JP3578143B2 - 自動車用空調装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、暖房用熱交換器に供給される温水流量を制御する流量制御弁を備え、暖房用熱交換器として、温水の入口側タンクから温水の出口側タンクに向かって一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプを用いた自動車用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用空調装置の吹出空気の温度制御方式として、暖房用熱交換器への温水流量を制御して、吹出空気温度を制御する方式のものが知られている。この温水流量制御方式は、冷風と温風の混合割合をエアミックスダンパにより制御して、吹出空気温度を制御するエアミックス方式に比して、次のごとき利点を有している。
【0003】
すなわち、温水流量制御方式では、エアミックス方式における冷風と温風を混合するための混合空間を必要としないので、その分通風ダクト系の容積を小型化でき、また同時に混合空間の廃止により通風抵抗を低減して、送風機電力及び送風騒音の低減を図ることができる等の利点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、暖房用熱交換器として、温水の入口側タンクから温水の出口側タンクに向かって一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプを用いた場合、その吹出空気温度の分布は、図2の温度幅領域Tに示すように、暖房用熱交換器の入口側が最も高温となり、出口側へ行くにつれて吹出温度が低下する分布となる。
【0005】
従って、暖房用熱交換器の下流側において、上記入口側から出口側へ複数の吹出口を順次配置した場合、複数の吹出口から同時に空調風を吹き出すときには、複数の吹出口からの吹出空気の温度差が過度に大きくなりすぎてしまうという問題が発生する。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、暖房用熱交換器として、温水の入口側タンクから温水の出口側タンクに向かって一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプを用いたとしても、吹出空気の温度差が過度に大きくなりすぎることを防止できる自動車用空調装置の実現を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
すなわち、請求項1記載の発明では、温水供給源(1)から暖房用熱交換器(3)に供給される温水流量を制御するための流量制御弁(4)と、暖房用熱交換器(3)を通過して温度制御された空調風を、車室内の複数部位に向けて吹き出す複数の吹出口(9、11、12)とを備え、暖房用熱交換器(3)は、温水の入口側タンク(3a)から温水の出口側タンク(3b)への一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプとして構成されており、複数の吹出口(9、11、12)は、暖房用熱交換器(3)の下流側において、上記入口側から上記出口側へ順次配置されており、入口側タンク(3a)と通風ダクト(8)との間に形成され、暖房用熱交換器(3)をバイパスする空気が流れるバイパス風路(8a)と、バイパス風路(8a)を開閉するダンパ(8b)とを備え、複数の吹出口(9、11、12)から同時に空調風を吹き出すときに、ダンパ(8a)を開くことを特徴としている。
【0009】
このような構成によると、複数の吹出口(9、11、12)から同時に空調風を吹き出すときにおいても、ダンパ(8b)を開くことにより、冷風を暖房用熱交換器(3)の上記入口側に直接流入させ、その結果として、複数の吹出口(9、11、12)からの吹出空気の温度差が過度に大きくなりすぎることを防止できる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0011】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図11は本発明の第1実施形態を示すものである。1は自動車走行用の水冷式エンジン、2はエンジン1により駆動されるウオータポンプで、エンジン1の冷却水回路(温水回路)に水を循環させるものである。3はエンジン1から供給される温水と送風空気とを熱交換して、送風空気を加熱する暖房用熱交換器(ヒータコア)、4は本発明による流量制御弁で、温水出入口を3つ有する三方弁タイプのものであり、その詳細構造は後述する。
【0013】
5は暖房用熱交換器3と並列に設けられたバイパス路、6は定差圧弁(圧力応動弁)であり、その前後の差圧が予め定めた所定値に達すると開弁するものであって、エンジン1の回転数変動によりウオータポンプ2の吐出圧が変動しても、暖房用熱交換器3の前後圧を一定に近づける役割を果たすものである。7は温度センサで、熱交換器3が設置される自動車用空調装置の通風ダクト(ヒータケース)8(図2参照)内において、熱交換器3の空気下流側で、かつ車室内への各種吹出口9〜12の分岐点直前の部位に設置される。この温度センサ7は、サーミスタよりなり、車室内に吹き出す温風温度を検出するものである。
【0014】
図2において、吹出口9は車室内の乗員顔部に向けて空気を吹き出す上方(フェイス)吹出口であり、吹出口10は自動車前面窓ガラスに空気を吹き出して窓ガラスの曇りを除去するデフロスタ吹出口であり、吹出口11は前席乗員の足元に空気を吹き出す前席用足元吹出口であり、吹出口12は後席乗員の足元に空気を吹き出す後席用足元吹出口である。
【0015】
