JP3765327B2 - ろう付用アルミニウム合金複合部材及びろう付方法 - Google Patents

ろう付用アルミニウム合金複合部材及びろう付方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用ラジエータのチューブ材等に使用されるブレージングシートとして好適のろう付用アルミニウム合金複合部材及びろう付方法に関し、強度及び耐食性が高いと共に、ろう付性が良好なろう付用アルミニウム合金複合部材及びろう付方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用ラジエータのチューブ材等に使用されるろう付用アルミニウム合金複合部材には、Al−Mn系の合金(JIS 3003)を芯材とし、この芯材にAl−Si系のろう材を積層したブレージングシート使用されていた。しかし、Al−Mn系の合金(JIS 3003)を芯材した場合は、ブレージングシートのろう付後の強度は約110N/mm2であり、強度が不十分であることに加え、耐食性についても十分であるとはいえなかった。ろう付後の強度については、芯材とする合金材にMgを添加することにより、向上させることができるものの、ろう材による芯材の浸食が大きくなるため、ろう付性が低下することに加え、耐食性が低下してしまうという問題点があった。特にノコロック法によるろう付では、芯材のMg含有量が0.2重量%を超えた場合に、ろう付性が極めて低下する。このため、芯材の合金にMgを添加することはあまり好ましくない。
【0003】
そこで、ろう付性を低下させることがなく、ろう付後の強度を向上させる技術が提案されている(特開平2−175093号公報、特開平4−198446号公報、特開平4−198447号公報、特開平4−198448号公報、特開平2−50934号公報、特開平2−142672号公報、特開平4−297541号公報、特開平5−230577号公報及び特開平6−145859号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の公知技術では、アルミニウム合金複合部材の更に一層の薄肉化を図るためには、不十分であるという問題点がある。
【0005】
特開平2−175093号公報に記載のアルミニウム合金複合部材では、皮材におけるZn含有量が2重量%以下と少ないため、芯材のCu含有量が0.2重量%を超えた場合に、犠牲陽極効果が不十分となり、粒界腐食が発生する虞れがある。また、芯材がTiを含有していないため、十分な耐食性を得ることができないという難点がある。
【0006】
特開平4−198446号公報に記載のアルミニウム合金複合部材では、皮材にZnが添加されておらず、Znに替えてIn、Sn及び/又はGa等が添加されている。しかしながら、これらの元素はあまり一般的に使用されないものであるため、製造コストを上昇させるという問題点がある。また、このような元素を添加した場合は、スクラップ後の再利用性について問題が生じる。このため、前述の元素を皮材に添加することはあまり好ましくない。なお、特開平4−198446号公報における実施例には、皮材にZnを添加したものを記載されているが、その添加量が1.5重量%と少ないため、芯材にCuを0.2重量%を超えて添加した場合に、犠牲陽極効果が不十分となり、粒界腐食が発生する虞れがある。
【0007】
特開平4−198447号公報に記載のアルミニウム合金複合部材では、皮材にZnが添加されているものの、その添加量が0.5乃至2.0重量%と少量であるため、芯材にCuを0.2重量%を超えて添加した場合に、犠牲陽極効果が不十分となり、粒界腐食が発生する虞れがある。
【0008】
特開平4−198448号公報に記載のアルミニウム合金複合部材では、皮材にZnが添加されていないため、上述のアルミニウム合金複合部材と同様に、芯材にCuを0.2重量%を超えて添加した場合に、粒界腐食が発生する虞れがある。
【0009】
また、上述の従来技術に加え特開平2−50934号公報、特開平2−142672号公報、特開平4−297541号公報、特開平5−230577号公報及び特開平6−145859号公報に記載のアルミニウム合金複合部材においても、ろう付後のアルミニウム合金複合部材の強度は最大で200N/mm2程度であり、より一層の薄肉化を図るためには、この強度では不十分である。
【0010】
このように上述の従来技術では、強度、耐食性及びろう付性のいずれついても兼ね備えたアルミニウム合金複合部材を得ることは困難である。その一方で、自動車用のラジエータのような熱交換器等においては、軽量化及び製造コストの低減を図るために、素材を薄肉化することが要望されている。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、高強度であると共に高耐食性を有し、更にろう付性が良好なろう付用高強度アルミニウム合金複合部材及びろう付方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るろう付用アルミニウム合金複合部材は、Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、前記芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有し、ろう付後に前記皮材と前記芯材との境界部にMgSiが析出していることを特徴とする。
【0013】
前記芯材は、更にCr:0.3重量%以下及びZr:0.3重量%以下からなる群から選択された1種以上の元素を含有することが好ましい。この場合に、前記芯材のCr含有量は0.02重量%以上であることが好ましく、また前記芯材のZr含有量は0.02重量%以上であることが好ましい。
【0014】
