JP2000273035A - 総合輸液剤 - Google Patents

総合輸液剤

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JP2000273035A JP11076671A JP7667199A JP2000273035A JP 2000273035 A JP2000273035 A JP 2000273035A JP 11076671 A JP11076671 A JP 11076671A JP 7667199 A JP7667199 A JP 7667199A JP 2000273035 A JP2000273035 A JP 2000273035A
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Hidehiko Oshima
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隆 有田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 患者の生命の維持に必要な成分(アミノ酸、
電解質、ビタミン類など)をすべて含み、輸液フィルタ
ーを通過する総合輸液を提供する。 【解決手段】 連通可能な隔離手段で区画され、連通
後、内容物を外気にさらすことなく混合可能な3室を有
する輸液容器の、A室にアミノ酸およびビタミンCを含
有する輸液、B室に還元糖およびビタミンB1を含有す
る輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEお
よびビタミンKを含有する輸液が充填されており、さら
に電解質がA室および(または)B室の輸液に含有され
た総合輸液剤を使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は総合輸液剤に関す
る。さらに詳しくは、連通可能な隔離手段および連通用
部材で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことな
く混合可能な3室を有する輸液容器の、A室にアミノ酸
およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖および
ビタミンB1を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタ
ミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液が
充填されており、A室および(または)B室の輸液にさ
らに電解質が含有されている、患者の生命の維持に必要
な成分をすべて含み、長期間安定に保存することがで
き、輸液フィルターを通過させることができ、使用時に
は簡単に混合して使用することができる総合輸液剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、患者の生命の維持のための経口栄
養、経管栄養の補給が不可能あるいは不充分な状態であ
ったり、またはそれらが可能ではあっても患者の消化吸
収機能が著しく不良であったり、さらには食物が消化管
を通過するのが原疾患の悪化につながるような病態の場
合には、栄養補給のために、経静脈用輸液の投与が行な
われている。このような輸液剤としては、還元糖などを
含有する糖輸液、必須アミノ酸などを含有するアミノ酸
輸液、ミネラル類を含有する電解質輸液、各種ビタミン
を含有する混合ビタミン剤などが市販されている。これ
らの輸液剤が患者の症状などに合わせて使用時に適宜混
合して用いられている。
【0003】しかし、輸液剤の使用時における混合は作
業従事者にとって煩雑な操作であるうえに、混合時に菌
汚染の問題があり、還元糖、アミノ酸、ビタミンおよび
電解質をすべて含む総合輸液剤が求められている。
【0004】しかし、これら成分は安定に存在する条件
が異なり、また、これらを混合すると種々の問題が生
じ、輸液として使用できなくなる(医薬ジャーナル第1
5巻第9号111〜123頁(1979年))。
【0005】たとえば、糖およびアミノ酸を溶解した輸
液を加熱滅菌すると、メイラード反応により著しい着色
を生じることが知られている。
【0006】ビタミンには水溶性のものと脂溶性のもの
とが存在し、単一の溶媒で全てを溶解することには困難
が伴うとともに、ビタミンは一般に不安定であり、ま
た、ある種のビタミン同士を組み合わせると分解などが
おこる。たとえば、ビタミンCはビタミンB12の分解を
促進することなどが知られている。
【0007】さらに、電解質のうち、リン酸およびカル
シウムを含む輸液は中性・アルカリ性では加熱滅菌する
際にリン酸カルシウムの沈殿を生じ易いことも知られて
いる。
【0008】かかる問題を解決する輸液として、特開平
6−209979号公報には、第1室に脂肪乳剤、糖、
ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、
ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸
液を収容し、第2室にアミノ酸、電解質、ビタミン
6、ビタミンB12および葉酸を含有する輸液を収容す
る輸液剤が開示されており、使用時に第1室と第2室と
の間の隔離手段を取り除いて混合することにより、糖、
アミノ酸、電解質およびビタミンとともに脂肪乳剤を含
有する輸液を調製することが説明されている。
【0009】しかし、この輸液では、ビタミンB1とと
もに、脂溶性ビタミンを安定化するために脂肪乳剤が第
1室に含まれているが、脂肪の分解を避けるために、ビ
タミンB1が安定に存在し得ないと思われる中性pHに
調整されている(特開平9−59150号公報)。ま
た、患者に輸液を投与する際、細菌が通過できない輸液
フィルター(孔径:0.20μm程度)を通して輸液を
投与することが行なわれるが、脂肪乳剤はフィルターの
目詰まりを生じるため、脂肪乳剤を含む前記輸液は実用
化に至っていない(島田慈彦編著:輸液フィルター、2
〜16頁)。
【0010】また、特開平10−203959号公報に
は、還元糖を含有する溶液とアミノ酸を含有する溶液の
2液からなる輸液において、アミノ酸を含有する溶液に
ビタミンB2およびビタミンCを含有させ、かつpH
5.0〜7.0とした輸液剤が開示されており、ビタミ
ンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶
性ビタミンや、ビタミンB1、ビタミンB12は還元糖を
含有する溶液に配合されている。
【0011】しかし、脂溶性ビタミンは、脂肪乳剤を含
有しない水溶液中では、プラスチック製容器に吸着し易
いため、容積の大きい容器に封入された還元糖溶液に配
合すると、容器への吸着により含有量低下が生じる。ま
た、ビタミンB1とビタミンB12は、最も安定に存在し
得るpH域が異なることが知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、還元糖、ア
ミノ酸、ビタミンおよび電解質をすべて含み、かつ、安
定であるとともに、脂肪乳剤を含まず、輸液フィルター
を通過する総合輸液剤を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、つぎの総合輸
液剤に関するものである。
【0014】連通可能な隔離手段で区画され、連通後、
内容物を外気にさらすことなく混合することができる3
室を有する輸液容器の、A室にアミノ酸およびビタミン
Cを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンB1
含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミ
ンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されてお
り、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が
含有されていることを特徴とする総合輸液剤(請求項
1)、A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液のpHが
2.5〜5、C室の輸液のpHが4〜8であり、A室〜
C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜7.5
である請求項1記載の総合輸液剤(請求項2)、B室の
輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.
