JP4904725B2 - 巻取式真空蒸着方法 - Google Patents
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上記先行技術文献を示す。
また、一般的に放電させるために必要な導入ガスは成膜面と化学反応させないように、イオン化したアルゴンガスやネオンガスなどの不活性ガスが用いられるが、これらのガスは
放電し、静電気力を緩和するために必要なガスであり、反応・吸着されることなく、排気ポンプにて全て排出されるため、成膜雰囲気に著しい圧力上昇を伴うこととなる。これを回避する対策として、剥離箇所や巻取室10と成膜室6との間に仕切り板や中間室などを設けることでガス分離する対策が考案されているが、設備のコストアップや複雑化、既存設備への大幅改造が余儀なくされる。
前記液体蒸気を噴出することを特徴とする。
本発明では、成膜後に基材に付着している電荷を除去し、易剥離するために、液体蒸気噴射孔を設けた柔軟性のあるチューブ外周にアルミや銀、銅やカーボンなどの導電材料を被覆、あるいは摩擦係数の極めて低いダイヤモンドライクカーボン膜を被覆することで、剥離時に成膜フィルム裏面とチューブが接触しても著しい傷を発生することを抑制し、且
つ、水蒸気を用いることで従来の不活性ガスの導入量をグロー放電開始電圧まで減少することが可能である。また、導入する液体蒸気は基材に付着した後に排気ポンプではなく水蒸気除去ユニットや成膜ドラム側面に吸着されるために、成膜環境(圧力)を著しく悪化させることもない。更に、基材に付着した水蒸気(水滴)ピンホール無く金属酸化物などのような誘電体薄膜を安定に巻取ることができる。また、柔軟性の良いチューブを使うことで万一フィルム剥離面にチューブを押し出すような強い静電気力がかかっても剥離面に接しながらガス導入を行えるため、効率良く放電開始電圧を下げることができる。フィルム基材や薄膜の絶縁破壊を起こさない程度の電圧になるため、放電は生じるがピンホールなどの障害が生じない程度にまでエネルギーを低減する効果が得られ、また高価な装置や大がかりな専用器具を必要とせずに、大変安価で簡単な取り付けで他の巻取成膜装置に応用できる特長も併せ持つ。
抗値が1000μΩから5Ωの素材が特に好ましく使用できる)、もしくは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜のような摩擦係数が極めて低く、擦れに強い被膜を形成することが望ましく、柔軟性の良いチューブを使うことでフィルム剥離面がチューブを押し出すような強い静電気力がかかっても剥離面に接しながら液体蒸気の導入が行えるため、効率良く放電開始電圧を下げることができる。また、摩擦係数を低くすることによって、成膜裏面がチューブに触れた場合でも著しい傷を抑制することが可能となる。したがって、上記手法によって静電気力は数百V程度の放電電圧に変換されるために帯電障害が起こらない状態で巻取が可能となる。
フィルム基材として12μmの厚みを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを選定し、加速電圧40kV、12kWの電子ビームをアルミニウム塊に照射し溶融・蒸発させた環境下に、酸素ガスを導入し60m/min.の速さでフィルム基材上にアルミナ薄膜を形成した。フィルム走行面(蒸着裏面)と成膜ロールの間のエリアに剥離面に向けて噴射するように固定された直径6mmのPET製のチューブを配置し、直径1mm、ピッチ10mmの気体噴出孔から2×10−4m3/min.のアルゴンガスを導入しながら膜形成を行った。
気体噴出孔を構成するチューブの材質をアルミニウムにて被覆したものに変更した以外は参考例1と同じ条件で成膜評価を実施した。
気体噴出孔を構成するチューブの材質を約1μmからなるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜にて被覆したものに変更した以外は実施例1と同じ条件で成膜評価を実施した。
参考例1と同様の装置で、液体蒸気噴射口に水蒸気およびアルゴンガスを導入しない条件で成膜を実施し評価した。
参考例1と同様の装置で、PET製のチューブから構成される気体噴出孔にアルゴンガス:5×10−5m3/min.と水蒸気:1.5×10−5m3/min.の混合ガスを剥離箇所に導入した以外では、参考例1と同じ条件で成膜を実施し評価した。
参考例2と同様の装置で、液体蒸気噴射口に系内に水蒸気およびアルゴンガスを導入しない条件で成膜を実施し評価した。
参考例2と同様の装置で、気体噴出孔にアルゴンガス:5×10−5m3/min.と水蒸気:1.5×10−5m3/min.の混合ガスを剥離箇所に導入した以外では、参考
例1と同じ条件で成膜を実施し評価した。
参考例3と同様の装置で、液体蒸気噴射口に水蒸気およびアルゴンガスを導入しない条件で成膜を実施し評価した。
