JP3767505B2 - 金属化フィルムコンデンサとその製造方法および製造装置 - Google Patents
金属化フィルムコンデンサとその製造方法および製造装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電気機器、電子機器、産業機器に使用される金属化フィルムコンデンサおよびその金属化フィルムの製造装置と製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属を蒸着したプラスチックフィルムからなるコンデンサ(以下、金属化フィルムコンデンサと称す)は、従来から広く用いられており、その一例について図10および図11を用いて説明する。
【0003】
図10は、従来の片面金属化フィルムコンデンサの断面図を示し、160はフィルム、161は蒸着電極、161aは容量形成部、161bはコンタクト部、162は片面に金属蒸着されるフィルム、163は金属蒸着しない絶縁マージンを示す。なお、蒸着電極161は容量形成部161a、コンタクト部161bの両方を総称したものである。
【0004】
また、図11は従来の両面金属化フィルムコンデンサの断面図を示す。図11において、172、173はフィルムを示し、図10で示した同一の構成のものには同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0005】
図10において、フィルム162の片面に蒸着電極161を設けた片面金属化フィルムを2枚重ねて巻回または積層し、両端面から金属を溶射(図示せず、以下メタリコンと称す)してコンデンサが形成される。
【0006】
蒸着電極161は、アルミニウムや亜鉛、またはその混合物が用いられている。また、容量形成部161aは薄く蒸着して自己回復性を高め、コンタクト部161bを厚く蒸着して、メタリコンとのコンタクト強度を高めるヘビーエッジ構造が広く採用されている。また、フィルム162は、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルムなどが用いられている。
【0007】
図10の従来の金属化フィルムコンデンサの構成においては、片面金属化フィルム162を2枚用いているため、それぞれのフィルムに対して蒸着工程が必要となり、工数がかかっていた。それで、図11に示すように、1回の蒸着工程でフィルム172の両面に蒸着電極161を設け両面金属化フィルムとし、蒸着していないフィルム173をそのまま使用する合わせ用フィルム175と重ねる構造にしたものを、巻回または積層し、両端面にメタリコンを設けてコンデンサを形成することで、蒸着工程を半減できるようにしている。この、フィルムの両面に金属を蒸着して両面金属化フィルムを製造する試みは従来から行われてきたが、その製造工程で、表裏の金属が接して巻き取られることから、金属同士が接着して次工程のスリッタや巻取りの際に円滑に巻き出せなくなったり、蒸着金属が剥離(以下ブロッキングと称す)したりする問題点があった。
【0008】
この点に鑑みて、特開平4―99166号公報では、真空蒸着機で両面金属化フィルムを製造する工程において、金属を蒸着した後に蒸着金属面に酸化性ガスを吹き付け、その後に巻き取ることによって、ブロッキングを防止する製造方法が提唱されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平4―99166号公報に示された製造方法では、蒸着直後のブロッキングは低減されるものの、蒸着された原反を長期間保管したり輸送したりする際に湿気の影響を受けた場合には、前記ブロッキングも2次的に進行してしまう問題点があった。
【0010】
湿気によるブロッキングの進行は、蒸着金属の種類にかかわらず発生するが、中でも亜鉛は湿気により容易に酸化物や水酸化物に変化しやすいことから、亜鉛を含む蒸着金属において著しく進行する。さらに、フィルムとしてポリプロピレンフィルムを用いた場合には、他のフィルムに比べて蒸着金属との接着性が弱いことから、湿気により表裏の蒸着金属同士が接着した場合に容易にフィルムから剥離してしまう問題点があった。
【0011】
このようにブロッキングが進行した両面金属化フィルムを用いてコンデンサを作製した場合には、スリッタや巻取りの際に生じたしわにより耐圧が低下したり、蒸着膜の剥離や蒸着金属の酸化や水酸化反応により電極抵抗値が増大してtanδが悪化したりする問題点があった。
【0012】
