JP3769730B2 - 帯板巻取り張力付与装置及び帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト並びに帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト用潤滑剤 - Google Patents
帯板巻取り張力付与装置及び帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト並びに帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト用潤滑剤 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば幅広な金属性帯板を該帯板の長手方向に沿って複数条に裁断するスリッターラインにおいて、金属性帯板のスリット後に各スリット帯板を巻取る際に生じる張力の不均衡を調整し、又帯板表面に擦り傷を付けずに均等な巻き取り張力を付与する帯板巻取り張力付与装置及び帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト並びに帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト用潤滑剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の当社出願特許第1361033号(当社商品名;ベルトブライドル)及び当社出願特許第2651891号(当社商品名;ローベルター)と同様の金属性帯板或いはプラスチックシートコイル巻取り張力付与装置が知られている。
圧着フェルトによる擦り傷や圧着マークが帯板の表面に付着しても問題にならないコイル材にはフェルト圧着方式の「テンションパッド」が多く用いられ、光沢のあるメッキ処理など施した材料やステンレス材や光沢仕上げの非鉄金属材などの巻取りに対しては、当社で開発したプーリーとエンドレスベルトを備えた「ベルトブライドル」が利用されている。
例えば、コイル母材幅の5フィート幅のスリッターライン用のベルトブライドル装置では、エンドレスベルトが約100本あり、その緊張のために合計約200個のプーリーが必要である。
この多数のプーリーには中心軸に装着のため同様な個数のボールベアリングや中間のスペーサー部品などそれぞれ同数の部品が組み込まれている。
この多数のプーリーをなくす目的もあり、出願人は円形型金属性帯板巻取り張力付与装置(特許第2651891)を発明するに至った。しかし、円形ドラムで帯板を挟む方式なので、圧着部分は線状に近くて面積が狭く、このため、この方式では発生張力に限界があり通板する帯板の板厚に制限(現在は板厚2mm以下に限定している)があり、それ以上の処理材は対応できないので、プーリを有するベルトブライドルを適用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この円形型金属性帯板巻取り張力付与装置(特許第2651891)のエンドレスベルトは略真円形の上下の圧力付与体にて押し付け圧着されており、巻き取る帯板に引かれたエンドレスベルトは圧縮と復元を連続的変形が繰り返されるために、ベルト材内部の分子間摩擦が激しく、その結果ベルト自体の発熱と圧縮と復元の繰り返し変形を生ずるためベルトの劣化が激しい。このような状態でのエンドレスベルトの許容面圧には限界があるので、広い板厚範囲の処理材に対応するためには、受圧面積、すなわち押板部分に相当するベルトの圧着面積を広くしないと厚い帯板には適用不可であるので円形型ドラムでは適応範囲に限界があることになる。
故に円形型金属性帯板巻取り張力付与装置(特許第2651891)では処理材の範囲に限界があり、その範囲外の帯板のスリットなどを対象とするラインにはベルトブライドルを適用してきたが、前述のようにこのベルトブライドルには多数の購入部品、製作部品及びそれらの組立には相当なコストが必要であり、このベルトブライドル装置のコスト高の問題があり、このベルト方式の普及の妨げとなっている。
又、ベルトブライドルは帯板を挟んだ上下一対のエンドレスベルトの両側から押板を圧着して、その部分での摩擦抵抗力を帯板の巻取り張力に利用する装置であり、その結果押板部分には摩擦熱が仕事量に応じて発生するので、押板部分には冷却水を循環させて摩擦熱を除去する方法を備えている。しかしながら、エンドレスベルト側にも摩擦熱が発生してベルト自体の温度上昇があり、その熱はプーリー側へ移動するので、ベルトブライドルを連続的に使用した場合にはプーリーが過熱状態となる。装着されているボールベアリングの故障やエンドレスベルトの寿命を縮める結果となっている。
或いは、ベルトブライドル装置のエンドレスベルトは、押板及びフレーム構造を挟んでその両側に一対のプーリーで緊張されているが、その中間の約500mmあまりはエンドレスベルトがガイドされていないので、ベルトが左右に動揺しながら回転することになり、細くスリットされた帯板の巻取り作業では、帯板が蛇行現象(左右に動くこと)となり、巻取り機に巻き取ったコイルのエッジが不揃いとなるような不具合が発生している。
そのような不具合を防止又は緩和するためには、各エンドレスベルトを強く緊張する必要があり、エンドレスベルトを強く緊張した状態で、しかも回転抵抗を最小に保ってスムーズに回転させるには、各エンドレスベルトの両側にボールベアリングを介して軸装された一対のプーリーが不可欠である。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、ベルト方式の利点を生かしながら、コスト高、故障や寿命の原因、及びコイルの不揃いの要因となるプーリーを不要することのできる帯板巻取り張力付与装置を提供することにある。また、他の目的とするところは、エンドレスベルトの内側表面に潤滑剤を含浸できるようにして摩擦係数を小さくすることのできる帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルトを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
特にコストダウンの阻害になるプーリー及びその関連部品を省略したいが、エンドレスベルトを強く緊張して帯板の蛇行現象を抑制するには、回転抵抗の小さなベアリングを介したプーリーが必要だが、プーリーの場合には約500mmのエンドレスベルトのガイド支点距離となり、この長さが帯板蛇行の原因となっている。その蛇行防止の対策としてはエンドレスベルトのガイド支点間隔を短縮することにより、エンドレスベルトを両側から強く緊張しなくてもエンドレスベルトの動揺を防止することが可能となるので、直線状のベルト押圧部とその両端側に弧状のベルト反転部及び並設された各エンドレスベルト同士を分割ガイドするベルトガイド用突起を設けることで、以下の請求項の発明となる。
即ち、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンドレスベルトを横方向に複数並設したものを上下に相対向して配設し、各エンドレスベルトを略長円形状態で循環動自在に保持し且つ各エンドレスベルトの内側表面を押圧する圧力付与体を各エンドレスベルトの内側を挿通して配置すると共に、上記各圧力付与体を、エンドレスベルトの内側表面を直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部と、ベルト押圧部の両端側に各々形成され側断面が弧状のベルト反転部とから少なくとも構成し、各エンドレスベルトの外側表面の摩擦係数を内側表面の摩擦係数より大なる構成とし、上下のエンドレスベルトの相対向する外側表面の間に通した帯板の両面に、エンドレスベルトの内側を挿通して配置した圧力付与体で上下からエンドレスベルトを押し付け圧着し、各エンドレスベルトを移動する各帯板との摩擦係合で駆動し、移動する各帯板と一体となって各エンドレスベルトを独立して略長円形状態で循環動させて、上記圧力付与体とエンドレスベルトの内側表面との間の滑りによる摩擦力で帯板に張力を発生させる手段よりなるものである。
【0006】
また、請求項2の発明は、エンドレスベルトを横方向に複数並設したものを上下に相対向して配設し、各エンドレスベルトを略長円形状態で循環動自在に保持し且つ各エンドレスベルトの内側表面を押圧する圧力付与体を各エンドレスベルトの内側を挿通して配置すると共に、上記各圧力付与体を、エンドレスベルトの内側表面を直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部と、ベルト押圧部の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルトとの接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子を所定間隔で、エンドレスベルトとの接触軌跡が弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部とから少なくとも構成し、該ベルト反転部に並設された各エンドレスベルトを分割ガイドするベルトガイド用突起を設け、各エンドレスベルトの外側表面の摩擦係数を内側表面の摩擦係数より大なる構成とし、上下のエンドレスベルトの相対向する外側表面の間に通した帯板の両面に、エンドレスベルトの内側を挿通して配置した圧力付与体で上下からエンドレスベルトを押し付け圧着し、各エンドレスベルトを移動する各帯板との摩擦係合で駆動し、移動する各帯板と一体となって各エンドレスベルトを独立して略長円形状態で循環動させて、上記圧力付与体とエンドレスベルトの内側表面との間の滑りによる摩擦力で帯板に張力を発生させる手段よりなるものである。
【0007】
ここで、請求項1、請求項2の好ましい態様として、圧力付与体のベルト押圧部の内部には冷却室が形成されている。また、圧力付与体のベルト反転部の内部には冷却室が形成されている。また、ベルト押圧部の裏側には凹部が形成され、この凹部内にはエンドレスベルトの内側表面を押圧してエンドレスベルトに緊張を付与するベルト緊張用ロールが配置されていてもよい。また、圧力付与体のベルト押圧部の配置箇所には凹部が形成され、この凹部内には両端側のベルト反転部と非連結のベルト押圧部と該ベルト押圧部をエンドレスベルトの内側表面に押圧する膨縮袋体が収容されていてもよい。
【0008】
また、請求項7の発明は、請求項1、請求項2の帯板巻取り張力付与装置で使用されるエンドレスベルトの内側表面を、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルトの外側表面を、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する可撓性の材料で密着構成した手段よりなるものである。
【0009】
また、請求項8の発明は、請求項1、請求項2の帯板巻取り張力付与装置で使用されるエンドレスベルトの内側表面を潤滑する潤滑剤であって、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルトの内側表面側に接触配置し、エンドレスベルトの回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルトの内側表面を潤滑して摩擦係数を低下させる手段よりなるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に記載の発明の実施の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0011】
〔実施の形態−1〕
ここで、図1は基本構成断面図、図2は装置の全体側面図、図3は装置の全体正面図、図4はベルトガイド用突起がピンと板の場合の構成断面図、図5(A)は水冷冷却室を備えた構成断面図、図5(B)は水冷冷却室と空冷冷却室を備えた構成断面図、図6(A)(B)は変形構成断面図である。
【0012】
帯板巻取り張力付与装置は、スリット帯板aに所定の巻き取り張力を付与する装置で、スリット帯板巻取装置b(図20参照)の前方側でスリット帯板aの移動通路の途中に配置されている。
【0013】
帯板巻取り張力付与装置は、上下に相対向して略長円形状態で循環動自在に保持されたエンドレスベルト1と、上下のエンドレスベルト1が各々略長円形状態で循環動自在にその外周を周回し、且つエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧する上下一対の上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3と、両圧力付与体2,3を支持するスタンド4、上部圧力付与体2に圧下力を付与する液圧シリンダ5などから主に構成されている。
【0014】
上部圧力付与体2は上部側に配置されたエンドレスベルト1を下方に押圧し、一方、下部圧力付与体3は下部側に配置されたエンドレスベルト1を上方に押圧する。上部圧力付与体2と下部圧力付与体3とは協働して、上下に相対向する各エンドレスベルト1同士の間を通過するスリット帯板aをエンドレスベルト1を介して間接的に上下から同一の押圧力で挟圧して、一定の張力を付与するものである。
【0015】
エンドレスベルト1は、スリット帯板aの移動方向に循環動自在に配置され、これが横方向つまりスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に複数並設して配置され、更にこれらが上下に相対向して配置されている。
【0016】
上下に配置され且つ横方向に並設された各エンドレスベルト1は、無端状のベルトから構成され、上部側に配置された断面略長円形の上部圧力付与体2の外周、及び下部側に配置された断面略長円形の下部圧力付与体3の外周に、それぞれ独立して略長円形状態で循環動自在に装着されている。各エンドレスベルト1は独立してスリット帯板aの移動方向に循環動できるように装着されている。
【0017】
エンドレスベルト1が装着された上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3には、エンドレスベルト1を循環動させる駆動源は設けられてなく、エンドレスベルト1は移動するスリット帯板aとの摩擦係合で循環動する以外に、自力で循環動することがない。つまり、上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3に各々装着されたエンドレスベルト1は、スリット帯板aと接触しない限り循環動することはない。
【0018】
エンドレスベルト1の外側表面1bは、スリット帯板aと一体となってスリット帯板aを移動させる機能を果たすものである。これに対し、エンドレスベルト1の内側表面1aは、上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3との間の滑りによる摩擦力で、スリット帯板aに張力を発生させる機能を果たすものである。このため、エンドレスベルト1の内側表面1aは外側表面1bより摩擦係数が小さく滑り易いようになっている。
【0019】
エンドレスベルト1の内側表面1aは、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルト1の外側表面1bは、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する比較的薄い可撓性の材料で密着構成されている。
【0020】
この織布をエンドレスベルト1の内側表面1aに用いることで、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤をあらかじめ染み込ませて摩擦係数を小さく出来るし、織布は固体の板状の材質とは異なり可撓性が大きい特徴があるので、圧力付与体2,3に装着されたエンドレスベルト1の回転抵抗が小さい。織布は合成繊維のポリエステルやビニロン、ナイロンなどの素材を利用できる。
【0021】
また、真円形型付与体のエンドレスベルトの材質は、厚み方向に十分な圧縮弾性と復元性が要求され、真円形型付与体の線接触に近い圧着状態でベルトの圧縮弾性歪みを利用しているが、それに比べて本願は圧倒的に圧着面積が大きいので、真円形と同等の摩擦抵抗力(張力)を発生するには低い面圧で十分であり、本願では真円形型付与体場合の圧縮歪み変形抵抗を必要としないので、比較的薄くて圧縮弾性度の小さな合成樹脂系の材質を用いる組合せで機能を発揮できるし、織布の各繊維間及び編み目に潤滑剤を含浸させられるので、特にエンドレスベルト1の内側表面1a及び外側表面1bに用いる素材自体の摩擦係数の差のある素材の組合せに限定する必要はないと言う特徴がある。
【0022】