前記芯材のMg含有量は0.1重量%以下に規制されていることが好ましい。
前記芯材のCu含有量は0.8重量%以下であることが好ましい。
【0015】
前記芯材のFe含有量は0.02重量%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るろう付用アルミニウム合金複合部材は、被接合材にろう付後、前記芯材の孔食電位は前記皮材及びろう材の孔食電位に比して貴であり、前記芯材と前記皮材との孔食電位差が80乃至180mVであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る第1のろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法は、Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、この芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有するろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法であって、前記アルミニウム合金複合部材を被接合材に加熱してろう付した後に、冷却速度を35℃/分以上として冷却し、次いで170乃至200℃の温度で25分以上時効処理することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る第2のろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法は、Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、この芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有するろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法であって、前記アルミニウム合金複合部材を被接合材に加熱してろう付した後に、550乃至200℃までの冷却速度を[冷却速度(℃/分)]≧−3500×[芯材のMg含有量(質量%)]+800として冷却し、次いで170乃至200℃の温度で25分以上時効処理することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係るアルミニウム合金複合部材は、芯材の一面に皮材が積層され、他面にろう材が積層させたものである。本願発明者等は、Cuは芯材の強度向上に不可欠な成分であるものの、Cuが芯材の結晶粒界に析出し、粒界に隣接するマトリックスのCu含有量が減少して、孔食電位が皮材に対して卑な帯域(PFZ)が形成され、PFZが腐食されやすくなることを見出した。芯材の強度を向上させつつ、この腐食を防止するために種々実験研究した結果、CuによってPFZが形成される場合でも、2.2重量%を超えるZnを皮材に含有させることにより、皮材の孔食電位を低下させてPFZより卑なものとすれば、耐食性を良好なものとしつつ、芯材の強度を向上させることができることを見出した。
【0020】
また、本発明に係るアルミニウム合金複合部材は、芯材が適量のSiを含有すると共に、皮材が適量のMgを含有するため、ろう付後、芯材と皮材との接触部にMg2Siが析出し、アルミニウム合金複合部材の強度が向上する。
【0021】
本発明に係るアルミニウム合金複合部材のろう付方法においては、上述のアルミニウム合金複合部材をろう付した後、冷却速度並びに時効処理における処理温度及び処理時間を適切なものとして、芯材と皮材との接触部にMg2Siを析出させ、ろう付後のアルミニウム合金複合部材の引張強さを向上させる。
【0022】
以下、ろう付用アルミニウム合金複合部材における芯材、皮材及びろう材の成分限定理由並びにろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法における冷却速度及び時効処理条件の数値限定理由について説明する。先ず、芯材のアルミニウム合金材の成分限定理由について説明する。
【0023】
芯材のMg(マグネシウム):0.2重量%以下
Mgは芯材の強度を向上させる効果が大きい元素である。但し、Mg含有量が0.2重量%を超えると、ろう付性が低下してしまう。特に、ノコロック法によるろう付ではその低下が極めて大きい。従って、芯材のMg含有量を0.2重量%以下に規制する。但し、ろう付性の低下をより一層抑制するためには、Mg含有量を0.1重量%以下とすることが好ましい。
【0024】
芯材のCu(銅):0.3乃至1.0重量%
Cuは芯材の強度を向上させる元素であり、またろう材側の耐食性も向上させる。しかし、芯材にCuを添加すると、粒界腐食感受性が増大するため、皮材面側の耐食性を低下させてしまう。即ち、Cuはアルミニウムマトリックスに固溶して芯材の孔食電位を貴なものとするものの、同時にCuは結晶粒界に析出しやすいため、同粒界に隣接するマトリックスではCu含有量が減少して、孔食電位が卑な帯域(PFZ)が発生し、PFZで腐食が発生しやすくなる。そこで、後述のように皮材に2.2重量%を超えてZnを含有させることにより、皮材の孔食電位をPFZに対して卑に設定することができ、粒界腐食を防止することができる。即ち、皮材のZn含有量を多くすることによって、芯材に対する皮材の電位を芯材マトリックスに加え、PFZに対しても低く設定することが可能となり、粒界腐食を防止しつつ、芯材にCuを所定量含有させることが可能となった。
【0025】
Cu含有量が0.3重量%未満では、芯材の強度を向上させるには不十分である。一方、Cu含有量が1.0重量%を超えると、芯材の融点が低下し、ろう付作業性が低下する。従って、芯材のCu含有量は0.3乃至1.0重量%とし、好ましくは、Cu含有量を0.8重量%以下とする。
