JP3769132B2 - 車両用シミュレーションシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバーへの操舵反力の伝達を含む車両挙動をシミュレーションするドライビングシミュレータと、ステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与された状態をシミュレーションするステアリングシミュレータとを備える車両用シミュレーションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ドライビングシミュレータとして、舵角入力部を含む入力部と、その舵角入力部の操作反力を付与するアクチュエータを含むアクチュエータと、そのアクチュエータの制御部とを備え、その制御部が入力部の操作により生成される信号に応じて記憶したプログラムに従いアクチュエータを制御することで、操舵反力の伝達を含む車両挙動のシミュレーションを行うものがある。この際、その舵角入力部にアクチュエータにより操作反力を付加することで、車両挙動の一つとしてドライバーへの操舵反力の伝達がシミュレーションされる。このドライビングシミュレータによれば、実車走行を行うことなくドライバーに運転感覚を与え、車両の挙動やドライバーの挙動等を評価できる。
【0003】
ステアリングシミュレータとして、ステアリング装置に接続される車輪を有する台車と、そのステアリング装置に台車を介して負荷を付与するアクチュエータと、そのステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与されるように、そのアクチュエータを記憶したプログラムに従い制御する制御部とを備え、ステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与された状態をシミュレーションするものがある。このステアリングシミュレータによれば、実車走行を行うことなく、実車搭載前のプロトタイプのステアリング装置における負荷付与時の特性を評価できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ステアリングシミュレータにおいては、ステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与されるが、その負荷は車速や舵角等の走行状態に応じて異なる。そのため、多様な走行状態での負荷を付与するためには、実車走行実験により膨大なデータを蓄積する必要があり、工数およびコストが増大する。
【0005】
また、ステアリング装置においては、例えば操舵力伝達系の粘性といった固有の属性に基づき操舵反力の伝達特性が変化する。しかし、ドライビングシミュレータは、アクチュエータにより操舵反力を模擬した操作反力を付与するに過ぎないことから、そのようなステアリング装置の固有の属性を反映して操舵反力の伝達特性を忠実に再現するのは困難であった。
【0006】
さらにドライビングシミュレータは、実際のステアリング装置を用いるものではないので、車両挙動のシミュレーション時における車輪のアラインメント変化や、例えばラックピニオン式ステアリング装置におけるラックやタイロッドといった操舵力伝達系の構成要素の動きを可視化できなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することのできる車両用シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本件発明の車両用シミュレーションシステムは、ドライビングシミュレータとステアリングシミュレータとを備える。そのドライビングシミュレータは、舵角入力部を含む入力部の生成信号に応じて、その舵角入力部の操作反力を付与するアクチュエータを含むドライビングシミュレータ側アクチュエータを制御することで、操舵反力の伝達を含む車両挙動をシミュレーションする。そのステアリングシミュレータは、ステアリング装置に負荷を付与するステアリングシミュレータ側アクチュエータを制御することで、そのステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与された状態をシミュレーションする。本発明の車両用シミュレーションシステムは、ドライビングシミュレータによりその伝達がシミュレーションされる操舵反力に相関する負荷を、ステアリングシミュレータにおいてステアリング装置に付与する手段を備える。
【0009】
この構成によれば、ドライビングシミュレータは操舵反力の伝達をシミュレーションし、その操舵反力に相関する負荷をステアリングシミュレータのステアリング装置に付与する。その操舵反力に相関する負荷は、例えば車輪に上下方向に沿い作用する車輪の分担荷重、車速、キングピン軸回りに作用するセルフアライニングトルク等である。その負荷はドライビングシミュレータの入力部の生成信号に応じて変化することから、ステアリングシミュレータにおいてステアリング装置に付与される多様な走行状態での操舵反力に相関する負荷を、実車走行実験により膨大なデータを蓄積することなく得ることができる。
