JP6970841B2 - アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents
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文献1には、アルミニウム合金よりなる芯材の片面にアルミニウム合金ろう材をクラッドし、他の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材において、犠牲陽極材が、Alと結合して犠牲陽極材のマトリックスより貴な化合物を生成する元素を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金から構成され、マトリックス中に粒子径(円相当直径、以下同じ)1〜10μmの前記化合物が1mm2当たり5×102〜5×104個存在することを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が記載されている。引用文献1に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材では、犠牲陽極材中に粒子径1〜10μmの、Alと結合して犠牲陽極材のマトリックスより貴な化合物を所定の密度で存在するように規定している。
該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びS
iを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×103個/mm2以上且つ1×106個/mm2以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
クラッド材として組み合わせる前の犠牲陽極材用のアルミニウム合金の製造工程において、熱間圧延温度を400〜500℃とし、熱間圧延の圧下率を50〜90%とすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びS
iを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×103個/mm2以上且つ1×106個/mm2以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材の固相線温度(融点)が低くなり過ぎて溶融する。
Mg−Si系の金属間化合物を形成する。犠牲陽極材では、上記の金属間化合物の表面上において、カソード反応の進行が促進されるため、孔食が分散するので、孔食の局在化が抑制される。その結果、深さ方向への孔食の進行が抑制され、腐食貫通までの寿命が長くなる。犠牲陽極材中のFeの含有量は、0.05〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.3質量%である。犠牲陽極材中のFeの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、自己耐食性が低下し、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなくなる結果、早期に貫通する。犠牲陽極材中のMgの含有量は、0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%である。犠牲陽極材中のMgの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が十分でなく、また、上記範囲を超えると、自己耐食性が低下し、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなる結果、早期に貫通する。
の含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Zrの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Tiの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%であり、Vの含有量は、好ましくは0.05〜0.2質量%である。
2以下である。犠牲陽極材中の上記の粒子径を有するSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、上記範囲であることにより、孔食がより分散し、板厚方向への孔食の成長が抑制されるため、深さ方向への孔食の進行が抑制され、腐食貫通までの寿命が長くなる。一方、犠牲陽極材に存在する粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、上記範囲未満だと、孔食が分散せず、深さ方向に孔食が進行し、早期に貫通し、また、上記範囲を超えると、孔食の起点が増え過ぎて、自己耐食性が低くなり、早期に犠牲陽極材が消耗するため、犠牲防食効果が得られなる結果、早期に貫通する。犠牲陽極材に、粒子径が1.0μm以上のSi単体又はSiを含有する金属間化合物が存在すると、粒子径0.1μm以上1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が1×103個/mm2より少なくなり、孔食が分散せず、深さ方向に孔食が進行し、早期に貫通する。
牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延の圧下率を、50〜90%とする。Si単体及びSiを含有する金属間化合物は、熱間圧延中に析出するが、Si単体及びSiを含有する金属間化合物は、熱間圧延中に導入される転位上に多く析出するため、その転位量が多
いほど、Si単体及びSiを含有する金属間化合物の数密度が大きくなり、粒子径は微細となる。犠牲陽極材用のアルミニウム合金の熱間圧延の圧下率が、上記範囲未満だと、犠牲陽極材用のアルミニウム合金に導入される転位量が少なく、析出が起こり難くなり、上記数密度が得られず、また、上記範囲を超えると、犠牲陽極材用のアルミニウム合金に導入される転位量が多過ぎて、析出が過剰に起こり、化合物の密度が所定量を超えてしまう。
クラッド材として組み合わせる前の犠牲陽極材用のアルミニウム合金の製造工程において、熱間圧延温度を400〜500℃とし、熱間圧延の圧下率を50〜90%とすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法である。
