JP3765040B2 - 永久電流スイッチ - Google Patents

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Description

【産業上の利用分野】
本発明は、超電導磁石等に使用される熱式永久電流スイッチに関する。
【従来の技術】
【0001】
超電導磁石を永久電流モードで運転するために永久電流スイッチが用いられる。その代表的なものは特願平3-241689に示されるような構造のもので、巻枠に銅・ニッケル合金をマトリクスとする超電導線を巻き線し、ヒーターによりスイッチ動作をさせるものである。
【0002】
この永久電流スイッチに用いられる銅・ニッケル合金を使用した超電導線の問題点は、通常の銅マトリクス超電導線より許容電流が少ないことと、安定性が悪いことである。これは常伝導になった時高い抵抗を持つという必要性のためやむを得ない面もあるが、この特性が永久電流スイッチになると更に顕著に現れる。
【0003】
即ち、従来の永久電流スイッチは、使用できる電流が低い上に非常に不安定なため、時には、クエンチ(常伝導転移)が起こるという問題があり、この点の改善のために様々な提案がなされて来た。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の永久電流スイッチでは使用できる電流値(上限値)が低い。大略、使用している超電導線(巻枠に巻いていない状態で)のクエンチ電流の50〜60%が限度である。
【0005】
また、時としてその更に1/2程度の電流でもクエンチが起こる事があった。この原因が従来は解明されていなかったため、有効な解決策がなかったわけであるが、最近の我々の研究により、これらの問題がほぼ次のような原因によることが明らかになった。
【0006】
(1)永久電流スイッチの巻き始め部、口出し部などでは、超電導線のフィラメント間を渡る電流のため常にわずかな発熱があり、この発熱により超電導線の温度が上昇し、許容値を越えた場合クエンチが起こる。
【0007】
(2)巻線時の張力により超電導線の動きが抑えられているが、張力が緩んだ部分があると、その部分は電磁力により僅かに動く。このとき摩擦による発熱が起こり、温度上昇が許容値を越えるとクエンチがおこる。
【0008】
本発明は、この2つの原因に注目し、これを解決するために、超電導線の「冷却」と「固定」の両方について、大幅に向上させた構造を提案し、通常の運転中、クエンチの起こらない永久電流スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の永久電流スイッチは、ステンレス鋼の円筒の両端部にFRPで形成された円筒を嵌着したものを超電導線の巻枠として使用し、前記FRPで形成された二つの円筒のうちの一方の円筒の外周面に形成された螺旋溝に前記超電導線の口出し線を埋め込み、該口出し線は素線絶縁を施さず、かつ表面を露出させて前記螺旋溝に埋め込まれてなることを特徴とする。
【0010】
また本発明の永久電流スイッチは、FRPの強化繊維がアラミド繊維とすることができる。
【0011】
更に本発明の永久電流スイッチは、ステンレス鋼の円筒の両端部にセラミックで形成された円筒を嵌着したものを超電導線の巻枠として使用することができる。
【0012】
に本発明の永久電流スイッチは、前記口出し線を銅製の角線に形成された溝部に埋め込み、これを前記螺旋溝に埋め込むように構成したことを特徴とする。
【0013】
また本発明の永久電流スイッチは、前記銅製の角線に形成された溝部に、前記口出し線と共に銅マトリクスの超電導線を埋め込むように構成したことを特徴とする。
【0014】
更に本発明の永久電流スイッチは、超電導線の巻き始め部の端部を、前記FRPで形成された二つの円筒のうちの他方の円筒に植設された銅製のピンにハンダにより固定したことを特徴とする。
【0015】
また本発明の永久電流スイッチは、超電導線の巻き始め部の巻線を、前記FRPで形成された二つの円筒のうちの他方の円筒の外周面に形成された螺旋溝に埋め込むように構成することができる。
【0016】
更に本発明の永久電流スイッチは、超電導線の巻き始め部の巻線を、銅製の角線に形成された溝部に埋め込み、これを前記FRPで形成された二つの円筒のうちの他方の円筒の外周面に形成された螺旋溝に埋め込むように構成したことを特徴とする。
【0017】
また本発明の永久電流スイッチは、前記FRPで形成された二つの円筒の外径を、超電導線の巻き線部の外径より大きくしておき、前記FRPで形成された二つの円筒の外周を利用して前記超電導線の巻き線部を包囲する保護カバーを設けることができる
【0018】
