JP3763967B2 - X線装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線装置に関し、特に、X線透視およびX線撮影時におけるX線条件の最適化に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のX線装置である医療用のX線診断装置では、X線管の管電圧、管電流およびX線フィルタの有無または種類等のX線条件は、X線条件自動制御装置によって被検体の厚さに応じて決定されていた。通常、X線管の管電流、およびX線フィルタの有無または種類は、X線管の管電圧に応じて一意に設定されていた。また、X線管の管電圧の設定には、通常、水層やアクリル板等の模擬被検体が用いられ、この模擬被検体のそれぞれの厚さに対して管電圧が一意に決定されるように調節されていた。
【0003】
これに対して、特開昭62−15800号公報(以下、「文献1」と記す)に記載されるX線診断装置では、任意の被検体に対して、その透視撮影像のコントラストノイズ比を最大化するX線条件の自動制御方法が記載されている。この文献1に記載のX線診断装置では、被検体のX線透視時においてX線検出器から出力されるビデオ信号から、被検体の平均的な厚さ、および最小・最大の厚さが計算され、前記被検体のX線透視または撮影像のコントラストが最大となるようにX線条件が自動制御されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記従来技術を検討した結果、以下の問題点を見いだした。
近年、X線診断装置を用いたIVR(Interventional Radiology、X線透視下のカテーテル手術)が盛んに行われている。このIVRでは、被検者は手術という長時間にわたってX線を照射されているので、被検体の被曝量を低減させるためにX線量をできるだけ抑える必要があった。しかしながら、X線量を抑えすぎると透視画像中の量子ノイズが増加してカテーテルやガイドワイヤー等が見えにくくなるため、作業に時間がかかり逆に被曝量が増加してしまうという問題があった。この問題を解決するためには、被曝線量と画質との最適値を見つけだす必要があった。
【0005】
しかしながら、前述するように、従来のX線条件自動制御装置では、X線条件の組み合わせは均一な組成を持つ模擬被検体に対して設定されており、その設定方法は医師や技術者の経験や勘によることが多かった。このために、被検者の被曝線量については、十分に考慮されていなかった。また、被検体中の注目物質(例えばカテーテル等)の見えやすさと被検体の被曝線量に対する最適化が考慮されていなかった。
【0006】
一方、文献1に記載のX線診断装置では、被検体のコントラストノイズ比の最大化は被検体中の最大厚および最小厚の部分に対して行われていたので、カテーテル等の注目物質に対してコントラストノイズ比の最大化を行うことは困難であった。また、実際のX線透視撮影時においては、被写体の無い部分に直接X線が入射してハレーションが発生している部分や、X線を部分的に遮蔽しているために、出力信号が得られないような部分が存在し、これらの部分に最小厚および最大厚がそれぞれ設定されてしまうという問題があった。このような問題の解決には、カテーテル等の注目物質の存在する部分に常に関心領域を追従させる必要があるが、一般的にこのような作業は非常に困難であるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、どのような被写体条件においても、注目物質とその背景となる物質とのコントラストノイズ比を最大とすることが可能なX線装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、医師等の検者の作業効率を向上することが可能なX線装置を提供することにある。
【0009】
本発明のその他の目的は、被検体の被曝線量を低減することが可能なX線装置を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
X線を発生し被検体に照射するX線照射手段と、前記被検体をX線で撮像するX線撮像手段と、該X線像を表示する表示手段を有し、前記被検体内に該被検体の組成物質と異なる注目物質が存在する部位のX線像を撮像するX線装置において、撮像中における前記被検体の最大被曝線量を予め設定する被曝線量設定手段と、該注目物質の特徴量が既知である場合に該最大被曝線量内で前記注目物質とその他の部分とのコントラストノイズ比を最適にするX線条件をX線照射に先立って計算するX線条件計算手段と、X線条件を該最適X線条件に基づいて制御するX線条件制御手段とを具備する。
【0011】
前述した手段によれば、検者が被曝線量設定手段で設定した被曝線量の範囲内で、注目物質以外の部分となる被検体部分に対する注目物質のコントラストノイズ比が最適値となるように、X線条件計算手段が後述する原理の項に示す原理に基づいてX線条件を設定し、このX線条件でX線透視およびX線撮影を行うことができるので、従来のX線装置のように医師や技術者の経験や勘によらず、常に最適のX線条件でのX線透視およびX線撮影ができる。すなわち、どのような被写体条件においても、注目物質と該注目物質の周辺物質(背景物質)である被検体部分とのコントラストノイズ比を最大とすることができる。
【0012】
また、被検体の被曝線量を考慮してX線条件を制御することができるので、被検体の過度な被曝や、不必要な被曝を抑え、人に優しいX線透視およびX線撮影を行うことができる。
