JP3769609B2 - 高輝度金属酸化物蛍光構造体、その製造方法及び製造装置 - Google Patents

高輝度金属酸化物蛍光構造体、その製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は輝度が大幅に改善されたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体、その製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物は、セラミックコンデンサー、アクチュエーター、光波長変換素子、レーザー発振素子、冷陰極素子等の電子材料や光材料、抗菌、防汚効果等を目的とする表面改質剤、気相や液相やその両方の相における触媒やその担体等幅広い用途に使用されている。そして、これらの用途に使用する金属酸化物としては、容積当たりの表面積が大きいものが求められている。
本発明者らは、加熱された基材表面に気化された金属化合物をキャリアガスとともに大気圧開放下で吹き付けることによって、狭い面積に多数のウイスカーを有する金属酸化物構造体が得られることを見出し、先に提案した。(特開2000−58365号公報等)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プラズマディスプレイパネルや蛍光灯には、微粒子からなる蛍光体を利用し、ここから得られる発光を利用して、動画や照明を提供している。これらの微粒子はバインダーで発光素子内壁に固定されているので、バインダーで覆われている箇所の発光効率が劣るという欠点を有している。さらに、発光に寄与する賦活剤の添加量をある一定値以上にすると、逆に発光効率が落ちるといった現象(濃度消光)が見られる。これまでこのような問題点があり、蛍光体の発光効率はほぼ頭打ちになっている。
本発明は、これらの従来技術の問題点を解消して、輝度が大幅に改善されたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体、及びその製造方法ならびに製造装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記課題を解決するために、次のような構成をとるものである。
1.円近似断面径が0.01〜100μmで、円近似断面径に対する長さの比が1以上である金属酸化物のウイスカーを基材表面に略垂直方向に形成した金属酸化物構造体において、ウイスカーがウイスカーを構成する母材とは異なる元素を含む賦活剤を母材中に均一に分散した状態で含有することにより、高輝度蛍光特性を有することを特徴とする金属酸化物蛍光構造体。
2.賦活剤中の母材とは異なる元素の含有量が、母材を構成する元素に対して濃度消光限界以上で20原子%以下であることを特徴とする1に記載の金属酸化物蛍光構造体。
3.ウイスカーを構成する母材元素および賦活剤に含まれる異種元素が、周期律表において水素を除く1族、2族、ホウ素を除く13族、炭素を除く14族、窒素とリンと砒素を除く15族及び3,4,5,6,7,8,9,10,11,12族から選ばれる少なくとも一種の金属を含むものであることを特徴とする1又は2に記載の金属酸化物蛍光構造体。
4.金属がY,Eu,Tb,Tm,Ba,Ca,Mg,Al,Mn,Zn,Si , Sr,Ga,Yb,Cr,Ce,Pb及びWから選ばれたものであることを特徴とする3に記載の金属酸化物蛍光構造体。
5.有機物質、無機物質、金属から選ばれる材料でウイスカーの間を充填したことを特徴とする1〜4のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体。
6.気化させた金属酸化物ウイスカー母材構成元素を含むガスと気化させた母材とは異なる元素を含むガスを、キャリアガスとともに均一に混合した後に、大気圧開放下に加熱された基材表面に吹き付けて基材表面に円近似断面径が0.01〜100μmで、円近似断面径に対する長さの比が1以上である金属酸化物のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を堆積することを特徴とする1〜5のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体の製造方法。
7.さらに、得られた金属酸化物蛍光構造体のウイスカーの間を有機物質、無機物質、金属から選ばれる材料で充填することを特徴とする6に記載の金属酸化物蛍光構造体の製造方法。
8.金属酸化物ウイスカーを構成する母材の気化器、該母材とは異なる元素の気化器、気化させた母材及び母材とは異なる元素をキャリアガスとともに均一に混合する原料混合器、混合原料ガスを噴出するノズル及び基材加熱台を有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体の製造装置。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明におけるウイスカーとは、円近似断面径が0.01〜100μm(平均値:以下同様)で、円近似断面径に対する長さの比(アスペクト比)が1以上である略棒状の構造を有するものを意味する。また、ウイスカーの長さとは、ウイスカーが面上から実質的に突起する位置(基部)から先端部までの長さを意味し、円近似断面径はウイスカーの長さの1/2の位置において測定する。この円近似断面径は、例えば画像解析等による従来公知の方法で断面積を求め、得られた面積を円周率πで除したものの平方根の2倍の値で表される。
【0006】
ウイスカーの円近似断面径が、0.01未満の場合には、成長したウイスカーを得ることが困難であり、100μmを超えた場合には、表面積増加による所望の特性を得ることが難しくなる。この円近似断面径は、0.05〜50μm、特に0.1〜10μmとすることが好ましい。