13は車室内温度制御の目標温度(乗員の希望温度)を設定するための温度設定器で、乗員により手動操作可能なスイッチ、あるいは可変抵抗器等よりなる。14は外気温度、温水温度、日射量等の車室内温度制御に関係する環境因子の物理量を検出するセンサ群である。15はこれらのセンサ7、14及び温度設定器13等からの入力信号に基づいて温度制御信号を出力する空調制御装置で、マイクロコンピュータ等よりなる。
【0016】
16はこの空調制御装置15からの温度制御信号により制御されるサーボモータで、流量制御弁4の弁体17を回転駆動するための弁体作動手段を構成する。ここで、弁体作動手段としては、サーボモータ16のような電気的アクチュエータに限らず、周知のレバー、ワイヤ等を用いた手動操作機構であってもよい。図3は流量制御弁4を示すもので、上記弁体17は本例では樹脂材料にて円柱状形状に成形され、やはり樹脂にて円筒状に成形された弁ハウジング18内に回動可能に配置され、収納されている。従って、弁体17は回動可能なロータである。
【0017】
上記弁ハウジング18には、エンジン1からの温水が流入する温水入口パイプ19、この温水入口パイプ19から流入した温水を熱交換器3に向けて流出させる温水出口パイプ20、及び熱交換器3のバイパス回路5に向けて温水を流出させるバイパス出口パイプ21が一体成形されている。円柱状の弁体17には、上記各パイプ19、20、21の開口面積を後述の所定の相関関係を持って調整する制御流路17a、17bが形成されている。22は弁体17を回動操作するためのシャフトで、弁体17に一体に結合されている。このシャフト22は弁ハウジング18の外部に突出するようになっており、そして前記したサーボモータ16のような電気的アクチュエータ、またはレバー、ワイヤ等を用いた手動操作機構に連結され、これらの機器により弁体17を回動操作できるようにしてある。
【0018】
23、24はゴム等の弾性材からなるシール部材で、その全体形状は中央部に開口を有する矩形状になっており、弁体17の外周面と弁ハウジング18の内周面との間に配置されている。このシール部材23、24は弁体17の制御流路17a、17bを介することなく、直接パイプ19、20、21間で温水が流通してしまうことを防ぐためのものであり、本例では温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20に対応して2箇所設けているが、バイパス出口パイプ21にも対応して設けてもよい。
【0019】
本発明では、上記弁体17の開度(弁体回転角)に応じて、制御流路17a、17bにより図4に示す所定の相関関係を持って各パイプ19、20、21の開口面積を制御するように構成してある。この図4に示す相関関係を実現するために、上記弁体17の制御流路17a、17bの具体的形状は図6(b)の展開図に示す形状に形成されている。
【0020】
なお、図6(b)の展開図において、制御流路17aのうち、温水入口パイプ19と対向しない部分17a′及び制御流路17bのうち、バイパス出口パイプ21と常に対向したままとなる部分17b′は弁体17の樹脂成形上の理由から設けているだけのものであって、弁体17の機能上必要なものではない。図4において、留意すべき特徴事項としては、次の点がある。
【0021】
▲1▼非暖房時(自動車用空調装置に冷房機能が装備されているときは、最大冷房時となる)に温水入口パイプ19を全閉とせず、φ2丸穴相当の最小開口を設定して、温水入口パイプ19からバイパス出口パイプ21への温水の流れを継続するようにしているので、温水の流れの急遮断によるウオータハンマ現象の音の発生を防止できるとともに、φ2丸穴相当の開口面積の確保により流水音の発生も防止できる。
【0022】
また、温水回路中の鋳砂は通常、φ1以下の微小物であるので、上記大きさの最小開口を設定することにより、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0023】
▲2▼微少能力時(弁開度10°以下、本例では弁開度は最大60°に設定)には、温水入口パイプ19の開口面積及び温水出口パイプ20の開口面積を双方とも絞っている2段絞りの状態(図1の微少能力時はその2段絞りの状態を模式的に示す)になっており、かつ温水入口パイプ19と温水出口パイプ20の絞り部の中間(図1のア部)は全開状態にあるバイパス出口パイプ21によって十分大きな開口面積でバイパス回路5に連通しているので、暖房用熱交換器3前後の差圧を十分小さくできる。
【0024】
その結果、弁開度(弁体回転角)の変化に対する温水流量の変化(最終的には車室内への吹出空気温度の変化)を、特別小さな開口面積を必要とせずに、緩やかすることができる。このことが制御ゲインの低減である。この制御ゲインの低減により、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できるとともに、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0025】
また、温水入口パイプ19の絞り部開口面積を温水出口パイプ20の絞り部開口面積の2倍程度に設定することにより、温水入口パイプ19からバイパス出口パイプ21へと流れるバイパス流の流量を増大させて、鋳砂等の異物がバイパス出口パイプ21へ流れやすくすることができ、これにより鋳砂等の異物による流路の閉塞をより一層効果的に防止できる。
【0026】
▲3▼微少能力〜大能力時においても、上記2段絞りにより、同様に制御ゲインを低減して、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できる。また、絞り部開口面積の増加により、鋳砂等の異物による流路閉塞の恐れがなくなるので、この状態では、温水入口パイプ19の絞り部開口面積と温水出口パイプ20の絞り部開口面積は同等に設定してある。
【0027】