【0010】
そのステアリングシミュレータにおけるステアリング装置を、ドライビングシミュレータにおける舵角入力部の操作に対応して操舵する手段と、そのステアリング装置の操舵反力に対応する操作反力を舵角入力部に付与する手段とを備えるのが好ましい。
【0011】
これにより、舵角入力部を操作すると同時にステアリング装置を操舵し、そのステアリング装置の操舵反力に対応する操作反力を舵角入力部に付与できるので、ステアリングシミュレータにおけるステアリング装置の操舵反力の伝達特性を、そのステアリング装置に固有の属性を反映して忠実に再現できる。
しかも、そのステアリングシミュレータにおけるステアリング装置の動きは、ドライビングシミュレータによってシミュレーションされる車両挙動に対応することから、車両挙動のシミュレーションと同時に、車輪のアラインメント変化や、操舵力伝達系の構成要素の動きを可視化できる。
【0012】
そのドライビングシミュレータは、オペレータにより操作されることで信号を生成する舵角入力部を含む入力部と、その舵角入力部の操作反力付加用アクチュエータを含むドライビングシミュレータ側アクチュエータと、その入力部の操作に応じて操舵反力の伝達を含む車両挙動がシミュレーションされるように、その入力部の生成信号に応じてドライビングシミュレータ側アクチュエータを記憶したプログラムに従い制御する第1制御部とを有し、そのステアリングシミュレータは、ステアリング装置に接続される車輪を有する台車と、そのステアリング装置の操舵用アクチュエータと、そのステアリング装置の操舵反力の検出手段と、そのステアリング装置に負荷を付与するステアリングシミュレータ側アクチュエータと、そのステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与された状態がシミュレーションされるように、ステアリングシミュレータ側アクチュエータを記憶したプログラムに従い制御する第2制御部とを有し、その第1制御部と第2制御部は互いに信号を授受可能に接続され、そのステアリングシミュレータ側アクチュエータは、ドライビングシミュレータによりその伝達がシミュレーションされる操舵反力に相関する負荷をそのステアリング装置に付与するように、第1制御部から送られる信号に応じて第2制御部によって制御され、その操舵用アクチュエータは、その舵角入力部の操作に対応してステアリング装置を操舵するように、第1制御部から送られる舵角入力部の生成信号に応じて第2制御部によって制御され、その操作反力付加用アクチュエータは、そのステアリング装置の操舵反力に対応する操作反力を発生するように、第2制御部から送られる操舵反力の検出信号に応じて第1制御部によって制御されるのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1制御部によりドライビングシミュレータ側アクチュエータを制御することで、ドライビングシミュレータは操舵反力の伝達をシミュレーションし、その操舵反力に相関する負荷をステアリングシミュレータのステアリング装置に付与するように、ステアリングシミュレータ側アクチュエータは第1制御部から送られる信号に応じて第2制御部によって制御される。
すなわち、その操舵反力に相関する負荷は、例えば車輪に上下方向に沿い作用する車輪の分担荷重、車速、キングピン軸回りに作用するセルフアライニングトルク等であり、これは第1制御部に記憶されるドライビングシミュレーション用プログラムにより設定される車両走行条件、第1制御部に入力される入力部の生成信号、および第1制御部によりドライビングシミュレータ側アクチュエータを制御するために演算される制御パラメータから求められる。すなわち、その操舵反力に相関する負荷を、そのドライビングシミュレーション用プログラムにより設定される車両走行条件、入力部の生成信号、ドライビングシミュレータ側アクチュエータの制御パラメータに対応する第1制御部からの信号により求めることができる。しかも、その入力部の生成信号とドライビングシミュレータ側アクチュエータの制御パラメータは、ドライビングシミュレータのオペレータの操作により変化することから、多様な走行状態での操舵反力に相関する負荷を、実車走行実験により膨大なデータを蓄積することなく得ることができる。
また、その操舵用アクチュエータは、その舵角入力部の操作に対応してステアリング装置を操舵するように、第1制御部から送られる舵角入力部の生成信号に応じて第2制御部によって制御されるので、舵角入力部を操作すると同時にステアリング装置を操作できる。そのステアリング装置の操舵反力の検出信号に応じて操作反力付加用アクチュエータを制御することで、その操舵反力に対応する操作反力を発生する。よって、ドライビングシミュレータは、ステアリングシミュレータに装着されるステアリング装置の操舵反力の伝達特性を、そのステアリング装置に固有の属性を反映して忠実に再現できる。
