(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図12に基づいて説明する。図1は本発明による回転式加熱用熱交換器を備える車両用空調装置の室内空調ユニットの概略断面図を示し、図2は回転式加熱用熱交換器および温水入出用同軸2重配管部の最大冷房状態を示す要部断面図で、図3は回転式加熱用熱交換器および温水入出用同軸2重配管部の最大暖房状態を示す要部断面図である。
最初に、図1により車両用空調装置の室内空調ユニット10の概要を説明すると、室内空調ユニット部10は車室内前部の計器盤(インストルメントパネル、図示せず)内側において車両左右方向の略中央部に配置される。なお、図1における上下前後の各矢印は車両搭載状態における方向を示す。図1の紙面垂直方向が車両左右(幅)方向となる。
室内空調ユニット部10は車室内へ向かって流れる空気の通路を構成する樹脂製の空調ケース11を備えている。この空調ケース11は樹脂成形上の都合、内蔵部品の組付上の都合等から、実際には複数の分割ケース体として成形され、この複数の分割ケース体をねじやクリップ等の締結手段により一体に締結することにより空調ケース11が構成される。
そして、本実施形態では、空調ケース11のうち、車両前方側の上方部に送風機部12を一体に配置した構成になっている。この送風機部12は、遠心式の送風ファン12aをモータ(図示せず)により回転駆動するようになっている。なお、送風ファン12aの吸入口に内外気切替箱(図示せず)を接続し、この内外気切替箱からの導入空気(内気または外気)を送風ファン12aにより矢印aのように上方から下方へ向かって送風するようになっている。
空調ケース11内部のうち、車両前方側の下方部に冷却用熱交換器をなす蒸発器13が配置されている。ここで、蒸発器13の外形は矩形状の薄型形状であり、送風機部12の送風空気の全量が矢印bのように通過する。蒸発器13は、周知のように蒸気圧縮式冷凍サイクルの低圧側熱交換器であり、矢印bの通過空気から吸熱して低圧冷媒が蒸発することにより、この通過空気を冷却する。
空調ケース11の底面部の最低部位に排水口14が設けられ、この排水口14から蒸発器13で発生する凝縮水が車室外へ排水される。
そして、空調ケース11内において、蒸発器13の風下側にヒータコア15が配置されている。より具体的には、蒸発器13の車両後方側で、かつ、上方側部位にヒータコア15が配置される。ここで、ヒータコア15は、車両エンジン(図示せず)からの温水(エンジン冷却水)を熱源流体として空気を加熱する加熱用熱交換器である。
そして、ヒータコア15の外形も矩形状の薄型形状であり、その矩形状の外形の一端部15aに後述する温水入出用の同軸2重配管部16を配置している。
より具体的には、同軸2重配管部16を本実施形態ではヒータコア15の上端部15aに結合するとともに、同軸2重配管部16を車両左右方向(図1の紙面垂直方向)に延びるように配置し、かつ、同軸2重配管部16を空調ケース11の車両前方側の上方側壁面に密着配置している。これにより、ヒータコア15は同軸2重配管部16を中心として車両前後方向に回転可能になっている。
図1の例では、同軸2重配管部16を蒸発器13の上端部の後方側に隣接配置している。蒸発器13とヒータコア15の間には最大冷房用の遮風壁17が空調ケース11に一体成形されている。この遮風壁17は、蒸発器13の上端部とヒータコア15の上端部(同軸2重配管部16側の端部)15aとの間の部位から鉛直方向に垂下する板状に形成される。
この板状の遮風壁17は、車両左右方向(図1の紙面垂直方向)に対しては空調ケース11内部の全域に形成され、遮風壁17の左右両側部は空調ケース11の左右の側壁部に結合される。
この板状の遮風壁17はヒータコア15の風上側の面(図1の左側面)の全体を覆うことができるようにヒータコア15とほぼ同一面積に形成される。遮風壁17の下端部およびヒータコア15の下端部15bと、空調ケース11の底面部との間には所定の間隙が設定され、この所定の間隙によってヒータコア風上側の空気通路18が形成される。すなわち、この空気通路18はヒータコア15の回転作動領域に対して風上側の領域に形成される。
ヒータコア15は、最大冷房時には遮風壁17の風下側の面(図1の右側面)に沿った破線位置MCに回転操作される。この最大冷房位置MCでは、遮風壁17がヒータコア15の風上側の面を全閉して、蒸発器13風下側の空気がヒータコア15のコア部を通過することを阻止する。
したがって、蒸発器通過空気(冷風)の全量が矢印cのようにヒータコア15をバイパスして流れるので、最大冷房性能を発揮できる。このため、最大冷房時にはヒータコア風上側の空気通路18がヒータコアバイパス通路として作用する。
ところで、本実施形態では、遮風壁17の下端側に形成される風上側の空気通路18に対してヒータコア15の下端部(同軸2重配管部16と反対側の端部)15bが接近し、ヒータコア15の上端部(同軸2重配管部16側の端部)15aが風上側空気通路18から遠ざかるようにヒータコア15が配置されるので、ヒータコア15の下端部15bが風上側端部となり、ヒータコア15の上端部15aが風下側端部となる。
空調ケース11の内壁面においてヒータコア15の風下側部位にシールリブ20が形成される。このシールリブ20は空調ケース11の内壁面に一体成形され最大暖房時のケース側シール面を構成する。
このシールリブ20は、具体的には空調ケース11の内壁面から空調ケース11の内側へ向かって額縁状に突き出すものである。シールリブ20の額縁状の突出形状の中央部には中央開口部20aが開口している。
最大暖房時にはヒータコア15が図1の1点鎖線位置MHに回転操作され、ヒータコア15の矩形状の周縁部がシールリブ20の額縁状の突出形状に圧接する。これにより、最大暖房時には空気通路18と中央開口部20aとが直接連通するヒータコアバイパス通路が遮断され、ヒータコア15の下端部15bと空調ケース11の底面部内壁面との間から中央開口部20aへ直接向かうバイパス空気流れ(冷風流れ)cが遮断される。
このため、空調ケース11内の送風空気の全量がヒータコア15のコア部を通過して加熱されるので、最大暖房性能を発揮できる。ヒータコア15のコア部を通過した温風dはシールリブ20の中央開口部20aを通過して風下側へ流れる。
また、ヒータコア15の図1実線位置は温度制御時の中間開度(中間回転位置)の一例であり、この中間開度の操作位置であると、蒸発器通過空気(冷風)のうち、ヒータコア下方側の流れは矢印cのようにヒータコア15をバイパスして流れ、蒸発器通過空気(冷風)のうち、上方側の流れは矢印d’のようにヒータコア15を通過して流れ加熱されるので、温風dとなる。
したがって、ヒータコア15の回転位置を調整することにより、ヒータコア15をバイパスする冷風と、ヒータコア15を通過する温風との風量割合を調整して、車室内吹出空気温度を連続的に調整できる。