【0026】
芯材のSi(けい素):0.3乃至1.0重量%
Siは芯材の強度を向上させる元素であり、特にMn−Si系析出物と皮材から拡散するMgとが反応して、Mg2Si金属間化合物が析出し、これにより芯材の強度が向上する。Si含有量が0.3重量%未満では、析出するMg2Si金属間化合物の量が少ないため、芯材の強度の向上が不十分となる。一方、Si含有量が1.0重量%を超えると、芯材の融点が低下すると共に、低融点相の増加に起因してろう付作業性が低下する。従って、芯材のSi含有量は0.3乃至1.0重量%とする。
【0027】
芯材のCu及びSi:総量で1.3乃至1.6重量%
上述のように、Cu及びSiのいずれについても、その含有量が1.0重量%を超えると、ろう付作業性が低下する。但し、Cu及びSiの含有量がいずれも1.0重量%以下であっても、総量で1.6重量%を超えると、ろう付作業性が低下する。一方、Cu及びSiの含有量が、いずれも0.3重量%以上であっても、総量で1.3重量%未満の場合は、芯材の強度向上が不十分となる。従って、芯材のCu及びSiの含有量は総量で1.3乃至1.6重量%とする。
【0028】
芯材のMn(マンガン):0.8乃至1.5重量%
Mnは芯材の耐食性、ろう付性及び強度を向上させる元素である。Mn含有量が0.8重量%未満では、芯材の強度を十分に向上させることができない。一方、Mn含有量が1.5重量%を超えると、巨大金属間化合物が生成されるため、加工性及び耐食性が低下する。従って、芯材のMn含有量は0.8乃至1.5重量%とする。
【0029】
芯材のTi(チタン):0.02乃至0.3重量%
Tiは芯材の耐食性をより一層向上させる元素である。Ti含有量が0.02重量%未満では、芯材の耐食性を十分に向上させることができない。一方、Ti含有量が0.3重量%を超えると、耐食性を向上させる効果は既に飽和しており、巨大金属間化合物が生成されることに起因して、加工性及び耐食性が低下してしまう。従って、芯材のTi含有量は0.02乃至0.3重量%とする。
【0030】
このように、Tiは芯材の耐食性を向上させるために不可欠な元素であり、芯材にTiが含有されていると、芯材において層状に析出して、孔食が深さ方向に進行することが抑制される。また、Tiは芯材の電位を貴な方向に移動させる。更に、Tiはアルミニウム合金中における拡散速度が小さいため、ろう付時に、殆ど拡散することがない。このため、Tiを含有させることにより、芯材とろう材との間の電位差及び芯材と皮材との間の電位差を維持して、電気化学的に芯材を防食することができる。
【0031】
芯材のFe(鉄):0.2重量%以下
Feは芯材の結晶粒を微細化し、芯材の強度を向上させる元素である。Fe含有量が0.2重量%を超えると、芯材の耐食性が低下してしまう。従って、芯材のFe含有量は0.2重量%以下とする。なお、より好ましいFe含有量は0.02乃至0.2重量%である。
【0032】
芯材のCr(クロム):好ましくは、0.3重量%以下
Crは芯材の耐食性、強度及びろう付性を向上させる元素である。Cr含有量が0.3重量%を超えると、耐食性、強度及びろう付性の向上させる効果は既に飽和しており、巨大金属間化合物が生成され、加工性が低下してしまう。従って、芯材のCr含有量は0.3重量%以下とすることが好ましい。なお、より好ましいCr含有量は、0.02乃至0.3重量%である。
【0033】
芯材のZr(ジルコニウム):好ましくは、0.3重量%以下
Zrは結晶粒を制御して芯材の耐食性及びろう付性を向上させる元素である。Zrが0.3重量%を超えると、耐食性及びろう付性を向上させる効果は既に飽和しており、巨大金属間化合物が生成され、加工性が低下してしまう。従って、芯材のZr含有量は0.3重量%以下とすることが好ましい。なお、より好ましいZr含有量は、0.02乃至0.3重量%である。
【0034】
次に、皮材成分の限定理由について説明する。
【0035】
皮材のMg(マグネシウム):2.0乃至3.0重量%以下
Mgは皮材の強度を向上させる元素である。ろう付時に加熱された場合に、皮材中のMgが芯材へ拡散することにより、芯材においてMg2Siが形成され、ろう付後の合金複合部材の強度を向上させる。Mg含有量はろう付条件等により異なるものの、いずれの場合においても、Mg含有量が2.0重量%未満では、皮材の強度向上が不十分である。一方、Mg含有量が3重量%を超えると、クラッド圧着性が低下して、皮材を芯材に積層させることが困難となる。従って、皮材のMg含有量は2.0乃至3.0重量%とする。
【0036】
皮材のZn(亜鉛):2.2重量%を超えて5.0重量%以下
上述のように、本発明における芯材はMn、Cu及びTiを含有しており、また必要に応じてCr等を含有している。このような金属元素を芯材に含有させると、芯材の孔食電位が高くなり、相対的に皮材の孔食電位が低下することによって、皮材は犠牲陽極として機能する。但し、Cuは加熱後の冷却により、芯材の結晶粒界に析出する。このような析出が発生すると、芯材内の結晶の粒界に隣接する部分(PFZ)では、Cu濃度が低下して、PFZにおける孔食電位が低下する。このため、PFZが腐食されやすくなってしまう。このような腐食を防止するためには、芯材のCu含有量を0.2重量%以下に抑制し、Cuに替えて他の元素成分の添加量を増加することによって、芯材の電位を維持するといったことが考えられる。しかし、上述のようにCuは、芯材の強度を向上させるのに必要な成分であり、その含有量が0.3重量%以上であることが必要である。このようなCu濃度を維持しつつ、芯材のPFZと皮材と間の孔食電位差を維持するために、皮材の孔食電位を低下させるZnを含有させ、そのZn含有量を2.2重量%を超えて5.0重量%以下とする。皮材のZn含有量が2.2重量%以下では、皮材と芯材のPFZとの間の電位差が不十分なものとなり、粒界近傍に腐食が発生しやすく、皮材側の芯材の耐食性が低下してしまう。一方、皮材のZn含有量が5.0重量%を超えると、ろう付時に炉内が汚染する虞れがあると共に、皮材の消耗が激しく、耐食性が低下する。従って、皮材のZn含有量は、2.2重量%を超えて5.0重量%以下とする。