ウイスカーの長さは、使用する用途により任意に選択されるが、通常は0.1〜1000μm(平均値)、好ましくは1〜500μmである。また、アスペクト比は1以上、好ましくは5以上であり、アスペクト比が小さすぎるとウイスカーによる表面積増加の効果が現れない。
【0007】
ウイスカーは、10μm×10μmの面積当たり0.1〜10000個、特に1〜1000個の割合で密集状に存在することが好ましい。この割合が小さい場合には、ウイスカーによる表面積増加の効果が乏しく、大きすぎる場合には成長したウイスカーを得ることが困難となる。
ウイスカーの形状としては、根元部分から先端部分まで径が変わらないもの、根元部分からある距離まで径が変わらないもの、ウイスカーの根元部分の径が小さく先端部に行くにつれ一度径が大きくなった後再度径が少しずつ減少していくもの、ウイスカーの根元部分から先端部分に行くにつれ径が少しずつ減少していくもの、先端近くのある距離から角錐又は角錐台や円錐又は円錐台や半球のような形状を取っているもの等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは角柱状、あるいは、ウイスカーの根元部分の径が小さく一旦径が大きくなった後角柱状の形状を取るもの等である。角柱状の場合、具体的な形状は結晶構造により異なるが、例えば、金属酸化物が酸化亜鉛の場合は六角柱、酸化イットリウムの場合は四角柱あるいは六角柱、酸化チタンの場合は四角柱となることが多い。また、それ以外の多角形の断面形状を持つ角柱であっても差し支えない。一本の角柱の中で、向かい合った面同士が相互に平行でなくてもよい。
【0008】
本発明のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体は、ウイスカーがウイスカーを構成する母材とは異なる元素を含む賦活剤を含有することによって得られる高輝度特性を有することを特徴とする。
本発明のウイスカー中では、賦活剤が原子レベルで母材を構成する元素を置換して、均一に分散した状態で存在することによって、高輝度特性を発揮するものと思われる。賦活剤をウイスカーを構成する母材中に均一に分散させずに、偏在させて析出させると所望の蛍光特性を得ることができない。
このような構造を有するウイスカーは、例えば図1に示す装置を使用して、気化させた金属酸化物ウイスカー母材構成元素を含むガスと気化させた母材とは異なる元素を含むガスを、キャリアガスとともに均一に混合した後に、大気圧開放下に加熱された基材表面に吹き付けて基材表面に金属酸化物構造体を堆積することによって得ることができる。
【0009】
図1は、本発明の金属酸化物蛍光構造体を製造する装置の一例を示す模式図である。
この製造装置1は、キャリアガスとなる窒素ガス供給源2,2、金属酸化物ウイスカーを構成する母材の気化器3、該母材とは異なる元素の気化器4、気化させた母材及び異種元素をキャリアガスとともに均一に混合する原料混合器5、混合原料ガスを噴出するノズル9及び基材10の加熱台11を具備する。
金属酸化物ウイスカーを構成する母材及び該母材とは異なる元素は、それぞれ気化器3及び4で加熱気化され、窒素ガスとともに原料混合器5内の原料混合溜6に送られ、ヒーター7の外周に設けられたコイル状加熱混合器8によりキャリアガスとともに均一に混合される。均一に混合された原料ガスは、ノズル9から大気圧開放下にヒーター12を有する加熱台11上で加熱された基材10の表面に吹き付けられて、基材表面に金属酸化物ウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を形成する。
【0010】
本発明でウイスカー母材及び該母材とは異なる元素からなる高輝度蛍光構造を構成する金属酸化物としては、金属種が、周期律表において水素を除く1族、2族、ホウ素を除く13族、炭素を除く14族、窒素とリンと砒素を除く15族及び3、4、5、6、7、8、9、10、11、12族に属する各元素の酸化物が挙げられる。金属種としては、例えば、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,Sb,Bi,Po,Sc,Y,La,Th,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Hg等が挙げられ、これらのなかでも、好ましくはLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Ga,In,Ti,Si,Ge,Sn,Pb,Sb,Bi,Sc,Y,La,Ce,Th,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Hg,Eu,Tb,Tm、Ybであり、さらに好ましくは、Li,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,In,Si,Sn,Pb,Th,Y,Ce,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Zn,Ga,W,Eu,Tb,Tm,Ybが挙げられる。
最も好ましいの金属種としては、Y,Eu,Tb,Tm,Ba,Ca,Mg,Al,Mn,Zn,Si,Sr,Ga,Yb,Cr,Ce,Pb及びWが例示される。これらの金属種は、単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0011】
好ましい金属酸化物としては、例えば、Eu:Y,Tb:Y,Tm:Y,Eu:BaMgAl1017,Mn:ZnSiO,Zn:ZnO,Tb:MgAl1119,Ce:MgAl1119,CaWO,Pb:CaWO,MgWO,Mn:MgGa,Eu:SrAl1425,Cr:YAl12,Yb:YSiO 等が挙げられる。
【0012】