【0013】
(原理)
図7は本願発明における最適X線条件の算出原理を説明するための図であり、特に、図7(A)は最適X線条件を計算するために用いるファントムの概念図であり、図7(B)はファントムのX線透過像のx軸方向のプロファイルを示す図である。
【0014】
本願発明では、被検体の組織物質部分に相当するファントムにおける背景物質700と、該被検体中に挿入した注目物質701となるカテーテル用のガイドワイヤー等とのコントラスト比が最も良好となるX線条件を最適X線条件としている。
【0015】
図7(A)に示すように、撮像領域の大部分を占めているのが、被検体の組織物質部分を単純な形状、サイズおよび組成として近似した、たとえば、水やアクリル等から構成される背景物質700であり、該背景物質700中に配置されるそのX線吸収係数が異なる小物体となるのが、たとえば、カテーテル用のガイドワイヤーや血管中に注入した造影剤等から構成される注目物質である。
【0016】
図7(B)から明らかなように、図7(A)に示すファントムのX線透過像の内で、注目物質701の延在方向と垂直をなす方向(図7(B)中のx軸方向)のプロファイルにおいて、S2は背景物質700を透過して検出された信号の強度を、S1は注目物質701の部分の信号の極小値を、Cは背景物質700に対する注目物質701のコントラスト信号C、すなわち、C=S2−S1をそれぞれ示している。一般に、注目物質701のX線透過率が小さい場合であっても、背景物質700中で散乱されるX線(以下、「散乱X線」と記す)の影響によって、S1は0(ゼロ)とはならない。
【0017】
ここで、背景物質700の部分におけるノイズの標準偏差をN1、注目物質701の部分におけるノイズの標準偏差をN2とした場合、背景物質700に対する注目物質701のコントラストノイズ比CNRは、下記の数6に示すことができる。
【0018】
【数6】
【0019】
信号S1およびS2がそれぞれn1およびn2個のX線フォトンの検出量に相当しているものとすると、数6は下記の数7で表現することもできる。
【0020】
【数7】
【0021】
ここで、管電圧を一定にしたまま管電流量のみをβ倍した場合、フォトン数が単純にβ倍されるので、このときのコントラストノイズ比CNR’は下記の数8で得られる。
【0022】
【数8】
【0023】
この数8から明らかなように、管電圧を一定にしたまま管電流量のみをβ倍した場合、コントラストノイズ比はsqrt(β)倍されることがわかる。ただし、sqrtは平方根を表すものとする。
【0024】
一方、管電圧を変化させた場合のコントラストノイズ比については、そのシミュレーション結果を図8に示す。特に、図8(A)は同一被曝線量下における管電圧とX線透過像のコントラストノイズ比との関係をシミュレーションした結果の図であり、図8(B)はこのときの管電圧と管電流量(mAS値)との関係をシミュレーションした結果の図である。ただし、図8において、背景物質700の厚さは5cmおよび10cmの場合のそれぞれについて、X線フィルタを使用しない場合と、5mm厚のアルミニウム板をX線フィルタとして挿入した場合とについて計算している。また、それぞれの被検体厚において、被検体のX線入射表面(体表面)における被曝線量が同一となるように管電流量をコントロールした。さらには、背景物質700としては水を、注目物質701としてはステンレスを主成分とする標準的なガイドワイヤーを想定した。また、それぞれの被写体厚(背景物質の厚さ)における許容被曝線量を決定する際には、後述する被曝線量の設定方法に基づき、被曝線量パラメータI0,αを用いた。ただし、ここでは、被写体の平均質量吸収係数μとして、水の80[keV]における吸収係数を設定した。被曝線量パラメータは、Io=3.29[J/(cm2)]、α=1とした。このときの被検体厚5cm、および10cmの場合の許容被曝線量は、それぞれ1.5[μGy]および3.75[μGy]である。
【0025】
図8(A)から明らかなように、同一の被曝線量において、コントラストノイズ比に最大値が存在することが明らかとなった。すなわち、被検体の被曝線量を予め設定しておき、管電圧を制御することによって、当該被曝線量におけるコントラストノイズ比を最大にする管電圧が存在することが明らかとなった。したがって、本願発明では、検者が予め設定した被曝線量に対してコントラストノイズ比が最も大きくなるX線条件を最適X線条件として設定することによって、被検体の被曝線量を低減する。
【0026】
また、図8(B)から明らかなように、最適管電圧における管電流量が最適管電流量である。更に、本例においては、X線フィルタを用いた場合の方が、用いない場合よりも常にコントラストノイズ比が高いため、X線フィルタは常に使用する。したがって、たとえば、このようにして求めた最適管電圧、管電流およびフィルタの種類(ここでは有無)の値をテーブルにして格納しておき、X線透視時およびX線撮影時にこのテーブル値に基づいて、X線条件を設定することによって、最適X線条件におけるX線透視およびX線撮影ができるということが判明した。
【0027】
ここで、それぞれの被写体厚において、管電流量をk倍(すなわち、被曝線量をk倍)した場合、コントラストノイズ比は数8に示すように、全体的にsqrt(k)倍されるのみである。従って、最適管電圧は被曝線量の大きさに依存しないことがわかる。すなわち、図8(A)で求めた最適管電圧は全ての被曝線量に対して普遍的に成り立つ値である。