すなわち、本発明では、第1に、発熱部の冷却効果を向上させるために、巻き始め部、口出し線部等の発熱部を永久電流スイッチの外周部に設け、常に冷媒に接触しているようにする。このとき、電気絶縁を保つ必要があるため、この部分の巻枠は絶縁物であるほうが良い。
【0019】
更に、冷却効果を向上させるためには、絶縁物に溝を設け、溝に超電導線を埋め込み、一部を露出させる。この場合は素線絶縁をせずに直接導線と冷媒を接触させることができる。
【0020】
また本発明では、第2に、超電導線の固定を強化する手段として、巻き線時の張力を冷却時にも保つように、巻枠の材料を、超電導線に近い収縮率のものを選定する。
【0021】
例えば、ステンレス鋼は、超電導線に近い材料である。また、絶縁物ではFRPで繊維配向を適正に選ぶことにより超電導線に近い熱収縮率の材料が得られる。
【0022】
また、特に緩み易い部分の固定には、絶縁物に植設したピンにハンダづけを行う事が有効である。
【作用】
【0023】
上記構成において、巻枠に金属を使用するのは、巻き線時の張力に耐える強度を有し、冷却時の収縮率が超電導線に近い特性を利用するためで、ステンレス鋼、銅及び銅合金などが適しているがその他の金属でも良い。
【0024】
巻枠の両端にFRP製の円筒を嵌着し、この絶縁性を利用してここに巻き始め部と、口出し部を巻き付ける。
【0025】
このFRPの熱収縮率も、巻き線が緩まないために超電導線に近い方が良い。一般に、FRP等の絶縁物の熱収縮率は超電導線の2倍以上であるが、カーボン繊維、アルミナ繊維等のFRPでは繊維配向を適正に選ぶと、繊維方向について超電導線に近い収縮率が得られる。
【0026】
特別な例では、アラミド繊維を使用したFRPは超電導線より小さい収縮率が得られる。これを利用すると、冷却時に張力が増加する効果が期待できる。
【0027】
このことは、収縮率の小さいセラミックなどの材料を使用した場合も同じである。
【0028】
口出し線を冷却効果が上がるようにFRPの外周に巻き付けるとき、通常は線間の絶縁のために素線絶縁を施すので、冷却が阻害される。そこでFRPに螺旋状の溝を設け、その溝に導体を埋め込む構造にすると、溝が絶縁距離を保つので素線絶縁が不要になり、導体表面を露出させることができる。
【0029】
このときは、冷媒に導体が直接接触するので冷却効果が非常に大きい。
【0030】
また超電導線が細い場合は、十分な冷却面積が確保できない事があるが、このときは、銅線に溝を設けその中に超電導線を埋め込んだものをFRPの溝に埋め込むようにする。これにより銅線の太さに相当する冷却面積が確保できる。
【0031】
このとき銅線は、角線の方が溝内の安定が良い。
【0032】
一方、巻き始め部は、巻き線時最初に張力が加わり、永久電流スイッチが完成した後もその張力を保っていなければならない重要な部分であるが、従来のピンどめ方式等では、材料のクリープ等のために時として緩みが生じる事があった。 このような緩みが生じた場合超電導線が動かないように、超電導線を銅などのピンにハンダで固定しておくことは有効である。
【0033】
また、口出し部と同じようにFRPの溝の中に超電導線を埋め込むことは、線を固定する上で効果がある。
【0034】
更に、口出し部と同じに銅線に溝部を形成し、その中に超電導線を埋め込み、これをFRPの溝に埋め込む事にすると、固定と冷却の両方に効果がある。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0036】
図1には、本発明に係る永久電流スイッチの一実施例の断面が示されている。同図において、ステンレス鋼の円筒1の外周に電気絶縁2を施し、その両端にFRPの円筒3、4が嵌着されている。これを巻枠としてヒーター線5及び超電導線8を巻回し、永久電流スイッチを構成する。ここで巻枠に金属を使用するのは、巻き線時の張力に耐える強度を有し、冷却時の収縮率が超電導線に近い特性を利用するためで、ステンレス鋼、銅及び銅合金などが適しているがその他の金属でも良い。
【0037】
巻枠の両端にFRP製の円筒3、4を嵌着し、この絶縁性を利用してここに巻き始め部と、口出し部を巻き付ける。
【0038】
このFRPの熱収縮率も、巻き線が緩まないために超電導線に近い方が良い。一般に、FRP等の絶縁物の熱収縮率は超電導線の2倍以上であるが、カーボン繊維、アルミナ繊維等のFRPでは繊維配向を適正に選ぶと、繊維方向について超電導線に近い収縮率が得られる。
【0039】
特別な例では、アラミド繊維を使用したFRPは超電導線より小さい収縮率が得られる。これを利用すると、冷却時に張力が増加する効果が期待できる。
【0040】
このことは、収縮率の小さいセラミックなどの材料を使用した場合も同じである。
【0041】
巻始め部は、FRP4の外周に螺旋溝を設けてあり、この溝に沿って超電導線を巻き付けている。巻始め部をこのような構造にすると、溝が絶縁距離を保つので素線絶縁が不要になり、導体表面を露出させることができる。したがって、超電導線が直接冷媒に接するので、冷却効果を向上させることができる。