ヒータコア15をバイパスする冷風と、ヒータコア15を通過する温風は、いずれもシールリブ20の中央開口部20aを通過して、シールリブ20の上方領域21にて混合され、所望温度の空調風となった後に、各吹出開口部22、23、24に流入する。この吹出開口部22、23、24は、空調ケース11のうち送風機部12の車両後方側部位に配置されている。
吹出開口部22、23、24のうちデフロスタ開口部22は空調ケース11の上面部に配置され、図示しないデフロスタダクトを介して車両計器盤(インパネ)上面のデフロスタ吹出口に接続され、このデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空気を吹き出す。
吹出開口部22、23、24のうちフェイス開口部23はデフロスタ開口部22よりも車両後方側部位に配置され、図示しないフェイスダクトを介して車両計器盤の上方側部位に配置されるフェイス吹出口に接続され、このフェイス吹出口から乗員の顔部側へ空気を吹き出す。
吹出開口部22、23、24のうちフット開口部24は空調ケース11の左右両側の側壁に配置され、図示しないフットダクトを介して乗員の足元側へ空気を吹き出すものである。なお、デフロスタ開口部22、フェイス開口部23およびフット開口部24は図示しない吹出モードドアにより開閉されるようになっている。
次に、ヒータコア15の具体的構成を図2、図3により説明すると、ヒータコア15の一端側に温水出口タンク15aを配置し、ヒータコア15の他端側に温水入口タンク15bを配置している。図1〜図3では、温水出口タンク15がヒータコア15の上端部に位置し、温水入口タンク15bがヒータコア15の下端部に位置している。したがって、同軸2重配管部16は温水出口タンク15a側に配置されている。
そして、この両タンク15a、15bの間に、複数の偏平チューブ15cとコルゲート状伝熱フィン15dとの積層構造により全パスタイプ(一方向流れタイプ)の熱交換コア部15eを構成している。
ここで、複数の偏平チューブ15cは車両左右方向に1列に並んで並列配置され、全部の偏平チューブ15cの一端部(上端部)は温水出口タンク15aに連通し、他端部(下端部)は温水入口タンク15bに連通する。このため、温水は温水入口タンク15bから全部の偏平チューブ15cを並列に通過して温水出口タンク15aへと一方向に流れる。
両タンク15a、15bは、偏平チューブ15cの配列方向(車両左右方向)に細長く延びる形状になっている。空調ケース10内の送風空気は偏平チューブ15cとコルゲート状伝熱フィン15dとの間の空隙部を通過して加熱される。
ここで、温水入口タンク15bには連絡配管15fから温水が流入するようになっている。図2、図3では、温水入口タンク15b、温水出口タンク15a、偏平チューブ15c、コルゲート状伝熱フィン15dおよび連絡配管15fにより構成されるヒータコア15部分を2点鎖線で図示している。
温水入出用の同軸2重配管部16は、本実施形態では、ヒータコア15の上端側に位置する温水出口タンク15aの側方(タンク長手方向の延長方向)に配置される。この同軸2重配管部16は、固定部16aと回転部16bとに大別される。
ここで、固定部16aは、空調ケース11側に図示しないねじ止め等の取付手段により固定される固定部材である。これに対し、回転部16bはヒータコア15に接合され、ヒータコア15とともに回転する回転部材である。
固定部16aは、最小径部をなす内側固定配管25と、この内側固定配管25に対して径寸法を一段と大きくした外側固定配管26と、この外側固定配管26の外周側に配置され外側固定配管26に対して径寸法をさらに大きくした最大径部をなす円環部27とを備えている。
この固定部16aの内側固定配管25と外側固定配管26と円環部27は、ヒータコア15の回転中心軸Oを中心とする同心状に形成され、かつ、内側固定配管25→外側固定配管26→円環部27の順に径寸法が増大している。
外側固定配管26の内側に温水を流入させる入口パイプ28が、外側固定配管26に対して直交する方向(外側固定配管26の外径方向)に結合されている。この入口パイプ28は、本発明における入口部に該当するものであり、入口パイプ28には車両エンジンの温水回路の吐出側から温水がホース29を通して流入する。
内側固定配管25の内側から温水を流出させる出口パイプ30が、内側固定配管25に対して直交する方向(図2、図3の紙面垂直方向)に結合されている。この出口パイプ30は本発明における出口部に該当するものであり、図4〜図6に示すように、外側固定配管26を貫通して内側固定配管25に結合されている。内側固定配管25の温水は戻りホース31(図4〜図6)を通過して車両エンジンの温水回路に還流する。
本実施形態の固定部16aは入口パイプ28および出口パイプ30を含む全体形状を樹脂材料にて一体成形される。
一方、回転部16bは、内側回転配管32と、この内側回転配管32の外周側に所定間隔を隔てて位置する外側回転配管33と、この外側回転配管33に対して直交する方向に結合される連絡配管34とを有している。
内側回転配管32は内側固定配管25の内周側に回転可能に嵌合して内側固定配管25と一直線上に連通する。内側回転配管32の外周面と内側固定配管25の内周面との間には微小隙間35が存在する。本例では、この微小隙間35が0.3mm以下になるように、内側回転配管32の外径と内側固定配管25の内径とが設定されている。
内側回転配管32のうち、内側固定配管25と反対側の端部(図2、図3の左側端部)は温水出口タンク15aの長手方向の一端部に連通している。
図3の矢印Wは温水流れ流路を示しており、固定部16aの入口パイプ28は外側固定配管26の外周側と内側固定配管25の内周側との間の空間26aを経て、回転部16bの内側回転配管32の外周側と外側回転配管33の内周側との間の空間33aに連通している。さらに、この空間33aは連絡配管34を通してヒータコア15側の連絡配管15fの入口部に連通し、この連絡配管15fの出口部は温水入口タンク15bの長手方向の一端部に連通している。
これにより、固定部16aの入口パイプ28に流入した温水が、空間26a→空間33a→連絡配管34→連絡配管15fを経て温水入口タンク15bに流入する。この温水は温水入口タンク15b内にて複数の偏平チューブ15cに分配され、複数の偏平チューブ15cを下方から上方へと流れる。
複数の偏平チューブ15cからの温水は温水出口タンク15a内に流入して集合され、回転部16bの内側回転配管32内の空間32aを通過して固定部16aの内側固定配管25内の空間25aへ流出する。この内側固定配管25内の空間25aの温水は戻りホース31を通過して車両エンジンの温水回路に還流する。
なお、空間26a、33aは本発明における入口流路に該当するものであり、空間25a、32aは本発明における出口流路に該当するものである。
