JP6970841B2 - アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車などの熱交換器の構成部材として使用されるアルミニウム合金製クラッド材及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は軽量かつ高熱伝導性を備えているため、自動車用熱交換器、例えばラジエータ、コンデンサ、エバポレータ、ヒーターコア又はインタークーラなどに用いられている。ここで、熱交換器の一例としてラジエータの模式図を図2に示す。偏平状に形成された複数本のチューブ1の間にコルゲート状に加工した薄肉のフィン2が配置された構造を有する。チューブ1とフィン2とは一体的に形成されている。チューブ1の両端はヘッダー3とタンク4とで構成される空間にそれぞれ開口している。熱交換器では、高温の冷媒をチューブ1を介して一方のタンク側の空間から他方のタンク側の空間に送り、チューブ1及びフィン2で熱交換して低温になった冷媒を循環させる。
このような熱交換器のチューブには、通常、心材と、内貼材と、ろう材とを備えたブレージングシートが用いられる。心材としては、例えば、JIS3003(Al−0.15質量%Cu−1.1質量%Mn)合金が用いられる。心材の内面側、すなわち、冷媒に常時触れている側には内貼材として、例えば、JIS7072(Al−1質量%Zn)合金が用いられる。また、心材の外側には、ろう材として、例えばJIS4045(Al−10質量%Si)合金などが用いられる。そして、チューブは、コルゲート状に加工されたフィン等の他の部材と共にろう付により一体的に接合されている。
ろう付法としては、フラックスろう付法、非腐食性フラックスを用いたノコロックろう付法などが挙げられ、ろう付は各部材を600℃付近の温度に加熱することにより行われる。
上記のように、Al−Zn系合金を冷却水(冷媒)側に配置すると、ろう付時に犠牲陽極材に添加されているZnが心材へ拡散し、Zn拡散層を形成する。このZn拡散層が存在することで、犠牲陽極材に発生した腐食は心材に達した後も横拡がりに進行するため、長期にわたって貫通腐食を生じさせないことが知られている。
また、自動車は道路凍結防止剤などを含む腐食促進液滴が付着する過酷な環境下を走行することもあるため、自動車用熱交換器のチューブには、外面の耐食性向上も望まれている。
更に、近年は自動車の軽量化に対する要求が高まり、それに伴って自動車用熱交換器の軽量化、及び熱交換器を構成する各部材の薄肉化が検討されている。部材の薄肉化を行うために、従来の材料よりもろう付後の強度や耐食性に優れる材料が必要とされるようになってきている。
ところで、ラジエータやヒーターコアの冷却水としては、不凍液を含有する中性から弱アルカリ性の水溶液(ロングライフクーラント:LLC)が利用されているが、種類によってはpHが10前後のものもある。犠牲陽極材にAl−Zn系合金を用いたチューブ材では、このような環境において十分な犠牲防食効果が得られず、早期に貫通腐食が発生してしまう問題があった。
そこで、耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材として、例えば、特許
文献1には、アルミニウム合金よりなる芯材の片面にアルミニウム合金ろう材をクラッドし、他の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材において、犠牲陽極材が、Alと結合して犠牲陽極材のマトリックスより貴な化合物を生成する元素を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金から構成され、マトリックス中に粒子径(円相当直径、以下同じ)1〜10μmの前記化合物が1mm当たり5×10〜5×10個存在することを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が記載されている。引用文献1に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材では、犠牲陽極材中に粒子径1〜10μmの、Alと結合して犠牲陽極材のマトリックスより貴な化合物を所定の密度で存在するように規定している。
特開平11−80871号公報
前記ラジエータの内部には、エンジン冷却用の冷媒がポンプにより循環圧送されるため、ポンプが作動しているときは前記ラジエータ内部は冷媒により高圧となり、チューブは断面形状が膨張する方向に力を受け、ヘッダープレートはこのヘッダープレートとかしめ接合している樹脂タンクとのかしめ接合部が開く方向に力を受けて犠牲陽極材に引張応力が働く。そして、このような状態が長期間繰り返されると、チューブやヘッダープレートが疲労破壊することがあり、寿命および信頼性の点が問題となる。
しかしながら、引用文献1に記載されているような犠牲陽極材では、その疲労特性が十分でなく、早期に疲労破壊するという問題があった。
つまり、従来の技術では、肉薄でありながら、アルカリ性の冷却水がポンプにより循環圧送する環境下において、十分な耐食性と優れた疲労特性を有する材料を提供することは困難であった。
