JP3766758B2 - ドライビングシミュレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、仮想的に車両の運動を再現できるドライビングシミュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のドライビングシミュレータとして、オペレータを支持する本体と、そのオペレータによる仮想的な車両運転操作に対応する入力信号、例えば操舵角、駆動力、制動力等に対応する入力信号を生成する入力部と、その入力信号に応じて、仮想的な車両運動に対応する制御パラメータ、例えば車速、前後方向加速度、横方向加速度、ヨーレート等を演算すると共に、その制御パラメータに対応する制御信号を生成する制御装置と、その制御信号により駆動されるアクチュエータとを備え、そのアクチュエータにより前記本体が作動されるものが用いられている。そのアクチュエータにより本体を作動させることにより仮想的に車両運動が再現される。
【0003】
そのドライビングシミュレータにより再現される車両運動は、実際の車両運動を既存のデータベースに基づきモデル化したものであって、そのモデル化された仮想の車両運動を再現するための制御パラメータが、そのデータベースに基づき作成されたプログラムに従い演算される。その車両運動としてヨー運動を従来のドライビングシミュレータにより再現する場合、仮想的な車両重心回りのヨー運動のヨーレートを制御パラメータとして演算し、そのヨーレートで本体が回転運動するようにアクチュエータを駆動していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ドライビングシミュレータにおいては、ヨー運動だけでなく、前後方向や横方向の運動も再現される。そのため、本体を駆動するアクチュエータとして回転運動のみを付与するロータリーアクチュエータは採用できず、直線運動を行う複数のアクチュエータにより多自由度の運動ができるように本体を作動させている。そのため、本体に回転運動させるには複雑なアクチュエータの制御が必要になり、さらに、その回転運動範囲は制限されるため、ヨー運動の再現精度は低かった。また、ドライビングシミュレータにおける本体の回転運動の中心位置からオペレータまでの距離は、車両運動モデルにおける仮想の車両重心から運転席までの距離に必ずしも一致しない。そのため、ヨー運動時におけるドライバーの挙動特性等を調べるためにドライビングシミュレータを用いる場合、ヨー運動時にドライバーに作用する加速度に基づく慣性力を正確に再現できず、正確にヨー運動を反映したオペレータ挙動を調べることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決することのできるドライビングシミュレータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オペレータを支持する本体と、そのオペレータによる仮想的な車両運転操作に対応する入力信号を生成する入力部と、その入力信号に応じて、仮想的な車両運動に対応する制御パラメータを演算すると共に、その制御パラメータに対応する制御信号を生成する制御装置と、その制御信号により駆動されることで直線運動を行う複数のアクチュエータとを備え、そのアクチュエータにより前記本体が作動されるドライビングシミュレータにおいて、前記制御パラメータとして、仮想的な車両重心回りのヨー運動により車両運転席に作用する加速度の前後方向成分と横方向成分とが演算され、その演算された加速度の前後方向成分と横方向成分とに基づく慣性力が前記本体に作用するように前記制御信号が生成されることを特徴とする。
本発明の構成によれば、仮想的なヨー運動により車両運転席に作用する加速度に基づく慣性力の前後方向と横方向の分力を、アクチュエータにより本体に作用させることができる。すなわち、そのアクチュエータにより前後方向と横方向の慣性力を本体に作用させるだけでよいので、アクチュエータの制御が容易になり、ヨー運動によりドライバーに作用する加速度による慣性力を正確に再現できる。
【0007】
この場合、仮想的な車両重心回りのヨー運動のヨーレートをγ、その車両重心と車両運転席との距離をL、その車両重心から車両前方に向かう方向に対して車両運転席方向がなす角度をθとして、前記本体にγ2 ・L・cosθの前後方向慣性力と、γ2 ・L・sinθの横方向慣性力が作用するように前記制御信号が生成されるのが好ましい。