【0037】
皮材のSi(けい素):0.1乃至1.0重量%
Siは皮材の強度を向上させる元素である。Si含有量が、0.1重量%未満では、その効果が小さい。一方、Si含有量が1.0重量%を超えると、皮材の融点が低下するため、ろう付時にバーニングが生じる。従って、皮材のSi含有量は0.1乃至1.0重量%とする。
【0038】
なお、アルミニウム合金複合部材の板厚がより一層厚くなる場合には、上述の成分以外にMn、Cu、Ti及び/又はZr等を皮材に含有させ、皮材の強度を向上させてもよい。但し、この場合は、皮材におけるMn、Cu、Ti及び/又はZr等の含有量は、芯材におけるものと同程度とする。
【0039】
次に、ろう材及び芯材と皮材との間の孔食電位差について説明する。
【0040】
ろう材のZn(亜鉛):好ましくは、2.2を超え5.0重量%
ろう材には、従来より使用されているAl−Si系合金材、例えばJIS A4045に規定される合金材を使用することができる。また、ろう材にZnを添加することにより、ろう材を積極的に犠牲陽極として作用させることができる。この場合には、ろう材のZn含有量を皮材のZn含有量と略同一とすることが好ましく、即ち2.2を超え5.0重量%とすることが好ましい。
【0041】
芯材と皮材との間の孔食電位差:好ましくは、芯材を貴として80乃至180m
上述した芯材、皮材及びろう材からなるアルミニウム合金複合部材を使用して、ラジエータ等のチューブ材を製造する場合には、皮材を内周面、ろう材を外周面となるように製管する。この場合において、内面耐食性を向上させるには皮材を芯材に対して犠牲陽極的に作用させることが有効である。しかし、ノコロックろう付法により、ろう付される場合には、大気圧下でろう付けされるため、皮材中のZnが殆ど蒸発しない。このため、ろう付時の加熱により、Znは芯材内に拡散し、表面のZn濃度は低下してしまう。
【0042】
通常、ラジエータ等のチューブの内面クーラント(エンジン冷却水)側の耐食性を芯材の犠牲陽極効果によって、より一層向上させるためには、皮材表面と芯材マトリックスとの電位差を30mV以上とすることが必要である。しかし、本発明における芯材のように、芯材のCu含有量が0.2重量%以上である場合は、Al−Si−Cu−Mg系金属間化合物が粒界に析出するため、粒界近傍のCu欠乏帯における孔食電位は芯材マトリックスより約30乃至60mV低くなって、腐食の原因となる。このため、実質的には芯材と皮材との間の孔食電位差を80mV以上に設定することが好ましい。一方、孔食電位差が180mVを超えると、皮材の消耗速度が大きくなり、長期に亘る犠牲陽極効果を得ることが困難となる。従って、ろう付後の芯材と皮材との間の孔食電位差は、80乃至180mVとすることが好ましい。
【0043】
なお、芯材と皮材との間の孔食電位差は芯材組織、皮材組織及びろう付条件により変化するが、上述の範囲内であれば、長期に亘って優れた耐食性を維持することができる。また、十分な犠牲陽極効果を得るため、芯材とろう材との孔食電位差は30mV以上であることが好ましい。
【0044】
次に、請求項9に係るろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法におけるろう付加熱後の冷却速度及び時効処理の数値限定理由について説明する。
【0045】
冷却速度:35℃/分以上
ろう付加熱後の冷却速度はろう付後のアルミニウム合金複合部材の強度に影響を及ぼす。即ち、冷却速度が高いほど、MgSiの固溶量が多くなり、その後の時効による析出硬化量が多くなる。冷却速度が35℃/分未満では、冷却中にMg2Siが粗大に成長するため、強度向上効果が不十分となる。従って、ろう付加熱後の冷却速度は35℃/分以上とする。
【0046】
時効処理温度:170乃至200℃
ろう付後に時効処理を施すことにより、Mg2Siの析出を促進し、ろう付後のアルミニウム合金複合部材の強度を向上させることができる。時効処理温度が170℃未満では、析出が促進されず、強度の向上が不十分である。一方、時効処理温度が200℃を超えると、Mg2Siが粗大に成長するため、強度向上効果が不十分となる。従って、時効処理温度は170乃至200℃とする。
【0047】
時効処理時間:25分以上
時効処理温度が低い場合と同様に、時効処理時間が25分未満では、Mg2Siの析出が促進されず、強度の向上が不十分である。従って、時効処理時間は25分以上とする。
【0048】
次に、請求項10に係るろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法におけるろう付加熱後の冷却速度の数値限定理由について説明する。
【0049】
[冷却速度(℃/分)]≧− 3500 ×[芯材のMg含有量(重量%)]+ 800
ろう付加熱後の550乃至200℃までの冷却速度はろう付後の強度に影響を及ぼす。即ち、冷却速度が高いほど、Mg2Siの固溶量が多くなり、その後の時効による析出硬化量が多くなる。冷却速度を[冷却速度(℃/分)]≧−3500×[芯材のMg含有量(重量%)]+800に従って制御することにより、引張強さが250N/mm2と高いものとなる。
【0050】
なお、請求項10に係るろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法における時効処理温度及び時間は上述のものと同一である。
【0051】