さらに、そのステアリングシミュレータにおけるステアリング装置の動きは、ドライビングシミュレータによってシミュレーションされる車両挙動に対応することから、車輪のアラインメント変化や、操舵力伝達系の構成要素の動きを可視化できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1に示す車両用シミュレーションシステムは、図2に示すドライビングシミュレータ1と、図3に示すステアリングシミュレータ100とを備える。
【0015】
そのドライビングシミュレータ1は、オペレータを支持する本体2、この本体2の作動用アクチュエータ3、ステアリングホイールを模した舵角入力部4、その舵角入力部4への操作反力付加用アクチュエータ5、アクセルペダルを模した駆動力入力部6、ブレーキペダルを模した制動力入力部7、映像表示部9、および入力装置10を備える。
【0016】
その本体2は、支持プレート2aと、この支持プレート2a上に設けられるオペレータシート2bと、その支持プレート2aの周縁部に設けられる柵2cを有する。
【0017】
その本体2の作動用アクチュエータ3は複数の電動シリンダにより構成され、各電動シリンダの一端は支持プレート2aにリンク接続され、他端は床上のベース11にリンク接続される。各電動シリンダの伸縮により本体2を任意方向に作動させることが可能とされている。そのアクチュエータ3により本体2を作動させることで、車両挙動として車体の動きがシミュレーションされる。この本体作動用アクチュエータ3は制御装置8に接続されている。なお、本体作動用アクチュエータ3の構成は、車両挙動のシミュレーションを行うことができるように本体2を作動させることができれば特に限定されない。
【0018】
その舵角入力部4は、その本体2に回転操作可能に取り付けられる操作部4aと、この操作部4aの回転角度を検知する角度センサ4bと、この操作部4aの操作トルクを検知するトルクセンサ4cとを有する。その角度センサ4bは、オペレータによる操作部4aの回転操作角度に応じた操舵角信号を生成して制御装置8に送る。そのトルクセンサ4cは、オペレータによる操作部4aの操作トルクに応じた操舵トルク信号を制御装置8に送る。
【0019】
その操作反力付加用アクチュエータ5は、その舵角入力部4の一端に接続されるモータにより構成され、その舵角入力部4に操作反力を作用させる。このアクチュエータ5は上記制御装置8に接続される。このアクチュエータ5により舵角入力部4に操作反力を作用させることで、車両挙動として路面からステアリングホイールを介するドライバーへの操舵反力の伝達がシミュレーションされる。
【0020】
その駆動力入力部6は、その本体2に踏み込み操作可能に取り付けられる操作部6aと、この操作部6aの踏み込み量の検知センサ6bとを有する。そのセンサ6bは、オペレータによる操作部6aの踏み込み量に応じた駆動信号を制御装置8に送る。
【0021】
その制動力入力部7は、その本体2に踏み込み操作可能に取り付けられる操作部7aと、この操作部7aの踏み込み量の検知センサ7bとを有する。そのセンサ7bは、オペレータによる操作部7aの踏み込み量に応じた制動信号を制御装置8に送る。
【0022】
その映像表示部9は、例えばCRTディスプレイ等の表示器により構成され、制御装置8から送られる画像信号に応じた映像を表示する。
【0023】
上記ステアリングシミュレータ100は、フレーム状の本体101と左右車輪103を有する台車105と、この台車105を支持する支持機構106を備える。その車輪103にサスペンション102を介してステアリング装置104が接続される。
【0024】
そのステアリング装置104は、ステアリングホイール107とステアリングギヤとを備える。そのステアリングギヤは、本実施形態では、ステアリングホイール107の回転運動をラックの車両幅方向移動に変換する運動変換機構により構成され、そのステアリングホイール107の回転により両車輪103を転舵させる。なお、ステアリング装置104の型式は特に限定されない。
【0025】
そのステアリング装置104を操舵するためステアリングホイール107の回転力を発生するアクチュエータ161と、そのステアリング装置104の操舵反力として操舵トルクを検出するトルクセンサ162とが設けられている。ステアリング装置104が電動パワーステアリング装置のように操舵補助力を発生するアクチュエータと、操舵トルク検出用センサを有する場合、そのアクチュエータとセンサを、その操舵用アクチュエータ161とトルクセンサ162として利用するのが好ましい。
【0026】
その支持機構106は板状の左右第1支持プレート121を有する。上記左右車輪103は、ゴム製タイヤと、このタイヤの内周に装着される金属製ホイールとを有し、左右第1支持プレート121により個別に支持される。すなわち、両第1支持プレート121の上面それぞれが載置面121aとされ、左方の第1支持プレート121の載置面121aに左方の車輪103が載置され、右方の第1支持プレート121の載置面121aに右方の車輪103が載置される。
