JP3767046B2 - 車両用温水式暖房装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は温水流量を制御する流量制御弁を用いて吹出空気温度を制御する車両用温水式暖房装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温水式暖房装置を含む車両用空調装置の吹出空気の温度制御方式として、暖房用熱交換器への温水流量を制御して、吹出空気温度を制御する方式のものが知られている。ところで、車両用空調装置においては、上記暖房用熱交換器を含む温水回路に、温水(エンジン冷却水)を循環させる手段として、走行用エンジンで駆動されるウオータポンプを使用しているので、エンジン回転数の変動とともにウオータポンプの回転数も変動して、暖房用熱交換器への温水圧力が大きく変動する。
【0003】
この温水圧力の変動は、熱交換器への温水流量を変動させるので、熱交換器吹出空気温度を変動させる要因となる。
そこで、本発明者らは、先に、特開平8−72529号公報等において、熱交換器吹出空気温度の変動を抑制する温水式暖房装置を提案している。この従来の装置は、水冷式の走行用エンジンから供給される温水と空気とを熱交換して空気を加熱する暖房用熱交換器と、エンジンから暖房用熱交換器に供給される温水流量を制御するための流量制御弁と、暖房用熱交換器をバイパスして温水を流すバイパス回路とを備えている。
【0004】
そして、このバイパス回路に、エンジンから供給される温水の圧力上昇に応じて、バイパス回路の開度を増大する圧力応動弁を設け、この圧力応動弁により暖房用熱交換器前後の差圧の上昇(熱交換器への温水流量の増加)を抑制して、熱交換器吹出空気温度の変動を抑制するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用空調装置においては、周知のごとく、内気(車室内空気)を吸入して再循環する内気モードと、外気(車室外空気)を取り入れる外気モードとを、空調の作動条件に応じて切替設定して、車室内の空調を行うようにしている。
【0006】
そして、車室内への吹出空気温度を自動制御する場合には、暖房用熱交換器の空気下流温度、すなわち吹出空気温度を温度センサにて検出して、流量制御弁の弁開度をフィードバック制御している。
従って、外気モードの場合に車速とともに変化するラム圧(走行動圧)により、外気導入口から空調装置通風ダクト内に導入される外気量が変動して暖房用熱交換器の吹出空気温度が変動しようとしても、上記フィードバック制御により吹出空気温度の変動を自動的に低減できる。
【0007】
車両用空調装置の低コスト化のためには、流量制御弁の弁開度を自動制御する方式から、乗員のマニュアル操作により直接調整する方式に変更することが有効であり、本発明者はこのマニュアル操作方式の温水式暖房装置の開発を試みている。
このマニュアル操作方式のものについて、本発明者らが実験検討したところ、外気モード時に車速が停車時から高速走行まで大きく変動するに伴ってラム圧も大きく変動し、これにより外気導入量の変動が発生し、吹出空気温度が大きく変動してしまうことが分かった。
【0008】
そこで、本発明は上記点に鑑みて、走行用エンジンで駆動されるウオータポンプの回転数変動に基づく温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、および、ラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに低減することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
まず最初に、本発明による課題解決のための考え方について図13により説明すると、図13(a)〜(g)の縦軸は熱交換器吹出空気温度Taの目標温度に対する変動値、および圧力応動弁の開度(弁リフト量)であり、横軸はラム圧と比例関係にある車速(エンジン回転数Ne)である。
【0010】
ここで、車速の上昇(=エンジン回転数の上昇)とともに、エンジンから供給される温水圧力が上昇する。そこで、図13(a)に示すように、内気モード時に車速(エンジン回転数)の上昇による熱交換器吹出空気温度Taの上昇を相殺するように、バイパス回路の圧力応動弁の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定したときは、内気モード時にエンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇に見合った量の温水をバイパス回路にバイパスさせることができるので、熱交換器吹出空気温度Taの変動を防止できる。なお、車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH1である。
【0011】
しかし、圧力応動弁による温水パイパス量は、外気モード時における車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加を考慮していないので、図13(b)に示すように、外気モード時には、この外気導入量の増加分だけ、熱交換器吹出空気温度Taが低下してしまう。本発明者らの実験例によると、エンジンがアイドル時から150km/hの車速上昇により、外気導入量が80m3 /h以上増加して、吹出空気温度Taの低下量ΔTaが−10°Cにも達する場合があった。
【0012】
そこで、バイパス回路の圧力応動弁の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を、上記車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分をも考慮した値に減少(バイパス回路側への温水バイパス量を減少)させると、図13(d)に示すように、外気モード時には、車速による熱交換器吹出空気温度Taの変動を防止する(ΔTa=0°C)ことが可能となる。
【0013】
しかし、その代わり、内気モード時には、ラム圧による外気導入量の増加が発生しないので、車速が高いときには、エンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇が原因となって、暖房用熱交換器への温水流量が増加する。これにより、熱交換器吹出空気温度Taが上昇してしまう。
本発明者らの実験例によると、エンジンがアイドル時から150km/hの車速上昇により、暖房用熱交換器への温水流量の増加によって吹出空気温度Taの上昇量ΔTaが10°Cにも達する場合があった。車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH2(H2<H1)である。
【0014】
ところで、上記図13(a)〜(d)の実験結果から理解されるように、図13(b)に示す外気モード時の吹出空気温度Taの低下量と図13(c)に示す内気モード時の吹出空気温度Taの上昇量が、目標温度に対してそれぞれ逆方向への変動であり、かついずれも車速(エンジン回転数Ne)をパラメータとして変動するものである。
【0015】
そこで、上記点に着目して、請求項1〜5記載の発明では、外気モード時に、車速が所定量変化したときに発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa1とし、
内気モード時に、車速が前記所定量変化したときに発生するエンジン(1)の回転数変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa2としたとき、
前記ΔTa2が前記ΔTa1の1/4〜3/4の範囲内となるように、
車速が前記所定量変化したときに発生するエンジン(1)の回転数変動範囲における、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することを特徴としている。
【0016】
より好ましくは、請求項5記載の発明のごとく、前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、車速が前記所定量変化したときに発生する前記エンジン(1)の回転数変動範囲における、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することがよい。
本発明において、車速が所定量変化するとは、例えば、停車時(アイドル時)から150km/hの車速のように、車両変速機ギヤがトップギヤにシフトアップされている高速走行状態の所定速度まで、車速が変化することである。そして、前記所定速度(例えば、150km/h)における、ラム圧に基づく外気導入量増加に起因する吹出空気温度の変動分(ΔTa1)と、前記所定速度(例えば、150km/h)における、エンジン回転数上昇に基づく温水圧力増加に起因する吹出空気温度の変動分(ΔTa2)とが上記の関係を満足するように圧力応動弁(6)の開度目標値を設定しているのである。
【0017】
ここで、圧力応動弁(6)の開度目標値の設定は、具体的には、例えば、圧力応動弁(6)の弁体(30)にばね力を作用させるばね手段(32)のばね定数の調節により行うことができる。また、ばね手段(32)のばね定数の調節でなく、流量制御弁(4)における温水流路形状の変更により圧力応動弁(6)の弁体(30)への温水の動圧の作用の仕方を変えることにより、圧力応動弁の開度目標値を変更できる。
【0018】
図13(e)〜(g)は、請求項6記載の発明のごとく前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定した場合を示しており、これにより、車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH3(H2<H3<H1)となり、外気モードにおける車速=150km/hでの吹出空気温度の変動分は−5°Cとなり、また、内気モードにおける車速=150km/hでの吹出空気温度の変動分は+5°Cとなる。
【0019】
すなわち、温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、および、ラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに図13(b)、(c)の場合より低減することが可能となる。
なお、本発明において、請求項5記載の発明のごとく前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することは、温水圧力変動による吹出空気温度変動、および、ラム圧変動による吹出空気温度変動をともに同程度(上記の例では5°C)に低減することができ、実用上最も有効であるが、本発明はこのような設定に限定されるものではなく、前述のΔTa2がΔTa1に対して1/4〜3/4の範囲となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定してもよい。
【0020】
このような設定としても、後述の比較例の特性(図8の▲2▼、▲3▼の特性)に比較して、変動幅ΔTaを低減でき、有利である。
次に、請求項6〜9記載の発明は、本発明の第2の特徴をなすものであって、以下の着眼点に基づいて案出されたものである。
すなわち、車両用空調装置における内気モードは、冷房熱負荷を低減するために、通常、夏期の冷房時(熱交換器吹出空気温度の低温領域)に使用され、一方、外気モードは窓ガラスの曇り止めのため、通常、冬期の暖房時(熱交換器吹出空気温度の高温領域)に使用される。従って、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)未満であると内気モードの使用頻度が大となり、そして、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)以上になると外気モードの使用頻度が大となる。
【0021】
そこで、上記内外気モードの切替特性に注目して、請求項6〜9記載の発明では、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)未満である小開度流域では、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定する。
【0022】
これに対して、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)以上である大開度領域では、外気モードにおけるラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を切替設定することを特徴としている。
これにより、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化による吹出空気温度の変動分および外気モードにおけるラム圧変化による吹出空気温度の変動分を両方とも圧力応動弁(6)の温水バイパス調整作用にて良好に吸収でき、内外気いずれのモードでも、吹出空気温度の変動をほとんどなくすことができる。
【0023】