従って、本発明は、アルカリ腐食性環境で冷却水が流れるような熱交換器においても、優れた耐食性と疲労特性を有し、自動車用熱交換器のラジエータやヒーターコアなどに適したアルミニウム合金ブレージングシートを提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、アルミニウム合金ブレージングシートの構成材料を特定の合金組成からなるものとし、更に、犠牲陽極材中に所定大きさのSi単体粒子又はSiを含有する金属間化合物の粒子を、所定の数密度分散させることにより、優れた耐食性と疲労特性を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(1)は、0.3〜1.2質量%のSi、0.1〜1.5質量%のCu及び0.3〜2.0質量%のMnを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される心材と、該心材の一方の面にクラッドされており、4.0〜13質量%のSiを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されるろう材と、該心材の他方の面にクラッドされており、1.0〜8.0質量%のZn及び0.5〜1.5質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びS
iを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(2)は、前記ろう材が、更に、0.3〜5.0質量%のZnを含有することを特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(3)は、前記心材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(4)は、前記心材が、更に、0.05〜1.0質量%のFe及び0.1〜1.0質量%のMgのうちの1種又は2種を含有することを特徴とする(1)〜(3)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(5)は、前記犠牲陽極材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(6)は、前記犠牲陽極材が、更に、0.05〜0.5質量%のFeを含有することを特徴とする(1)〜(5)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
また、本発明(7)は、(1)〜(6)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であり、
クラッド材として組み合わせる前の犠牲陽極材用のアルミニウム合金の製造工程において、熱間圧延温度を400〜500℃とし、熱間圧延の圧下率を50〜90%とすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、アルカリ腐食性環境で冷却水が流れるような熱交換器においても、優れた耐食性と疲労特性を有し、自動車用熱交換器のラジエータやヒーターコアなどに適したアルミニウム合金ブレージングシートを提供することができる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの模式的な断面図である。 ラジエータの模式図である。
本発明は、0.3〜1.2質量%のSi、0.1〜1.5質量%のCu及び0.3〜2.0質量%のMnを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される心材と、該心材の一方の面にクラッドされており、4.0〜13質量%のSiを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されるろう材と、該心材の他方の面にクラッドされており、1.0〜8.0質量%のZn及び0.5〜1.5質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びS
iを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
図1に、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの形態例を示す。図1中、アルミニウム合金ブレージングシート10は、心材11と、ろう材12と、犠牲陽極材13と、で構成されている。そして、ろう材12は、心材11の一方の面にクラッドされており、また、犠牲陽極材13は、心材11の他方の面にクラッドされている。つまり、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材と、心材の一方の面にクラッドされているろう材と、心材の他方の面にクラッドされている犠牲陽極材とを備える。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材、つまり、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材にクラッドされている犠牲陽極材は、アルミニウム合金で構成されており、必須成分として、Zn及びSiを含有する。
犠牲陽極材は、1.0〜8.0質量%のZn及び0.5〜1.5質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される。
犠牲陽極材中のZnは、犠牲陽極材の電位を卑にして、心材に対する犠牲陽極効果を保持し、心材の孔食や隙間腐食を防止する。犠牲陽極材中のZnの含有量は、1.0〜8.0質量%、好ましくは4.0〜7.0質量%である。犠牲陽極材中のZnの含有量が、上記範囲未満だと、Znの効果が十分ではなく、また、上記範囲を超えると、腐食速度が速くなり過ぎて、早期に犠牲陽極材が消失して耐食性が低くなる。
犠牲陽極材中でSiは、単体Siとして存在するか、又はFe、Mg、Mn等の元素とともに、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mn系、Al−Mn−Si系、Mg−Si系のSiを含有する金属間化合物を形成して存在する。犠牲陽極材では、Si単体及び上記のSiを含有する金属間化合物の表面上において、カソード反応の進行が促進されるため、孔食が分散するので、孔食の局在化が抑制される。その結果、深さ方向への孔食の進行が抑制され、腐食貫通までの寿命が長くなる。犠牲陽極材中のSiの含有量は、0.5〜1.5質量%、好ましくは0.7〜1.3質量%である。犠牲陽極材中のSiの含有量が、上記範囲未満だと、Si単体及び上記のSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下にならないため、上