【0028】
図8(A)から明らかなように、X線フィルタを用いた場合の方が用いない場合よりもコントラストノイズ比が高いが、図8(B)から明らかなように、管電流量はX線フィルタを用いない場合に比べてかなり多いことがわかる。これはX線フィルタで吸収されるX線量の分だけ、管電流量を増加する必要があるからである。このような管電流量の増加は、管電流量がX線管の許容量内であれば可能であるが、実際には限界がある。このとき管電流量の限界値に対して、本来供給すべき管電流量の値がk倍であったとすると、コントラストノイズ比はX線管の容量限界によってsqrt(k)分の1倍されてしまい、最適管電圧の値が変化する。従って、最適X線条件を出すには、X線管の容量限界も考慮しなければならないことが分かる。
【0029】
図9は、X線管容量を考慮した場合の最適X線条件の計算結果を示す図であり、特に、図9(A)はX線管容量を考慮した場合における管電圧とX線透過像のコントラストノイズ比との関係をシミュレーションした結果の図であり、図9(B)はX線管容量を考慮した場合における管電圧と管電流量との関係をシミュレーションした結果の図である。ただし、ここではX線管の管電流量の限界を0.13[mAs](4[mA]x1/30[s])に設定してある。
【0030】
図9(B)から明らかなように、低管電圧部分では管電流量が0.13[mAs]で頭打ちになっているため、この領域内でコントラストノイズ比が減少する。すなわち、図9(A)に示すようになる。
【0031】
被検体厚5cmの場合では、図9(A)に示すように、低管電圧においてコントラストノイズ比が減少しており、図8(A)の場合に比べて最適管電圧が上昇していることがわかる。また、被検体厚10cmの場合では、X線フィルタを使用するとかなりの量の管電流量が制限されるため、X線フィルタを用いない方がより高いコントラストノイズ比が得られる結果となっている。
【0032】
これらの結果より、X線管容量を考慮した場合、被検体厚5cmにおいてはX線フィルタを使用し、10cmにおいてはX線フィルタを使用しない方がよいことがわかる。このようにX線管容量を考慮した場合、最適X線条件の値が変化する。またX線管容量による制限量は被曝線量の設定に依存するため、被曝線量パラメータの設定値毎に最適X線条件となる場合のテーブルを用意する必要がある。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。
なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態に係るX線装置の概略構成を説明するための図である。本実施の形態に係るX線装置は、X線管(X線照射手段)1、X線フィルタ2、X線コリメータ3、寝台天板5、X線グリッド6、X線イメージインテンシファイア(以下、「X線I.I.」と略記する)7、光学レンズ系8、テレビカメラ9、モニタ(表示手段)10、操作卓11、簡易操作卓12、X線制御器100、X線フィルタ制御器101、X線コリメータ制御器102、透視・撮影位置制御器103、I.I.モード制御器104、光学絞り制御器105、テレビカメラ制御器106、アンプ107、A/D変換器108、画像処理手段109、透視・撮影条件演算手段(X線条件計算手段)110、設定条件メモリ111、X線条件テーブル112等より構成される。なお、前記各機構および各制御器は公知のものを用いる。
【0035】
X線検出器(X線撮像手段)はX線I.I.7、光学レンズ系8およびテレビカメラ9からなる。また、撮影系はX線管1、X線フィルタ2、X線コリメータ3、X線グリッド6およびX線検出器からなる。被検体4は寝台天板5上に位置し、撮影体位を様々に変化できるものする。そして、被検体4の撮りたい部位をX線検出器の視野の中心付近に設定する。また、被検体4に照射されるX線量、すなわち、被検体4のX線入射面(体表面)の被曝線量を設定する手段は、操作卓11あるいは簡易操作卓12と該操作卓11,12から入力された被曝線量を格納する設定条件メモリ111とからなる。
【0036】
図1において、X線管1とX線I.I.7の入力面との距離は120[cm]、被検体4の厚さはt、寝台天板5の上面とX線I.I.7の入力面との間の距離(以下、「エアギャップ」と記す)はLである。tは被検体4の個体差あるいは体位に応じて様々に変化する。また、エアギャップLは寝台天板5の位置の設定に従い変化する。X線I.I.7のX線入力面の直径は30.48[cm]である。(x、y)座標系はX線I.I.7の入力面上で定義され、X線I.I.7の中心を原点に持ち、体軸方向をy軸、y軸に直交する方向をx軸として定める。X線グリッド6は、X線I.I.7の入力面上に固定される。テレビカメラ9は、撮像素子として高解像度CCD素子を使用している。
【0037】
次に、前記各部の概要を説明する。
X線制御器100は、X線透視時における透視管電圧および透視管電流を透視・撮影条件演算手段110から読み出し、X線管1のX線発生をリアルタイム制御する。また、X線制御器100はX線撮影時における撮影管電圧、撮影管電流および撮影時間を透視・撮影条件演算手段110から読み出し、X線管1のX線発生を制御する。
【0038】
X線フィルタ制御器101は、X線透視・撮影時におけるX線フィルタ2の有無または種類を、透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。X線フィルタ2はX線管1から放射されるX線のエネルギー分布を変化する。