次に、本発明の実施例について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施例に係るろう付用アルミニウム合金複合部材を示す断面図である。図1に示すように、チューブ(ろう付用アルミニウム合金複合部材)4の芯材1の内面は、皮材2により覆われている。芯材1の外面にはろう材3が形成されており、加熱時にチューブ4を被接合材にろう付する。
【0052】
このように構成されたろう付用アルミニウム合金複合部材においては、芯材3の強度が高いため、チューブ4全体を高強度なものとし、また、皮材2が犠牲陽極として機能するため、皮材2に接触する液体等により、チューブ4が腐食することがない。このようなチューブを所定の温度に加熱して、ろう材3によりチューブ4を被接合物に固着した場合は、強度及び耐食性を兼ね備えた製品を得ることができる。
【0053】
図2は本発明の第2実施例に係るろう付用アルミニウム合金複合部材を示す断面図である。図2に示すように、チューブ(ろう付用アルミニウム合金複合部材)14の皮材12の両面に芯材11が密着している。芯材11の皮材12との反対側の面にはろう材13が形成されている。即ち、チューブ14の外面はろう材13により形成されている。
【0054】
このように構成されたろう付用アルミニウム合金複合部材においては、チューブ14の内面及び外面はろう材13より形成されている。このため、ろう材13の外面に加え、ろう材12の内面に被接合物を固着することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0056】
第1実施例
第1実施例では芯材及び皮材の化学成分が特許請求範囲内の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。実施例(実施例1〜13)及び比較例(比較例1〜23)において使用された芯材の化学成分を下記表1に示す。下記表1において、芯材No.1〜9の成分は請求項1にて規定した範囲内のものであり、芯材No.10、11及び26は請求項2にて規定した範囲内のものであり、芯材No.1225の成分は請求項1及び2にて規定した範囲外のものである。
【0057】
【表1】
Figure 0003765327
Figure 0003765327
【0058】
実施例(実施例1〜13)及び比較例(比較例1〜23)において使用された皮材の化学成分を下記表2に示す。下記表2において、皮材No.1〜5の成分は本発明にて規定した範囲内のものであり、皮材No.6〜11の成分は本発明にて規定した範囲外のものである。
【0059】
【表2】
Figure 0003765327
【0060】
上記表1に示す各芯材の一方の表面に上記表2に示す各皮材を形成すると共に、他方の表面にろう材(JIS 4045。Si:10重量%、Fe:0.05重量%、Cu:0.05重量%、Ti:0.02重量%及びAl:残部)を合わせて、図1に示すチューブ(ろう付用アルミニウム合金複合部材)4を得た。チューブ4における芯材の番号及び板厚、皮材の番号、板厚及びクラッド率、ろう材の板厚並びに複合部材の全厚を下記表3に示す。
【0061】
【表3】
Figure 0003765327
Figure 0003765327
【0062】
本実施例におけるろう付用アルミニウム合金複合部材は自動車用ラジエータチューブ等に使用される。従って、ろう付用アルミニウム合金複合部材を使用して自動車用ラジエータを組み立て、このラジエータに対して各種試験を実施することが好ましい。以下に、自動車用ラジエータを組み立て方法を示す。
【0063】
図3は自動車用ラジエータの一部を示す断面図である。図3に示すように、ラジエータはチューブ(ろう付用アルミニウム合金複合部材)34、フィン35及びヘッダ36から形成される。チューブ34の芯材31の内面は、皮材32により覆われており、皮材32に被覆されたチューブ34の内側の中空部37を液体が流れるようになっている。芯材31の外面にはろう材33が形成されており、加熱時にチューブ34を被接合材にろう付する。このようなチューブ34に加え、熱を放出するためのフィン35及びチューブ34を連結するヘッダ36を用意する。
【0064】
次に、複数本のチューブ34のろう材33の表面にノコロック用フラックスを5g/m2塗布した後、乾燥させる。各チューブ34を平行に配置すると共に、チューブ34同士の間の中央部にフィン35を配置し、更にチューブ34の端部にヘッダ36を配置して、各部材をラジエータ状に配置する。次に、このように配置された各部材を、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱した後、冷却する。これにより、チューブ34とフィン35とが固着されると共に、チューブ34とヘッダ36とが固着される。
【0065】
図3に示すように、ろう付後、チューブ34はラジエータの一部となってしまうため、ろう付後にアルミニウム合金複合部材自体の諸特性を試験することは困難である。そこで、上記表3に示す各複合部材(実施例1〜13及び比較例1〜23)に、次のような試験を施した。以下に、具体的な試験方法について説明する。
【0066】
ろう付試験
ろう付試験におけるろう付性評価を簡易化及び定量化するために、ドロップ試験による流動係数によりろう付性を評価した。ドロップ試験とは、アルミニウム複合部材(平板)を吊した後、加熱する試験であり、流動係数(%)は、下記数式1のように定義される。
【0067】
【数1】
{(ろう付前のろう材の板厚−ろう付後のろう材の板厚)/(ろう付前のろう材の板厚)}×100
【0068】
本実施例においては、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱し、上記数式1の流動係数が65%未満のものを「×」、65乃至70%のものを「○」、70%を超えるものを「◎」とした。得られた結果を下記表4のろう付性欄に示す。