図7はバイパス回路5に設置される定差圧弁(圧力応動弁)6の具体例を示すもので、2つの樹脂製ハウジング25、26をねじ等により一体に結合するとともに、両者の間に樹脂製座板27をOリング(シール材)28を介して水密的に固定してある。この座板27には十分大きな開口面積の複数の通水穴29を開けて、座板27による通水抵抗が小さくなるようにしてある。
【0028】
30は樹脂製の円錐状弁体で、これと一体になっている軸部31により座板27の中心穴部に軸方向に移動可能に嵌合している。弁体30は座板27との間にコイルスプリング(ばね手段)32が介在されており、このスプリング32により弁体30は常に図の左方側(閉弁方向)に押圧され、ハウジング25の内周に形成された弁座33に当接するようになっている。
【0029】
上記弁体30の円錐状部の外周にはリング状の溝部が形成されており、この溝部にはゴム等の弾性材からなるシール材34を配設し、弁体30の閉弁時のシール効果を高めるようにしてある。そして、ハウジンク25に形成した入口35と、ハウジンク26に形成した出口36との圧力差が所定値に達すると、スプリング32の力に抗して弁体30が図の右方へ移動して、弁体30が開弁するようになっている。なお、エンジン1のアイドル時(エンジン回転数が最も低いとき)にも最大暖房能力確保のために必要な温水流量が十分得られる場合には、弁体30の円錐状部に複数の貫通穴(バイパス穴)37を設けて、閉弁時にもこの穴37を通して温水が流通するようにしてもよい。
【0030】
前述した図2において、暖房用熱交換器3は、その下方部に温水の入口側タンク3aを有し、その上方部に温水の出口側タンク3bを有しており、そしてこの上下の両タンク3a、3bの間に、多数の並列設置された偏平チューブとコルゲートフィンとからなるコアー部3cが形成されている。ここで、コアー部3cは入口側タンク3aから出口側タンク3bへの一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプとして構成されている。
【0031】
従って、その吹出口空気温度の分布は、図2の温度幅領域Tに示すように熱交換器下方部が最も高温となり、上方部へ行くにつれて吹出温度が低下する分布となる。具体的には、最下方部で45°C、最上方部で25°C程度の吹出温度幅が生じる。上記吹出口空気温度の分布に従って、高温の吹出空気温度が必要な後席用足元吹出口12を最も下方に配置し、上方へ順次、前席用足元吹出口11、デフロスタ吹出口10、上方吹出口9を配置している。熱交換器3の入口側タンク3aと通風ダクト8との間にはバイパス風路8aを形成し、この風路8aにはダンパ8bを設置し、上下の両吹出口9と11、12から同時に空調風を吹き出すバイレベルモード時にダンパ8aを開き、冷風を熱交換器3の下方側に直接流入させることにより、上下の吹出空気の温度差が過度に大きくなりすぎるのを防ぐようにしている。
【0032】
なお、図示は省略するが、本発明による流量制御弁4、定差圧弁6及びサーボモータ16を熱交換器3に予め一体化しておいて、その後にこれらの一体構造物を通風ダクト(ヒータケース)8に対して組み付けるようにして、組付性の向上、熱交換器部分の形状の小型化を図ってもよい。次に、上記構成において本実施例の作動を説明する。最大暖房能力時には、流量制御弁4の弁体17がサーボモータ16または手動操作機構により最大開度の位置(具体的には図6の弁開度:60°の位置)まで回動される。
【0033】
これにより、弁体17の制御流路17a、17bがそれぞれ弁ハウジング18の温水入口パイプ19、温水出口パイプ20と最大面積で重畳し、この両パイプ19、20を全開する。一方、バイパス出口パイプ21には制御流路17bが僅かに開口するのみで、ほとんど全閉に近い状態となる。その結果、エンジン1からの温水はほとんど熱交換器3側に流入して、バイパス回路5には僅少量の温水が流れるのみである。これにより、熱交換器3は最大暖房能力を発揮できる。このとき、温水入口パイプ19と温水出口パイプ20ととの間を最大の開口面積でもって連通しているので、鋳砂等の異物による流路閉塞、あるいは急絞りによる流水音等が発生する恐れはない。
【0034】
また、上記のごとくバイパス回路5をほとんど全閉状態とすることにより、エンジン1の放熱用ラジェータ(図示せず)への循環流量を確保できる。次に、非暖房時(自動車用空調装置に冷房機能が装備されているときは、最大冷房時となる)には、流量制御弁4の弁体17がサーボモータ16または手動操作機構により開度零の位置(具体的には図6の弁開度:0°の位置)まで回動される。この開度零の位置では、弁体17の制御流路17bがバイパス出口パイプ21に重畳してこのパイプ21を全開し、温水出口パイプ20を全閉する。
【0035】
一方、制御流路17aは図6(b)の最上部に示すように、その右端部の突出部のみが温水入口パイプ19と重畳して、温水入口パイプ19を全閉とせず、φ2丸穴相当の最小開口面積を設定する。上記の弁体位置により、温水入口パイプ19からバイパス出口パイプ21への温水の流れを継続できるので、温水の流れの急遮断によるウオータハンマ現象の音の発生を防止できるとともに、φ2丸穴相当以上の開口面積の確保により流水音の発生も防止できる。
【0036】
また、温水回路中の鋳砂は通常、φ1以下の微小物であるので、上記大きさの最小開口を設定することにより、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。また、上記のごとく温水入口パイプ19の開口面積を、φ2丸穴相当の最小開口面積に設定することにより、エンジン1の放熱用ラジェータ(図示せず)への循環流量を確保できる。
【0037】
次に、微少能力時には、弁体17が図6の弁開度10°以下の位置に回動されるので、制御流路17a、17bが温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の双方に対して小面積で重畳し、温水入口パイプ19の開口面積及び温水出口パイプ20の開口面積を双方とも絞っている2段絞りの状態(図1の微少能力時はその2段絞りの状態を模式的に示す)となり、かつ温水入口パイプ19と温水出口パイプ20の絞り部の中間部(図1のア部)は全開状態にあるバイパス出口パイプ21によって十分大きな開口面積でバイパス回路5に連通しているので、この中間部アの圧力を下げることができる。