5〜7である請求項2記載の総合輸液剤(請求項3)、
葉酸およびビタミンHのそれぞれが、少なくともA室お
よびC室のいずれかの輸液に含有されており、ビタミン
12がB室およびC室のいずれかの輸液に含有されてお
り、パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6および
ニコチン酸類のそれぞれが、少なくともA室、B室およ
びC室のいずれかの輸液に含有されている請求項1、2
または3記載の総合輸液剤(請求項4)、パントテン酸
類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニ
コチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸および
ビタミンHがC室の輸液に含有されている請求項1また
は2記載の総合輸液剤(請求項5)、パントテン酸類が
A室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチ
ン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタ
ミンHがC室の輸液に含有されており、A室の輸液のp
Hが5〜8、B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室
の輸液のpHが4.5〜7である請求項1記載の総合輸
液剤(請求項6)、電解質のうちのリン供給源とカルシ
ウム供給源とが、A室の輸液とB室の輸液とに各々わけ
て含有されている請求項1、2、3、4、5または6記
載の総合輸液剤(請求項7)、電解質のうちのカルシウ
ム供給源がA室の輸液に、リン供給源がB室の輸液に含
有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の
総合輸液剤(請求項8)、電解質のうちのナトリウム供
給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源が
A室の輸液に含有されており、少なくともA室およびB
室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されて
いる請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の
総合輸液剤(請求項9)、電解質のうちのナトリウム供
給源、カリウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給
源および亜鉛供給源が、A室の輸液に含有されている請
求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸
液剤(請求項10)、A室の輸液、B室の輸液、C室の
輸液の容積比が、20〜2000:10〜2500:1
である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9また
は10記載の総合輸液剤(請求項11)、加熱滅菌され
てなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0または11記載の総合輸液剤(請求項12)、連通可
能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさら
すことなく混合することができる3室を有する輸液容器
の、A室に、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リ
ジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−ト
レオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−シス
テイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジ
ン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミ
ン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリン、ビタミン
C、パントテン酸類、カルシウム供給源、ナトリウム供
給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源を
含有するpH5〜8の輸液、B室に、ブドウ糖、ビタミ
ンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸類およ
びリン供給源を含有するpH2.5〜5の輸液、C室
に、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミン
K、ビタミンB12、葉酸、ビタミンHおよび溶解補助剤
を含有するpH4〜8の輸液が充填されており、かつ、
少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシ
ウム供給源が含有されており、A室〜C室の輸液を混合
した後の輸液のpHが4.0〜7.5であることを特徴
とする総合輸液剤(請求項13)、B室の輸液のpHが
2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である
請求項13記載の総合輸液剤(請求項14)、A室の輸
液にマグネシウム供給源が含有されている請求項13ま
たは14記載の総合輸液剤(請求項15)、A室〜C室
の輸液を混合した後の輸液1000ml中に含まれる各
成分の量が次の範囲である請求項13、14または15
記載の総合輸液剤(請求項16)、
【0015】
【表2】
【0016】A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容
積比が、20〜2000:10〜2500:1である請
求項13、14、15または16記載の総合輸液剤(請
求項17)、加熱滅菌されてなる請求項13、14、1
5、16または17記載の総合輸液剤(請求項18)、
亜硫酸塩がA室の輸液に含有されている請求項1、2、
3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17または18記載の総合輸液
剤(請求項19)、L−リジン亜硫酸塩がA室の輸液に
含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、
17または18記載の総合輸液剤(請求項20)、輸液
容器が、A室とB室の間に連通可能な隔離壁を有し、A
室またはB室に輸液供給部が設けられており、輸液供給
部内にC室が含有され、C室は破断によりA室またはB
室へ連通する連通用部材を有している請求項1、2、
3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17、18、19または20記
載の総合輸液剤(請求項21)、A室とB室の間の隔離
壁が弱接着された隔離壁であり、C室が有する連通用部
材は、C室と連通し得るA室またはB室内へ突出してお
り、輸液容器外部から破断し得る請求項21記載の総合
輸液剤(請求項22)およびC室が有する連通用部材が
破断されたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないた
めの変形可能なカバー部材が設けられている請求項22
記載の総合輸液剤(請求項23)。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明は、連通可能な隔離手段で
区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合
することができる3室を有する輸液容器の、A室にアミ
ノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖お
よびビタミンB1を含有する輸液、C室にビタミンA、
ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸
液が充填されており、A室および(または)B室の輸液
にさらに電解質が含有されていることを特徴とする総合
輸液剤に関するものであり、輸液容器が、連通可能な隔
離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすこと
なく混合することができる3室を有する輸液容器である
ため、使用混合時の菌汚染の問題がなくなる。
【0018】また、患者の生命の維持に必要な成分(ア
ミノ酸、電解質、ビタミン、還元糖)を全て含有させな
がら、安定に存在させる条件が異なる成分を使用時まで
隔離された3室に入れてそれぞれに安定な条件で保存す
ることによって、予め混合させて長期間保存した場合な
どに生ずる沈殿の生成、変質、着色などの種々の問題を
回避することができる。
【0019】さらに、本発明の輸液剤は、A〜C室のい
ずれにも脂肪乳剤を含まないため、細菌が通過できない
輸液フィルターにより、除菌することができ、輸液剤を
投与する場合に問題となる感染症の危険性をさらに減少
させることができる。
【0020】成分同士の相互作用より問題が生じること
のない成分の組み合わせの具体例としては、A室にアミ
ノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖お
よびビタミンB1を含有する輸液、C室にビタミンA、
ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸
液が充填されており、A室および(または)B室の輸液
にさらに電解質が含有されている総合輸液があげられ
る。
【0021】前記A室に充填されるアミノ酸としては、
従来から生体への栄養補給を目的とするアミノ酸輸液に
含有されている各種アミノ酸(必須アミノ酸、非必須ア
ミノ酸)があげられ、たとえば、L−イソロイシン、L