このため、両面金属化フィルムを原反の状態で保管や輸送する場合には、従来の片面金属化フィルムの場合よりも保管場所を低湿度に保ったり、乾燥剤とともに密閉梱包したりしなければならないという課題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に関して、鋭意検討を進めた結果、フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって蒸着金属膜が形成されたフィルムの少なくとも片面にオイル被膜を形成するオイル被膜形成部と、前記金属蒸着部によって蒸着金属膜が形成されたフィルムの少なくとも片面の蒸着金属膜上を、酸素を含む雰囲気に曝露させる酸素曝露部とを有する両面金属化フィルムの製造装置を用いた場合に、湿気によるブロッキング進行の無い良好な両面金属化フィルムを製造できることを見出した。
【0014】
さらに、本発明に用いるオイルとしては、シリコンオイル、フッ素オイルやパラフィン油、エステル油、植物油等を用いることができるが、なかでも、化学的に安定であり、また基材となるフィルムへの浸透や膨潤が少ないことからシリコンオイルやフッ素オイルを用いることがより望ましい。オイル被膜の浸透によりフィルムが膨潤した場合には、蒸着膜とフィルムとの密着性が損なわれて、蒸着膜が剥離したり抵抗値が上昇したりするからである。
【0015】
また、本発明に用いる蒸着金属としては、アルミニウム、亜鉛やその混合物等を用いることができるが、特に亜鉛を含む蒸着金属を用いた場合に顕著な効果を得ることができる。
【0016】
また、本発明に用いるフィルムとしては、前述のポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルムなどがあるが、中でも、ポリプロピレンフィルムを用いた場合に顕著な効果を得ることができる。
【0017】
さらに、本発明に用いるオイル被膜形成部としては、オイル蒸気を吹付けるものや、ロールコータにより塗布するものなどを用いることができる。オイル被膜形成部においては、少なくとも片側の蒸着膜の全面にオイル被膜を形成して良いが、より望ましくは、オイル蒸気の噴出し口形状やロールコータの形状により、フィルムの幅方向に対して所定の部分にのみオイル被膜を形成するほうがよい。これは、金属化フィルムコンデンサを作製する際に、メタリコンとコンタクトする部分にオイル被膜があると、メタリコンの熱により大部分が蒸発飛散するが、オイルが残存した場合には、コンタクトが劣る場合があるためである。なお、メタリコンとコンタクトする部分の裏側は絶縁マージンが配置されるため、ブロッキングは発生しない。
【0018】
また、オイル被膜形成部としては、オイル蒸気を吹付けるものが最も望ましい。他の方法、例えばロールコータでも本発明によりブロッキングを防止はできるが、蒸着面にロールが接触するため、蒸着膜に傷ができてしまう場合があり、非接触でオイル蒸気を吹付けることが望ましい。さらに、オイルタンク内に圧力センサを設け、オイル蒸気圧をモニタリングして蒸着膜にオイル蒸気を噴霧することにより、長尺のフィルムに一定の割合でオイル被膜を形成することができる。
【0019】
なお、前記酸素曝露部を用いずにオイル被膜形成部のみを用いた場合には、蒸着直後からブロッキングが発生した。これは、オイル被膜は、湿気による2次的なブロッキングの進行を抑制する効果はあるが、蒸着装置内で巻き取った際に発生する初期のブロッキングに対しては効果が無いためである。初期のブロッキングを抑制するためには、少なくとも片側の蒸着面を酸素雰囲気に曝露する必要がある。
【0020】
すなわち、少なくとも片側の蒸着膜表面に酸化膜を形成し、かつ少なくとも片側の蒸着膜表面にオイル被膜を具備することにより、ブロッキングの無い良好な両面金属化フィルムを実現することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態における両面金属化フィルムの製造装置の断面図であり、1は真空チャンバー、2はフィルム巻出し部、3はフィルム、4a、4bは冷却キャン、5a、5bはアルミニウム蒸発源、6a、6bは亜鉛蒸発源、7はオイル被膜形成部、8は酸素吹付け部、9はフィルム巻取り部、10は中間ロール、11、12は排気を示す。
【0023】
真空チャンバー1内に未蒸着のフィルムが巻かれたフィルム巻出し部2が配置されている。そして同じく真空チャンバー1内に、フィルムに金属を蒸着させる冷却キャン4a、4b、アルミニウム蒸発源5a、5b、亜鉛蒸発源6a、6bとが配置されている。さらに、フィルムにオイル被膜を形成するオイル被膜形成部7と、酸素を吹付ける酸素吹付け部8、およびフィルムを巻き取るフィルム巻取り部9が配置されている。そしてこれらの部分を経由するフィルムを滑らかに送給する中間ロール10が案内用として真空チャンバー1内に、数箇所配置されている。
【0024】
このような構成を備える金属化蒸着フィルムの製造装置において、まずフィルム巻出し部2から巻き出された未蒸着のフィルム3が、冷却キャン4aおよび4bを通過する際に、アルミニウム蒸発源5a、5bおよび亜鉛蒸発源6a、6bよりフィルム3の両面に蒸着を行う。次にオイル被膜形成部7でオイル被膜を形成し、酸素吹付け部8で酸素を吹付けた後に、フィルム巻取り部9で巻き取って、両面金属化フィルムの原反を作製する。なお、本実施の形態ではフィルムに酸化膜を形成する酸化膜形成部の実施例として酸素を吹付けて形成する酸素吹付け部を配置した。