本体101の後部にはステアリング装置を介することなくサスペンションを介して後部左右車輪(図示省略)が取り付けられ、その載置面121aと同一高さの別の載置面上に載置される。なお、4輪操舵車両のシミュレーションを行う場合、台車の後部の左右車輪にも前部左右車輪と同様にして負荷を付与するようにしてもよい。
【0027】
左右第1支持プレート121それぞれは左右支持装置110により、上下方向軸中心に回転可能、前後方向と左右方向に沿って移動可能に支持されている。すなわち、各支持装置110は、図4の(1)に示すように、上記第1支持プレート121を上下方向に沿う軸122中心に回転可能に支持する第2支持プレート123と、この第2支持プレート123をレール124を介して台車105の左右方向に沿って移動可能に支持する第3支持プレート125と、この第3支持プレート125をレール126を介して台車105の前後方向に沿って移動可能に支持する第4支持プレート127とを有する。その第4支持プレート127が床等の固定側150に取り付けられている。
【0028】
また、図4の(2)、(3)に示すように、上記左右車輪103のタイヤ103aの内周のホイール103bを、各載置面121aに固定可能な固定装置129が設けられている。その固定装置129は、左右一対の正面視L字形ブラケット129aを有する。左方のブラケット129aが左方の車輪103のホイール103bと載置面121aにボルト129bにより連結され、右方のブラケット129aが右方の車輪103のホイール103bと載置面121aにボルト129bにより連結されることで、各ホイール103bは載置面121aに固定される。
【0029】
上記ステアリング装置104に操舵反力に相関する負荷を台車105を介して付与するステアリングシミュレータ側アクチュエータを有する負荷付与機構111が設けられている。この負荷付与機構111により付与される負荷の大きさと方向は変更可能とされている。その負荷付与機構111は左右第1負荷付与装置130と左右第2負荷付与装置140とを有する。
【0030】
各第1負荷付与装置130は、第1支持プレート121から台車105の左右車輪103を介してステアリング装置104に負荷を付与する。すなわち、各第1負荷付与装置130は、第1アクチュエータ131と、第2アクチュエータ132と、第3アクチュエータ133を有する。各アクチュエータ131、132、133は伸縮可能な油圧式アクチュエータにより構成され、伸縮することで加振機能を奏することもできる。なお各アクチュエータは電動式でも良い。
【0031】
各第1アクチュエータ131のシリンダチューブ131aは第2支持プレート123に上下方向軸131c中心に揺動可能に連結され、移動ロッド131bは第1支持プレート121に前記軸122から偏心した位置において上下方向軸131d中心に相対回転可能に連結され、前記軸122を通ることのない横方向に沿って伸縮可能とされている。これにより、各第1アクチュエータ131により第1支持プレート121それぞれを上下方向軸122中心に回転させるモーメントを付与することで、各載置面121a上の車輪103それぞれに上下方向軸回りの負荷を付与できる。この負荷の方向と大きさは各第1アクチュエータ131の駆動方向と駆動力とに応じて変更できる。
【0032】
各第2アクチュエータ132のシリンダチューブ132aは第3支持プレート125に上下方向軸132c中心に揺動可能に連結され、移動ロッド132bは第2支持プレート123に上下方向軸132d中心に揺動可能に連結され、台車105の左右方向(図4の左右方向)に沿って伸縮可能とされている。各第3アクチュエータ133のシリンダチューブ133aは第4支持プレート127に上下方向軸133c中心に揺動可能に連結され、移動ロッド133bは第3支持プレート125に上下方向軸133d中心に揺動可能に連結され、台車105の前後方向(図4の上下方向)に沿って伸縮可能とされている。これにより、各第2アクチュエータ132により各第2支持プレート123を介して第1支持プレート121それぞれを台車105の左右方向に沿って移動させる横方向力を付与できる。各第3アクチュエータ133により各第2支持プレート123と各第3支持プレート125を介して第1支持プレート121それぞれを台車105の前後方向に沿って移動させる横方向力を付与できる。よって、各第2、第3アクチュエータ132、133により各載置面121a上の車輪103それぞれを介して、両横方向力の合力に対応する横方向に沿う負荷をステアリング装置104に付与できる。この負荷の方向と大きさは各第2、第3アクチュエータ132、133の駆動方向と駆動力とに応じて変更できる。
【0033】
