JP2015034186A - 末梢静脈投与用輸液製剤 - Google Patents
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Abstract
ビタミンの栄養状態が低下することが予想される又は低下している患者の栄養状態を維持・改善でき、更には抗酸化ストレス作用をも有効に発揮でき、安定な末梢静脈投与用輸液製剤を提供することである。
【解決手段】連通可能な仕切り手段で仕切られた容器に、糖を70〜150g/Lの濃度で含有する輸液(A)と、アミノ酸を50〜150g/Lの濃度で含有する輸液(B)が分別収
容され、前記輸液(A)は、亜硫酸塩を含まず、ビタミンB1を含み、前記輸液(A)と輸液(B)のいずれか少なくとも一方にビタミンCを含み、pHが3〜5であり、更に前記輸液(A)
と輸液(B)とを混合した混合液において、ビタミンCの濃度が200〜400mg/Lであり、且つビタミンCの1日当たりの投与量が400〜800mgとなるように設定して梢静脈投与用輸液製剤を製造する。
【選択図】なし
Description
養状態が低下することが予想される又は低下している患者の栄養状態を維持・改善でき、更には抗酸化ストレス作用をも有効に発揮できる、安定な末梢静脈投与用輸液製剤に関する。
述の通り「M.V.I注アイロム」を含めた全ての総合ビタミン剤の適応は高カロリー輸液用
(中心静脈投与用輸液)のみであり、末梢静脈投与用輸液には適応が無い。更に遮光・冷所保存が必須とされているため、保存条件の点でも欠点がある。
は輸液製剤の容器材質によって急激に含量が低下することが知られており(非特許文献3−4参照)、ビタミンを安定に含有させることも極めて肝要である。
ミンの栄養状態が低下することが予想される又は低下している患者の栄養状態を維持・改善でき、更には抗酸化ストレス作用をも有効に発揮でき、安定な末梢静脈投与用輸液製剤を提供することを目的とする。
含まず、ビタミンB1を含み、pHが3〜5であり、前記輸液(A)と輸液(B)のいずれか少
なくとも一方にビタミンCを含み、更に前記輸液(A)と輸液(B)とを混合した混合液において、ビタミンCの濃度が200〜400mg/Lであり、且つビタミンCの1日当たりの
投与量が400〜800mgとなるように設定して製剤化された末梢静脈投与用輸液製剤が、前記課題を解決できることを見出した。即ち、当該末梢静脈投与用輸液製剤によれば、常温下で保存してもビタミンを安定に維持可能であって、ビタミンCの要求量が増大している患者の体内のビタミンC濃度を正常値に回復させて栄養状態を改善でき、更に患者の体内で抗酸化ストレス作用も有効に発揮できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
項1. 連通可能な仕切り手段で仕切られた容器に、糖を70〜150g/Lの濃度で含
有する輸液(A)と、アミノ酸を50〜150g/Lの濃度で含有する輸液(B)が分別収容さ
れ、
前記輸液(A)は、亜硫酸塩を含まず、ビタミンB1を含み、pHが3〜5であり、
前記輸液(A)と輸液(B)のいずれか少なくとも一方にビタミンCを含み、
前記輸液(A)と輸液(B)とを混合した混合液において、ビタミンCの濃度が200〜400mg/Lになるように設定されており、且つ、ビタミンCの1日当たりの投与量が400
〜800mgとなるように設定されている、ことを特徴とする末梢静脈投与用輸液製剤。項2. 上記末梢静脈投与用輸液製剤は、24時間持続的に投与するものである、項1に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項3. 輸液(B)は500〜1200mg/Lの濃度範囲でビタミンCを含む項1又は2に
記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項4. 輸液(A)は250〜600mg/Lの濃度範囲でビタミンCを含む項1乃至3に
記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項5. 更に、輸液(A)又は輸液(B)にビタミンB6が含まれる、項1乃至4に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項6. 更に、輸液(B)にビタミンB2が含まれる、項5に記載の末梢静脈投与用輸液製
剤。