次に、同軸2重配管部16の具体的構成を説明する。図4(a)は図2におけるA−A拡大断面図であり、図4(b)は図2におけるB−B拡大断面図である。図5(a)は図3におけるC−C拡大断面図であり、図5(b)は図3におけるD−D拡大断面図である。
図6(a)、(b)は同軸2重配管部16の温度制御状態(中間回転位置)を示す断面図であり、図6(a)は図4(a)、図5(a)に対応し、図6(b)は図4(b)、図5(b)に対応するものである。
同軸2重配管構造16の入口部である入口パイプ28の温水流れ下流側部位には、外側固定配管26に流入する温水流量を調整する入口絞り機構37が設けられている。この入口絞り機構37は、外側回転配管33に一体に形成される入口開閉部38と、入口開閉部38に形成される温水流通部38aとにより構成される。
この入口開閉部38は、具体的には、外側回転配管33の温水流れ上流側端面の一部から固定部16a側(図4〜図6の紙面表面側)へ突出する断面円弧状の板形状にて形成されている。
この入口開閉部38は、同軸2重配管部16の軸方向において入口パイプ28と重合している。そして、入口開閉部38のうち入口パイプ28と重合する部位には、温水が流通する温水流通部38aが形成されている。この温水流通部38aは、具体的には、直径3mm以上の円形穴である。
さらに、入口開閉部38の円周方向位置は次のように設定してある。すなわち、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作された時には、図4(b)に示すように、入口開閉部38が入口パイプ28上に重合して、入口絞り機構37は温水流通部38aのみで連通状態となる。
これに対し、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(b)に示すように、入口開閉部38が入口パイプ28から離れた位置に移動して入口絞り機構37は全開の連通状態となる。
そして、ヒータコア15が所定回転角以上の温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(b)に示すように、入口開閉部38が入口パイプ28を半分程度開口する位置に移動して入口絞り機構37は中間開度の連通状態となるように、入口開閉部38の円周方向位置を設定してある。
外側固定配管26と外側回転配管33との嵌合部近傍には、外側回転配管33に流入する温水を遮断する入口流路開閉機構39が設けられている。
この入口流路開閉機構39は、外側固定配管26の温水流れ下流側端部に配置される固定側開口付壁部40と、外側回転配管33の温水流れ上流側端部に配置される回転側開口付壁部41と、回転側開口付壁部41に積層される弾性シール部材(パッキン)42とにより構成される。
この固定側開口付壁部40および回転側開口付壁部41はアルミニュウム等の金属や樹脂材料にて形成することができる。また、弾性シール部材42は、ゴム等の弾性材料にて形成することができる。
図7は、固定側開口付壁部40および外側固定配管27の斜視図である。円環状の固定側開口付壁部40の外周面には、外径方向に突出する4個の突起部40aが円周方向に等間隔に隔設されている。この突起部40aが外側固定配管26の温水流れ下流側端面に形成される4個の凹部26bに挿入される。これにより、固定側開口付壁部40が外側固定配管26の温水流れ下流側端部に固定される。
本例では、固定側開口付壁部40に、温水が流通する4個の固定側開口部40bを円弧状に形成している。この固定側開口部40bは固定側開口付壁部40の円周方向に等間隔に隔設されている。
回転側開口付壁部41および弾性シール部材42は、固定側開口付壁部40と同様の構成になっている。このため、図7中の括弧内に回転側開口付壁部41、弾性シール部材42および外側回転配管33に対応する符号を付し、図示を省略する。
具体的には、円環状の回転側開口付壁部41の外周面にも、外径方向に突出する4個の突起部41aが円周方向に等間隔に隔設され、この突起部41aが外側回転配管33の温水流れ上流側端面に形成される4個の凹部33bに挿入される。
また、円環状の弾性シール部材42の外周面にも、外径方向に突出する4個の突起部42aが円周方向に等間隔に隔設され、この突起部42aが外側回転配管33の4個の凹部33bに挿入される。したがって、弾性シール部材42は回転側開口付壁部41に積層される。
これにより、回転側開口付壁部41および弾性シール部材42は、外側回転配管33の温水流れ上流側端部に固定され、回転部16bの回転に伴って回転する。
さらに、回転側開口付壁部41および弾性シール部材42には、温水が流通する4個の回転側開口部41b、42bが、固定側開口付壁部40の固定側開口部40bと同形状にてそれぞれ形成されている。
固定側開口部40bおよび回転側開口部41b、42bの円周方向位置は次のように設定してある。すなわち、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40b上に重合して入口流路開閉機構39は全開の連通状態となる。
これに対し、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作された時には、図4(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40bから離れた位置に移動して入口流路開閉機構39は全閉の遮断状態となる。
そして、ヒータコア15が所定回転角以上の温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40bを半分程度開口する位置に移動して入口流路開閉機構39は中間開度の連通状態となるように、固定側開口部40bおよび回転側開口部41b、42bの円周方向位置を設定してある。
図8は、入口流路開閉機構39の拡大断面図であり、最大暖房状態を示している。図8に示すように、固定側開口付壁部40と回転側開口付壁部41は、弾性シール部材42を介して密着するように配置されている。すなわち、弾性シール部材42は入口流路開閉機構39におけるシール機構をなすものである。
弾性シール部材42の開口部42bの周縁全周には、固定側開口付壁部40側へ突出する第1リップ部42cと、回転側開口付壁部41側へ突出する第2リップ部42dとが形成されている。したがって、回転部16bの回転に伴って、弾性シール部材42の第1リップ部42cが固定側開口付壁部40の平板面と摺動する。
本例では、弾性シール部材42の第1リップ部42cに摩擦係数が小さい膜43(例えばテフロン(登録商標)製のシート等)を貼り付けることにより、弾性シール部材42の第1リップ部42cと固定側開口付壁部40の平板面とが滑らかに摺動するようになっている。