【0038】
その結果、暖房用熱交換器3前後の差圧を十分小さくできるので、弁開度(弁体回転角)の変化に対する温水流量の変化(最終的には車室内への吹出空気温度の変化)を、特別小さな開口面積を必要とせずに、緩やかすることができる。すなわち、吹出空気温度の制御ゲインを低減できる。この制御ゲインの低減により、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できるとともに、温水入口パイプ19及び温水出口パイプ20の開口面積を特別小さな開口面積に設定する必要がなくなるため、鋳砂等の異物による流量制御弁流路の閉塞を十分防止できる。
【0039】
また、温水入口パイプ19の絞り部開口面積を温水出口パイプ20の絞り部開口面積の2倍程度に設定することにより、温水入口パイプ19からバイパス出口パイプ21へと流れるバイパス流の流量を増大させて、鋳砂等の異物がバイパス出口パイプ21へ流れやすくすることができ、これにより温水出口パイプ20の絞り部を形成する制御流路17bに滞留しようとする異物も上記バイパス流で洗い流すことができ、鋳砂等の異物による流路の閉塞をより一層効果的に防止できる。
【0040】
次に、微少能力〜大能力時においては、弁体17が図6の弁開度10°を越える回動位置から60°未満の回動位置にわたって、回動されることになるが、このような弁体回動位置においても、上記2段絞りにより、同様に制御ゲインを低減して、車室内への吹出空気温度をきめ細かく制御できる。また、絞り部開口面積の増加により、鋳砂等の異物による流路閉塞の恐れがなくなるので、この状態では、温水入口パイプ19の絞り部開口面積と温水出口パイプ20の絞り部開口面積を同等に設定してある。
【0041】
ところで、自動車用空調装置の温水供給源をなすエンジン1は、自動車の走行条件の変化に伴って回転数が大幅に変化するので、エンジン1からの温水供給圧は走行条件の変化により大幅に変化し、これが流量制御弁4による温水流量制御、ひいては吹出空気温度制御に対する大きな外乱要素となるが、本発明にあっては、エンジン1からの温水供給圧の変化による温水流量の変動をバイパス回路5への定差圧弁6の設置により良好に解消している。
【0042】
すなわち、定差圧弁6においては、エンジン1からの温水供給圧が上昇して、弁体30前後の差圧がスプリング32により定まる所定圧より高くなると、弁体30が図7の右方へ移動して開弁し、弁体30と弁座33との間の隙間が上記差圧に応じて変動することより、定差圧弁6はその出入口35、36間の圧力差を一定値に維持するように作用する。
【0043】
これにより、熱交換器4に加わる温水圧力を、エンジン1からの温水供給圧の変動にかかわらず、一定値に維持でき、エンジン1からの温水供給圧の変化による温水流量の変動を防止できる。
【0044】
次に、上記第1実施例に基づく実験結果について説明すると、図8は縦軸に開口面積(mm2)及び丸穴相当面積をとり、横軸に弁体開度をとったもので、A1は温水入口パイプ19の絞り開口面積で、A2は温水出口パイプ20の絞り開口面積で、A3はバイパス出口パイプ21の絞り開口面積である。
【0045】
次に、図9は本発明による温度制御の制御ゲイン低減効果を示すもので、縦軸は熱交換器3の吹出空気温度をとり、横軸は温水出口パイプ(熱交換器入口への流路)の絞り部の開口面積A2をとったものである。
【0046】
この図9において、T1は温水出口パイプ20への流路のみを絞る1段絞りの流量制御弁を使用した場合の特性で、T2は温水入口パイプ19への流路と温水出口パイプ20への流路の双方を絞る2段絞りの流量制御弁を使用した場合の特性で、T3は温水出口パイプ20への流路のみを絞る1段絞りとバイパス回路とを組み合わせた流量制御弁を使用した場合の特性で、T4は温水入口パイプ19への流路と温水出口パイプ20への流路の双方を絞る2段絞りとバイパス回路とを組み合わせた本発明の流量制御弁を使用した場合の特性である。
【0047】
図9からわかるように、本発明によれば、制御ゲインをT4の特性のように低減できるので、熱交換器3の吹出空気温度が15°Cのとき、開口面積A2を28.8mm2(φ6丸穴相当)まで拡大できる。因みに、通常の自動車用空調装置で採用されている1段絞りの流量制御弁では開口面積A2が3mm2(φ1.9丸穴相当)という小面積となってしまい、弁体開度の調整による制御可能な最小温度幅(温度制御の分解能)が大きくなるので、きめ細かい温度制御が不能となる。
【0048】
また、吹出空気温度が7°Cのときでも、本発明では、開口面積A2を4.2mm2(φ2.3丸穴相当)の大きさを確保できる。因みに、通常の1段絞りの流量制御弁では開口面積A2が1mm2(φ1.9丸穴相当)という小面積となってしまい、鋳砂等の異物による流路閉塞が発生しやすい。また、1段絞りとバイパス回路とを組合せた場合の特性(T3)と比較しても、本発明のものは温度制御の制御ゲインを十分低減できる。
【0049】
以上のように本発明では、温度制御の制御ゲインを十分低減できることから、きめ細かい温度制御と鋳砂等の異物による流路閉塞防止の両立を良好に達成できるのである。
【0050】
図10は流量制御弁で発生する流水音の聴感フィーリングの実験結果を示すもので、縦軸は聴感フィーリングの判定レベルをとり、横軸は流量制御弁の種類T1〜T4をとっている。ここで、流量制御弁の種類T1〜T4は前記図9のT1〜T4と同じであり、T4は本発明品である。
【0051】
また、図10の流水音聴感フィーリングの実験はサンプル人員4名で、聴感フィーリングの判定レベルは、以下のように設定した。