【0025】
なおこの際、図示しない真空ポンプにより、排気11、12に示すように真空チャンバー1内から排気する。またアルミニウム蒸発源5a、5bおよび亜鉛蒸発源6a、6bは、目的により、アルミニウムだけを蒸着したり亜鉛だけを蒸着したり、またアルミニウムと亜鉛の混合物を蒸着したりすることができる。
【0026】
さらに、フィルムにオイル被膜を蒸着する工程について、図2および図3を用いて詳細に説明する。図2は、図1のオイル被膜形成部7近傍を拡大した断面図であり、3aはフィルムが走行する方向、20はオイルタンク、21は蒸着膜、22はオイル、23は加熱ヒータ、24はオイル蒸気、26は温度センサ、27は圧力センサ、28はノズル、29はオイル被膜を示し、図1で説明した同一の構成物については同一の符号を付してその説明を省略する。さらに図3は、図2中のノズル28の形状を矢印Aで示した方向から見た図であり、28は図2で示したのと同じノズル、30はノズル28に設けられたスリットを示す。
【0027】
そして図2に示すように、オイル被膜形成部7は、円筒状のオイルタンク20の内部にオイル22、加熱ヒータ23、温度センサ26および圧力センサ27が収納されている。
【0028】
このような構成を備えるオイル被膜形成部7の作用において、加熱ヒータ23により加熱されたオイル22はオイル蒸気24となりノズル28から噴出し、矢印3aの方向へ走行するフィルム3に設けられた蒸着膜21のノズル側にオイル被膜29を形成する。なお、温度センサ26と圧力センサ27は、オイルタンク20内部の温度と圧力をモニタリングするものである。特に圧力センサ27により、長尺のフィルムを金属化する場合であっても、蒸着中のオイル噴出量を一定に保ち、均一なオイル被膜を形成することができる。
【0029】
さらに図3に示すように、ノズル28にはスリット30をフィルムの幅方向に断続的に設けている。そしてこのスリット30よりオイル蒸気24が噴出し、フィルム上にオイル被膜が形成される。このように、スリット30を断続的に設けることで、金属化フィルムの容量形成部(後述する図6の61a)にのみオイル被膜を形成することができる。なお、金属化フィルム製造工程は、複数分のコンデンサに相当するフィルムを一度に作製し、後工程でカットするので、スリットも断続的なものとなる。すなわち1つのスリット30は後工程でできる1つの金属化フィルムにおける容量形成部に相当する。
【0030】
さらに、図4を用いて、フィルムの蒸着膜に酸素を吹付ける工程について詳細に説明する。図4は図1における酸素吹付け部8を拡大した図である。図4において、31は酸素を含むガス、32は円筒状パイプ、33は円筒状パイプ32に設けた穴を示し、図1および図2で説明した同一構成のものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
円筒状パイプ32の内部には、酸素を含むガス31を真空チャンバー(図示せず)の外部より導入している。さらに円筒状パイプ32には、フィルムの全幅方向に渡って等間隔で穴33を設けている。
【0032】
このような構成により、円筒状パイプ32設けた穴33からフィルム3上の蒸着膜21に酸素を含むガス31を吹付けることにより、蒸着膜に酸素を吹付けることができる。
【0033】
次に、以上で説明した本発明の実施の形態の製造装置で作製した両面金属化フィルムのブロッキング評価結果について図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態の製造装置で両面金属化フィルムを作製する際の条件とその結果を示したものである。
【0034】
本発明の実施の形態の図1で示す製造装置により、6μm厚みで520mm幅のポリプロピレンフィルムを、図5における本実施の形態その1からその6、従来例1から3および比較例で示すように、蒸着金属、オイル被膜、曝露雰囲気の条件を変えて作製し、その違いを確認した。作製した蒸着フィルムの長さは、いずれも3000mで、蒸着膜の膜抵抗値は、アルミニウム+亜鉛、もしくは亜鉛単独の場合は12Ω、アルミニウム単独の場合は8Ωとなるよう蒸着した。
【0035】
そして、このようにして各条件で作製した両面金属化フィルムを、原反の状態のまま、温度40℃相対湿度60%の雰囲気で20日間放置した後、スリッタ機で裁断してシワの有無を判別するとともに蒸着膜の抵抗値も測定し、図5にその結果を示した。
【0036】
