JP4767375B2 - 総合輸液剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は総合輸液剤に関する。さらに詳しくは、連通可能な隔離手段および連通用部材で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合可能な3室を有する輸液容器の、A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンB1を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されており、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が含有されている、患者の生命の維持に必要な成分をすべて含み、長期間安定に保存することができ、輸液フィルターを通過させることができ、使用時には簡単に混合して使用することができる総合輸液剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、患者の生命の維持のための経口栄養、経管栄養の補給が不可能あるいは不充分な状態であったり、またはそれらが可能ではあっても患者の消化吸収機能が著しく不良であったり、さらには食物が消化管を通過するのが原疾患の悪化につながるような病態の場合には、栄養補給のために、経静脈用輸液の投与が行なわれている。このような輸液剤としては、還元糖などを含有する糖輸液、必須アミノ酸などを含有するアミノ酸輸液、ミネラル類を含有する電解質輸液、各種ビタミンを含有する混合ビタミン剤などが市販されている。これらの輸液剤が患者の症状などに合わせて使用時に適宜混合して用いられている。
【0003】
しかし、輸液剤の使用時における混合は作業従事者にとって煩雑な操作であるうえに、混合時に菌汚染の問題があり、還元糖、アミノ酸、ビタミンおよび電解質をすべて含む総合輸液剤が求められている。
【0004】
しかし、これら成分は安定に存在する条件が異なり、また、これらを混合すると種々の問題が生じ、輸液として使用できなくなる(医薬ジャーナル第15巻第9号111〜123頁(1979年))。
【0005】
たとえば、糖およびアミノ酸を溶解した輸液を加熱滅菌すると、メイラード反応により著しい着色を生じることが知られている。
【0006】
ビタミンには水溶性のものと脂溶性のものとが存在し、単一の溶媒で全てを溶解することには困難が伴うとともに、ビタミンは一般に不安定であり、また、ある種のビタミン同士を組み合わせると分解などがおこる。たとえば、ビタミンCはビタミンB12の分解を促進することなどが知られている。
【0007】
さらに、電解質のうち、リン酸およびカルシウムを含む輸液は中性・アルカリ性では加熱滅菌する際にリン酸カルシウムの沈殿を生じ易いことも知られている。
【0008】
かかる問題を解決する輸液として、特開平6−209979号公報には、第1室に脂肪乳剤、糖、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液を収容し、第2室にアミノ酸、電解質、ビタミンB6、ビタミンB12および葉酸を含有する輸液を収容する輸液剤が開示されており、使用時に第1室と第2室との間の隔離手段を取り除いて混合することにより、糖、アミノ酸、電解質およびビタミンとともに脂肪乳剤を含有する輸液を調製することが説明されている。
【0009】
しかし、この輸液では、ビタミンB1とともに、脂溶性ビタミンを安定化するために脂肪乳剤が第1室に含まれているが、脂肪の分解を避けるために、ビタミンB1が安定に存在し得ないと思われる中性pHに調整されている(特開平9−59150号公報)。また、患者に輸液を投与する際、細菌が通過できない輸液フィルター(孔径:0.20μm程度)を通して輸液を投与することが行なわれるが、脂肪乳剤はフィルターの目詰まりを生じるため、脂肪乳剤を含む前記輸液は実用化に至っていない(島田慈彦編著:輸液フィルター、2〜16頁)。
【0010】
また、特開平10−203959号公報には、還元糖を含有する溶液とアミノ酸を含有する溶液の2液からなる輸液において、アミノ酸を含有する溶液にビタミンB2およびビタミンCを含有させ、かつpH5.0〜7.0とした輸液剤が開示されており、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンや、ビタミンB1、ビタミンB12は還元糖を含有する溶液に配合されている。
【0011】
しかし、脂溶性ビタミンは、脂肪乳剤を含有しない水溶液中では、プラスチック製容器に吸着し易いため、容積の大きい容器に封入された還元糖溶液に配合すると、容器への吸着により含有量低下が生じる。また、ビタミンB1とビタミンB12は、最も安定に存在し得るpH域が異なることが知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、還元糖、アミノ酸、ビタミンおよび電解質をすべて含み、かつ、安定であるとともに、脂肪乳剤を含まず、輸液フィルターを通過する総合輸液剤を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、つぎの総合輸液剤に関するものである。
【0014】
連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、
A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、
B室に還元糖およびビタミンB1を含有する輸液、
C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液
が充填されており、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が含有されていることを特徴とする総合輸液剤(請求項1)、
A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液のpHが2.5〜5、C室の輸液のpHが4〜8であり、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜7.5である請求項1記載の総合輸液剤(請求項2)、
B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項2記載の総合輸液剤(請求項3)、
葉酸およびビタミンHのそれぞれが、少なくともA室およびC室のいずれかの輸液に含有されており、ビタミンB12がB室およびC室のいずれかの輸液に含有されており、パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類のそれぞれが、少なくともA室、B室およびC室のいずれかの輸液に含有されている請求項1、2または3記載の総合輸液剤(請求項4)、
パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液に含有されている請求項1または2記載の総合輸液剤(請求項5)、
パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液に含有されており、A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項1記載の総合輸液剤(請求項6)、
電解質のうちのリン供給源とカルシウム供給源とが、A室の輸液とB室の輸液とに各々わけて含有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の総合輸液剤(請求項7)、
電解質のうちのカルシウム供給源がA室の輸液に、リン供給源がB室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の総合輸液剤(請求項8)、