項7. 更に、輸液(A)にビタミンB6含まれ、輸液(B)にビタミンB2が含まれる、項1乃至4に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項8. 輸液(A)及び輸液(B)の双方若しくは一方に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6及びビタミンCの4種類のみからなる、項6又は7に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項9. 更に、輸液(A)にビタミンB2が含まれ、輸液(B)に葉酸が含まれる、項5に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項10. 輸液(A)及び輸液(B)の双方若しくは一方に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC及び葉酸の5種類のみからなる、項9に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項11. 高圧蒸気滅菌処理されている、項1乃至10のいずれかに記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項12. 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、侵襲期の栄養管理するために使用される、項1乃至11のいずれかに記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項13. 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、手術後1〜5日間栄養管理するために使用される、項12に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項14. 抗酸化ストレス剤である、項1乃至13のいずれかに記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
項15. 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、手術後1〜3日間投与される、項14に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
脈投与用輸液製剤は、当該製剤のみでも適切な栄養管理を行えるので、消化器切除等の手術を受けて経口的に栄養補給が困難な患者の栄養管理に好適に使用される。更に、本発明の末梢静脈投与用輸液製剤は、体内の酸化ストレスを軽減する効果にも優れており、術後等の侵襲期にある患者の身体状態の回復促進に寄与できる。
本発明で使用される輸液(A)は、糖及びビタミンB1を含有し、ビタミンB1の安定化
を図るために亜硫酸塩を含有せず、pHが3〜5であることを基本組成とするものである。
キシリトール、ソルビトール等の非還元糖等が挙げられる。これらの中でも、血糖値管理等の点から、好ましくは還元糖であり、更に好ましくはブドウ糖である。これらの糖は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ロスルチアミン、オクトチアミン等を使用することができる。
5が例示される。このようなpH範囲内であれば、輸液(A)において、糖とビタミンB1の安定化を図ることができる。輸液(A)のpH調整には、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤を使用して実施される。
が1以下とすることが望ましい。
本発明で使用される輸液(B)は、アミノ酸を含有することを基本組成とするものである
。
に使用されているものであればよい。本発明において、アミノ酸は、通常、遊離アミノ酸の状態で用いられるが、薬学的に許容される塩、エステル体、N−アシル誘導体、ジペプチドの形態であってもよい。輸液(B)に配合される遊離アミノ酸の具体例としては、L−
ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸等が例示される。また、アミノ酸の塩としては、具体的には、L−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩;L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩等が例示される。アミノ酸のエステル体としては、具体的には、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステル等が例示される。アミノ酸のN−アシル体としては、具体的には、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリン等が例示される。アミノ酸のジペプチドとしては、具体的には、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニン等が例示される。特に、L−システインについては、N−アセチル−L−システインとして配合されるのが安定性の点で好適である。これらのアミノ酸は、1種単独で使用してもよいが、栄養補給の観点からは、2種以上を組み合わせて使用することが望ましい。好ましくは、少なくとも全ての必須アミノ酸(即ち、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−ヒスチジンの9種のアミノ酸)を含むものが例示される。
ミノ酸の総量として、50〜150g/L、更に好ましくは65〜120g/Lが例示される。また、本発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合液におけるアミノ酸の濃度は、遊離アミノ酸の総量として10〜50g/L、好ましくは20〜30g/Lの範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