【0052】
すなわち、1:流水音が非常に大きく、非常に気になる。
【0053】
2:流水音が大きく、気になる。
【0054】
3:流水音が小さく、若干気になる。
【0055】
4:流水音が非常に小さく、気にならない。
【0056】
5:流水音無く、気にならない。
【0057】
そして、エンジン回転数がアイドル回転数のときと、4000rpmのときの両方において、聴感フィーリングの官能評価の実験を行った。図10の黒丸は4000rpmのとき、また白丸はアイドル回転数のときの聴感フィーリングを示している。
【0058】
図10では、判定レベル4以上を許容レベルとしており、本発明品(T4)では、アイドル回転数のときと、4000rpmのときの両方において、聴感フィーリングが許容レベル以上であることがわかる。図11はエンジン回転数変動(エンジン1からの温水供給圧変動)による吹出空気温度変動の低減効果を示すもので、流量制御弁の弁体開度を吹出空気温度25°C設定の位置に操作した場合に、エンジン回転数Neを1000rpm〜4000rpmの範囲で変動させて、熱交換器吹出空気温度の変動幅を測定したものである。
【0059】
図11のイは本発明において、バイパス回路5に定差圧弁6を設けない場合で、上記変動幅は14.7°Cとなるが、バイパス回路5に定差圧弁6を設けることにより、ロに示すように上記変動幅を4.2°Cという僅少値に抑制できる。このように、本発明において、定差圧弁6の付加によりエンジン回転数変動による吹出空気温度の変動を効果的に低減できることがわかる。
【0060】
本発明は上記第1実施形態に限定されることなく、請求項記載の技術的思想の趣旨に従って種々変形可能なものであり、以下他の例について述べる。
【0061】
(第2実施形態)
図12に示すように、温水入口、出口パイプ19、20を同一水平面上に設置するに対して、バイパス出口パイプ21を上記水平面の直角方向に配設するようにしたものである。弁体17には、バイパス出口パイプ21への流路開口面積制御のための制御流路17cを追加形成してある。
【0062】
(第3実施形態)
第2実施形態をさらに変形したもので、バイパス出口パイプ21を、弁ハウジング18において温水出口パイプ20と同じ側で、かつ温水出口パイプ20の下方側に配設するようにしたものである。
【0063】
(第4実施形態)
上述の第1〜第3実施形態は弁体17を回動操作する回転式のロータとして構成しているが、第4実施形態は図14に示すように、弁体17を往復動するタイプに構成しても、本発明は実施できる。
【0064】
すなわち、図14において、弁ハウジング18に対して3つのパイプ19、20、21は図12と同じ配置で設けてあり、そして弁体17はハウジング18内に上下方向に往復動可能に収容されている。サーボモータ16を用いた弁体駆動機構が弁ハウジング18に一体化されており、サーボモータ16の回転はその回転軸に形成されたウォーム16aにより平歯車40に伝達される。ここで、平歯車40は駆動機構ケース41内に回転可能に配設されているが、弁体17の軸方向には移動しないように配設されている。
【0065】
また、平歯車40はその内周部には雌ねじ40aが形成されており、この雌ねじ40aに弁体17のシャフト22に形成した雄ねじ22aがかみ合っている。従って、サーボモータ16の回転により、ウォーム16a、平歯車40、雌ねじ40a、雄ねじ22aのかみ合い機構を介して、弁体17が上下方向に往復動して、各パイプ19、20、21への流路開口面積を制御できる。
【0066】
(第5〜第9実施形態)
図15は温水回路の変形に関する第5〜第9実施形態を示すもので、(a)は図1のバイパス回路5から定差圧弁6を廃止した第5実施形態である。
【0067】
(b)は流量制御弁4により開閉制御される第1のバイパス回路5の他に、流量制御弁4により開閉制御されない第2のバイパス回路5aを追加し、この第2のバイパス回路5aは常にエンジン1に並列に接続しておき、この第2のバイパス回路5aに定差圧弁6を設置するようにした第6実施形態である。
【0068】
(c)は定差圧弁6を設置した第1のバイパス回路5の他に、流量制御弁4により開閉制御されない第2のバイパス回路5aを追加し、この第2のバイパス回路5aは常にエンジン1に並列に接続するようにした第7実施形態である。
【0069】
(d)は定差圧弁6を設置した第1のバイパス回路5の他に、流量制御弁4により開閉制御されない第2のバイパス回路5aを追加し、この第2のバイパス回路5aにも定差圧弁6aを設置するようにした第8実施形態である。
【0070】
(e)は流量制御弁4を熱交換器3の温水出口側に設置した第9実施形態で、図3の温水入口パイプ19が熱交換器3の温水出口側に接続され、温水出口パイプ20はエンジン1のウォータポンプ2の吸入側に接続され、そしてバイパス出口パイプ21は本例ではバイパス入口パイプとなり、このバイパス入口パイプ21がバイパス回路5の出口側に接続される。
【0071】
この第9実施形態では、非暖房時に、温水入口パイプ19を全閉するとともに、温水出口パイプ20を最少開口面積で開口し、そしてバイパス入口パイプ21を全開するようにすれば、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0072】
上記図15(a)〜(e)に示す種々の温水回路においても、本発明の特徴とする温度制御のゲイン低減効果と、鋳砂等の異物による弁流路の閉塞防止効果を良好に発揮できる。
【0073】
(第10実施形態)
図16は前述した図8と同様の弁体17の開度特性を示すグラフであって、この第10実施形態では温水入口パイプ19の開口面積A1を、弁体開度が零から所定期間(例えば0°〜8°の期間)の間、最少開口面積(例えば、14mm2)の一定値に維持したままにしたものである。このように、本発明では、弁体開度の変化に対して、各部開口面積A1、A2、A3を連続的に変化させずに、弁体開度の所定期間において一定値のまま維持するようにしても実施できる。