記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材の固相線温度(融点)が低くなり過ぎて溶融する。
犠牲陽極材は、Zn及びSiに加え、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することができる。Cr、Zr、Ti及びVは、それぞれ、犠牲陽極材中で微細な金属間化合物を形成して、材料の強度を向上させる。犠牲陽極材中のCr、Zr、Ti又はVの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害される結果、健全な板材が得難くなる。犠牲陽極材中のCrの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Zrの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Tiの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Vの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%である。
犠牲陽極材は、Zn及びSiに加え、更に、0.05〜0.5質量%のFe及び0.1〜2.5質量%のMgのうちの1種又は2種を含有することができる。Fe及びMgは、それぞれ、犠牲陽極材中で、Siとともに、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si系、
Mg−Si系の金属間化合物を形成する。犠牲陽極材では、上記の金属間化合物の表面上において、カソード反応の進行が促進されるため、孔食が分散するので、孔食の局在化が抑制される。その結果、深さ方向への孔食の進行が抑制され、腐食貫通までの寿命が長くなる。犠牲陽極材中のFeの含有量は、0.05〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.3質量%である。犠牲陽極材中のFeの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、自己耐食性が低下し、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなくなる結果、早期に貫通する。犠牲陽極材中のMgの含有量は、0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%である。犠牲陽極材中のMgの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、自己耐食性が低下し、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなる結果、早期に貫通する。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材は、アルミニウム合金で構成されており、必須成分として、Si、Cu及びMnを含有する。
心材は、0.3〜1.2質量%のSi、0.1〜1.5質量%のCu及び0.3〜2.0質量%のMnを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されている。
心材中のCuは、心材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にし、犠牲陽極材との電位差、及びろう材との電位差を大きくして、耐食性を向上させる。更に、心材中のCuは、ろう付け加熱時に犠牲陽極材及びろう材に拡散して、なだらかなCu濃度勾配を形成させることにより、電位は心材側が貴となり、犠牲陽極材表面側又はろう材表面側が卑となって、犠牲陽極材またはろう材の厚さ方向になだらかな電位分布が形成され、これらの腐食形態を全面腐食型にする。心材中のCuの含有量は、好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.5〜1.3質量%である。心材中のCuの含有量が、上記範囲未満だと、その効果が小さく、また、上記範囲を超えると、心材の耐食性が低くなり、また融点が低くなり加熱ろう付け時に局部的な溶融が生じる。
心材中のMnは、心材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にし、犠牲陽極材との電位差、及びろう材との電位差を大きくして、耐食性を向上させるとともに、心材の電位を貴にして、犠牲陽極材との電位差を大きくして耐食性を高めるよう機能する。心材中のMnの含有量は、好ましくは0.3〜2.0質量%、特に好ましくは1.0〜1.9質量%である。心材中のMnの含有量が、上記範囲未満だと、その効果が小さく、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害される結果、健全な板材が得難くなる。
心材中のSiは、固溶強化とAl−Mn−Si系、Mg−Si系の金属間化合物の微細析出硬強化により、心材の強度を向上させる機能を有する。心材中のSiの含有量は、好ましくは0.3〜1.2質量%、特に好ましくは0.4〜1.0質量%である。心材中のSiの含有量が、上記範囲未満だと、その効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、耐食性が低くなるとともに、心材の融点が低くなり、ろう付け時に局部溶融が生じ易くなる。