【0039】
X線コリメータ制御器102は、X線透視・撮影時におけるX線照射野13を設定するためのX線コリメータ3の位置を、透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。ただし、X線照射野13はX線I.I.7の入力面上におけるX線の照射野として定義する。X線コリメータ3は、X線照射野13をx軸およびy軸方向に変化することができる。このときの変化量はそれぞれx軸およびy軸に対して軸対称であり、x軸方向およびy軸方向のX線照射野の大きさは、それぞれAxおよびAyで表現する。
【0040】
透視・撮影位置制御器103は、被検体4のX線透視・撮影位置を制御する。透視・撮影位置の制御は、固定された寝台天板5に対して撮影系全体を移動することにより、あるいは固定された撮影系に対して寝台天板5を移動することにより、またはこれらの両方を組み合わせることにより行う。
【0041】
I.I.モード制御器104は、X線透視・撮影時におけるX線I.I.7のI.I.モードを、透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。I.I.モードは、X線I.I.7のX線検出領域を規定する。X線I.I.7にはI.I.モードとして、7、9、12インチモードが用意されており、X線I.I.7の入力面上において、およそそれぞれのインチ数(ただし、1インチを2.54[cm]とする)を直径とする円の内部の領域でX線を検出する。
【0042】
光学絞り制御器105は、X線透視・撮影時における光学レンズ系8の光学絞り面積を、それぞれ透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。
【0043】
テレビカメラ制御器106は、X線透視・撮影時におけるテレビカメラ9の走査条件(以下、「カメラモード」と記す)を、透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。また、テレビカメラ9の走査のタイミングを制御する。テレビカメラ9のX線透視時における標準走査モードは毎秒30フレーム、走査線数1050本であるが、毎秒60フレーム、走査数525本による透視も可能である。テレビカメラ9のX線撮影時における標準走査線数は2100本であるが、走査線数1050本および525本による撮影も可能である。
【0044】
アンプ107は、X線透視・撮影時におけるテレビカメラ9の出力信号のゲインを、透視・撮影条件演算手段110から読み出し、制御する。
【0045】
A/D変換器108は、アンプ107によりゲイン調整されたテレビカメラ9の出力信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器108により変換される画像の画素数はカメラモードに従って決まる。テレビカメラ9の走査線数が525本の場合、A/D変換器108は画素数512ピクセル四方のデジタル画像に変換する。同様に走査線数が1050および2100本の場合、A/D変換器108はそれぞれ1024および2048ピクセル四方のデジタル画像に変換する。A/D変換における量子化ビット数は12ビットであり、デジタル画像の画素値は0〜4095の範囲の数値として表現される。
【0046】
画像処理手段109は、A/D変換器108から出力されるデジタル画像に対して公知の画像処理を行い、この画像処理を行った後のデジタル画像をモニタ10に表示する。
【0047】
透視・撮影条件演算手段110は、たとえば、周知の情報処理装置上で動作するプログラムによって実現されており、A/D変換器108から出力されるデジタル画像、X線条件テーブル112から読み出されるX線条件、および設定条件メモリ111に記録された設定条件に基づき、透視および撮影時におけるそれぞれの制御器の設定条件を計算する。なお、X線条件テーブル112に格納するX線条件および設定条件メモリ111に格納される本実施の形態のX線装置に対する設定値の詳細については、後述する。
【0048】
次に、図2に本実施の形態のX線装置におけるX線条件の設定に使用される各パラメータを説明するための図を示し、以下、図2に基づいて、条件設定に使用される各パラメータの設定方法を説明する。ただし、図2において透視および撮影時のパラメータ値の違いを明確にするために、撮影時のパラメータにはプライム記号を付けている。
【0049】
本実施の形態のX線装置では、図2に示す各パラメータすなわちX線管1の管電圧Vないし管電流量Q(ただし管電流量Qは、X線透視時においてはX線管1の管電流とテレビカメラ9の1フレームの読み込み時間との積として、またX線撮影時においてはX線管1の管電流と撮影時間との積として定義する)、被検体の最大被曝線量D、X線フィルタ2の種類、X線照射野13の大きさAxおよびAy、エアギャップL、注目物質の種類、X線グリッド6の種類、I.I.モード、光学絞り面積Ω、カメラモード、およびアンプ107のゲインGの値は、それぞれパラメータとして可変である。前記各パラメータの設定は、パラメータ毎に手動あるいは自動に設定される。
【0050】
