JP3824716B2 - 中心静脈投与用輸液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元糖、アミノ酸及び電解質を含む栄養補給用の輸液に関し、更に詳細には、安定化剤及びpH調整剤を実質的に用いることなく還元糖液の安定化が図られた中心静脈投与用輸液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
消化器手術の術後患者等は、経口摂取が不可能な場合が多いため、このような患者の栄養管理は、一般に中心静脈からの高カロリー輸液(IVH)により行われている。IVHは、上記患者の栄養状態を改善しかつ良好に保つことにより、患者の回復、治癒を促進することができるものであり、その効果は絶大なものであるため、今や外科治療の分野で広く普及している。
【0003】
高カロリー輸液製剤としては、糖質、アミノ酸及び電解質を全て含んだ1剤形態のものが理想的である。しかし、糖質としてブドウ糖のような還元糖を用いる場合、アミノ酸とメイラード反応を起こして褐変の原因となるため、通常、2室容器の一方の室に還元糖を電解質と共に収容し、他方の室にアミノ酸を分離収容して製剤化することが行われている。そして、この種製剤では、それぞれの液のpHが、アミノ酸側は通常pH6〜7程度に調整され、還元糖側は糖の安定化、及びリンとカルシウムやマグネシウムとの沈殿防止のため、pH5程度或いはそれより若干低いpHに調整されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記製剤において、還元糖液は、加熱滅菌や保存により還元糖が一部分解し、着色するおそれがあるので、亜硫酸水素塩、重亜硫酸塩等の安定化剤を添加したり、pHを低めに設定(4.5前後)することが行われている。
【0005】
ところが、亜硫酸水素塩や重亜硫酸塩は、喘息患者、アトピー性非喘息患者等の一部の感受性の高い患者に対し、気管支痙攣、アナフィラキシーショック等の副作用の原因となることが、近年報告されている。また、高カロリー輸液製剤には、ビタミン製剤が混注されることが多いが、ビタミンB1(チアミン)は亜硫酸水素塩や重亜硫酸塩により分解されることが知られており、注意を要する。従って、亜硫酸水素塩や重亜硫酸塩の添加量は、できるだけ少なくすることが望ましく、いずれにしても、安定化剤は生体の必須成分とは異なるものであるので、その量は最低限に抑える必要がある。
【0006】
一方、上記製剤における還元糖液は、緩衝性を有しているので、pHを低めに設定しようとすると、多量のpH調整剤を添加しなければならない。すると、せっかく設定した電解質組成がずれたり、無用の電解質が加わることになり、あまり好ましいとはいえない。
【0007】
更に、還元糖液が緩衝性を有していると、アミノ酸液と混合した後の混合液のpHが、生理的pH(中性域)と懸け離れてしまいがちである。
【0008】
従って、本発明は、安定化剤やpH調整剤を実質的に用いることなく還元糖を安定化した中心静脈投与用輸液を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、還元糖側の液の滴定酸度とpHを特定範囲に調整することにより、還元糖を安定化することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、還元糖を含有する溶液(A)と、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する溶液(B)の2液からなる輸液において、溶液(A)はその滴定酸度が1以下になるように電解質の一部を含有し、かつpH3.5〜4.5に調整されており、溶液(B)は電解質の残部を含有することを特徴とする中心静脈投与用輸液を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、還元糖側の溶液(A)を、滴定酸度1以下に調整することが必要である。溶液(A)の滴定酸度が1を超えると、溶液(A)のpHを上記範囲とするためには、どうしてもpH調整剤の添加量が多くなってしまう。また両液の混合後のpHが生理的pHから外れてしまうおそれがある。このような滴定酸度の調整は、還元糖側に配合する電解質の種類を選択することによって行うことができ、具体的には、電解質中の強電解質を溶液(A)にできるだけ多く配合することによって行われるが、特に強電解質のみを配合するのが好ましい。
【0012】
ここで、本発明輸液に用いられる電解質としては、一般の電解質輸液などに用いられる化合物と同様のものを使用できる。具体的には、ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が、カリウム源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が、カルシウム源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等が、マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等が、リン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が、塩素源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルウシム、塩化マグネシウム等が、また亜鉛源としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等がそれぞれ例示され、これらは水和物形態であってもよい。
【0013】
上記電解質のうち、還元糖側の溶液(A)には、前述のように強電解質のみを配合することが好ましく、強電解質の具体例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を挙げることができる。また、配合すべき残余の電解質は、アミノ酸側の溶液(B)に配合される。なお、溶液(B)に配合される電解質は、強電解質であるか否かを問わない。
【0014】