そのヨー運動により車両運転席に作用する加速度は−γ2 ・Lにより求めることができることから、その加速度による慣性力の前後方向成分はγ2 ・L・cosθにより求められ、横方向成分はγ2 ・L・sinθにより求められる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1、図2に示すドライビングシミュレータ1は、オペレータを支持する本体2、この本体2の作動用アクチュエータ3、ステアリングホイールを模した舵角入力部4、その舵角入力部4への操作反力付加用アクチュエータ5、アクセルペダルを模した駆動力入力部6、ブレーキペダルを模した制動力入力部7、各アクチュエータ3、5を制御する制御装置8、映像表示部9を備えている。
【0009】
その本体2は、支持プレート2aと、この支持プレート2a上に設けられるオペレータシート2bと、その支持プレート2aの周縁部に設けられる柵2cを有する。
【0010】
その本体2の作動用アクチュエータ3は、一端が支持プレート2aにリンク接続され、他端が床上のベース11にリンク接続された複数の電動シリンダにより構成される。各電動シリンダの直線的な伸縮運動により、その本体2は6軸自由度の運動を行い任意方向に変位することが可能とされている。この本体作動用アクチュエータ3は制御装置8に接続されている。なお、本体作動用アクチュエータ3の構成は、車両挙動のシミュレーションを行うことができるように本体2を作動させることができれば特に限定されない。
【0011】
その舵角入力部4は、その本体2に回転操作可能に取り付けられる操作部4aと、この操作部4aの回転角度を検知する角度センサ4bと、この操作部4aの操作トルクを検知するトルクセンサ4cとを有する。その角度センサ4bは上記制御装置8に接続され、その本体2上のオペレータによる操作部4aの回転操作により、仮想的な車両運転操作に対応する入力信号として、その回転操作角度に応じた舵角信号を生成し、その舵角信号は制御装置8に送られる。そのトルクセンサ4cは上記制御装置8に接続され、その本体2上のオペレータによる操作部4aの操作トルクに応じた操舵トルク信号を生成し、その操舵トルク信号は制御装置8に送られる。その操作部4aの操作トルクが操舵反力に対応する。
【0012】
その操作反力付加用アクチュエータ5は、その舵角入力部4の一端に接続されるモータにより構成され、その舵角入力部4に操作反力を作用させる。このアクチュエータ5は上記制御装置8に接続される。
【0013】
その駆動力入力部6は、その本体2に踏み込み操作可能に取り付けられるペダル状操作部6aと、この操作部6aの踏み込み量の検知センサ6bとを有し、そのセンサ6bは上記制御装置8に接続される。その本体2上のオペレータによる操作部6aの踏み込み操作により、仮想的な車両運転操作に対応する入力信号として、その踏み込み量に応じた駆動信号を生成し、その駆動信号は制御装置8に送られる。
【0014】
その制動力入力部7は、その本体2に踏み込み操作可能に取り付けられるペダル状操作部7aと、この操作部7aの踏み込み量の検知センサ7bとを有し、そのセンサ7bは上記制御装置8に接続される。その本体2上のオペレータによる操作部7aの踏み込み操作により、仮想的な車両運転操作に対応する入力信号として、その踏み込み量に応じた制動信号を生成し、その制動信号は制御装置8に送られる。
【0015】
その制御装置8はコンピュータにより構成され、記憶したプログラムに従い、上記各入力部4、6、7からの入力信号に応じて、既存のデータベースに基づき実際の車両運動からモデル化された仮想の車両運動を再現する制御パラメータとして、仮想的な車両重心回りのヨー運動のヨーレートγ、前後方向速度Vx、駆動力および制動力による前後方向加速度Gx、横方向速度Vy、駆動力および制動力による横方向加速度Gy、操舵トルクThを演算する。この演算は従来と同様に行うことができる。さらに、その制御装置8は、記憶したプログラムに従い、そのヨー運動により車両運転席に作用する加速度の前後方向成分と横方向成分とを演算する。
【0016】
その映像表示部9は、制御装置8から送られる画像信号に応じた画像を表示する公知の表示器により構成される。
【0017】
そのヨー運動により車両運転席に作用する加速度の前後方向成分gxと横方向成分gyに基づく慣性力−gx、−gyは、図3に示すように、仮想的な車両重心G回りのヨー運動のヨーレートをγ、その車両重心Gと車両運転席Sとの距離をL、その車両重心Gから車両前方に向かう方向に対して車両運転席方向がなす角度をθとして、そのヨー運動により車両運転席に作用する加速度は−γ2 ・Lであることから、以下の式により求められる。なお、図3においては車両の前後方向をx軸、横方向をy軸により示す。