【0074】
(第11実施形態)
図17は流量制御弁4のバイパス出口パイプ21に接続されたバイパス回路5に定差圧弁(均圧弁)6を持つバイパス回路5cを設けるとともに、このバイパス回路5Cと並列に常時開放のバイパス回路5dを設けたものである。上記定差圧弁6は、前述の図7に示す定差圧弁6においてバイパス穴37を廃止したもので、他の点は図7のものと同じである。
【0075】
定差圧弁6を持つバイパス回路5cは、エンジン回転数変動による温水流量変動に基づく熱交換器3の吹出空気温度の変動を吸収するためのものであり、一方常時開放のバイパス回路5dは、流量制御弁4による吹出空気温度制御の制御ゲインを低減するためのものである。ここで、定差圧弁6を持つバイパス回路5cは上記目的のために定差圧弁6の全開時には、その通水抵抗がバイパス回路5dの通水抵抗より小となるように設定してある。
【0076】
上記第11実施形態による効果を図18に基づいて説明すると、図18の縦軸、横軸は前述の図9と同じであり、エンジン回転数が1500rpmのときの実験データである。
【0077】
図18において、S1は図1の温水回路からバイパス回路5をなくした比較例の制御特性である。S2は図1の温水回路(第1実施形態)の制御特性で、定差圧弁6がほとんど閉弁状態に近い状態にあるときの特性を示す。S3は本第11実施形態の制御特性で、定差圧弁6がやはりほとんど閉弁状態に近い状態にあるときの特性を示す。S4は図1の温水回路のバイパス回路5から定差圧弁6を除去し、バイパス回路5を常時開放のままとした場合の制御特性である。なお、S4のような温水回路も本発明ではその実施形態の1つとして含む。
【0078】
温度制御の制御ゲインを低減するという目的のみからみると、S4の特性が最も優れていることになるが、S4の場合には、バイパス回路5に定差圧弁6を設けていないため、エンジン回転数の変動に対しては、前述の図11に示す吹出空気温度特性がイの特性となってしまい、吹出空気温度の変動が大きくなる。これに対し、本第11実施形態によるS3の場合には、図11においてロの特性となり、エンジン回転数の変動に対する吹出空気温度の変動を僅少値に抑制できるという特徴がある。
【0079】
つまり、本第11実施形態によれば、温度制御の制御ゲインを低減することと、エンジン回転数の変動に対する吹出空気温度の変動を抑制することの両方を良好に両立させることができる。
【0080】
(第12実施形態)
図19は第11実施形態を変形した第12実施形態を示すもので、図17の常時開放のバイパス回路5dの機能を定差圧弁6の内部に一体に設けたものである。すなわち、円錐状弁体30と弁座33とをバイパスする複数の連通穴(バイパス穴、バイパス連通手段)38をハウジング25に形成したものである。
【0081】
(第13実施形態)
図20は図19をさらに変形した第13実施形態を示すもので、弁座33の円周方向に複数のスリット39(バイパス連通手段)を形成して、バイパス回路5dの機能を得るようにしたものである。また、図7の定差圧弁6のように、弁体30の円錐状部に複数の貫通穴(バイパス穴)37を設けて、バイパス回路5dの機能を得るようにしてもよい。
【0082】
(第14実施形態)
図21、図22は第14実施形態を示すもので、弁体17の作動範囲(弁開度)を図6、8の60°から90°に拡大するとともに、弁体17の制御流路17a、17bの形状(弁体17の円周面における開口形状)を、それぞれ半円状部分17a−1、17b−1と、この半円状部分17a−1、17b−1の弦の中心部に結合された細長部分17a−2、17b−2とから構成される形状にしている。
【0083】
この細長部分17a−2、17b−2は、その先端側(図示右側)になるに従って細くなる(開口面積が小となる)ように形成されている。
【0084】
図23は、図22に示す開口形状を持った制御流路17a、17bを有する弁体17の開度特性を示すもので、前述の図8、16に対応するものである。
【0085】
図24は、上記図21、22に示す弁体17を用いた第14実施形態の温度制御特性を示すもので、本発明者らが実際に実験し、測定したものである。
【0086】
図24の縦軸は各部の温度(°C)をとり、横軸は弁体17の開度(°)をとったものである。
【0087】
そして、図24における温水入口温度は、図25に示す暖房用熱交換器3の温水入口側タンク3aに流入する温水の温度であり、温水出口温度は暖房用熱交換器3の温水出口側タンク3bから流出する温水の温度である。また、H/C入口側吹出空気温度は暖房用熱交換器3のコアー部3cにおいて温水入口側部位(図25の上半部)の吹出空気温度であり、H/C出口側吹出空気温度は暖房用熱交換器3のコアー部3cにおいて温水出口側部位(図25の下半部)の吹出空気温度である。
【0088】
また、図24の吸込空気温度は暖房用熱交換器3への吸込空気の温度である。図24の実験結果から理解されるように、第14実施形態のものでは、自動車用空調装置において実際によく使用される15°C〜50°Cの温度制御域の吹出空気温度特性が比較的急に立った特性となっている。このように、実際によく使用される温度制御域の特性が立った特性になってしまうと、実際の使用時に、弁体の開度変化に対する吹出空気温度の変化量が大となり、車室温度の制御がしにくくなるという問題を生じる。
【0089】
上記第14実施形態において、実際によく使用される温度制御域の制御特性が立った特性になる理由は、本発明者らの実験、研究によれば、弁体17が開度零の状態から開度が増大にするにつれて、温水入口パイプ19の絞り開口面積A1および温水出口パイプ20の絞り開口面積A2がともに連続的に増大し(図23参照)、その結果熱交換器3への流入温水量が連続的に増加するためであることが判明した。