心材、犠牲陽極材層及びろう材をそれぞれ表1、表2及び表3に示す組成を有する合金を用いて、表4に示す製造条件によってそれぞれ製造した。なお、表1〜表3の合金組成において、「−」は検出限界以下であることを示すものであり、「残部」は不可避的不純物を含む。
に、熱間クラッド圧延により2.6mmまで圧延した。次いで、得られた圧延材を冷間圧延し、表4に記載の条件で中間焼鈍又は最終焼鈍、あるいはその両方を施して供試材を得た。中間焼鈍を施す場合は最終圧延率を30%に調整した。中間焼鈍をしない場合は、最終板厚0.25mmまで冷間圧延した後、最終焼鈍を行い供試材とした。
0.1μm以上且つ1.0μm以下の粒子径を有するSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度は、犠牲陽極材をSEMにより観察し、SEM像を画像解析することにより求められる。観察箇所は、犠牲陽極材の任意の部分、例えば、厚さ方向に沿った任意断面や板材表面と平行な断面を観察するものである。簡便性の観点から、厚さ方向に沿った任意断面について測定するのが好ましい。各供試材について3視野の観察を行い、それぞれの視野のSEM像をA像くん(旭化成エンジニアリング社)により画像解析することで、ろう付加熱前におけるSi単体及びSiを含有する金属間化合物の密度を求めた。表に示す数密度は、各3視野より求めた数値の算術平均値である。
各供試材より、JIS5号試験片を切り出した。これに上記ろう付相当加熱を行った後、室温にて1週間放置し、JIS Z 2241:2011に準拠した引張試験を行った。引張強度が150MPa以上を合格とし、それ未満を不合格とした。
各供試材より、疲労試験片(JIS Z 2275 1号試験片)を切り出した。これに上記ろう付相当加熱を行った後、室温にて1週間放置し、常温にてクラッド材の内面皮材側平坦部に周波数25Hzにて一定応力70MPaを繰り返し負荷する片振り平面曲げ疲労試験(JIS Z 2275に準拠)を実施し、クラッド材の破断寿命を測定した。測定された破断寿命が100万回以上であったものを合格(○)と評価し、100万回未満のものを不合格(×)と評価した。
ろう付相当の加熱を行った各供試材の犠牲陽極材面に対して、水系冷媒における酸性環
境を模擬した浸漬試験を行った。Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppmを含有し、温度88℃の水溶液を、各供試材の試験片の試験面に対して比液量10mL/cm2で8時間浸漬し、その後、試験片を25℃にて16時間放置した。このようなサイクルを3ヶ月間行った。浸漬サイクル試験後において、貫通していない場合を合格(○)とし、貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
ろう付相当の加熱を行った各供試材の犠牲陽極材面に対して、水系冷媒におけるアルカリ性環境を模擬した浸漬試験を行った。Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppmを含有し、NaOHによりpHを10に調整した温度88℃の水溶液を、各供試材の試験片の試験面に対して比液量10mL/cm2で8時間浸漬し、その後、試験片を25℃にて16時間放置した。このようなサイクルを3ヶ月間行った。浸漬サイクル試験後において、貫通していない場合を合格(○)とし、貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
JIS3003合金に1.5%のZnを添加した合金からなるフィン材をコルゲート成形し、ブレージングシート試料のろう材面と組み合わせた。その後、組み合わせたものを10%のフッ化物フラックス懸濁液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のろう付け加熱を行って試験コアを作製した。この試験コアのろう材面に対して、ASTM−G85基づいてSWAAT試験に500時間供した。試験後に、試験片の表面の腐食生成物を除去し腐食深さを測定した。測定箇所は各試験片において10箇所とし、それらの最大値をもって腐食深さとした。腐食深さが70μm未満の場合を優良(◎)とし、腐食深さが70μm以上90μm以下の場合を良好(○)とし、腐食深さが90μmを超える場合と貫通した場合を不合格(×)とした。なお、試験面以外にはマスキングを施して、試験水溶液に接触しないようにした。
JIS3003合金に1.5%のZnを添加した合金からなるフィン材をコルゲート成形し、ブレージングシート試料のろう材面と組み合わせた。その後、組み合わせたものを10%のフッ化物フラックス懸濁液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のろう付け加熱を行って試験コアを作製した。この試験コアにおいて、フィンの全山数に対する接合したフィンの山数の割合をフィン接合率とした。また、フィン接合率が95%以上のものをろう付性が合格(○)とし、95%未満のものをろう付性が不合格(×)とした。
上記(h)で作製した試験コア断面のミクロ観察を行い、心材や犠牲陽極材におけるエロージョン(ろう拡散) 及び材料溶融の発生の有無を確認した。エロージョン及び材料
溶融がともに発生しなかった場合を合格(○)とし、エロージョン及び材料溶融の少なくともいずれかが発生した場合を不合格(×)とした。
比較例2では、ろう材のSi含有量が多すぎたため、心材のエロージョンが見られ、不合格であった。
比較例3では、ろう材のZn含有量が多すぎたため、ろう材の自己腐食速度が増加し、外面耐食性が不合格であった。
比較例4では、犠牲陽極材のSi含有量が少なすぎたため、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。
比較例5では、犠牲陽極材のSi含有量が多すぎたため、犠牲陽極材の融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例6では、犠牲陽極材のZn含有量が少なすぎたため、犠牲防食効果が作用せず、内面耐食性において不合格となった。
比較例7では、犠牲陽極材のZn含有量が多すぎたため、自己腐食速度が増加し、内面耐食性において不合格となった。