また、円環状の弾性シール部材42の外周面42eは外側回転配管33の内周面に密着し、円環状の弾性シール部材42の内周面42fは内側回転配管32の外周面に密着するようになっている。
図7では図示を省略しているが、固定側開口付壁部40の外周縁部の一部には、固定部16aの入口開閉部38が貫通する切欠部40c(図3〜図5参照)が形成されている。この切欠部40cは入口開閉部38が回転移動する範囲において円弧状に形成されている。
なお、固定側開口付壁部40を樹脂材料にて固定部16aと一体成形してもよい。また、回転側開口付壁部41をアルミニュウム等の金属で成形し、ろう付け等の手段により回転部16bに一体に接合してもよい。
ところで、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部近傍には、同軸2重配管構造16の入口部である入口パイプ28と、出口部である出口パイプ30とを直接連通するバイパス通路機構44が設けられている。
このバイパス通路機構44は、内側固定配管25に開口するバイパス穴45と、内側回転配管32に一体に形成されるバイパス穴開閉部46とにより構成される。
バイパス穴45は、内側固定配管25のうち、同軸2重配管部16の中心軸Oに対して入口パイプ28と反対側(図2、図3の上方側)の部位に配置され、直径3mm以上の円形状にて形成されている。バイパス穴開閉部46は、具体的には、内側回転配管32の温水流れ下流側端面の一部から内側固定配管25側へ突出する断面円弧状の板形状にて形成されている。
このバイパス穴45とバイパス穴開閉部46は、同軸2重配管部16の軸方向に重合して配置され、かつ、バイパス穴開閉部46の円周方向位置は次のように設定してある。すなわち、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45上に閉塞状態で重合してバイパス通路機構44が全閉の遮断状態となる。
これに対し、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作された時には、図4(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45から離れた位置に移動してバイパス通路機構44は全開の連通状態となる。
そして、ヒータコア15が所定回転角以上の温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45を半分程度開口する位置に移動してバイパス通路機構44は中間開度の連通状態となるように、バイパス穴開閉部46の円周方向位置を設定してある。
一方、回転部16bの外側回転配管33の外周面には、円環状のフランジ部47が形成されている。そして、外側回転配管33の外周面が固定部16aの外側固定配管26の内周面に回転可能に嵌合する。
そして、フランジ部47は、円環部27と、円環部27にねじ等の締結手段により一体に締結される円環状部材48とによって挟持されることによって、フランジ部47の平板面が固定部16aの円環部27の平板面に密接するようになっている。
このフランジ部47の平板面と円環部27の平板面との密接部に、Oリングを用いた外部洩れシール機構49を設けている。
この外部洩れシール機構49は、外側固定配管26内に流入した温水が外側固定配管26の内周面と外側回転配管33の外周面との嵌合部隙間を通過して同軸2重配管部16の外部へ直接洩れ出ることを防止する。
本実施形態では、ヒータコア15の各部材15a、15b、15c、15d、15fをアルミニュウム等の金属で成形して一体ろう付けにより組み立てるようになっている。そこで、回転部16bもアルミニュウム等の金属で成形して、ヒータコア15のろう付け時に回転部16bをヒータコア15に一体ろう付けするようにしている。これにより、回転部16bを効率よくヒータコア15に一体化できる。
なお、回転部16bを上記のごとく金属にて成形しているため、回転部16bは実際には複数の部材に分割して成形し、その複数の部材をろう付けにより一体に接合することが好ましい。
次に、ヒータコア15の空調ケース11への組み付け構造およびヒータコア15の回転駆動機構を説明する。図2、3に示す空調ケース11の壁面は車両左右方向の片側の壁面であり、この空調ケース11の壁面には固定部16aの円環部27の外径よりも所定量大きい内径を有する円形の貫通穴50が開けてある。
ヒータコア15には同軸2重配管部16の回転部16bが予め一体化されているので、ヒータコア15はこの回転部16bとともに空調ケース11内への組み付けを行う。具体的には、ヒータコア15の温水出口タンク15aの長手方向の他端部(図2、3の左端部、図示せず)に軸部を設けるとともに、この軸部が回転可能に嵌合する軸受け用の嵌合穴(図示せず)が空調ケース11の図示しない壁面に設けてあるので、ヒータコア15の温水出口タンク15aの長手方向の他端部の軸部を空調ケース11の軸受け用嵌合穴に回転可能に挿入する。
また、ヒータコア15の温水出口タンク15aの長手方向の一端部側に位置する回転部16bの内側回転配管32および外側回転配管33からなる2重配管部を空調ケース11の貫通穴50に挿入する。
その後に、同軸2重配管部16の固定部16aの円環部27部分を空調ケース11の外側(図2、3の右側)から貫通穴50に挿入し、固定部16aの内側固定配管25の外周面を回転部16bの内側回転配管32の内周面に、また、固定部16aの外側固定配管26の内周面を回転部16bの外側回転配管33の外周面にそれぞれ嵌合する。
そして、円環状部材48を空調ケース11の内側(図2、3の左側)から固定部16aの円環部27にねじ等の締結手段により一体に締結する。これにより、外側回転配管33の円環状フランジ部47の全周が固定部16aの円環部27と円環状部材48とによって挟持される。
なお、円環状部材48は、実際には半円環状に2分割されて形成されている。この2分割の円環状部材48が別個に固定部16aの円環部27に締結されるようになっている。
以上により、ヒータコア15の温水出口タンク15aの長手方向の両端部を空調ケース11により回転可能に支持できる。
ヒータコア15の回転駆動機構は、本例では、ヒータコア15の回転中心軸O方向において、同軸2重配管部16の反対側に設けられている。すなわち、ヒータコア15の温水出口タンク15aの長手方向の他端部に設けられる軸部(図示せず)の先端部を空調ケース11の軸受け用の嵌合穴(図示せず)から空調ケース11外部に突出させている。
そして、空調ケース11の外部に駆動用アクチュエータをなすモータ51(図1)を配置し、このモータ51の回転出力をリンク機構52(図1)を介して空調ケース11の嵌合穴から突出する温水出口タンク15aの軸部に伝達することにより、温水出口タンク15aの軸部に回転方向の力を加えるようになっている。
なお、モータ51は図示しない空調制御装置の出力側に電気接続され、空調制御装置の出力によりモータ51の回転方向及び回転量(作動角)が制御されるようになっている。