上記のように、流量制御弁(4)の開度の大小に関連して、圧力応動弁(6)の開度目標値を切替設定する具体的手段としては、例えば、請求項7、8に記載のごとく構成すればよい。
すなわち、流量制御弁(4)の弁体(4a)の制御流路(170)に、温水入口(19)からの温水が流入する入口側開口部(171、171a)と、この入口側開口部(171、171a)に流入した温水を温水出口(20)側に流出させる出口側開口部(173、173a)と、入口側開口部(171、171a)に流入した温水をバイパス開口(21)側に流出させるバイパス側開口部(172)とを備え、
前記入口側開口部には、弁体(4a)の開度が小さいときに、温水入口(19)と連通する小開度側の部分(171a)と、弁体(4a)の開度が大きいときに、温水入口(19)と連通する大開度側の部分(171)が備えられており、
小開度領域においては、小開度側の部分(171a)を通して温水が出口側開口部(173、173a)およびバイパス側開口部(172)に流れ、
大開度領域においては、大開度側の部分(171)を通して温水が出口側開口部(173、173a)およびバイパス側開口部(172)に流れるようになっており、
そして、前記小開度領域における圧力応動弁6の開度目標値を、小開度側の部分(171a)から噴出する温水の主流が圧力応動弁(6)に設けられた弁体(30)側に向くことにより設定し、
大開度領域における圧力応動弁6の開度目標値を、大開度側の部分(171)から噴出する温水の主流が圧力応動弁(6)の弁体(30)とは異なる方向に向くことにより設定すればよい。
【0024】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載する具体的手段との対応関係を示す。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1〜図9は本発明の第1実施形態を示すもので、図1、2は本発明による流量制御装置の具体的構造を示し、図3は本発明装置を適用した車両用空調装置の通風系の概要を示すもので、1は自動車走行用の水冷式エンジン、2はエンジン1により駆動されるウオータポンプで、エンジン1の冷却水回路(温水回路)に水を循環させるものである。
【0026】
3は本発明による流量制御装置であって、温水出入口を3つ有する三方弁タイプの流量制御弁4と、バイパス回路5と、バイパス回路5に設けられた圧力応動弁(バイパス弁)6とを一体に構成している。
ここで、バイパス回路5は温水回路において暖房用熱交換器(ヒータコア)7と並列に設けられるものである。圧力応動弁6はエンジン1から供給される温水の圧力上昇に応じて、バイパス回路5の開度を増大することより、エンジン1の回転数変動によりウオータポンプ2の回転数が変動しても、暖房用熱交換器7の前後差圧を一定に近づける役割を果たすものである。
【0027】
また、暖房用熱交換器7は図3に示すように空調ユニット8の空気通路(通風ダクト)9内に設置されて、エンジン1から供給される温水と送風空気とを熱交換して、送風空気を加熱するものである。
空調ユニット8の空気通路9は、その上流端に内外気切替箱10を有し、この内外気切替箱10は外気導入口10aと、内気導入口10b、10bと、内外気切替ドア10c、10cとを備え、内気と外気を切替導入可能になっている。この内外気切替箱10から導入される空気は送風機11により空気通路9内を送風される。12は冷房用熱交換器で、冷凍サイクルの蒸発器からなり、冷媒の蒸発潜熱を送風空気から吸熱して、送風空気を冷却する。
【0028】
冷房用熱交換器12で冷却された冷風は、暖房用熱交換器7により所望の温度まで再加熱されて温度調整される。暖房用熱交換器7による加熱量の調整は、流量制御弁4により暖房用熱交換器7への温水量を調整することにより行うことができる。空気通路9の下流端には、温度調整後の空気を車室内の乗員顔部に向けて吹き出すフェイス吹出口13a、乗員の足元に吹き出すフット吹出口13b、車両窓ガラスに向けて吹き出すデフロスタ吹出口13c等の吹出口が設けられている。
【0029】
図1、2から理解されるように、流量制御弁4は樹脂材料にて円柱状に成形された弁体4aを有しており、弁体4aには温水流量制御用の制御流路170が形成されており、この制御流路170の詳細は後述する。また、流量制御装置3は、やはり樹脂にて成形された弁ハウジング14とを有している。この弁ハウジング14のうち、略円筒状に成形された第1収納部14a内に円柱状弁体4aが回動可能に配置され、収納されている。従って、弁体4aは回動可能なロータとして構成されている。
【0030】
また、弁ハウジング14には、第1収納部14aに隣接して、圧力応動弁6を収納する第2収納部14bが一体成形されている。圧力応動弁6は第2収納部14bに対して図1の上下方向にリフト可能に配置され、収納されている。
そして、これら第1、第2収納部14a、14bの上部開口端部には、図2に示す樹脂製の蓋板14cがねじ(図示せず)等により脱着可能に取付られており、この蓋板14cにより第1、第2収納部14a、14bの上部開口端部が密封されている。
【0031】
上記弁ハウジング14のうち、第1収納部14aには、エンジン1からの温水が流入する第1温水入口パイプ19、この温水入口パイプ19から流入した温水を熱交換器7に向けて流出させる第1温水出口パイプ20、及び熱交換器7のバイパス回路5に向けて温水を流出させるバイパス用開口21が一体成形されている。
【0032】
ここで、本例では、第1収納部14aの円周面に第1温水入口パイプ19とバイパス用開口21とを、略直交する位置関係で配置するとともに、第1温水出口パイプ20は、第1収納部14aの軸方向の一端面(図2の底面側)に配置してある。
さらに、第2収納部14bには、熱交換器7から流出した戻り温水が流入する第2温水入口パイプ26及びエンジン1に温水を戻す第2温水出口パイプ28が一体成形されている。従って、熱交換器7のバイパス回路5は第2収納部14b内に形成されることになる。
【0033】
圧力応動弁6は、バイパス用開口21を開閉する弁体30を有し、この弁体30は円板部の中心部をバイパス用開口21側へ突出させた形状になっている。この弁体30には、コイルスプリング(ばね手段)32のばね力が閉弁方向(図1の下方)に作用している。このコイルスプリング32の上端部は座板27により支持されており、この座板27は、スプリング力により第2収納部14bの内壁面に圧着している。この座板27の中心部には円筒部27aが形成されており、この円筒部27aには弁体30と一体の軸部31の上端部が摺動可能に嵌合して、弁体30の上下動を案内する。
【0034】
そして、弁体30前後の差圧、すなわち、バイパス用開口21と第2温水入口パイプ26との温水差圧が所定値に達すると、スプリング32のばね力に抗して弁体30が図1の上方へリフトして弁座33から開離し、弁体30が開弁するようになっている。ここで、弁座33はバイパス用開口21を形成する内壁面に一体成形されている。
【0035】
円柱状の弁体4aの軸方向端部(図2の上端部)には、弁体4aを回動操作するためのシャフト4bが一体に成形されている。このシャフト4bは蓋板14cを貫通して弁ハウジング14の外部に突出している。このシャフト4bの外部への突出端部にマニュアル操作用のリンクレバー(操作手段)4cの回転中心部を一体に連結し、このリンクレバー4cを周知のレバー、ワイヤ等を用いた操作力伝達機構を介して、図示しない空調操作パネルのマニュアル式の温度調整部材に連結するようにしてある。
【0036】
これにより、車室内の計器盤近傍に設置される空調操作パネルの温度調整部材(具体的にはレバー部材、ダイヤル部材等)を乗員が手動操作することにより、弁体4aを回動操作することができる。
40、41、42はゴム等の弾性材からなるシール部材で、その全体形状は図4に示すように矩形状に成形されており、その中央部に穴部40a、41a、42aを有している。これらのシール部材のうち、シール部材40、42は円柱状弁体4aの外周面と弁ハウジング14の第1収納部14aの内周面との間に配置されており、また、シール部材41は、弁体4aと第1収納部14aの相互の軸方向の一端面間に配置されている。
【0037】
このシール部材40、41、42は弁体4aの制御流路170を介することなく、直接パイプ19、20、バイパス用開口21間で温水が流通してしまうことを防ぐとともに、上記穴部40a、41a、42aと弁体4aの制御流路170との連通形状により温水流路の絞りを構成するものである。
本実施形態では、上記弁体4aの開度(弁体回転角)に応じて、制御流路170により図5に示す所定の相関関係を持って各パイプ19、20、バイパス用開口21の開口面積A1、A2、A3を制御するように構成してある。ここで、A1は第1温水入口パイプ19の開口面積であり、A2は第1温水出口パイプ20の開口面積であり、A3はバイパス用開口21の開口面積である。
【0038】
この図5に示す相関関係を実現するために、上記弁体4aの制御流路170とシール部材40、41、42の穴部40a、41a、42aの具体的形状は図6に示すごとく設定されている。
図6(a)は図2の矢印B方向からみたシール部材41の穴部41aと制御流路170の開口形状を示し、図6(b)は弁体4aの円周面の展開形状を示し、図6(c)は弁体4aの軸方向中央位置における断面形状を示している。そして、図6では、弁体開度を0°から95°までの9段階に変化させた場合における、制御流路170と各穴部40a、41a、42aとの連通状態の変化を示している。
【0039】
図6(b)、(c)および図1に示すように、弁体4aの円周面には、制御流路170の入口側開口部171、171aおよびバイパス側開口部172を配置し、この入口側開口部171、171aおよびバイパス側開口部172により温水入口パイプ19及びバイパス用開口21の開口面積A1、A3を調整する。
この入口側開口部171、171aは、シール部材40の円形の穴部40a(図4参照)との連通形状を変化させるものであって、入口側開口部171は図示のごとき嘴状の細長開口部分171′を有する形状であり、弁体開度が30°を超えると嘴状の細長開口部分171′の先端部分から穴部40aに連通するようになっている。また、入口側開口部171aはφ2相当の微小の円形穴形状であり、弁体開度が0の時(暖房停止時)にも穴部40aに連通するようになっている。この入口側開口部171aは弁体開度が40°を超えると、穴部40aとの連通を遮断する。
【0040】
また、バイパス側開口部172は長方形の一辺を円弧状にした形状であり、一方、このバイパス側開口部172が連通するシール部材42の穴部42aは円形の一部に凹部を形成した形状になっており、この穴部42aの凹部は、弁体開度が最大暖房能力位置の開度(95°)およびその近傍になったとき、入口側開口部171aと穴部42aとの連通を防止するためのものである。
【0041】
また、弁体4aの軸方向の一端面には、制御流路170の出口側開口部として2個の開口部173、173a(図6(a)、図1参照)を配置し、この出口側開口部173、173aにより温水出口パイプ20の開口面積A2を調整する。この出口側開口部173、173aはシール部材41の穴部41aとの連通形状を変化させるものであって、この穴部41aは、図4、図6(a)に示すように、弁体4aの回動中心を通過する細長形状であり、弁体4aの回動中心部位は一段と細くした形状にしてある。
【0042】
一方、弁体4aの出口側開口部173、173aは、弁体4aの最大冷房位置(弁体開度=0°)において、前記穴部41aを中間に挟むように配置されている。そして、この2個の出口側開口部173、173aのうち、1つの開口部173のみに、弁体4aが所定開度以下の小流量制御域の回動位置(例えば弁体開度=40°以下の開度位置)にあるとき、穴部41aと連通する微小開口部173′を形成している。
【0043】
以上の説明から理解されるように、弁体4aの入口側開口部171、171aとシール部材40の穴部40aとにより、温水入口パイプ19からの温水の絞り部(第1の絞り部)を形成し、弁体4aの出口側開口部173、173aとシール部材41の穴部41aとにより、温水出口パイプ20への温水の絞り部(第2の絞り部)を形成し、弁体4aのバイパス側開口部172とシール部材42の穴部42aとにより、バイパス用開口21への絞り部(第3の絞り部)を形成している。図4、5において、符号A1〜A3はこの各絞り部の開口面積を示す。
【0044】
なお、図2、3において、暖房用熱交換器7は、その下方部に温水の入口側タンク7aを有し、その上方部に温水の出口側タンク7bを有しており、そしてこの上下の両タンク7a、7bの間に、多数の並列配置された偏平チューブとコルゲートフィンとからなるコアー部7cが形成されている。ここで、コアー部7cは入口側タンク7aから出口側タンク7bへの一方向のみに温水が流れる一方向流れ(全パス)タイプとして構成されている。
【0045】
なお、図示しないが、本発明による流量制御弁4および圧力応動弁6を熱交換器7に予め一体化しておいて、その後にこれらの一体構造物を空気通路(通風ダクト)9に対して組み付けるようにして、組付性の向上、熱交換器部分の形状の小型化を図ってもよい。