この各パラメータの内で、カメラモード、I.I.モード、X線照射野13、最大被曝線量、X線フィルタ2の種類、X線グリッド6の種類、エアギャップ、および注目物質の種類の各パラメータは、それぞれ検者が操作卓11あるいは簡易操作卓12を通して手動設定されたものであり、本実施の形態においては、たとえば、周知の情報処理装置のメインメモリ上あるいは情報処理装置に接続される周知の磁気ディスク装置上に確保された領域である設定条件メモリ111に格納される。前記手動設定されるパラメータの内、カメラモード、I.I.モード、X線照射野13および最大被曝線量は透視、撮影時によって異なる値が設定がされる可能性があり、その他のパラメータは透視、撮影時において共通の値が設定される。ただし、X線透視時における最大被曝線量は、単位時間当りの最大被曝線量を表すものである。また、図2に示すパラメータの内で、管電圧、管電流量、光学絞り面積、ゲインおよびX線フィルタの種類は、透視および撮影時においてそれぞれ後述する手順により自動設定される。
【0051】
次に、本実施の形態に係るX線装置の動作を図1および図2に基づいて説明する。
【0052】
X線透視および撮影時において、X線管1から発生されたX線はX線フィルタ2によりエネルギー分布が変化され、X線コリメータ3によりX線照射野13を制限された後に被検体4を透過する。このX線は被検体4を透過する際にその一部が被検体4により散乱される。この散乱されたX線(以下、「散乱X線」と記す)はX線グリッド6により大部分遮断されるが、その一部は遮断されずにX線グリッド6を透過する。X線グリッド6を透過した散乱X線と被検体4を散乱されずに透過した直接X線とは、同時にX線I.I.7により検出され、光学像に変換される。この光学像は光学レンズ系8において光学絞りを用いて光量を調節され、テレビカメラ9に結像される。テレビカメラ9は光学像をビデオ信号に変換し、出力する。出力されたビデオ信号は、アンプ107によって信号強度を調整された後にA/D変換器108においてアナログ信号からデジタル信号へ変換される。前記デジタル信号へ変換されたビデオ信号は画像処理手段109によって公知の画像処理を行われた後に、モニタ10の表示画面上に表示される。
【0053】
このとき、X線透視時においては、A/D変換器108から出力されるデジタル画像が透視・撮影条件演算手段110に入力される。透視・撮影条件演算手段110は、設定された最大被曝線量の制限の中で、デジタル画像の出力を最適にするX線管1の透視管電圧Vおよび管電流量Q、光学絞り面積Ω、アンプ107のゲインG、およびX線フィルタの種類のそれぞれの値をX線条件テーブル112を参照しながら後述する手順でリアルタイムに計算して、各制御器に出力する。また透視・撮影条件演算手段110は、操作卓11から入力される透視時の設定値、すなわちX線照射野Ax,Ay、I.I.モードおよびカメラモードの設定値を設定条件メモリ111から読み出して、それぞれX線コリメータ制御器102、I.I.モード制御器104およびテレビカメラ制御器106に出力する。各制御器では、入力された制御情報に従ってリアルタイムに各装置を制御し、制御結果はA/D変換器108から出力されるデジタル画像に反映されて、透視・撮影条件演算手段110にフィードバックされる。
【0054】
検者はX線透視時において、被検体4の見たい部位がモニタ10の表示画面の適正な位置にくるように、操作卓11あるいは簡易操作卓12を用いて位置を合わせ、位置が合った時点において操作卓11あるいは簡易操作卓12を用いてX線撮影開始の信号を発生する。X線撮影開始の信号が発生すると同時に、以下に示す手順によってX線撮影が行われる。
【0055】
撮影開始の信号が発生されると、まずX線制御器100はX線発生を停止してX線透視を終了する。次に、透視・撮影条件演算手段110は、設定された最大被曝線量の制限の中で、デジタル画像の出力を最適にするX線管1の撮影管電圧V’および管電流量Q’、光学絞り面積Ω’、アンプ107のゲインG’、およびX線フィルタの種類のそれぞれの値をX線条件テーブル112を参照しながら後述する手順でリアルタイムに計算して、各制御器に伝える。また、透視・撮影条件演算手段110は操作卓11から入力される撮影時の設定値、すなわちX線照射野A’x,A’y、I.I.モードおよびカメラモードの設定値を設定条件メモリ111から読み出して、それぞれX線コリメータ制御器102、I.I.モード制御器104およびテレビカメラ制御器106に出力する。各制御器では、入力された制御情報に従って各装置を制御し、全ての設定が完了すると同時にX線制御器100はX線発生信号をX線管1に送り、X線撮影を行う。X線撮影像はA/D変換器108によりデジタル信号に変換された後に、図示しないフレームメモリに格納される。
【0056】
図3は透視時におけるX線条件の計算手順を説明するための図であり、以下、図3に基づいて、本実施の形態のX線装置におけるX線透視時の動作を詳細に説明する。
【0057】
まず、操作卓11あるいは簡易操作卓12においてX線透視開始ボタンがオンされると(300)、テレビカメラ制御器106、I.I.モード制御器104、およびX線コリメータ制御器102は、それぞれの透視時における設定値を設定条件メモリ111から読み出して各装置を制御する(301)。次に透視・撮影条件演算手段110は、設定条件メモリ111から透視時設定値および透視・撮影時共通設定値を読み出し、各設定値に従って使用する、すなわち、各設定値に一致するX線条件テーブル112を選択する(302)。次に透視・撮影条件演算手段110は、X線制御器100に対してX線条件の初期値を出力し、X線制御器100はこのX線条件の初期値に従ってX線管1を制御してX線の照射を開始する(303)。なお、X線条件の初期値の例としては、たとえば、X線管1が許容する最小のX線量を実現するX線条件等が挙げられる。次に透視・撮影条件演算手段110は、X線照射後において計測される透視画像の信号強度が既定値よりも小さいか否かを判断し(304)、既定値よりも小さい場合は被写体厚を大きく見積るように設定し(305)、既定値よりも大きい場合は被写体厚を小さく見積るように設定する(306)。ただし、既定値としては、たとえば、テレビカメラ9のダイナミックレンジの1/3あるいは1/2を用いる。