電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の輸液に含有されており、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液剤(請求項9)、
電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源が、A室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液剤(請求項10)、
A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比が、20〜2000:10〜2500:1である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の総合輸液剤(請求項11)、
加熱滅菌されてなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の総合輸液剤(請求項12)、
連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、
A室に、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリン、ビタミンC、パントテン酸類、カルシウム供給源、ナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源を含有するpH5〜8の輸液、
B室に、ブドウ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸類およびリン供給源を含有するpH2.5〜5の輸液、
C室に、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、葉酸、ビタミンHおよび溶解補助剤を含有するpH4〜8の輸液
が充填されており、かつ、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されており、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜7.5であることを特徴とする総合輸液剤(請求項13)、
B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項13記載の総合輸液剤(請求項14)、
A室の輸液にマグネシウム供給源が含有されている請求項13または14記載の総合輸液剤(請求項15)、
A室〜C室の輸液を混合した後の輸液1000ml中に含まれる各成分の量が次の範囲である請求項13、14または15記載の総合輸液剤(請求項16)、
【0015】
【表2】
【0016】
A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比が、20〜2000:10〜2500:1である請求項13、14、15または16記載の総合輸液剤(請求項17)、
加熱滅菌されてなる請求項13、14、15、16または17記載の総合輸液剤(請求項18)、
亜硫酸塩がA室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18記載の総合輸液剤(請求項19)、
L−リジン亜硫酸塩がA室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18記載の総合輸液剤(請求項20)、
輸液容器が、A室とB室の間に連通可能な隔離壁を有し、A室またはB室に輸液供給部が設けられており、輸液供給部内にC室が含有され、C室は破断によりA室またはB室へ連通する連通用部材を有している請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20記載の総合輸液剤(請求項21)、
A室とB室の間の隔離壁が弱接着された隔離壁であり、C室が有する連通用部材は、C室と連通し得るA室またはB室内へ突出しており、輸液容器外部から破断し得る請求項21記載の総合輸液剤(請求項22)および
C室が有する連通用部材が破断されたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないための変形可能なカバー部材が設けられている請求項22記載の総合輸液剤(請求項23)。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、
A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、
B室に還元糖およびビタミンB1を含有する輸液、
C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液
が充填されており、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が含有されていることを特徴とする総合輸液剤に関するものであり、
輸液容器が、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器であるため、使用混合時の菌汚染の問題がなくなる。
【0018】
また、患者の生命の維持に必要な成分(アミノ酸、電解質、ビタミン、還元糖)を全て含有させながら、安定に存在させる条件が異なる成分を使用時まで隔離された3室に入れてそれぞれに安定な条件で保存することによって、予め混合させて長期間保存した場合などに生ずる沈殿の生成、変質、着色などの種々の問題を回避することができる。
【0019】
さらに、本発明の輸液剤は、A〜C室のいずれにも脂肪乳剤を含まないため、細菌が通過できない輸液フィルターにより、除菌することができ、輸液剤を投与する場合に問題となる感染症の危険性をさらに減少させることができる。
【0020】
成分同士の相互作用より問題が生じることのない成分の組み合わせの具体例としては、A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンB1を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されており、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が含有されている総合輸液があげられる。
【0021】
前記A室に充填されるアミノ酸としては、従来から生体への栄養補給を目的とするアミノ酸輸液に含有されている各種アミノ酸(必須アミノ酸、非必須アミノ酸)があげられ、たとえば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−アスパラギン酸、L−セリン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−システイン、L−シスチンなどが例示される。これらのアミノ酸は、必ずしも遊離アミノ酸の形態で用いられる必要はなく、無機酸塩(たとえば、L−リジン塩酸塩、L−リジン亜硫酸塩、L−システイン塩酸塩(1水和物)など)、有機酸塩(たとえば、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩、L−システインリンゴ酸塩など)、生体内で加水分解可能なエステル体(たとえば、L−チロシンメチルエステル、L−メチオニンメチルエステル、L−メチオニンエチルエステルなど)、N−置換体(たとえば、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−プロリンなど)などの形態で用いてもよい。また、同種または異種のアミノ酸をペプチド結合させたジペプチド類(たとえば、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなど)などの形態で用いてもよい。
【0022】