また、エンドレスベルト1の外側表面1bは、内側表面1aよりも摩擦係数の大なる材質で形成されていてもよい。つまり、エンドレスベルト1の内側表面材は耐摩性の材料、例えば低い摩擦係数の軟質の合成樹脂系材を使用し、外側表面材は高い摩擦係数を有する弾性体、例えばゴムや合成樹脂材等を用いて構成されている。さらに、エンドレスベルト1の内側表面1aと上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3の滑り面に潤滑剤を塗布する方法を用いて、エンドレスベルト1の内側表面1aの摩擦係数が外側表面1bの摩擦係数より小さくなるように構成してもよい。
【0023】
前記上部圧力付与体2は上部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された上部圧力付与体2は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部21と、ベルト押圧部21の上方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部22と、上下のベルトガイド部22及びベルト押圧部21の両端側に各々形成され側断面が弧状例えば半円弧状のベルト反転部23とから一体的に構成されている。
【0024】
上部圧力付与体2は、上下のベルトガイド部22及びベルト押圧部21、その両端側の例えば半円弧状のベルト反転部23によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部23は半円弧状の形状以外の形状、部分楕円弧状或いは部分放物線状の形状も考えられ、この場合には上部圧力付与体2は断面略長円形状となる。上部圧力付与体2はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0025】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の上部圧力付与体2の外周を独立して循環動する。上部圧力付与体2の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が上部圧力付与体2の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0026】
ベルト押圧部21は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部21は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0027】
ベルト押圧部21によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部21は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0028】
上部圧力付与体2の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起24がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起24は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起24は両ベルト反転部23に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部22にも設けられる。このベルトガイド用突起24には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板25が使用されることもある。図4に図示するように、ベルトガイド板25が使用される場合、ベルトガイド板25はベルト反転部23に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起24はベルトガイド板25の両端側のベルト反転部23に突設される。
【0029】
また、上部圧力付与体2の内部には冷却室26が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室26は上部圧力付与体2の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室26は内部仕切板2aによって、両端側のベルト反転部23の内部と中間のベルト押圧部21の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部21の内部は必要に応じて内部仕切板2bによって更に2つ又は複数の内部仕切板2bによってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部21の内部を複数に仕切る内部仕切板2bの一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板2bを挟んで両側が部分的に連通していることもある。
【0030】
上部圧力付与体2の内部の冷却室26を仕切るこれらの内部仕切板2a,2bは、内部が冷却室26によって空洞となる上部圧力付与体2の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する上部圧力付与体2には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板2a,2bがこれに抵抗して上部圧力付与体2がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たす。
【0031】
冷却室26には水冷冷却室26aと空冷冷却室26bがある。水冷冷却室26aは内部に水を流し、空冷冷却室26bは内部に空気を流すことによって冷却する。水冷冷却室26aは通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室26bは通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0032】
上部圧力付与体2の形状の変形例として、図6に示すように、ベルト押圧部21の裏側のベルトガイド部22が両端側の例えば半円弧状のベルト反転部23の上端より低い位置に設けられて、ベルト押圧部21の裏側に凹部22aが形成された上部溝型略長円形状もある。この場合には、上部側のエンドレスベルト1と凹部22aの内部との間には隙間が生じ、図6(A)に図示するように、この凹部22a内にエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧してエンドレスベルト1に緊張を付与するベルト緊張用ロール27が配置される。
【0033】
また、図6(B)に図示するように、この凹部22a内にベルト緊張用ロール27に代えて又は併用して、エンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑する潤滑剤29が配置される。潤滑剤29は凹部22aの底に配置された凹状の潤滑剤ホルダー29aに収容されている。潤滑剤29は、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルト1の内側表面1a側に接触配置し、エンドレスベルト1の回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑して摩擦係数を低下させる。エンドレスベルト1はこの潤滑剤29によって回転中、その内側表面1aが潤滑されるため、頻繁にラインを止めて内側表面1aを潤滑する必要もなく、凹部22a内の潤滑剤29は生産性の向上に寄与する。
【0034】
前記下部圧力付与体3は下部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された下部圧力付与体3は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部31と、ベルト押圧部31の下方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部32と、上下のベルト押圧部31及びベルトガイド部32の両端側に各々形成され側断面が弧状例えば半円弧状のベルト反転部33とから一体的に構成されている。
【0035】
下部圧力付与体3は、上下のベルトガイド部32及びベルト押圧部31、その両端側の例えば半円弧状のベルト反転部33によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部33は半円弧状の形状以外の形状、部分楕円弧状或いは部分放物線状の形状も考えられ、この場合には下部圧力付与体3は断面略長円形状となる。下部圧力付与体3はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0036】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の下部圧力付与体3の外周を独立して循環動する。下部圧力付与体3の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が下部圧力付与体3の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0037】
ベルト押圧部31は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部31は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0038】
ベルト押圧部31によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部31は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0039】
下部圧力付与体3の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起34がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起34は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起34は両ベルト反転部33に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部32にも設けられる。このベルトガイド用突起34には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板35が使用されることもある。図4に図示するように、ベルトガイド板35が使用される場合、ベルトガイド板35はベルト反転部33に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起34はベルトガイド板35の両端側のベルト反転部33に突設される。
【0040】
また、下部圧力付与体3の内部には冷却室36が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室36は下部圧力付与体3の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室36は内部仕切板3aによって、両端側のベルト反転部33の内部と中間のベルト押圧部31の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部31の内部は必要に応じて内部仕切板3bによって更に2つ又は複数の内部仕切板3bによってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部31の内部を複数に仕切る内部仕切板3bの一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板3bを挟んで両側が部分的に連通していることもある。
【0041】
下部圧力付与体3の内部の冷却室36を仕切るこれらの内部仕切板3a,3bは、内部が冷却室36によって空洞となる下部圧力付与体3の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する下部圧力付与体3には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板3a,3bがこれに抵抗して下部圧力付与体3がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たす。
【0042】
冷却室36には水冷冷却室36aと空冷冷却室36bがある。水冷冷却室36aは内部に水を流し、空冷冷却室36bは内部に空気を流すことによって冷却する。水冷冷却室36aは、通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室36bは通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0043】
下部圧力付与体3の形状の変形例として、図6に示すように、ベルト押圧部31の裏側のベルトガイド部32が両端側の例えば半円弧状のベルト反転部33の下端より高い位置に設けられて、ベルト押圧部31の裏側に凹部32aが形成された下部溝型略長円形状もある。この場合には、下部側のエンドレスベルト1と凹部32aの内部との間には隙間が生じ、図6(A)に図示するように、この凹部32a内にエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧してエンドレスベルト1に緊張を付与するベルト緊張用ロール37が配置される。
【0044】
また、図6(B)に図示するように、この凹部32a内にベルト緊張用ロール37に代えて又は併用して、エンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑する潤滑剤39が配置される。潤滑剤39は凹部32aの底に配置された凹状の潤滑剤ホルダー39aに収容されている。潤滑剤39は、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルト1の内側表面1a側に接触配置し、エンドレスベルト1の回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑して摩擦係数を低下させる。エンドレスベルト1はこの潤滑剤29によって回転中、その内側表面1aが潤滑されるため、頻繁にラインを止めて内側表面1aを潤滑する必要もなく、凹部32a内の潤滑剤39は生産性の向上に寄与する。
【0045】
下部圧力付与体3の両端側は、軸38を介してその両外方側に設置された門型のスタンド4に各々支持されている。下部圧力付与体3の両端には外側方に向けて軸38が各々張り出して設けられており、各軸38は門型のスタンド4の上部横桁41の中央に軸支されている。
【0046】
下部圧力付与体3の両端側に設置されたスタンド4は、上部横桁41と上部横桁41の両端下部を支持する左右の縦桁42から構成される門型形状からなる。スタンド4は上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3を支持するもので、上部横桁41の上方には上部圧力付与体2の両端側を支持する上部軸受け43が昇降自在に設けられている。この両側に設置されたスタンド4はその下端が板状のベース45上に固定されている。
【0047】
上部圧力付与体2の両端側は、軸28を介してその両外方側に設置された門型のスタンド4に各々支持されている。上部圧力付与体2の両端には外側方に向けて軸28が各々張り出して設けられており、各軸28は門型のスタンド4の上部横桁41の上方に昇降自在に設けられた上部軸受け43の中央に軸支されている。
【0048】
門型のスタンド4の内側つまり上部横桁41と左右の縦桁42との間には、液圧シリンダ5が設けられている。液圧シリンダ5は上部軸受け43を昇降させると共に昇降する上部軸受け43を介して上部圧力付与体2に、エンドレスベルト1に対する圧下力を付与する。液圧シリンダ5には例えば油圧シリンダが使用される。
【0049】
液圧シリンダ5は下向きに伸縮するように、その上端が上部横桁41の下端中央に吊持されている。液圧シリンダ5の下端から下方に突出するピストンロッド51の下端は横連結板52の中央に連結されている。この横連結板52の両端側には上部軸受け43を昇降自在に支持する昇降軸44の下端がそれぞれ連結されている。
【0050】
各昇降軸44は上下方向に延設され上部横桁41を昇降自在に貫通しており、貫通した上端は上部軸受け43の下端に連結されている。上部圧力付与体2を支持する上部軸受け43は、この昇降軸44が液圧シリンダ5によって昇降することによって、これと一体となって昇降する構造になっている。
【0051】
即ち、液圧シリンダ5のピストンロッド51が下方に伸長すると、昇降軸44は下降し、これに連動して上部軸受け43及び上部圧力付与体2も下降して、エンドレスベルト1に圧下力が作用して、上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3の協動による上下から挟圧してスリット帯板aに巻き取り張力を付与する。