−ロイシン、L−バリン、L−リジン、L−メチオニ
ン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリ
プトファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、グリシ
ン、L−アラニン、L−プロリン、L−アスパラギン
酸、L−セリン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L
−システイン、L−シスチンなどが例示される。これら
のアミノ酸は、必ずしも遊離アミノ酸の形態で用いられ
る必要はなく、無機酸塩(たとえば、L−リジン塩酸
塩、L−リジン亜硫酸塩、L−システイン塩酸塩(1水
和物)など)、有機酸塩(たとえば、L−リジン酢酸
塩、L−リジンリンゴ酸塩、L−システインリンゴ酸塩
など)、生体内で加水分解可能なエステル体(たとえ
ば、L−チロシンメチルエステル、L−メチオニンメチ
ルエステル、L−メチオニンエチルエステルなど)、N
−置換体(たとえば、N−アセチル−L−トリプトファ
ン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L
−プロリンなど)などの形態で用いてもよい。また、同
種または異種のアミノ酸をペプチド結合させたジペプチ
ド類(たとえば、L−チロシル−L−チロシン、L−ア
ラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシ
ン、L−チロシル−L−アルギニンなど)などの形態で
用いてもよい。
【0022】これらアミノ酸の含有比率としては、患者
の生命の維持に必要な成分が含まれている限りとくに限
定はなく、通常、この技術分野で既知の指標(194
4年ローズらが決定した必須アミノ酸必要量に基づくV
uj−N処方のもの、1957年FAOの特別委員会
報告によるもの、1965年FAO/WHOの共同委
員会報告による人乳または全卵アミノ酸組成に基づくも
の、血漿中アミノ酸組成のフィッシャー比など)にし
たがって、種々の必須アミノ酸と非必須アミノ酸との比
率(いわゆるE/N比)、あるいは全アミノ酸に対する
必須アミノ酸の比率(いわゆるE/T比)を変化させ配
合したもの、あるいは分岐鎖アミノ酸を、必須アミノ酸
または非必須アミノ酸に対する比率を考慮しつつ、適宜
含有させたものなどが用いられる。
【0023】かかるアミノ酸組成の具体例をあげるとす
れば、たとえば、術後患者用アミノ酸組成(特開昭55
−33446号公報、同55−36457号公報)、必
須アミノ酸を多く含むアミノ酸組成(特開昭56−83
12号公報)、分岐鎖アミノ酸を29〜33%含み、新
生児期に必須であるL−システインの含量を増やしたア
ミノ酸組成(特公平1−19363号公報)、L−チロ
シンとL−フェニルアラニンの重量比が1:12〜17
でL−リジンの配合量を全アミノ酸の9.5%以上と多
くした新生児や肝機能低下患者用アミノ酸組成(特公平
3−28403号公報)、筋タンパクの崩壊を抑制する
ための分岐鎖アミノ酸のみの組成(特公平4−1464
6号公報)などがあげられる。
【0024】これらのアミノ酸は、前記各特許公報に記
載されている組成だけに限らず、これらに基づいて、ア
ミノ酸のうちの数種の組成を改変したもの(たとえば、
栄養学的に顕著な相違をもたらさない範囲で必須アミノ
酸もしくは非必須アミノ酸を増減させたもの、あるいは
必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比を維持しつつ必須ア
ミノ酸もしくは非必須アミノ酸を増減させたもの)、組
成パターンを維持しつつ濃度やアミノ酸全量に対する比
率をかえたもの、さらには栄養学的に等価と理解され得
るアミノ酸を相互に置換したもの(たとえば、含硫アミ
ノ酸におけるシステイン、シスチン、メチオニン、芳香
族アミノ酸におけるフェニルアラニン、チロシンなど)
であっても本発明において好適に使用することができ
る。
【0025】とりわけ、特公平1−19363号公報や
同3−28403号公報には栄養学的にすぐれたアミノ
酸輸液組成が記載されており、これらの特許公報中に具
体的に記載されたアミノ酸組成やアミノ酸パターンをも
つアミノ酸輸液、あるいはその栄養学的に同等な範囲で
改変されたものを好適に使用することができる。
【0026】前記A室に充填されるビタミンCは、ビタ
ミンCそのものであってもよく、その誘導体およびその
塩であってもよい。具体的には、ビタミンC(アスコル
ビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸
パルミテート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコ
ルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩などがあげられ
る。
【0027】前記B室に充填される還元糖としては、生
体内でカロリー源として代謝・利用されるものであれば
よく、とくに限定されないが、ブドウ糖、フルクトー
ス、マルトースなどがあげられ、とくにブドウ糖はエネ
ルギー源として最も生体に利用されやすいため、好まし
い。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わ
せて用いてもよい。さらに、必要に応じ、これらの還元
糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加
えた混合物を用いてもよい。
【0028】前記B室に充填されるビタミンB1として
は、従来から使用されているものは何れも使用可能であ
り、たとえばチアミンであってもよく、その誘導体、具
体的には、プロスルチアミン、アクトチアミン、チアミ
ンジスルフィド、フルスルチアミンなどや、それらの
塩、たとえば塩酸チアミン、硝酸チアミンなどであって
もよい。
【0029】前記C室に充填されるビタミンA、ビタミ
ンD、ビタミンEおよびビタミンKは、そのものであっ
てもよく、その誘導体の形で用いてもよい。具体的に
は、ビタミンAおよびその誘導体としては、ビタミンA
1(レチノール)、ビタミンA2(3−デヒドロレチノー
ル)、ビタミンA3(サブビタミンA)、レチネン(ビ
タミンAアルデヒド)、ビタミンA酸、パルミチン酸レ
チノール、酢酸レチノールなどをあげることができる。
ビタミンDおよびその誘導体としてはビタミンD2(エ
ルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフ
ェロール)、ビタミンD4、プロビタミンD2(エルゴス
テリン)、プロビタミンD3(デヒドロコレステリン)
などをあげることができる。ビタミンEおよびその誘導
体としてはα−トコフェロール、酢酸トコフェロール、
β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフ
ェロールなどをあげることができる。ビタミンKおよび
その誘導体としてはビタミンK1(フィロキノン、フィ
トナジオン)、ビタミンK2(ファルノキノン)、ビタ
ミンK3(メナジオン)、ビタミンK4、ビタミンK5
ビタミンK6、ビタミンK7などをあげることができる。
【0030】前記A室および(または)B室にさらに充
填される電解質としては、従来から輸液に用いられてい
る各種水溶性塩があげられる。
【0031】たとえば、生体の機能や体液の電解質バラ
ンスを維持するうえで必要とされる無機成分(たとえ
ば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウ
ム、亜鉛、鉄、銅、マンガンなどの金属イオンの供給
源;塩素、ヨウ素、リンなどの陰イオンの供給源)があ
げられ、これらのうちから必要に応じて選択のうえ、適
宜A室および(または)B室の輸液に添加される。
【0032】電解質のうち、リン供給源であるリンの水
溶性塩としては、リン酸またはそのエステルあるいはこ
れらの塩が好適に用いられる。
【0033】リン酸エステルの好ましい例としては、多
価アルコールまたは糖のリン酸エステルをあげることが
できる。多価アルコールのリン酸エステルとしてはグリ
セロリン酸、マンニトール−1−リン酸、ソルビトール
−1−リン酸などがあげられる。糖のリン酸エステルと
しては、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−
リン酸、マンノース−6−リン酸などがあげられる。こ
れらのリン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カ
リウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシ
ウムなどのアルカリ土類金属塩を用いることができ、ア
ルカリ金属塩を好適に用いることができる。
【0034】リン酸の塩としては、リン酸二水素ナトリ
ウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸二水素アルカ
リ金属、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムな
どのリン酸水素アルカリ金属などがあげられる。
【0035】リン酸またはその塩を使用する場合、カル
シウムイオン、マグネシウムイオンが存在すると、カル
シウム塩、マグネシウム塩を形成し、中性・アルカリ性
条件下では沈殿を形成し易いため、これらを配合する場
合には、これらをA室とB室に分けて配合するか、両者
をA室またはB室のいずれか一方に含む場合には、その
液性を酸性域(pH5以下)に調整する必要がある。
【0036】前記電解質成分のうち金属イオン供給源の
好ましい具体例としては、下記のものがあげられる。
【0037】ナトリウム供給源:塩化ナトリウム、乳酸
ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グリセ
ロリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリ
ウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウ
ム、クエン酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、水酸
化ナトリウム カリウム供給源:塩化カリウム、グリセロリン酸カリウ
ム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ
化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリ
ウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、水酸化
カリウム カルシウム供給源:グルコン酸カルシウム、塩化カルシ
ウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パ
ントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム マグネシウム供給源:硫酸マグネシウム、塩化マグネシ
ウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウ
ム、乳酸マグネシウム、アミノ酸マグネシウム塩 亜鉛供給源:硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳
酸亜鉛、酢酸亜鉛 鉄供給源:硫酸鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、グルコン
酸鉄 銅供給源:硫酸銅 マンガン供給源:硫酸マンガン また、陰イオン供給源は、前記金属イオン供給源におい
て金属イオンのカウンターイオンの形で供給すること
も、アミノ酸、ビタミンなどの塩に含まれる形で供給す
ることもできる。また、塩酸、リン酸などの形で金属イ
オン供給源、アミノ酸、ビタミンと組み合わせることな
く供給することもできる。
【0038】本発明の輸液剤においては、A室〜C室の
輸液を混合した後の輸液1000ml中に含まれる各成
分の量が、アミノ酸10〜55g、ビタミンC25〜1
30mg、ビタミンA1000〜5000IU、ビタミ
ンD2.5〜15μg、ビタミンE5〜20mg、ビタ
ミンK0.5〜3mg、還元糖50〜500g、ビタミ
ンB11〜50mg、電解質としては、カルシウム3〜
15mEq、リン1〜20mmol、亜鉛0〜30μm
ol、マグネシウム2〜15mEq、カリウム10〜3
5mEq、ナトリウム15〜70mEq、塩素0〜80
mEq、鉄4〜100μmol、銅0.5〜40μmo
l、マンガン1.0〜60μmol、ヨウ素0.3〜1
μmolの濃度で使用するのが好ましい。
【0039】前記A室におけるアミノ酸およびビタミン
Cは、いずれも水溶性であり、pH5〜8の中性領域で
安定であり、1つの輸液中に溶解させても沈殿の生成、
変質、着色などがおこらず、安定に存在する。
【0040】また、前記B室における還元糖およびビタ
ミンB1は、いずれも水溶性であり、pH2.5〜5
(より好ましくはpH2.5〜4.5)の領域で安定で
あるため、1つの輸液中に溶解させても沈殿の生成、変
質、着色などがおこらず、安定に存在する。
【0041】さらに、前記C室におけるビタミンA、ビ
タミンD、ビタミンEおよびビタミンKは、いずれもp
H4〜8(より好ましくはpH4.5〜7)の領域で安
定であり、また、相互作用による変性もないため、これ
らを1つの輸液に溶解させても沈殿の生成、変質などは
生じない。これらのうち、ビタミンA、ビタミンD、ビ
タミンEおよびビタミンKは脂溶性ビタミンであり、必
要に応じ、水に安定に溶解させるため、溶解補助剤を添
加してもよい。溶解補助剤としては、ポリソルベート8
0、20などの界面活性剤、プロピレングリコール、エ
チレングリコール、ポリエチレングリコールなどの親水
性有機溶媒を単独または組み合わせて使用することがで
きる。前記脂溶性ビタミンは、プラスチック製容器の表
面に吸着されやすく、脂溶性ビタミンを含有する輸液
は、プラスチック製容器に充填する場合には、表面積の
小さい容器に充填されることが好ましい。
【0042】電解質は前記A室および(または)B室に
含まれるが、いずれも水溶性が高いものであるため、各
室輸液の成分、各室輸液のpHなどとの適合性も考慮の
うえ、必要に応じて選択のうえ、A室、B室の輸液のい
ずれか一方に全てを添加してもよく、A室およびB室の
輸液に適宜分散して添加してもよい。
【0043】また、A室〜C室の輸液を混合した場合
に、pH4.0〜7.5になるようにしておけば、混合
時に沈殿形成、変質を生じず、また、患者に投与する際
の疼痛を生じない点から好ましい。
【0044】前記各輸液のpH調整に用いられるpH調
整剤としては、生理的に許容できるものであればとくに
限定されず、たとえば各種の有機酸、無機酸、有機塩
基、無機塩基を使用することができるが、有機酸が好適
に用いられる。前記有機酸としては、たとえばクエン
酸、酢酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マ
レイン酸、マロン酸などがあげられ、無機酸としては塩
酸、リン酸などをあげることができる。一方、有機塩基
としてはクエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、
乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウ
ム、マレイン酸ナトリウム、マロン酸ナトリウムなどを
あげることができ、無機塩基としては水酸化アルカリ金
属などをあげることができる。
【0045】なお、A室およびC室の少なくとも1室に
含まれる輸液に、葉酸およびビタミンHが含まれていて
もよく、B室およびC室の少なくとも1室に含まれる輸
液に、ビタミンB12が含まれていてもよく、また、A
室、B室およびC室の少なくとも1室に含まれる輸液に
パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコ
チン酸類が含まれていてもよい。
【0046】前記葉酸およびビタミンHのA室およびC
室への含まれ方にはとくに限定はなく、これら2種のビ
タミンが単独でまたは2種でA室およびC室の少なくと
も1室に含まれていさえすればよい。ビタミンB12のB
室およびC室への含まれ方にもとくに限定はなく、B室
およびC室の少なくとも1室に含まれていさえすればよ
い。また、パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6
およびニコチン酸類のA室、B室およびC室への含まれ
方にもとくに限定はなく、これら4種のビタミンが単独
でまたは2種以上でA室、B室およびC室の少なくとも
1室に含まれていさえすればよい。ただし、パントテン
酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6および
ニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およ
びビタミンHがC室の輸液に配合されているのが好まし
い。
【0047】前記A室およびC室の少なくとも1室に含
まれ得る葉酸およびビタミンH(ビオチン)も、そのも
のであってもよく、その誘導体の形で用いてもよい。葉
酸およびビタミンHはナトリウム、カリウムなどのアル
カリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ
土類金属塩として用いることもできる。
【0048】前記B室およびC室の少なくとも1室に含
まれ得るビタミンB12もそのものであってもよく、その
誘導体の形で用いてもよい。具体的には、シアノコバラ
ミン、酢酸、ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミン
などがあげられる。
【0049】また、前記A室、B室およびC室の少なく
とも1室に含まれ得るパントテン酸類、ビタミンB2
ビタミンB6およびニコチン酸類も、そのものであって
もよく、その誘導体の形で用いてもよい。具体的には、
パントテン酸類の誘導体としては、パンテノールなど
が、ビタミンB2(リボフラビン)の誘導体としては、
リン酸リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラ
ビンアデニンジヌクレオチドなどが、ビタミンB6(ピ
リドキシン)の誘導体としてはリン酸ピリドキシン、ピ
リドキサール、ピリドキサシンなどがあげられる。ま
た、パントテン酸類は、ナトリウム、カリウムなどのア
ルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカ
リ土類金属塩などの塩の形で、ビタミンB2およびビタ
ミンB6は塩酸塩などの塩の形で用いてもよい。ニコチ
ン酸類としてはニコチン酸アミド、ニコチン酸などがあ
げられ、これらは塩の形で使用することもできる。
【0050】また、電解質のうちリン酸、リン酸二水素
アルカリ金属、リン酸水素アルカリ金属などのリン供給
源とカルシウム供給源とが、A室の輸液とB室の輸液に
分けて含有されているのが、リン酸カルシウムの形成を
抑制し、かつ、混合後の輸液剤のpHを中性域としやす
い点から好ましい。さらに、カルシウム供給源がA室の
輸液に、リン供給源がB室の輸液に含有されているのが
好ましい。
【0051】また、電解質のうちのナトリウム供給源、
カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の
輸液に含有されており、少なくともA室およびB室のい
ずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されているの
が好ましい。また、電解質のうちのナトリウム供給源、
カリウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給源およ
び亜鉛供給源がA室の輸液に配合されているのが、B室
のイオン強度が下がり、ビタミンB1が安定化される点
から好ましい。
【0052】また、各室に収容される輸液には、加熱滅
菌時および保存時の着色を防止するために着色防止剤
(たとえば、チオグリセロール、ジチオスレオトールな
ど)を添加してもよい。着色防止剤の添加量は、輸液に
対して、通常1%程度以下とするのが好ましい。
【0053】さらに、A室および(または)C室に収容
される輸液には、抗酸化剤として、チオグリセロール、
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸の塩
基性アミノ酸塩(たとえば、L−リジン亜硫酸塩)など
の亜硫酸塩を添加してもよい。とりわけビタミンCは酸
化されやすく、A室に収容される輸液は亜硫酸塩を添加
することが好ましい。これらの添加量は、A室またはC
室の輸液に対して通常0.025〜0.25g/L程度
とするのが好ましく、亜硫酸の塩基性アミノ酸塩を使用
する場合には、0.2〜0.7g/L程度とするのが好
ましい。また、亜硫酸の塩基性アミノ酸塩を亜硫酸塩と
して使用する場合には、亜硫酸塩として含まれるアミノ
酸の量も含めて、亜硫酸塩以外のアミノ酸の配合量を調
整しなければならない。なお、B室にはビタミンB1
含有されているので、この分解を防ぐためにB室には亜
硫酸塩を添加することは好ましくない。また、B室に収
容される輸液には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタンなどの緩衝剤を添加してもよい。これらの添加量
は、輸液に対して、通常1%程度以下である。
【0054】前記のごとき、本発明の総合輸液剤を形成
するA室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比は、
20〜2000:10〜2500:1、さらには80〜
320:120〜480:1であるのが好ましい。
【0055】前記のごときA室〜C室に充填される各輸
液は、いずれも細菌の除去などのためにメンブランフィ
ルターを使用して濾過したのち充填する。本発明の総合
輸液剤の各室に充填された輸液には脂肪乳剤が含まれな
いため、細菌が通過できない0.2μmの孔径の輸液フ
ィルターを使用して濾過したうえで本発明に用いる輸液
容器に充填することができる。
【0056】さらにA室〜C室に各輸液剤が充填された
本発明の総合輸液剤は、加熱滅菌されているのが好まし
く、また、A室〜C室の輸液は予め加熱滅菌したものを
各室に無菌的に充填・密封してもよいが、A室〜C室に
輸液を不活性ガス雰囲気下にて充填・密封後、加熱滅菌
するのが効率的であるとともに、細菌の混入による弊害
を防止することができる点から好ましい。加熱滅菌の方
法としては、慣用の方法をいずれも使用することがで
き、たとえば、高圧蒸気滅菌、熱水浸漬滅菌、熱水シャ
ワー滅菌などの方法により行なうことができる。
【0057】本発明の輸液剤は、充填前に加熱滅菌を行
なう場合でも、充填後に加熱滅菌を行なう場合でも、A
室〜C室の輸液は沈殿の生成、変質、着色を生じず、ま
た、含有成分の加熱処理による分解・減少も最小限に抑
制することができる。
【0058】本発明の総合輸液剤のさらに具体的な例と
して、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物
を外気にさらすことなく混合することができる3室を有
する輸液容器の、A室に、L−イソロイシン、L−ロイ
シン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラ
ニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリ
ン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、
L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、
L−グルタミン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリ
ン、ビタミンC、パントテン酸類、カルシウム供給源、
ナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および
亜鉛供給源を含有するpH5〜8の輸液、B室に、ブド
ウ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコ
チン酸類およびリン供給源を含有するpH2.5〜5の
輸液、C室に、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、
ビタミンK、ビタミンB12、葉酸、ビタミンHおよび溶
解補助剤を含有するpH4〜8の輸液が充填されてお
り、かつ、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液
に、好ましくはA室の輸液にマグネシウム供給源が含有
されており、A室、B室およびC室の輸液を混合したの
ちの輸液のpHが4.0〜7.5となる総合輸液剤があ
げられる。
【0059】本発明の総合輸液剤のより好ましい具体例
としては、前記具体例においてA室〜C室の輸液を混合
したのちの輸液1000ml中に各成分が次表記載の範
囲となるように配合されている輸液剤をあげることがで
きる。
【0060】
【表3】
【0061】これら総合輸液剤において、A室の輸液、
B室の輸液およびC室の輸液の容積比が20〜200
0:10〜2500:1であるのが好ましい。
【0062】さらに、これら具体的な本発明の総合輸液
剤はいずれも前述の方法により加熱滅菌されていてもよ
く、各室の輸液はメンブランフィルターにより除菌され
たのち充填されていてもよい。
【0063】本発明の総合輸液剤に使用する輸液容器と
しては、前記のごときA室とB室の間に連通可能な隔離
壁を有し、A室またはB室に輸液供給部が設けられてお
り、輸液供給部内にC室が含有され、C室は破断により
A室またはB室へ連通可能な連通用部材を有している輸
液容器があげられる。前記A室とB室の間の隔離壁は弱
接着された隔離壁であり、C室が有する連通用部材が破
断されたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないため
の変形可能なカバー部材が設けられているのが好まし
い。
【0064】つぎに、本発明の総合輸液剤に使用する、
連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気
にさらすことなく混合可能な3室を有する輸液容器につ
いて具体的に説明する。
【0065】図1に、本発明に使用する輸液容器の一例
を示す。図1において、1は本発明に使用する輸液容
器、2はA室、3はB室、5はA室とB室とを、使用時
に連通する隔離手段(以下、連通可能な隔離手段ともい
う)、6はC室が有する連通用部材11(図2を参照)
を破断させたとき、該連通用部材を液中に浮遊させない
ための変形可能なカバー部材、7はC室4(図2を参
照)を含有する輸液供給部、8は懸垂孔、9、10は密
封シール部を表わす。
【0066】輸液容器1は、ある程度の耐熱性のある軟
質合成樹脂、たとえばポリオレフィン類(たとえばポリ
エチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重
合体、ポリプロピレンとポリエチレンまたはポリブテン
との混合物、前記ポリオレフィンの部分架橋物、エチレ
ン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル
酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共
重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体など)、ポ
リ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フッ
化エチレン−塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル
(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタ
レート)、ナイロン、スチレン系エラストマーなどを単
独でまたはこれら重合体を適宜混合して得られる混合物
で形成されるシート、あるいはこれらシートを貼りあわ
せて形成される多層シートで袋状物を作成し、輸液供給
部7を設けた密閉容器である。この容器に使用する耐熱
性軟質合成樹脂としては、ポリプロピレンとスチレン系
エラストマー(たとえば、スチレン−エチレン−ブチレ
ン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−エ
チレン−ブタジエン共重合体、水素添加スチレン−イソ
プレン−スチレンブタジエン共重合体)との混合物など
を使用するのが好ましい。
【0067】輸液容器1から輸液供給部7をのぞいた容
器本体は前記樹脂をブロー成形することにより形成した
もの、前記樹脂から形成された2枚のシートの周縁部を
融着して形成したもの、インフレーション成形機により
前記樹脂を押し出し成形して筒状に成形したものの開口
部を融着するなどすることにより製造したもののいずれ
でもよい。
【0068】A室2とB室3との間に形成された破断な
どにより連通可能な隔離手段5は、使用時に隔離手段5
で隔離された一方の室を、たとえば外部から押圧するこ
とによりシール部が剥離し、輸液が外気にふれることな