りである。即ち、遊離アミノ酸換算で、L−ロイシン:10〜20g/L、L−イソロイシン:5〜15g/L、L−バリン:5〜15g/L、L−リジン:5〜15g/L、L−トレオニン:2〜10g/L、L−トリプトファン:0.5〜5g/L、L−メチオニン:1〜8g/L、L−フェニルアラニン:3〜15g/L、L−システイン:0.1〜3g/L、L−チロシン:0.1〜2g/L、L−アルギニン:5〜15g/L、L−ヒスチジン:2〜10g/L、L−アラニン:5〜15g/L、L−プロリン:2〜10g/L、L−セリン:1〜7g/L、グリシン:2〜10g/L、L−アスパラギン酸:0.2〜3g/L、及びL−グルタミン酸:0.2〜3g/L。
.5〜7.4に調整される。輸液(B)が上記pH範囲を満たすことにより、L−システイ
ン、L−グルタミン酸等の化学変化を起こしやすいアミノ酸の安定化を図り、更には輸液(A)との混合後の混合液のpHを後述する至適範囲を維持させることが可能になる。
ビタミンCは、輸液(A)及び輸液(B)のいずれか一方、又は双方に配合される。ビタミンCとしては、アスコルビン酸、又はその薬学的に許容される塩を使用することができる。アスコルビン酸の塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が例示される。
0〜1200mg/L、好ましくは700〜900mg/Lを充足する範囲が例示される。輸液(A)に配合する場合、ビタミンCの配合割合は、アスコルビン酸の濃度として25
0〜500mg/L、好ましくは300〜400mg/Lを充足する範囲が例示される。
の酸化ストレスを軽減することが可能になる。
本発明の輸液製剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、ビタミンB1及びビタミンC以外のビタミン、電解質、微量元素、安定化剤等の、輸液に配合可能な添加剤が含まれていてもよい。
本発明の輸液製剤に配合されるビタミン(ビタミンC以外)としては、具体的には、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、パントテン酸、ニコチン酸、ビオチン等が挙げられる。これらのビタミンの中でも、好ましくは、ビタミンB2、ビタミンB6、及び葉酸、更に好ましくはビタミンB2及びビタミンB6が例示される。
しい。但し、輸液(B)に葉酸を配合する場合には、葉酸とビタミンB2との反応による葉
酸の不安定化を回避するために、ビタミンB2は輸液(A)に配合することが望ましい。ビ
タミンB2を輸液(A)に配合する場合、輸液(A)におけるビタミンB2の配合割合としては、通常リボフラビンとして1〜20mg/L、好ましくは2〜3mg/Lが例示される。また、ビタミンB2を輸液(B)に配合する場合、輸液(B)におけるビタミンB2の配合割合としては、通常リボフラビンとして2.5〜15mg/L、好ましくは4〜8mg/Lが例示される。更に、本発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合液におけるビタミンB2の濃度は、通常リボフラビンとして0.5〜10mg/L、好ましくは0.5〜3mg/Lの範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
に配合する場合、輸液(A)におけるビタミンB6の配合割合としては、通常ピリドキシン
として2〜10mg/L、好ましくは2.5〜5mg/Lが例示される。ビタミンB6を輸液(B)に配合する場合、輸液(B)におけるビタミンB6の配合割合としては、通常ピリドキシンとして4〜20mg/L、好ましくは4〜8mg/Lが例示される。また、本発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合液におけるビタミンB6の濃度は、通常ピリドキシンとして1〜10mg/L、好ましくは2〜3mg/Lの範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
0.6〜1.2mg/Lが例示される。葉酸を輸液(A)に配合する場合、輸液(A)における葉酸の配合割合としては、通常0.1〜0.8mg/L、好ましくは0.2〜0.5mg/Lが例示される。また、本発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合液における葉酸の濃度は、通常0.1〜0.7mg/L、好ましくは0.2〜0.3mg/Lの範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
示される。
(i) 輸液(A)に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2及びビタミンB6のみ
からなり、且つ輸液(B)に含まれるビタミンが、ビタミンC及び葉酸のみからなる組合せ
。