心材は、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することができる。Cr、Zr、Ti及びVは、それぞれ、心材中で微細な金属間化合物を形成して、材料の強度を向上させる。心材中のCr、Zr、Ti又はVの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害される結果、健全な板材が得難くなる。心材中のCr
の含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Zrの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Tiの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Vの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%である。
心材は、更に0.05〜1.0質量%のFe及び0.1〜1.0質量%のMgのうちの1種又は2種を含有することができる。心材中のFe及びMgは、Si又はMnとともに、Al−Fe−Si系、Al−Fe−Si−Mn系、Mg−Si系の金属間化合物の微細析出硬強化により、心材の強度を向上させる機能を有する。心材中のFeの含有量は、好ましくは0.05〜1.0質量%、特に好ましくは0.1〜0.5質量%である。心材中のFeの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、ろう付後の結晶粒が微細となり、エロージョンが発生する。心材中のMgの含有量は、好ましくは0.1〜1.0質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%である。心材粒のMgの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、非腐食性フラックスを用いた雰囲気下でのろう付の際、ろう材表面までMgが拡散してろう付性が著しく低くなる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係るろう材、つまり、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材にクラッドされているろう材は、アルミニウム合金で構成されており、必須成分として、Siを含有する。
ろう材は、4.0〜13質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される。
ろう材中のSiは、Alの融点を下げて流動性を高め、ろうの機能を発揮させる。ろう材中のSiの含有量は、4.0〜13質量%、好ましくは7.0〜12質量%である。ろう材中のSiの含有量が、上記範囲未満だと、流動性が低くなりろうとして有効に作用せず、また、上記範囲を超えると、心材又はその他の被接合部へのエロージョンが大きくなる。
ろう材は、Siに加え、更に、Znを含有することができる。ろう材中のZnは、ろう材の電位を卑化させ、ろう材に犠牲防食効果を持たせることができる。ろう材中のZnの含有量は、好ましくは0.3〜5.0質量%、特に0.8〜4.0質量%である。ろう材中のZnの含有量が、上記範囲未満だと、電位卑化の度合いが小さく、犠牲防食効果が不十分となり易く、また、上記範囲を超えると、ろう材の自己腐食速度が速くなり耐食性に劣る。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、心材にクラッドされている犠牲陽極材に存在する粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度は、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm
以下である。犠牲陽極材中の上記の粒子径を有するSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、上記範囲であることにより、孔食がより分散し、板厚方向への孔食の成長が抑制されるため、深さ方向への孔食の進行が抑制され、腐食貫通までの寿命が長くなる。一方、犠牲陽極材に存在する粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、上記範囲未満だと、孔食が分散せず、深さ方向に孔食が進行し、早期に貫通し、また、上記範囲を超えると、孔食の起点が増え過ぎて、自己耐食性が低くなり、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなる結果、早期に貫通する。犠牲陽極材に、粒子径が1.0μm以上のSi単体又はSiを含有する金属間化合物が存在すると、粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が1×10個/mmより少なくなり、孔食が分散せず、深さ方向に孔食が進行し、早期に貫通する。
また、疲労破壊は、ブレージングシート表面の特に内皮材(冷却水側)に引張応力がかかり、亀裂が入り、それが進展することによって起こる。材料の強度が大きいほどその亀裂は発生し難く、進展は遅い。金属材料の強化機構の一つである析出強化は、析出した化合物により転位の運動が阻害されることにより起こる。この強化量は、化合物の大きさが小さく、且つ密に分散した方が大きい。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、心材にクラッドされている犠牲陽極材に存在する粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下であることにより、疲労強度が向上する。