【0052】
また、液圧シリンダ5のピストンロッド51が収縮すると、昇降軸44は上昇し、これに連動して上部軸受け43及び上部圧力付与体2も上昇して、エンドレスベルト1に対する圧下力は消失し、エンドレスベルト1によるスリット帯板aに対する巻き取り張力は消失する。
【0053】
なお、図では液圧シリンダ5は下向きに設置、つまり上部横桁41に吊持されて下向きにピストンロッド51が伸縮する構造になっているが、これと逆に液圧シリンダ5を上向きに設置、つまり液圧シリンダ5の下端をベース45上に設置しピストンロッド51が上端側になるようにして、上向きにピストンロッド51が伸縮する構造に設置してもよい。また、液圧シリンダ5には、スリット帯板aの板厚や板幅に合わせた張力を付与できるように、該液圧シリンダ5への流体圧を図示しない圧力調整装置で調整できる構造になっている。
【0054】
次に、上記発明の実施の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3の両端側に設置された各スタンド4内に吊持された液圧シリンダ5のピストンロッド51を収縮して、各スタンド4の上方の上部軸受け43を上昇させる。各上部軸受け43を上昇させると両端が上部軸受け43に支持された上部圧力付与体2は上昇して、上部圧力付与体2と下部圧力付与体3との間は上下に開く。
【0055】
開いた上下に相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士の間に各スリット帯板aを通し、液圧シリンダ5のピストンロッド51を下向きに伸長して上部圧力付与体2を下降させて、上部圧力付与体2と下部圧力付与体3との間を閉じてスリット帯板aの通板作業を完了すると共に、上下の上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3に装着したエンドレスベルト1により、スリット帯板aを上下から所定の押圧力で挟圧する。
【0056】
上部圧力付与体2のベルト押圧部21はエンドレスベルト1の内側表面1aを下向きに押圧して内側表面1aに完全に密着する。ベルト押圧部21に下向きに押圧されたエンドレスベルト1は外側表面1bがスリット帯板aの表面と完全に密着する。エンドレスベルト1の外側表面1bがスリット帯板aの表面と完全に密着した後は、スリット帯板aを下方に押圧する。
【0057】
スリット帯板aの裏面と接触する下部側のエンドレスベルト1は、反力によって下部圧力付与体3のベルト押圧部31によって下部側のエンドレスベルト1の内側表面1aを上向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bとスリット帯板aの裏面を密着させて、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士で上下からスリット帯板aの表裏面を同一の圧力で押圧する。このとき、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士と密着したスリット帯板aの表裏面の全範囲には均等な圧力が付与される。
【0058】
そして、スリット帯板aの巻取りを開始すると、移動するスリット帯板aの表裏面と上下のエンドレスベルト1の外側表面1bとの密着摩擦により、上下の各エンドレスベルト1は略長円形の上部圧力付与体2及び下部圧力付与体3の外周を略長円形状態で循環動して周回する。このとき、上下のエンドレスベルト1は移動する各スリット帯板aと滑りを生じることなく一体となって同速度で各々独立して循環動する。
【0059】
その一方で、上記上部圧力付与体2のベルト押圧部21及び下部圧力付与体3のベルト押圧部31の表面と上下のエンドレスベルト1の内側表面1aとの間の滑りによる摩擦力により、つまり、移動するスリット帯板aとの摩擦係合で略長円形状態で循環動するエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧するベルト押圧部21及びベルト押圧部31が所謂ブレーキ的な機能を果たして、スリット帯板巻取装置b(図20参照)と帯板巻取り張力付与装置との間に位置する各スリット帯板aに必要な巻き取り張力を発生させるのである。
【0060】
〔実施の形態−2〕
ここで、図7は基本構成断面図、図8は装置の全体側面図、図9は装置の全体正面図である。
【0061】
帯板巻取り張力付与装置は、スリット帯板aに所定の巻き取り張力を付与する装置で、スリット帯板巻取装置b(図20参照)の前方側でスリット帯板aの移動通路の途中に配置されている。
【0062】
帯板巻取り張力付与装置は、上下に相対向して略長円形状態で循環動自在に保持されたエンドレスベルト1と、上下のエンドレスベルト1が各々略長円形状態で循環動自在にその外周を周回し、且つエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧する上下一対の上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7と、両圧力付与体6,7を支持するスタンド8、上部圧力付与体6に圧下力を付与する液圧シリンダ9などから主に構成されている。
【0063】
上部圧力付与体6は上部側に配置されたエンドレスベルト1を下方に押圧し、一方、下部圧力付与体7は下部側に配置されたエンドレスベルト1を上方に押圧する。上部圧力付与体6と下部圧力付与体7とは協働して、上下に相対向する各エンドレスベルト1同士の間を通過するスリット帯板aをエンドレスベルト1を介して間接的に上下から同一の押圧力で挟圧して、一定の張力を付与するものである。
【0064】
エンドレスベルト1は、スリット帯板aの移動方向に循環動自在に配置され、これが横方向つまりスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に複数並設して配置され、更にこれらが上下に相対向して配置されている。
【0065】
上下に配置され且つ横方向に並設された各エンドレスベルト1は、無端状のベルトから構成され、上部側に配置された断面略長円形の上部圧力付与体6の外周、及び下部側に配置された断面略長円形の下部圧力付与体7の外周に、それぞれ独立して略長円形状態で循環動自在に装着されている。各エンドレスベルト1は独立してスリット帯板aの移動方向に循環動できるように装着されている。
【0066】
エンドレスベルト1が装着された上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7には、エンドレスベルト1を循環動させる駆動源は設けられてなく、エンドレスベルト1は移動するスリット帯板aとの摩擦係合で循環動する以外に、自力で循環動することがない。つまり、上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7に各々装着されたエンドレスベルト1は、スリット帯板aと接触しない限り循環動することはない。
【0067】
エンドレスベルト1の外側表面1bは、スリット帯板aと一体となってスリット帯板aを移動させる機能を果たすものである。これに対し、エンドレスベルト1の内側表面1aは、上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7との間の滑りによる摩擦力で、スリット帯板aに張力を発生させる機能を果たすものである。このため、エンドレスベルト1の内側表面1aは外側表面1bより摩擦係数が小さく滑り易いようになっている。
【0068】
エンドレスベルト1の内側表面1aは、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルト1の外側表面1bは、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する比較的薄い可撓性の材料で密着構成されている。
【0069】
この織布をエンドレスベルト1の内側表面1aに用いることで、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤をあらかじめ染み込ませて摩擦係数を小さく出来るし、織布は固体の板状の材質とは異なり可撓性が大きい特徴があるので、圧力付与体6,7に装着されたエンドレスベルト1の回転抵抗が小さい。織布は合成繊維のポリエステルやビニロン、ナイロンなどの素材を利用できる。
【0070】
また、真円形型付与体のエンドレスベルトの材質は、厚み方向に十分な圧縮弾性と復元性が要求され、真円形型付与体の線接触に近い圧着状態でベルトの圧縮弾性歪みを利用しているが、それに比べて本願は圧倒的に圧着面積が大きいので、真円形と同等の摩擦抵抗力(張力)を発生するには低い面圧で十分であり、本願では真円形型付与体場合の圧縮歪み変形抵抗を必要としないので、比較的薄くて圧縮弾性度の小さな合成樹脂系の材質を用いる組合せで機能を発揮できるし、織布の各繊維間及び編み目に潤滑剤を含浸させられるので、特にエンドレスベルト1の内側表面1a及び外側表面1bに用いる素材自体の摩擦係数の差のある素材の組合せに限定する必要はないと言う特徴がある。
【0071】
また、エンドレスベルト1の外側表面1bは、内側表面1aよりも摩擦係数の大なる材質で形成されていてもよい。つまり、エンドレスベルト1の内側表面材は耐摩性の材料、例えば低い軟質の合成樹脂系材を使用し、外側表面材は高い摩擦係数を有する弾性体、例えばゴムや合成樹脂材等を用いて構成されている。さらに、エンドレスベルト1の内側表面1aと上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の滑り面に潤滑剤を塗布する方法を用いて、エンドレスベルト1の内側表面1aの摩擦係数が外側表面1bの摩擦係数より小さくなるように構成してもよい。
【0072】
前記上部圧力付与体6は上部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された上部圧力付与体6は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部61と、ベルト押圧部61の上方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部62と、上下のベルトガイド部62及びベルト押圧部61の両端側に各々形成され側断面が弧状例えば半円弧状のベルト反転部63とから一体的に構成されている。
【0073】
上部圧力付与体6は、上下のベルトガイド部62及びベルト押圧部61、その両端側の例えば半円弧状のベルト反転部63によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部63は半円弧状の形状以外の形状、部分楕円弧状或いは部分放物線状の形状も考えられ、この場合には上部圧力付与体6は断面略長円形状となる。上部圧力付与体6はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0074】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の上部圧力付与体6の外周を独立して循環動する。上部圧力付与体6の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が上部圧力付与体6の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0075】
ベルト押圧部61は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部61は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0076】
ベルト押圧部61によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部61は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0077】
上部圧力付与体6の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起64がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起64は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起64は両ベルト反転部63に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部62にも設けられる。このベルトガイド用突起64には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板が使用されることもある。ベルトガイド板が使用される場合、ベルトガイド板はベルト反転部63に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起64はベルトガイド板の両端側のベルト反転部63に突設される(図4参照)。
【0078】
また、上部圧力付与体6の内部には冷却室66が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室66は上部圧力付与体6の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室66には水冷冷却室と空冷冷却室があるが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。つまり、水冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0079】
冷却室66は内部仕切板6aによって、両端側のベルト反転部63の内部と中間のベルト押圧部61の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部61の内部は必要に応じて図示しない内部仕切板によって更に2つ又は複数の内部仕切板によってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部61の内部を複数に仕切る図示しない内部仕切板の一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板を挟んで両側が部分的に連通していることもある。図示しない内部仕切板で更に仕切られる関係は前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0080】
上部圧力付与体6の内部の冷却室66を仕切るこれらの内部仕切板6aは、内部が冷却室66によって空洞となる上部圧力付与体6の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する上部圧力付与体6には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板6aがこれに抵抗して上部圧力付与体6がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たすが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0081】
前記下部圧力付与体7は下部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された下部圧力付与体7は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部71と、ベルト押圧部71の下方に配置された膨縮袋体71aと、ベルト押圧部71と膨縮袋体71aを収容する凹部72aと、凹部72aの下方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部72と、上下のベルト押圧部71及びベルトガイド部72の両端側に各々形成され側断面が弧状例えば半円弧状のベルト反転部73とから構成されている。
【0082】
このうち、ベルト押圧部71はベルトガイド部72と両端側のベルト反転部73に対して非連結状態になっている。ベルトガイド部72と両端側のベルト反転部73とは一体的に構成されている。ベルト押圧部71及び膨縮袋体71aが収容される凹部72aは下部圧力付与体7の上部の中間のベルト押圧部71の配置箇所に形成されている。
【0083】