く混合できるようになっている。
【0069】連通可能な隔離手段5は、A室2またはB
室3を外部から押圧したり握るなどして室内に内圧を生
じさせた際に容器本体の周縁部のシール強度および容器
本体を形成するシートの破断強度よりも弱い力で破壊ま
たは剥離するように輸液容器1を形成する樹脂の特性に
応じてシール時の条件(熱シールの場合は金型の温度・
押圧力・時間など)を調整して形成される。
【0070】A室2とC室4との間に形成された連通可
能な連通用部材(破断連通用部材)11の連通前の状態
を図2に、連通後の状態を図3にそれぞれ部分断面説明
図として示す。
【0071】C室4は、A室2および連通可能な隔離手
段5で隔離されたB室3からなる筒状の容器本体のA室
に設けられた輸液供給部7の先端開口を封止する膜12
と、輸液供給部7のA室2側に設けられた連通用部材1
1に囲まれて形成されている。
【0072】連通用部材11は、A室2の中に突出して
いる。この連通用部材11は、薄肉脆弱部よりなる周状
の破断部13と、破断部13の破断操作を行なうための
レバー14とを有している。破断部13は、C室4の縮
径部15とレバー14の端部とを連結している。レバー
14をカバー部材6とともに把持して横方向に力を加え
ると、破断部13が破断して縮径部15に開口が形成さ
れ、C室4とA室2とが連通する。
【0073】輸液供給部7と連通用部材11とは、別部
材を接合したものでもよいが、一体に形成されているも
のが好ましい。
【0074】連通用部材11は、ポリプロピレン、環状
ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレ
フタレートなどの硬質樹脂から形成されている。とくに
ポリプロピレンが好適に用いられる。連通用部材11を
破断したのち、レバー14が浮遊しないようにするため
に変形可能なカバー部材6を設けるのが好ましい。な
お、カバー部材6には、C室に含有される輸液とA室、
B室に含有される輸液とが混合されるように、開口した
連通部17が設けられている。
【0075】輸液容器1に輸液が充填されたものの製造
方法としては、たとえばつぎの方法があげられる。まず
所定の大きさ、容量の輸液容器1を形成する部品を製造
する。当初、連通可能な隔離手段(弱シール部)5を形
成した容器本体の両端は密封シールをしない状態にして
おき、B室3になる側に所定量の輸液を分注し、密封シ
ール部9を密封シールするとともに懸垂口8を形成す
る。ついで、A室2側に所定量の輸液を分注し、前もっ
てC室4を形成し、輸液を分注しておいた輸液供給部7
を挿入し、密封シールをする。すなわち、C室4に予め
輸液を分注しておき、C室4の先端側に膜12(ポリプ
ロピレン等のプラスチック製、該先端に熱融着可能な材
質があることが好ましい)を装着するとともに、A室2
側にカバー部材6を装着する。ついで輸液供給部7を形
成するポリプロピレン等のプラスチック製の硬質なチュ
ーブ18に挿入するとともにブチルゴムやイソプレンゴ
ム等のゴム、あるいはスチレン系エラストマー(スチレ
ン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体など)やオ
レフィン系エラストマー等からなる栓体16を装着す
る。このようにして組み立てた輸液供給部7を容器本体
の先端開口部の途中まで挿入し、そこを密封シールし、
本発明の総合輸液剤は完成する。
【0076】本発明においては、容器本体は、ポリプロ
ピレンと水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン共重
合体の混合樹脂を押出成形により筒状に成形したものを
使用するのが好ましい。C室4および連通用部材11は
ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの硬質樹脂を用
いて一体に成形したものを使用するのが好ましい。ま
た、膜12もポリプロピレン、ポリカーボネートなどの
硬質樹脂を用いるのが好ましい。
【0077】前記輸液容器ではA室2にC室4を含有す
る輸液供給部7を設けたが、B室などほかの部分に設け
てもよい。
【0078】本発明の総合輸液剤は、容器内の輸液の変
質を防止するために、さらに酸素非透過性の膜材で外包
装してもよい。
【0079】前記酸素非透過性の膜材としては、たとえ
ばエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ
ビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィル
ムなどを中間層として含む3層ラミネートフィルム(た
とえば外層がポリエステルフィルム、延伸ナイロンフィ
ルム、延伸ポリプロピレンフィルムなどからなり、内層
が未延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフ
ィルムなど)、アルミニウム層を含むラミネートフィル
ム(たとえばポリエステルフィルム−アルミニウム層−
未延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフィ
ルムなど)、無機質蒸着フィルムを含むラミネートフィ
ルム(たとえばポリエステルフィルム−ケイ素蒸着フィ
ルム−未延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフ
ィルム−ケイ素蒸着フィルム−未延伸ポリプロピレンフ
ィルム、ポリエステルフィルム−アルミニウム蒸着フィ
ルム−未延伸ポリプロピレンフィルム、アルミナ蒸着ポ
リエステルフィルム−ポリ塩化ビニリデンフィルム−未
延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフィル
ムなど)などがあげられる。
【0080】また、本発明の総合輸液剤に外包装を施す
場合には、必要に応じて、外包装に遮光性、紫外線遮断
性を持たせることによって、さらに変質の防止をはかる
ことができる。
【0081】前記外包装と総合輸液剤との間に脱酸素剤
を収容してもよく、さらに常法に準じて、真空包装、不
活性ガス(たとえばチッ素ガスなど)充填包装などして
もよい。
【0082】前記脱酸素剤としては、たとえば、炭化
鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄また
はケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、水酸化
アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性
炭と水、結晶水を有する化合物、アルカリ性物質または
アルコール類化合物と亜二チオン酸塩との混合物、第
一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、ア
ルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化
合物、チッ素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム
塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、鉄もしくは
亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混
合物とハロゲン化金属との混合物、鉄、銅、スズ、亜
鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または1
0水和物;およびハロゲン化金属の混合物、周期律表
第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および
水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合
物、アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、
亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類また
はアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用い
ることができる。また、市販のものを好適に使用するこ
とができ、かかる市販の脱酸素剤としては、たとえば、
エージレス(三菱瓦斯化学(株)製)、モデュラン(日
本化薬(株)製)などがあげられる。
【0083】これら脱酸素剤は本発明の輸液剤に使用す
る容器に使用する耐熱性軟質合成樹脂に含有させた形で
使用することもできる。
【0084】本件明細書において、輸液成分であるアミ
ノ酸の量は、遊離アミノ酸である場合にはその量を、ア
ミノ酸の塩である場合には遊離アミノ酸に換算した量
を、誘導体としている場合には誘導する前の元のアミノ
酸の量を、ジペプチド類とした場合には、その構成成分
であるアミノ酸のそれぞれに換算しなおした量をベース
とするものである。また、輸液成分であるビタミンの量
は、ビタミンA、D、EおよびKにはそれぞれに複数種
のビタミンが知られているが、これら複数種ビタミンの
総和の量をベースとし、各種ビタミンが誘導体として使
用される場合には、誘導する前のビタミンの量を、塩と
して使用される場合には、遊離の形での量をベースとす
るものである。
【0085】
【実施例】つぎに本発明の総合輸液剤を実施例に基づい
て説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0086】実施例1 [総合輸液剤の製造] (1)表1に示すアミノ酸のうち、L−システイン塩酸
塩を除くアミノ酸を約80℃に加温した注射用水(所定
量の80%量)に溶解し、ついで電解質を溶解する。溶
解後直ちに室温まで冷却し、L−システイン塩酸塩、ア
スコルビン酸、パンテノール、クエン酸および亜硫酸水