次に、上記構成において作動を説明する。いま、空調操作パネルのマニュアル式の温度調整部材により流量制御弁4の弁体4aが最大暖房位置(最大開度の位置)に回動操作されると、本例では弁体4aが図5、6に示す弁開度:95°の位置まで回動される。
【0046】
これにより、弁体4aの制御流路170の入口側開口部171が温水入口パイプ19のシール部材40の穴部40aと最大面積で重畳するとともに、制御流路170の出口側開口部173、173aが温水出口パイプ20のシール部材41の穴部41aと最大面積で重畳し、この両パイプ19、20を全開する。一方、制御流路170のバイパス側側開口部172はバイパス用開口21のシール部材42の穴部42aと連通しないので、バイパス用開口21は全閉状態となる。
【0047】
その結果、エンジン1からの温水は最大流量で熱交換器7側に流入して、バイパス回路5には温水が流れない。これにより、熱交換器7は最大暖房能力を発揮できる。
次に、最大冷房時(自動車用空調装置に冷房機能が装備されていないときは、送風のみの暖房停止時となる)には、流量制御弁4の弁体4aが温度調整部材により開度零の位置(具体的には図5、6の弁体開度:0°の位置)まで回動される。この開度零の位置では、弁体4aの制御流路170のバイパス側側開口部172の大部分がバイパス用開口21のシール部材42の穴部42aと重畳してこのバイパス用開口21を開口する。また、制御流路170の出口側開口部173、173aが温水出口パイプ20のシール部材41の穴部41aと連通せず,温水出口パイプ20を全閉する。
【0048】
一方、制御流路170の入口側開口部171、171aにおいては、図6(b)の最上部に示すように、入口側開口部171aのみが温水入口パイプ19のシール部材40の穴部40aと重畳して連通する。これにより、温水入口パイプ19を全閉とせず、入口側開口部171aによりφ2丸穴相当の最小開口面積を設定する。
【0049】
上記の弁体位置により、温水入口パイプ19からバイパス用開口21への温水の流れを継続できるので、温水の流れの急遮断によるウオータハンマ現象の音の発生を防止できるとともに、φ2丸穴相当以上の開口面積の確保により流水音の発生も防止できる。
また、温水回路中の鋳砂は通常、φ1以下の微小物であるので、上記大きさの最小開口を設定することにより、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0050】
次に、微少能力時には、弁体4aが図5の弁体開度30°以下の位置に回動されるので、制御流路170の入口側開口部171aと出口側開口部173の微小開口部173′が温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の双方の穴部40a、41aに対して小面積で重畳し、温水入口パイプ19の開口面積A1及び温水出口パイプ20の開口面積A2を双方とも絞っている2段絞りの状態となる。しかも、温水入口パイプ19と温水出口パイプ20の絞り部の中間部(図1の中間流路174部)は全開状態にあるバイパス用開口21によって十分大きな開口面積A3でバイパス回路5に連通しているので、この中間流路174の圧力を下げることができる。
【0051】
その結果、暖房用熱交換器7前後の差圧を十分小さくできるので、弁開度(弁体回転角)の変化に対する温水流量の変化(最終的には車室内への吹出空気温度の変化)を、特別小さな開口面積を必要とせずに、緩やかすることができる。すなわち、吹出空気温度の制御ゲインを低減できる。
この制御ゲインの低減により、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できるとともに、温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の開口面積を特別小さな開口面積に設定する必要がなくなるため、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0052】
次に、中間能力時においては、弁体4aが図5の弁体開度30°〜60°の回動範囲にわたって、回動され、この弁体回動範囲では、温水入口側絞り部開口面積A1および温水出口側絞り部開口面積A2がほぼ同等の大きさで増加するとともに、バイパス側絞り部開口面積A3が次第に減少する。これにより、暖房用熱交換器7への温水流量を増加させて、吹出空気温度を次第に高める。
【0053】
このような弁体回動位置においても、上記2段絞りにより、同様に制御ゲインを低減して、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できる。また、絞り部開口面積の増加により、鋳砂等の異物による流路閉塞の恐れがなくなるので、この状態では、温水入口側の絞り部開口面積A1と温水出口側の絞り部開口面積A2を同等に設定してある。
【0054】
次に、中間能力時〜大能力時においては、弁体4aが図5の弁開度60°を越える回動位置から95°未満の回動位置にわたって、回動されることにより、上記両開口面積A1、A2がさらに増加するとともに、バイパス側絞り部開口面積A3が減少する。これにより、暖房用熱交換器7への温水流量をさらに増加させて、吹出空気温度を高める。
【0055】
ところで、車両用空調装置の温水供給源をなすエンジン1とウオータポンプ2は、自動車の走行条件の変化に伴って回転数が大幅に変化するので、エンジン1からの温水供給圧は走行条件の変化により大幅に変化し、これが流量制御弁4による温水流量制御、ひいては吹出空気温度調整に対する大きな外乱要素となる。そこで、本実施形態にあっては、暖房用熱交換器7のバイパス回路5に圧力応動弁6を設けている。この圧力応動弁6においては、エンジン1からの温水供給圧が上昇して、弁体30前後の差圧がスプリング32により定まる所定圧より高くなると、弁体30が図1の上方へ移動して開弁し、弁体30と弁座33との間の隙間が上記差圧に応じて変動することより、圧力応動弁6はその弁体30前後の圧力差を一定値に維持するように作用する。
【0056】
このような圧力応動弁6の作用により、エンジン1からの温水供給圧の変化による暖房用熱交換器7への温水流量の変動を抑制することができる。
しかし、空調ユニット8において内外気切替箱10が外気導入状態(外気モード)に設定されているときは、車速の変化に基づくラム圧の変化により空気通路9内への外気導入量が変化するので、このことも外乱要素となって吹出空気温度が変動する。
【0057】
図7は本発明者らの実験による外気導入量増加のデータであり、横軸は車速およびラム圧をとり、縦軸に外気導入量の増加分をとっている。図7に示すように例えば、車速=60km/hにて、外気導入量の増加分が30m3 /hとなる。図8は上記ラム圧による吹出空気温度の変動を示すグラフであり、縦軸に吹出空気温度をとり、横軸に車速V、エンジン回転数Neおよびラム圧による風量増加分(外気導入量の増加分)をとっている。図8において、Loは空調ユニット8の送風機11の風量が150m3 /hとなる小風量状態であり、Meは送風機11の風量が300m3 /hとなる中風量状態であり、Hiは送風機11の風量が400m3 /hとなる大風量状態である。
【0058】
小風量状態Loの場合が最もラム圧による風量増加分の割合が高くなり、吹出空気温度の変動幅が大きくなる。それ故、図8のグラフは小風量状態Loにおける吹出空気温度の変動だけを示しており、0〜150km/hの車速変化により最大10°Cの変動幅が発生する。
そこで、本実施形態においては、この圧力応動弁6の開度目標値を以下のごとく設定することにより、エンジン回転数変動に基づく温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、およびラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに低減することができる。
【0059】
以下、この点について詳述すると、外気モード時に、車速が所定量変化(具体的には、停車時(アイドル時)から150km/hの車速変化)したとき、これに対応して発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa1とし、
内気モード時に、車速が所定量変化(具体的には、停車時(アイドル時)から150km/hの車速変化)したとき、これに対応して発生するエンジン1の回転数変動(具体的には、アイドル時の750rpmから4000rpmの回転数変動)に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa2としたとき、
ΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、前記エンジン回転数変動範囲(具体的には、アイドル時の750rpmから4000rpmの回転数変動)における、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定している。このような開度目標値の設定は、例えば、コイルスプリング32のばね定数(N/mm)の調整により行うことができる。
【0060】
図9は、上記のように開度目標値を設定した圧力応動弁6を有する温水式暖房装置による効果を示す実験データのグラフであり、実験条件は図8中に示す通りである。
図9において、圧力応動弁6の無い場合は、線▲1▼に示すように、車速:0〜250km/h(エンジン回転数:750rpm〜6000rpm)の変化により、内気モード時における吹出空気温度Taが30°Cから54°Cまで上昇して、その変動幅ΔTaは+24°Cに達する。
【0061】
次に、線▲2▼は、圧力応動弁6を設けるとともに、この圧力応動弁6の開度目標値を、内気モード時に車速(エンジン回転数)の上昇による温水圧力上昇に起因する熱交換器吹出空気温度Taの上昇を相殺するように設定(上昇幅=0°C)した場合を示しており、この場合は、内気モード時には吹出空気温度Taの変動を防止できるものの、外気モード時には車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分だけ、吹出空気温度Taが低下してしまう。具体的には、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが20°Cまで低下し、その変動幅ΔTaは−10°Cに達する。
【0062】
次に、線▲3▼は圧力応動弁6を設けるとともに、圧力応動弁6の開度目標値を車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分を相殺する値に設定した場合である。つまり、線▲3▼は▲2▼の場合よりも、圧力応動弁6の開度目標値を減少(温水バイパス量を減少)させた場合であり、この場合は外気モード時には、ラム圧による吹出空気温度Taの低下を防止できるものの、内気モード時には、ラム圧による外気導入量の増加が発生しないので、エンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇が原因となって、熱交換器吹出空気温度Taが上昇してしまう。具体的には、上記の車速、エンジン回転数の変化に対して、吹出空気温度Taが40°Cまで上昇し、その変動幅ΔTaは+10°Cに達する。
【0063】
これに対して、本実施形態によると、前述のごとく、ΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定しているため、外気モード時には、線▲4▼に示すように、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが25°Cまで低下し、その変動幅ΔTaは−5°Cに抑制することができる。
【0064】
一方、内気モード時には、線▲5▼に示すように、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが35°Cまで上昇し、その変動幅ΔTaは+5°Cに抑制することができる。
以上の結果、本実施形態によると、車速:0〜250km/h(エンジン回転数:750rpm〜6000rpm)の広範な変化に対して、吹出空気温度Taの変動幅ΔTaを内気モード、外気モードとも、±5°C以内の僅少値に抑制することができ、マニュアル方式の温度調整であっても、乗員が頻繁な温度調整操作を行う必要がない。
【0065】
なお、本実施形態では、前述のΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定することにより、内気モード、外気モードとも、吹出空気温度変動を±5°C以内の僅少値に抑制しているが、本発明はこのような設定の仕方に限定されるものではなく、前述のΔTa2がΔTa1に対して1/4〜3/4の範囲となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定してもよい。
【0066】
例えば、ΔTa2をΔTa1の1/4となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定した場合は、図9の実験において、外気モード時の変動幅ΔTa=7.5°Cとなり、内気モード時の変動幅ΔTa=2.5°Cとなる。