【0090】
(第15実施形態)
図26〜図29は第15実施形態を示すもので、この第15実施形態は上記第14実施形態の温度制御特性を改善するための具体例を示すものであって、弁体17の制御流路17a、17bを構成する穴形状を工夫したものである。
【0091】
図26、27に示すように、本実施形態では、温水入口パイプ19に対向する、弁体17の制御流路17aのうち、細長部分17a−2の長さを上記第14実施例より短くしている。具体的には、弁体17の開度が0°から20°の所定角度(開度)範囲では、この細長部分17a−2が温水入口パイプ19に開口しない程度まで短くしてある。
【0092】
その代わりに、φ2程度の小さな円形の小穴17a−3を設け、弁体17の開度が零から所定の範囲(図27の例では0°〜20°の範囲)では、制御流路17aのうち小穴17a−3のみが温水入口パイプ19に開口するようにしてある。従って、この所定の範囲の間は小穴17a−3による一定の開口面積が維持されることになる。
【0093】
そして、弁体17の開度が20°を越えると、制御流路7aの細長部分17a−2が温水入口パイプ19に開口し、さらに弁体開度が増大すると、半円状部分17a−1が温水入口パイプ19に開口して開口面積が急増するようにしてある。
【0094】
一方、制御流路17bは上記第14実施形態と同一形状であって、半円状部分17b−1と、この半円状部分17b−1の弦の中心部に結合された細長部分17b−2とから構成されている。
【0095】
上記の両細長部分17a−2、17b−2は、その先端側(図示右側)になるに従って細くなる(開口面積が小となる)ように形成されている。
【0096】
そして、制御流路17bは、弁体17が開度零の状態から僅少量(図27の例では開度10°)作動したとき、温水出口パイプ20に開口し、その後弁体17の開度の増大につれて、温水出口パイプ20との開口面積が増大するように構成されている。
【0097】
また、制御流路17bは、弁体17が開度零の状態では最大の開口面積でバイパス出口パイプ21に開口し、その後弁体17の開度が増大するつれてバイパス出口パイプ21への開口面積が次第に減少し、弁体17の開度が最大開度(図27の例では90°)になると、換言すれば弁体17が最大暖房位置に操作されると、制御流路17bとバイパス出口パイプ21との開口面積が零となり、バイパス回路5側への温水流出を防止する。これと同時に、制御流路17aおよび制御流路17bがそれぞれ温水入口パイプ19、温水出口パイプ20に最大の開口面積が開口するので、最大暖房能力を良好に確保できる。
【0098】
図28は、制御流路17aと温水入口パイプ19との開口面積A1、制御流路17bと温水出口パイプ20との開口面積A2、および制御流路17bとバイパス出口パイプ21との開口面積A3が弁体開度により変化する状況を示すもので、前述の図8、16、23に対応する図である。
【0099】
図29は、上記第15実施形態による温度制御特性を示すもので、上述したように、温水入口パイプ19と、弁体17の制御流路17aとの開口面積A1を、弁体17の開度が零から所定の範囲では、小穴17a−3による一定の開口面積が維持されるようにして、熱交換器3への流入温水量の増加を抑制しているため、実用上、よく使用される15°C〜50°Cの温度領域において、吹出空気温度の制御特性を、図26の特性より大幅に傾きの小さい(寝かせた)特性にすることができた。
【0100】
そのため、弁体開度に対する吹出空気温度の変化割合が著しく減少し、吹出空気温度の調整が容易となる。
【0101】
(第16実施形態)
図30、31は、第16実施形態を示すもので、本実施形態は上記第15実施形態と同じ傾きの小さい(寝かせた)特性の温度制御特性を別のやり方で得るようにしたものである。本実施形態では、弁体17の円周面の側方に、温水入口パイプ19とシール材24を配置するとともに、この温水入口パイプ19とシール材24に対して180°対称の位置にバイパス出口パイプ21を配置する。
【0102】
そして、弁体17の底面側に温水出口パイプ20とシール材23を配置する。弁体17に形成した制御流路17aに半円状部分17a−1と細長部分17a−2の他に、小穴17a−3を設けることにより、エンジン1からの温水が流入する温水入口パイプ19の開口面積A1は、上記第15実施例と同様に、弁体17の開度が零から所定の範囲では、小穴17a−3による一定の開口面積が維持されるようにしてある。これにより、弁体開度が小さいときにおける熱交換器3への流入温水量の増加を抑制できる。
【0103】
一方、弁体17の底面側に配置した温水出口パイプ20(熱交換器3の入口に接続)の開口面積A2は、図31(a)に示すように、弁体17の底面に形成した制御流路17bと弁ハウジング8側のシール材23に形成した絞り穴部23aとにより、上記第15実施例と同様の変化を示すようになっている。
【0104】
すなわち、弁体17の開度が零のときは、温水出口パイプ20の開口面積A2は零となり、そして弁体17が開度零の状態から僅少量(図31の例では開度10°)作動したとき、温水出口パイプ20が開口し、その後弁体17の開度の増大につれて、温水出口パイプ20の開口面積A2が増大するように構成されている。
【0105】
図31(a)の例では、弁体17の底面に形成した制御流路17bは2つの略勾玉形状の穴から構成されており、またシール材23の絞り穴部23aは中央部の幅を狭くした略長方形の穴から構成されている。
【0106】
また、弁体17の制御流路17aの左側方には、制御流路17cが連続して形成されており、この制御流路17cによりバイパス出口パイプ21の開口面積A3は弁体開度に対して上記第15実施例と同様の変化(図28参照)を示すようになっている。
【0107】
本第16実施形態は、上記構成を有することにより、上記第15実施形態と同様の、図29に示す良好な温度制御特性が得られる。