各第2負荷付与装置140は台車105の各サスペンション102を介してステアリング装置104に負荷を付与可能な第4アクチュエータ141を有する。各第4アクチュエータ141は上下方向に沿って伸縮可能な油圧式アクチュエータにより構成され、伸縮することで加振機能を奏することもできる。なお各アクチュエータは電動式でも良い。各第4アクチュエータ141は、シリンダチューブ141aが固定側150に取り付けられ、伸縮ロッド141bがサスペンション102に接するものとされている。これにより、各第4アクチュエータ141により、上下方向に沿ってサスペンション102を介して左右車輪103それぞれを載置面121aに押し付けることができる。その押し付けにより左右車輪103それぞれを介してステアリング装置104にサスペンション102を介して上下方向に沿う負荷が付与され、その負荷は第4アクチュエータ141の伸縮によって変化する。
【0034】
なお、左右車輪103それぞれを介して付与される上下方向に沿う負荷を、サスペンション102側からではなく第1支持プレート121側から付与するようにしてもよい。例えば、図3において2点鎖線で示すように、左右支持装置110を上下方向に伸縮可能な左右アクチュエータ141′により支持し、各アクチュエータ141′により各第1支持プレート121を介して左右車輪103それぞれを押し上げ、その押し上げによる各サスペンション102の上方への変位を固定側150により受けられるようにする。
【0035】
上記第4アクチュエータ141の伸縮により、左右車輪103を介してステアリング装置104に付与される上下方向に沿う負荷が変化する。これにより、横加速度によるロール運動に基づき変化する負荷が付与された状態をシミュレーションできる。
また、路面の粗さ変化やタイヤ構造の相違に基づく車輪と路面との間の摩擦係数の変化は、各車輪の分担荷重と摩擦係数との積である摩擦抵抗の変化に対応する。その摩擦抵抗の変化は車輪103を介してステアリング装置104に付与される上下方向に沿う負荷の変化に対応する。よって、各第4アクチュエータ141の伸縮により左右車輪103に付与される上下方向に沿う負荷を変化させることにより、その摩擦係数に応じた負荷が付与された状態をシミュレーションできる。
また、操舵時において、各第2アクチュエータ132による左右方向(図4の左右方向)力と各第3アクチュエータ133による前後方向(図4の上下方向)力の合力(トルク)を変更調整することにより、あるいは、第1アクチュエータ131による付与する上下方向軸まわりの負荷(トルク)を変更調整することにより、その摩擦係数に応じた負荷が付与された状態をシミュレーションできる。すなわち、車輪と路面との間の摩擦係数が小さい状態でシミュレートする場合は、その合力(トルク)を小さくし、その摩擦係数が大きな状態でシミュレートする場合は、その合力(トルク)を大きくする。この場合、各第4アクチュエータ141による上下方向の負荷を変更調整することを追加してシミュレーションすることもできる。さらに、上記固定装置129により各ホイール103bを載置面121aに固定することで、ゴム製タイヤ103aの弾性の影響を排除した状態で合力(トルク)を付与することもできるので、その摩擦係数の変化による操舵特性の変化をタイヤ103aの弾性の影響を受けることなく知ることができる。なお、そのようにアクチュエータ131、132、133により付与されるトルクの変更調整に代えて、タイヤ103aのトレッド溝の深さや載置面121aの粗さを変更調整することで、その摩擦係数に応じた負荷が付与された状態をシミュレーションしてもよく、この場合、固定装置129によるホイール103bの載置面121aへの固定はなされない。
また、実際の車両の操舵状態において車輪に作用するコーナリングフォースの変化は、第1支持プレート121上の左右車輪103それぞれに作用する横方向の負荷の変化に対応する。すなわち、図5は実際の車輪に作用する負荷を示すもので、車両の進行方向(矢印aで示す)に対して車輪Tの回転面(2点鎖線bで示す)が滑り角θをなして操舵されている状態では、その車輪TにコーナリングフォースFが横方向に沿って作用し、また、セルフアライニングトルクMが上下方向軸回りに作用する。そして、左右車輪103に付与される横方向の負荷は、各第2アクチュエータ132により第1支持プレート121それぞれを台車105の左右方向に沿って移動させる横方向力と、各第3アクチュエータ133により第1支持プレート121それぞれを台車105の前後方向に沿って移動させる横方向力の合力に対応する。この合力の大きさと方向は、各第2、第3アクチュエータ132、133の発生圧力を変化させることで任意に変更できる。よって、各第2、第3アクチュエータ132、133の伸縮により、変化するコーナリングフォースが付与された状態をシミュレーションできる。