比較例8では、犠牲陽極材のCr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例9では、犠牲陽極材のZr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例10では、犠牲陽極材のTi含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例11では、犠牲陽極材のV含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例12では、犠牲陽極材のFe含有量が多すぎたため、化合物密度が所定量を超えた結果、アルカリ性環境下での内面耐食性において不合格となった。
比較例13では、犠牲陽極材のMg含有量が多すぎたため、化合物密度が所定量を超えた結果、アルカリ性環境下での内面耐食性において不合格となった。
比較例14では、心材のSi含有量が少なすぎたため、Al−Mn−Si系の化合物の析出量が少なく、強度が小さくなり、ろう付後強度において不合格となった。
比較例15では、心材のSi含有量が多すぎたため、融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例16では、心材のCu含有量が少なすぎたため、ろう付後強度が小さく、不合格であり、かつ犠牲陽極材との電位差が不十分であったため、内面耐食性において不合格となった。
比較例17では、心材のCu含有量が多すぎたため、融点が低下し、ろう付加熱後にエロージョンが見られ不合格となった。
比較例18では、心材のMn含有量が少なすぎたため、ろう付後強度が小さく、不合格であり、かつ犠牲陽極材との電位差が不十分であったため、内面耐食性において不合格となった。
比較例19では、心材Mn含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例20では、心材のCr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例21では、心材のZr含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、
圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例22では、心材のTi含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例23では、心材のV含有量が多すぎたため、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害された結果、健全な板材が得られなかった。
比較例24では、心材のFe含有量が多すぎたため、ろう付後の結晶粒が微細となり、エロージョンが発生し不合格となった。
比較例25では、心材のMg含有量が多すぎたため、ろう付時にろう材表面までMgが拡散した結果フィンの未接合が見られ、ろう付性が不合格であった。
比較例26では、犠牲陽極材の熱間圧延の開始温度が低すぎて、熱間圧延時の変形抵抗が大きく、熱間圧延が困難となり健全な板材が得られなかった。
比較例27では、犠牲陽極材の熱間圧延の開始温度が高すぎて、犠牲陽極材中の単体Si及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が粗大化し1μm以上となったため、疲労強
度が不合格となり、かつ単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。
比較例28では、犠牲陽極材の熱間圧延の圧下率が低すぎて、析出が起こりづらく、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さくなり、アルカリ性環境下における内面耐食性で不合格であった。
比較例29では、犠牲陽極材の熱間圧延の圧下率が高すぎて、析出が過剰に起こり、単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が大きくなり、アルカリ性環境下における腐食速度が増加したため、アルカリ性環境下における内面耐食性で不合格であった。
比較例30では、クラッド材の最終焼鈍温度が低すぎて、ろう付加熱後に心材の結晶粒径が微細となり、心材にエロージョンが発生し不合格となった。
比較例31では、クラッド材の最終焼鈍温度が高すぎて、犠牲陽極材中の単体Si及びSiを含有する金属間化合物の粒子径が粗大化し1μm以上となったため、疲労強度が不合格となり、かつ単体Si及びSiを含有する金属間化合物の合計数密度が小さく、アルカリ性における内面耐食性が不合格であった。
Claims (6)
- 0.3〜1.2質量%のSi、0.1〜1.5質量%のCu及び0.3〜2.0質量%のMnを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される心材と、該心材の一方の面にクラッドされており、4.0〜13質量%のSiを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されるろう材と、該心材の他方の面にクラッドされており、1.0〜8.0質量%のZn及び0.5〜1.5質量%のSi含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
該犠牲陽極材中に存在する粒子径0.1μm以上且つ1.0μm以下のSi単体及びSiを含有する金属間化合物の合計の数密度が、1×103個/mm2以上且つ1×106個/mm2以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記ろう材が、更に、5.0質量%以下のZnを含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
- 前記心材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
- 前記心材が、更に、0.05〜1.0質量%のFe及び0.1〜1.0質量%のMgのうちの1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
- 前記犠牲陽極材が、更に、0.01〜0.3質量%のCr、0.01〜0.3質量%のZr、0.01〜0.3質量%のTi及び0.01〜0.3質量%のVのうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
- 前記犠牲陽極材が、更に、0.05〜0.5質量%のFeを含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
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