【0058】
次に、透視・撮影条件演算手段110は、X線条件テーブル112から設定された被検体厚に応じてX線条件テーブルを読み出し(307)、該読み出した値に基づいて後述する手順でX線条件を計算する(311)。このようにして計算されたX線条件はX線制御器100、アンプ107、光学絞り制御器105、X線フィルタ制御器101の各制御器に送られ、各制御器は再設定されたX線条件に基づいて制御を行う(308)。ここで、透視終了の信号が入力されている場合は、直ちにX線の発生を遮断してX線透視を終了するが(310)、透視終了の信号が入力されていない場合は、再び透視画像の信号強度と規定値との比較の段階に戻り、X線透視時のフィードバック制御系をなす(309)。このように、フィードバック制御系をなすことによって、常にX線透視時におけるX線条件を最適に保つことができる。
【0059】
このように、本実施の形態のX線装置では、操作卓11あるいは簡易操作卓12から入力された設定値に対応するX線条件は予めX線条件テーブル112に設定しておき、透視画像から得られた透視画像強度に基づいて、被検体厚さを推定し、この被検体厚さを変数としてX線条件を変化させることによって、最適のX線条件を求めX線透視を行う構成となっている。
【0060】
次に、図4に撮影時におけるX線条件の計算手順を説明するための図を示し、以下、図4に基づいて、本実施の形態のX線装置におけるX線撮影時の動作を詳細に説明する。
【0061】
まず、操作卓11あるいは簡易操作卓12においてX線撮影開始ボタンがオンされると(400)、テレビカメラ制御器106、I.I.モード制御器104、およびX線コリメータ制御器102は、それぞれの撮影時における設定値を設定条件メモリ111から読み出して各装置を制御する(401)。次に、透視・撮影条件演算手段110は、設定条件メモリ111から撮影時設定値および透視・撮影時共通設定値を読み出し、各設定値に従って使用するX線条件テーブル112を選択する(402)。次に、透視・撮影条件演算手段110は、透視終了時の被検体厚に基づいて(404)、X線条件テーブル112からX線条件テーブルを読み出し(403)、この読み出した値に基づいて後述する手順でX線条件を計算する(405)。このようにして計算されたX線条件はX線制御器100、アンプ107、光学絞り制御器105およびX線フィルタ制御器101の各制御器に送られ、各制御器は前記X線条件に基づいて撮影のスタンバイを行う(406)。最後に、撮影のスタンバイが終了した時点で直ちにX線撮影を行い(407)、X線撮影を終了する。
【0062】
次に、図5に本実施の形態のX線条件テーブル112の構成の一例を説明するため図を示し、以下、図5に基づいて、X線条件テーブルの構成を説明する。
【0063】
図5から明らかなように、本実施の形態のX線テーブル112は、エアギャップL、使用するX線グリッドの種類、X線照射野、被曝線量、および注目物質の種類のすべての組み合わせからなる。したがって、本実施の形態では、これらのパラメータ全ての組み合わせに対するテーブルをそれぞれ求める必要がある。これは、これらのパラメータの変化に応じて直接および散乱X線量が変化して、最適なX線条件が変わるためである。ただし、X線グリッドの種類は通常1種類に固定されているため、複数のグリッドに対してテーブルを用意する必要がない場合が多い。また、通常X線条件の最適値はエアギャップおよびX線照射野の変化に伴って大きく変化しないため、近似的にこれらのパラメータを省略してもよい。この場合、注目物質の種類および被曝線量のみがパラメータとなり、テーブル数を減少することができる。
【0064】
まず、本実施の形態おいて、被曝線量の指定に用いる2つのパラメータIoおよびαについての説明を行う。
【0065】
今、被検体を厚さをt、平均質量吸収係数をμ、平均密度をPとし、また被検体透過前後のX線のエネルギー強度をそれぞれII、Ioとすると、下記の数1が成り立つ。
【0066】
【数1】
【0067】
このとき、被検体のX線入力面の厚さΔtの部分における被検体の被曝線量D’は、下記の数2で表される。
【0068】
【数2】
【0069】
ここで、Δtを0に近づけると、被検体の入力表面における被曝線量Dは、下記の数3となる。
【0070】
【数3】
【0071】
この数3によれば、被検体透過後のX線のエネルギー強度Ioを一定に保つ場合、被曝線量Dは被検体厚tに対して指数関数的に増加することがわかる。そこで、本実施の形態では、増加量を規定するパラメータαを導入し、被曝線量の設定値Dsを下記の数4で設定することにする。
【0072】
【数4】
【0073】