−gx=γ2 ・L・cosθ
−gy=γ2 ・L・sinθ
【0018】
制御装置8は、その演算した制御パラメータに対応する制御信号を生成し、その制御信号により上記アクチュエータ3、5を駆動する。その制御信号により駆動される本体作動用アクチュエータ3の直線運動により本体2が作動されることで、車両運動がシミュレーションされる。すなわち、その本体2の前後方向移動速度は、その仮想的な車両前後方向速度Vxに対応し、その本体2の横方向移動速度は、その仮想的な横方向速度Vyに対応する。その本体2に作用する前後方向加速度に基づく慣性力は、その仮想的なヨー運動により車両運転席に作用する加速度に基づく慣性力の前後方向成分−gxと、駆動力および制動力による前後方向加速度Gxに基づく慣性力−Gxとの和に対応する。その本体2に作用する横方向加速度は、その仮想的なヨー運動により車両運転席に作用する加速度に基づく慣性力の横方向成分−gyと、駆動力および制動力による横方向加速度Gyに基づく慣性力−Gyとの和に対応する。
【0019】
また、その制御信号により駆動される操作反力付加用アクチュエータ5の回転運動により舵角入力部4に操作反力が作用されることで、路面からステアリングホイールを介するドライバーへの操舵反力の伝達がシミュレーションされる。その舵角入力部4の操作反力は仮想的な車両の操舵トルクに対応する。この際、トルクセンサ4cからの検出値に応じた操作反力が付与されるように操作反力付加用アクチュエータ5はフィードバック制御される。
【0020】
さらに制御装置8は、仮想の風景を生成するための画像信号を出力することで映像表示部9を制御し、その制御パラメータに応じて求めた車速、走行距離、走行方向に応じて仮想風景を変化させる。
【0021】
上記構成によれば、仮想的なヨー運動により車両運転席に作用する加速度に基づく慣性力の前後方向と横方向の分力を、アクチュエータ3により本体2に作用させることができる。すなわち、そのアクチュエータ3により前後方向と横方向の慣性力を本体2に作用させるだけでよいので、アクチュエータ3の制御が容易になり、ヨー運動によりドライバーに作用する加速度による慣性力を正確に再現できる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、オペレータの操作によって信号を生成する入力部として、駐車ブレーキを模した制動力入力部等の他の入力部が設けられてもよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、ヨー運動によりドライバーに作用する加速度に基づく慣性力を正確に再現できるドライビングシミュレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のドライビングシミュレータの斜視図
【図2】本発明の実施形態のドライビングシミュレータの制御構成説明図
【図3】本発明の実施形態のドライビングシミュレータの作用説明図
【符号の説明】
1 ドライビングシミュレータ
2 本体
3 アクチュエータ
4 舵角入力部
6 駆動力入力部
7 制動力入力部
8 制御装置
Claims (1)
- オペレータを支持する本体と、
そのオペレータによる仮想的な車両運転操作に対応する入力信号を生成する入力部と、
その入力信号に応じて、仮想的な車両運動に対応する制御パラメータを演算すると共に、その制御パラメータに対応する制御信号を生成する制御装置と、
その制御信号により駆動されることで直線運動を行う複数のアクチュエータとを備え、
そのアクチュエータにより前記本体が作動されるドライビングシミュレータにおいて、
前記制御パラメータとして、仮想的な車両重心回りのヨー運動により車両運転席に作用する加速度の前後方向成分と横方向成分とが演算され、
その演算された加速度の前後方向成分と横方向成分とに基づく慣性力として、仮想的な車両重心回りのヨー運動のヨーレートをγ、その車両重心と車両運転席との距離をL、その車両重心から車両前方に向かう方向に対して車両運転席方向がなす角度をθとして、前記本体にγ 2 ・L・cosθの前後方向慣性力と、γ 2 ・L・sinθの横方向慣性力が作用するように前記制御信号が生成されることを特徴とするドライビングシミュレータ。
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