(ii) 輸液(A)に含まれるビタミンが、ビタミンB1及びビタミンB6のみからなり、且つ輸液(B)に含まれるビタミンが、ビタミンC及びビタミンB2のみからなる組合せ。
(iii) 輸液(A)に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6及び
ビタミンCのみからなり、且つ輸液(B)に含まれるビタミンが葉酸のみからなる組合せ。
(iv) 輸液(A)に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB6及びビタミンCのみからなり、且つ輸液(B)に含まれるビタミンが、ビタミンB2のみからなる組合せ。
本発明の輸液製剤に配合される電解質としては、カリウム、カルシウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、亜鉛等が例示される。なお、輸液(A)に配合される電
解質は、前述する滴定酸度の条件を充足するために、配合される電解質が全て強電解質であることが好ましい。また、電解質の供給源として、緩衝作用がある化合物を使用する場合には、輸液(B)に配合することが好ましい。
質輸液等に用いられる化合物と同様のものを使用でき、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が例示される。これらの中でも、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、グリセロリン酸カリウム等のリン酸塩は、リン供給源にもなるので好適である。これらのカリウム供給源は水和物形態であってもよい。カリウムの配合割合は、輸液(A)及び輸液(B)ともに40mEq/L以下にすることが望ましい。また、発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合溶液におけるカリウムの濃度は、5〜20mEq/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
て沈殿が発生するため、このような沈殿の発生を防止するためである。カルシウムの供給源としては、強電解質である塩化カルシウムを用いることが好ましい。また、カルシウム供給源は水和物形態であってもよい。カルシウムを輸液(A)に配合する場合、カルシウム
の配合割合は、輸液(A)において2〜8mEq/Lが例示される。また、発明の輸液製剤
において、輸液(A)と輸液(B)の混合溶液におけるカルシウムの濃度は、1〜5mEq/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
しい。また、ナトリウム供給源として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウム等の緩衝性のあるナトリウム塩を用いる場合には、輸液(A)が前述する滴定酸度を満たすためにも、輸液(B)に配合することが好ましい。また、本発明の輸液製剤に、リンと、カルシウム及び/又はマグネシウムを配合する場合、これらが沈殿を生じるのを防止するために、ナトリウム供給源の一部
としてクエン酸ナトリウムを用いることが望ましい。また、ナトリウム供給源は水和物形態であってもよい。ナトリウムは輸液(A)、輸液(B)に任意の割合で配合することができる。また、発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合溶液におけるナトリウムの濃度は、20〜50mEq/L、好ましくは(35〜50)mEq/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
と輸液(B)の混合溶液におけるマグネシウムの濃度は、0.5〜10mEq/L、好まし
くは1〜5mEq/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
ウム、リン酸水素二カリウム、グリセロリン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が例示される。また、リン供給源は水和物形態であってもよい。リンを輸液(B)に配合する場合、リンの配合割合は、輸液(B)において3〜67mmol/L、好ましくは10〜35mmol/Lが例示される。また、発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合溶液におけるリンの濃度は、1〜20mmol/L、好ましくは5〜10mEq/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
鉛等が例示される。また、亜鉛供給源は水和物形態であってもよい。亜鉛を輸液(A)に配
合する場合、亜鉛の配合割合は、輸液(A)において2.5〜15μmol/Lが例示される。また、発明の輸液製剤において、輸液(A)と輸液(B)の混合溶液における亜鉛の濃度は、2〜10μmol/Lとなる範囲を満たすように設定されていることが望ましい。