本発明の金属酸化物蛍光構造体において、ウイスカー母材及び該母材とは異種元素から成る高輝度構造を構成する原料となる金属化合物は、目的とする構造体の金属酸化物中の金属を有し、酸素、水等の大気中に含まれる化合物と反応して酸化物を形成するものが好ましい。しかしながら、金属化合物を吹き付ける雰囲気に、例えばオゾン等の通常大気中に存在しない物質を供給・存在させ、これらと反応して酸化物を形成するものであっても良い。
【0013】
この様な金属化合物として、例えば、金属又は金属類似元素の原子にアルコールの水酸基の水素が金属で置換されたアルコキシド類、金属または金属類似元素の原子にアセチルアセトン、エチレンジアミン、ビピペリジン、ビピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロニン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素などから選ばれる配位子を1種あるいは2種以上有する各種の錯体、配位子としてカルボニル基を有するFe,Cr,Mn,Co,Ni,Mo,V,W,Ruなどの各種金属カルボニル、更に、カルボニル基、アルキル基、アルケニル基、フェニルあるいはアルキルフェニル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクロペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエル基などから選ばれる配位子を1種あるいは2種以上有する各種の金属化合物、ハロゲン化金属化合物を使用することができる。また、その他の金属錯体も使用することができる。この中でも、金属アセチルアセトナート化合物、金属アルコキシド化合物等がより好ましく用いられる。
【0014】
本発明における錯体としては、金属にβ−ジケトン類、ケトエステル類、ヒドロキシカルボン酸類またはその塩類、各種のシッフ塩基類、ケトアルコール類、多価アミン類、アルカノールアミン類、エノール性活性水素化合物類、ジカルボン酸類、グリコール類、フェロセン類などの配位子が1種あるいは2種以上結合した化合物が挙げられる。
【0015】
本発明において、ウイスカーの母材を構成する元素とウイスカーに蛍光特性を付与する賦活剤となる異種元素との割合は任意であるが、通常は母材を構成する元素に対して少量(0.1〜20原子%程度)の異種元素を存在させる。
本発明のウイスカー蛍光構造体においては、異種元素が母材を構成する金属酸化物に対する一般的な濃度消光限界(通常3原子%以下)以上の量で存在するときでも、濃度消光を起こすことなく高輝度を保つ。
【0016】
本発明のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を製造する際の基材としては、例えば、ソーダライムガラス等の無機ガラス、ステンレス鋼等の金属、シリコン等の半導体結晶、及び酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化物が挙げられる。この場合の結晶は、一種以上の単結晶であっても、多結晶であっても、非晶部と結晶部を同時に有する一種以上の半結晶性物質であっても、また、これらの混合物であってもよい。
【0017】
本発明では、ウイスカー母材を構成する原料化合物と、該母材とは異種元素の賦活剤となる原料化合物をそれぞれ加熱気化させたガスをキャリアガスとともに均一に混合した後に、大気圧開放下に加熱された基材表面に吹き付けて目的とするウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を製造する。
キャリアガスとしては、使用する金属化合物と反応するものでなければ、特に限定はされない。具体例として、窒素ガスやヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス、炭酸ガス、有機弗素ガス、あるいはヘプタン、ヘキサン等の有機物質等が挙げられる。これらのうちで安全性、経済性の上から不活性ガスが好ましい。窒素ガスが経済性の面より最も好ましい。
【0018】
また、金属酸化物蛍光構造体が形成される基材の温度は、基材近傍及び表面で金属酸化物が形成される温度であれば特に限定されないが、基材表面に吹き付ける原料ガスの温度よりも高い温度に設定することが好ましく、通常は100〜700℃に設定される。
本発明で、ウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を形成するのに必要な反応時間は、原料の種類や反応条件、目的とする構造体の用途等に応じて適宜選択される。
【0019】
本発明では、通常ウイスカーが密集状に形成された金属酸化物蛍光構造体が得られるが、各々のウイスカーの間には空隙が存在する。したがって、その構造体は、使用する形態等によっては使用時に変形が起こる可能性がある。すなわち物理的応力により、多くのウイスカーがなぎ倒されたような状況になる可能性がある。これを防ぐために、蛍光を妨げない物質、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、シアノアクリレートのような瞬間接着剤等の有機物質、ガラス、セラミック等の無機物質でウイスカーの間を充填固定することもできる。
【0020】
ウイスカーの間を充填固定する為に用いられる熱可塑性樹脂としては、低、中、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下「SAN樹脂」と略記する)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下「ABS樹脂」と略記する)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエステルイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイト、スチレン−ブダジエン共重合体及びその水素添加組成物等、及びこれら2種類以上の組み合わせのポリマーブレンド及び共重合体、例えば、ポリカーボネートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン等が挙げられる。
