JP3760730B2 - 駆動信号生成のためのデータを備えたインクタンク及び当該インクタンクを備えた印刷装置 - Google Patents

駆動信号生成のためのデータを備えたインクタンク及び当該インクタンクを備えた印刷装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタあるいはインクジェットプロッタなどとして用いられる印刷装置、およびこの印刷装置の本体に着脱されるインクタンクに関する。さらに詳しくは、インクタンクに記憶された情報に基づく印刷制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの出力装置として、複数色のインクを印刷ヘッドから吐出するカラープリンタが広く普及している。カラープリンタに使用される複数色のインクとしては、たとえば、染料インクや顔料インクが利用される。ここで、「染料インク」とは、インクの色料として染料を用いたインクであり、「顔料インク」とは、インクの色料として顔料を用いたインクである。染料インクを用いる場合には、印刷媒体上で透明感のある色を表現することができ、顔料インクを用いる場合には、印刷媒体上ではっきりした色(ベタな色)を表現することができる。また、顔料インクを使用すれば、にじみの少ない文字や画像を印刷することができるという利点もある。
【0003】
ところで、染料インクと顔料インクとは、印刷媒体上での広がり方が異なっている。すなわち、染料インクは印刷媒体上で広がりやすい(にじみやすい)が、顔料インクは印刷媒体上で広がりにくい(にじみにくい)。したがって、印刷媒体上に同じ大きさのドットを形成するためには、顔料と染料では異なる量のインク滴を吐出することを要し、それぞれ異なる駆動波形で吐出することが求められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のプリンタは、一つの駆動波形をプリンタ内部のファームウェアが備えていた。このため、たとえば、顔料インクを想定して製造されたプリンタは、染料インクのインクタンクを使えないという問題があった。
【0005】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、様々な種類のインクを、一つのプリンタで使用できる技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の印刷装置は、印刷媒体上にインクドットを形成することによって印刷を行う印刷装置であって、
インクを吐出するための複数のノズルと、前記複数のノズルを駆動するための複数の駆動素子と、を備える印刷ヘッドと、
前記複数の駆動素子を駆動するための駆動信号の波形を表す駆動波形データとして、時系列的に変化する駆動波形の複数のレベルを表すための駆動波形データを格納したメモリを備えたインクタンクが装着可能なインクタンク装着部と、
前記メモリから読み出した駆動波形データに基づいて、前記複数の駆動素子を駆動させるための駆動信号を生成する駆動信号発生部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の印刷装置は、インクタンクに備えられたメモリ内の駆動波形データに基づいて駆動波形を生成するので、様々な種類のインクを同じプリンタで使用できる。特に、たとえば、プリンタの出荷後に開発されたインクタンクを使用して、きれいな印刷を行うことができる。
【0008】
上記の装置において、
前記インクタンクの前記メモリは、複数のインクの種類にそれぞれ適する複数の駆動波形データの中から、前記インクタンクに収容されているインクの種類に応じて選択された駆動波形データを格納するのが好ましい。
【0009】
こうすれば、インクタンクが収容するインクに適した駆動波形でインクを吐出して適切なドットを形成することができる。
【0010】
上記の装置において、
前記駆動信号発生部は、互いに異なる駆動信号を生成可能な複数の駆動波形生成回路を有しており、
前記複数のノズルは、前記互いに異なる駆動信号で駆動される複数のノズル群に区分されており、
前記インクタンクの前記メモリは、前記複数のノズル群で使用されるインクの種類に応じて選択された複数の駆動波形データを格納するのが好ましい。
【0011】
これにより、複数のノズル群で使用されるインクの種類に応じて、各ノズル群に適する異なる駆動信号で適切なドットを形成することができる。
【0012】
上記の装置において、
前記駆動信号発生部は、湿度と、前記印刷ヘッドの温度と、前記印刷ヘッドのインク吐出特性を表す吐出特性ランクと、のうち少なくとも一つの情報に基づいて前記駆動信号を補正するようにしても良い。
【0013】
こうすれば、インクを吐出する環境や印刷ヘッドの特性による影響を抑制して、画質の劣化を防止することができる。
【0014】
上記の装置において、
前記メモリは、書き換え可能な不揮発性メモリであり、
前記印刷装置は、さらに、
少なくとも各インクタンクが前記印刷部に装着されたときに、各インクタンク内の各種類のインクの残量情報を、前記不揮発性メモリから読みとるメモリ読み出し部と、