なお、カルシウム源及びリン源の電解質を配合するにあたっては、両者による沈殿を防ぐために、それぞれ分離して配合するのが好ましく、例えば、カルシウム源として塩化カルシウム等の強電解質を選び、これを還元糖側溶液(A)に配合し、リン源をアミノ酸側溶液(B)に配合することが好ましい。また更に、マグネシウム源もリン源との沈殿形成のおそれがあるので、上記と同様に、強電解質のマグネシウム源を還元糖側溶液(A)に配合することが好ましい。
【0015】
また、本発明輸液において、溶液(A)に用いられる還元糖としては、ブドウ糖、フルクトース、マルトース等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を配合することができる。これらのうち、血糖管理の面などの点からいえばブドウ糖を用いるのが好ましく、更に必要に応じて、キシリトール、ソルビトール、グリセリン等の非還元糖の至適量を配合してもよい。還元糖の配合量は、投与経路等の使用目的に応じて適宜決定できるが、10〜50w/v%となる濃度範囲で配合するのが好適である。
【0016】
上記還元糖溶液(A)は、pH3.5〜4.5、好ましくはpH3.8〜4.3に調整される。この際、前述のように電解質を選択して配合すれば、pHは上記範囲付近となるため、通常はpH調整剤を使用する必要はないが、pH調整剤を使用する場合にも、ごく微量にとどめることができる。溶液(A)のpHが3.5に満たないと、両液を混合したときのpHが生理的範囲から外れてしまい、4.5を超えると、還元糖の分解により、液の着色等の品質劣化を来してしまう。
【0017】
一方、アミノ酸側溶液(B)は、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含むことが必要であり、使用される各アミノ酸は、一般のアミノ酸輸液と同様、純粋結晶状アミノ酸であるのが好ましい。これらは、通常遊離アミノ酸の形態で用いられるが、特に遊離形態でなくてもよく、薬理学的に許容される塩、エステル、N-アシル誘導体、2種のアミノ酸の塩やペプチドの形態で用いることもできる。
【0018】
アミノ酸側溶液(B)は、必要に応じてpH調整剤を少量添加して、pH6.0〜8.0、特にpH6.0〜7.0に調整するのが好ましい。溶液(B)のpHが6.0に満たないと、上記と同様、混合後のpHが生理的範囲から外れてしまい、8.0を超えると、L-システイン等の酸化され易いアミノ酸がより不安定となり好ましくない。
【0019】
更に溶液(B)は、アミノ酸の分解を防ぐために、亜硫酸水素塩、重亜硫酸塩等の安定化剤を、必要に応じて最低限添加してもよいが、本発明の趣旨からすると、微量にとどめられるべきである。
【0020】
また、溶液(A)及び(B)の体積比は、(A):(B)=5:1〜1:1の範囲、特に(A):(B)=3:1〜1.5:1の範囲とするのが好ましい。当該体積比が上記範囲を外れると、アミノ酸や還元糖の必要投与量と水への溶解度を考慮すれば、安定な製剤を製造することは困難である。
【0021】
かくして調製される本発明輸液は、還元糖側の溶液(A)に安定化剤を加えることなく、また多量のpH調整剤を用いることなく、加熱滅菌や保存中における還元糖の分解が抑えられる。また、溶液(A)の液のpHが3.5〜4.5であるにもかかわらず、2液の混合後はpHが5.8〜7.0と中性に近くなる。
【0022】
本発明輸液のより好ましい例としては、混合後の液の組成として下記の範囲のものが挙げられる。
【0023】
【表2】
ブドウ糖 5〜40 w/v%
Na+ 25〜70 mEq/l
K+ 15〜50 mEq/l
Ca2+ 3〜15 mEq/l
Mg2+ 3〜10 mEq/l
Cl- 25〜70 mEq/l
P 5〜20 mmol/l
Zn2+ 0〜30 μmol/l
L-イソロイシン 1.0〜4.0 g/l
L-ロイシン 2.0〜7.0 g/l
L-リジン 1.5〜7.5 g/l
L-メチオニン 0.5〜2.5 g/l
L-フェニルアラニン 1.0〜4.0 g/l
L-スレオニン 0.8〜3.0 g/l
L-トリプトファン 0.2〜1.2 g/l
L-バリン 0.7〜4.2 g/l
L-アラニン 1.0〜4.2 g/l
L-アルギニン 1.4〜5.5 g/l
L-アスパラギン酸 0.1〜1.7 g/l
L-システイン 0.1〜0.7 g/l
L-グルタミン酸 0.1〜3.0 g/l
L-ヒスチジン 0.8〜2.7 g/l
L-プロリン 0.6〜2.6 g/l
L-セリン 0.3〜1.7 g/l
L-チロシン 0〜0.5 g/l
グリシン 1.0〜4.5 g/l
【0024】
本発明輸液を収容する容器としては特に限定されないが、例えば易剥離性溶着により隔壁が形成されたもの(特開平2-4671号公報、実開平5-5138号公報等)、室間をクリップで挟むことにより隔壁が形成されたもの(特開昭63-309263号公報等)、隔壁に開封可能な種々の連通手段を設けたもの(特公昭63-20550号公報等)などの連通可能な隔壁で隔てられた2室容器が挙げられる。これらのうち、隔壁が易剥離性溶着により形成されたものが、大量生産に適しておりまた連通作業も容易であるので好ましい。
【0025】
また、上記容器の材質としては、医療用容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、これら各ポリマーのブレンドや積層体などが挙げられる。
【0026】
なお、容器への本発明輸液の充填、収容は、常法に従って行うことができ、例えば、各液を各室に不活性ガス雰囲気下で充填後、施栓し、加熱滅菌する方法が挙げられる。ここで、加熱滅菌は、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の公知の方法を採用することができ、必要に応じて二酸化炭素、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
【0027】