参考例3と同様の装置で、気体噴出孔にアルゴンガス:5×10−5m3/min.と水蒸気:1.5×10−5m3/min.の混合ガスを剥離箇所に導入した以外では、参考例1と同じ条件で成膜を実施し評価した。
〈評価〉
1.酸化アルミ層酸素透過率:モダンコントロール社製酸素透過度測定器
(MOCON OXTRAN)用いて 40°C―90%RH雰囲気下にてフィルムを測定。
2.酸化アルミ層のピンホール:薄膜面側から強浸透性の液体を噴霧し、浸透させ裏面に滲出したかを目視にて観察。
3.フィルムの巻姿:巻き取られた原反を目視にて観察、皺が要因で発生するゲージバンドや巻取張力不安定により発生する蛇行による巻きズレ量を定規にて測定。
4.フィルムの裏面傷:巻取成膜された原反を巻き剥がし、成膜されたフィルムの巻取方向での縦傷を目視にて観察。
5.アルミナ成膜中の圧力:熱陰極電離真空計(イオンゲージ)を用いてアルミナ蒸着中の成膜室および、巻取室の圧力を観察。
また実施例5、実施例7、実施例9では通常巻取時に発生するフィルム皺によるゲージバンドも見られず、巻きズレ量も±2mm程度と良好であり、さらに巻き取られたフィルムの裏面に傷も観察されなかった。しかしながら、参考例1、参考例6、参考例8では液体蒸気噴射孔由来の縦傷が多数観測され、特に参考例4ではフィルムがチューブに巻き込ま
れ、巻取不良が発生した。
成膜中での剥離面を観察したところ、実施例5、参考例2、実施例7、参考例3、実施例9では剥離面周辺に薄く発光するグロー放電が観察され、成膜後のフィルムが液体蒸気噴射孔に接触することなく剥離できていることが確認できたが、参考例1、参考例4、参考例6、参考例8においては、フィルムと液体蒸気噴射孔が配置されている柔軟性のチューブにフィルムが接触し、剥離面に沿うように強い放電発光が見えて剥離箇所が前後に移動するといった若干不安定な状態であった。この要因は、大量に蓄積された静電気力が強い放電発光を伴いながら一度に瞬間的にエネルギーを放出しフィルムを弛ませたことにより、張力が一定に制御できずフィルムが上下に波を打つ挙動を引き起こしたため、皺が発生したと考えられる。
また、酸素バリア性においては、水とアルゴンの混合ガスを導入することで、巻取不良を抑え、かつ、液体蒸気噴射孔の材質がPETの場合よりもPETにAlを被覆した場合や、PETにDLCを被覆した場合のほうが優れていることが確認された。この要因は、PETの場合に比べて、Alを被覆することでフィルムに滞在する電子を逃がす効果があり、またDLCを被覆することにより、基材とチューブの間の摩擦帯電を緩和させる効果があると予測できる。また、金属酸化物の膜物性〔ガス遮断性〕を向上させるためには、成膜室内の圧力を極力下げればよい傾向があり、今回の評価結果でも、前述の傾向が確認され、不活性ガスのみを大量に導入するよりも、放電に必要な最小ガス流量に絞り、水蒸気を導入するほうが、より成膜室内の圧力上昇を抑えることが可能であったためガス遮断性能が向上しているものと思われる。
2‥‥蒸発材料
3‥‥巻出ロール
4‥‥フィルム基材
5‥‥成膜ドラム
6‥‥成膜室
7‥‥巻取ロール
8‥‥成膜装置
9‥‥電子ビーム
10‥‥巻取室
11‥‥真空ポンプ
12‥‥剥離エリア
13‥‥液体蒸気噴射装置
14‥‥液体蒸気噴射口
20‥‥アルゴン用質量流量制御弁
21‥‥液体容器
22‥‥ヒータ
23‥‥水蒸気用質量流量制御弁
24‥‥流量バルブ
Claims (5)
- 巻取装置によって真空中を走行するフィルム基材の上に、電子ビームによって金属酸化物を被覆する反応蒸着方法において、蒸発材料を前記フィルム基材の上に成膜ドラム上で堆積した後に、前記成膜ドラムから前記フィルム基材が剥離する箇所に向けて液体蒸気を噴射することを特徴とする巻取式真空蒸着方法。
- 柔軟性に富んだチューブであって、前記チューブの外面をアルミニウム、銀、銅、カーボンのいずれか一つの素材で被覆し、さらに液体蒸気噴出孔を設けたチューブにより、前記液体蒸気を噴射することを特徴とする請求項1記載の巻取式真空蒸着方法。
- 柔軟性に富んだチューブであって、前記チューブの外面をDLC(ダイヤモンドライクカーボン)の薄膜で被覆し、さらに液体蒸気噴出孔を設けたチューブにより、前記液体蒸気を噴射することを特徴とする請求項1記載の巻取式真空蒸着方法。
- 柔軟性に富んだチューブであって、前記チューブの外面を摩擦係数μが0.1〜0.2の薄膜で被覆し、さらに液体蒸気噴出孔を設けたチューブにより、前記液体蒸気を噴射することを特徴とする請求項1記載の巻取式真空蒸着方法。
- 前記液体蒸気が水蒸気または水蒸気とアルゴンやネオンガス等の不活性気体との混合ガス蒸気であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の巻取式真空蒸着方法。
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