図5から明らかなように、従来例1から3および比較例に示す、オイル被膜をしないか酸素を吹付けない条件で作製した両面金属化フィルムでは、ブロッキングによりスリッタ時にシワが発生し、また蒸着膜抵抗値も上昇した。これに対し、本実施の形態その1からその6では、シワの発生が無く、抵抗値上昇も抑制された。なかでもオイル被膜としてシリコンオイルやフッ素オイルを用いた場合に、抵抗値上昇の無い良好な結果を得た。また、蒸着金属が亜鉛を含む場合に、特に顕著に良好な結果を得た。
【0037】
次に、図5に示す本実施の形態その1および従来例1の両面金属化フィルムを用いて金属化フィルムコンデンサを作製した。図6は、作製した金属化フィルムコンデンサの断面図であり、41はオイル被膜、42は酸化被膜、61a、61bは蒸着金属、72、73はフィルム、74は両面金属化フィルム、75は金属蒸着しない合わせ用フィルムを示す。
【0038】
図6において、両面金属化フィルム74は、本実施の形態における製造装置により図5で示す本実施の形態その1および従来例1の条件にて作製されたものであり、フィルム72に蒸着金属61a、61bを具備し、さらにオイル被膜41や酸化被膜42で被われている。そして、この両面金属化フィルム74と、フィルム73に金属蒸着しないでそのまま使用する合わせ用フィルム75とを組合せて巻回し、金属化フィルムコンデンサを作製する。
【0039】
さらに、このようにして作製した金属化フィルムコンデンサの、1kHzにおけるtanδと、60Hzにおける耐電圧を試験した結果を図7に示す。図7は、図5における本実施の形態その1と従来例1での条件で製造した金属化フィルムを使用して作製したコンデンサの試験結果を示すものである。
【0040】
なお、耐電圧試験は、周囲温度70℃で、コンデンサの印加電圧を1分毎に50Vづつ昇圧し、コンデンサがショートに至った電圧を耐電圧とした。
【0041】
その結果、図7で示すように、従来例1のコンデンサはブロッキングによりtanδが高く、またスリッタ時のシワにより耐電圧も低かったが、本実施の形態その1のコンデンサは良好なtanδと耐電圧を示した。
【0042】
なおオイル被膜の有無は、コンデンサから両面金属化フィルムをサンプリングし、そのまま、もしくは適当な溶媒で蒸着金属を抽出して濃縮した後に、例えば電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分析装置を用いることにより、判別できる。一例として、図5の本実施の形態その1の条件で作製した金属化フィルムコンデンサを分析した結果を図8に示す。図8において、横軸は両面金属化フィルムを構成する元素の特性X線のエネルギー値、縦軸は各特性X線の強度を示す。図中○印51で示したピークが、シリコン元素に対応しており、シリコンオイルからなるオイル被膜の存在がわかる。
【0043】
また、酸化被膜の有無は、例えば蒸着フィルムの表面をX線光電子分光法(以下ESCA)により分析することにより判別できる。一例として、本実施の形態その1の金属化フィルムコンデンサを分析した結果を図9に示す。図9において、横軸は蒸着を構成する亜鉛の結合エネルギーであり、金属亜鉛であれば約262eVに、また酸化亜鉛であれば約267eVにピークが検出される。図9中の52の曲線は蒸着膜表面を、また53は蒸着膜表面をエッチングで除去することにより蒸着膜内部を分析したものである。蒸着膜表面52が酸化亜鉛の大きなピークをもつことから、酸化被膜の存在がわかる。
【0044】
以上のことから、本実施の形態による製造装置で作製したコンデンサにはオイル被膜および酸化被膜が存在し、それらにより効果が得られたことが確認できた。
【0045】
なお、本実施の形態では図1から図3の製造装置を例として示したが、本発明の製造装置はこれに限定されるものではなく、フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の面にオイル被膜を形成するオイル被膜形成部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上を酸素を含む雰囲気に曝露させる酸素曝露部とを有する両面金属化フィルムの製造装置であれば、同様の効果を得ることができる。
【0046】
例えば、図1ではフィルムがオイル被膜形成部を通過した後に酸素曝露部を通るよう配置したが、この逆に配置しても同様の効果が得られる。また、オイル被膜を形成する面は、酸素に曝露する面と同じであっても逆であっても構わない。これは、両面金属化フィルムが図1のフィルム巻取り部9で巻き取られた際に、表裏の蒸着面がオイル被膜を介して接するために、どちらの面に対しても湿気の影響が抑制されるからである。無論、両側の面にオイル被膜を形成しても構わない。
【0047】
また図3ではオイル被膜形成部としてオイル蒸気をスリットから噴出したが、スリットのかわりに等間隔で穴を設けて噴出せしめてもかまわない。
【0048】