前記インク残量計測部が算出した印刷終了時における各インクタンク内の各種類のインクの残量情報を、前記不揮発性メモリに書き込むメモリ書込部と、
を備え、
前記インク残量計測部は、前記不揮発性メモリから読み出した各種類のインクの残量と各種類のインクの吐出量から前記各インクタンク内部の各種類のインクの残量を計算するものであり、
前記駆動信号発生部は、前記各種類のインクの残量情報に基づいて前記駆動波形を補正するようにしても良い。
【0015】
このように、各種類のインクの残量情報に基づいて前記駆動波形を補正すれば、インクタンク内の圧力の低下に起因するインク吐出量の減少による画質の劣化を抑止でき、また、インクの残量をインクタンクの不揮発性メモリに書き込むようにすれば、インクタンクを交換しても適切に前記駆動波形を補正できる。
【0016】
本発明のインクタンクは、インクを吐出するための複数のノズルと、前記複数のノズルを駆動するための複数の駆動素子と、を有する印刷ヘッドを用いて印刷媒体上にインクドットを形成する印刷装置に用いられるインクタンクであって、前記複数の駆動素子を駆動するための駆動信号の波形を表す駆動波形データとして、時系列的に変化する波形レベルを表す駆動波形データを格納したメモリを備えることを特徴とする。
【0017】
こうすれば、この駆動波形データに基づいて駆動波形を生成するので、プリンタの種類による制限を緩和でき、多くのプリンタに使用できるようになる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および印刷装置、印刷装置のためのインクタンク、印刷制御方法および印刷制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.実施例:
C.駆動波形の補正:
D.クリーニング方法の選択:
E.インクタンクまたはインクカートリッジが備えるメモリが有するデータの内容:
F.変形例:
【0020】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、カラープリンタ20とコンピュータ90の組み合わせを、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0021】
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラープリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。アプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示する。
【0022】
アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをカラープリンタ20に供給するための印刷データPDに変換する。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、ラスタライザ100と、色変換テーブルLUTと、が備えられている。
【0023】
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データの解像度(即ち、単位長さ当りの画素数)を、プリンタドライバ96が扱うことができる解像度に変換する役割を果たす。こうして解像度変換された画像データは、まだRGBの3色からなる画像情報である。色変換モジュール98は、色変換テーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、カラープリンタ20が利用可能な複数のインク色の多階調データに変換する。
【0024】
色変換された多階調データは、例えば256階調の階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、インクドットを分散して形成することにより、カラープリンタ20でこの階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。ハーフトーン処理された画像データは、ラスタライザ100によりカラープリンタ20に転送すべきデータ順に並べ替えられ、最終的な印刷データPDとして出力される。なお、印刷データPDは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータと、を含んでいる。
【0025】
なお、プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0026】
図2は、カラープリンタ20の概略構成図である。カラープリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙Pを副走査方向に搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査送り機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。
【0027】