これらアミノ酸の含有比率としては、患者の生命の維持に必要な成分が含まれている限りとくに限定はなく、通常、この技術分野で既知の指標(▲1▼1944年ローズらが決定した必須アミノ酸必要量に基づくVuj−N処方のもの、▲2▼1957年FAOの特別委員会報告によるもの、▲3▼1965年FAO/WHOの共同委員会報告による人乳または全卵アミノ酸組成に基づくもの、▲4▼血漿中アミノ酸組成のフィッシャー比など)にしたがって、種々の必須アミノ酸と非必須アミノ酸との比率(いわゆるE/N比)、あるいは全アミノ酸に対する必須アミノ酸の比率(いわゆるE/T比)を変化させ配合したもの、あるいは分岐鎖アミノ酸を、必須アミノ酸または非必須アミノ酸に対する比率を考慮しつつ、適宜含有させたものなどが用いられる。
【0023】
かかるアミノ酸組成の具体例をあげるとすれば、たとえば、術後患者用アミノ酸組成(特開昭55−33446号公報、同55−36457号公報)、必須アミノ酸を多く含むアミノ酸組成(特開昭56−8312号公報)、分岐鎖アミノ酸を29〜33%含み、新生児期に必須であるL−システインの含量を増やしたアミノ酸組成(特公平1−19363号公報)、L−チロシンとL−フェニルアラニンの重量比が1:12〜17でL−リジンの配合量を全アミノ酸の9.5%以上と多くした新生児や肝機能低下患者用アミノ酸組成(特公平3−28403号公報)、筋タンパクの崩壊を抑制するための分岐鎖アミノ酸のみの組成(特公平4−14646号公報)などがあげられる。
【0024】
これらのアミノ酸は、前記各特許公報に記載されている組成だけに限らず、これらに基づいて、アミノ酸のうちの数種の組成を改変したもの(たとえば、栄養学的に顕著な相違をもたらさない範囲で必須アミノ酸もしくは非必須アミノ酸を増減させたもの、あるいは必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比を維持しつつ必須アミノ酸もしくは非必須アミノ酸を増減させたもの)、組成パターンを維持しつつ濃度やアミノ酸全量に対する比率をかえたもの、さらには栄養学的に等価と理解され得るアミノ酸を相互に置換したもの(たとえば、含硫アミノ酸におけるシステイン、シスチン、メチオニン、芳香族アミノ酸におけるフェニルアラニン、チロシンなど)であっても本発明において好適に使用することができる。
【0025】
とりわけ、特公平1−19363号公報や同3−28403号公報には栄養学的にすぐれたアミノ酸輸液組成が記載されており、これらの特許公報中に具体的に記載されたアミノ酸組成やアミノ酸パターンをもつアミノ酸輸液、あるいはその栄養学的に同等な範囲で改変されたものを好適に使用することができる。
【0026】
前記A室に充填されるビタミンCは、ビタミンCそのものであってもよく、その誘導体およびその塩であってもよい。具体的には、ビタミンC(アスコルビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩などがあげられる。
【0027】
前記B室に充填される還元糖としては、生体内でカロリー源として代謝・利用されるものであればよく、とくに限定されないが、ブドウ糖、フルクトース、マルトースなどがあげられ、とくにブドウ糖はエネルギー源として最も生体に利用されやすいため、好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じ、これらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0028】
前記B室に充填されるビタミンB1としては、従来から使用されているものは何れも使用可能であり、たとえばチアミンであってもよく、その誘導体、具体的には、プロスルチアミン、アクトチアミン、チアミンジスルフィド、フルスルチアミンなどや、それらの塩、たとえば塩酸チアミン、硝酸チアミンなどであってもよい。
【0029】
前記C室に充填されるビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKは、そのものであってもよく、その誘導体の形で用いてもよい。具体的には、ビタミンAおよびその誘導体としては、ビタミンA1(レチノール)、ビタミンA2(3−デヒドロレチノール)、ビタミンA3(サブビタミンA)、レチネン(ビタミンAアルデヒド)、ビタミンA酸、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールなどをあげることができる。ビタミンDおよびその誘導体としてはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンD4、プロビタミンD2(エルゴステリン)、プロビタミンD3(デヒドロコレステリン)などをあげることができる。ビタミンEおよびその誘導体としてはα−トコフェロール、酢酸トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールなどをあげることができる。ビタミンKおよびその誘導体としてはビタミンK1(フィロキノン、フィトナジオン)、ビタミンK2(ファルノキノン)、ビタミンK3(メナジオン)、ビタミンK4、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK7などをあげることができる。
【0030】
前記A室および(または)B室にさらに充填される電解質としては、従来から輸液に用いられている各種水溶性塩があげられる。
【0031】
たとえば、生体の機能や体液の電解質バランスを維持するうえで必要とされる無機成分(たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガンなどの金属イオンの供給源;塩素、ヨウ素、リンなどの陰イオンの供給源)があげられ、これらのうちから必要に応じて選択のうえ、適宜A室および(または)B室の輸液に添加される。
【0032】
電解質のうち、リン供給源であるリンの水溶性塩としては、リン酸またはそのエステルあるいはこれらの塩が好適に用いられる。
【0033】
リン酸エステルの好ましい例としては、多価アルコールまたは糖のリン酸エステルをあげることができる。多価アルコールのリン酸エステルとしてはグリセロリン酸、マンニトール−1−リン酸、ソルビトール−1−リン酸などがあげられる。糖のリン酸エステルとしては、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、マンノース−6−リン酸などがあげられる。これらのリン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩を用いることができ、アルカリ金属塩を好適に用いることができる。
【0034】
リン酸の塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸二水素アルカリ金属、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどのリン酸水素アルカリ金属などがあげられる。
【0035】
リン酸またはその塩を使用する場合、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが存在すると、カルシウム塩、マグネシウム塩を形成し、中性・アルカリ性条件下では沈殿を形成し易いため、これらを配合する場合には、これらをA室とB室に分けて配合するか、両者をA室またはB室のいずれか一方に含む場合には、その液性を酸性域(pH5以下)に調整する必要がある。
【0036】
前記電解質成分のうち金属イオン供給源の好ましい具体例としては、下記のものがあげられる。
【0037】
ナトリウム供給源:塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、水酸化ナトリウム
カリウム供給源:塩化カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、水酸化カリウム
カルシウム供給源:グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム
マグネシウム供給源:硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、アミノ酸マグネシウム塩
亜鉛供給源:硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛
鉄供給源:硫酸鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、グルコン酸鉄
銅供給源:硫酸銅
マンガン供給源:硫酸マンガン
また、陰イオン供給源は、前記金属イオン供給源において金属イオンのカウンターイオンの形で供給することも、アミノ酸、ビタミンなどの塩に含まれる形で供給することもできる。また、塩酸、リン酸などの形で金属イオン供給源、アミノ酸、ビタミンと組み合わせることなく供給することもできる。
【0038】
本発明の輸液剤においては、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液1000ml中に含まれる各成分の量が、アミノ酸10〜55g、ビタミンC25〜130mg、ビタミンA1000〜5000IU、ビタミンD2.5〜15μg、ビタミンE5〜20mg、ビタミンK0.5〜3mg、還元糖50〜500g、ビタミンB11〜50mg、電解質としては、カルシウム3〜15mEq、リン1〜20mmol、亜鉛0〜30μmol、マグネシウム2〜15mEq、カリウム10〜35mEq、ナトリウム15〜70mEq、塩素0〜80mEq、鉄4〜100μmol、銅0.5〜40μmol、マンガン1.0〜60μmol、ヨウ素0.3〜1μmolの濃度で使用するのが好ましい。
【0039】
前記A室におけるアミノ酸およびビタミンCは、いずれも水溶性であり、pH5〜8の中性領域で安定であり、1つの輸液中に溶解させても沈殿の生成、変質、着色などがおこらず、安定に存在する。
【0040】
また、前記B室における還元糖およびビタミンB1は、いずれも水溶性であり、pH2.5〜5(より好ましくはpH2.5〜4.5)の領域で安定であるため、1つの輸液中に溶解させても沈殿の生成、変質、着色などがおこらず、安定に存在する。
【0041】
さらに、前記C室におけるビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKは、いずれもpH4〜8(より好ましくはpH4.5〜7)の領域で安定であり、また、相互作用による変性もないため、これらを1つの輸液に溶解させても沈殿の生成、変質などは生じない。これらのうち、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKは脂溶性ビタミンであり、必要に応じ、水に安定に溶解させるため、溶解補助剤を添加してもよい。溶解補助剤としては、ポリソルベート80、20などの界面活性剤、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの親水性有機溶媒を単独または組み合わせて使用することができる。前記脂溶性ビタミンは、プラスチック製容器の表面に吸着されやすく、脂溶性ビタミンを含有する輸液は、プラスチック製容器に充填する場合には、表面積の小さい容器に充填されることが好ましい。
【0042】
電解質は前記A室および(または)B室に含まれるが、いずれも水溶性が高いものであるため、各室輸液の成分、各室輸液のpHなどとの適合性も考慮のうえ、必要に応じて選択のうえ、A室、B室の輸液のいずれか一方に全てを添加してもよく、A室およびB室の輸液に適宜分散して添加してもよい。
【0043】
また、A室〜C室の輸液を混合した場合に、pH4.0〜7.5になるようにしておけば、混合時に沈殿形成、変質を生じず、また、患者に投与する際の疼痛を生じない点から好ましい。
【0044】
前記各輸液のpH調整に用いられるpH調整剤としては、生理的に許容できるものであればとくに限定されず、たとえば各種の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を使用することができるが、有機酸が好適に用いられる。前記有機酸としては、たとえばクエン酸、酢酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸などがあげられ、無機酸としては塩酸、リン酸などをあげることができる。一方、有機塩基としてはクエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、マロン酸ナトリウムなどをあげることができ、無機塩基としては水酸化アルカリ金属などをあげることができる。
【0045】
なお、A室およびC室の少なくとも1室に含まれる輸液に、葉酸およびビタミンHが含まれていてもよく、B室およびC室の少なくとも1室に含まれる輸液に、ビタミンB12が含まれていてもよく、また、A室、B室およびC室の少なくとも1室に含まれる輸液にパントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類が含まれていてもよい。
【0046】
前記葉酸およびビタミンHのA室およびC室への含まれ方にはとくに限定はなく、これら2種のビタミンが単独でまたは2種でA室およびC室の少なくとも1室に含まれていさえすればよい。ビタミンB12のB室およびC室への含まれ方にもとくに限定はなく、B室およびC室の少なくとも1室に含まれていさえすればよい。また、パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類のA室、B室およびC室への含まれ方にもとくに限定はなく、これら4種のビタミンが単独でまたは2種以上でA室、B室およびC室の少なくとも1室に含まれていさえすればよい。ただし、パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液に配合されているのが好ましい。
【0047】
前記A室およびC室の少なくとも1室に含まれ得る葉酸およびビタミンH(ビオチン)も、そのものであってもよく、その誘導体の形で用いてもよい。葉酸およびビタミンHはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩として用いることもできる。
【0048】
前記B室およびC室の少なくとも1室に含まれ得るビタミンB12もそのものであってもよく、その誘導体の形で用いてもよい。具体的には、シアノコバラミン、酢酸、ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミンなどがあげられる。
【0049】
また、前記A室、B室およびC室の少なくとも1室に含まれ得るパントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類も、そのものであってもよく、その誘導体の形で用いてもよい。具体的には、パントテン酸類の誘導体としては、パンテノールなどが、ビタミンB2(リボフラビン)の誘導体としては、リン酸リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなどが、ビタミンB6(ピリドキシン)の誘導体としてはリン酸ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサシンなどがあげられる。また、パントテン酸類は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などの塩の形で、ビタミンB2およびビタミンB6は塩酸塩などの塩の形で用いてもよい。ニコチン酸類としてはニコチン酸アミド、ニコチン酸などがあげられ、これらは塩の形で使用することもできる。
【0050】
また、電解質のうちリン酸、リン酸二水素アルカリ金属、リン酸水素アルカリ金属などのリン供給源とカルシウム供給源とが、A室の輸液とB室の輸液に分けて含有されているのが、リン酸カルシウムの形成を抑制し、かつ、混合後の輸液剤のpHを中性域としやすい点から好ましい。さらに、カルシウム供給源がA室の輸液に、リン供給源がB室の輸液に含有されているのが好ましい。