また、ΔTa2をΔTa1の3/4となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定した場合は、図9の実験において、外気モード時の変動幅ΔTa=2.5°Cとなり、内気モード時の変動幅ΔTa=7.5°Cとなる。
【0067】
従って、このような設定としても、比較例の特性(図8の▲2▼、▲3▼の特性)に比較して、変動幅ΔTaを低減でき、有利である。
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、圧力応動弁6の開度目標値を流量制御弁4の弁体4aの開度(図5、6参照)と関係なく、ΔTa2とΔTa1とが所定関係となるように設定しているが、第2実施形態は、流量制御弁4の弁体4aの開度に関連して、圧力応動弁6の開度目標値を切り替えるようにしたものである。
【0068】
車両用空調装置における内気モードは、冷房熱負荷を低減するために、通常、夏期の冷房時(熱交換器吹出空気温度の低温領域)に使用され、一方、外気モードは窓ガラスの曇り止めのため、通常、冬期の暖房時(熱交換器吹出空気温度の高温領域)に使用される。
図10は、第2実施形態による流量制御弁4の弁体4a開度と、吹出空気温度との関係(温度制御特性)を示すグラフであり、本発明者らの検討によれば、図10において、流量制御弁4の弁体開度が30°未満であると内気モードの使用頻度が大となり、そして、流量制御弁4の弁体開度が30°以上になると外気モードの使用頻度が大となる。
【0069】
そこで、上記内外気モードの切替特性に注目して、第2実施形態では、流量制御弁4の弁体開度が30°未満である冷房側領域では、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定する。
これに対して、流量制御弁4の弁体開度が30°以上である暖房側領域では、外気モードにおける車速が所定量変化したときに発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を切替設定する。
【0070】
図11および図12は上記のように、流量制御弁4の弁体開度に関連して、圧力応動弁6の開度目標値を切り替えるための具体例を示すものであって、図11(a)は流量制御弁4の弁体開度=20°における流量制御弁4の状態を示すもので、この状態では弁体4aの制御流路170における入口側開口部171aを通って温水入口19からの温水がパイパス側開口部172および出口側開口部173、173aへ流れる。
【0071】
入口側開口部171aは前述したようにφ2の円形穴からなる小断面積のものであるため、この入口側開口部171aからは高い速度でもって温水が噴出する。動圧は速度の2乗に比例するため、この噴出温水の動圧は十分高いものとなる。そこで、この噴出温水の主流が圧力応動弁6の弁体30側に向くように、入口側開口部171aの方向を設定する。これにより、入口側開口部171aからの噴出温水の動圧を有効利用して、圧力応動弁6の弁体開度(弁体リフト量)を増大させて、圧力応動弁6の開度目標値を大きめに設定する。
【0072】
換言すれば、入口側開口部171aからの噴出温水の動圧を有効利用して、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるだけの開度目標値を設定する。
この結果、図11(b)の実験結果▲6▼に示すように、エンジン回転数:750rpm〜6000rpmの回転数変動に対して、内気モードにおける、吹出空気温度の変動ΔTaをほぼ零にすることができる。
【0073】
一方、図12(a)は流量制御弁4の弁体開度=40°における流量制御弁4の状態を示すもので、この状態では入口側開口部171aが閉塞され、その代わりに弁体4aの制御流路170における嘴状の入口側開口部171が開口する。温水入口19からの温水は、嘴状入口側開口部171を通って制御流路170の中間流路174に入り、バイパス側開口部172および出口側開口部173、173aへ流れる。
【0074】
このような温水の流れ経路においては、嘴状入口側開口部171と中間流路174とのつなぎ部175の円弧形状の曲率により温水の流れの主流の方向が大きく変化する。
そこで、本実施形態では、このつなぎ部175の円弧形状の曲率を非常に小さくする(例えば、曲率R=0.5mm)ことにより、嘴状入口側開口部171から中間流路174に流入する温水の流れを矢印Cのように中間流路174の内壁面176に向けて、温水の主流が圧力応動弁6の弁体30に直接向かわないようにする。
【0075】
この結果、温水の動圧が圧力応動弁6の弁体30に対して直接的に作用せず、圧力応動弁6の弁体開度(弁体リフト量)を減少させて、圧力応動弁6の開度目標値を小さめに設定でき、圧力応動弁6による温水バイパス流量を減少できることになる。これにより、ラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分ΔTa(図12(b)の▲7▼参照)を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定できる。
【0076】
つまり、上記のように、圧力応動弁6の開度目標値を設定すると、流量制御弁4の弁体開度=40°において、もし、内気モードで使用すると、図12(b)の▲8▼に示すように、エンジン回転数変動による吹出空気温度の変動分ΔTa=+10°Cが発生することになるが、流量制御弁4の弁体開度=40°では、通常、外気モードで使用されるので、エンジン回転数変動によるΔTa=+10°Cが丁度ラム圧変化によるΔTa=−10°Cを相殺できる。
【0077】
この結果、流量制御弁4の弁体開度が30°以上である暖房側領域では、外気モードにおけるラム圧変化による吹出空気温度の変動分を吸収できるのである。因みに、つなぎ部175の円弧形状の曲率を図12(c)のごとく大きくすると、このつなぎ部175の円弧形状に沿って、矢印Dのように、温水の主流が圧力応動弁6の弁体30側に直接向かうようになり、圧力応動弁6の開度目標値が大きくなって、温水バイパス量が増加してしまう。それ故、ラム圧変化による吹出空気温度の変動分を十分吸収できないという結果を招く。
【0078】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、円柱状弁体4aをマニュアル式の温度調整部材による手動操作力にて回転駆動しているが、円柱状弁体4aの弁体作動手段をサーボモータのような電気的アクチュエータにより構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す温水回路図で、流量制御弁と圧力応動弁とを一体化した流量制御装置の断面構造図を含む。
【図2】図1のA−A矢視断面図を含む温水回路図である。
【図3】本発明の第1実施形態における空調ユニット部の通風系断面図を含む温水回路図である。
【図4】本発明の第1実施形態における流量制御弁の弁体部分の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態における流量制御弁の開度特性を示すグラフである。
【図6】(a)は流量制御弁の弁体とシール部材の開口形状を示す底面図、(b)は流量制御弁の弁体の円周面展開図、(c)は流量制御弁の弁体とシール部材の断面図である。
【図7】ラム圧変動による外気導入量増加を示すグラフである。
【図8】ラム圧変動による吹出空気温度の変動を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態および比較品における吹出空気温度と車速およびエンジン回転数との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態における流量制御弁の弁体開度と吹出空気温度との制御特性を示すグラフである。
【図11】(a)は本発明の第2実施形態における流量制御弁の開口部形態を示す温水回路図で、流量制御弁開度=20°の状態を示す。(b)は(a)の状態における内気モードでの吹出空気温度変動を示すグラフである。
【図12】(a)は本発明の第2実施形態における流量制御弁の開口部形態を示す温水回路図で、流量制御弁開度=40°の状態を示す。(b)は(a)の状態における内外気モードでの吹出空気温度変動を示すグラフ、(c)は比較例の弁体形状を示す断面図である。
【図13】本発明による課題解決の考え方を説明する説明図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…ウォータポンプ、4…流量制御弁、4a…弁体、
5…バイパス回路、6…圧力応動弁、7…暖房用熱交換器、9…空気通路。
【発明の属する技術分野】
本発明は温水流量を制御する流量制御弁を用いて吹出空気温度を制御する車両用温水式暖房装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温水式暖房装置を含む車両用空調装置の吹出空気の温度制御方式として、暖房用熱交換器への温水流量を制御して、吹出空気温度を制御する方式のものが知られている。ところで、車両用空調装置においては、上記暖房用熱交換器を含む温水回路に、温水(エンジン冷却水)を循環させる手段として、走行用エンジンで駆動されるウオータポンプを使用しているので、エンジン回転数の変動とともにウオータポンプの回転数も変動して、暖房用熱交換器への温水圧力が大きく変動する。
【0003】
この温水圧力の変動は、熱交換器への温水流量を変動させるので、熱交換器吹出空気温度を変動させる要因となる。
そこで、本発明者らは、先に、特開平8−72529号公報等において、熱交換器吹出空気温度の変動を抑制する温水式暖房装置を提案している。この従来の装置は、水冷式の走行用エンジンから供給される温水と空気とを熱交換して空気を加熱する暖房用熱交換器と、エンジンから暖房用熱交換器に供給される温水流量を制御するための流量制御弁と、暖房用熱交換器をバイパスして温水を流すバイパス回路とを備えている。
【0004】
そして、このバイパス回路に、エンジンから供給される温水の圧力上昇に応じて、バイパス回路の開度を増大する圧力応動弁を設け、この圧力応動弁により暖房用熱交換器前後の差圧の上昇(熱交換器への温水流量の増加)を抑制して、熱交換器吹出空気温度の変動を抑制するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用空調装置においては、周知のごとく、内気(車室内空気)を吸入して再循環する内気モードと、外気(車室外空気)を取り入れる外気モードとを、空調の作動条件に応じて切替設定して、車室内の空調を行うようにしている。
【0006】
そして、車室内への吹出空気温度を自動制御する場合には、暖房用熱交換器の空気下流温度、すなわち吹出空気温度を温度センサにて検出して、流量制御弁の弁開度をフィードバック制御している。
従って、外気モードの場合に車速とともに変化するラム圧(走行動圧)により、外気導入口から空調装置通風ダクト内に導入される外気量が変動して暖房用熱交換器の吹出空気温度が変動しようとしても、上記フィードバック制御により吹出空気温度の変動を自動的に低減できる。
【0007】
車両用空調装置の低コスト化のためには、流量制御弁の弁開度を自動制御する方式から、乗員のマニュアル操作により直接調整する方式に変更することが有効であり、本発明者はこのマニュアル操作方式の温水式暖房装置の開発を試みている。
このマニュアル操作方式のものについて、本発明者らが実験検討したところ、外気モード時に車速が停車時から高速走行まで大きく変動するに伴ってラム圧も大きく変動し、これにより外気導入量の変動が発生し、吹出空気温度が大きく変動してしまうことが分かった。
【0008】
そこで、本発明は上記点に鑑みて、走行用エンジンで駆動されるウオータポンプの回転数変動に基づく温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、および、ラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに低減することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
まず最初に、本発明による課題解決のための考え方について図13により説明すると、図13(a)〜(g)の縦軸は熱交換器吹出空気温度Taの目標温度に対する変動値、および圧力応動弁の開度(弁リフト量)であり、横軸はラム圧と比例関係にある車速(エンジン回転数Ne)である。
【0010】
ここで、車速の上昇(=エンジン回転数の上昇)とともに、エンジンから供給される温水圧力が上昇する。そこで、図13(a)に示すように、内気モード時に車速(エンジン回転数)の上昇による熱交換器吹出空気温度Taの上昇を相殺するように、バイパス回路の圧力応動弁の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定したときは、内気モード時にエンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇に見合った量の温水をバイパス回路にバイパスさせることができるので、熱交換器吹出空気温度Taの変動を防止できる。なお、車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH1である。