なお、粒子径サイズが0.1μm未満のSi単体及びSiを含有する金属間化合物は、犠牲陽極材中に殆ど存在しないので対象外とした。
次に、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、上記組成の合金から板状に形成された心材の一方の面に、上記組成の合金からなるろう材をクラッドし、心材の他方の面に上記組成の合金から形成される犠牲陽極材をクラッドすることによって製造される。
先ず、心材、犠牲陽極材及びろう材に用いる所望の成分組成を有するアルミニウム合金を、それぞれ溶解、鋳造することによって鋳塊を作製する。これら溶解、鋳造の方法は、特に限定されるものではなく通常の方法が用いられる。
次いで、心材用のアルミニウム合金及び犠牲陽極材用のアルミニウム合金については、均質化処理を行わないか、又は500℃以下で均質化処理を行い、ろう材用のアルミニウム合金及び犠牲陽極材用のアルミニウム合金を、それぞれ所定の厚さまで熱間圧延する。
この際、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延においては、クラッド後の犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径を、0.1〜1.0μmとするために、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延温度を400〜500℃、好ましくは420〜480℃とする。Si単体及びSiを含有する金属間化合物は、熱間圧延中に析出するが、熱間圧延温度により、Si単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が変化する。すなわち、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延温度が高過ぎると、Si単体及びSiを含有する金属間化合物が粗大化する。犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延温度を、上記範囲とすることにより、熱間圧延時に微細に析出したSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粗大化は起こらず、1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物が得られる。一方、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延温度が、上記範囲未満だと、熱間圧延時の変形抵抗が大きく、熱間圧延が困難となり、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が粗大化して1.0μmを超え、且つ数密度も少なくなる。なお、本発明において、熱間圧延温度が、400〜500℃、好ましくは420〜480℃とは、熱間圧延を行う直前のアルミニウム合金の温度、及び熱間圧延を開始してから終了するまでのアルミニウム合金の温度が、400〜500℃、好ましくは420〜480℃の範囲にあることを指す。
また、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延においては、クラッド後の犠牲陽極材中の粒子径が0.1〜1.0μmのSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度を、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下とするために、犠
牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延の圧下率を、50〜90%とする。Si単体及びSiを含有する金属間化合物は、熱間圧延中に析出するが、Si単体及びSiを含有する金属間化合物は、熱間圧延中に導入される転位上に多く析出するため、その転位量が多
いほど、Si単体及びSiを含有する金属間化合物の数密度が大きくなり、粒子径は微細となる。犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延の圧下率が、上記範囲未満だと、犠牲陽極材用のアルミニウム合金に導入される転位量が少なく、析出が起こり難くなり、上記数密度が得られず、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材用のアルミニウム合金に導入される転位量が多過ぎて、析出が過剰に起こり、化合物の密度が所定量を超えてしまう。
犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延の終了温度は、特に制限されない。そして、所定の厚さまで圧延した犠牲陽極材は、コイル状に巻かれず、プレートの状態とする。そのため、熱間圧延後は、犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延物は、コイル状に巻かれるときよりも冷え易いので、Si単体及びSiを含有する金属間化合物の粗大化が起こらない。
次いで、各材料を組み合わせ、常法に従って、400〜500℃にて、熱間圧延によりクラッド材とし、最終的に所定厚さまで冷間圧延して、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する。なお、クラッド材を、冷間圧延工程の途中において焼鈍(中間焼鈍) してもよく、あるいは、その後において焼鈍(最終焼鈍) してもよい。焼鈍温度は、200〜400℃、好ましくは200〜300℃である。この焼鈍温度が、上記範囲未満だと、ろう付加熱後に心材の結晶粒径が微細となるため、心材にエロージョンが発生し、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材中の単体Si及びSiを含有する金属間化合物が粗大化し、且つ密度が小さくなる。焼鈍を行うタイミングとしては、クラッド材の最終板厚に至る前で行う中間焼鈍としてもよく、あるいは、クラッド材を最終板厚とした後に行う最終焼鈍としてもよい。中間焼鈍と最終焼鈍を、いずれか一方のみを実施しても良く、両方を実施しても良い。