下部圧力付与体7は、上下のベルト押圧部71及びベルトガイド部72、その両端側の例えば半円弧状のベルト反転部73によって、その外周は例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部73は半円弧状の形状以外の形状、部分楕円弧状或いは部分放物線状の形状も考えられ、この場合には下部圧力付与体7は断面略長円形状となる。下部圧力付与体7はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0084】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の下部圧力付与体7の外周を独立して循環動する。下部圧力付与体7の周周り表面は略長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が下部圧力付与体7の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0085】
ベルト押圧部71は膨縮袋体71aによって押圧されて、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部71は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0086】
ベルト押圧部71によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部71は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0087】
上記膨縮袋体71aはベルト押圧部71と凹部72aの底面との間に上下方向に挟まれた状態で保持されている。膨縮袋体71aは、一定の幅と長さと厚みを有する中空状の袋体からなり、その長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、横方向に並設された各エンドレスベルト1の内側を挿通している。膨縮袋体71aは中空状の内部に気体又は液体の流体を密封したもので、内部の流体の漏れを生じさせない密封性の材料からなり、又膨縮性に富む材料、例えば合成樹脂などからなっている。
【0088】
膨縮袋体71aは内部の流体の圧力で膨縮し、その上側に配置されたベルト押圧部71の下部の平坦面を流体圧の性質に基づき均一に押圧する。そして、膨縮袋体71aはベルト押圧部71を介してスリット帯板aを均一に押圧することができる。また、膨縮袋体71aの内部の流体の圧力を変えることにより、ベルト押圧部71を押圧する押圧力を変え、又ベルト押圧部71を介してスリット帯板aを押圧する押圧力を変えることができる。流体として、例えば空気や油などの気体又は液体が利用される。
【0089】
下部圧力付与体7の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起74がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起74は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起74は両ベルト反転部73に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部72にも設けられる。このベルトガイド用突起74には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板が使用されることもある。ベルトガイド板が使用される場合、ベルトガイド板はベルト反転部73に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起74はベルトガイド板の両端側のベルト反転部73に突設される(図4参照)。
【0090】
また、下部圧力付与体7の内部には冷却室76が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室76は下部圧力付与体7の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室76には水冷冷却室と空冷冷却室がある。前記実施の形態−1の場合と全く同一である。つまり、水冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0091】
冷却室76は内部仕切板7aによって、両端側のベルト反転部73の内部と中間の凹部72aの下方内部の3つに仕切られる。また、凹部72aの下方内部は必要に応じて図示しない内部仕切板によって更に2つ又は複数の内部仕切板によってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、凹部72aの下方内部を複数に仕切る図示しない内部仕切板の一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板を挟んで両側が部分的に連通していることもある。図示しない内部仕切板で更に仕切られる関係は前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0092】
下部圧力付与体7の内部の冷却室76を仕切るこれらの内部仕切板7aは、内部が冷却室76によって空洞となる下部圧力付与体7の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する下部圧力付与体7には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板7aがこれに抵抗して下部圧力付与体7がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たすが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0093】
上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の両端側の中央側は、その両側方に設置された門型のスタンド8に嵌合されている。上部圧力付与体6はスタンド8に昇降自在に嵌合されている。下部圧力付与体7の両端の中央側は、支持桁83によって支持されている。
【0094】
上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の両端側に設置されたスタンド8は、上部横桁81と上部横桁81の両端下部を支持する左右の高さのある縦桁82から構成される門型形状からなる。スタンド8は上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7を支持するもので、上部圧力付与体6はスタンド8の内側つまり上部横桁81と左右の縦桁82の間で昇降する構造になっており、縦桁82の高さは上部圧力付与体6の昇降よりも高い。上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の両側に設置されたスタンド8はその下端が板状のベース84上に固定されている。
【0095】
門型のスタンド8の上部横桁81の中央上端には、液圧シリンダ9が設けられている。液圧シリンダ9は上部圧力付与体6を昇降させると共に昇降する上部圧力付与体6に、エンドレスベルト1に対する圧下力を付与する。液圧シリンダ9には例えば油圧シリンダが使用される。
【0096】
液圧シリンダ9は下向きに伸縮するように、その下端が上部横桁81の上端中央に設置されている。液圧シリンダ9の下端から下方に突出するピストンロッド91は上部横桁81を貫通して下方に延びていて、ピストンロッド91の下端は上部圧力付与体6の両端側中央上端に連結されていて、液圧シリンダ9は上部圧力付与体6の両端側を圧下する構造になっている。
【0097】
即ち、液圧シリンダ9のピストンロッド91が下方に伸長すると、両端側が連結された上部圧力付与体6も下降して、エンドレスベルト1に圧下力が作用して、上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の協動による上下から挟圧してスリット帯板aに巻き取り張力を付与する。
【0098】
また、液圧シリンダ9のピストンロッド91が収縮すると、上部圧力付与体6も上昇して、エンドレスベルト1に対する圧下力は消失し、エンドレスベルト1によるスリット帯板aに対する巻き取り張力は消失する。
【0099】
なお、液圧シリンダ9には、スリット帯板aの板厚や板幅に合わせた張力を付与できるように、該液圧シリンダ9への流体圧を図示しない圧力調整装置で調整できる構造になっている。
【0100】
次に、上記発明の実施の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の両端側に設置された各スタンド8の上部横桁81の上端中央に下向きに設置された液圧シリンダ9のピストンロッド91を上方に収縮すると、ピストンロッド91の下端にその両端側が連結された上部圧力付与体6は上昇して、上部圧力付与体6と下部圧力付与体7との間は上下に開く。
【0101】
開いた上下に相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士の間に各スリット帯板aを通し、液圧シリンダ9のピストンロッド91を下向きに伸長して上部圧力付与体6を下降させて、上部圧力付与体6と下部圧力付与体7との間を閉じてスリット帯板aの通板作業が完了した後、下部圧力付与体7のベルト押圧部71の下側の膨縮袋体71aに流体を圧入して膨縮袋体71aを膨脹させる。流体は図示しないポンプなどにより強制的に膨縮袋体71aの内部に圧入させられる。
【0102】
膨脹した膨縮袋体71aは、該膨縮袋体71aの上側のベルト押圧部71を押圧するが、流体内の全ての点は同じ圧力になるという性質により、膨縮袋体71aは該膨縮袋体71aと接するベルト押圧部71の全範囲を同じ圧力で押圧する。膨脹による膨縮袋体71aの上下方向への脹らみによって、ベルト押圧部71は上向きに押圧されてその上面が下部側のエンドレスベルト1の内側表面1aに完全に密着する。膨縮袋体71aの流体圧により上方に押圧されたベルト押圧部71はエンドレスベルト1を上向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bがスリット帯板aの裏面と完全に密着する。
【0103】
スリット帯板aの表面と接触する上部側のエンドレスベルト1は、反力によって上部圧力付与体6のベルト押圧部61によって上部側のエンドレスベルト1の内側表面1aを下向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bとスリット帯板aの表面を密着させて、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士で上下からスリット帯板aの表裏面を同一の圧力で押圧する。このとき、膨縮袋体71aの流体内の全ての点は同じ圧力になるという性質により、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士と密着したスリット帯板aの表裏面の全範囲には均等な圧力が付与される。
【0104】
そして、スリット帯板aの巻取りを開始すると、移動するスリット帯板aの表裏面と上下のエンドレスベルト1の外側表面1bとの密着摩擦により、上下の各エンドレスベルト1は略長円形の上部圧力付与体6及び下部圧力付与体7の外周を略長円形状態で循環動して周回する。このとき、上下のエンドレスベルト1は移動する各スリット帯板aと滑りを生じることなく一体となって同速度で各々独立して循環動する。
【0105】
その一方で、上記上部圧力付与体6のベルト押圧部61及び下部圧力付与体7のベルト押圧部71の表面と上下のエンドレスベルト1の内側表面1aとの間の滑りによる摩擦力により、つまり、移動するスリット帯板aとの摩擦係合で略長円形状態で循環動するエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧するベルト押圧部61及びベルト押圧部71が所謂ブレーキ的な機能を果たして、スリット帯板巻取装置b(図20参照)と帯板巻取り張力付与装置との間に位置する各スリット帯板aに必要な巻き取り張力を発生させるのである。また、膨縮袋体6の流体圧力を制御することによって、発生張力は自由に調節可能となる。
【0106】
〔実施の形態−3〕
ここで、図10は基本構成断面図、図11は装置の全体側面図、図12は装置の全体正面図、図13はベルトガイド用突起がピンと板の場合の構成断面図、図14は水冷冷却室を備えた構成断面図、図15(A)(B)は変形構成断面図である。
【0107】
帯板巻取り張力付与装置は、スリット帯板aに所定の巻き取り張力を付与する装置で、スリット帯板巻取装置b(図20参照)の前方側でスリット帯板aの移動通路の途中に配置されている。
【0108】
帯板巻取り張力付与装置は、上下に相対向して略長円形状態で循環動自在に保持されたエンドレスベルト1と、上下のエンドレスベルト1が各々略長円形状態で循環動自在にその外周を周回し、且つエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧する上下一対の上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103と、両圧力付与体102,103を支持するスタンド104、上部圧力付与体102に圧下力を付与する液圧シリンダ105などから主に構成されている。
【0109】
上部圧力付与体102は上部側に配置されたエンドレスベルト1を下方に押圧し、一方、下部圧力付与体103は下部側に配置されたエンドレスベルト1を上方に押圧する。上部圧力付与体102と下部圧力付与体103とは協働して、上下に相対向する各エンドレスベルト1同士の間を通過するスリット帯板aをエンドレスベルト1を介して間接的に上下から同一の押圧力で挟圧して、一定の張力を付与するものである。
【0110】
エンドレスベルト1は、スリット帯板aの移動方向に循環動自在に配置され、これが横方向つまりスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に複数並設して配置され、更にこれらが上下に相対向して配置されている。
【0111】
上下に配置され且つ横方向に並設された各エンドレスベルト1は、無端状のベルトから構成され、上部側に配置された断面略長円形の上部圧力付与体102の外周、及び下部側に配置された断面略長円形の下部圧力付与体103の外周に、それぞれ独立して略長円形状態で循環動自在に装着されている。各エンドレスベルト1は独立してスリット帯板aの移動方向に循環動できるように装着されている。
【0112】
エンドレスベルト1が装着された上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103には、エンドレスベルト1を循環動させる駆動源は設けられてなく、エンドレスベルト1は移動するスリット帯板aとの摩擦係合で循環動する以外に、自力で循環動することがない。つまり、上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103に各々装着されたエンドレスベルト1は、スリット帯板aと接触しない限り循環動することはない。
【0113】
エンドレスベルト1の外側表面1bは、スリット帯板aと一体となってスリット帯板aを移動させる機能を果たすものである。これに対し、エンドレスベルト1の内側表面1aは、上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103との間の滑りによる摩擦力で、スリット帯板aに張力を発生させる機能を果たすものである。このため、エンドレスベルト1の内側表面1aは外側表面1bより摩擦係数が小さく滑り易いようになっている。
【0114】
エンドレスベルト1の内側表面1aは、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルト1の外側表面1bは、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する比較的薄い可撓性の材料で密着構成されている。
【0115】
この織布をエンドレスベルト1の内側表面1aに用いることで、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤をあらかじめ染み込ませて摩擦係数を小さく出来るし、織布は固体の板状の材質とは異なり可撓性が大きい特徴があるので、圧力付与体102,103に装着されたエンドレスベルト1の回転抵抗が小さい。織布は合成繊維のポリエステルやビニロン、ナイロンなどの素材を利用できる。
【0116】
また、真円形型付与体のエンドレスベルトの材質は、厚み方向に十分な圧縮弾性と復元性が要求され、真円形型付与体の線接触に近い圧着状態でベルトの圧縮弾性歪みを利用しているが、それに比べて本願は圧倒的に圧着面積が大きいので、真円形と同等の摩擦抵抗力(張力)を発生するには低い面圧で十分であり、本願では真円形型付与体場合の圧縮歪み変形抵抗を必要としないので、比較的薄くて圧縮弾性度の小さな合成樹脂系の材質を用いる組合せで機能を発揮できるし、織布の各繊維間及び編み目に潤滑剤を含浸させられるので、特にエンドレスベルト1の内側表面1a及び外側表面1bに用いる素材自体の摩擦係数の差のある素材の組合せに限定する必要はないと言う特徴がある。