【0108】
(第17実施形態)
図32、33は第17実施形態を示すもので、前記第15実施形態における小穴17a−3を廃止し、その代わりに制御流路17aの細長部分17a−2を、一定の開口幅で、かつ所定値以上の長さを持つ形状に形成してある。
【0109】
これにより、図33(b)に示すように、弁体17の開度が30°に到達するまでの間は、温水入口パイプ19の開口面積A1が上記細長部分17a−2により一定に維持されるようにしたものである。
【0110】
他の点は第15実施形態と同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す温水回路図である。
【図2】暖房用熱交換器の空調装置通風ダクト内への配置形態を示す断面図である。
【図3】流量制御弁の断面図である。
【図4】流量制御弁の流量制御特性をまとめた表である。
【図5】(a)、(b)は流量制御弁の弁体(ロータ)単体の正面図、A−A断面図である。
【図6】(a)、(b)は流量制御弁の弁体(ロータ)単体の断面図、展開図である。
【図7】(a)、(b)は定差圧弁の断面図で、(a)は(b)のB−B断面図である。
【図8】流量制御弁の弁体(ロータ)の開度特性を示すグラフである。
【図9】流量制御弁による温度制御のゲイン低減効果を示すグラフである。
【図10】流量制御弁による流水音聴感フィーリングを示すグラフである。
【図11】エンジン回転数の変動と吹出し空気温度との関係を示すグラフである。
【図12】(a)、(b)は本発明流量制御弁の第2実施形態を示す断面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図13】本発明流量制御弁の第3実施形態を示す断面図である。
【図14】(a)は本発明流量制御弁の第4実施形態を示す断面図で、(b)は(a)の歯車機構部の斜視図である。
【図15】(a)〜(e)は本発明の第5〜第9実施形態を示す温水回路図である。
【図16】本発明の第10実施形態を示すもので、流量制御弁の弁体(ロータ)の開度特性を示すグラフである。
【図17】本発明の第11実施形態を示す温水回路図である。
【図18】第11実施形態の温水回路による温度制御のゲイン低減効果を示すグラフである。
【図19】本発明の第12実施形態を示す定差圧弁の断面図である。
【図20】(a)、(b)は本発明の第13実施形態を示す定差圧弁の断面図で、(a)は(b)のD−D断面図である。
【図21】本発明の第14実施形態を示すもので、(a)は流量制御弁の弁体(ロータ)単体の正面図、(b)は流量制御弁の弁体と弁ハウジングとの概略組付構造図である。
【図22】(a)は第14実施形態の流量制御弁の弁体の断面図で、図21(a)のA−A断面を示す。(b)は流量制御弁の弁体の展開図である。
【図23】第14実施形態の流量制御弁の弁体(ロータ)の開度特性を示すグラフである。
【図24】第14実施形態の流量制御弁による吹出空気温度の制御特性を示すグラフである。
【図25】図24のグラフに示す各部温度を説明するための熱交換器斜視図である。
【図26】本発明の第15実施形態を示すもので、(a)は流量制御弁の弁体(ロータ)単体の正面図、(b)は流量制御弁の弁体と弁ハウジングとの概略組付構造図である。
【図27】(a)は第15実施形態の流量制御弁の弁体の断面図で、図26(a)のA−A断面を示す。(b)は流量制御弁の弁体の展開図である。
【図28】第15実施形態の流量制御弁の弁体(ロータ)の開度特性を示すグラフである。
【図29】第15実施形態の流量制御弁による吹出空気温度の制御特性を示すグラフである。
【図30】本発明の第16実施形態を示すもので、(a)、(b)は流量制御弁の弁体と弁ハウジングとの概略組付構造図である。
【図31】(a)は第16実施形態の流量制御弁の弁体の断面図で、図30(a)のA−A断面を示す。(b)は流量制御弁の弁体の展開図である。
【図32】本発明の第17実施形態を示すもので、(a)は流量制御弁の弁体(ロータ)単体の正面図、(b)は流量制御弁の弁体と弁ハウジングとの概略組付構造図である。
【図33】(a)は第17実施形態の流量制御弁の弁体の断面図で、図32(a)のA−A断面を示す。(b)は流量制御弁の弁体の展開図である。
【符号の説明】
1…エンジン、
3…暖房用熱交換器、
4…流量制御弁、
3a…入口側タンク、
3b…出口側タンク、
8a…バイパス風路、
8b…ダンパ、
9…上方吹出口、
10…デフロスタ吹出口、
11…前席用足元吹出口、
12…後席用足元吹出口。
Claims (1)
- 空気が流れる通風ダクト(8)と、
前記通風ダクト(8)内に設けられ、温水供給源(1)から供給される温水と空気とを熱交換して室内の暖房を行う暖房用熱交換器(3)と、
前記温水供給源(1)から前記暖房用熱交換器(3)に供給される温水流量を制御するための流量制御弁(4)と、
前記暖房用熱交換器(3)を通過して温度制御された空調風を、車室内の複数部位に向けて吹き出す複数の吹出口(9、11、12)とを備え、
前記暖房用熱交換器(3)は、温水の入口側タンク(3a)から温水の出口側タンク(3b)への一方向のみに温水が流れる一方向流れタイプとして構成されており、
前記複数の吹出口(9、11、12)は、前記暖房用熱交換器(3)の下流側において、前記入口側から前記出口側へ順次配置されており、
前記入口側タンク(3a)と前記通風ダクト(8)との間に形成され、前記暖房用熱交換器(3)をバイパスする空気が流れるバイパス風路(8a)と、
前記バイパス風路(8a)を開閉するダンパ(8b)とを備え、
前記複数の吹出口(9、11、12)から同時に空調風を吹き出すときに、前記ダンパ(8a)を開くことを特徴とする自動車用空調装置。
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