素ナトリウムを溶解する。コハク酸または水酸化ナトリ
ウムを用いてpHを6.2に調整後全量を400mlに
合わせ、メンブランフィルター(孔径0.22μm)を
用いて濾過する(A室調合液)。なお、調合液はすべて
窒素気流下で調製した。
【0087】
【表4】
【0088】(2)表2に示す成分のうち、ブドウ糖と
リン酸二水素カリウムを約60℃に加温した注射用水
(所定量の70%量)に溶解する。室温まで冷却したこ
の溶液に塩酸チアミン、リン酸リボフラビンナトリウ
ム、塩酸ピリドキシンおよびニコチン酸アミドを溶解
し、コハク酸を用いてpH3.7に調整後全量を600
mlに合わせ、メンブランフィルター(孔径0.22μ
m)を用いて濾過する(B室調合液)。なお、調合液は
すべて窒素気流下で調製し、ビタミン混合後は遮光下で
調製した。
【0089】
【表5】
【0090】(3)表3に示す脂溶性ビタミン(パルミ
チン酸レチノール、エルゴカルシフェロール、酢酸トコ
フェロール、フィトナジオン)を所定量のポリソルベー
ト80(日光ケミカルズ(株)製のTO−10M)中に
約70℃で加温溶解する(C1液)。別に0.1N水酸
化ナトリウム水溶液で約pH8に調整した注射用水(所
定量の60%量)に葉酸、ビオチン、ビタミンB12およ
びプロピレングリコール(エイエス化成(株)製のプロ
ピレングリコール日局品)を約70℃で加温溶解する
(C2液)。C2液をC1液に撹拌しながら徐々に添加し
たのち、クエン酸または水酸化ナトリウムの混合液を用
いてpH6.2に調整後全量を2.5mlに合わせ、メ
ンブランフィルター(孔径0.22μm)を用いて濾過
する(C室調合液)。なお、調合後はすべて窒素気流
下、遮光下で調製した。
【0091】
【表6】
【0092】(4)A室調合液とB室調合液は、ポリプ
ロピレンと水素添加スチレン−エチレン−ブタジエンコ
ポリマーの混合樹脂からなるソフトバッグの弱シール部
で隔離された薬剤室にそれぞれ400mL(A室)と6
00mL(B室)を充填する。C室調合液は環状ポリオ
レフィン製チューブに2.5mL充填後、A室に設けた
輸液供給部内に装着する。空間部をチッ素置換後、各室
の開口部を融着密封シールする。密封後、105℃で1
0分間熱水スプレー滅菌を行なう。
【0093】(5)酸素非透過性膜材(外層が延伸ナイ
ロン、内層がポリエチレン、中間層がエチレン−ビニル
アルコール共重合体のラミネートフィルム)からなる外
袋に(4)で調製した輸液入りソフトバッグおよび脱酸
素剤(エージレス、三菱瓦斯化学(株)製)を入れたの
ち密封する。
【0094】[A室輸液剤〜C室輸液剤および3液混合
輸液剤の安定性評価]A室輸液剤、B室輸液剤、C室輸
液剤およびこれらを混合した混合輸液剤の安定性を下記
方法によって評価する。結果をそれぞれ表4〜表7に示
す。
【0095】(A室輸液剤の安定性)実施例1−(1)
で得られたA室調合液をチッ素で置換したソフトバッグ
に充填し、脱酸素剤(エージレス、三菱瓦斯化学(株)
製)とともに酸素非透過性膜材(外層が延伸ナイロン、
内層がポリエチレン、中間層がエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体のラミネートフィルム)からなる外袋に入
れ密封したサンプルを40℃、50℃および60℃の恒
温槽に所定の期間保存後、外袋を開封し、肉眼で外観を
観察した。輸液の着色の指標として400nmにおける
吸光度を分光光度計により測定した。pHはpHメータ
ーにより測定した。アスコルビン酸およびパンテノール
は高速液体クロマトグラフ法により、また塩酸システイ
ンはDTNB(5,5′−ジチオビス−(2−ニトロ安
息香酸))により発色させ、410nmの吸光度を測定
して定量した。
【0096】
【表7】
【0097】(B室輸液剤の安定性)実施例1−(2)
で得られたB室調合液をチッ素置換したソフトバッグに
充填し、外袋包装を施したサンプルを60℃の恒温槽に
所定の期間保存後、外袋を開封し肉眼で外観を観察し
た。輸液の着色の指標として400nmの吸光度を分光
光度計により測定した。pHはpHメーターにより測定
した。塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ア
ミドは高速液体クロマトグラフ法により、またリン酸リ
ボフラビンナトリウムはルミフラビン蛍光法(化学大辞
典(共立出版(株)より1960年発行)862頁)に
より定量した。
【0098】
【表8】
【0099】(C室輸液剤の安定性)実施例1−(3)
で得られたC室調合液をチッ素置換した環状ポリオレフ
ィン製チューブに充填し、40℃および50℃の恒温槽
に所定の期間保存後、C室を開封し、パルミチン酸レチ
ノール、酢酸トコフェロール、フィトナジオン、葉酸、
ビタミンHおよびビタミンB12含量を高速液体クロマト
グラフ法により定量した。
【0100】
【表9】
【0101】(3液混合輸液剤の安定性)実施例1−
(5)で製造したサンプルの外袋を開封してA室輸液〜
C室輸液を混合する。混合液の入ったソフトバッグを褐
色の遮光フィルムで覆い、蛍光灯散光下(約800Lu
x)室温で保存した。24時間後および48時間後に外
観を観察し、前記と同様の方法で吸光度、pHおよびビ
タミン含量(塩酸チアミン、アスコルビン酸)を測定し
た。
【0102】
【表10】
【0103】本発明の輸液は、用時隔壁を開通し、3液
を混合した後投与されるが、混合液の安定性は、48時
間後も良好であった。
【0104】実施例2〜13 表8〜11に記載の成分を実施例1と同様に処理してA
室輸液〜C室輸液を製造し、本発明の総合輸液剤を得
る。
【0105】
【表11】
【0106】
【表12】
【0107】
【表13】
【0108】
【表14】
【0109】
【発明の効果】本発明の総合輸液剤は、連通可能な隔離
手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことな
く混合することができる3室を有する輸液容器の各室
に、アミノ酸、ビタミン、電解質および還元糖を特定の
区分で配合することにより、患者の生命維持に必要なこ
れら成分全てを含むとともに、沈殿の生成、変質、着色
を生じず、成分の分解・減少も最小限に抑制され、長期
間安定に保存することができる。
【0110】かかる本発明の総合輸液剤は、患者に投与
する前に、連通可能な隔離手段で区画されたA室〜C室
の輸液を混合したのち、必要に応じて輸液フィルターを
通過させたうえで、経静脈的に患者に投与することがで
き、末梢静脈および中心静脈のいずれを経由して投与し
てもよい。
【0111】本発明の総合輸液剤は必要時に内容物を外
気にさらすことなく混合することができ、使用時の混合
操作で菌汚染が生じることもなく、また、脂肪乳剤を含
む必要がなく、患者に投与する直前に細菌が通過できな
い輸液フィルターを通過させることができるため、輸液
投与に伴う感染症の危険性を最小限に止めることができ
る。
【0112】さらに、本発明の総合輸液製剤は脂肪乳剤
を含まないため、患者臓器への脂肪蓄積、血中トリグリ
セリド濃度の上昇をきたすこともなく、長期間にわたっ
て投与する場合でも安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される輸液容器の一例を示す概略
説明図である。
【図2】図1に示される輸液容器を構成する輸液供給部
中の連通用部材が連通する前の状態を示す部分断面説明
図である。
【図3】図1に示される輸液容器を構成する輸液供給部
中の連通用部材が破断により連通したのちの状態を示す
部分断面説明図である。
【符号の説明】
1 輸液容器 2 A室 3 B室 4 C室 5 連通可能な隔離手段 6 カバー部材 7 輸液供給部 8 懸垂孔 9、10 密封シール部 11 連通用部材 12 膜 13 破断部 14 レバー 15 縮径部 16 栓体 17 連通部 18 チューブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/355 A61K 31/355 31/375 31/375 31/415 614 31/415 614 31/44 31/44 31/455 31/455 31/51 31/51 31/525 31/525 31/59 601 31/59 601 31/714 31/70 601 31/70 601 31/68 (72)発明者 古川 義一 大阪市天王寺区上本町8−3−23 (72)発明者 冨岡 千枝 京都府八幡市男山吉井6−6 (72)発明者 松田 三郎 京都市中京区二条通西洞院東入ル正行寺町 665 (72)発明者 大島 英彦 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500 テル モ株式会社内 (72)発明者 有田 隆 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500 テル モ株式会社内 (72)発明者 繁田 賢治 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500 テル モ株式会社内 (72)発明者 上田 努 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500 テル モ株式会社内 Fターム(参考) 4C076 AA12 BB17 CC23 CC24 DD22 DD23 DD24 DD24Q DD26 DD30Z DD38 DD38E DD39 DD40 DD41 DD42Z DD43Z DD80E DD80R EE32 FF39 4C086 AA01 BA09 BA18 BC18 BC19 BC82 CB09 CB28 DA14 DA39 EA01 GA07 GA10 MA03 MA04 MA66 NA03 NA04 ZA51 4C206 AA01 DA12 FA44 FA53 GA36 MA03 MA37 MA86 NA03 ZA51