【0117】
また、エンドレスベルト1の外側表面1bは、内側表面1aよりも摩擦係数の大なる材質で形成されていてもよい。つまり、エンドレスベルト1の内側表面材は耐摩性の材料、例えば低い摩擦係数の軟質の合成樹脂系材を使用し、外側表面材は高い摩擦係数を有する弾性体、例えばゴムや合成樹脂材等を用いて構成されている。さらに、エンドレスベルト1の内側表面1aと上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103の滑り面に潤滑剤を塗布する方法を用いて、エンドレスベルト1の内側表面1aの摩擦係数が外側表面1bの摩擦係数より小さくなるように構成してもよい。
【0118】
前記上部圧力付与体102は上部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された上部圧力付与体102は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部121と、ベルト押圧部121の上方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部122と、上下のベルトガイド部122及びベルト押圧部121の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルト1との接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子123aが所定間隔で、エンドレスベルト1との接触軌跡が弧状例えば半円弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部123とから一体的に構成されている。
【0119】
上部圧力付与体102は、上下のベルトガイド部122及びベルト押圧部121、その両端側の例えば半円弧状に配置された複数のベルト反転ガイド子123aからなるベルト反転部123によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部123を構成する複数のベルト反転ガイド子123aは半円弧状の配置、部分楕円弧状或いは部分放物線状の配置も考えられ、この場合には上部圧力付与体102は断面略長円形状となる。上部圧力付与体102はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0120】
ベルト反転部123を構成する各ベルト反転ガイド子123aには、エンドレスベルトの内側表面1aとの接触面が丸みを帯びた円筒管や円形棒が使用されている。又各ベルト反転ガイド子123aは固定して取り付けられているが、回転自在に取り付けられることもある。ベルト反転部123がベルト反転ガイド子123aで構成される場合には、ベルト反転部123の内部に各ベルト反転ガイド子123aの隙間から空気が流出入してその通気性が図られるために空冷効果が生じる。更に、ベルト反転ガイド子123aに内部が中空な円筒管が使用される場合には円筒管内部を空冷することによって更に冷却効果は高まる。同様に、各ベルト反転ガイド子123aに内部と一部開通する溝を有する断面円弧状管を使用する場合も同様に冷却効果を高めることができる。
【0121】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の上部圧力付与体102の外周を独立して循環動する。上部圧力付与体102の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が上部圧力付与体102の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0122】
ベルト押圧部121は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部121は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0123】
ベルト押圧部121によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部121は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0124】
上部圧力付与体102の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起124がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起124は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起124は両ベルト反転部123に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部122にも設けられる。このベルトガイド用突起124には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板125が使用されることもある。図13に図示するように、ベルトガイド板125が使用される場合、ベルトガイド板125はベルト反転部123に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起124はベルトガイド板125の両端側のベルト反転部123に突設される。
【0125】
また、上部圧力付与体102の内部には冷却室126が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室126は上部圧力付与体102の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室126は内部仕切板102aによって、両端側のベルト反転部123の内部と中間のベルト押圧部121の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部121の内部は必要に応じて内部仕切板102bによって更に2つ又は複数の内部仕切板102bによってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部121の内部を複数に仕切る内部仕切板102bの一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板102bを挟んで両側が部分的に連通していることもある。
【0126】
上部圧力付与体102の内部の冷却室126を仕切るこれらの内部仕切板102a,102bは、内部が冷却室126によって空洞となる上部圧力付与体102の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する上部圧力付与体102には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板102a,102bがこれに抵抗して上部圧力付与体102がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たす。
【0127】
冷却室126には水冷冷却室126aと空冷冷却室126bがある。水冷冷却室126aは内部に水を流し、空冷冷却室126bは内部に空気を流すことによって冷却する。水冷冷却室126aは通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室126bは通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0128】
上部圧力付与体102の形状の変形例として、図15に示すように、ベルト押圧部121の裏側のベルトガイド部122が両端側の例えば半円弧状のベルト反転部123の上端より低い位置に設けられて、ベルト押圧部121の裏側に凹部122aが形成された上部溝型略長円形状もある。この場合には、上部側のエンドレスベルト1と凹部122aの内部との間には隙間が生じ、図15(A)に図示するように、この凹部122a内にエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧してエンドレスベルト1に緊張を付与するベルト緊張用ロール127が配置される。
【0129】
また、図15(B)に図示するように、この凹部122a内にベルト緊張用ロール127に代えて又は併用して、エンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑する潤滑剤129が配置される。潤滑剤129は凹部122aの底に配置された凹状の潤滑剤ホルダー129aに収容されている。潤滑剤129は、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルト1の内側表面1a側に接触配置し、エンドレスベルト1の回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑して摩擦係数を低下させる。エンドレスベルト1はこの潤滑剤129によって回転中、その内側表面1aが潤滑されるため、頻繁にラインを止めて内側表面1aを潤滑する必要もなく、凹部122a内の潤滑剤129は生産性の向上に寄与する。
【0130】
前記下部圧力付与体103は下部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された下部圧力付与体103は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部131と、ベルト押圧部131の下方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部132と、上下のベルト押圧部131及びベルトガイド部132の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルト1との接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子133aが所定間隔で、エンドレスベルト1との接触軌跡が弧状例えば半円弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部133とから一体的に構成されている。
【0131】
下部圧力付与体103は、上下のベルトガイド部132及びベルト押圧部131、その両端側の例えば半円弧状に配置された複数のベルト反転ガイド子133aからなるベルト反転部133によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部133を構成する複数のベルト反転ガイド子133aは半円弧状の配置、部分楕円弧状或いは部分放物線状の配置も考えられ、この場合には下部圧力付与体103は断面略長円形状となる。下部圧力付与体103はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0132】
ベルト反転部133を構成する各ベルト反転ガイド子133aには、エンドレスベルトの内側表面1aとの接触面が丸みを帯びた円筒管や円形棒が使用されている。又各ベルト反転ガイド子133aは固定して取り付けられているが、回転自在に取り付けられることもある。ベルト反転部133がベルト反転ガイド子133aで構成される場合には、ベルト反転部133の内部に各ベルト反転ガイド子133aの隙間から空気が流出入してその通気性が図られるために空冷効果が生じる。更に、ベルト反転ガイド子133aに内部が中空な円筒管が使用される場合には円筒管内部を空冷することによって更に冷却効果は高まる。同様に、各ベルト反転ガイド子133aに内部と一部開通する溝を有する断面円弧状管を使用する場合も同様に冷却効果を高めることができる。
【0133】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の下部圧力付与体103の外周を独立して循環動する。下部圧力付与体103の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が下部圧力付与体103の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0134】
ベルト押圧部131は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部131は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0135】
ベルト押圧部131によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部131は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0136】
下部圧力付与体103の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起134がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起134は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起134は両ベルト反転部133に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部132にも設けられる。このベルトガイド用突起134には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板135が使用されることもある。図13に図示するように、ベルトガイド板135が使用される場合、ベルトガイド板135はベルト反転部133に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起134はベルトガイド板135の両端側のベルト反転部133に突設される。
【0137】
また、下部圧力付与体103の内部には冷却室136が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室136は下部圧力付与体103の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室136は内部仕切板103aによって、両端側のベルト反転部133の内部と中間のベルト押圧部131の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部131の内部は必要に応じて内部仕切板103bによって更に2つ又は複数の内部仕切板103bによってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部131の内部を複数に仕切る内部仕切板103bの一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板103bを挟んで両側が部分的に連通していることもある。
【0138】
下部圧力付与体103の内部の冷却室136を仕切るこれらの内部仕切板3a,3bは、内部が冷却室136によって空洞となる下部圧力付与体103の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する下部圧力付与体103には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板3a,3bがこれに抵抗して下部圧力付与体103がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たす。
【0139】
冷却室136には水冷冷却室136aと空冷冷却室136bがある。水冷冷却室136aは内部に水を流し、空冷冷却室136bは内部に空気を流すことによって冷却する。水冷冷却室136aは、通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室136bは通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0140】
下部圧力付与体103の形状の変形例として、図15に示すように、ベルト押圧部131の裏側のベルトガイド部132が両端側の例えば半円弧状のベルト反転部133の下端より高い位置に設けられて、ベルト押圧部131の裏側に凹部132aが形成された下部溝型略長円形状もある。この場合には、下部側のエンドレスベルト1と凹部132aの内部との間には隙間が生じ、図15(A)に図示するように、この凹部132a内にエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧してエンドレスベルト1に緊張を付与するベルト緊張用ロール137が配置される。