【0011】
しかし、圧力応動弁による温水パイパス量は、外気モード時における車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加を考慮していないので、図13(b)に示すように、外気モード時には、この外気導入量の増加分だけ、熱交換器吹出空気温度Taが低下してしまう。本発明者らの実験例によると、エンジンがアイドル時から150km/hの車速上昇により、外気導入量が80m3 /h以上増加して、吹出空気温度Taの低下量ΔTaが−10°Cにも達する場合があった。
【0012】
そこで、バイパス回路の圧力応動弁の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を、上記車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分をも考慮した値に減少(バイパス回路側への温水バイパス量を減少)させると、図13(d)に示すように、外気モード時には、車速による熱交換器吹出空気温度Taの変動を防止する(ΔTa=0°C)ことが可能となる。
【0013】
しかし、その代わり、内気モード時には、ラム圧による外気導入量の増加が発生しないので、車速が高いときには、エンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇が原因となって、暖房用熱交換器への温水流量が増加する。これにより、熱交換器吹出空気温度Taが上昇してしまう。
本発明者らの実験例によると、エンジンがアイドル時から150km/hの車速上昇により、暖房用熱交換器への温水流量の増加によって吹出空気温度Taの上昇量ΔTaが10°Cにも達する場合があった。車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH2(H2<H1)である。
【0014】
ところで、上記図13(a)〜(d)の実験結果から理解されるように、図13(b)に示す外気モード時の吹出空気温度Taの低下量と図13(c)に示す内気モード時の吹出空気温度Taの上昇量が、目標温度に対してそれぞれ逆方向への変動であり、かついずれも車速(エンジン回転数Ne)をパラメータとして変動するものである。
【0015】
そこで、上記点に着目して、請求項1〜5記載の発明では、外気モード時に、車速が所定量変化したときに発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa1とし、
内気モード時に、車速が前記所定量変化したときに発生するエンジン(1)の回転数変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa2としたとき、
前記ΔTa2が前記ΔTa1の1/4〜3/4の範囲内となるように、
車速が前記所定量変化したときに発生するエンジン(1)の回転数変動範囲における、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することを特徴としている。
【0016】
より好ましくは、請求項5記載の発明のごとく、前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、車速が前記所定量変化したときに発生する前記エンジン(1)の回転数変動範囲における、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することがよい。
本発明において、車速が所定量変化するとは、例えば、停車時(アイドル時)から150km/hの車速のように、車両変速機ギヤがトップギヤにシフトアップされている高速走行状態の所定速度まで、車速が変化することである。そして、前記所定速度(例えば、150km/h)における、ラム圧に基づく外気導入量増加に起因する吹出空気温度の変動分(ΔTa1)と、前記所定速度(例えば、150km/h)における、エンジン回転数上昇に基づく温水圧力増加に起因する吹出空気温度の変動分(ΔTa2)とが上記の関係を満足するように圧力応動弁(6)の開度目標値を設定しているのである。
【0017】
ここで、圧力応動弁(6)の開度目標値の設定は、具体的には、例えば、圧力応動弁(6)の弁体(30)にばね力を作用させるばね手段(32)のばね定数の調節により行うことができる。また、ばね手段(32)のばね定数の調節でなく、流量制御弁(4)における温水流路形状の変更により圧力応動弁(6)の弁体(30)への温水の動圧の作用の仕方を変えることにより、圧力応動弁の開度目標値を変更できる。
【0018】
図13(e)〜(g)は、請求項6記載の発明のごとく前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定した場合を示しており、これにより、車速=150km/hにおける圧力応動弁の開度(弁リフト量)はH3(H2<H3<H1)となり、外気モードにおける車速=150km/hでの吹出空気温度の変動分は−5°Cとなり、また、内気モードにおける車速=150km/hでの吹出空気温度の変動分は+5°Cとなる。
【0019】
すなわち、温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、および、ラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに図13(b)、(c)の場合より低減することが可能となる。
なお、本発明において、請求項5記載の発明のごとく前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することは、温水圧力変動による吹出空気温度変動、および、ラム圧変動による吹出空気温度変動をともに同程度(上記の例では5°C)に低減することができ、実用上最も有効であるが、本発明はこのような設定に限定されるものではなく、前述のΔTa2がΔTa1に対して1/4〜3/4の範囲となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定してもよい。
【0020】
このような設定としても、後述の比較例の特性(図8の▲2▼、▲3▼の特性)に比較して、変動幅ΔTaを低減でき、有利である。
次に、請求項6〜9記載の発明は、本発明の第2の特徴をなすものであって、以下の着眼点に基づいて案出されたものである。
すなわち、車両用空調装置における内気モードは、冷房熱負荷を低減するために、通常、夏期の冷房時(熱交換器吹出空気温度の低温領域)に使用され、一方、外気モードは窓ガラスの曇り止めのため、通常、冬期の暖房時(熱交換器吹出空気温度の高温領域)に使用される。従って、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)未満であると内気モードの使用頻度が大となり、そして、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)以上になると外気モードの使用頻度が大となる。
【0021】
そこで、上記内外気モードの切替特性に注目して、請求項6〜9記載の発明では、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)未満である小開度流域では、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定する。
【0022】
これに対して、流量制御弁(4)の開度が所定開度(例えば、30°)以上である大開度領域では、外気モードにおけるラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁(6)の開度目標値を切替設定することを特徴としている。
これにより、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化による吹出空気温度の変動分および外気モードにおけるラム圧変化による吹出空気温度の変動分を両方とも圧力応動弁(6)の温水バイパス調整作用にて良好に吸収でき、内外気いずれのモードでも、吹出空気温度の変動をほとんどなくすことができる。
【0023】
上記のように、流量制御弁(4)の開度の大小に関連して、圧力応動弁(6)の開度目標値を切替設定する具体的手段としては、例えば、請求項7、8に記載のごとく構成すればよい。
すなわち、流量制御弁(4)の弁体(4a)の制御流路(170)に、温水入口(19)からの温水が流入する入口側開口部(171、171a)と、この入口側開口部(171、171a)に流入した温水を温水出口(20)側に流出させる出口側開口部(173、173a)と、入口側開口部(171、171a)に流入した温水をバイパス開口(21)側に流出させるバイパス側開口部(172)とを備え、
前記入口側開口部には、弁体(4a)の開度が小さいときに、温水入口(19)と連通する小開度側の部分(171a)と、弁体(4a)の開度が大きいときに、温水入口(19)と連通する大開度側の部分(171)が備えられており、
小開度領域においては、小開度側の部分(171a)を通して温水が出口側開口部(173、173a)およびバイパス側開口部(172)に流れ、
大開度領域においては、大開度側の部分(171)を通して温水が出口側開口部(173、173a)およびバイパス側開口部(172)に流れるようになっており、
そして、前記小開度領域における圧力応動弁6の開度目標値を、小開度側の部分(171a)から噴出する温水の主流が圧力応動弁(6)に設けられた弁体(30)側に向くことにより設定し、
大開度領域における圧力応動弁6の開度目標値を、大開度側の部分(171)から噴出する温水の主流が圧力応動弁(6)の弁体(30)とは異なる方向に向くことにより設定すればよい。
【0024】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載する具体的手段との対応関係を示す。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1〜図9は本発明の第1実施形態を示すもので、図1、2は本発明による流量制御装置の具体的構造を示し、図3は本発明装置を適用した車両用空調装置の通風系の概要を示すもので、1は自動車走行用の水冷式エンジン、2はエンジン1により駆動されるウオータポンプで、エンジン1の冷却水回路(温水回路)に水を循環させるものである。
【0026】
3は本発明による流量制御装置であって、温水出入口を3つ有する三方弁タイプの流量制御弁4と、バイパス回路5と、バイパス回路5に設けられた圧力応動弁(バイパス弁)6とを一体に構成している。
ここで、バイパス回路5は温水回路において暖房用熱交換器(ヒータコア)7と並列に設けられるものである。圧力応動弁6はエンジン1から供給される温水の圧力上昇に応じて、バイパス回路5の開度を増大することより、エンジン1の回転数変動によりウオータポンプ2の回転数が変動しても、暖房用熱交換器7の前後差圧を一定に近づける役割を果たすものである。
【0027】
また、暖房用熱交換器7は図3に示すように空調ユニット8の空気通路(通風ダクト)9内に設置されて、エンジン1から供給される温水と送風空気とを熱交換して、送風空気を加熱するものである。
空調ユニット8の空気通路9は、その上流端に内外気切替箱10を有し、この内外気切替箱10は外気導入口10aと、内気導入口10b、10bと、内外気切替ドア10c、10cとを備え、内気と外気を切替導入可能になっている。この内外気切替箱10から導入される空気は送風機11により空気通路9内を送風される。12は冷房用熱交換器で、冷凍サイクルの蒸発器からなり、冷媒の蒸発潜熱を送風空気から吸熱して、送風空気を冷却する。
【0028】
冷房用熱交換器12で冷却された冷風は、暖房用熱交換器7により所望の温度まで再加熱されて温度調整される。暖房用熱交換器7による加熱量の調整は、流量制御弁4により暖房用熱交換器7への温水量を調整することにより行うことができる。空気通路9の下流端には、温度調整後の空気を車室内の乗員顔部に向けて吹き出すフェイス吹出口13a、乗員の足元に吹き出すフット吹出口13b、車両窓ガラスに向けて吹き出すデフロスタ吹出口13c等の吹出口が設けられている。
【0029】
図1、2から理解されるように、流量制御弁4は樹脂材料にて円柱状に成形された弁体4aを有しており、弁体4aには温水流量制御用の制御流路170が形成されており、この制御流路170の詳細は後述する。また、流量制御装置3は、やはり樹脂にて成形された弁ハウジング14とを有している。この弁ハウジング14のうち、略円筒状に成形された第1収納部14a内に円柱状弁体4aが回動可能に配置され、収納されている。従って、弁体4aは回動可能なロータとして構成されている。
【0030】
