JP3762667B2 - 鋳造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳造体およびその製造方法に関し、特に地下構造物用蓋または路面部材のバリアフリー化に適した鋳造体の表面滑り止め構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
歩道や車道に設けられる地下構造物用蓋または路面部材は、装飾およびスリップ防止のために鋳造体表面に凹凸模様が形成されている。しかし、この凹凸模様は、タイヤや履物底等によって常に摩擦されるために、摩滅・平坦化して滑りやすくなりがちである。
従来、表面滑り止め構造としては、表面塗装する際にセラミックチップを撒布して塗膜硬化とともに表面に固着させる方法が主に採用されていた。また、耐火、耐熱性を有する素材によって形成された立体構造物を用い、この立体構造物を本体の鋳造と同時に鋳包み法によって本体の表面に固定するという方法も知られている(特開平11−6169号公報)。
【0003】
一方、道路などのバリアフリー化が進むと、側溝用の溝蓋やマンホール蓋などの地下構造物用蓋、あるいは根囲い保護材などの路面部材は、表面の凹凸の高さを可能な限り低くした平坦なものが求められる。
また、側溝用の溝蓋などは、歩道を横断する歩行者が使用する杖やハイヒールのヒール部分、車椅子のキャスター等が落ち込まないことが求められている。そのため、溝蓋に模様として設けられてい溝部分の開口を可能な限り狭くすることが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、地下構造物用蓋または路面部分をより平坦化したり、溝蓋に模様として設けられている溝部分の開口を可能な限り狭くしたりすると、車椅子のキャスター等は落ち込まなくなるが、溝蓋表面が殆んど平坦な鋳造体表面となるため、より滑りやすくなるという問題がある。
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、地下構造物用蓋または路面部材のバリアフリー化を達成するための平坦な鋳造体表面であっても、優れた表面滑り止め構造を有する鋳造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は表面に滑り止め構造が設けられた地下構造物用蓋または路面部材用の鋳造体であって、上記滑り止め構造が鋳造体と一体鋳造された高さ 3mm 以下の突起の集合体であり、該突起が、表面に弾性体細片が固着された模型を用いて砂型を造型し、上記弾性体細片が抜き取られた跡に形成された凹部に鋳造されてなることを特徴とする。
また、上記地下構造物用蓋または路面部材の表面は、履物底、歩行補助具、または車椅子の車輪およびキャスターが落ち込まない開口部を有していることを特徴とする。
【0006】
模型表面に固着された弾性体細片を用いて鋳型表面に形成された凹部に鋳造された突起の集合体は、鋳造体と一体鋳造されるので、突起が剥離し難くなる。また、その突起の断面が逆勾配を容易に形成できるので、滑り止め効果が大きくなる。
【0007】
また、滑り止め構造を一体鋳造された突起の集合体とすることにより、降雪時に逆勾配を有する突起間に雪が付きやすくなリ、道路上に設置された地下構造物用蓋上面に形成されやすい道路上の段差ができ難くなる。
【0008】
本発明の滑り止め構造が設けられた地下構造物用蓋または路面部材用の鋳造体の製造方法は、模型の表面に弾性体細片を撒布して固着する工程と、この模型を用いて鋳型を造型する工程と、この鋳型に湯を流し込み、表面に突起の集合体を一体鋳造する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
模型の表面に弾性体細片を撒布して固着することにより、鋳型が逆抜け勾配でも容易に造型できる。その結果、逆勾配を有する滑り止め構造が一体鋳造できるため、従来技術より低い製造コストで鋳造体が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の滑り止め構造を有する側溝用溝蓋を図1により説明する。図1(a)は側溝用溝蓋の平面図、図1(b)はA−A断面図、図1(C)はB部拡大断面図をそれぞれ示す。
側溝用溝蓋1は、表面に一体鋳造された突起4の集合体を有する本体2と、この本体2を、側溝の蓋受部に接して支えるに嵩上げ部3とから構成される。本体2は、表面に複数の格子状溝2aが設けられ、裏面に嵩上げ部3が設けられた平板である。
本体2の材質としては、ダクタイル鋳鉄(FCD700)、ねずみ鋳鉄が使用できる。これらの中でも、特にダクタイル鋳鉄は機械的性質が優れ、平板の厚さを薄くすることができるので本発明に好適である。
本体2の表面に設けられる格子状溝2aは、必要に応じて設けられ、種々の模様の溝にできる。
【0011】
側溝用溝蓋1の表面に一体鋳造された突起4は、図1(C)に示すように、本体2と一体鋳造された複数の突起4a、4b、4c、4d等から構成される。これらの突起は、後述する方法で得られるため、例えばその突起4a、4b、4dの断面に示すように逆勾配を有している。また、抜け勾配を有する突起4cも得られる。
逆勾配を有する突起を表面に形成することにより、僅かな水平方向からの力Cに対しても抵抗がかかりやすくなり、より大きな滑り止め効果が得られる。
突起4の高さHは 3mm 以下であることが好ましい。 3mm をこえると表面平坦度が低下する。
【0012】
逆勾配を有する突起による他の効果について図2により説明する。図2は積雪時における側溝の断面図である。