また、実際の車両の操舵状態において車輪に作用するセルフアライニングトルクの変化は、第1支持プレート121上の左右車輪103それぞれに作用するキングピン軸まわりのモーメントの変化により対応する。すなわち、実際の車両の車輪に作用するセルフアライニングトルクはキングピン軸回りに作用する。そして、左右車輪103に付与される上下方向軸122まわりの負荷は、各第1アクチュエータ131により第1支持プレート121それぞれを上下方向軸122中心に回転させるモーメントに対応する。このモーメントの大きさと方向は、各第1アクチュエータ131の駆動力を変更することで任意に変更できる。よって、各第1アクチュエータ131の伸縮により、変化するセルフアライニングトルクが付与された状態をシミュレーションできる。
【0036】
図1に示すように、上記第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141と操舵用アクチュエータ161とトルクセンサ162は、制御装置8に接続される。また、その制御装置8に、その第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141のストロークを検知するストロークセンサ131′、132′、133′、141′と、モニタ、外部記憶装置、プリンタ等のデータ出力装置154が接続されている。
【0037】
その制御装置8は、ドライビングシミュレータ1を制御する第1制御部21と、ステアリングシミュレータ100を制御する第2制御部22とを有する。その第1制御部21と第2制御部22は、それぞれコンピュータにより構成され、互いに信号を授受可能にインターフェイスを介して接続される。なお、その第1制御部21と第2制御部22を、両制御部21、22の機能を奏する1台のコンピュータから構成してもよい。
【0038】
その第1制御部21はドライビングシミュレーション用プログラムを記憶し、ドライビングシミュレータ側アクチュエータ3、5を上記入力部4、6、7の生成信号に応じてそのプログラムに従い制御する。すなわち、そのプログラムにより設定される車両重量、車輪と接地面との間の摩擦係数等の設定条件と、上記入力部4、6、7により生成された操舵角信号、操舵トルク信号、駆動信号、制動信号とに応じて、ドライビングシミュレータ側アクチュエータ3、5の制御パラメータを演算する。その制御パラメータとして、例えば車両の前後方向速度、前後方向加速度、横方向速度、横方向加速度、ヨーレート、セルフアライニングトルク、コーナリングフォース、走行距離、操舵方向等が求められるが、これらに限定されるものではない。その制御パラメータの算出は、実車走行試験におけるデータに基づき、公知の演算式を用いて行えばよい。
【0039】
その第2制御部22は、記憶したステアリングシミュレーション用プログラムに従いステアリングシミュレータ側アクチュエータ131、132、133、141を制御し、これにより、ステアリング装置104に操舵反力に相関する負荷が付与された状態をシミュレーションする。
そのため、先ず第2制御部22は、ドライビングシミュレータ1によりその伝達がシミュレーションされる操舵反力に相関する負荷を、第1制御部21から送られる信号に応じて求める。すなわち、その第1制御部21から、上記ドライビングシミュレーション用プログラムにおける設定条件、入力部4、6、7からの入力信号値、および第1制御部21により演算された制御パラメータに対応する信号が、第2制御部22に送られる。その第1制御部21から送られる信号は操舵反力に相関する負荷を求めるために用いられるもので、例えば車輪103に上下方向に沿い作用する車輪103の分担荷重やキングピン軸回りに作用するセルフアライニングトルクであり、車輪103の分担荷重はドライビングシミュレーション用プログラムにおける車両重量の設定条件から、セルフアライニングトルクは制御パラメータから求められる。
【0040】
次に、第2制御部22は、その操舵反力に相関する負荷に対応するストローク目標値を演算し、そのストローク目標値とストロークセンサによる第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141のストローク検出値との偏差をなくすように、第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141をフィードバック制御する。なお、ストロークセンサ131′、132′、133′、141′に代えて、操舵反力に相関する負荷に対応する第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141の駆動力を検知する駆動力センサを第2制御部22に接続するようにしてもよい。そのような駆動力センサは、例えば第1支持プレート121と第2支持プレート123との間に配置されて、第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141により付与される駆動力を検出する公知の多軸センサにより構成できる。この場合、第2制御部22は、操舵反力に相関する負荷に対応する駆動力目標値を演算し、その駆動力目標値と駆動力センサによる駆動力検出値との偏差をなくすように、第1〜第4アクチュエータ131、132、133、141をフィードバック制御する。すなわち、ステアリングシミュレータ側アクチュエータ131、132、133、141は、ドライビングシミュレータ1によりその伝達がシミュレーションされる操舵反力に相関する負荷をステアリング装置104に付与するように、第1制御部21から送られる信号に応じて第2制御部22によって制御される。