【0051】
また、電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の輸液に含有されており、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されているのが好ましい。また、電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の輸液に配合されているのが、B室のイオン強度が下がり、ビタミンB1が安定化される点から好ましい。
【0052】
また、各室に収容される輸液には、加熱滅菌時および保存時の着色を防止するために着色防止剤(たとえば、チオグリセロール、ジチオスレオトールなど)を添加してもよい。着色防止剤の添加量は、輸液に対して、通常1%程度以下とするのが好ましい。
【0053】
さらに、A室および(または)C室に収容される輸液には、抗酸化剤として、チオグリセロール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸の塩基性アミノ酸塩(たとえば、L−リジン亜硫酸塩)などの亜硫酸塩を添加してもよい。とりわけビタミンCは酸化されやすく、A室に収容される輸液は亜硫酸塩を添加することが好ましい。これらの添加量は、A室またはC室の輸液に対して通常0.025〜0.25g/L程度とするのが好ましく、亜硫酸の塩基性アミノ酸塩を使用する場合には、0.2〜0.7g/L程度とするのが好ましい。また、亜硫酸の塩基性アミノ酸塩を亜硫酸塩として使用する場合には、亜硫酸塩として含まれるアミノ酸の量も含めて、亜硫酸塩以外のアミノ酸の配合量を調整しなければならない。なお、B室にはビタミンB1が含有されているので、この分解を防ぐためにB室には亜硫酸塩を添加することは好ましくない。また、B室に収容される輸液には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの緩衝剤を添加してもよい。これらの添加量は、輸液に対して、通常1%程度以下である。
【0054】
前記のごとき、本発明の総合輸液剤を形成するA室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比は、20〜2000:10〜2500:1、さらには80〜320:120〜480:1であるのが好ましい。
【0055】
前記のごときA室〜C室に充填される各輸液は、いずれも細菌の除去などのためにメンブランフィルターを使用して濾過したのち充填する。本発明の総合輸液剤の各室に充填された輸液には脂肪乳剤が含まれないため、細菌が通過できない0.2μmの孔径の輸液フィルターを使用して濾過したうえで本発明に用いる輸液容器に充填することができる。
【0056】
さらにA室〜C室に各輸液剤が充填された本発明の総合輸液剤は、加熱滅菌されているのが好ましく、また、A室〜C室の輸液は予め加熱滅菌したものを各室に無菌的に充填・密封してもよいが、A室〜C室に輸液を不活性ガス雰囲気下にて充填・密封後、加熱滅菌するのが効率的であるとともに、細菌の混入による弊害を防止することができる点から好ましい。加熱滅菌の方法としては、慣用の方法をいずれも使用することができ、たとえば、高圧蒸気滅菌、熱水浸漬滅菌、熱水シャワー滅菌などの方法により行なうことができる。
【0057】
本発明の輸液剤は、充填前に加熱滅菌を行なう場合でも、充填後に加熱滅菌を行なう場合でも、A室〜C室の輸液は沈殿の生成、変質、着色を生じず、また、含有成分の加熱処理による分解・減少も最小限に抑制することができる。
【0058】
本発明の総合輸液剤のさらに具体的な例として、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、A室に、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリン、ビタミンC、パントテン酸類、カルシウム供給源、ナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源を含有するpH5〜8の輸液、B室に、ブドウ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸類およびリン供給源を含有するpH2.5〜5の輸液、C室に、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、葉酸、ビタミンHおよび溶解補助剤を含有するpH4〜8の輸液が充填されており、かつ、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液に、好ましくはA室の輸液にマグネシウム供給源が含有されており、A室、B室およびC室の輸液を混合したのちの輸液のpHが4.0〜7.5となる総合輸液剤があげられる。
【0059】
本発明の総合輸液剤のより好ましい具体例としては、前記具体例においてA室〜C室の輸液を混合したのちの輸液1000ml中に各成分が次表記載の範囲となるように配合されている輸液剤をあげることができる。
【0060】
【表3】
【0061】
これら総合輸液剤において、A室の輸液、B室の輸液およびC室の輸液の容積比が20〜2000:10〜2500:1であるのが好ましい。
【0062】
さらに、これら具体的な本発明の総合輸液剤はいずれも前述の方法により加熱滅菌されていてもよく、各室の輸液はメンブランフィルターにより除菌されたのち充填されていてもよい。
【0063】
本発明の総合輸液剤に使用する輸液容器としては、前記のごときA室とB室の間に連通可能な隔離壁を有し、A室またはB室に輸液供給部が設けられており、輸液供給部内にC室が含有され、C室は破断によりA室またはB室へ連通可能な連通用部材を有している輸液容器があげられる。前記A室とB室の間の隔離壁は弱接着された隔離壁であり、C室が有する連通用部材が破断されたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないための変形可能なカバー部材が設けられているのが好ましい。
【0064】
つぎに、本発明の総合輸液剤に使用する、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合可能な3室を有する輸液容器について具体的に説明する。
【0065】
図1に、本発明に使用する輸液容器の一例を示す。図1において、1は本発明に使用する輸液容器、2はA室、3はB室、5はA室とB室とを、使用時に連通する隔離手段(以下、連通可能な隔離手段ともいう)、6はC室が有する連通用部材11(図2を参照)を破断させたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないための変形可能なカバー部材、7はC室4(図2を参照)を含有する輸液供給部、8は懸垂孔、9、10は密封シール部を表わす。
【0066】
輸液容器1は、ある程度の耐熱性のある軟質合成樹脂、たとえばポリオレフィン類(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンまたはポリブテンとの混合物、前記ポリオレフィンの部分架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体など)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フッ化エチレン−塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ナイロン、スチレン系エラストマーなどを単独でまたはこれら重合体を適宜混合して得られる混合物で形成されるシート、あるいはこれらシートを貼りあわせて形成される多層シートで袋状物を作成し、輸液供給部7を設けた密閉容器である。この容器に使用する耐熱性軟質合成樹脂としては、ポリプロピレンとスチレン系エラストマー(たとえば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブタジエン共重合体)との混合物などを使用するのが好ましい。