【0021】
また、ウイスカーの間を充填固定する為に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、DFK樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリ(P−ヒドロキシ安息香酸)、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などが挙げられる。ウイスカーを固定する為に用いられるエラストマーとしては、天然ゴムやブタジエンゴム、シリコーンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、塩酸ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、多硫化ゴム等の合成ゴム、等が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、石油樹脂、アルキド樹脂等も用いることができる。
【0022】
本発明で得られるウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体は、蛍光表示管、EL素子、レーザー発振素子、陰極線ディスプレイ、プラズマディスプレイ、蛍光灯、平面蛍光灯、信号機等に使用することができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、以下の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、Eu:Yウイスカー密集構造体を作製した。
金属酸化物ウイスカーを構成する母材の気化器3内にY(C1119(C1119=DPM)を、また異種元素の気化器4内にEu(DPM)を仕込んだ。母材の気化器3を220℃に、また異種元素の気化器4を200℃に加熱し、それぞれ流量1.21/min及び流量0.5〜1.15l/minの窒素ガスにより原料混合器5に輸送した。原料混合器5内のコイル状加熱混合器8により220℃に加熱された原料ガスは、ノズル9から加熱台11上で650℃に加熱された厚さ0.5mmのシリコン単結晶(001)面に、大気圧開放下に吹き付けた。スリット9と基板10の距離は1.5cmであった。原料ガスは大気中で熱分解し、Eu:Yウイスカーとしてシリコン単結晶基板上に堆積した。この例におけるウイスカーの長さは10μm、ウイスカーの円近似断面径は1.5μmで、ウイスカー中のEuの含有量は0.6〜13原子%であった。図2に、Eu含有量5原子%のYウイスカーを、基材表面に水平方向から観察した走査型電子顕微鏡像を示す。
【0024】
(比較例1)
加熱台11上における基材の加熱温度を550℃に加熱したほかは、実施例1と同様にしてシリコン単結晶基板上に、実施例1と同様の寸法を有するEu:Y蛍光性金属酸化物構造体を堆積した。この例で得られる金属酸化物構造体は連続膜であり、ウイスカー構造を有しない。図3にEu含有量5原子%のY連続膜を、基材表面に水平方向から観察した走査型電子顕微鏡像を示す。
【0025】
(紫外線励起蛍光試験)
実施例1で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体及び比較例1で得られた蛍光体連続膜に対して、波長254nmの紫外線を照射して蛍光試験を行った。両方の金属酸化物蛍光構造体から、波長612nmを中心とする赤色蛍光が得られた。
図4に、Eu含有量に対する波長612nmにおける蛍光強度を示す。実施例1のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度と、比較例1の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれEu添加量3原子%までほぼ同じであったが、それ以降でウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度はEu添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの3倍に達した。
【0026】
(樹脂埋めこみ試験)
実施例1で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体のウイスカー間の空隙にエポキシ樹脂を注入し、金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有する厚さ10μmのエポキシ樹脂膜を作製した。この金属酸化物蛍光構造体に波長254nmの紫外線を照射して蛍光試験を行ったところ、この金属酸化物蛍光構造体から、波長612nmを中心とする赤色蛍光が得られた。
金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有するエポキシ樹脂膜の発光強度と、比較例1の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれEu添加量3原子%までほぼ同じであったが、それ以降で金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有するエポキシ樹脂膜の発光強度はEu添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの1.5倍に達した。
【0027】