【0141】
また、図15(B)に図示するように、この凹部132a内にベルト緊張用ロール137に代えて又は併用して、エンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑する潤滑剤139が配置される。潤滑剤139は凹部132aの底に配置された凹状の潤滑剤ホルダー139aに収容されている。潤滑剤139は、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルト1の内側表面1a側に接触配置し、エンドレスベルト1の回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルト1の内側表面1aを潤滑して摩擦係数を低下させる。エンドレスベルト1はこの潤滑剤129によって回転中、その内側表面1aが潤滑されるため、頻繁にラインを止めて内側表面1aを潤滑する必要もなく、凹部132a内の潤滑剤139は生産性の向上に寄与する。
【0142】
下部圧力付与体103の両端側は、軸138を介してその両外方側に設置された門型のスタンド104に各々支持されている。下部圧力付与体103の両端には外側方に向けて軸138が各々張り出して設けられており、各軸138は門型のスタンド104の上部横桁141の中央に軸支されている。
【0143】
下部圧力付与体103の両端側に設置されたスタンド104は、上部横桁141と上部横桁141の両端下部を支持する左右の縦桁142から構成される門型形状からなる。スタンド104は上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103を支持するもので、上部横桁141の上方には上部圧力付与体102の両端側を支持する上部軸受け143が昇降自在に設けられている。この両側に設置されたスタンド104はその下端が板状のベース145上に固定されている。
【0144】
上部圧力付与体102の両端側は、軸128を介してその両外方側に設置された門型のスタンド104に各々支持されている。上部圧力付与体102の両端には外側方に向けて軸128が各々張り出して設けられており、各軸128は門型のスタンド104の上部横桁141の上方に昇降自在に設けられた上部軸受け143の中央に軸支されている。
【0145】
門型のスタンド104の内側つまり上部横桁141と左右の縦桁142との間には、液圧シリンダ105が設けられている。液圧シリンダ105は上部軸受け143を昇降させると共に昇降する上部軸受け143を介して上部圧力付与体102に、エンドレスベルト1に対する圧下力を付与する。液圧シリンダ105には例えば油圧シリンダが使用される。
【0146】
液圧シリンダ105は下向きに伸縮するように、その上端が上部横桁141の下端中央に吊持されている。液圧シリンダ105の下端から下方に突出するピストンロッド151の下端は横連結板152の中央に連結されている。この横連結板152の両端側には上部軸受け143を昇降自在に支持する昇降軸144の下端がそれぞれ連結されている。
【0147】
各昇降軸144は上下方向に延設され上部横桁141を昇降自在に貫通しており、貫通した上端は上部軸受け143の下端に連結されている。上部圧力付与体102を支持する上部軸受け143は、この昇降軸144が液圧シリンダ105によって昇降することによって、これと一体となって昇降する構造になっている。
【0148】
即ち、液圧シリンダ105のピストンロッド151が下方に伸長すると、昇降軸144は下降し、これに連動して上部軸受け143及び上部圧力付与体102も下降して、エンドレスベルト1に圧下力が作用して、上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103の協動による上下から挟圧してスリット帯板aに巻き取り張力を付与する。
【0149】
また、液圧シリンダ105のピストンロッド151が収縮すると、昇降軸144は上昇し、これに連動して上部軸受け143及び上部圧力付与体102も上昇して、エンドレスベルト1に対する圧下力は消失し、エンドレスベルト1によるスリット帯板aに対する巻き取り張力は消失する。
【0150】
なお、図では液圧シリンダ105は下向きに設置、つまり上部横桁141に吊持されて下向きにピストンロッド151が伸縮する構造になっているが、これと逆に液圧シリンダ105を上向きに設置、つまり液圧シリンダ105の下端をベース145上に設置しピストンロッド151が上端側になるようにして、上向きにピストンロッド151が伸縮する構造に設置してもよい。また、液圧シリンダ105には、スリット帯板aの板厚や板幅に合わせた張力を付与できるように、該液圧シリンダ105への流体圧を図示しない圧力調整装置で調整できる構造になっている。
【0151】
次に、上記発明の実施の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103の両端側に設置された各スタンド104内に吊持された液圧シリンダ105のピストンロッド151を収縮して、各スタンド104の上方の上部軸受け143を上昇させる。各上部軸受け143を上昇させると両端が上部軸受け143に支持された上部圧力付与体102は上昇して、上部圧力付与体102と下部圧力付与体103との間は上下に開く。
【0152】
開いた上下に相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士の間に各スリット帯板aを通し、液圧シリンダ105のピストンロッド151を下向きに伸長して上部圧力付与体102を下降させて、上部圧力付与体102と下部圧力付与体103との間を閉じてスリット帯板aの通板作業を完了すると共に、上下の上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103に装着したエンドレスベルト1により、スリット帯板aを上下から所定の押圧力で挟圧する。
【0153】
上部圧力付与体102のベルト押圧部121はエンドレスベルト1の内側表面1aを下向きに押圧して内側表面1aに完全に密着する。ベルト押圧部121に下向きに押圧されたエンドレスベルト1は外側表面1bがスリット帯板aの表面と完全に密着する。エンドレスベルト1の外側表面1bがスリット帯板aの表面と完全に密着した後は、スリット帯板aを下方に押圧する。
【0154】
スリット帯板aの裏面と接触する下部側のエンドレスベルト1は、反力によって下部圧力付与体103のベルト押圧部131によって下部側のエンドレスベルト1の内側表面1aを上向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bとスリット帯板aの裏面を密着させて、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士で上下からスリット帯板aの表裏面を同一の圧力で押圧する。このとき、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士と密着したスリット帯板aの表裏面の全範囲には均等な圧力が付与される。
【0155】
そして、スリット帯板aの巻取りを開始すると、移動するスリット帯板aの表裏面と上下のエンドレスベルト1の外側表面1bとの密着摩擦により、上下の各エンドレスベルト1は略長円形の上部圧力付与体102及び下部圧力付与体103の外周を略長円形状態で循環動して周回する。このとき、上下のエンドレスベルト1は移動する各スリット帯板aと滑りを生じることなく一体となって同速度で各々独立して循環動する。
【0156】
その一方で、上記上部圧力付与体102のベルト押圧部121及び下部圧力付与体103のベルト押圧部131の表面と上下のエンドレスベルト1の内側表面1aとの間の滑りによる摩擦力により、つまり、移動するスリット帯板aとの摩擦係合で略長円形状態で循環動するエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧するベルト押圧部121及びベルト押圧部131が所謂ブレーキ的な機能を果たして、スリット帯板巻取装置b(図20参照)と帯板巻取り張力付与装置との間に位置する各スリット帯板aに必要な巻き取り張力を発生させるのである。
【0157】
〔実施の形態−4〕
ここで、図16は基本構成断面図、図17は装置の全体側面図、図18は装置の全体正面図である。
【0158】
帯板巻取り張力付与装置は、スリット帯板aに所定の巻き取り張力を付与する装置で、スリット帯板巻取装置b(図20参照)の前方側でスリット帯板aの移動通路の途中に配置されている。
【0159】
帯板巻取り張力付与装置は、上下に相対向して略長円形状態で循環動自在に保持されたエンドレスベルト1と、上下のエンドレスベルト1が各々略長円形状態で循環動自在にその外周を周回し、且つエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧する上下一対の上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107と、両圧力付与体106,107を支持するスタンド108、上部圧力付与体106に圧下力を付与する液圧シリンダ109などから主に構成されている。
【0160】
上部圧力付与体106は上部側に配置されたエンドレスベルト1を下方に押圧し、一方、下部圧力付与体107は下部側に配置されたエンドレスベルト1を上方に押圧する。上部圧力付与体106と下部圧力付与体107とは協働して、上下に相対向する各エンドレスベルト1同士の間を通過するスリット帯板aをエンドレスベルト1を介して間接的に上下から同一の押圧力で挟圧して、一定の張力を付与するものである。
【0161】
エンドレスベルト1は、スリット帯板aの移動方向に循環動自在に配置され、これが横方向つまりスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に複数並設して配置され、更にこれらが上下に相対向して配置されている。
【0162】
上下に配置され且つ横方向に並設された各エンドレスベルト1は、無端状のベルトから構成され、上部側に配置された断面略長円形の上部圧力付与体106の外周、及び下部側に配置された断面略長円形の下部圧力付与体107の外周に、それぞれ独立して略長円形状態で循環動自在に装着されている。各エンドレスベルト1は独立してスリット帯板aの移動方向に循環動できるように装着されている。
【0163】
エンドレスベルト1が装着された上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107には、エンドレスベルト1を循環動させる駆動源は設けられてなく、エンドレスベルト1は移動するスリット帯板aとの摩擦係合で循環動する以外に、自力で循環動することがない。つまり、上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107に各々装着されたエンドレスベルト1は、スリット帯板aと接触しない限り循環動することはない。
【0164】
エンドレスベルト1の外側表面1bは、スリット帯板aと一体となってスリット帯板aを移動させる機能を果たすものである。これに対し、エンドレスベルト1の内側表面1aは、上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107との間の滑りによる摩擦力で、スリット帯板aに張力を発生させる機能を果たすものである。このため、エンドレスベルト1の内側表面1aは外側表面1bより摩擦係数が小さく滑り易いようになっている。
【0165】
エンドレスベルト1の内側表面1aは、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルト1の外側表面1bは、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する比較的薄い可撓性の材料で密着構成されている。
【0166】
この織布をエンドレスベルト1の内側表面1aに用いることで、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤をあらかじめ染み込ませて摩擦係数を小さく出来るし、織布は固体の板状の材質とは異なり可撓性が大きい特徴があるので、圧力付与体106,107に装着されたエンドレスベルト1の回転抵抗が小さい。織布は合成繊維のポリエステルやビニロン、ナイロンなどの素材を利用できる。
【0167】
また、真円形型付与体のエンドレスベルトの材質は、厚み方向に十分な圧縮弾性と復元性が要求され、真円形型付与体の線接触に近い圧着状態でベルトの圧縮弾性歪みを利用しているが、それに比べて本願は圧倒的に圧着面積が大きいので、真円形と同等の摩擦抵抗力(張力)を発生するには低い面圧で十分であり、本願では真円形型付与体場合の圧縮歪み変形抵抗を必要としないので、比較的薄くて圧縮弾性度の小さな合成樹脂系の材質を用いる組合せで機能を発揮できるし、織布の各繊維間及び編み目に潤滑剤を含浸させられるので、特にエンドレスベルト1の内側表面1a及び外側表面1bに用いる素材自体の摩擦係数の差のある素材の組合せに限定する必要はないと言う特徴がある。
【0168】
また、エンドレスベルト1の外側表面1bは、内側表面1aよりも摩擦係数の大なる材質で形成されていてもよい。つまり、エンドレスベルト1の内側表面材は耐摩性の材料、例えば低い軟質の合成樹脂系材を使用し、外側表面材は高い摩擦係数を有する弾性体、例えばゴムや合成樹脂材等を用いて構成されている。さらに、エンドレスベルト1の内側表面1aと上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の滑り面に潤滑剤を塗布する方法を用いて、エンドレスベルト1の内側表面1aの摩擦係数が外側表面1bの摩擦係数より小さくなるように構成してもよい。
【0169】
前記上部圧力付与体106は上部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された上部圧力付与体106は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部161と、ベルト押圧部161の上方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部162と、上下のベルトガイド部162及びベルト押圧部161の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルト1との接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子163aが所定間隔で、エンドレスベルト1との接触軌跡が弧状例えば半円弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部163とから一体的に構成されている。
【0170】
上部圧力付与体106は、上下のベルトガイド部162及びベルト押圧部161、その両端側の例えば半円弧状に配置された複数のベルト反転ガイド子163aからなるベルト反転部163によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部163を構成する複数のベルト反転ガイド子163aは半円弧状の配置、部分楕円弧状或いは部分放物線状の配置も考えられ、この場合には上部圧力付与体162は断面略長円形状となる。上部圧力付与体162はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0171】
ベルト反転部163を構成する各ベルト反転ガイド子163aには、エンドレスベルトの内側表面1aとの接触面が丸みを帯びた円筒管や円形棒が使用されている。又各ベルト反転ガイド子163aは固定して取り付けられているが、回転自在に取り付けられることもある。ベルト反転部163がベルト反転ガイド子163aで構成される場合には、ベルト反転部163の内部に各ベルト反転ガイド子163aの隙間から空気が流出入してその通気性が図られるために空冷効果が生じる。更に、ベルト反転ガイド子163aに内部が中空な円筒管が使用される場合には円筒管内部を空冷することによって更に冷却効果は高まる。同様に、各ベルト反転ガイド子163aに内部と一部開通する溝を有する断面円弧状管を使用する場合も同様に冷却効果を高めることができる。
【0172】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の上部圧力付与体106の外周を独立して循環動する。上部圧力付与体106の周周り表面は長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が上部圧力付与体106の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0173】