数4において、被検体透過後のX線のエネルギー強度Ioも、パラメータとして設定できるようにすると、各被検体厚tに対して任意に被曝線量を設定できるようになる。このとき、一般的に被曝線量を抑えるためにはIoを小さくすればよい。また、被検体厚tの増加に伴う被曝線量の増加を抑えるためにはαの値を小さくすればよい。αが1の場合Ds=Dとなり、被写体厚tが増加しても、X線検出器に入力するX線のエネルギー強度Ioが一定値に保たれる。従って、透視撮影を低線量で行うにはIoを小さくし、またαを1より小さく設定すればよい。一方、高画質の透視撮影像を得るためには、Ioを大きくし、αを1に近い値か、1より大きな値に設定すればよい。なお、平均質量吸収係数μおよび平均密度をPの値は、被検体を模擬する物質として水やアクリルの値を用いる。また、平均質量吸収係数μの値は、X線エネルギー60〜80[keV]程度の値を用いる。
【0074】
次に、本実施の形態のX線条件テーブル112で規定される各被検体厚さtに対応する最適の管電圧V、管電流Q、トータルゲインAおよびフィルタの種類に基づいて、光学絞り面積Ωおよびアンプ107のゲインAの算出手順を説明する。
【0075】
トータルゲインAは下記の数5で与えられることが知られている。
【0076】
【数5】
【0077】
ただし、FIはI.I.モードにより、FCはカメラモードによりそれぞれ規定される係数を示す。
【0078】
ここで、FIおよびFCはそれぞれ操作卓11から予め設定される値であり、既知の値である。したがって、この数5に基づいて、光学絞り面積Ωとアンプ107のゲインGとが算出できる。これによって、全てのX線条件が決定される。
【0079】
図6は本実施の形態の透視撮影条件演算手段における光学絞り面積とアンプのゲインとの演算手順を説明するための図であり、以下、図6に基づいて、光学絞り面積Ωとアンプ107のゲインGとの演算手順を説明する。
【0080】
まず、透視撮影条件演算手段110は、X線条件テーブル112からトータルゲインAを読み出し、次にk=A/(FI*FC)=ΩGを計算する(600)。ここで、アンプ107のゲインGを大きくするにつれてアンプのノイズが増大することが知られている。したがって、アンプ107によるノイズを低減させるためには、できるだけ光学絞り面積Ωを大きくして、アンプ107のゲインGを小さくする必要がある。いま、Ωの最大値をΩmaxとした場合、K/Ωmaxの値が1より小さい場合には(601)、アンプによる増幅の必要がないので、アンプ107のゲインGを1に設定でき、光学絞り面積Ωをkに設定する(603)。一方、K/Ωmaxの値が1より大きい場合には(601)、アンプ107のゲインGの値をできるだけ小さくする必要があるので、光学絞り面積Ωをその最大値Ωmaxに設定し、アンプ107のゲインGをG=K/Ωmaxとして計算することによって、最適な光学絞り面積Ωとアンプ107のゲインGとが計算できる(602)。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態のX線装置によれば、前述した原理の項に記載する原理に基づいたX線条件テーブル112を作成し格納しておき、透視・撮影条件演算手段110が、まず、操作卓11あるいは簡易操作卓12から入力されて設定条件メモリ111に格納されるX線量(被曝線量)等の設定条件、および、直前あるいはそれ以上前に透視で得られた被検体厚さに基づいて、X線条件テーブル112を検索して該当するX線管電圧V、X線管電流量Q、トータルゲインA並びにX線フィルタ2の有無およびその種類を選択する。次に、透視・撮影条件演算手段110は、条件設定メモリ111に格納されるI.I.モードFI、カメラモードFC、トータルゲインAおよびX線フィルタ2の種類に基づいて、光学絞り面積Ωおよびアンプ107のゲインGを決定し全てのX線条件を決定する。次に、透視・撮影条件演算手段110がこのX線条件を各制御器に出力し、各制御器がそれぞれをX線条件に制御した後に、次のX線透視像の撮像を行うので、検者が被曝線量設定手段となる操作卓11あるいは簡易操作卓12で設定条件メモリ111に設定したX線量すなわち被曝線量の範囲内で、被検体4の生体部分に相当する背景物質に対するカテーテルに相当する注目物質のコントラストノイズ比が最適値となるX線透視を行うことができる。したがって、従来のX線装置のように医師や技術者の経験や勘によらず、常に最適のX線条件を設定できるので、どのような被写体条件においても、注目物質の被検体部位(背景物質)に対するコントラストノイズ比を向上することができる。また、従来のX線装置のように医師や技術者の経験や勘によらず、常に最適のX線条件を設定できるので、医師や技術者等の診断効率を向上することができる。
【0082】
また、本実施の形態のX線装置では、検者は操作卓11あるいは簡易操作卓12から被検体4の被曝線量を設定することができる、すなわち、検者は被検体4への被曝線量を考慮してX線条件を制御することができるので、被検体4の過度な被曝や不必要な被曝を抑えることができる。その結果として、人に優しいX線透視およびX線撮影を行うことができる。
【0083】
さらには、本実施の形態のX線装置では、被検体の被曝線量を、数4に示すX線のエネルギー強度Ioと被曝線量の増加量を規定するパラメータαとによって指示することで、被検体中で最も被曝量の多い皮膚に対する最大被曝線量を設定することができるので、被検体の最大被曝線量をより正確に見積もることができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、IVRを行う場合についてのみ説明したが、X線条件テーブル112に通常のX線透視時およびX線撮影時の条件を格納しておき、入力装置からの情報に基づいて、IVR時のテーブルを使用するか、通常時のテーブルを使用するかによって、より最適なX線透視およびX線撮影を行うことができることはいうまでもない。