このように、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを製造するための製造方法であり、
クラッド材として組み合わせる前の犠牲陽極材用のアルミニウム合金の製造工程において、熱間圧延温度を400〜500℃とし、熱間圧延の圧下率を50〜90%とすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法である。
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例)
心材、犠牲陽極材層及びろう材をそれぞれ表1、表2及び表3に示す組成を有する合金を用いて、表4に示す製造条件によってそれぞれ製造した。なお、表1〜表3の合金組成において、「−」は検出限界以下であることを示すものであり、「残部」は不可避的不純物を含む。
まず、DC鋳造法により表1に記載の心材に用いるアルミニウム合金と、表2に記載の犠牲陽極材に用いるアルミニウム合金と、表3に記載のろう材に用いるアルミニウム合金をそれぞれ鋳造し、更に面削処理を行った。犠牲陽極材用の鋳塊については、表4に記載の温度で加熱処理を行った後に、表4に記載の圧下率で熱間圧延を行った。ろう材用の鋳塊については、480℃で加熱処理を行った後に所定の板厚まで熱間圧延を行った。心材用の鋳塊の一方の面に熱間圧延した犠牲陽極材用のアルミニウム合金を、他方の面にろう材用のアルミニウム合金を組み合わせて、それぞれクラッド率を、犠牲陽極材:15%、ろう材:10%の合わせ材(クラッド材)とした。合わせ材を480℃で加熱処理した後
に、熱間クラッド圧延により2.6mmまで圧延した。次いで、得られた圧延材を冷間圧延し、表4に記載の条件で中間焼鈍又は最終焼鈍、あるいはその両方を施して供試材を得た。中間焼鈍を施す場合は最終圧延率を30%に調整した。中間焼鈍をしない場合は、最終板厚0.25mmまで冷間圧延した後、最終焼鈍を行い供試材とした。
上記のようにして作製した各供試材の「犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径」及び「犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度」を、下記に示す方法で測定した。
(a)犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径(μm)0.1μm以上且つ1.0μm以下の粒子径を有するSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径は、犠牲陽極材をSEMにより観察し、SEM像を画像解析することにより求められる。ここで、粒子径とは円相当直径のことを言う。観察箇所は、犠牲陽極材の任意の部分、例えば、厚さ方向に沿った任意断面や板材表面と平行な断面を観察するものである。簡便性の観点から、厚さ方向に沿った任意断面について測定するのが好ましい。各供試材について3視野の観察を行い、それぞれの視野のSEM像をA像くん(旭化成エンジニアリング社)により画像解析することで、ろう付加熱前におけるSi単体及びSiを含有する金属間化合物の粒子径を求めた。表に示す粒子径は、各3視野より求めた数値の算術平均値である。
(b)犠牲陽極材中のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の数密度(個/mm
0.1μm以上且つ1.0μm以下の粒子径を有するSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度は、犠牲陽極材をSEMにより観察し、SEM像を画像解析することにより求められる。観察箇所は、犠牲陽極材の任意の部分、例えば、厚さ方向に沿った任意断面や板材表面と平行な断面を観察するものである。簡便性の観点から、厚さ方向に沿った任意断面について測定するのが好ましい。各供試材について3視野の観察を行い、それぞれの視野のSEM像をA像くん(旭化成エンジニアリング社)により画像解析することで、ろう付加熱前におけるSi単体及びSiを含有する金属間化合物の密度を求めた。表に示す数密度は、各3視野より求めた数値の算術平均値である。
また、上記のようにして作製した各供試材に、600℃で3分のろう付相当加熱を行い、50℃/分の速度で冷却した。その後、各供試材の「引張強さ」、「疲労強度」、「内面耐食性」、「外面耐食性」、「フィン接合率」、「エロージョン発生有無」、「成形性」を、下記に示す方法で評価した。
(c)引張強さ
各供試材より、JIS5号試験片を切り出した。これに上記ろう付相当加熱を行った後、室温にて1週間放置し、JIS Z 2241:2011に準拠した引張試験を行った。引張強度が150MPa以上を合格とし、それ未満を不合格とした。
(d)疲労強度
各供試材より、疲労試験片(JIS Z 2275 1号試験片)を切り出した。これに上記ろう付相当加熱を行った後、室温にて1週間放置し、常温にてクラッド材の内面皮材側平坦部に周波数25Hzにて一定応力70MPaを繰り返し負荷する片振り平面曲げ疲労試験(JIS Z 2275に準拠)を実施し、クラッド材の破断寿命を測定した。測定された破断寿命が100万回以上であったものを合格(○)と評価し、100万回未満のものを不合格(×)と評価した。