【0069】
引張強さ試験
上述のろう付試験に使用したろう付用アルミニウム合金複合部材と同一のものを用意し、このろう付用アルミニウム合金複合部材を、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱した後、550乃至200℃までの冷却速度を35℃/分として冷却し、その後170℃の温度で25分間時効処理した。時効処理後のアルミニウム合金複合部材を7日間放置し、次いで引張強さ試験した。引張強さが220N/mm未満のものを「×」、220N/mm以上のものを「○」とした。得られた結果を下記表4のろう付後引張強さ欄に示す。
【0070】
ろう材側腐食試験
上述のろう付試験に使用したろう付用アルミニウム合金複合部材と同一のものを用意し、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱したろう付用アルミニウム合金複合部材にCASS試験(CopperAccelerated Acctic Acid Salt Spray Test)を250時間施した。ろう材側腐食深さが、0.04mm以下のものを「◎」、0.04を超え0.06mm以下のものを「○」、0.06mmを超えるものを「×」とした。得られた結果を下記表4のろう材側腐食深さ欄に示す。
【0071】
皮材側腐食試験
上述のろう付試験に使用したろう付用アルミニウム合金複合部材と同一のものを用意し、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱したろう付用アルミニウム合金複合部材を人工水(Cl:300ppm、SO:100ppm、Cu:5ppm)に浸漬して腐食試験した。先ず、人工水の温度を88℃とし、この人工水にろう付用アルミニウム合金複合部材を8時間浸漬し、更に温度が室温の人工水に16時間浸漬する。1日間における浸漬手順をこのように実施し、この手順を連続30日実施した後、ろう付用アルミニウム合金複合部材の腐食発生状況を調査した。皮材側腐食深さが0.03mm以下のもの(腐食が芯材に達することなく、皮材に留まったもの)を「○」とし、0.03mmを超えるものを「×」とした。得られた結果を下記表4の皮材側腐食深さ欄に示す。
【0072】
孔食電位測定
上述のろう付試験に使用したろう付用アルミニウム合金複合部材と同一のものを用意し、露点が−40℃、酸素濃度が200ppm以下である窒素雰囲気中で、600℃の温度で5分間加熱したろう付用アルミニウム合金複合部材の皮材表面の一部をエメリー研磨紙により機械的に除去して芯材を露出させた後、皮材と芯材との間の孔食電位差を測定した。なお、電解液として3.5質量%NaCl水溶液(N脱気)を用意し、この水溶液の温度を25℃に設定した後、溶液中にろう付用アルミニウム合金複合部材を浸漬し、ポテンションスタットを使用して電位操作法(10mV/分)により、芯材と皮材との間の孔食電位差を測定した。芯材の孔食電位を貴とし、皮材の孔食電位を卑とした場合に、孔食電位差が80乃至180mVのものを「○」、それ以外のものを「×」とした。得られた孔食電位差を下記表4に示す。
【0073】
【表4】
Figure 0003765327
Figure 0003765327
【0074】
上記表4に示すように、実施例1〜13では、流動係数が65%以上とろう付性が良好であった。また、ろう付後の引張強さは220N/mm2以上であり、いずれの実施例においても高い強度を得ることができた。また、いずれの実施例においても、ろう材側腐食深さが0.06mm以下であると共に、皮材側腐食深さが0.03mm以下であり、また孔食電位差が80mV以上であって、耐食性が良好であった。
【0075】
請求項2にて規定した範囲内の実施例14では、芯材にCrを0.1重量%含有させたため、流動係数が72%と極めて高くなって、ろう付性が良好であった。また、ろう材側の腐食深さが0.04mmと浅く、耐食性が良好であった。更に、実施例1に比して引張強さが228N/mm2と若干向上した。同様に、実施例15では、芯材にZrを0.1重量%含有させたため、流動係数が75%と極めて高くなって、ろう付性が良好であった。また、ろう材側の腐食深さが0.04mmと浅く、耐食性が良好であった。実施例16では、芯材にCr及びZrを、夫々、0.1重量%含有させたため、流動係数が75%と極めて高くなって、ろう付性が良好であると共に、ろう材側の腐食深さが0.04mmと浅く、耐食性が良好であった。このように、芯材にCr及び/又はZrを含有させることにより、ろう付性が向上すると共に耐食性が高くなり、更に強度が向上する。
【0076】
比較例3〜16は、芯材の化学組成が本発明にて規定した範囲外のものである。比較例3では、芯材のSi含有量が0.2重量%と少ないため、Mg2Si金属間化合物の析出量が不十分であり、引張強さが191N/mm2と低下した。比較例4では、芯材のCu含有量が0.2重量%と少ないため、引張強さが192N/mm2と低下した。比較例5では、芯材のSiとCuとの総量が1.0重量%と少ないため、引張強さが191N/mm2と低下した。比較例6では、芯材のSiとCuとの総量が1.8重量%と多いため、流動係数が50%とろう付性が劣化した。また、ろう材側の腐食深さが0.10mmと深くなり、耐食性が劣化した。比較例7では、芯材のMn含有量が0.5重量%と少ないため、引張強さが208N/mm2と低下した。比較例8では芯材のMg含有量が0.3重量%と多いため、流動係数が30%と極めて低下して、ろう付性が劣化すると共に、ろう材側腐食深さ及び皮材側腐食深さが、夫々、貫通及び0.18mmと極めて深くなり、耐食性が劣化した。