また、弁ハウジング14には、第1収納部14aに隣接して、圧力応動弁6を収納する第2収納部14bが一体成形されている。圧力応動弁6は第2収納部14bに対して図1の上下方向にリフト可能に配置され、収納されている。
そして、これら第1、第2収納部14a、14bの上部開口端部には、図2に示す樹脂製の蓋板14cがねじ(図示せず)等により脱着可能に取付られており、この蓋板14cにより第1、第2収納部14a、14bの上部開口端部が密封されている。
【0031】
上記弁ハウジング14のうち、第1収納部14aには、エンジン1からの温水が流入する第1温水入口パイプ19、この温水入口パイプ19から流入した温水を熱交換器7に向けて流出させる第1温水出口パイプ20、及び熱交換器7のバイパス回路5に向けて温水を流出させるバイパス用開口21が一体成形されている。
【0032】
ここで、本例では、第1収納部14aの円周面に第1温水入口パイプ19とバイパス用開口21とを、略直交する位置関係で配置するとともに、第1温水出口パイプ20は、第1収納部14aの軸方向の一端面(図2の底面側)に配置してある。
さらに、第2収納部14bには、熱交換器7から流出した戻り温水が流入する第2温水入口パイプ26及びエンジン1に温水を戻す第2温水出口パイプ28が一体成形されている。従って、熱交換器7のバイパス回路5は第2収納部14b内に形成されることになる。
【0033】
圧力応動弁6は、バイパス用開口21を開閉する弁体30を有し、この弁体30は円板部の中心部をバイパス用開口21側へ突出させた形状になっている。この弁体30には、コイルスプリング(ばね手段)32のばね力が閉弁方向(図1の下方)に作用している。このコイルスプリング32の上端部は座板27により支持されており、この座板27は、スプリング力により第2収納部14bの内壁面に圧着している。この座板27の中心部には円筒部27aが形成されており、この円筒部27aには弁体30と一体の軸部31の上端部が摺動可能に嵌合して、弁体30の上下動を案内する。
【0034】
そして、弁体30前後の差圧、すなわち、バイパス用開口21と第2温水入口パイプ26との温水差圧が所定値に達すると、スプリング32のばね力に抗して弁体30が図1の上方へリフトして弁座33から開離し、弁体30が開弁するようになっている。ここで、弁座33はバイパス用開口21を形成する内壁面に一体成形されている。
【0035】
円柱状の弁体4aの軸方向端部(図2の上端部)には、弁体4aを回動操作するためのシャフト4bが一体に成形されている。このシャフト4bは蓋板14cを貫通して弁ハウジング14の外部に突出している。このシャフト4bの外部への突出端部にマニュアル操作用のリンクレバー(操作手段)4cの回転中心部を一体に連結し、このリンクレバー4cを周知のレバー、ワイヤ等を用いた操作力伝達機構を介して、図示しない空調操作パネルのマニュアル式の温度調整部材に連結するようにしてある。
【0036】
これにより、車室内の計器盤近傍に設置される空調操作パネルの温度調整部材(具体的にはレバー部材、ダイヤル部材等)を乗員が手動操作することにより、弁体4aを回動操作することができる。
40、41、42はゴム等の弾性材からなるシール部材で、その全体形状は図4に示すように矩形状に成形されており、その中央部に穴部40a、41a、42aを有している。これらのシール部材のうち、シール部材40、42は円柱状弁体4aの外周面と弁ハウジング14の第1収納部14aの内周面との間に配置されており、また、シール部材41は、弁体4aと第1収納部14aの相互の軸方向の一端面間に配置されている。
【0037】
このシール部材40、41、42は弁体4aの制御流路170を介することなく、直接パイプ19、20、バイパス用開口21間で温水が流通してしまうことを防ぐとともに、上記穴部40a、41a、42aと弁体4aの制御流路170との連通形状により温水流路の絞りを構成するものである。
本実施形態では、上記弁体4aの開度(弁体回転角)に応じて、制御流路170により図5に示す所定の相関関係を持って各パイプ19、20、バイパス用開口21の開口面積A1、A2、A3を制御するように構成してある。ここで、A1は第1温水入口パイプ19の開口面積であり、A2は第1温水出口パイプ20の開口面積であり、A3はバイパス用開口21の開口面積である。
【0038】
この図5に示す相関関係を実現するために、上記弁体4aの制御流路170とシール部材40、41、42の穴部40a、41a、42aの具体的形状は図6に示すごとく設定されている。
図6(a)は図2の矢印B方向からみたシール部材41の穴部41aと制御流路170の開口形状を示し、図6(b)は弁体4aの円周面の展開形状を示し、図6(c)は弁体4aの軸方向中央位置における断面形状を示している。そして、図6では、弁体開度を0°から95°までの9段階に変化させた場合における、制御流路170と各穴部40a、41a、42aとの連通状態の変化を示している。
【0039】
図6(b)、(c)および図1に示すように、弁体4aの円周面には、制御流路170の入口側開口部171、171aおよびバイパス側開口部172を配置し、この入口側開口部171、171aおよびバイパス側開口部172により温水入口パイプ19及びバイパス用開口21の開口面積A1、A3を調整する。
この入口側開口部171、171aは、シール部材40の円形の穴部40a(図4参照)との連通形状を変化させるものであって、入口側開口部171は図示のごとき嘴状の細長開口部分171′を有する形状であり、弁体開度が30°を超えると嘴状の細長開口部分171′の先端部分から穴部40aに連通するようになっている。また、入口側開口部171aはφ2相当の微小の円形穴形状であり、弁体開度が0の時(暖房停止時)にも穴部40aに連通するようになっている。この入口側開口部171aは弁体開度が40°を超えると、穴部40aとの連通を遮断する。
【0040】
また、バイパス側開口部172は長方形の一辺を円弧状にした形状であり、一方、このバイパス側開口部172が連通するシール部材42の穴部42aは円形の一部に凹部を形成した形状になっており、この穴部42aの凹部は、弁体開度が最大暖房能力位置の開度(95°)およびその近傍になったとき、入口側開口部171aと穴部42aとの連通を防止するためのものである。
【0041】
また、弁体4aの軸方向の一端面には、制御流路170の出口側開口部として2個の開口部173、173a(図6(a)、図1参照)を配置し、この出口側開口部173、173aにより温水出口パイプ20の開口面積A2を調整する。この出口側開口部173、173aはシール部材41の穴部41aとの連通形状を変化させるものであって、この穴部41aは、図4、図6(a)に示すように、弁体4aの回動中心を通過する細長形状であり、弁体4aの回動中心部位は一段と細くした形状にしてある。
【0042】
一方、弁体4aの出口側開口部173、173aは、弁体4aの最大冷房位置(弁体開度=0°)において、前記穴部41aを中間に挟むように配置されている。そして、この2個の出口側開口部173、173aのうち、1つの開口部173のみに、弁体4aが所定開度以下の小流量制御域の回動位置(例えば弁体開度=40°以下の開度位置)にあるとき、穴部41aと連通する微小開口部173′を形成している。
【0043】
以上の説明から理解されるように、弁体4aの入口側開口部171、171aとシール部材40の穴部40aとにより、温水入口パイプ19からの温水の絞り部(第1の絞り部)を形成し、弁体4aの出口側開口部173、173aとシール部材41の穴部41aとにより、温水出口パイプ20への温水の絞り部(第2の絞り部)を形成し、弁体4aのバイパス側開口部172とシール部材42の穴部42aとにより、バイパス用開口21への絞り部(第3の絞り部)を形成している。図4、5において、符号A1〜A3はこの各絞り部の開口面積を示す。
【0044】
なお、図2、3において、暖房用熱交換器7は、その下方部に温水の入口側タンク7aを有し、その上方部に温水の出口側タンク7bを有しており、そしてこの上下の両タンク7a、7bの間に、多数の並列配置された偏平チューブとコルゲートフィンとからなるコアー部7cが形成されている。ここで、コアー部7cは入口側タンク7aから出口側タンク7bへの一方向のみに温水が流れる一方向流れ(全パス)タイプとして構成されている。
【0045】
なお、図示しないが、本発明による流量制御弁4および圧力応動弁6を熱交換器7に予め一体化しておいて、その後にこれらの一体構造物を空気通路(通風ダクト)9に対して組み付けるようにして、組付性の向上、熱交換器部分の形状の小型化を図ってもよい。
次に、上記構成において作動を説明する。いま、空調操作パネルのマニュアル式の温度調整部材により流量制御弁4の弁体4aが最大暖房位置(最大開度の位置)に回動操作されると、本例では弁体4aが図5、6に示す弁開度:95°の位置まで回動される。
【0046】
これにより、弁体4aの制御流路170の入口側開口部171が温水入口パイプ19のシール部材40の穴部40aと最大面積で重畳するとともに、制御流路170の出口側開口部173、173aが温水出口パイプ20のシール部材41の穴部41aと最大面積で重畳し、この両パイプ19、20を全開する。一方、制御流路170のバイパス側側開口部172はバイパス用開口21のシール部材42の穴部42aと連通しないので、バイパス用開口21は全閉状態となる。
【0047】
その結果、エンジン1からの温水は最大流量で熱交換器7側に流入して、バイパス回路5には温水が流れない。これにより、熱交換器7は最大暖房能力を発揮できる。
次に、最大冷房時(自動車用空調装置に冷房機能が装備されていないときは、送風のみの暖房停止時となる)には、流量制御弁4の弁体4aが温度調整部材により開度零の位置(具体的には図5、6の弁体開度:0°の位置)まで回動される。この開度零の位置では、弁体4aの制御流路170のバイパス側側開口部172の大部分がバイパス用開口21のシール部材42の穴部42aと重畳してこのバイパス用開口21を開口する。また、制御流路170の出口側開口部173、173aが温水出口パイプ20のシール部材41の穴部41aと連通せず,温水出口パイプ20を全閉する。
【0048】
一方、制御流路170の入口側開口部171、171aにおいては、図6(b)の最上部に示すように、入口側開口部171aのみが温水入口パイプ19のシール部材40の穴部40aと重畳して連通する。これにより、温水入口パイプ19を全閉とせず、入口側開口部171aによりφ2丸穴相当の最小開口面積を設定する。
【0049】
上記の弁体位置により、温水入口パイプ19からバイパス用開口21への温水の流れを継続できるので、温水の流れの急遮断によるウオータハンマ現象の音の発生を防止できるとともに、φ2丸穴相当以上の開口面積の確保により流水音の発生も防止できる。
また、温水回路中の鋳砂は通常、φ1以下の微小物であるので、上記大きさの最小開口を設定することにより、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0050】
次に、微少能力時には、弁体4aが図5の弁体開度30°以下の位置に回動されるので、制御流路170の入口側開口部171aと出口側開口部173の微小開口部173′が温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の双方の穴部40a、41aに対して小面積で重畳し、温水入口パイプ19の開口面積A1及び温水出口パイプ20の開口面積A2を双方とも絞っている2段絞りの状態となる。しかも、温水入口パイプ19と温水出口パイプ20の絞り部の中間部(図1の中間流路174部)は全開状態にあるバイパス用開口21によって十分大きな開口面積A3でバイパス回路5に連通しているので、この中間流路174の圧力を下げることができる。
【0051】
その結果、暖房用熱交換器7前後の差圧を十分小さくできるので、弁開度(弁体回転角)の変化に対する温水流量の変化(最終的には車室内への吹出空気温度の変化)を、特別小さな開口面積を必要とせずに、緩やかすることができる。すなわち、吹出空気温度の制御ゲインを低減できる。
この制御ゲインの低減により、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できるとともに、温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の開口面積を特別小さな開口面積に設定する必要がなくなるため、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0052】
次に、中間能力時においては、弁体4aが図5の弁体開度30°〜60°の回動範囲にわたって、回動され、この弁体回動範囲では、温水入口側絞り部開口面積A1および温水出口側絞り部開口面積A2がほぼ同等の大きさで増加するとともに、バイパス側絞り部開口面積A3が次第に減少する。これにより、暖房用熱交換器7への温水流量を増加させて、吹出空気温度を次第に高める。
【0053】