(e)内面耐食性(酸性環境下)
ろう付相当の加熱を行った各供試材の犠牲陽極材面に対して、水系冷媒における酸性環
境を模擬した浸漬試験を行った。Cl:195ppm、SO 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppmを含有し、温度88℃の水溶液を、各供試材の試験片の試験面に対して比液量10mL/cmで8時間浸漬し、その後、試験片を25℃にて16時間放置した。このようなサイクルを3ヶ月間行った。浸漬サイクル試験後において、貫通していない場合を合格(○)とし、貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
(f)内面耐食性(アルカリ性環境下)
ろう付相当の加熱を行った各供試材の犠牲陽極材面に対して、水系冷媒におけるアルカリ性環境を模擬した浸漬試験を行った。Cl:195ppm、SO 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppmを含有し、NaOHによりpHを10に調整した温度88℃の水溶液を、各供試材の試験片の試験面に対して比液量10mL/cmで8時間浸漬し、その後、試験片を25℃にて16時間放置した。このようなサイクルを3ヶ月間行った。浸漬サイクル試験後において、貫通していない場合を合格(○)とし、貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
(g)外面耐食性
JIS3003合金に1.5%のZnを添加した合金からなるフィン材をコルゲート成形し、ブレージングシート試料のろう材面と組み合わせた。その後、組み合わせたものを10%のフッ化物フラックス懸濁液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のろう付け加熱を行って試験コアを作製した。この試験コアのろう材面に対して、ASTM−G85基づいてSWAAT試験に500時間供した。試験後に、試験片の表面の腐食生成物を除去し腐食深さを測定した。測定箇所は各試験片において10箇所とし、それらの最大値をもって腐食深さとした。腐食深さが70μm未満の場合を優良(◎)とし、腐食深さが70μm以上90μm以下の場合を良好(○)とし、腐食深さが90μmを超える場合と貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
(h)フィン接合率
JIS3003合金に1.5%のZnを添加した合金からなるフィン材をコルゲート成形し、ブレージングシート試料のろう材面と組み合わせた。その後、組み合わせたものを10%のフッ化物フラックス懸濁液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のろう付け加熱を行って試験コアを作製した。この試験コアにおいて、フィンの全山数に対する接合したフィンの山数の割合をフィン接合率とした。また、フィン接合率が95%以上のものをろう付性が合格(○)とし、95%未満のものをろう付性が不合格(×)とした。
(i)エロージョン発生有無
上記(h)で作製した試験コア断面のミクロ観察を行い、心材や犠牲陽極材におけるエロージョン(ろう拡散) 及び材料溶融の発生の有無を確認した。エロージョン及び材料
溶融がともに発生しなかった場合を合格(○)とし、エロージョン及び材料溶融の少なくともいずれかが発生した場合を不合格(×)とした。
Figure 0006970841
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実施例1−74では、本発明で規定する条件を満たしており、ろう付後の強度、ろう付後の疲労強度、内面耐食性(酸性環境下、アルカリ性環境下)、外面耐食性、フィン接合率、耐エロージョン性の何れも合格又は良好であった。
これに対して、比較例1ではろう材のSi含有量が少なすぎたため、フィンの未接合が見られ、ろう付性が不合格であった。
比較例2では、ろう材のSi含有量が多すぎたため、心材のエロージョンが見られ、不合格であった。
比較例3では、ろう材のZn含有量が多すぎたため、ろう材の自己腐食速度が増加し、外面耐食性が不合格であった。
比較例4では、犠牲陽極材のSi含有量が少なすぎたため、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。
比較例5では、犠牲陽極材のSi含有量が多すぎたため、犠牲陽極材の融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例6では、犠牲陽極材のZn含有量が少なすぎたため、犠牲防食効果が作用せず、内面耐食性において不合格となった。
比較例7では、犠牲陽極材のZn含有量が多すぎたため、自己腐食速度が増加し、内面耐食性において不合格となった。
比較例8では、犠牲陽極材のCr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例9では、犠牲陽極材のZr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例10では、犠牲陽極材のTi含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例11では、犠牲陽極材のV含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例12では、犠牲陽極材のFe含有量が多すぎたため、化合物密度が所定量を超えた結果、アルカリ性環境下での内面耐食性において不合格となった。
比較例13では、犠牲陽極材のMg含有量が多すぎたため、化合物密度が所定量を超えた結果、アルカリ性環境下での内面耐食性において不合格となった。