また、図4では、フィルムに酸化被膜を設ける方法として酸素や空気を吹き付けたが、他の方法で酸素を含む雰囲気に曝露しても同様の効果が得られる。例えば、真空チャンバー内に酸素を含むガスを導入した筐体を設け、フィルムがその中を通過することにより蒸着膜21を酸素に曝露させてもよい。
【0049】
さらに、実施の形態からなる金属化フィルムコンデンサの一例を図6に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、蒸着金属61a、61bはヘビーエッジでなく均一な厚みであっても同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施の形態は、巻き取られた未蒸着フィルムを引き出し時順次送付させていく装置内で、フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着ステップと、フィルム両面に蒸着された金属膜のうち片側の面にオイル被膜を形成するオイル被膜形成ステップと、フィルム両面に蒸着された金属膜のうち片側の面に酸素を含むガスを吹付ける酸素吹付けステップとを用い、フィルムを巻き取って両面金属化フィルムを製造する両面金属化フィルム製造方法を示すものである。
【0051】
なお、この両面金属化フィルム製造方法における、フィルムに酸素を含むガスを吹付ける酸素吹付けステップは、酸素を含む雰囲気に曝露させる酸素曝露ステップとしても同様の結果が得られる。また、フィルムの片面に、オイル被膜と酸化被膜を形成するようにしたが、どちらか、または両方とも両面にしてもよい。また、オイル被膜と酸化被膜を形成する工程の順番は、どちらが先であってもよいし、同時であってもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1から3に記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の面にオイル被膜を形成するオイル被膜形成部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に酸化被膜を形成する酸化膜形成部として、酸素吹付け部または酸素曝露部とを有することから、湿気によるブロッキング進行の無い良好な両面金属化フィルムを製造できる。
【0053】
また、本発明の請求項4および5記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、オイル被膜としてシリコンオイルやフッ素オイルを用いることから、フィルムの膨潤による抵抗値上昇の無い良好な両面金属化フィルムを製造できる。
【0054】
また本発明の請求項6記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、蒸着金属が亜鉛を含むことから、より顕著な効果を得ることができる。
【0055】
また本発明の請求項7記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、前記オイル被膜形成部が、フィルムの幅方向において所定の部分にのみオイル被膜を形成するものであることから、メタリコンコンタクトを悪化させることなくオイル被膜を形成することができる。
【0056】
また本発明の請求項8記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、前記オイル被膜形成部が、蒸着膜にオイル蒸気を噴霧するものであることから、蒸着面に傷を与えることなくオイル被膜を形成することができる。
【0057】
また本発明の請求項9記載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、前記オイル被膜形成部が、オイルタンク内に圧力センサを設け、オイル蒸気圧をモニタリングして蒸着膜にオイル蒸気を噴霧するものであることから、長尺のフィルムにおいても、均質なオイル被膜を形成することができる。
【0058】
また請求項10記載の金属化フィルムコンデンサは、フィルムの両面に蒸着金属膜を形成し、形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の面にオイル被膜を形成し、形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の面に形成する酸化膜を形成している、湿気によるブロッキング進行の無い良好な両面金属化フィルムを用いていることから、tanδ、耐圧ともに良好なコンデンサを実現できる。
【0059】
また請求項11から13記載の両面金属化フィルムの製造方法は、湿気によるブロッキング進行の無い良好な両面金属化フィルムを提供できる。
【0060】
また請求項14載の両面金属化フィルムの製造装置によれば、フィルムがポリプロピレンフィルムであることから、より顕著な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における両面金属化フィルムの製造装置を示す図