本発明の輸液製剤に配合される微量元素としては、具体的には、亜鉛、銅、鉄、マンガン、ヨウ素等が例示される。これらの微量元素の内、亜鉛については、前述する電解質をして供することができる。また、他の微量元素としては、一般的な輸液製剤において微量元素の供給源として配合されているものを使用することができる。具体的には、銅供給源としては、硫酸銅等;鉄供給源としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等;マンガン供給源としては、塩化マンガン、硫酸マンガン等;ヨウ素供給源としては、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
本発明の輸液製剤に配合される安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩が例示される。亜硫酸塩は、輸液(A)に含まれるビタミンB1の分解を回避する
ために、輸液(B)に配合される。輸液(B)における亜硫酸塩の配合量としては、例えば20〜100mg/Lの範囲が例示される。
本発明の輸液製剤は、用時に、輸液(A)と輸液(B)を混合して使用される。輸液(A)と輸
液(B)の混合液は、血管痛の発生を抑制して安全性を高めるために、pHが6〜7.5、
好ましくは6.5〜7.0、滴定酸度が1〜10であることが望ましい。
本発明の輸液製剤は、経口摂取不十分で軽度の低蛋白血症又は軽度の低栄養状態にある場合や侵襲期の場合、手術前後の患者の栄養管理の目的で使用され、とりわけ手術後や消化器疾患等によるに経口的に栄養補給が困難な患者(好ましくは、消化器切除の手術を受けた患者)の栄養管理の目的で好適に使用される。本発明の輸液製剤を、手術後1〜5日間、好ましくは手術後1〜3日間、患者に投与することにより、患者の栄養状態を健全に保持させることができる。特に、本発明の輸液製剤は、上記投与期間、当該輸液製剤のみで、患者の栄養状態を健全に保持させることができるという利点がある。
液(B)の混合液におけるビタミンCが前述する所定濃度を充足し、且つ上記投与量に設定
されることによって、ビタミンCの要求量が増大している患者であっても、体内のビタミンC濃度を正常値にまで回復させることができる。更に、本発明の輸液製剤は、体内で抗酸化ストレス作用をも有効に発揮させることが可能になる。従って、本発明の輸液製剤は、抗酸化ストレス剤として使用することもできる。このように、本発明の輸液製剤を抗酸化ストレス剤として使用する場合、具体的には、手術後1〜3日間、当該輸液製剤のみで患者の栄養状態を管理する方法が例示される。
輸液(A)と輸液(B)を収容する容器としては、連通可能な2室を有するものであれば特に限定されないが、例えば易剥離シールにより隔壁が形成されたもの(特開平2−4671号公報、実開平5−5138号公報等)、室間をクリップで挟むことにより隔壁が形成されたもの(特開昭63−309263号公報等)、隔壁に開封可能な種々の連通手段を設けたもの(特公昭63−20550号公報等)等のように連通可能な隔壁で隔てられた2室容器(輸液バッグ)が挙げられる。これらの内、隔壁が易剥離シールにより形成された輸液バッグが、大量生産に適しており、また連通作業も容易であるので好ましい。また、上記容器の材質としては、医療用容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、これら各ポリマーのブレンドや積層体等の柔軟性プラスチックが挙げられる。
とができ、必要に応じて二酸化炭素、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
胃切除又は大腸切除を行った手術後であって本試験に関する同意が得られた患者16名に対して、1日あたりの投与量として100mg若しくは500mgのビタミンCを併用した末梢静脈栄養療法(使用輸液としては、ビーフリード(株式会社塚製薬工場)等)を実施した際に、血中ビタミンC濃度、尿中ビタミンC排泄量(24時間)、及び尿中酸化ストレスマーカー(8−イソプロスタン)排泄量(24時間)の測定を行った。
群構成:1日あたりのビタミンCの投与量を500mgと100mgに無作為に割り付けた。無作為割付けの結果、実施群[500mg群]:7例と比較群[100mg群]:9例となった。
投与方法:24時間持続的な末梢静脈栄養療法を実施する際に、ビタミンCを併用投与した。具体的には、実施群では、使用輸液にビタミンCを250mg/mLの濃度となるように混合した輸液の総量2000mLを24時間かけて持続的に投与した。即ち、実施群では、ビタミンCの投与速度は、約20mg/時間になる。一方、比較群では、使用輸液にビタミンCを50mg/mLの濃度となるように混合した輸液の総量2000mLを24時間かけて持続的に投与した。即ち、比較群では、ビタミンCの投与速度は、約4mg/時間になる。
投与期間:手術後2日目から5日間。
血中ビタミンC濃度の測定:手術前、手術後[手術後1日目(ビタミンCの投与開始前)
]、投与開始3日目(3日間投与終了時点)に採血を行い、血中ビタミンC濃度を測定した。
尿中ビタミンC濃度の測定:投与開始3日目の24時間について氷冷・遮光下で蓄尿し、尿中ビタミンC濃度(mg/mL)の測定を行った。これに24時間蓄尿量(mL/日)を
乗じて尿中排泄量(mg/日)を算出した。