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる主走査送り機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置センサ39とを備えている。
【0028】
図3は、制御回路40を中心としたカラープリンタ20の構成を示すブロック図である。制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54とを備えている。I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ90から供給される印刷データPDを受け取ることができる。カラープリンタ20は、この印刷データPDに従って印刷を実行する。なお、RAM44は、ラスタデータを一時的に格納するためのバッファメモリとして機能する。
【0029】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド28を有しており、また、インクタンクを搭載可能である。なお、印刷ヘッドユニット60は、1つの部品としてカラープリンタ20に着脱される。すなわち、印刷ヘッド28を交換しようとする際には、印刷ヘッドユニット60を交換することになる。
【0030】
図4は、印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド28の下面には、ブラックインクを吐出するためのブラックインクノズル列KD と、濃シアンインクを吐出するための濃シアンインクノズル列CD と、淡シアンインクを吐出するための淡シアンインクノズル列CL と、濃マゼンタインクを吐出するための濃マゼンタインクノズル列MD と、淡マゼンタインクを吐出するための淡マゼンタインクノズル列ML と、イエローインクを吐出するためのイエローインクノズル列YD とが形成されている。
【0031】
なお、各ノズル列を示す符号における最初のアルファベットの大文字はインク色を意味しており、また、添え字の「D 」は濃度が比較的高いインクであることを、添え字の「L 」は濃度が比較的低いインクであることを、それぞれ意味している。
【0032】
各ノズル列の複数のノズルは、副走査方向SSに沿って一定のノズルピッチk・Dでそれぞれ整列している。ここで、kは整数であり、Dは副走査方向における印刷解像度に相当するピッチ(「ドットピッチ」と呼ぶ)である。本明細書では、「ノズルピッチはkドットである」とも言う。このときの単位[ドット]は、印刷解像度のドットピッチを意味している。副走査送り量に関しても同様に、[ドット]の単位を用いる。
【0033】
各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子(図示せず)が設けられている。印刷時には、印刷ヘッド28が主走査方向MSに移動しつつ、各ノズルからインク滴が吐出される。
【0034】
なお、各ノズル列の複数のノズルは、副走査方向に沿って一直線上に配列されている必要はなく、たとえば千鳥状に配列されていてもよい。なお、ノズルが千鳥状に配列されている場合にも、副走査方向に測ったノズルピッチk・Dは、図5の場合と同様に定義することができる。この明細書において、「副走査方向に沿って配列された複数のノズル」という文言は、一直線上に配列されたノズルと、千鳥状に配置されたノズルと、を包含する広い意味を有している。
【0035】
以上説明したハードウェア構成を有するカラープリンタ20は、紙送りモータ22により用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッド28のピエゾ素子を駆動して、各色インク滴の吐出を行い、インクドットを形成して用紙P上に多色多階調の画像を形成する。
【0036】
図5は、駆動信号を各ピエゾ素子PEに供給する回路の内部構成を示すブロック図である。ヘッド駆動回路52は、原駆動信号ORGDRVを生成するための原駆動信号発生部220を備えている。原駆動信号発生部220は、一つ以上の駆動波形生成回路46と、この駆動波形生成回路46を制御する駆動波形生成制御回路66とを有している。
【0037】
印刷ヘッドユニット60は、各ピエゾ素子PEに駆動信号を供給するためのドライバIC51を有している。このドライバIC51は、駆動波形生成回路46から供給される原駆動信号ORGDRVを、駆動波形生成制御回路66から供給されるシリアル印刷信号PRTに応じてオン/オフ制御する図示しないスイッチング回路(マスク回路とも呼ぶ)を有している。なお、シリアル印刷信号PRTは、コンピュータ90(図1)から供給された印刷データPDに含まれるラスタデータと同じ内容を示すデータである。
【0038】
ブラックインクカートリッジ107kと、カラーインクカートリッジ107Fには、メモリ180k,180Fがそれぞれ設けられている。これらのメモリ180k,180Fには、各インクカートリッジ107k,107Fに収容されている各種のインクの種類や、駆動波形の生成に使用される駆動波形データが格納されており、さらに、インク量も格納されている。このメモリ180k,180Fは、インク残量を記録するために、不揮発性メモリとしても良い。