【図2】オイル被膜形成部近傍を拡大した断面図
【図3】オイル被膜形成部のノズルを拡大した図
【図4】酸素吹付け部を拡大した図
【図5】本発明の実施の形態の製造装置で両面金属化フィルムを作製する際の条件とその結果を示した図
【図6】本発明の実施の形態の製造装置で製造した金属化フィルムを用いて作製した金属化フィルムコンデンサの断面図
【図7】本実施の形態と従来例における条件で作製したコンデンサの試験結果を示す図
【図8】本実施の形態における金属化フィルムコンデンサのオイル被膜分析を示す図
【図9】本実施の形態における金属化フィルムコンデンサの酸化被膜分析を示す図
【図10】従来の片面金属化フィルムコンデンサを示す図
【図11】従来の両面金属化フィルムコンデンサ示す図
【符号の説明】
3、72 フィルム
4a、4b 冷却キャン
5a、5b アルミニウム蒸発源
6a、6b 亜鉛蒸発源
7 オイル被膜形成部
8 酸素吹付け部
20 オイルタンク
21 蒸着膜
22 オイル
24 オイル蒸気
27 圧力センサ
29、41 オイル被膜
31 酸素を含むガス
42 酸化被膜
61a、61b 蒸着電極
74 両面金属化フィルム
Claims (14)
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に、酸素を含むガスを用いて酸化膜を形成する酸化膜形成部とを有する両面金属化フィルムの製造装置。
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に酸素を含むガスを吹付ける酸素吹付け部とを有する両面金属化フィルムの製造装置。
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成部と、前記金属蒸着部によって形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上を酸素を含む雰囲気に曝露させる酸素曝露部とを有する両面金属化フィルムの製造装置。
- オイル皮膜形成部では、両面金属化フィルムにオイル被膜を形成するオイルとしてシリコンオイルを用いる請求項1から3のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- オイル皮膜形成部では、両面金属化フィルムにオイル被膜を形成するオイルとしてフッ素オイルを用いる請求項1から3のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- 金属蒸着部においては、フィルムの両面に蒸着する金属が亜鉛を含むものである請求項1から5のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- オイル被膜形成部が、フィルムの幅方向において所定の部分にのみオイル被膜を形成するものである請求項1から6のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- オイル被膜形成部が、蒸着膜にオイル蒸気を噴霧するものである請求項1から7のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- オイル被膜形成部は、オイルタンク内に圧力センサを設け、オイル蒸気圧をモニタリングして蒸着膜にオイル蒸気を噴霧するものである請求項8記載の両面金属化フィルムの製造装置。
- 両面金属化フィルムを用いたコンデンサであって、両面金属化フィルムの少なくとも片側の蒸着膜表面に酸化被膜を具備し、かつ少なくとも片側の蒸着膜表面にオイル皮膜を具備した金属化フィルムコンデンサ。
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に酸素を含むガスを用いて酸化膜を形成する酸化膜形成ステップとを用いる両面金属化フィルムの製造方法。
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に酸素を含むガスを吹付ける酸素吹付けステップとを用いる両面金属化フィルムの製造方法。
- フィルムの両面に蒸着金属膜を形成する金属蒸着ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上にオイル被膜を形成するオイル皮膜形成ステップと、前記金属蒸着ステップによって前記フィルムの両面に形成した蒸着膜のうち少なくとも片側の前記蒸着膜上に酸素を含む雰囲気に曝露させる酸素曝露ステップとを用いる両面金属化フィルムの製造方法。
- フィルムはポリプロピレンフィルムを用いる請求項11から13のいずれかに記載の両面金属化フィルムの製造方法。
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