ベルト押圧部161は、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部161は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0174】
ベルト押圧部161によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部161は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0175】
上部圧力付与体106の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起164がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起164は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起164は両ベルト反転部163に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部162にも設けられる。このベルトガイド用突起164には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板が使用されることもある。ベルトガイド板が使用される場合、ベルトガイド板はベルト反転部163に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起164はベルトガイド板の両端側のベルト反転部163に突設される(図13参照)。
【0176】
また、上部圧力付与体106の内部には冷却室166が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室166は上部圧力付与体106の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室166には水冷冷却室と空冷冷却室があるが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。つまり、水冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0177】
冷却室166は内部仕切板106aによって、両端側のベルト反転部163の内部と中間のベルト押圧部161の内部の3つに仕切られる。また、ベルト押圧部161の内部は必要に応じて図示しない内部仕切板によって更に2つ又は複数の内部仕切板によってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、ベルト押圧部161の内部を複数に仕切る図示しない内部仕切板の一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板を挟んで両側が部分的に連通していることもある。図示しない内部仕切板で更に仕切られる関係は前記実施の形態−3の場合と全く同一である。
【0178】
上部圧力付与体106の内部の冷却室166を仕切るこれらの内部仕切板106aは、内部が冷却室166によって空洞となる上部圧力付与体106の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する上部圧力付与体106には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板106aがこれに抵抗して上部圧力付与体106がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たすが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0179】
前記下部圧力付与体107は下部側に配置された多数のエンドレスベルト1の内側を挿通する状態で配設されている。このような状態で配設された下部圧力付与体107は、エンドレスベルト1の内側表面1aを直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部171と、ベルト押圧部171の下方に配置された膨縮袋体171aと、ベルト押圧部171と膨縮袋体171aを収容する凹部172aと、凹部172aの下方に平行に設けられ側断面が直線状のベルトガイド部172と、上下のベルト押圧部171及びベルトガイド部172の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルト1との接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子173aが所定間隔で、エンドレスベルト1との接触軌跡が弧状例えば半円弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部173とから構成されている。
【0180】
このうち、ベルト押圧部171はベルトガイド部172と両端側のベルト反転部173に対して非連結状態になっている。ベルトガイド部172と両端側のベルト反転部173とは一体的に構成されている。ベルト押圧部171及び膨縮袋体171aが収容される凹部172aは下部圧力付与体107の上部の中間のベルト押圧部171の配置箇所に形成されている。
【0181】
下部圧力付与体107は、上下のベルト押圧部171及びベルトガイド部172、その両端側の例えば半円弧状に配置された複数のベルト反転ガイド子173aからなるベルト反転部173によって、例えば断面長円形状に形成されている。ベルト反転部173を構成する複数のベルト反転ガイド子173aは半円弧状の配置、部分楕円弧状或いは部分放物線状の配置も考えられ、この場合には上部圧力付与体102は断面略長円形状となる。下部圧力付与体107はその長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、又エンドレスベルト1の内側を挿通している。
【0182】
ベルト反転部173を構成する各ベルト反転ガイド子173aには、エンドレスベルトの内側表面1aとの接触面が丸みを帯びた円筒管や円形棒が使用されている。又各ベルト反転ガイド子173aは固定して取り付けられているが、回転自在に取り付けられることもある。ベルト反転部173がベルト反転ガイド子173aで構成される場合には、ベルト反転部173の内部に各ベルト反転ガイド子173aの隙間から空気が流出入してその通気性が図られるために空冷効果が生じる。更に、ベルト反転ガイド子173aに内部が中空な円筒管が使用される場合には円筒管内部を空冷することによって更に冷却効果は高まる。同様に、各ベルト反転ガイド子173aに内部と一部開通する溝を有する断面円弧状管を使用する場合も同様に冷却効果を高めることができる。
【0183】
横方向に複数並設された各エンドレスベルト1は略長円形断面の下部圧力付与体107の外周を独立して循環動する。下部圧力付与体107の周周り表面は略長円形状に仕上げられ、各エンドレスベルト1が下部圧力付与体107の回りをスムーズに長円形状態で循環動できるようになっている。
【0184】
ベルト押圧部171は膨縮袋体171aによって押圧されて、スリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する面圧でエンドレスベルト1を介してスリット帯板aを押圧して、スリット帯板aに巻き取り張力を付与する部分である。このため、ベルト押圧部171は、通過するスリット帯板aに平行になるようにスリット帯板aの移動方向に対して一定の長さを有する直線状に形成されている。又横方向に複数並設された各エンドレスベルト1の内側表面1aを均一に押圧できるように形成されている。
【0185】
ベルト押圧部171によって内側表面1aが押圧されて外側表面1bがスリット帯板aと直に接触するエンドレスベルト1は、外側表面1bがスリット帯板aに密着して滑ることなくスリット帯板aと一体となって同一速度で循環動する。ベルト押圧部171は、エンドレスベルト1と接触する表面が平坦面に形成されていて、また、エンドレスベルト1の内側表面1aとの間の摩擦が小さくなるように仕上げられている。
【0186】
上記膨縮袋体171aはベルト押圧部171と凹部172aの底面との間に上下方向に挟まれた状態で保持されている。膨縮袋体171aは、一定の幅と長さと厚みを有する中空状の袋体からなり、その長手方向がスリット帯板aの移動方向に対して直交方向に配設され、横方向に並設された各エンドレスベルト1の内側を挿通している。膨縮袋体171aは中空状の内部に気体又は液体の流体を密封したもので、内部の流体の漏れを生じさせない密封性の材料からなり、又膨縮性に富む材料、例えば合成樹脂などからなっている。
【0187】
膨縮袋体171aは内部の流体の圧力で膨縮し、その上側に配置されたベルト押圧部171の下部の平坦面を流体圧の性質に基づき均一に押圧する。そして、膨縮袋体171aはベルト押圧部171を介してスリット帯板aを均一に押圧することができる。また、膨縮袋体171aの内部の流体の圧力を変えることにより、ベルト押圧部171を押圧する押圧力を変え、又ベルト押圧部171を介してスリット帯板aを押圧する押圧力を変えることができる。流体として、例えば空気や油などの気体又は液体が利用される。
【0188】
下部圧力付与体107の外周には、横方向に複数並設された各エンドレスベルト1を分割ガイドする複数のベルトガイド用突起174がその周方向に一定間隔を隔てて突設されている。ベルトガイド用突起174は各エンドレスベルト1が幅方向に蛇行や変動するのを防ぐものである。ベルトガイド用突起174は両ベルト反転部173に適当間隔で複数設けられるが、必要に応じてベルトガイド部172にも設けられる。このベルトガイド用突起174には通常ピンが使用されるが、ピン以外に例えば板状のベルトガイド板が使用されることもある。ベルトガイド板175が使用される場合、ベルトガイド板はベルト反転部173に円弧状に突設され、ピンからなるベルトガイド用突起174はベルトガイド板の両端側のベルト反転部173に突設される(図13参照)。
【0189】
また、下部圧力付与体107の内部には冷却室176が各エンドレスベルト1を横断する方向に設けられている。冷却室176は下部圧力付与体107の外周を循環動しながら周回するエンドレスベルト1が摩擦熱により過熱するのを冷やすためのものである。冷却室176には水冷冷却室と空冷冷却室がある。前記実施の形態−1の場合と全く同一である。つまり、水冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが厚く、通板速度が速いと発生する摩擦熱も大となって、過熱しやすくなるときに使用される。空冷冷却室は通板するスリット帯板aの厚みが薄く通板速度も遅く過熱しにくいときに使用される。
【0190】
冷却室176は内部仕切板107aによって、両端側のベルト反転部173の内部と中間の凹部172aの下方内部の3つに仕切られる。また、凹部172aの下方内部は必要に応じて図示しない内部仕切板によって更に2つ又は複数の内部仕切板によってそれ以上に仕切られることもある。更にまた、凹部172aの下方内部を複数に仕切る図示しない内部仕切板の一部は部分的に開口されていて、一部の内部仕切板を挟んで両側が部分的に連通していることもある。図示しない内部仕切板で更に仕切られる関係は前記実施の形態−3の場合と全く同一である。
【0191】
下部圧力付与体107の内部の冷却室176を仕切るこれらの内部仕切板107aは、内部が冷却室176によって空洞となる下部圧力付与体107の形状保持の機能を果たす。即ち、エンドレスベルト1を下向きに押圧する下部圧力付与体107には上下方向に圧縮力が作用するが、内部仕切板107aがこれに抵抗して下部圧力付与体107がその長手方向に撓んだり湾曲したりするのを防ぐ機能を果たすが、前記実施の形態−1の場合と全く同一である。
【0192】
上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の両端側の中央側は、その両側方に設置された門型のスタンド108に嵌合されている。上部圧力付与体106はスタンド108に昇降自在に嵌合されている。下部圧力付与体107の両端の中央側は、支持桁183によって支持されている。
【0193】
上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の両端側に設置されたスタンド108は、上部横桁181と上部横桁181の両端下部を支持する左右の高さのある縦桁182から構成される門型形状からなる。スタンド108は上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107を支持するもので、上部圧力付与体106はスタンド108の内側つまり上部横桁181と左右の縦桁182の間で昇降する構造になっており、縦桁182の高さは上部圧力付与体106の昇降よりも高い。上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の両側に設置されたスタンド108はその下端が板状のベース184上に固定されている。
【0194】
門型のスタンド108の上部横桁181の中央上端には、液圧シリンダ109が設けられている。液圧シリンダ109は上部圧力付与体106を昇降させると共に昇降する上部圧力付与体106に、エンドレスベルト1に対する圧下力を付与する。液圧シリンダ109には例えば油圧シリンダが使用される。
【0195】
液圧シリンダ109は下向きに伸縮するように、その下端が上部横桁181の上端中央に設置されている。液圧シリンダ109の下端から下方に突出するピストンロッド191は上部横桁181を貫通して下方に延びていて、ピストンロッド191の下端は上部圧力付与体106の両端側中央上端に連結されていて、液圧シリンダ109は上部圧力付与体106の両端側を圧下する構造になっている。
【0196】
即ち、液圧シリンダ109のピストンロッド191が下方に伸長すると、両端側が連結された上部圧力付与体106も下降して、エンドレスベルト1に圧下力が作用して、上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の協動による上下から挟圧してスリット帯板aに巻き取り張力を付与する。
【0197】
また、液圧シリンダ109のピストンロッド191が収縮すると、上部圧力付与体106も上昇して、エンドレスベルト1に対する圧下力は消失し、エンドレスベルト1によるスリット帯板aに対する巻き取り張力は消失する。
【0198】
なお、液圧シリンダ109には、スリット帯板aの板厚や板幅に合わせた張力を付与できるように、該液圧シリンダ109への流体圧を図示しない圧力調整装置で調整できる構造になっている。
【0199】
次に、上記発明の実施の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の両端側に設置された各スタンド108の上部横桁181の上端中央に下向きに設置された液圧シリンダ109のピストンロッド191を上方に収縮すると、ピストンロッド191の下端にその両端側が連結された上部圧力付与体106は上昇して、上部圧力付与体106と下部圧力付与体107との間は上下に開く。
【0200】
開いた上下に相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士の間に各スリット帯板aを通し、液圧シリンダ109のピストンロッド191を下向きに伸長して上部圧力付与体106を下降させて、上部圧力付与体106と下部圧力付与体107との間を閉じてスリット帯板aの通板作業が完了した後、下部圧力付与体107のベルト押圧部171の下側の膨縮袋体171aに流体を圧入して膨縮袋体171aを膨脹させる。流体は図示しないポンプなどにより強制的に膨縮袋体171aの内部に圧入させられる。
【0201】
膨脹した膨縮袋体171aは、該膨縮袋体171aの上側のベルト押圧部171を押圧するが、流体内の全ての点は同じ圧力になるという性質により、膨縮袋体171aは該膨縮袋体171aと接するベルト押圧部171の全範囲を同じ圧力で押圧する。膨脹による膨縮袋体171aの上下方向への脹らみによって、ベルト押圧部171は上向きに押圧されてその上面が下部側のエンドレスベルト1の内側表面1aに完全に密着する。膨縮袋体171aの流体圧により上方に押圧されたベルト押圧部171はエンドレスベルト1を上向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bがスリット帯板aの裏面と完全に密着する。
【0202】