【0067】
輸液容器1から輸液供給部7をのぞいた容器本体は前記樹脂をブロー成形することにより形成したもの、前記樹脂から形成された2枚のシートの周縁部を融着して形成したもの、インフレーション成形機により前記樹脂を押し出し成形して筒状に成形したものの開口部を融着するなどすることにより製造したもののいずれでもよい。
【0068】
A室2とB室3との間に形成された破断などにより連通可能な隔離手段5は、使用時に隔離手段5で隔離された一方の室を、たとえば外部から押圧することによりシール部が剥離し、輸液が外気にふれることなく混合できるようになっている。
【0069】
連通可能な隔離手段5は、A室2またはB室3を外部から押圧したり握るなどして室内に内圧を生じさせた際に容器本体の周縁部のシール強度および容器本体を形成するシートの破断強度よりも弱い力で破壊または剥離するように輸液容器1を形成する樹脂の特性に応じてシール時の条件(熱シールの場合は金型の温度・押圧力・時間など)を調整して形成される。
【0070】
A室2とC室4との間に形成された連通可能な連通用部材(破断連通用部材)11の連通前の状態を図2に、連通後の状態を図3にそれぞれ部分断面説明図として示す。
【0071】
C室4は、A室2および連通可能な隔離手段5で隔離されたB室3からなる筒状の容器本体のA室に設けられた輸液供給部7の先端開口を封止する膜12と、輸液供給部7のA室2側に設けられた連通用部材11に囲まれて形成されている。
【0072】
連通用部材11は、A室2の中に突出している。この連通用部材11は、薄肉脆弱部よりなる周状の破断部13と、破断部13の破断操作を行なうためのレバー14とを有している。破断部13は、C室4の縮径部15とレバー14の端部とを連結している。レバー14をカバー部材6とともに把持して横方向に力を加えると、破断部13が破断して縮径部15に開口が形成され、C室4とA室2とが連通する。
【0073】
輸液供給部7と連通用部材11とは、別部材を接合したものでもよいが、一体に形成されているものが好ましい。
【0074】
連通用部材11は、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの硬質樹脂から形成されている。とくにポリプロピレンが好適に用いられる。連通用部材11を破断したのち、レバー14が浮遊しないようにするために変形可能なカバー部材6を設けるのが好ましい。なお、カバー部材6には、C室に含有される輸液とA室、B室に含有される輸液とが混合されるように、開口した連通部17が設けられている。
【0075】
輸液容器1に輸液が充填されたものの製造方法としては、たとえばつぎの方法があげられる。まず所定の大きさ、容量の輸液容器1を形成する部品を製造する。当初、連通可能な隔離手段(弱シール部)5を形成した容器本体の両端は密封シールをしない状態にしておき、B室3になる側に所定量の輸液を分注し、密封シール部9を密封シールするとともに懸垂口8を形成する。ついで、A室2側に所定量の輸液を分注し、前もってC室4を形成し、輸液を分注しておいた輸液供給部7を挿入し、密封シールをする。すなわち、C室4に予め輸液を分注しておき、C室4の先端側に膜12(ポリプロピレン等のプラスチック製、該先端に熱融着可能な材質があることが好ましい)を装着するとともに、A室2側にカバー部材6を装着する。ついで輸液供給部7を形成するポリプロピレン等のプラスチック製の硬質なチューブ18に挿入するとともにブチルゴムやイソプレンゴム等のゴム、あるいはスチレン系エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体など)やオレフィン系エラストマー等からなる栓体16を装着する。このようにして組み立てた輸液供給部7を容器本体の先端開口部の途中まで挿入し、そこを密封シールし、本発明の総合輸液剤は完成する。
【0076】
本発明においては、容器本体は、ポリプロピレンと水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体の混合樹脂を押出成形により筒状に成形したものを使用するのが好ましい。C室4および連通用部材11はポリプロピレン、ポリカーボネートなどの硬質樹脂を用いて一体に成形したものを使用するのが好ましい。また、膜12もポリプロピレン、ポリカーボネートなどの硬質樹脂を用いるのが好ましい。
【0077】
前記輸液容器ではA室2にC室4を含有する輸液供給部7を設けたが、B室などほかの部分に設けてもよい。
【0078】
本発明の総合輸液剤は、容器内の輸液の変質を防止するために、さらに酸素非透過性の膜材で外包装してもよい。
【0079】
前記酸素非透過性の膜材としては、たとえばエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどを中間層として含む3層ラミネートフィルム(たとえば外層がポリエステルフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムなどからなり、内層が未延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフィルムなど)、アルミニウム層を含むラミネートフィルム(たとえばポリエステルフィルム−アルミニウム層−未延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフィルムなど)、無機質蒸着フィルムを含むラミネートフィルム(たとえばポリエステルフィルム−ケイ素蒸着フィルム−未延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム−ケイ素蒸着フィルム−未延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム−アルミニウム蒸着フィルム−未延伸ポリプロピレンフィルム、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム−ポリ塩化ビニリデンフィルム−未延伸ポリプロピレンフィルムからなるラミネートフィルムなど)などがあげられる。
【0080】
また、本発明の総合輸液剤に外包装を施す場合には、必要に応じて、外包装に遮光性、紫外線遮断性を持たせることによって、さらに変質の防止をはかることができる。
【0081】
前記外包装と総合輸液剤との間に脱酸素剤を収容してもよく、さらに常法に準じて、真空包装、不活性ガス(たとえばチッ素ガスなど)充填包装などしてもよい。
【0082】
前記脱酸素剤としては、たとえば、▲1▼炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、▲2▼水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性炭と水、結晶水を有する化合物、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜二チオン酸塩との混合物、▲3▼第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、チッ素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、▲4▼鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、▲5▼鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、▲6▼周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、▲7▼アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用いることができる。また、市販のものを好適に使用することができ、かかる市販の脱酸素剤としては、たとえば、エージレス(三菱瓦斯化学(株)製)、モデュラン(日本化薬(株)製)などがあげられる。