次に、本実施形態の作動を説明する。モータ51を作動させると、モータ51の回転出力によりリンク機構52を介してヒータコア15の温水出口タンク15aの軸部に回転方向の力が加わる。これにより、ヒータコア15が回転中心軸Oを中心として回転変位する。
このようにモータ51の回転によりヒータコア15が回転中心軸Oを中心として回転するから、モータ51の回転方向及び回転量(作動角)を制御することにより、ヒータコア15の回転位置を任意に制御でき、これにより、車室内吹出空気温度を調整できる。
しかも、最大冷房時には、ヒータコア15が図1の破線位置MCに回転操作されるので、図1の矢印cに示すように空調ケース11内の通路面積全体を冷風が流れる通路18として構成できる。
また、最大暖房時には、ヒータコア15が図1の1点鎖線位置MHに回転操作されるので、図1の矢印d’に示すように、空調ケース11内の通路面積全体を温風が流れる通路として構成できる。
そのため、エアミックスドアを有する通常の室内空調ユニットに比較して、最大冷房時および最大暖房時の通風抵抗の低減により冷風吹出風量および温風吹出風量を増加して、最大冷房性能および最大暖房性能を向上できる。
これに加え、本実施形態では、温水入出用の同軸2重配管部16をヒータコア15の一端部(温水出口タンク15a側端部)に構成し、この同軸2重配管部16の中心軸Oを中心としてヒータコア15を回転させるとともに、同軸2重配管部16の構成を有効活用して、ヒータコア15に流入する温水を遮断する入口流路開閉機構39を設けているので、次のごとき作用効果を発揮できる。
すなわち、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作されると、図4(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40bから離れた位置に移動して入口流路開閉機構39は全閉の遮断状態となる。
ここで、固定側開口付壁部40には弾性シール部材42の第1リップ部48が密着し、回転側開口付壁部41の回転側開口部41bの周縁全周には弾性シール部材42の第2リップ部42dが密着している。さらに、円環状の弾性シール部材42の外周面42eは外側回転配管33の内周面に密着し、円環状の弾性シール部材42の内周面42fは内側回転配管32の外周面に密着している。
そのため、固定部16aの外側固定配管26から回転部16bの外側回転配管33への温水の流れが遮断され、ヒータコア15への温水の流入が遮断される。
これにより、最大冷房時にヒータコア15から温水の熱が空気流れに放出されないから、ヒータコア15をバイパスして流れる空気流れc(図1参照)の温度上昇を回避でき、最大冷房性能をより効果的に発揮できる。
図9、図10は本実施形態における効果を示すグラフである。図9は、最大冷房時におけるヒータコア15側温水通路(図3の矢印W)を流れる温水流量を示している。図10は、最大冷房時におけるヒータコア15側温水通路を流れる温水流量とヒータコア15をバイパスして流れる空気流れcの温度上昇との関係を示している。
なお、図9、図10では、比較例1として、本実施形態の入口流路開閉機構39およびバイパス通路機構44を廃止した例を示している。また、先願例に対応する例(比較例2)として、入口流路開閉機構39を廃止してバイパス通路機構44のみを設けた例を示している。
比較例1では、最大冷房時には、同軸2重配管構造16の入口部である入口パイプ28に流入した温水の全量がヒータコア15側温水通路を通過して流れるので、ヒータコア15をバイパスして流れる空気流れcの温度が約2.5℃上昇してしまう。
一方、比較例2では、最大冷房時には、同軸2重配管構造16の入口部である入口パイプ28に流入した温水の一部がバイパス通路機構44を通過して出口パイプ30側へ短絡的に流れるが、残余の温水がヒータコア15側温水通路を通過して流れるので、ヒータコア15をバイパスして流れる空気流れcの温度が上昇してしまう。
具体的には、車両エンジンがアイドル状態のときには、ヒータコア15側温水通路に約1L/min流れ、空気流れcの温度が約2.2℃上昇してしまう。車両エンジンが4000rpmのときには、温水を循環供給するウォーターポンプ(図示せず)の回転数が上がるため、循環する温水の流量が増加する。このため、ヒータコア15側温水通路に約4L/min流れ、空気流れcの温度が約2.5℃上昇してしまう。
これに対して、本実施形態では、車両エンジンがアイドル状態および4000rpmのいずれの状態であっても、ヒータコア15側温水通路を流れる温水流量を0L/minにすることができ、空気流れcの温度上昇を0℃にすることができる。
一方、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40b上に重合して入口流路開閉機構39は全開の連通状態となる。
本実施形態では、入口流路開閉機構39の全開時における開口面積(本例では固定側開口部40bの合計面積)が内側回転配管32の流路面積よりも大きくなるように、回転側開口部41b、42bおよび固定側開口部40bの形状、位置が設定されている。このため、最大暖房位置において入口流路開閉機構39で通水抵抗が増大することを抑制できる。
この結果、固定部16aの外側固定配管26に流入した温水の全量が図3の矢印Wに示すヒータコア15側温水通路を通過して流れるので、ヒータコア15による空気加熱作用を何ら支障なく発揮できる。
また、ヒータコア15が所定回転角以上の温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(a)に示すように、回転側開口部41b、42bが固定側開口部40bを半分程度開口する位置に移動して入口流路開閉機構39は中間開度の連通状態となる。
このため、入口流路開閉機構39は、ヒータコア15の回転角に合わせてヒータコア15側温水通路を通過する温水の流量を調整することができる。したがって、入口流路開閉機構39は、いわゆる温水弁の機能を発揮することができる。
本実施形態では、固定側開口部40bおよび回転側開口部41b、42bを、固定側開口付壁部40、回転側開口付壁部41および弾性シール部材42の円周方向に等間隔に4個ずつ隔設している。これにより、固定側開口部40bおよび回転側開口部41b、42bを1個ずつのみ設ける場合と比較して、ヒータコア15の回転角が小さい場合における入口流路開閉機構39の開口面積を大きく確保している。
このため、ヒータコア15の回転角が小さい場合において、ヒータコア15側温水通路を通過する温水の流量を所定量以上確保することができる。
また、本実施形態では、同軸2重配管部16の構成を有効活用して、同軸2重配管構造16の温水出入口部間を直接連通するバイパス通路機構44を設けているので、次のごとき作用効果を発揮できる。