(実施例2)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、以下の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、Tb:Yウイスカー密集構造体を作製した。
金属酸化物ウイスカーを構成する母材の気化器3内にY(C1119(C1119=DPM)を、また異種元素の気化器4内にTb(DPM)を仕込んだ。母材の気化器3を220℃に、また異種元素の気化器4を200℃に加熱し、それぞれ流量1.21/min及び流量0.5〜1.15l/minの窒素ガスにより原料混合器5に輸送した。原料混合器5内のコイル状加熱混合器8により220℃に加熱された原料ガスは、ノズル9から加熱台11上で650℃に加熱された厚さ0.5mmのシリコン単結晶(001)面に、大気圧開放下に吹き付けた。スリット9と基板10の距離は1.5cmであった。原料ガスは大気中で熱分解し、Tb:Yウイスカーとしてシリコン単結晶基板上に堆積した。この例におけるウイスカーの長さは10μm、ウイスカーの円近似断面径は1.5μmで、ウイスカー中のTbの含有量は0.6〜13原子%であった。
【0028】
(比較例2)
加熱台11上における基材の加熱温度を550℃に加熱したほかは、実施例2と同様にしてシリコン単結晶基板上に、実施例2と同様の寸法を有するTb:Y蛍光性金属酸化物構造体を堆積した。この金属酸化物構造体は連続膜であり、ウイスカー構造を有しない。
【0029】
(紫外線励起蛍光試験)
実施例2で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体及び比較例2で得られた蛍光体連続膜に対して、波長254nmの紫外線を照射して蛍光試験を行った。両方の金属酸化物蛍光構造体から、波長484nmと542nmを中心とする緑色蛍光が得られた。
図5に、Tb含有量に対する波長612nmにおける蛍光強度を示す。実施例2のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度と、比較例2の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれTb添加量1原子%までほぼ同じであったが、それ以降でウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度はTb添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの3倍に達した。
【0030】
(樹脂埋めこみ試験)
実施例2で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体のウイスカー間の空隙にエポキシ樹脂を注入し、金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有する厚さ10μmのエポキシ樹脂膜を作製した。この金属酸化物蛍光構造体に波長254nmの紫外線を照射して蛍光試験を行ったところ、この金属酸化物蛍光構造体から、波長484nmと542nmを中心とする緑色蛍光が得られた。
金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有するエポキシ樹脂膜の発光強度と、比較例2の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれTb添加量1原子%までほぼ同じであったが、それ以降で金属酸化物蛍光構造体ウイスカーを含有するエポキシ樹脂膜の発光強度はTb添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの1.5倍に達した。
【0031】
(実施例3)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、実施例1と同様の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、実施例1と同じ寸法で同じ賦活剤濃度のEu:Yウイスカー密集構造体を作製した。
【0032】
(比較例3)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、比較例1と同様の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、実施例1と同じ寸法で同じ賦活剤濃度のEu:Y蛍光性金属酸化物構造体を作製した。この金属酸化物構造体は連続膜であり、ウイスカー構造を有しない。
【0033】
(電子線励起蛍光試験)
実施例3で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体及び比較例3で得られた蛍光体連続膜に対して、加速電圧1kVの電子線を照射して蛍光試験を行った。両方の金属酸化物蛍光構造体から、波長612nmを中心とする赤色蛍光が得られた。
実施例3のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度と、比較例3の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれEu添加量3原子%までほぼ同じであったが、それ以降でウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度はEu添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの3倍に達した。
【0034】
(実施例4)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、実施例2と同様の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、実施例2と同じ寸法で同じ賦活剤濃度のTb:Yウイスカー密集構造体を作製した。