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連通可能な隔離手段で区画され、連通
    後、内容物を外気にさらすことなく混合することができ
    る3室を有する輸液容器の、A室にアミノ酸およびビタ
    ミンCを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンB
    1を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビ
    タミンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されて
    おり、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質
    が含有されていることを特徴とする総合輸液剤。
  2. 【請求項2】 A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液
    のpHが2.5〜5、C室の輸液のpHが4〜8であ
    り、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.
    0〜7.5である請求項1記載の総合輸液剤。
  3. 【請求項3】 B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C
    室の輸液のpHが4.5〜7である請求項2記載の総合
    輸液剤。
  4. 【請求項4】 葉酸およびビタミンHのそれぞれが、少
    なくともA室およびC室のいずれかの輸液に含有されて
    おり、ビタミンB12がB室およびC室のいずれかの輸液
    に含有されており、パントテン酸類、ビタミンB2、ビ
    タミンB6およびニコチン酸類のそれぞれが、少なくと
    もA室、B室およびC室のいずれかの輸液に含有されて
    いる請求項1、2または3記載の総合輸液剤。
  5. 【請求項5】 パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミ
    ンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液
    に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液
    に含有されている請求項1または2記載の総合輸液剤。
  6. 【請求項6】 パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミ
    ンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液
    に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液
    に含有されており、A室の輸液のpHが5〜8、B室の
    輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.
    5〜7である請求項1記載の総合輸液剤。
  7. 【請求項7】 電解質のうちのリン供給源とカルシウム
    供給源とが、A室の輸液とB室の輸液とに各々わけて含
    有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の
    総合輸液剤。
  8. 【請求項8】 電解質のうちのカルシウム供給源がA室
    の輸液に、リン供給源がB室の輸液に含有されている請
    求項1、2、3、4、5または6記載の総合輸液剤。
  9. 【請求項9】 電解質のうちのナトリウム供給源、カリ
    ウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の輸液
    に含有されており、少なくともA室およびB室のいずれ
    かの輸液にマグネシウム供給源が含有されている請求項
    1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液
    剤。
  10. 【請求項10】 電解質のうちのナトリウム供給源、カ
    リウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給源および
    亜鉛供給源が、A室の輸液に含有されている請求項1、
    2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液剤。
  11. 【請求項11】 A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液
    の容積比が、20〜2000:10〜2500:1であ
    る請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または1
    0記載の総合輸液剤。
  12. 【請求項12】 加熱滅菌されてなる請求項1、2、
    3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の総
    合輸液剤。
  13. 【請求項13】 連通可能な隔離手段で区画され、連通
    後、内容物を外気にさらすことなく混合することができ
    る3室を有する輸液容器の、A室に、L−イソロイシ
    ン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−
    フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファ
    ン、L−バリン、L−システイン、L−チロシン、L−
    アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アス
    パラギン酸、L−グルタミン酸、グリシン、L−プロリ
    ン、L−セリン、ビタミンC、パントテン酸類、カルシ
    ウム供給源、ナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素
    供給源および亜鉛供給源を含有するpH5〜8の輸液、
    B室に、ブドウ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミ
    ンB6、ニコチン酸類およびリン供給源を含有するpH
    2.5〜5の輸液、C室に、ビタミンA、ビタミンD、
    ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、葉酸、ビタミ
    ンHおよび溶解補助剤を含有するpH4〜8の輸液が充
    填されており、かつ、少なくともA室およびB室のいず
    れかの輸液にマグネシウム供給源が含有されており、A
    室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜
    7.5であることを特徴とする総合輸液剤。
  14. 【請求項14】 B室の輸液のpHが2.5〜4.5、
    C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項13記載の
    総合輸液剤。
  15. 【請求項15】 A室の輸液にマグネシウム供給源が含
    有されている請求項13または14記載の総合輸液剤。
  16. 【請求項16】 A室〜C室の輸液を混合した後の輸液
    1000ml中に含まれる各成分の量が次の範囲である
    請求項13、14または15記載の総合輸液剤。 【表1】
  17. 【請求項17】 A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液
    の容積比が、20〜2000:10〜2500:1であ
    る請求項13、14、15または16記載の総合輸液
    剤。
  18. 【請求項18】 加熱滅菌されてなる請求項13、1
    4、15、16または17記載の総合輸液剤。
  19. 【請求項19】 亜硫酸塩がA室の輸液に含有されてい
    る請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
    11、12、13、14、15、16、17または18
    記載の総合輸液剤。
  20. 【請求項20】 L−リジン亜硫酸塩がA室の輸液に含
    有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、
    9、10、11、12、13、14、15、16、17
    または18記載の総合輸液剤。
  21. 【請求項21】 輸液容器が、A室とB室の間に連通可
    能な隔離壁を有し、A室またはB室に輸液供給部が設け
    られており、輸液供給部内にC室が含有され、C室は破
    断によりA室またはB室へ連通する連通用部材を有して
    いる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
    0、11、12、13、14、15、16、17、1
    8、19または20記載の総合輸液剤。
  22. 【請求項22】 A室とB室の間の隔離壁が弱接着され
    た隔離壁であり、C室が有する連通用部材は、C室と連
    通し得るA室またはB室内へ突出しており、輸液容器外
    部から破断し得る請求項21記載の総合輸液剤。
  23. 【請求項23】 C室が有する連通用部材が破断された
    とき、該連通用部材を液中に浮遊させないための変形可
    能なカバー部材が設けられている請求項22記載の総合
    輸液剤。
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