これにより、ステアリング装置104に操舵反力に相関する負荷、例えば、上記のような横加速度によるロール運動によって車輪に作用する負荷、路面の粗さ変化やタイヤ構造の相違に基づく車輪と路面との間の摩擦係数の変化をきたす負荷、コーナリングフォース、セルフアライニングトルク等が付与された状態がシミュレーションされる。すなわち、実際の車両走行時における操舵反力に相関する負荷に対応する負荷を、負荷付与機構111により台車105を介して付与することで、実際の車両においてステアリング装置104に負荷が付与された状態をシミュレーションできる。その負荷付与機構111により付与される負荷の大きさと方向が変更可能とされているので、走行条件の変更に応じたシミュレーションができる。
【0041】
また、第2制御部22は、ドライビングシミュレータ1の操作部4aの回転角度と同一角度だけステアリングホイール107が回転するように、第1制御部21から送られる舵角入力部4の角度センサ4bの生成信号に応じて、操舵用アクチュエータ161を制御する。これにより、ステアリング装置104は舵角入力部4の操作に対応して操舵される。
【0042】
上記第1制御部21が、入力部4、6、7の操作により生成される信号に応じてドライビングシミュレータ側アクチュエータ3、5を制御することで、操舵反力の伝達を含む車両挙動がシミュレーションされる。
すなわち、第1制御部21は、上記制御パラメータに応じて制御信号を出力することで上記本体作動用アクチュエータ3を制御する。
また、第1制御部21は、操作反力付加用アクチュエータ5を、第2制御部22から送られるステアリングシミュレータ100のトルクセンサ162により検出されるステアリング装置104の操舵反力の検出信号に応じて制御する。すなわち、ドライビングシミュレータ1の舵角入力部4の操作反力トルクが、ステアリングシミュレータ100のステアリング装置104の操舵トルクに一致するように、操作反力付加用アクチュエータ5が駆動される。これにより、そのステアリング装置104の操舵反力に対応する操作反力を舵角入力部4に付与することで、ドライビングシミュレータ1において、ステアリング装置104を操舵した場合の操舵反力の伝達のシミュレーションを行うことができる。
また、第1制御部21は、仮想の風景を生成するための画像信号を出力することで映像表示部9を制御する。すなわち、シミュレートされる本体2の前後方向速度、前後方向加速度、横方向速度、横方向加速度、ヨーレート等が、その制御パラメータに対応するように本体作動用アクチュエータ3が駆動され、車速、走行距離、操舵方向等に応じて仮想風景が変化するように映像表示部9に画像信号が出力される。
【0043】
上記ドライビングシミュレータ1およびステアリングシミュレータ100によるシミュレーションに際して、ドライビングシミュレータ1によりシミュレーションされる車両挙動を示す振動波形や、ステアリング装置104の特性を示す振動波形等がデータ出力装置154に出力され、ステアリング装置の機構や構造の解析や設計に利用される。
【0044】
上記構成によれば、第1制御部21によりドライビングシミュレータ側アクチュエータ3、5を制御することで、ドライビングシミュレータ1は操舵反力の伝達をシミュレーションし、その操舵反力に相関する負荷をステアリングシミュレータ100のステアリング装置104に付与するように、ステアリングシミュレータ側アクチュエータ131、132、133、141は第1制御部21から送られる信号に応じて第2制御部22によって制御される。
すなわち、その操舵反力に相関する負荷は、例えば車輪103に上下方向に沿い作用する車輪103の分担荷重、車速、キングピン軸回りに作用するセルフアライニングトルク等であり、これは第1制御部21に記憶されるドライビングシミュレーション用プログラムにより設定される車両走行条件、第1制御部21に入力される入力部4、6、7の生成信号、および第1制御部21によりドライビングシミュレータ側アクチュエータ3、5を制御するために演算される制御パラメータから求められる。すなわち、その操舵反力に相関する負荷を、そのドライビングシミュレーション用プログラムにより設定される車両走行条件、入力部4、6、7の生成信号、ドライビングシミュレータ側アクチュエータの制御パラメータに対応する第1制御部21からの信号により求めることができる。しかも、その入力部4、6、7の生成信号とドライビングシミュレータ側アクチュエータの制御パラメータは、ドライビングシミュレータ1のオペレータの操作により変化することから、多様な走行状態での操舵反力に相関する負荷を、実車走行実験により膨大なデータを蓄積することなく得ることができる。
