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
前記アミノ酸輸液のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約2.5〜10、好ましくは約5〜8に調整するのが好ましい。
前記糖溶液は、公知のものを用いてよい。かかる糖溶液中に含有される糖としては、従来から各種輸液に慣用されるものでよく、例えばブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示される。その中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースなどの還元糖が好ましく、特に血糖管理などの点で、ブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
前記糖溶液は、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約2〜6、好ましくは約3.5〜5に調整されていることが好ましい。
また、本発明の輸液製剤において全ての溶液を混合した溶液中にこれらの糖は、約50〜400g/L、好ましくは約100〜200g/Lとなるように配合するのが好ましい。
さらに、前記糖溶液は、ビタミンBが配合されていても良い。ビタミンBの配合量は、全ての溶液を混合した溶液中に、0.1〜30mg/Lとなるようにするのが好ましい。
さらにまた、前記糖溶液は、下記する電解質が、下記する濃度で含有されていても良い。
前記電解質は、公知のものを用いてよい。かかる電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、リンなど無機成分の水溶性塩、例えば塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリセロリン酸塩などが挙げられる。
ナトリウムイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは乳酸ナトリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カリウムイオン供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウムまたは乳酸カルシウムなどがあげられ、全ての溶液を混合した溶液中に約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/L、さらに好ましくは約15〜30mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウムまたは酢酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
リン供給源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはグリセロリン酸カリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/L、さらに好ましくは約3〜10mmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
クロルイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
前記アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれかに鉄が配合される。
配合される鉄の供給源としては、塩化鉄、硫酸鉄などの鉄の無機酸塩、またはグルコン酸鉄、クエン酸鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄などの鉄の有機酸塩が挙げられ、とりわけ塩化鉄(たとえば、塩化第二鉄)が好ましい。また、鉄は、鉄コロイド溶液の形で配合するのが好ましい。鉄コロイド溶液は、公知のものでよい。かかる鉄コロイド溶液は、たとえば、コンドロイチン硫酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、これに塩化第二鉄溶液および水酸化ナトリウム溶液を交互に加え、さらに蒸留水を加えることにより調製できる。
鉄の配合量は、複数のすべての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の鉄濃度として、1〜200μmol/L、好ましくは10〜70μmol/Lである。
鉄以外に銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素などの微量金属元素が下記する濃度で配合されていても良い。これら微量金属元素の配合量は、複数のすべての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の銅濃度として0〜40μmol/L、マンガン濃度として0〜10μmol/L、亜鉛濃度として0〜300μmol/L、ヨウ素濃度として0〜5μmol/Lであるのが好ましい。なお、ヨウ素を配合する場合は、鉄が配合されていない方の糖溶液またはアミノ酸溶液に含有させるのが好ましい。
本発明にかかる輸液製剤の好ましい態様として、鉄が配合されているアミノ酸溶液が充填されている第1室と、糖溶液が充填されている第2室とが、連通可能な隔壁手段を介して隣接している輸液製剤、またはアミノ酸輸液が充填されている第1室と鉄が配合されている糖溶液が充填されている第2室とが、連通可能な隔壁手段を介して隣接している輸液製剤が挙げられる。
かかる輸液製剤の具体的態様を、図1を用いて説明する。図1は、本発明にかかる輸液製剤を収納する輸液容器の平面図である。該輸液容器は、外袋2内に第1室(図中の符号4)と第2室(図中の符号5)を有する。第1室と第2室は連通可能部3が形成されており、第1室4または第2室5を押圧することにより、連通可能部3が剥離して薬剤が外気に触れることなく第1室4と第2室5が連通される。
本態様の輸液製剤では、図1に示す輸液容器の第1室4にアミノ酸溶液が充填され、図1に示す輸液容器の第2室5に鉄を含有する糖溶液が充填されているか、または第1室4に鉄を含有するアミノ酸溶液が充填され、第2室5に糖溶液が充填されている。なお、第1室4に鉄を含有するか有しない糖溶液が充填され、第2室5に鉄を有しないか有するアミノ酸溶液が充填されていてもよい。