側溝5に側溝用溝蓋1が載せられている。6は路面である。従来、この側溝5上に雪7が積もった場合、溝蓋1の開口部近辺の積雪は、開口部に向かって滑り落ち、溝蓋1上部は積雪がない状態となり(図中、破線D部分)、道路上に段差Eが形成されていた。
逆勾配を有する突起の集合体からなる滑り止め構造にすることにより、突起の集合体上の積雪は開口部より滑り落ち難くなった。その結果、道路上の段差ができ難くなり、車の車輪等が道路上の段差に落ち込むことがなく、車両事故などを未然に防ぐことができる。
【0013】
上記突起4は、砂型などの鋳型表面に凹部を形成し、この凹部に熔湯を流し込み鋳造して製造される。また、鋳型表面の凹部は、鋳型を造型するための模型表面に固着された弾性体細片を用いて形成される。弾性体細片を用いることにより、逆勾配を有する凹部であっても弾性変形により型抜きが容易にできる。
【0014】
弾性体としては、ゴム状弾性を示す物質であれば使用できる。例えば、天然ゴム、各種合成ゴム、ウレタンエラストマーなどの弾性体を例示できる。
【0015】
冷却下において、弾性体は細片に粉砕して使用される。その粒度は 420〜2380μm が好ましい。420μm 以下であると表面粗度が向上せず、2380μm をこえると表面平坦度が低下する。
【0016】
側溝用溝蓋1表面に複数個設けられる格子状溝2aの溝幅は、履物底、歩行補助具、または車椅子の車輪およびキャスターが落ち込まない開口とする。
ここで、履物底とは、ハイヒール、パンプスなどのヒール部、下駄の歯等が、歩行補助具は、杖、松葉杖等が挙げられる。
開口部の隙間、例えば格子状溝2aの溝幅は、10mm 以下であることが好ましい。10mm をこえると車椅子のキャスターやハイヒールのヒール部などが落ち込みやすくなる。
【0017】
表面に滑り止め構造が設けられた鋳造体の製造方法を側溝用溝蓋1を例にして図3により説明する。図3は製造工程図である。
側溝用溝蓋の模型8を準備する(図3a)。
準備した模型8の表面であって、滑り止め構造を形成する部分に弾性体の細片9を固着させる(図3b)。固着方法としては、模型8の表面に接着剤層を形成して、弾性体の細片を撒布して接着固定する方法、細片9が形成されているゴムシートを貼り付ける方法等を例示できる。
【0018】
弾性体の細片9を固着した模型8を用いて砂型10を造型する(図3c)。砂型10の造型方法は周知の方法を採用できる。本発明においては模型8表面の突起が弾性体の細片9で形成されているので、逆勾配を有する凹部であっても砂型に形成できる。
【0019】
周知の方法により、湯を流し込み、突起の集合体を表面に有する側溝用溝蓋1を一体鋳造する(図3d)。
【0020】
本発明の鋳造体は、地下構造物用蓋または路面部材に利用できる。地下構造物用蓋としては、グラウンドマンホールなどのマンホール蓋、側溝用溝蓋等が挙げられる。また、路面部材としては、根囲い保護材、路上案内板等が挙げられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の鋳造体は、表面に滑り止め構造が設けられ、この滑り止め構造は鋳造体と一体鋳造された突起の集合体であり、該突起が模型表面に固着された弾性体細片を用いて鋳型表面に形成された凹部に鋳造されてなるので、突起が剥離し難くなる。また、その突起の断面が逆勾配であっても鋳造できるので、滑り止め効果が大きくなるとともに、路面との平坦化が実現できる。
【0022】
また、路面との平坦化を実現できる上記鋳造体が地下構造物用蓋または路面部材であるので、道路におけるバリアフリーが達成できる。
【0023】
また、地下構造物用蓋または路面部材の表面が、履物底、歩行補助具、または車椅子の車輪およびキャスターが落ち込まない開口部を有しているので、歩行者等の安全性がより確保され、安全性とバリアフリーとが達成できる。
【0024】
本発明の滑り止め構造が設けられた鋳造体の製造方法は、模型の表面に弾性体細片を撒布して固着する工程と、この模型を用いて鋳型を造型する工程と、この鋳型に湯を流し込み、表面に突起の集合体を一体鋳造する工程とを備えるので、逆勾配を有する滑り止め構造が一体鋳造できるため、従来の技術より低い製造コストで鋳造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】滑り止め構造を有する側溝用溝蓋を示す図である。
【図2】積雪時における側溝の断面図である。
【図3】側溝用溝蓋の製造工程図である。
【符号の説明】
1 側溝用溝蓋
2 本体
3 嵩上げ部
4 突起
5 側溝
6 路面
7 雪
8 模型
9 弾性体の細片
10 鋳型

Claims (3)

  1. 表面に滑り止め構造が設けられた地下構造物用蓋または路面部材用の鋳造体であって、
    前記滑り止め構造は前記鋳造体と一体鋳造された高さ 3mm 以下の突起の集合体であり、該突起が、表面に弾性体細片が固着された模型を用いて砂型を造型し、前記弾性体細片が抜き取られた跡に形成された凹部に鋳造されてなることを特徴とする鋳造体。
  2. 前記地下構造物用蓋または路面部材の表面は、履物底、歩行補助具、または車椅子の車輪およびキャスターが落ち込まない開口部を有していることを特徴とする請求項1記載の鋳造体。
  3. 模型の表面に弾性体細片を撒布して固着する工程と、この模型を用いて鋳型を造型する工程と、この鋳型に湯を流し込み、表面に突起の集合体を一体鋳造する工程とを備えることを特徴とする滑り止め構造が設けられた地下構造物用蓋または路面部材用の鋳造体の製造方法。
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