【0085】
また、本実施の形態では、テレビカメラ9の出力に基づいて、X線透視時における被写体厚の設定をコントロールしていたが、光電子増倍管等の二次検出器の出力で、これを置き換えてもよいことはいうまでもない。
【0086】
また、本発明は一般的なX線透視装置、X線撮影装置、立体X線撮影装置等にも適用できることはいうまでもない。
【0087】
さらには、本発明は医療用のX線診断装置において、特に、その効果を得ることができることはいうまでもない。
【0088】
また、本実施の形態のX線装置では、注目物質としてはカテーテルおよびそのガイドワイヤーの場合について説明したが、これに限定されることはなく、たとえば、癌細胞等のように、予めその形状、サイズおよび組成が概略で予想できる物質に対しても、注目物質としてその予測値に基づいたX線条件テーブル112を作成し格納しておくことによって、癌細胞等を注目物質に指定した場合であっても、前述の効果を得ることができることはいうまでもない。
【0089】
さらには、本実施の形態のX線装置においては、背景物質として被検体4としたが、X線透視およびX線撮影の対象が他の物質の場合には、背景物質はその物質であることはいうまでもない。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0091】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)どのような被写体条件においても、注目物質の背景に対するコントラストノイズ比を最大とすることができる。
(2)医師等の検者の作業効率を向上することができる。
(3)被検体の被曝線量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るX線装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】本実施の形態のX線装置におけるX線条件の設定に使用される各パラメータを説明するための図である。
【図3】透視時におけるX線条件の計算手順を説明するための図である。
【図4】撮影時におけるX線条件の計算手順を説明するための図である。
【図5】本実施の形態のX線条件テーブルの構成の一例を説明するため図である。
【図6】本実施の形態の透視・撮影条件演算手段における光学絞り面積とアンプのゲインとの演算手順を説明するための図である。
【図7】本願発明における最適X線条件の算出原理を説明するための図である。
【図8】管電圧を変化させた場合のコントラストノイズ比についてのシミュレーション結果を示す図である。
【図9】X線管容量を考慮した場合の最適X線条件の計算結果を示す図である。
【符号の説明】
1…X線管、2…X線フィルタ、3…X線コリメータ、4…被検体、5…寝台天板、6…X線グリッド、7…X線イメージインテンシファイア、8…光学レンズ系、9…テレビカメラ、10…モニタ、11…操作卓、12…簡易操作卓、100…X線制御器、101…X線フィルタ制御器、102…X線コリメータ制御器、103…透視・撮影位置制御器、104…I.I.モード制御器、105…光学絞り制御器、106…テレビカメラ制御器、107…アンプ、108…A/D変換器、109…画像処理手段、110…透視・撮影条件演算手段、111…設定条件メモリ111、112…X線条件テーブル、700…背景物質、701…注目物質。
Claims (4)
- X線を発生し被検体に照射するX線照射手段と、前記被検体をX線で撮像するX線撮像手段と、該X線像を表示する表示手段とを有し、前記被検体内に該被検体の組成と異なる注目物質が存在する部位のX線像を撮像するX線装置において、
撮像中における前記被検体の厚みに応じて被曝線量を予め設定する被曝線量設定手段と、
設定された前記被曝線量内で前記注目物質とその他の部分である背景物質とのコントラストノイズ比を最大にするX線条件をX線照射に先立って計算するX線条件計算手段と、
X線照射条件を計算された前記X線条件に基づいて制御するX線条件制御手段とを具備し、
撮像中における被曝線量をD、前記被検体部分となる背景物質の平均質量吸収係数をμ、前記背景物質の平均密度をP、前記背景物質の厚さをx、任意に設定する2つの変数をaおよびbとした場合に、前記被曝線量設定手段は、D=aμ・exp(bμPx)に基づいて被曝線量を設定し、撮像を低線量で行うときはbを1より小さい値とし、高画質の撮影像を得るときはbを1に近い値もしくは1より大きい値とすることを特徴とするX線装置。 - 請求項1に記載のX線装置において、前記X線条件計算手段は、前記注目物質として予め幾つかの物質を既設定注目物質として定め、該既設定注目物質毎に最適となるX線条件を予め計算したものを格納する格納手段と、指定された注目物質に基づいて、前記格納手段から該当するX線条件を選択し設定する手段とを具備することを特徴とするX線装置。
- 請求項2に記載のX線装置において、前記格納手段は、前記既設定注目物質としてカテーテル用のガイドワイヤーを設定した場合のX線条件を格納することを特徴とするX線装置。
- 請求項2に記載のX線装置において、前記格納手段は、前記既設定注目物質として血管中のX線造影剤を設定した場合のX線条件を格納することを特徴とするX線装置。
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