すなわち、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作されると、図4(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45から離れた位置に移動してバイパス通路機構44は全開の連通状態となる。
そのため、同軸2重配管構造16の入口部である入口パイプ28と、出口部である出口パイプ30とがバイパス通路機構44によって直接連通する。この結果、入口パイプ28に流入した温水は固定部16aの外側固定配管26側に流れず、図2の矢印Zに示すようにバイパス通路機構44を通過して出口パイプ30側へ短絡的に流れる。
これにより、最大冷房時に入口流路開閉機構39が遮断されたときに、固定部16aの外側固定配管26に温水が滞留することを防止できる。このため、温水に混入する異物(車両エンジンの製造時に付着した鋳砂等)が外側固定配管26内に溜まり、入口流路開閉機構39に噛み込むという不具合を回避することができる。
これに加え、最大冷房時に入口流路開閉機構39が遮断されたときに温水流れがせき止められて温水圧力が上昇することを抑制できるので、入口流路開閉機構39を含む同軸2重配管構造16の耐圧強度を低減することができ、製品コストの上昇を抑制することができる。
一方、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45上に閉塞状態で重合してバイパス通路機構44が全閉の遮断状態となる。
このため、入口パイプ28に流入した温水の全量が図3の矢印Wに示すヒータコア15側温水通路を通過して流れるので、ヒータコア15による空気加熱作用を何ら支障なく発揮できる。
また、ヒータコア15の回転角が所定値以上になっている温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(b)に示すように、バイパス穴開閉部46がバイパス穴45を半分程度開口する位置に移動してバイパス通路機構44は中間開度の連通状態となる。
このため、ヒータコア15の回転角に合わせてバイパス通路機構44を通過する温水の流量を調整することができる。換言すれば、ヒータコア15の回転角に合わせてヒータコア15側温水通路を通過する温水の流量を調整することができる。
ここで、ヒータコア15の回転角が微小角度のとき、すなわち、入口流路開閉機構39が微小開度のときに入口流路開閉機構39を流れる温水の流量が多いと、入口流路開閉機構39の微小開口部にて温水の流速が速くなるため流水音が発生してしまう。
そこで、本発明者は、バイパス穴45の直径と流水音の発生との関係について試作検討を行った。その結果は、図11に示される。
図11に示す図表からわかるように、バイパス穴45を直径3mm以上にすることにより、ヒータコア15の回転角が微小角度のときにバイパス通路機構44を通過する温水の流量を多くして、入口流路開閉機構39を流れる温水の流量を抑制できる。このため、入口流路開閉機構39の微小開口部にて流水音が発生することを防止できることがわかった。
さらに、バイパス穴45を直径3mm以上にすることにより、バイパス穴45を通過する温水の流速上昇を抑制することができる。このため、バイパス穴45自身にて流水音が発生することをも防止できることがわかった。
なお、温度制御時には、入口流路開閉機構39の開度が大きくなるので、バイパス穴45を通過する温水の流量が減少する。このため、温度制御時にバイパス穴45がバイパス穴開閉部46によって半分程度閉じられても、バイパス穴45を通過する温水の流速が上昇することがないので、バイパス穴45にて流水音が発生することはない。
ところで、バイパス穴45の位置が、入口パイプ28から外側固定配管26に流入する温水の動圧を直接受ける位置であると、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作されてバイパス通路機構44が全閉の遮断状態となったときにバイパス通路機構44から温水が漏れやすくなってしまう。
図12は、最大暖房位置において図3の矢印Wに示すヒータコア15側温水通路を流れる温水流量を示すグラフである。図12において、比較例3はバイパス穴45を内側固定配管25のうち入口パイプ28に対向する部位(図3の下方側部位)に開口させた例である。
この比較例3では、入口パイプ28から外側固定配管26に流入する温水の動圧を直接受ける位置にバイパス穴45が配置されているので、温水の総流量6L/minに対してヒータコア15の温水流量が約4L/minとなっている。
これに対して、バイパス穴45を、内側固定配管25のうち、同軸2重配管部16の中心軸Oに対して入口パイプ28と反対側(図3の上方側)の部位に配置した比較例4では、ヒータコア15の温水流量が約4.4L/minとなり、比較例3よりも増加する。
そこで、本実施形態では、バイパス穴45を、内側固定配管25のうち、同軸2重配管部16の中心軸Oに対して入口パイプ28と反対側の部位に配置しているので、入口パイプ28から外側固定配管26に流入する温水の動圧をバイパス穴45が直接受けることを回避することができる。
このため、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作されてバイパス通路機構44が全閉の遮断状態となったときにバイパス通路機構44から温水が漏れることを抑制できる。
また、本実施形態では、同軸2重配管部16の構成を有効活用して、固定部16aの外側固定配管26に流入する温水流量を調整する入口絞り機構37を設けているので、次のごとき作用効果を発揮できる。
すなわち、ヒータコア15が最大冷房位置に回転操作されると、図4(b)に示すように、回転部16bの入口開閉部38が入口パイプ28上に重合して、入口絞り機構37は入口開閉部38に形成される温水流通部38aのみで連通状態となる。
このため、入口パイプ28から外側固定配管26に流入する温水の流量を抑制することができる。この結果、最大冷房時に入口流路開閉機構39が遮断されたときに温水流れがせき止められて温水圧力が上昇することをより抑制できるので、入口流路開閉機構39を含む同軸2重配管構造16の耐圧強度をより低減することができ、製品コストの上昇をより抑制することができる。
ここで、入口開閉部38の温水流通部38aの面積が小さすぎると、温水流通部38aで温水の流速が上昇するため、温水流通部38aにて流水音が発生してしまう。そこで、本発明者は試作検討を通じて、温水流通部38aを直径3mm以上の円形穴にすることにより、温水流通部38aにおける流水音を防止できることを確認している。
一方、ヒータコア15が最大暖房位置に回転操作された時には、図5(b)に示すように、入口開閉部38が入口パイプ28から離れた位置に移動して入口絞り機構37は全開の連通状態となる。