【0083】
これら脱酸素剤は本発明の輸液剤に使用する容器に使用する耐熱性軟質合成樹脂に含有させた形で使用することもできる。
【0084】
本件明細書において、輸液成分であるアミノ酸の量は、遊離アミノ酸である場合にはその量を、アミノ酸の塩である場合には遊離アミノ酸に換算した量を、誘導体としている場合には誘導する前の元のアミノ酸の量を、ジペプチド類とした場合には、その構成成分であるアミノ酸のそれぞれに換算しなおした量をベースとするものである。また、輸液成分であるビタミンの量は、ビタミンA、D、EおよびKにはそれぞれに複数種のビタミンが知られているが、これら複数種ビタミンの総和の量をベースとし、各種ビタミンが誘導体として使用される場合には、誘導する前のビタミンの量を、塩として使用される場合には、遊離の形での量をベースとするものである。
【0085】
【実施例】
つぎに本発明の総合輸液剤を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
実施例1
[総合輸液剤の製造]
(1)表1に示すアミノ酸のうち、L−システイン塩酸塩を除くアミノ酸を約80℃に加温した注射用水(所定量の80%量)に溶解し、ついで電解質を溶解する。溶解後直ちに室温まで冷却し、L−システイン塩酸塩、アスコルビン酸、パンテノール、クエン酸および亜硫酸水素ナトリウムを溶解する。コハク酸または水酸化ナトリウムを用いてpHを6.2に調整後全量を400mlに合わせ、メンブランフィルター(孔径0.22μm)を用いて濾過する(A室調合液)。なお、調合液はすべて窒素気流下で調製した。
【0087】
【表4】
【0088】
(2)表2に示す成分のうち、ブドウ糖とリン酸二水素カリウムを約60℃に加温した注射用水(所定量の70%量)に溶解する。室温まで冷却したこの溶液に塩酸チアミン、リン酸リボフラビンナトリウム、塩酸ピリドキシンおよびニコチン酸アミドを溶解し、コハク酸を用いてpH3.7に調整後全量を600mlに合わせ、メンブランフィルター(孔径0.22μm)を用いて濾過する(B室調合液)。なお、調合液はすべて窒素気流下で調製し、ビタミン混合後は遮光下で調製した。
【0089】
【表5】
【0090】
(3)表3に示す脂溶性ビタミン(パルミチン酸レチノール、エルゴカルシフェロール、酢酸トコフェロール、フィトナジオン)を所定量のポリソルベート80(日光ケミカルズ(株)製のTO−10M)中に約70℃で加温溶解する(C1液)。別に0.1N水酸化ナトリウム水溶液で約pH8に調整した注射用水(所定量の60%量)に葉酸、ビオチン、ビタミンB12およびプロピレングリコール(エイエス化成(株)製のプロピレングリコール日局品)を約70℃で加温溶解する(C2液)。C2液をC1液に撹拌しながら徐々に添加したのち、クエン酸または水酸化ナトリウムの混合液を用いてpH6.2に調整後全量を2.5mlに合わせ、メンブランフィルター(孔径0.22μm)を用いて濾過する(C室調合液)。なお、調合後はすべて窒素気流下、遮光下で調製した。
【0091】
【表6】
【0092】
(4)A室調合液とB室調合液は、ポリプロピレンと水素添加スチレン−エチレン−ブタジエンコポリマーの混合樹脂からなるソフトバッグの弱シール部で隔離された薬剤室にそれぞれ400mL(A室)と600mL(B室)を充填する。C室調合液は環状ポリオレフィン製チューブに2.5mL充填後、A室に設けた輸液供給部内に装着する。空間部をチッ素置換後、各室の開口部を融着密封シールする。密封後、105℃で10分間熱水スプレー滅菌を行なう。
【0093】
(5)酸素非透過性膜材(外層が延伸ナイロン、内層がポリエチレン、中間層がエチレン−ビニルアルコール共重合体のラミネートフィルム)からなる外袋に(4)で調製した輸液入りソフトバッグおよび脱酸素剤(エージレス、三菱瓦斯化学(株)製)を入れたのち密封する。
【0094】
[A室輸液剤〜C室輸液剤および3液混合輸液剤の安定性評価]
A室輸液剤、B室輸液剤、C室輸液剤およびこれらを混合した混合輸液剤の安定性を下記方法によって評価する。結果をそれぞれ表4〜表7に示す。
【0095】
(A室輸液剤の安定性)
実施例1−(1)で得られたA室調合液をチッ素で置換したソフトバッグに充填し、脱酸素剤(エージレス、三菱瓦斯化学(株)製)とともに酸素非透過性膜材(外層が延伸ナイロン、内層がポリエチレン、中間層がエチレン−ビニルアルコール共重合体のラミネートフィルム)からなる外袋に入れ密封したサンプルを40℃、50℃および60℃の恒温槽に所定の期間保存後、外袋を開封し、肉眼で外観を観察した。輸液の着色の指標として400nmにおける吸光度を分光光度計により測定した。pHはpHメーターにより測定した。アスコルビン酸およびパンテノールは高速液体クロマトグラフ法により、また塩酸システインはDTNB(5,5′−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸))により発色させ、410nmの吸光度を測定して定量した。
【0096】
【表7】
【0097】
(B室輸液剤の安定性)
実施例1−(2)で得られたB室調合液をチッ素置換したソフトバッグに充填し、外袋包装を施したサンプルを60℃の恒温槽に所定の期間保存後、外袋を開封し肉眼で外観を観察した。輸液の着色の指標として400nmの吸光度を分光光度計により測定した。pHはpHメーターにより測定した。塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミドは高速液体クロマトグラフ法により、またリン酸リボフラビンナトリウムはルミフラビン蛍光法(化学大辞典(共立出版(株)より1960年発行)862頁)により定量した。
【0098】
【表8】
【0099】
(C室輸液剤の安定性)
実施例1−(3)で得られたC室調合液をチッ素置換した環状ポリオレフィン製チューブに充填し、40℃および50℃の恒温槽に所定の期間保存後、C室を開封し、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、フィトナジオン、葉酸、ビタミンHおよびビタミンB12含量を高速液体クロマトグラフ法により定量した。
【0100】
【表9】
【0101】
(3液混合輸液剤の安定性)
実施例1−(5)で製造したサンプルの外袋を開封してA室輸液〜C室輸液を混合する。混合液の入ったソフトバッグを褐色の遮光フィルムで覆い、蛍光灯散光下(約800Lux)室温で保存した。24時間後および48時間後に外観を観察し、前記と同様の方法で吸光度、pHおよびビタミン含量(塩酸チアミン、アスコルビン酸)を測定した。
【0102】
【表10】
【0103】
本発明の輸液は、用時隔壁を開通し、3液を混合した後投与されるが、混合液の安定性は、48時間後も良好であった。
【0104】
実施例2〜13
表8〜11に記載の成分を実施例1と同様に処理してA室輸液〜C室輸液を製造し、本発明の総合輸液剤を得る。
【0105】
【表11】
【0106】
【表12】
【0107】
【表13】
【0108】
【表14】
【0109】
【発明の効果】
本発明の総合輸液剤は、連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の各室に、アミノ酸、ビタミン、電解質および還元糖を特定の区分で配合することにより、患者の生命維持に必要なこれら成分全てを含むとともに、沈殿の生成、変質、着色を生じず、成分の分解・減少も最小限に抑制され、長期間安定に保存することができる。
【0110】
かかる本発明の総合輸液剤は、患者に投与する前に、連通可能な隔離手段で区画されたA室〜C室の輸液を混合したのち、必要に応じて輸液フィルターを通過させたうえで、経静脈的に患者に投与することができ、末梢静脈および中心静脈のいずれを経由して投与してもよい。