【0035】
(比較例4)
図1の大気開放型CVD装置を使用し、比較例2と同様の手順によりシリコン単結晶基板(001)面上に、実施例2と同じ寸法で同じ賦活剤濃度のTb:Y蛍光性金属酸化物構造体を作製した。この金属酸化物構造体は連続膜であり、ウイスカー構造を有しない。
【0036】
(電子線励起蛍光試験)
実施例4で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体及び比較例4で得られた蛍光体連続膜に対して、加速電圧1kVの電子線を照射して蛍光試験を行った。両方の金属酸化物蛍光構造体から、波長484nmと542nmを中心とする緑色蛍光が得られた。
実施例4のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度と、比較例4の連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度は、それぞれTb添加量1原子%までほぼ同じであったが、それ以降でウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の発光強度はTb添加量にしたがって増加し、10原子%では連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体のそれの3倍に達した。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、濃度消光現象を生じずに、輝度が大幅に改善されたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を、簡単に製造することが可能となる。高輝度蛍光特性を有するウイスカー金属酸化物蛍光構造体は新規であり、蛍光表示管、EL素子、レーザー発振素子、陰極線ディスプレイ、プラズマディスプレイ、蛍光灯、信号機等の広汎な用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属酸化物蛍光構造体を製造する装置の1例を示す模式図である。
【図2】実施例1で得られたウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られた連続膜を有する金属酸化物蛍光構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1及び比較例1で得られた金属酸化物蛍光構造体における、Eu含有量と発光強度の関係を示す図である。
【図5】実施例2及び比較例2で得られた金属酸化物蛍光構造体における、Tb含有量と発光強度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 金属酸化物蛍光構造体の製造装置
2 窒素ガス供給源
3 母材の気化器
4 異種元素の気化器
5 原料混合器
6 原料混合溜
7,12 ヒーター
8 コイル状加熱混合器
9 ノズル
10 基材
11 加熱台

Claims (8)

  1. 円近似断面径が0.01〜100μmで、円近似断面径に対する長さの比が1以上である金属酸化物のウイスカーを基材表面に略垂直方向に形成した金属酸化物構造体において、ウイスカーがウイスカーを構成する母材とは異なる元素を含む賦活剤を母材中に均一に分散した状態で含有することにより、高輝度蛍光特性を有することを特徴とする金属酸化物蛍光構造体。
  2. 賦活剤中の母材とは異なる元素の含有量が、母材を構成する元素に対して濃度消光限界以上で20原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物蛍光構造体。
  3. ウイスカーを構成する母材元素および賦活剤に含まれる異種元素が、周期律表において水素を除く1族、2族、ホウ素を除く13族、炭素を除く14族、窒素とリンと砒素を除く15族及び3,4,5,6,7,8,9,10,11,12族から選ばれる少なくとも一種の金属を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物蛍光構造体。
  4. 金属がY,Eu,Tb,Tm,Ba,Ca,Mg,Al,Mn,Zn,Si , Sr,Ga,Yb,Cr,Ce,Pb及びWから選ばれたものであることを特徴とする請求項3に記載の金属酸化物蛍光構造体。
  5. 有機物質、無機物質、金属から選ばれる材料でウイスカーの間を充填したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体。
  6. 気化させた金属酸化物ウイスカー母材構成元素を含むガスと気化させた母材とは異なる元素を含むガスを、キャリアガスとともに均一に混合した後に、大気圧開放下に加熱された基材表面に吹き付けて基材表面に円近似断面径が0.01〜100μmで、円近似断面径に対する長さの比が1以上である金属酸化物のウイスカーを有する金属酸化物蛍光構造体を堆積することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体の製造方法。
  7. さらに、得られた金属酸化物蛍光構造体のウイスカーの間を有機物質、無機物質、金属から選ばれる材料で充填することを特徴とする請求項6に記載の金属酸化物蛍光構造体の製造方法。
  8. 金属酸化物ウイスカーを構成する母材の気化器、該母材とは異なる元素の気化器、気化させた母材及び母材とは異なる元素をキャリアガスとともに均一に混合する原料混合器、混合原料ガスを噴出するノズル及び基材加熱台を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物蛍光構造体の製造装置。
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