比較例9では、芯材がTiを含有していないため、ろう材側腐食深さ及び皮材側腐食深さが、夫々、0.14mm及び0.20mmと極めて深くなり、耐食性が劣化した。比較例10では、芯材のFe含有量が0.3重量%と多いため、耐食性が低下して、ろう材側及び皮材側のいずれの腐食深さも、夫々、0.10mm及び0.05mmと深くなった。また、ろう付性が劣化した。比較例11では、芯材のSi含有量が1.2重量%と多いため、芯材の融点が低下すると共に、低融点相が増加して、ろう付性が58%と低下した。また、ろう材側の腐食深さが0.10mmと深くなった。比較例12では、芯材のCu含有量が1.2重量%と多いため、芯材の融点が低下してろう付性が60%と低下する共に、ろう材側の腐食深さが0.10mmと深くなった。比較例13では、芯材のMn含有量が1.6重量%と多いため、巨大金属間化合物が形成され、耐食性が劣化した。このため、ろう材側及び皮材側のいずれについても、腐食深さが、夫々、0.12mm及び0.06mmと深くなった。比較例14では、芯材のTi含有量が0.4重量%と多いため、巨大金属間化合物が形成され、ろう材側及び皮材側のいずれについても、腐食深さが、夫々、0.10mm及び0.05mmと深くなった。比較例15では、芯材のCr含有量が0.4重量%と多いため、巨大金属間化合物が形成され、耐食性が劣化した。このため、ろう材側及び皮材側のいずれについても、腐食深さが、夫々、0.09mm及び0.05mmと深くなった。比較例16では、芯材のZr含有量が0.4重量%と多いため、比較例15と同様に、ろう材側及び皮材側のいずれについても、腐食深さが、夫々、0.09mm及び0.05mmと深くなった。
【0077】
比較例18〜23は、皮材の化学組成が本発明にて規定した範囲外のものである。比較例18では、皮材のMg含有量が1.5重量%と少ないため、ろう付後の引張強さが207N/mm2と低下した。比較例19では、皮材のZn含有量が2.0重量%と少ないため、腐食が皮材を貫通してしまい、耐食性が不良であった。また、孔食電位差が75mVと低かった。比較例20では、皮材のMg含有量が3.2重量%と多いため、クラッド圧着性が低下して、アルミニウム合金複合部材を得ることができなかった。比較例21では、皮材のZn含有量が5.5重量%と多いため、皮材の消耗が激しく、耐食性が低下した。このため、皮材側の腐食深さが0.05mmと深くなった。また、皮材と芯材との間の孔食電位差が185mVと大きくなった。比較例22では、皮材のSi含有量が0.05重量%と少ないため、ろう付後の強度向上が不十分であり、引張強さが218N/mm2と低かった。比較例23では、皮材のSi含有量が1.2重量%と多いため、皮材側の腐食深さが0.05mmと深くなった。
【0078】
第2実施例
第2実施例ではろう付加熱後の冷却速度を35℃/分以上とし、時効処理を170乃至200℃の温度で25分以上とした実施例(実施例14〜25)について、その特許請求の範囲から外れる比較例(比較例24〜27)と比較して説明する。
【0079】
ろう付用アルミニウム合金複合部材には、上記表3に示す実施例1及び9のものを用意し、第1実施例と同様に引張強さ試験を実施した。引張強さ試験方法及び評価基準は、第1実施例のものと同一である。但し、引張強さが250N/mm2を超えるものは「◎」とした。得られた結果を下記表5に示す。
【0080】
【表5】
Figure 0003765327
【0081】
上記表5に示すように、実施例14〜25では、ろう付加熱後の冷却速度が35℃/分以上であり、また時効処理の温度及び時間が、夫々、170乃至200℃及び25分以上であったため、いずれも引張強さが220N/mm2以上と高いものとなった。
【0082】
比較例24では、冷却速度が20℃/分と低速であったため、引張強さが202N/mm2と低かった。比較例25では、時効処理温度が150℃と低温であったため、引張強さが205N/mm2と低かった。比較例26では、時効処理時間が15分と短時間であったため、引張強さが208N/mm2と低かった。比較例27では、時効処理温度が230℃と高温であったため、引張強さが198N/mm2と低かった。
【0083】
第3実施例
第3実施例では、各実施例のろう付加熱後の550乃至200℃までの冷却速度を下記数式2の条件を満たすものとした。
【0084】
【数2】
[冷却速度(℃/分)]≧−3500×[芯材のMg含有量(重量%)]+800
【0085】
また、各実施例の時効処理を170乃至200℃の温度で25分以上とした。得られた各実施例(実施例26、27)について、その特許請求の範囲から外れる比較例(比較例28〜37)と比較して説明する。
【0086】
ろう付用アルミニウム合金複合部材には、上記表3に示す実施例1及び9のものを用意し、引張強さ試験を実施した。引張強さ試験方法及び評価基準は、第2実施例のものと同一である。得られた結果を下記表6に示す。
【0087】
【表6】
Figure 0003765327
【0088】
上記表に示すように、実施例26、27では、ろう付加熱後の冷却速度が極めて速いため、上記数式2を満たし、また時効処理の温度及び時間が、夫々、170℃及び25分であったため、いずれも引張強さが250N/mm以上と高いものとなった。
【0089】
比較例28乃至31では、芯材にMgが含有されていないため、上記数式2から要求される冷却速度は800℃/分となる。比較例28乃至31では、冷却速度が50、150、300及び500℃/分と、800℃/分に比して低速であったため、引張強さが、夫々、226、227、232及び242N/mm2と低かった。比較例32乃至34では、芯材のMg含有量が0.1mgであるため、上記数式2から要求される冷却速度は450℃/分となる。比較例32乃至34では、冷却速度が50、150及び300℃/分と、上記数式2から要求される冷却速度450℃/分に比して、低速であったため、引張強さが、夫々、236、242及び248N/mm2と低かった。