尿中酸化ストレスマーカーの測定:投与開始3日目の24時間について氷冷・遮光下で蓄尿し、尿中8−イソプロスタン濃度の測定を行った。これに24時間蓄尿量(mL/日)を乗じて尿中排泄量(mg/日)を算出した。
mL)を投与し、その後はビタミンCを含まない輸液(1500mL程度)を投与する方
法で実施されている。この結果からは、ビタミンCの投与量を単に500mg/日に設定しても、生体内におけるビタミンCを必ずしも正常値にまで回復させることができないことが示されている。つまり、ビタミンCの投与量が1日当たり500mgに設定されているのみならず、24時間持続的に投与することが血中ビタミンC濃度及び尿中排泄量を正常化、並びに抗酸化ストレス作用発現に対して効率的に寄与することが明らかとなった。
とすることで、有効な量のビタミンCを効率的に投与することが可能となり、体内でのビタミンCの量を正常値に保つことが可能で、更には体内で抗酸化ストレス作用を享受できることが裏付けられた。
1.輸液(A)の調製
注射用蒸留水に、ブドウ糖及び電解質(塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛)を溶解し、糖電解質液を調製した。更に、ビタミンB1(塩酸チアミン)及びビタミンB6(塩酸ピリドキシン)を注射用蒸留水に溶解し、これを上記糖電解質液と混合し、塩酸及び水酸化ナトリウムでpHを4.0に調整した後に、無菌濾過して、
表1に示す組成の輸液(A)を調製した。得られた溶液(A)の滴定酸度は0.1であった。
2.輸液(B)の調製
各結晶アミノ酸、電解質(リン酸二カリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム)及び安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム)を注射用蒸留水に溶解し、アミノ電解質酸液を調整した。更に、アミノ酸電解質液に、ビタミンC(アスコルビン酸)及びビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)を加えて、氷酢酸でpHを6.8に調整した後に、無菌濾過して、表2に示す組成の輸液(B)を調製した。
3.充填・包装
上記で得られた輸液(A)350mL及び輸液(B)150mLを、各室が易剥離シールで仕切られたポリエチレン製2室容器の各室にそれぞれ充填し、輸液(B)については窒素置換
を行い、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行った。その後、容器を易剥離シール部で折り畳み、脱酸素剤(商品名「エージレス」;三菱ガス化学社製)と共に、多層バリアフィルム(商品名「ボブロン」;NSR社製)の外装袋(酸素バリア性外装袋)に封入し
、輸液製剤を得た。なお、この輸液製剤の輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液(組成を表2に示す)は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
輸液(A)にビタミンB12を3.57mg/mL配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。輸液(A)の滴定酸度は0.1であり、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混
合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
輸液(A)にビタミンB12を3.57mg/mL、輸液(B)に葉酸を666.67mg/mL配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。輸液(A)の滴定酸度は0.1であり
、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
輸液(B)にビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)を配合せず、輸液(A)にビタミンB6(塩酸ピリドキシン)を配合せず、且つビタミンB2(リン酸リボフラビンナト
リウム)を1.408mg/L(リボフラビンとして1.102g/mL)配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。輸液(A)の滴定酸度は0.1であり、輸液(A)と輸液(B)を混合
した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
輸液(B)にビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)を配合せず、輸液(A)にビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)を1.408mg/L(リボフラビンとして1.102mg/L)配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。輸液(A)の滴定酸度は0.