更に、上記容器に収容された本発明輸液は、変質、酸化等を確実に防止するために、該容器を脱酸素剤と共にガス非透過性外装容器で包装するのが好ましく、とりわけ容器として隔壁が易剥離性溶着により形成されたものを採用した場合は、外圧により隔壁が連通しないように該隔壁部にて折り畳まれた状態で包装するのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装等を行うこともできる。
【0028】
上記包装に適したガス非透過性外装容器の材質としては、一般に汎用されてる各種材質のフィルム、シート等を使用できる。その具体例としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ホリエステル等、又はこれらの少なくとも1種を含む材質からなるフィルム、シート等が挙げられる。
【0029】
また、脱酸素剤としては、公知の各種のもの、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものを使用することができる。その代表的な市販品の商品名としては、「エージレス」(三菱ガス化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0030】
なお、本発明輸液の投与時には、必要に応じて他の配合薬、例えば各種ビタミン類、微量元素(ミネラル)等を任意に添加配合することもできる。該ビタミン類としては、水溶性及び脂溶性を問わず各種のもの、例えばパルミチン酸レチノール、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸、コレカシフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、フィトナジオン等が挙げられる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛をを注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖167g/l、塩化ナトリウム2.93g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、塩化カルシウム0.61g/l、硫酸亜鉛9.6ppmの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.3、滴定酸度は0.1であった。
一法、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。なお、B液には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度200ppmとなるように添加した。
【0033】
【表3】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
クエン酸ナトリウム 2.4 g/l
酢酸カリウム 3.93 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
【0034】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の200mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.7であった。
【0035】
実施例2
ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖292g/l、塩化ナトリウム2.83g/l、硫酸マグネシウム1.23g/l、塩化カルシウム0.73g/l、硫酸亜鉛9.6ppmの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.2、滴定酸度は0.1であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水で溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度200ppmとなるように添加した。
【0036】
【表4】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
クエン酸ナトリウム 1.94 g/l
酢酸カリウム 2.3 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
【0037】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0038】
実施例3
ブドウ糖、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛を注射用蒸留水に溶解し、ブドウ糖417g/l、塩化ナトリウム2.54g/l、硫酸マグネシウム1.44g/l、塩化カルシウム1.10g/l、硫酸亜鉛9.6ppmの組成の糖電解質液〔溶液(A)〕を調製した。この液のpHは4.1、滴定酸度は0.1であった。
一方、下記の結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水で溶解し、pH調整剤として微量の酢酸を用いてpHを7.0として、下記組成のアミノ酸電解質液〔溶液(B)〕を製造した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度200ppmとなるように添加した。
【0039】
【表5】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
クエン酸ナトリウム 2.19 g/l
酢酸カリウム 1.47 g/l
リン酸水素二カリウム 5.22 g/l
【0040】
両液を無菌濾過し、溶液(A)の600ml及び溶液(B)の400mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行って、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、6.6であった。
【0041】
実施例4
溶液(B)のpHを6にする以外は、実施例1と同様にして、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、5.9であった。