比較例14では、心材のSi含有量が少なすぎたため、Al−Mn−Si系の化合物の析出量が少なく、強度が小さくなり、ろう付後強度において不合格となった。
比較例15では、心材のSi含有量が多すぎたため、融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例16では、心材のCu含有量が少なすぎたため、ろう付後強度が小さく、不合格であり、かつ犠牲陽極材との電位差が不十分であったため、内面耐食性において不合格となった。
比較例17では、心材のCu含有量が多すぎたため、融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例18では、心材のMn含有量が少なすぎたため、ろう付後強度が小さく、不合格であり、かつ犠牲陽極材との電位差が不十分であったため、内面耐食性において不合格となった。
比較例19では、心材Mn含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例20では、心材のCr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例21では、心材のZr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、
圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例22では、心材のTi含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例23では、心材のV含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例24では、心材のFe含有量が多すぎたため、ろう付後の結晶粒が微細となり、エロージョンが発生し不合格となった。
比較例25では、心材のMg含有量が多すぎたため、ろう付時にろう材表面までMgが拡散した結果フィンの未接合が見られ、ろう付性が不合格であった。
比較例26では、犠牲陽極材の熱間圧延の開始温度が低すぎて、熱間圧延時の変形抵抗が大きく、熱間圧延が困難となり健全な板材が得られなかった。
比較例27では、犠牲陽極材の熱間圧延の開始温度が高すぎて、犠牲陽極材中の単体Si及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が粗大化し1μm以上となったため、疲労強
度が不合格となり、かつ単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。
比較例28では、犠牲陽極材の熱間圧延の圧下率が低すぎて、析出が起こりづらく、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さくなり、アルカリ性環境下における内面耐食性で不合格であった。
比較例29では、犠牲陽極材の熱間圧延の圧下率が高すぎて、析出が過剰に起こり、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が大きくなり、アルカリ性環境下における腐食速度が増加したため、アルカリ性環境下における内面耐食性で不合格であった。
比較例30では、クラッド材の最終焼鈍温度が低すぎて、ろう付加熱後に心材の結晶粒径が微細となり、心材にエロージョンが発生し不合格となった。
比較例31では、クラッド材の最終焼鈍温度が高すぎて、犠牲陽極材中の単体Si及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が粗大化し1μm以上となったため、疲労強度が不合格となり、かつ単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。

Claims (6)

  1. 0.3〜1.2質量%のSi、0.1〜1.5質量%のCu及び0.3〜2.0質量%のMnを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される心材と、該心材の一方の面にクラッドされており、4.0〜13質量%のSiを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されるろう材と、該心材の他方の面にクラッドされており、1.0〜8.0質量%のZn及び0.5〜1.5質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
    該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×10個/mm以上且つ1×10個/mm以下であること、
    を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 前記ろう材が、更に、5.0質量%以下のZnを含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記心材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 前記心材が、更に、0.05〜1.0質量%のFe及び0.1〜1.0質量%のMgのうちの1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 前記犠牲陽極材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  6. 前記犠牲陽極材が、更に、0.05〜0.5質量%のFeを含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
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