スリット帯板aの表面と接触する上部側のエンドレスベルト1は、反力によって上部圧力付与体106のベルト押圧部161によって上部側のエンドレスベルト1の内側表面1aを下向きに押圧して、エンドレスベルト1の外側表面1bとスリット帯板aの表面を密着させて、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士で上下からスリット帯板aの表裏面を同一の圧力で押圧する。このとき、膨縮袋体171aの流体内の全ての点は同じ圧力になるという性質により、上下の相対向するエンドレスベルト1の外側表面1b同士と密着したスリット帯板aの表裏面の全範囲には均等な圧力が付与される。
【0203】
そして、スリット帯板aの巻取りを開始すると、移動するスリット帯板aの表裏面と上下のエンドレスベルト1の外側表面1bとの密着摩擦により、上下の各エンドレスベルト1は略長円形の上部圧力付与体106及び下部圧力付与体107の外周を略長円形状態で循環動して周回する。このとき、上下のエンドレスベルト1は移動する各スリット帯板aと滑りを生じることなく一体となって同速度で各々独立して循環動する。
【0204】
その一方で、上記上部圧力付与体106のベルト押圧部161及び下部圧力付与体107のベルト押圧部171の表面と上下のエンドレスベルト1の内側表面1aとの間の滑りによる摩擦力により、つまり、移動するスリット帯板aとの摩擦係合で略長円形状態で循環動するエンドレスベルト1の内側表面1aを押圧するベルト押圧部161及びベルト押圧部171が所謂ブレーキ的な機能を果たして、スリット帯板巻取装置b(図20参照)と帯板巻取り張力付与装置との間に位置する各スリット帯板aに必要な巻き取り張力を発生させるのである。また、膨縮袋体106の流体圧力を制御することによって、発生張力は自由に調節可能となる。
【0205】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。前記実施の形態では、スリット後の多条の各スリット帯板を巻き取る際の巻き取り張力の付与について説明したが、この発明は、1条の幅広な金属性帯板を巻取る際の巻き取り張力を付与する場合にも使用可能である。
【0206】
【発明の効果】
以上の記載より明らかなように、請求項1、請求項2の発明に係る帯板巻取り張力付与装置によれば、次のような新規的有益なる効果を奏するものである。
ベルト押圧部の両側に、弧状のベルト反転部を備えた断面の圧力付与体を配置して、その外周にエンドレスベルトを装着した圧力付与体を帯板の上下に対面して配置することで、途方もない数量のプーリー及びその付属部品を省略してコスト低減が可能となる。
エンドレスベルトは圧力付与体の弧状のベルト反転部の外周にも接触しているので、プーリーの場合と違い弧状部分の内部に冷却水を通水循環すれば、効率よく摩擦部分の熱を除去できる。
従来のプーリーを備えたベルトブライドルに比べて構造が非常に簡単になるので、製造コストの低減は勿論だが、設置後の保守点検も容易であり、従って維持費用も軽減できる。
また、摩擦熱の除去が効率よくできるので、エンドレスベルトの寿命が延び、このため、保守費用も軽減され、又エンドレスベルトの交換作業も短く且つ回数も少なくなれば、生産性の向上となる。又、エンドレスベルトの長さも短くなりベルトの価格も低減される。
エンドレスベルトのガイド間隔がプーリーの場合より短縮されるので、エンドレスベルトの直進性が向上し、従って通板される帯板の蛇行現象もなくなり、巻取りコイルのエッジ不揃いの不具合も解消される。
プーリーが不用となり装置の幅が短縮されるので、設置スペースが少なくて済む。このため、既存のラインのテンション装置部分の改造設置が容易となる。
また、従来のベルト式又はテンションパッド式張力装置と巻取り機との中間には案内ロールを配置して、巻取りドラム上のコイルの巻き太りによる外径の変化に対応している。特にベルト式の場合は出側の帯板とプーリーとの接触を避けなければならないので、案内ロール(業界では通常デフレクターロールと称する)で帯板を水平に引き出すことが必須である。しかしながら、本願を用いれば、コイル外径の巻き太りにより、帯板の出側の角度が変化しても、帯板は半円形ドラムの強固な構造に支えられるので、デフレクターロールがなくても巻取り作業が可能となる。依って、デフレクターロールの設備費用の減額は勿論だが、設置スペースが不用なのでラインの長さが短縮できる。一般的に張力装置から巻取り機までの距離が短いほど巻取り機上のコイルエッジの不揃いのトラブルも好転するので、コイルの品質向上にも寄与することになる。
また、請求項2の場合には、ベルト反転部は側断面視において、エンドレスベルトとの接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子を所定間隔で、エンドレスベルトとの接触軌跡が弧状になるように配置されて構成されるので、ベルト反転部は通気性がよく、このためエンドレスベルトを空冷する効果を有する。
【0207】
また、請求項7の発明に係る帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルトによれば、この織布をエンドレスベルトの内側表面に用いることで、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤をあらかじめ染み込ませて摩擦係数を小さく出来るし、織布は固体の板状の材質とは異なり可撓性が大きい特徴があるので、圧力付与体に装着されたエンドレスベルトの回転抵抗が小さい。
また、真円形型付与体のエンドレスベルトの材質は、厚み方向に十分な圧縮弾性と復元性が要求され、真円形型付与体の線接触に近い圧着状態でベルトの圧縮弾性歪みを利用しているが、それに比べて本願のベルト押圧部は圧倒的に圧着面積が大きいので、真円形と同等の摩擦抵抗力(張力)を発生するにはベルト押圧部での低い面圧で十分であり、本願では真円形型付与体場合の圧縮歪み変形抵抗を必要としないので、比較的薄くて圧縮弾性度の小さな合成樹脂系の材質を用いる組合せで機能を発揮できるし、織布の各繊維間及び編み目に潤滑剤を含浸させられるので、特にベルト表裏に用いる素材自体の摩擦係数の差のある素材の組合せに限定する必要はないと言う特徴がある。本願は円形型金属性帯板張力付与装置(特許第2651891)と違い圧力付与体の圧着面積を広げられるので、本願のエンドレスベルトは厚み方向の圧縮性と復元性を有する弾性体である必要はなく、又、ベルトの内側表面の織布の編み目に潤滑剤を含浸させれば、ベルトの内側表面と外側表面の材料としては必ずしも摩擦係数の差のあるものに限定されなくてもよい。
【0208】
また、請求項8の発明に係る帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト用潤滑剤によれば、従来は直接エンドレスベルトの内側表面1aに潤滑油を滴下塗油する方法であったが、滴下時にはラインの運転を停止して給油の必要性があり生産性の低下をきたしているのに対し、この発明では、予め成形した棒状の不織布又は多孔性の発泡体に、常温では固体で融点が例えば40度C以上になると流動化する固形パラフィンを溶かした容器に棒状体を入れて含浸させておき、これを潤滑剤としてエンドレスベルトの内側表面1aに接触するように配置することで、エンドレスベルトの回転に応じて摩擦熱により棒状体の内部のパラフィンが溶出し潤滑効果を発揮することができる。ここで、不織布や発泡体を利用することで、内部の空間にパラフィンが含浸され、さらに毛細管現象の原理もあり長期間の利用が可能となるので、頻繁にラインを止めて給油することもなく、ラインの生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態−1を示す基本構成断面図である。
【図2】この発明の実施の形態−1を示す装置の全体側面図である。
【図3】この発明の実施の形態−1を示す装置の全体正面図である。
【図4】この発明の実施の形態−1を示すベルトガイド用突起がピンと板の場合の構成断面図である。
【図5】(A)はこの発明の実施の形態−1を示す水冷冷却室を備えた構成断面図である。(B)はこの発明の実施の形態−1を示す水冷冷却室と空冷冷却室を備えた構成断面図である。
【図6】この発明の実施の形態−1を示す変形構成断面図である。
【図7】この発明の実施の形態−2を示す基本構成断面図である。
【図8】この発明の実施の形態−2を示す装置の全体側面図である。
【図9】この発明の実施の形態−2を示す装置の全体正面図である。
【図10】この発明の実施の形態−3を示す基本構成断面図である。
【図11】この発明の実施の形態−3を示す装置の全体側面図である。
【図12】この発明の実施の形態−3を示す装置の全体正面図である。
【図13】この発明の実施の形態−3を示すベルトガイド用突起がピンと板の場合の構成断面図である。
【図14】この発明の実施の形態−3を示す水冷冷却室を備えた構成断面図である。
【図15】この発明の実施の形態−3を示す変形構成断面図である。
【図16】この発明の実施の形態−4を示す基本構成断面図である。
【図17】この発明の実施の形態−4を示す装置の全体側面図である。
【図18】この発明の実施の形態−4を示す装置の全体正面図である。
【図19】従来の基本構成断面図である。
【図20】従来と本願との比較を示すもので、(A)は従来、(B)は本願を示す説明図である。
【符号の説明】
1 エンドレスベルト
1a 内側表面
1b 外側表面
2 上部圧力付与体
2a 内部仕切板
2b 内部仕切板
21 ベルト押圧部
22 ベルトガイド部
22a 凹部
23 ベルト反転部
24 ベルトガイド用突起
25 ベルトガイド板
26 冷却室
26a 水冷冷却室
26b 空冷冷却室
27 ベルト緊張用ロール
28 軸
29 潤滑剤
29a 潤滑剤ホルダー
3 下部圧力付与体
3a 内部仕切板
3b 内部仕切板
31 ベルト押圧部
32 ベルトガイド部
32a 凹部
33 ベルト反転部
34 ベルトガイド用突起
35 ベルトガイド板
36 冷却室
36a 水冷冷却室
36b 空冷冷却室
37 ベルト緊張用ロール
38 軸
39 潤滑剤
39a 潤滑剤ホルダー
4 スタンド
41 上部横桁
42 縦桁
43 上部軸受け
44 昇降軸
45 ベース
5 液圧シリンダ
51 ピストンロッド
52 横連結板
6 上部圧力付与体
6a 内部仕切板
61 ベルト押圧部
62 ベルトガイド部
63 ベルト反転部
64 ベルトガイド用突起
66 冷却室
7 下部圧力付与体
7a 内部仕切板
71 ベルト押圧部
71a 膨縮袋体
72 ベルトガイド部
72a 凹部
73 ベルト反転部
74 ベルトガイド用突起
76 冷却室
8 スタンド
81 上部横桁
82 縦桁
83 支持桁
84 ベース
9 液圧シリンダ
91 ピストンロッド
102 上部圧力付与体
102a 内部仕切板
102b 内部仕切板
121 ベルト押圧部
122 ベルトガイド部
122a 凹部
123 ベルト反転部
123a ベルト反転ガイド子
124 ベルトガイド用突起
125 ベルトガイド板
126 冷却室
126a 水冷冷却室
126b 空冷冷却室
127 ベルト緊張用ロール
128 軸
129 潤滑剤
129a 潤滑剤ホルダー
103 下部圧力付与体
103a 内部仕切板
103b 内部仕切板
131 ベルト押圧部
132 ベルトガイド部
132a 凹部
133 ベルト反転部
133a ベルト反転ガイド子
134 ベルトガイド用突起
135 ベルトガイド板
136 冷却室
136a 水冷冷却室
136b 空冷冷却室
137 ベルト緊張用ロール
138 軸
139 潤滑剤
139a 潤滑剤ホルダー
104 スタンド
141 上部横桁
142 縦桁
143 上部軸受け
144 昇降軸
145 ベース
105 液圧シリンダ
151 ピストンロッド
152 横連結板
106 上部圧力付与体
106a 内部仕切板
161 ベルト押圧部
162 ベルトガイド部
163 ベルト反転部
163a ベルト反転ガイド子
164 ベルトガイド用突起
166 冷却室
107 下部圧力付与体
107a 内部仕切板
171 ベルト押圧部
171a 膨縮袋体
172 ベルトガイド部
172a 凹部
173 ベルト反転部
173a ベルト反転ガイド子
174 ベルトガイド用突起
176 冷却室
108 スタンド
181 上部横桁
182 縦桁
183 支持桁
184 ベース
109 液圧シリンダ
191 ピストンロッド
a スリット帯板
b スリット帯板巻取装置
c プーリー
Claims (8)
- エンドレスベルトを横方向に複数並設したものを上下に相対向して配設し、各エンドレスベルトを略長円形状態で循環動自在に保持し且つ各エンドレスベルトの内側表面を押圧する圧力付与体を各エンドレスベルトの内側を挿通して配置すると共に、上記各圧力付与体を、エンドレスベルトの内側表面を直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部と、ベルト押圧部の両端側に各々形成され側断面が弧状のベルト反転部とから少なくとも構成し、該ベルト反転部に並設された各エンドレスベルトを分割ガイドするベルトガイド用突起を設け、各エンドレスベルトの外側表面の摩擦係数を内側表面の摩擦係数より大なる構成とし、上下のエンドレスベルトの相対向する外側表面の間に通した帯板の両面に、エンドレスベルトの内側を挿通して配置した圧力付与体で上下からエンドレスベルトを押し付け圧着し、各エンドレスベルトを移動する各帯板との摩擦係合で駆動し、移動する各帯板と一体となって各エンドレスベルトを独立して略長円形状態で循環動させて、上記圧力付与体とエンドレスベルトの内側表面との間の滑りによる摩擦力で帯板に張力を発生させる構成にしたことを特徴とする帯板巻取り張力付与装置。
- エンドレスベルトを横方向に複数並設したものを上下に相対向して配設し、各エンドレスベルトを略長円形状態で循環動自在に保持し且つ各エンドレスベルトの内側表面を押圧する圧力付与体を各エンドレスベルトの内側を挿通して配置すると共に、上記各圧力付与体を、エンドレスベルトの内側表面を直接押圧する側断面が直線状のベルト押圧部と、ベルト押圧部の両端側に各々形成され、側断面視において、エンドレスベルトとの接触面が丸みを帯びた複数のベルト反転ガイド子を所定間隔で、エンドレスベルトとの接触軌跡が弧状になるように配置されて構成されるベルト反転部とから少なくとも構成し、該ベルト反転部に並設された各エンドレスベルトを分割ガイドするベルトガイド用突起を設け、各エンドレスベルトの外側表面の摩擦係数を内側表面の摩擦係数より大なる構成とし、上下のエンドレスベルトの相対向する外側表面の間に通した帯板の両面に、エンドレスベルトの内側を挿通して配置した圧力付与体で上下からエンドレスベルトを押し付け圧着し、各エンドレスベルトを移動する各帯板との摩擦係合で駆動し、移動する各帯板と一体となって各エンドレスベルトを独立して略長円形状態で循環動させて、上記圧力付与体とエンドレスベルトの内側表面との間の滑りによる摩擦力で帯板に張力を発生させる構成にしたことを特徴とする帯板巻取り張力付与装置。
- 圧力付与体のベルト押圧部の内部には冷却室が形成されている請求項1又は請求項2記載の帯板巻取り張力付与装置。
- 圧力付与体のベルト反転部の内部には冷却室が形成されている請求項1又は請求項2記載の帯板巻取り張力付与装置。
- ベルト押圧部の裏側には凹部が形成され、この凹部内にはエンドレスベルトの内側表面を押圧してエンドレスベルトに緊張を付与するベルト緊張用ロールが配置されている請求項1又は請求項2記載の帯板巻取り張力付与装置。
- 片方の圧力付与体のベルト押圧部の配置箇所には凹部が形成され、この凹部内には両端側のベルト反転部と非連結のベルト押圧部と該ベルト押圧部をエンドレスベルトの内側表面に押圧する膨縮袋体が収容されている請求項1又は請求項2記載の帯板巻取り張力付与装置。
- 請求項1、請求項2の帯板巻取り張力付与装置で使用されるエンドレスベルトの内側表面を、織布の各繊維間及び編み目の凹部に潤滑剤を含浸できるように、合成繊維による織布とし、エンドレスベルトの外側表面を、圧縮弾性が小さく、加圧されても圧縮歪みがほとんど生じない硬度を有する可撓性の材料で密着構成したことを特徴とする帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト。
- 請求項1、請求項2の帯板巻取り張力付与装置で使用されるエンドレスベルトの内側表面を潤滑する潤滑剤であって、常温では固形体で高温になると融点を超えて液状になるパラフィンを棒状に形成した不織布又は多孔性の発泡体に含浸させたものをエンドレスベルトの内側表面側に接触配置し、エンドレスベルトの回転による摩擦熱により内部の含浸したパラフィンが溶出してエンドレスベルトの内側表面を潤滑して摩擦係数を低下させることを特徴とする帯板巻取り張力付与装置のエンドレスベルト用潤滑剤。
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