図1に示す輸液容器には、さらに、第1室4と連通する閉塞された薬液流出口6が設けられており、患者への内部薬液の注入のための輸液セットとの接続、さらにはシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられる。
本発明の輸液製剤を収納する輸液容器1の各室は気体および液体を通さない性質の外袋2に収納されていることが好ましい。さらに、脱酸素剤7および/または酸素検知剤8がガスバリアー性外袋2に収納されているのが好ましい。脱酸素剤を収納させることにより、輸液容器とガスバリアー性外袋との空間部が実質上酸素の存在しない状態となり、本発明の輸液製剤の成分、特にアミノ酸などの酸化分解されやすい成分の酸化分解を抑えることができるという利点がある。また酸素検知剤を収納させることにより輸液製剤を収容する際の収容雰囲気内の酸素除去の確認、ガスバリアー性外袋2のシール不良やピンホール発生、および輸送等の取扱い作業中の破損等による酸素進入の確認ができるという利点がある。脱酸素剤7を封入する代わりに、または脱酸素剤7を封入するとともに、所望により外袋2内に不活性ガスを充填してもよい。さらに、ビタミンBなどの光安定性に乏しい成分を充填する場合には、外袋に遮光性をもたせるのが好ましい。
前記外袋に適した材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルムもしくはシートを使用することができる。例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなどガスバリアー素材のうち少なくとも1種を含むフィルムもしくはシートなどから適宜に選択し、使用することができる。また、前記外袋に遮光性をもたせる場合には、例えば前記フィルムまたはシートにアルミラミネートを施すことにより実施できる。
前記外袋内に封入する脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性炭と水、結晶水を有する化合物の無水物、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用いることができる。本発明においては、これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。
また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えばエージレス(三菱瓦斯化学社製)、モデュラン(日本化薬社製)などが挙げられる。
前記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋に入れて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
また、前記外袋内に不活性ガスを充填することで酸素を取り除いてもよく、そのような不活性ガスとしては、例えばヘリウムガス、窒素ガスなどが挙げられる。
前記外袋内に封入する酸素検知剤としては、たとえば、メチレンブルー等の色素と該色素を還元するための還元剤としてのグルコース等とを組み合わせたもの(特開昭53−120493号公報や特開昭56−60349号公報など)や、システイン、その塩、エステルおよびN−アシル誘導体から選ばれる少なくとも1種とチアジン系および/またはインジゴ系色素とを含むもの(特開2000−39429号公報)などが挙げられる。
また、酸素検知剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の酸素検知剤としては、たとえばエージレスアイ(三菱瓦斯化学社製)などが挙げられる。
本発明にかかる輸液製剤は、さらにビタミンB1を含むことができる。ビタミンB1は糖溶液に溶解してもよいし、さらに、第1室または第2室に、ビタミンB1収容容器を収納させることができる。かかるビタミンB1収容容器は、それを収納している室と、外部からの押圧によって連通可能であることが好ましい。その手段は、上述のような公知手段を用いてよい。
本発明の輸液製剤を患者に投与するに際して、外袋を破り、複数の室、すなわち、図1に示す輸液製剤においては、第1室および第2室を連通させることにより、各室の薬液を混合する。
本発明の輸液製剤においては、複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、下記の組成であることが好ましい。
すなわち、ブドウ糖約50〜400g/L、好ましくは約100〜200g/L、L−ロイシン約0.8〜10.0g/L、好ましくは約2.0〜5.0g/L、L−イソロイシン約0〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−バリン約0.3〜8.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−リジン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜4.5g/L、L−スレオニン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−トリプトファン約0.08〜1.5g/L、好ましくは約0.2〜1.0g/L、L−メチオニン約0.2〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、L−フェニルアラニン約0.4〜6.0g/L、好ましくは約1.0〜2.5g/L、 L−システイン約0.03〜1.0g/L、好ましくは約0.15〜0.5g/L、L−チロシン約0.02〜1.0g/L、好ましくは約0.05〜0.20g/L、L−アルギニン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜3.5g/L、L−ヒスチジン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アラニン約0.4〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−プロリン約0.2〜5.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−セリン約0〜3.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、グリシン約0.3〜6.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アスパラギン酸約0〜2.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、L−グルタミン酸約0〜3.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、ナトリウム約20〜80mEq/L、カリウム約10〜40mEq/L、マグネシウム約2〜20mEq/L、カルシウム約2〜20mEq/L、リン約2〜20mmol/L、塩素約20〜80mEq/L、鉄約1〜200μmol/L、銅約0〜40μmol/L、マンガン約0〜10μmol/L、亜鉛約0〜300μmol/L、ヨウ素約0〜5μmol/Lである。