このような弁体回動位置においても、上記2段絞りにより、同様に制御ゲインを低減して、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できる。また、絞り部開口面積の増加により、鋳砂等の異物による流路閉塞の恐れがなくなるので、この状態では、温水入口側の絞り部開口面積A1と温水出口側の絞り部開口面積A2を同等に設定してある。
【0054】
次に、中間能力時〜大能力時においては、弁体4aが図5の弁開度60°を越える回動位置から95°未満の回動位置にわたって、回動されることにより、上記両開口面積A1、A2がさらに増加するとともに、バイパス側絞り部開口面積A3が減少する。これにより、暖房用熱交換器7への温水流量をさらに増加させて、吹出空気温度を高める。
【0055】
ところで、車両用空調装置の温水供給源をなすエンジン1とウオータポンプ2は、自動車の走行条件の変化に伴って回転数が大幅に変化するので、エンジン1からの温水供給圧は走行条件の変化により大幅に変化し、これが流量制御弁4による温水流量制御、ひいては吹出空気温度調整に対する大きな外乱要素となる。そこで、本実施形態にあっては、暖房用熱交換器7のバイパス回路5に圧力応動弁6を設けている。この圧力応動弁6においては、エンジン1からの温水供給圧が上昇して、弁体30前後の差圧がスプリング32により定まる所定圧より高くなると、弁体30が図1の上方へ移動して開弁し、弁体30と弁座33との間の隙間が上記差圧に応じて変動することより、圧力応動弁6はその弁体30前後の圧力差を一定値に維持するように作用する。
【0056】
このような圧力応動弁6の作用により、エンジン1からの温水供給圧の変化による暖房用熱交換器7への温水流量の変動を抑制することができる。
しかし、空調ユニット8において内外気切替箱10が外気導入状態(外気モード)に設定されているときは、車速の変化に基づくラム圧の変化により空気通路9内への外気導入量が変化するので、このことも外乱要素となって吹出空気温度が変動する。
【0057】
図7は本発明者らの実験による外気導入量増加のデータであり、横軸は車速およびラム圧をとり、縦軸に外気導入量の増加分をとっている。図7に示すように例えば、車速=60km/hにて、外気導入量の増加分が30m3 /hとなる。図8は上記ラム圧による吹出空気温度の変動を示すグラフであり、縦軸に吹出空気温度をとり、横軸に車速V、エンジン回転数Neおよびラム圧による風量増加分(外気導入量の増加分)をとっている。図8において、Loは空調ユニット8の送風機11の風量が150m3 /hとなる小風量状態であり、Meは送風機11の風量が300m3 /hとなる中風量状態であり、Hiは送風機11の風量が400m3 /hとなる大風量状態である。
【0058】
小風量状態Loの場合が最もラム圧による風量増加分の割合が高くなり、吹出空気温度の変動幅が大きくなる。それ故、図8のグラフは小風量状態Loにおける吹出空気温度の変動だけを示しており、0〜150km/hの車速変化により最大10°Cの変動幅が発生する。
そこで、本実施形態においては、この圧力応動弁6の開度目標値を以下のごとく設定することにより、エンジン回転数変動に基づく温水圧力変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動、およびラム圧の変動に基づく外気導入量の変動に起因する熱交換器吹出空気温度の変動をともに低減することができる。
【0059】
以下、この点について詳述すると、外気モード時に、車速が所定量変化(具体的には、停車時(アイドル時)から150km/hの車速変化)したとき、これに対応して発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa1とし、
内気モード時に、車速が所定量変化(具体的には、停車時(アイドル時)から150km/hの車速変化)したとき、これに対応して発生するエンジン1の回転数変動(具体的には、アイドル時の750rpmから4000rpmの回転数変動)に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分をΔTa2としたとき、
ΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、前記エンジン回転数変動範囲(具体的には、アイドル時の750rpmから4000rpmの回転数変動)における、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定している。このような開度目標値の設定は、例えば、コイルスプリング32のばね定数(N/mm)の調整により行うことができる。
【0060】
図9は、上記のように開度目標値を設定した圧力応動弁6を有する温水式暖房装置による効果を示す実験データのグラフであり、実験条件は図8中に示す通りである。
図9において、圧力応動弁6の無い場合は、線▲1▼に示すように、車速:0〜250km/h(エンジン回転数:750rpm〜6000rpm)の変化により、内気モード時における吹出空気温度Taが30°Cから54°Cまで上昇して、その変動幅ΔTaは+24°Cに達する。
【0061】
次に、線▲2▼は、圧力応動弁6を設けるとともに、この圧力応動弁6の開度目標値を、内気モード時に車速(エンジン回転数)の上昇による温水圧力上昇に起因する熱交換器吹出空気温度Taの上昇を相殺するように設定(上昇幅=0°C)した場合を示しており、この場合は、内気モード時には吹出空気温度Taの変動を防止できるものの、外気モード時には車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分だけ、吹出空気温度Taが低下してしまう。具体的には、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが20°Cまで低下し、その変動幅ΔTaは−10°Cに達する。
【0062】
次に、線▲3▼は圧力応動弁6を設けるとともに、圧力応動弁6の開度目標値を車速(ラム圧)の上昇による外気導入量の増加分を相殺する値に設定した場合である。つまり、線▲3▼は▲2▼の場合よりも、圧力応動弁6の開度目標値を減少(温水バイパス量を減少)させた場合であり、この場合は外気モード時には、ラム圧による吹出空気温度Taの低下を防止できるものの、内気モード時には、ラム圧による外気導入量の増加が発生しないので、エンジン回転数の上昇による温水圧力の上昇が原因となって、熱交換器吹出空気温度Taが上昇してしまう。具体的には、上記の車速、エンジン回転数の変化に対して、吹出空気温度Taが40°Cまで上昇し、その変動幅ΔTaは+10°Cに達する。
【0063】
これに対して、本実施形態によると、前述のごとく、ΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定しているため、外気モード時には、線▲4▼に示すように、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが25°Cまで低下し、その変動幅ΔTaは−5°Cに抑制することができる。
【0064】
一方、内気モード時には、線▲5▼に示すように、上記の車速、エンジン回転数の上昇に対して、吹出空気温度Taが35°Cまで上昇し、その変動幅ΔTaは+5°Cに抑制することができる。
以上の結果、本実施形態によると、車速:0〜250km/h(エンジン回転数:750rpm〜6000rpm)の広範な変化に対して、吹出空気温度Taの変動幅ΔTaを内気モード、外気モードとも、±5°C以内の僅少値に抑制することができ、マニュアル方式の温度調整であっても、乗員が頻繁な温度調整操作を行う必要がない。
【0065】
なお、本実施形態では、前述のΔTa2がΔTa1の略1/2となるように、圧力応動弁6の開度目標値(すなわち、吹出空気温度変動の吸収目標値)を設定することにより、内気モード、外気モードとも、吹出空気温度変動を±5°C以内の僅少値に抑制しているが、本発明はこのような設定の仕方に限定されるものではなく、前述のΔTa2がΔTa1に対して1/4〜3/4の範囲となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定してもよい。
【0066】
例えば、ΔTa2をΔTa1の1/4となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定した場合は、図9の実験において、外気モード時の変動幅ΔTa=7.5°Cとなり、内気モード時の変動幅ΔTa=2.5°Cとなる。
また、ΔTa2をΔTa1の3/4となるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定した場合は、図9の実験において、外気モード時の変動幅ΔTa=2.5°Cとなり、内気モード時の変動幅ΔTa=7.5°Cとなる。
【0067】
従って、このような設定としても、比較例の特性(図8の▲2▼、▲3▼の特性)に比較して、変動幅ΔTaを低減でき、有利である。
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、圧力応動弁6の開度目標値を流量制御弁4の弁体4aの開度(図5、6参照)と関係なく、ΔTa2とΔTa1とが所定関係となるように設定しているが、第2実施形態は、流量制御弁4の弁体4aの開度に関連して、圧力応動弁6の開度目標値を切り替えるようにしたものである。
【0068】
車両用空調装置における内気モードは、冷房熱負荷を低減するために、通常、夏期の冷房時(熱交換器吹出空気温度の低温領域)に使用され、一方、外気モードは窓ガラスの曇り止めのため、通常、冬期の暖房時(熱交換器吹出空気温度の高温領域)に使用される。
図10は、第2実施形態による流量制御弁4の弁体4a開度と、吹出空気温度との関係(温度制御特性)を示すグラフであり、本発明者らの検討によれば、図10において、流量制御弁4の弁体開度が30°未満であると内気モードの使用頻度が大となり、そして、流量制御弁4の弁体開度が30°以上になると外気モードの使用頻度が大となる。
【0069】
そこで、上記内外気モードの切替特性に注目して、第2実施形態では、流量制御弁4の弁体開度が30°未満である冷房側領域では、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定する。
これに対して、流量制御弁4の弁体開度が30°以上である暖房側領域では、外気モードにおける車速が所定量変化したときに発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を切替設定する。
【0070】
図11および図12は上記のように、流量制御弁4の弁体開度に関連して、圧力応動弁6の開度目標値を切り替えるための具体例を示すものであって、図11(a)は流量制御弁4の弁体開度=20°における流量制御弁4の状態を示すもので、この状態では弁体4aの制御流路170における入口側開口部171aを通って温水入口19からの温水がパイパス側開口部172および出口側開口部173、173aへ流れる。
【0071】
入口側開口部171aは前述したようにφ2の円形穴からなる小断面積のものであるため、この入口側開口部171aからは高い速度でもって温水が噴出する。動圧は速度の2乗に比例するため、この噴出温水の動圧は十分高いものとなる。そこで、この噴出温水の主流が圧力応動弁6の弁体30側に向くように、入口側開口部171aの方向を設定する。これにより、入口側開口部171aからの噴出温水の動圧を有効利用して、圧力応動弁6の弁体開度(弁体リフト量)を増大させて、圧力応動弁6の開度目標値を大きめに設定する。
【0072】
換言すれば、入口側開口部171aからの噴出温水の動圧を有効利用して、内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収できるだけの開度目標値を設定する。
この結果、図11(b)の実験結果▲6▼に示すように、エンジン回転数:750rpm〜6000rpmの回転数変動に対して、内気モードにおける、吹出空気温度の変動ΔTaをほぼ零にすることができる。
【0073】
一方、図12(a)は流量制御弁4の弁体開度=40°における流量制御弁4の状態を示すもので、この状態では入口側開口部171aが閉塞され、その代わりに弁体4aの制御流路170における嘴状の入口側開口部171が開口する。温水入口19からの温水は、嘴状入口側開口部171を通って制御流路170の中間流路174に入り、バイパス側開口部172および出口側開口部173、173aへ流れる。
【0074】
このような温水の流れ経路においては、嘴状入口側開口部171と中間流路174とのつなぎ部175の円弧形状の曲率により温水の流れの主流の方向が大きく変化する。
そこで、本実施形態では、このつなぎ部175の円弧形状の曲率を非常に小さくする(例えば、曲率R=0.5mm)ことにより、嘴状入口側開口部171から中間流路174に流入する温水の流れを矢印Cのように中間流路174の内壁面176に向けて、温水の主流が圧力応動弁6の弁体30に直接向かわないようにする。
【0075】