また、ステアリング装置104の操舵用アクチュエータ161は、その舵角入力部4の操作に対応してステアリング装置104を操舵するように、第1制御部21から送られる舵角入力部4の生成信号に応じて第2制御部22によって制御されるので、舵角入力部4を操作すると同時にステアリング装置104を操舵できる。そのステアリング装置104の操舵反力の検出信号に応じて操作反力付加用アクチュエータ5を制御することで、その操舵反力に対応する操作反力を舵角入力部4に付与できる。よって、ドライビングシミュレータ1は、ステアリングシミュレータ100に装着されるステアリング装置104の操舵反力の伝達特性を、そのステアリング装置104に固有の属性を反映して忠実に再現できる。
さらに、そのステアリングシミュレータ100におけるステアリング装置104の動きは、ドライビングシミュレータ1によってシミュレーションされる車両挙動に対応することから、車両挙動のシミュレーションと同時に、車輪103のアラインメント変化や、操舵力伝達系の構成要素の動きを可視化できる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1制御部と第2制御部を通信装置を介して接続したり、あるいは、第1制御部と第2制御部によりデータの読み書きができる共有メモリを設け、この共有メモリを介して両制御部を接続してもよい。ステアリングシミュレータとして、台車に実際にロール運動をさせたり、車輪を実際に回転させることができる公知のものを用いてもよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、ステアリングシミュレータにより、実車走行データを要することなく多様な走行条件下でのシミュレーションができ、ドライビングシミュレータにより、特定のステアリング装置による操舵反力の伝達を正確にシミュレーションでき、そのステアリング装置や車輪の動きを可視化でき、ステアリング装置の開発、設計の効率向上に貢献できる汎用性の高い車両用シミュレーションシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のドライビングシミュレータとステアリングシミュレータの構成説明図
【図2】本発明の実施形態のドライビングシミュレータの斜視図
【図3】本発明の実施形態のステアリングシミュレータの正面図
【図4】本発明の実施形態のステアリングシミュレータの(1)は要部の平面図、(2)は固定装置の正面図、(3)は固定装置の側面図
【図5】車輪に作用する負荷の説明図
【符号の説明】
1 ドライビングシミュレータ
2 本体
3、5 アクチュエータ
4 舵角入力部
6 駆動力入力部
7 制動力入力部
8 制御装置
21 第1制御部
22 第2制御部
100 ステアリングシミュレータ
103 車輪
104 ステアリング装置
105 台車
111 負荷付与機構
161 操舵用アクチュエータ
162 トルクセンサ
Claims (2)
- ドライビングシミュレータとステアリングシミュレータとを備え、
そのドライビングシミュレータは、オペレータにより操作されることで信号を生成する舵角入力部を含む入力部と、その舵角入力部の操作反力付加用アクチュエータを含むドライビングシミュレータ側アクチュエータと、その入力部の操作に応じて操舵反力の伝達を含む車両挙動がシミュレーションされるように、その入力部の生成信号に応じてドライビングシミュレータ側アクチュエータを記憶したプログラムに従い制御する第1制御部とを有し、
そのステアリングシミュレータは、ステアリング装置に接続される車輪を有する台車と、そのステアリング装置の操舵用アクチュエータと、そのステアリング装置の操舵反力の検出手段と、そのステアリング装置に負荷を付与するステアリングシミュレータ側アクチュエータと、そのステアリング装置に操舵反力に相関する負荷が付与された状態がシミュレーションされるように、ステアリングシミュレータ側アクチュエータを記憶したプログラムに従い制御する第2制御部とを有し、
その第1制御部と第2制御部は互いに信号を授受可能に接続され、
そのステアリングシミュレータ側アクチュエータは、ドライビングシミュレータによりその伝達がシミュレーションされる操舵反力に相関する負荷をそのステアリング装置に付与するように、第1制御部から送られる信号に応じて第2制御部によって制御され、
その操舵用アクチュエータは、その舵角入力部の操作に対応してステアリング装置を操舵するように、第1制御部から送られる舵角入力部の生成信号に応じて第2制御部によって制御される車両用シミュレーションシステム。 - その操作反力付加用アクチュエータは、そのステアリング装置の操舵反力に対応する操作反力を発生するように、第2制御部から送られる操舵反力の検出信号に応じて第1制御部によって制御される請求項1に記載の車両用シミュレーションシステム。
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