このため、入口パイプ28に流入した温水の全量が図3の矢印Wに示すヒータコア15側温水通路を通過して流れるので、ヒータコア15による空気加熱作用を何ら支障なく発揮できる。
また、ヒータコア15の回転角が所定値以上になっている温度制御状態(中間回転位置)に回転操作された時には、図6(b)に示すように、入口開閉部38が入口パイプ28を半分程度開口する位置に移動して入口絞り機構37は中間開度の連通状態となる。
このため、ヒータコア15の回転角に合わせて入口絞り機構37を通過する温水の流量を調整することができる。換言すれば、ヒータコア15の回転角に合わせてヒータコア15側温水通路を通過する温水の流量を調整することができる。
ところで、本実施形態では、同軸2重配管部16の内側配管部において、内側回転配管32が内側固定配管25の内周側に嵌合している。これにより、図8に示すように、内側回転配管32の嵌合先端部32bが内側固定配管25内の空間25a内に位置している。
換言すれば、内側回転配管32の嵌合先端部32bが外側固定配管26の外周側と内側固定配管25の内周側との間の空間26a内に位置することを回避できる。
このため、内側回転配管32の嵌合先端部32bが流入側温水の動圧を直接受けることを回避できるので、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部内に温水が流入することを抑制できる。
一方、内側固定配管25の嵌合先端部25bは空間26a内に位置しているものの、内側固定配管25の嵌合先端部25bは流入側温水の下流側を向いている。このため、内側固定配管25の嵌合先端部25bが流入側温水の動圧を直接受けることを回避できるので、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部内に温水が流入することを抑制できる。
これらの結果、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部における温水洩れを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、内側回転配管32の外周面と内側固定配管25の内周面との間に存在する微小隙間35を0.3mm以下にすることによって、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部における温水洩れを効果的に抑制している。
図12において、比較例5は、上述の比較例4において微小隙間35を0.5mm以下にした例である。この比較例5では、温水の総流量6L/minに対してヒータコア15の温水流量が約4.5L/minとなっている。
これに対して、本実施形態では、微小隙間35の寸法が0.3mm以下になるように、内側回転配管32の外径および内側固定配管25の内径を設定している。これにより、図12に示すように、ヒータコア15の温水流量を約5.6L/minにすることができ、比較例5よりも大幅に増加させることができることがわかった。
なお、比較例6は、比較例4に対して微小隙間35を0.1mm以下にした例である。これにより、ヒータコア15の温水流量を約5.8L/minにすることができる。
しかしながら、微小隙間35を0.3mmから0.1mm以下にすると、高精度な加工精度、組付精度が必要となり、製品コストの上昇の要因となる。一方、微小隙間35を0.3mmから0.1mm以下にしてもヒータコア15の温水流量の増加は0.2L/minとわずかである。このため、本実施形態では、微小隙間35を0.3mm以下にしている。
このように、本実施形態では、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部における温水洩れを、弾性シール材を用いることなく、良好に抑制している。このため、当該嵌合部に弾性シール材を用いることによる摺動摩擦力の発生を回避することができる。
この結果、ヒータコア15の回転操作力を増大させることなく、内側回転配管32と内側固定配管25との嵌合部における温水漏れを防止することができる。
ところで、本実施形態では、入口流路開閉機構39において、弾性シール部材42の第1リップ部42cと固定側開口付壁部40の平板面とが摺動することにより摺動摩擦力が発生するが、弾性シール部材42の第1リップ部42cに摩擦係数が小さい膜43(テフロン(登録商標)製のシート等)を貼り付けているので、摺動摩擦力の発生を抑制することができる。
この結果、入口流路開閉機構39を設けることに伴いヒータコア15の回転操作力が増大することを抑制できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、弾性シール部材42を回転側開口付壁部41に積層しているが、本実施形態では、図13に示すように、弾性シール部材42と回転側開口付壁部41を一体に成形している。
図13は、本実施形態における要部断面図である。本実施形態では、弾性シール部材42をインサート成形することによって弾性シール部材42と回転側開口付壁部41を一体に成形している。
より具体的には、弾性シール部材42が回転側開口付壁部41の表裏両側の平板面と回転側開口部41bの内周面とを覆うように成形されている。そして、第1実施形態(図7参照)と同様に、円環状の回転側開口付壁部41の外周面に、外径方向に突出する4個の突起部41aを円周方向に等間隔に隔設して、この突起部41aを外側回転配管33の先端面の4個の凹部33bに挿入している。
これにより、一体成形された回転側開口付壁部41および弾性シール部材42が外側回転配管33の先端部に固定され、回転部16bの回転に伴って回転するようになっている。
また、回転部16bの内側回転配管32の外周面に段差を設けることによって、弾性シール部材42の第2リップ部42d側を向いた当接面32cを形成している。同様に、回転部16bの外側回転配管33の内周面に段差を設けることによって、弾性シール部材42の第2リップ部42d側を向いた当接面33cを形成している。
本実施形態では、最大冷房時には、弾性シール部材42の第1リップ部48が固定側開口付壁部40に密着し、弾性シール部材42の第2リップ部42dが回転部16bの当接面32c、33cに密着している。さらに、円環状の弾性シール部材42の外周面42eが外側回転配管33の内周面に密着し、円環状の弾性シール部材42の内周面42fが内側回転配管32の外周面に密着している。
そのため、固定部16aの外側固定配管26から回転部16bの外側回転配管33への温水の流れが遮断され、ヒータコア15への温水の流入が遮断される。
これにより、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
(第3実施形態)