この結果、温水の動圧が圧力応動弁6の弁体30に対して直接的に作用せず、圧力応動弁6の弁体開度(弁体リフト量)を減少させて、圧力応動弁6の開度目標値を小さめに設定でき、圧力応動弁6による温水バイパス流量を減少できることになる。これにより、ラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分ΔTa(図12(b)の▲7▼参照)を吸収できるように、圧力応動弁6の開度目標値を設定できる。
【0076】
つまり、上記のように、圧力応動弁6の開度目標値を設定すると、流量制御弁4の弁体開度=40°において、もし、内気モードで使用すると、図12(b)の▲8▼に示すように、エンジン回転数変動による吹出空気温度の変動分ΔTa=+10°Cが発生することになるが、流量制御弁4の弁体開度=40°では、通常、外気モードで使用されるので、エンジン回転数変動によるΔTa=+10°Cが丁度ラム圧変化によるΔTa=−10°Cを相殺できる。
【0077】
この結果、流量制御弁4の弁体開度が30°以上である暖房側領域では、外気モードにおけるラム圧変化による吹出空気温度の変動分を吸収できるのである。因みに、つなぎ部175の円弧形状の曲率を図12(c)のごとく大きくすると、このつなぎ部175の円弧形状に沿って、矢印Dのように、温水の主流が圧力応動弁6の弁体30側に直接向かうようになり、圧力応動弁6の開度目標値が大きくなって、温水バイパス量が増加してしまう。それ故、ラム圧変化による吹出空気温度の変動分を十分吸収できないという結果を招く。
【0078】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、円柱状弁体4aをマニュアル式の温度調整部材による手動操作力にて回転駆動しているが、円柱状弁体4aの弁体作動手段をサーボモータのような電気的アクチュエータにより構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す温水回路図で、流量制御弁と圧力応動弁とを一体化した流量制御装置の断面構造図を含む。
【図2】図1のA−A矢視断面図を含む温水回路図である。
【図3】本発明の第1実施形態における空調ユニット部の通風系断面図を含む温水回路図である。
【図4】本発明の第1実施形態における流量制御弁の弁体部分の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態における流量制御弁の開度特性を示すグラフである。
【図6】(a)は流量制御弁の弁体とシール部材の開口形状を示す底面図、(b)は流量制御弁の弁体の円周面展開図、(c)は流量制御弁の弁体とシール部材の断面図である。
【図7】ラム圧変動による外気導入量増加を示すグラフである。
【図8】ラム圧変動による吹出空気温度の変動を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態および比較品における吹出空気温度と車速およびエンジン回転数との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態における流量制御弁の弁体開度と吹出空気温度との制御特性を示すグラフである。
【図11】(a)は本発明の第2実施形態における流量制御弁の開口部形態を示す温水回路図で、流量制御弁開度=20°の状態を示す。(b)は(a)の状態における内気モードでの吹出空気温度変動を示すグラフである。
【図12】(a)は本発明の第2実施形態における流量制御弁の開口部形態を示す温水回路図で、流量制御弁開度=40°の状態を示す。(b)は(a)の状態における内外気モードでの吹出空気温度変動を示すグラフ、(c)は比較例の弁体形状を示す断面図である。
【図13】本発明による課題解決の考え方を説明する説明図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…ウォータポンプ、4…流量制御弁、4a…弁体、
5…バイパス回路、6…圧力応動弁、7…暖房用熱交換器、9…空気通路。
Claims (10)
- 水冷式の走行用エンジン(1)と、このエンジン(1)により駆動されるウォータポンプ(2)とを備え、
前記エンジン(1)にて加熱された温水を前記ウォータポンプ(2)にて温水回路に循環するようにした車両に適用される温水式暖房装置であって、
内気を導入する内気モードと外気を導入する外気モードとを切替可能な空気通路(9)と、
この空気通路(9)内に設置され、前記温水と空気とを熱交換して空気を加熱する暖房用熱交換器(7)と、
この暖房用熱交換器(7)をバイパスして温水を流すバイパス回路(5)と、
このバイパス回路(5)に設けられ、前記エンジン(1)から供給される温水の圧力上昇に応じて、前記バイパス回路(5)の開度を増大する圧力応動弁(6)と、
前記エンジン(1)から前記暖房用熱交換器(7)に供給される温水流量を制御して、前記暖房用熱交換器(7)の吹出空気温度を調整する流量制御弁(4)とを備え、
前記外気モード時に、車速が所定量変化したときに発生するラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する前記吹出空気温度の変動分をΔTa1とし、
前記内気モード時に、車速が前記所定量変化したとき、これに対応して発生する前記エンジン(1)の回転数変動に基づく温水圧力の変化に起因する前記吹出空気温度の変動分をΔTa2としたとき、
前記ΔTa2が前記ΔTa1の1/4〜3/4の範囲内となるように、
車速が前記所定量変化したときに発生する前記エンジン(1)の回転数変動範囲における、前記圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することを特徴とする車両用温水式暖房装置。 - 前記圧力応動弁(6)は、前記バイパス回路(5)の開度を調整する弁体(30)と、この弁体(30)にばね力を作用させるばね手段(32)とを有しており、
前記圧力応動弁(6)の開度目標値が前記ΔTa2と前記ΔTa1との関係を満足するように、前記ばね手段(32)のばね定数が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用温水式暖房装置。 - 前記流量制御弁(4)は、前記エンジン(1)から前記暖房用熱交換器(7)に供給される温水流量を制御するとともに、前記エンジン(1)からの温水を前記暖房用熱交換器(7)側と前記バイパス回路(5)側とに切り替える3方弁タイプとして構成されており、
前記圧力応動弁(6)の開度目標値が前記ΔTa2と前記ΔTa1との関係を満足するように、前記流量制御弁(4)を通して前記圧力応動弁(6)に加わる温水の動圧を前記流量制御弁(4)により設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用温水式暖房装置。 - 前記流量制御弁(4)は、前記エンジン(1)からの温水が流入する温水入口(19)と、前記暖房用熱交換器(7)に温水を供給する温水出口(20)と、前記バイパス回路(5)に連通するバイパス開口(21)と、これら温水入口(19)、温水出口(20)およびバイパス開口(21)が設けられたハウジング(14)とを備えており、
このハウジング(14)内に、前記温水入口(19)から前記温水出口(20)に供給される温水の流れおよび前記温水入口(19)から前記バイパス開口(21)に供給される温水の流れを制御する制御流路(170)を設けた弁体(4a)を収納し、
前記制御流路(170)に、前記温水入口(19)の開口面積を絞る入口側開口部(171、171a)と前記温水出口(20)の開口面積を絞る出口側開口部(173、173a)とを備え、
この入口側開口部(171、171a)と出口側開口部(173、173a)との間の中間流路(174)を前記バイパス開口(21)に連通させるようにし、
さらに、前記ハウジング(14)内に、前記バイパス回路(5)および前記圧力応動弁(6)を収納したことを特徴とする請求項3に記載の車両用温水式暖房装置。 - 前記ΔTa2が前記ΔTa1の略1/2となるように、車速が前記所定量変化したときに発生する前記エンジン(1)の回転数変動範囲における、圧力応動弁(6)の開度目標値を設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用温水式暖房装置。
- 水冷式の走行用エンジン(1)と、このエンジン(1)により駆動されるウォータポンプ(2)とを備え、
前記エンジン(1)にて加熱された温水を前記ウォータポンプ(2)にて温水回路に循環するようにした車両に適用される温水式暖房装置であって、
内気を導入する内気モードと外気を導入する外気モードとを切替可能な空気通路(9)と、
この空気通路(9)内に設置され、前記温水と空気とを熱交換して空気を加熱する暖房用熱交換器(7)と、
この暖房用熱交換器(7)をバイパスして温水を流すバイパス回路(5)と、
このバイパス回路(5)に設けられ、前記エンジン(1)から供給される温水の圧力上昇に応じて、前記バイパス回路(5)の開度を増大する圧力応動弁(6)と、
前記エンジン(1)から前記暖房用熱交換器(7)に供給される温水流量を制御して、前記暖房用熱交換器(7)の吹出空気温度を調整する流量制御弁(4)とを備え、
この流量制御弁(4)の開度が所定開度未満となる小開度領域においては、前記内気モードにおけるエンジン回転数の変動に基づく温水圧力の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収するように、前記圧力応動弁6の開度目標値を設定し、
前記流量制御弁(4)の開度が所定開度以上となる大開度領域においては、前記外気モードにおけるラム圧変化に基づく外気導入量の変化に起因する吹出空気温度の変動分を吸収するように、前記圧力応動弁6の開度目標値を設定することを特徴とする車両用温水式暖房装置。 - 前記流量制御弁(4)は、前記エンジン(1)から前記暖房用熱交換器(7)に供給される温水流量を制御するとともに、前記エンジン(1)からの温水を前記暖房用熱交換器(7)側と前記バイパス回路(5)側とに切り替える3方弁タイプとして構成されており、
前記流量制御弁(4)は、前記エンジン(1)からの温水が流入する温水入口(19)と、前記暖房用熱交換器(7)に温水を供給する温水出口(20)と、前記バイパス回路(5)に連通するバイパス開口(21)と、これら温水入口(19)、温水出口(20)およびバイパス開口(21)が設けられたハウジング(14)とを備えており、
このハウジング(14)内に、前記温水入口(19)から前記温水出口(20)に供給される温水の流れおよび前記温水入口(19)から前記バイパス開口(21)に供給される温水の流れを制御する制御流路(170)を設けた弁体(4a)を収納し、
前記弁体(4a)の制御流路(170)には、前記温水入口(19)からの温水が流入する入口側開口部(171、171a)と、この入口側開口部(171、171a)に流入した温水を前記温水出口(20)側に流出させる出口側開口部(173、173a)と、前記入口側開口部(171、171a)に流入した温水を前記バイパス開口(21)側に流出させるバイパス側開口部(172)とを備え、
前記入口側開口部には、前記弁体(4a)の開度が小さいときに、前記温水入口(19)と連通する小開度側の部分(171a)と、前記弁体(4a)の開度が大きいときに、前記温水入口(19)と連通する大開度側の部分(171)が備えられており、
前記小開度領域においては、前記小開度側の部分(171a)を通して温水が前記出口側開口部(173、173a)および前記バイパス側開口部(172)に流れ、
前記大開度領域においては、前記大開度側の部分(171)を通して温水が前記出口側開口部(173、173a)および前記バイパス側開口部(172)に流れることを特徴とする請求項6に記載の車両用温水式暖房装置。 - 前記小開度領域における前記圧力応動弁6の開度目標値を、前記小開度側の部分(171a)から噴出する温水の主流が前記圧力応動弁(6)に設けられた弁体(30)側に向くことにより設定し、
前記大開度領域における前記圧力応動弁6の開度目標値を、前記大開度側の部分(171)から噴出する温水の主流が前記圧力応動弁(6)の弁体(30)とは異なる方向に向くことにより設定したことを特徴とする請求項7に記載の車両用温水式暖房装置。 - 前記流量制御弁(4)の弁体(13)に、前記バイパス側開口部(172)および前記バイパス開口(21)側に向くように微小の円形穴からなる入口側開口部(171a)を設け、この入口側開口部(171a)にて前記小開度側の部分を構成し、
前記流量制御弁(4)の弁体(13)に、嘴状の細長開口部分(171′)を有する入口側開口部(171)を設け、この嘴状の入口側開口部(171)にて前記大開度側の部分を構成したことを特徴とする請求項7または8に記載の温水式暖房装置。 - 前記流量制御弁(4)の開度を乗員のマニュアル操作にて調整することが可能なマニュアル方式の操作手段(4c)を備えていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用温水式暖房装置。
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