【0042】
実施例5
溶液(B)のpHを6にする以外は、実施例2と同様にして、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、5.9であった。
【0043】
実施例6
溶液(B)のpHを6にする以外は、実施例3と同様にして、中心静脈投与用輸液を得た。
なお、この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、5.8であった。
【0044】
比較例
ブドウ糖167g/l、塩化ナトリウム2.93g/l、硫酸マグネシウム1.03g/l、塩化カルシウム0.61g/l、クエン酸ナトリウム0.8g/l、酢酸カリウム1.31g/l、リン酸二水素カリウム1.74g/l、硫酸亜鉛9.6ppmの組成の溶液を調製した(pH7.5)。この溶液のpHを、酢酸4g/lを用いて4.3に調整し、糖電解質液〔溶液(A)〕を得た。
この液の滴定酸度は32.0であった。
一方、上記実施例と同様にして下記の組成のアミノ酸液〔溶液(B);pH7〕を製造した。
【0045】
【表6】
L-イソロイシン 8.0 g/l
L-ロイシン 14.0 g/l
酢酸L-リジン 14.8 g/l
L-メチオニン 3.9 g/l
L-フェニルアラニン 7.0 g/l
L-スレオニン 5.7 g/l
L-トリプトファン 2.0 g/l
L-バリン 8.0 g/l
L-アラニン 8.0 g/l
L-アルギニン 10.5 g/l
L-アスパラギン酸 1.0 g/l
L-システイン 1.0 g/l
L-グルタミン酸 1.0 g/l
L-ヒスチジン 5.0 g/l
L-プロリン 5.0 g/l
L-セリン 3.0 g/l
L-チロシン 0.5 g/l
グリシン 5.9 g/l
【0046】
両液を無菌濾過し、A液の600ml及び溶液(B)の200mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封後、上記実施例と同一条件で高圧蒸気滅菌を行い、中心静脈投与用輸液を得た。
この輸液の溶液(A)及び(B)を混合した後の液のpHは、5.3と酸性に偏っていた。
【0047】
試験例
実施例1〜3で調製した各糖電解質液〔溶液(A)〕を、容量300mlの透明ポリエチレン製輸液バックに充填し、106℃で40分間滅菌した後、40℃、75%RHで30日間保存して、液の着色状況を目視観察した。
その結果、上記いずれの液も、無色澄明で変化は観られなかった。
一方、比較例において、pHの調整を行わない糖電解質液〔溶液(A)〕について同様の試験を行ったところ、滅菌直後から既に淡黄色に着色していた。
【0048】
【発明の効果】
本発明の中心静脈投与用輸液は、安定化剤及びpH調整剤を実質的に用いることなく還元糖液の安定化が図られたものである。
Claims (7)
- 還元糖を含有する溶液(A)と、少なくとも必須アミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する溶液(B)の2液からなる輸液において、溶液(A)はその滴定酸度が1以下になるように電解質として塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛及び塩化亜鉛から選ばれる強電解質のみを含有し、かつpH3.5〜4.5に調整されており、溶液(B)は電解質の残部を含有し、溶液 (A) 及び (B) の混合後の組成が、
ブドウ糖 5〜 40 w/v %
Na + 25 〜 70 mEq/l
K + 15 〜 50 mEq/l
Ca 2+ 3〜 15 mEq/l
Mg 2+ 3〜 10 mEq/l
Cl - 25 〜 70 mEq/l
P 5〜 20 mmol/l
Zn 2+ 0〜 30 μ mol/l
L- イソロイシン 1.0 〜 4.0 g/l
L- ロイシン 2.0 〜 7.0 g/l
L- リジン 1.5 〜 7.5 g/l
L- メチオニン 0.5 〜 2.5 g/l
L- フェニルアラニン 1.0 〜 4.0 g/l
L- スレオニン 0.8 〜 3.0 g/l
L- トリプトファン 0.2 〜 1.2 g/l
L- バリン 0.7 〜 4.2 g/l
L- アラニン 1.0 〜 4.2 g/l
L- アルギニン 1.4 〜 5.5 g/l
L- アスパラギン酸 0.1 〜 1.7 g/l
L- システイン 0.1 〜 0.7 g/l
L- グルタミン酸 0.1 〜 3.0 g/l
L- ヒスチジン 0.8 〜 2.7 g/l
L- プロリン 0.6 〜 2.6 g/l
L- セリン 0.3 〜 1.7 g/l
L- チロシン 0〜 0.5 g/l
グリシン 1.0 〜 4.5 g/l
であることを特徴とする中心静脈投与用輸液。 - 溶液(A)が、安定化剤及びpH調整剤を含まないものである請求項1記載の中心静脈投与用輸液。
- 電解質のうち、カルシウム塩が溶液(A)に配合され、リン化合物が溶液(B)に配合されているものである請求項1又は2記載の中心静脈投与用輸液。
- 電解質のうち、マグネシウム塩が溶液(A)に配合され、リン化合物が溶液(B)に配合されているものである請求項1〜3のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液。
- 溶液(A)がブドウ糖10〜50w/v%を含み、溶液(A)と溶液(B)の体積比が5:1〜1:1である請求項1〜4のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液。
- 溶液(B)のpHが6.0〜8.0であり、溶液(A)と溶液(B)の混合後の液のpHが5.8〜7.0である請求項1〜5のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液。
- 加熱滅菌されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液。
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