上記各実施形態では、同軸2重配管部16を蒸発器13の車両後方側に配置するとともにヒータコア15の風上側の面の全体を覆う遮風壁17を配置しているが、本実施形態では、図14に示すように、同軸2重配管部16を空調ケース11の車両後方側壁面に密着配置するとともに遮風壁17を廃止している。
図14は本実施形態による室内空調ユニットの概略断面図を示している。本実施形態では、最大冷房時には、ヒータコア15が図13の破線位置(空調ケース11の車両後方側壁面に沿って略上下方向に延びる位置)MCに回転操作されるので、図14の矢印cに示すように空調ケース11内の通路面積全体を冷風が流れる通路18として構成できる。
このとき、ヒータコア15のコア部近傍においては、ヒータコア15をバイパスして流れる空気流れcの流速が速いため熱伝達率が高くなるが、入口流路開閉機構39によってヒータコア15への温水の流入が遮断されるので、ヒータコア15から温水の熱が空気流れに放出されない。
このため、上記各実施形態と同様に、ヒータコア15をバイパスして流れる空気流れcの温度上昇を回避でき、最大冷房性能を効果的に発揮できる。
また、最大暖房時には、ヒータコア15が図14の1点鎖線位置MHに回転操作されるので、図1の矢印d’に示すように、空調ケース11内の通路面積全体を温風が流れる通路として構成できる。
さらに、本実施形態では、遮風壁17の廃止により遮風壁17による通風抵抗を低減することができる。そのため、上記各実施形態に比較して、最大冷房時および最大暖房時の通風抵抗の低減により冷風吹出風量および温風吹出風量を増加して、最大冷房性能および最大暖房性能を向上できる。
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、温水入出用の同軸2重配管部16において、外側配管26、33により温水入口側流路を構成し、内側配管25、32により温水出口側流路を構成しているが、これとは逆に、外側配管26、33により温水出口側流路を構成し、内側配管25、32により温水入口側流路を構成するようにしてもよい。すなわち、図3において温水流れ方向Wを逆転させる構成にしてもよい。
この温水流れ方向Wの逆転に伴って、図2、3の上部の温水出口タンク15aが温水入口タンクとなり、図2、3の下部の温水入口タンク15bが温水出口タンクとなり、温水入口パイプ28が温水出口パイプとなり、温水出口パイプ30が温水入口パイプとなる。したがって、同軸2重配管部16は温水入口タンク側に配置されることになる。
この実施形態においては、固定側開口付壁部40、回転側開口付壁部41および弾性シール部材42により構成される入口流路開閉機構39を内側配管25、32内に配置すればよい。
また、この実施形態においても、バイパス穴45とバイパス穴開閉部46とにより構成されるバイパス通路機構44を同様に構成できる。但し、バイパス通路機構44を通過するバイパス温水の流れ方向は矢印Zと逆方向に流れる。
また、この実施形態においては、入口開閉部38を内側回転配管32に形成すれば、出口パイプ30と入口開閉部38とにより入口絞り機構37を構成できる。
また、この実施形態においては、内側固定配管25と内側回転配管32との嵌合における内外の位置関係を上記各実施形態と逆にして、内側固定配管25の外周側に内側回転配管32を嵌合させるようにすればよい。
これにより、内側固定配管25の嵌合先端部25bが流入側温水の動圧を直接受けることを回避できるので、上記各実施形態と同様に、内側固定配管25と外側固定配管26との嵌合部における温水洩れを抑制することができる。
(2)上記各実施形態では、バイパス通路機構44のバイパス穴45および入口絞り機構37の入口開閉部38の温水流通部38aをともに直径3mm以上の円形穴にしているが、これらの穴形状は円形に限定されるものではなく、例えば、長円形、矩形等にすることができる。
このようにバイパス穴45および温水流通部38aを円形以外の穴形状にする場合には、当該穴を相当円直径3mm以上の大きさにすることにより入口流路開閉機構39および温水流通部38aにおける流水音の発生を防止できる。
さらに、入口開閉部38の温水流通部38aは、穴形状のみならず、切欠形状にすることができる。このように温水流通部38aを切欠形状にする場合には、最大冷房時における温水流通部38aと温水入口パイプ28との重合部を相当円直径3mm以上の大きさにすることにより温水流通部38aにおける流水音の発生を防止できる。
(3)上記各実施形態では、温水入口パイプ28および温水出口パイプ30をともに、同軸2重配管部16の外径方向(軸方向と直交する方向)に結合しているが、温水入口パイプ28および温水出口パイプ30の一方または両方を同軸2重配管部16の軸方向に結合してもよい。
この実施形態においては、入口絞り機構37またはバイパス通路機構44を、入口流路開閉機構39と同様に、回転側開口付壁部と固定側開口付壁部とにより構成すればよい。
(4)上記各実施形態では、入口絞り機構37または温水入出用の同軸2重配管部16をヒータコア15の一端側(温水出口タンク15a側)に配置して、ヒータコア15の回転中心軸Oをヒータコア15の一端側(温水出口タンク15a側)に設定しているが、温水入出用の同軸2重配管部16をヒータコア15の連絡配管15fの長手方向の中間部位に配置して、ヒータコア15の回転中心軸Oを温水入口タンク15bと温水出口タンク15aとの中間位置に設定するようにしてもよい。
(5)上記各実施形態では、同軸2重配管部16の回転部16bをヒータコア15にろう付けにより一体化しているが、同軸2重配管部16の回転部16bをかしめ等の機械的結合手段によりシール材を介在してヒータコア15側にシール固定するようにしてもよい。
(6)上記各実施形態では、ヒータコア15として、温水入口タンク15bから温水が全部のチューブ15cを通過して温水出口タンク15aに向かう、いわゆる全パスタイプ(一方向流れタイプ)を使用しているが、ヒータコア15として、温水流れを空気流れ方向の前後でUターンさせる前後Uターンタイプを使用し、この前後Uターンタイプのヒータコア15に対して本発明を適用してもよい。
同様に、ヒータコア15として、温水流れをヒータコア左右方向(図4、5の左右方向)でUターンさせる左右Uターンタイプを使用し、この左右Uターンタイプのヒータコア15に対して本発明を適用してもよい。
(7)上記各実施形態では、同軸2重配管部16の固定部16aを空調ケース11と別体で成形しているが、この固定部16aおよび空調ケース11はともに樹脂製の部材であるから、この固定部16aを空調ケース11に樹脂で一体成形するようにしてもよい。
(8)上記各実施形態では、ヒータコア15に対して車両エンジンの温水を循環する例について述べたが、ヒータコア15に対して、燃焼式ヒータや燃料電池等の車載熱源機器で加熱された温水を循環させるようにしてもよい。
また、ヒータコア15に循環させる熱源流体として、温水の代わりに油圧機器の作動油等を用いてもよい。