【0090】
比較例35では、時効温度が150℃と低温であるため、Mg2Siの析出が促進されず、引張強さが238N/mm2と低かった。比較例36では、時効時間が15分と短時間であったため、Mg2Siの析出が促進されず、引張強さが240N/mm2と低かった。比較例37では、時効温度が230℃と高温であるため、Mg2Siが粗大金属間化合物となり、引張強さが230N/mm2と低かった。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るろう付用アルミニウム合金複合部材によれば、芯材及び皮材の化学成分が適切であるので、ろう付後の強度が高いと共に耐食性が良好となる。
【0092】
また、本発明に係るろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法によれば、ろう付加熱後の冷却速度並びに時効処理における処理温度及び処理時間が適切であるので、ろう付後の強度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るろう付用アルミニウム合金複合部材を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るろう付用アルミニウム合金複合部材を示す断面図である。
【図3】自動車用ラジエータのチューブの一部を示す断面図である。
【符号の説明】
1,11,31;芯材
2,12,32;皮材
3,13,33;ろう材
4,14,34;チューブ
35;フィン
36;ヘッダ
37;中空部

Claims (10)

  1. Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、この芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有し、ろう付後に前記皮材と前記芯材との境界部にMgSiが析出していることを特徴とするろう付用アルミニウム合金複合部材。
  2. 前記芯材は、更にCr:0.3質量%以下及びZr:0.3質量%以下からなる群から選択された1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  3. 前記芯材のCr含有量は0.02質量%以上であることを特徴とする請求項2に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  4. 前記芯材のZr含有量は0.02質量%以上であることを特徴とする請求項2に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  5. 前記芯材のMg含有量は0.1質量%以下に規制されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  6. 前記芯材のCu含有量は0.8質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  7. 前記芯材のFe含有量は0.02質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  8. 被接合材にろう付後、前記芯材の孔食電位は前記皮材及びろう材の孔食電位に比して貴であり、前記芯材と前記皮材との孔食電位差が80乃至180mVであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のろう付用アルミニウム合金複合部材。
  9. Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、この芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有するろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法であって、前記アルミニウム合金複合部材を被接合材に加熱してろう付した後に、冷却速度を35℃/分以上として冷却し、次いで170乃至200℃の温度で25分以上時効処理することを特徴とするろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法。
  10. Fe:0.2質量%以下、Si:0.3乃至1.0質量%、Cu:0.3乃至1.0質量%、Mn:0.8乃至1.5質量%及びTi:0.02乃至0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうちMg含有量を0.2質量%以下に規制し、更に、前記Si及びCuの総含有量が1.3乃至1.6質量%である組成の芯材と、この芯材の一面に形成されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に形成されMg:2.0乃至3.0質量%、Zn:2.2を超え5.0質量%以下及びSi:0.1乃至1.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成の皮材とを有するろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法であって、前記アルミニウム合金複合部材を被接合材に加熱してろう付した後に、550乃至200℃までの冷却速度を[冷却速度(℃/分)]≧−3500×[芯材のMg含有量(質量%)]+800として冷却し、次いで170乃至200℃の温度で25分以上時効処理することを特徴とするろう付用アルミニウム合金複合部材のろう付方法。
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