【0042】
また巻始めは、FRP4に植設された銅製のピン6に超電導線7を引っかける。ピン6と超電導線7は、ハンダで固定する。巻き始め部は、巻き線時最初に張力が加わり、永久電流スイッチが完成した後もその張力を保っていなければならない重要な部分であるが、従来のピンどめ方式等では、材料のクリープ等のために時として緩みが生じる事があった。
【0043】
このような緩みが生じた場合超電導線が動かないように、超電導線を銅などのピンにハンダで固定しておくことは有効である。
【0044】
次に巻き始め部の外観を図4に示す。同図に示すように巻終わり、即ち口出し部も、巻き始め部と同じくFRP3に螺旋溝を設け、口出し線9をその中におさめている。
【0045】
口出し部の外観を図2に、口出し線9の断面を図3に、それぞれ示す。銅の角線9aに溝部を形成し、その溝部の中に超電導線9bを埋め込み、ハンダで固定する。角線9aは螺旋溝にしっくり嵌まる寸法とし、接着により溝に固定する。
【0046】
口出し線9の表面は、直接冷媒に接するように絶縁しない。
【0047】
この構成により超電導線9bについて銅線9aの太さに相当する冷却面積を確保できると共に、口出し部の「固定」と「冷却」の両方の効果を上げることができる。尚、銅線は角線の方が構内の安定がよい。
【0048】
また、角線9aの溝の中に銅マトリクスの超電導線9cを超電導線9bと一緒に埋め込むことは、接続抵抗を減らし、発熱を低減する効果がある。
【0049】
更に巻き始め部も、口出し部と同じようにFRPの溝の中に超電導線を埋め込むことは、線を固定する上で効果がある。
【0050】
更に、口出し部と同じに銅線に溝部を形成し、その中に超電導線を埋め込み、これをFRPの溝に埋め込む事にすると、固定と冷却の両方に効果がある。
【0051】
以上のような構成の永久電流スイッチにおいて実用上巻き線部を保護する必要がある場合がある。このときはFRP3、4の外径を同じにして、巻き線部8より若干大きくすると、円筒状の保護カバー10を取りつけるのに好適となる。
【0052】
この保護カバーを設けることにより、永久電流スイッチの巻き線部を特に、製造段階で損傷するのを防止できると共に、保護カバーをAl、Cu等の導電体で形成することにより変動磁場に対するシールド効果が得られる。
【発明の効果】
【0053】
以上に述べたように、本発明によれば超電導線の「冷却」と「固定」の両方について、向上させることができるのでクエンチしにくい永久電流スイッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】 本発明に係る永久電流スイッチの一実施例の構造を示す断面図である。
【図2】 図1に示した永久電流スイッチの口出し部を示す外観図である。
【図3】 図2に示した口出し部巻線構造を示す断面図である。
【図4】 図1に示した永久電流スイッチの巻き始め部を示す外観図である。
【符号の説明】
【0055】
1 巻枠
2 絶縁
3 FRP
4 FRP
5 ヒーター
6 ピン
7 巻き始め(超電導線)
8 巻線部
9 口出し線
9a 銅線
9b 超電導
9c 銅マトリクス超電導
10 保護カバー

Claims (5)

  1. ステンレス鋼の円筒の両端部にFRPで形成された円筒を嵌着したものを超電導線の巻枠として使用し、前記FRPで形成された二つの円筒のうちの一方の円筒の外周面に形成された螺旋溝に前記超電導線の口出し線を埋め込み、該口出し線は素線絶縁を施さず、かつ表面を露出させて前記螺旋溝に埋め込まれてなる永久電流スイッチ。
  2. 前記口出し線を銅製の角線に形成された溝部に埋め込み、これを前記螺旋溝に埋め込んだことを特徴とする請求項1に記載の永久電流スイッチ。
  3. 前記銅製の角線に形成された溝部に、前記口出し線と共に銅マトリクスの超電導線を埋め込んだことを特徴とする請求項1に記載の永久電流スイッチ。
  4. 超電導線の巻き始め部の端部を、前記FRPで形成された二つの円筒のうちの他方の円筒に植設された銅製のピンにハンダにより固定したことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の永久電流スイッチ。
  5. 超電導線の巻き始め部の巻線を、銅製の角線に形成された溝部に埋め込み、これを前記FRPで形成された二つの円筒のうちの他方の円筒の外周面に形成された螺旋溝に埋め込んだことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の永久電流スイッチ。
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