本発明にかかる輸液製剤は、さらに、複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物中に、ビタミンB1を0.1〜30mg/Lで含有するのが好ましい。
本発明にかかる輸液製剤において、複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物のpHは、約4〜7となるようにするのが好ましい。
表1に示す成分を、それぞれ注射用蒸留水に溶解して各々10Lとし、アミノ酸溶液(氷酢酸でpH6.9に調整)及び糖溶液(クエン酸でpH5.0に調整)を得た。これらの溶液を常法によりろ過し、外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有するポリエチレン製の輸液容器(図1の符号1)の第1室(図1の符号4)にアミノ酸溶液300mlを、第2室(図1の符号5)に糖溶液600mlをそれぞれ充填し、密封した。ついで、得られた輸液容器を常法により高圧蒸気滅菌を行った後、ガスバリアー性フィルム袋(図1の符号2)により外包装を行い、本発明にかかる輸液製剤を得た。なお、ガスバリアー性フィルム袋内には脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)(図1の符号7)及び酸素検知剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレスアイ)(図1の符号8)を配置し、その空間部は窒素置換を行った。
表1に示す成分を、それぞれ注射用蒸留水に溶解して各々10Lとし、アミノ酸溶液(氷酢酸でpH6.9に調整)及び糖溶液(クエン酸でpH5.0に調整)を得た。これらの溶液を常法によりろ過し、外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有するポリエチレン製の輸液容器(図1の符号1)の第1室(図1の符号4)にアミノ酸溶液300mlを、第2室(図1の符号5)に糖溶液600mlをそれぞれ充填し、密封した。ついで、得られた輸液容器を常法により高圧蒸気滅菌を行った後、ガスバリアー性フィルム袋(図1の符号2)により外包装を行い、本発明にかかる輸液製剤を得た。なお、ガスバリアー性フィルム袋内には脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)(図1の符号7)及び酸素検知剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレスアイ)(図1の符号8)を配置し、その空間部は窒素置換を行った。
Figure 2005035962

試験例1
実施例1および2で製した輸液製剤について、製造直後品及び60℃/75%RHで1週間及び2週間保存した苛酷品について鉄含量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)により測定した。結果を表2に示す.実施例1および2の輸液製剤において、鉄の安定性に問題はなかった。
Figure 2005035962
本発明によれば、鉄があらかじめ糖溶液またはアミノ酸溶液に配合されているので、用時、糖溶液とアミノ酸溶液を混合する際に、細菌による汚染を完全に排除できるとともに、鉄が経時変化を受けることなく保存でき、しかも既知の鉄配合輸液製剤よりも簡単な構成である鉄配合総合輸液製剤を提供することができる。
本発明にかかる輸液製剤の一実施態様で用いる輸液容器の平面図である。
符号の説明
1 輸液容器
2 外袋
3 連通可能部
4 輸液容器の第1室
5 輸液容器の第2室
6 薬液流出室
7 脱酸素剤
8 酸素検知剤

Claims (6)

  1. 外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において、その一室にアミノ酸溶液が収容され、他の室に糖溶液が収容され、アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれか一方に鉄が配合されていることを特徴とする輸液製剤。
  2. 複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の成分組成が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄1〜200μmol/L、銅0〜40μmol/L、マンガン0〜10μmol/L、亜鉛0〜300μmol/L、ヨウ素0〜5μmol/Lであることを特徴とする請求項1に記載の輸液製剤。
  3. 糖溶液にビタミンBが配合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の輸液製剤。
  4. 複数の全ての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物のビタミンB濃度が、0.1〜30mg/Lである請求項3に記載の輸液製剤。
  5. 前記輸液容器がガスバリアー性外袋に収容され、輸液容器とガスバリアー性外袋との空間部が、実質上酸素の存在しない状態にある請求項1〜4のいずれかに記載の輸液製剤。
  6. 前記輸液容器がガスバリアー性外袋に収容され、輸液容器とガスバリアー性外袋との空間部に、酸素検知剤が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の輸液製剤。
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