1であり、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
輸液(B)にビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)及びビタミンC(アスコル
ビン酸)を配合せず、輸液(A)にビタミンCを357.1mg/L配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。なお、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。輸液(A)の滴定酸度は0.4であり、pHが4.0であった
。
ビタミンC(アスコルビン酸)の量を、666.7mg/L配合した点以外は、実施例1と同様にして輸液製剤を得た。なお、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
ビタミンC(アスコルビン酸)の量を、1333.3mg/L配合した点以外は、実施例1と同
様にして輸液製剤を得た。なお、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
ビタミンC(アスコルビン酸)の量を、285.7mg/L配合した点以外は、実施例6と同様にして輸液製剤を得た。なお、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
ビタミンC(アスコルビン酸)の量を、571.4mg/L配合した点以外は、実施例6と同様にして輸液製剤を得た。なお、輸液(A)と輸液(B)を混合した後の混合液は、pHが6.7、滴定酸度が7であった。
上記実施例2及び3の各輸液製剤を108℃、20分間の蒸気滅菌した後、60℃で4週間
又は40℃で3ヶ月間、暗所で保存し、経時的に輸液製剤中の輸液(A)及び輸液(B)に含まれる各ビタミンの濃度を測定し、残存率を算出した。なお、残存率は、調製時に配合した各ビタミン濃度を100%として、各配合成分の残存濃度の割合(%)を算出することのより求めた。
のビタミンB1及びビタミンB1、並びに輸液(B)中のビタミンB2及びビタミンCは、
高い安定性を備えていることがわかった。一方、実施例3の輸液(B)中の葉酸は、経時的
に分解される傾向が認められた。このような葉酸の不安定化は、輸液(B)に含まれるビタ
ミンB2との反応に起因していると考えられるため、葉酸とビタミンB2を配合する場合
には、安定性向上の観点から両者を分別して輸液に配合すべきであることが明らかとなった。
上記実施例1及び5の各輸液製剤を108℃、20分間の蒸気滅菌した後、23℃、800lxで3時間静置した。滅菌直後、1.5時間後、及び3時間後に、各輸液製剤中のビタミンB6の濃度を測定し、残存率を算出した。残存率は、調製時に配合したビタミンB6を100%として、各配合成分の残存濃度の割合(%)を算出することのより求めた。
ことが望ましく、特にビタミンB2とビタミンB6を配合する場合にはビタミンB6を輸液(A)に添加し、ビタミンB2を輸液(B)に添加することが望ましいこと分かった。
上記実施例1及び6の各輸液製剤を108℃、20分間の蒸気滅菌した後、40℃又は60℃、8
00lxの条件下で静置した。保存期間中、経時的に各輸液製剤中の各種ビタミンの濃度を測定し、残存率を算出した。残存率は、調製時に配合した各ビタミン濃度を100%として、各配合成分の残存濃度の割合(%)を算出することのより求めた。
Claims (13)
- いずれか少なくとも一方にビタミンCを含む、糖及びビタミンB1を含有する輸液(A)と、アミノ酸を含有する輸液(B)とを混合した混合液である末梢静脈投与用輸液製剤であって、ビタミンCの濃度が200〜400mg/Lになるように設定されており、且つ、ビタミンCの1日当たりの投与量が400〜800mgとなるように設定されていることを特徴とする末梢静脈投与用輸液製剤。
- pHが6〜7.5である、請求項1に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 24時間持続的に投与するものである、請求項1又は2に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 更に、輸液(A)又は輸液(B)にビタミンB6が含まれる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 更に、輸液(B)にビタミンB2が含まれる、請求項4に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 輸液(A)及び輸液(B)の双方若しくは一方に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6及びビタミンCの4種類のみからなる、請求項5に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 更に、輸液(A)にビタミンB2が含まれ、輸液(B)に葉酸が含まれる、請求項4に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 輸液(A)及び輸液(B)の双方若しくは一方に含まれるビタミンが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC及び葉酸の5種類のみからなる、請求項7に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 高圧蒸気滅菌処理されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、侵襲期の栄養管理のために使用される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、手術後少なくとも3日間栄養管理するために使用される、請求項10に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 抗酸化ストレス剤である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
- 該末梢静脈投与用輸液製剤のみで、手術後少なくとも3日間投与される、請求項12に記載の末梢静脈投与用輸液製剤。
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Non-Patent Citations (3)
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