【0111】
本発明の総合輸液剤は必要時に内容物を外気にさらすことなく混合することができ、使用時の混合操作で菌汚染が生じることもなく、また、脂肪乳剤を含む必要がなく、患者に投与する直前に細菌が通過できない輸液フィルターを通過させることができるため、輸液投与に伴う感染症の危険性を最小限に止めることができる。
【0112】
さらに、本発明の総合輸液製剤は脂肪乳剤を含まないため、患者臓器への脂肪蓄積、血中トリグリセリド濃度の上昇をきたすこともなく、長期間にわたって投与する場合でも安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される輸液容器の一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示される輸液容器を構成する輸液供給部中の連通用部材が連通する前の状態を示す部分断面説明図である。
【図3】図1に示される輸液容器を構成する輸液供給部中の連通用部材が破断により連通したのちの状態を示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
1 輸液容器
2 A室
3 B室
4 C室
5 連通可能な隔離手段
6 カバー部材
7 輸液供給部
8 懸垂孔
9、10 密封シール部
11 連通用部材
12 膜
13 破断部
14 レバー
15 縮径部
16 栓体
17 連通部
18 チューブ
Claims (21)
- 連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、
A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、
B室に還元糖およびビタミンB1を含有する輸液、
C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されており、A室および(または)B室の輸液にさらに電解質が含有され、C室が、環状ポリオレフィン、ポリプロピレンまたはポリカーボネートであるプラスチックからなり、A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比が、20〜2000:10〜2500:1であり、脂肪乳剤を含まないことを特徴とする総合輸液剤。 - A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液のpHが2.5〜5、C室の輸液のpHが4〜8であり、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜7.5である請求項1記載の総合輸液剤。
- B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項2記載の総合輸液剤。
- 葉酸およびビタミンHのそれぞれが、少なくともA室およびC室のいずれかの輸液に含有されており、ビタミンB12がB室およびC室のいずれかの輸液に含有されており、パントテン酸類、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類のそれぞれが、少なくともA室、B室およびC室のいずれかの輸液に含有されている請求項1、2または3記載の総合輸液剤。
- パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液に含有されている請求項1または2記載の総合輸液剤。
- パントテン酸類がA室の輸液に、ビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸類がB室の輸液に、ビタミンB12、葉酸およびビタミンHがC室の輸液に含有されており、A室の輸液のpHが5〜8、B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項1記載の総合輸液剤。
- 電解質のうちのリン供給源とカルシウム供給源とが、A室の輸液とB室の輸液とに各々わけて含有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の総合輸液剤。
- 電解質のうちのカルシウム供給源がA室の輸液に、リン供給源がB室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5または6記載の総合輸液剤。
- 電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源がA室の輸液に含有されており、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液剤。
- 電解質のうちのナトリウム供給源、カリウム供給源、マグネシウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源が、A室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の総合輸液剤。
- 加熱滅菌されてなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の総合輸液剤。
- 連通可能な隔離手段で区画され、連通後、内容物を外気にさらすことなく混合することができる3室を有する輸液容器の、
A室に、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリン、ビタミンC、パントテン酸類、カルシウム供給源、ナトリウム供給源、カリウム供給源、塩素供給源および亜鉛供給源を含有するpH5〜8の輸液、
B室に、ブドウ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸類およびリン供給源を含有するpH2.5〜5の輸液、
C室に、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、葉酸、ビタミンHおよび溶解補助剤を含有するpH4〜8の輸液
が充填されており、かつ、少なくともA室およびB室のいずれかの輸液にマグネシウム供給源が含有されており、A室〜C室の輸液を混合した後の輸液のpHが4.0〜7.5であり、C室が、環状ポリオレフィン、ポリプロピレンまたはポリカーボネートであるプラスチックからなり、A室の輸液、B室の輸液、C室の輸液の容積比が、20〜2000:10〜2500:1であり、脂肪乳剤を含まないことを特徴とする総合輸液剤。 - B室の輸液のpHが2.5〜4.5、C室の輸液のpHが4.5〜7である請求項12記載の総合輸液剤。
- A室の輸液にマグネシウム供給源が含有されている請求項12または13記載の総合輸液剤。
- 加熱滅菌されてなる請求項12、13、14または15記載の総合輸液剤。
- 亜硫酸塩がA室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16記載の総合輸液剤。
- L−リジン亜硫酸塩がA室の輸液に含有されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16記載の総合輸液剤。
- 輸液容器が、A室とB室の間に連通可能な隔離壁を有し、A室またはB室に輸液供給部が設けられており、輸液供給部内にC室が含有され、C室は破断によりA室またはB室へ連通する連通用部材を有している請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18記載の総合輸液剤。
- A室とB室の間の隔離壁が弱接着された隔離壁であり、C室が有する連通用部材は、C室と連通し得るA室またはB室内へ突出しており、輸液容器外部から破断し得る請求項19記載の総合輸液剤。
- C室が有する連通用部材が破断されたとき、該連通用部材を液中に浮遊させないための変形可能なカバー部材が設けられている請求項20記載の総合輸液剤。
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