【0039】
なお、カラーインクカートリッジ107Fは、5種類のインクのための5つのインクタンクが合体されたものである。このようなインクカートリッジ107Fの代わりに、各インク毎に独立したインクタンクを印刷ヘッドユニット60に装着できるように、印刷ヘッドユニット60を構成してもよい。この場合には、各インクタンク毎に、メモリが設けられる。この説明からも理解できるように、本明細書において、「インクタンク」とは、1種類のインクを収容するための容器を意味している。また、インクカートリッジとは、一体として形成され、少なくとも1つのインクタンクを有する容器を意味している。
【0040】
図5に示すように、インクカートリッジ107k,107Fのメモリ180k,180Fの内容は、プリンタ20の制御回路40(図3)内のメモリインターフェイス部67を介して駆動波形生成制御回路66とインク残量計測部68に読取られる。但し、インク残量計測部68の機能は、制御回路40内のCPU41(図3)がPROM43に格納されているプログラムを実行することによって実現される。駆動波形生成制御回路66は、メモリ180k,180Fから読み出した駆動波形データを使用して駆動波形生成回路46に駆動波形を生成させる。また、インク残量計測部68で計測された各種のインクのインク残量に応じて、メモリ180k,180Fから読取られた駆動波形データを補正することもできる。この補正の内容については後述する。
【0041】
B.実施例:
図6(a)は、本発明の第1実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成を示す説明図である。この第1実施例では、すべてのノズル群に対して共通に、一つの駆動波形生成回路46が設けられている。各駆動波形生成回路46で生成された原駆動信号ORGDRVは、ドライバIC51内のマスク回路222によって印刷信号PRTに応じてオン/オフ制御され、駆動信号DRVが生成される。マスク回路222は、この駆動信号DRVを各ノズルのピエゾ素子PEに供給する。これにより、ピエゾ素子PEを駆動し、インクがノズルから吐出され、印刷媒体上にインクドットが形成される。
【0042】
図6(b)は、インクカートリッジに設けられたメモリ180k、180Fに格納されたデータの内容を示す説明図である。この第1実施例では、各メモリ180k、180Fの少なくとも一方には、インク種データと、駆動波形データと、マスクデータとが格納されている。ここで、インク種データとは、たとえば、各インクタンクに収容されているインクが染料インクであるか顔料インクであるかを表すデータである。駆動波形データとは、駆動波形生成回路46が生成する駆動波形のレベルを表すデータである。マスクデータとは、ラスタデータの各値に応じてシリアル印刷信号PRT(図6(a))を生成するためのデータである。すなわち、駆動波形生成制御回路66は、複数のマスクデータの中から、ラスタデータの値に応じて一つのマスクデータを選択し、シリアル印刷信号PRTとして出力する。
【0043】
図6(a)に示すように、この第1実施例では、装着されたすべてのインクタンクが染料インクを収容しているので、すべてのノズルが染料インクを吐出することになる。一方、図6(b)に示すように、メモリ180k,180Fには、染料インクの吐出に適した駆動波形データが入れられている。この駆動波形データは、メモリインターフェイス部67を介して駆動波形生成制御回路66に読みとられ、このデータに基づき駆動波形生成回路46が染料インクの吐出に適した原駆動信号ORGDRVを生成する。
【0044】
一方、6色のインクのすべてが顔料である場合には、各メモリ180k,180Fの少なくとも一方に、顔料用駆動波形データと、顔料用マスクデータとが格納されている。
【0045】
図7は、淡シアンインクCLと淡マゼンタインクMLとが顔料であり、他の4色のインクが染料である場合を示している。この場合には、駆動波形データとしては、染料インクと顔料インクの両方をうまく吐出することが可能な染料/顔料混在用の1組の駆動波形データがメモリ180k,180Fに格納されている。マスクデータに関しても同様である。
【0046】
これらの例から理解できるように、インクタンクが備えるメモリに、その収容するインクの吐出に適した駆動波形データを入れておけば、印刷装置は、あらゆる種類のインクを収容したインクタンクを使用して印刷することが可能となる。具体的には、たとえば、プリンタの出荷の後に新種のインクが開発され、このインクの吐出に最適な駆動波形で駆動信号を生成する必要が生じたような場合にも、その駆動波形を使用して印刷することができる。なお、マスクデータは、インクの種類によらずに各種のインクに共通なデータを利用するようにしても良い。
【0047】
図8は、駆動信号生成用データのヘッド駆動回路52への読み込み処理の流れを示すフローチャートである。ステップS101では、ヘッド駆動回路52は、各インクカートリッジのメモリからインク種データを読み込む。ステップS102では、ヘッド駆動回路52は、すべてのカートリッジのインク種データを集めて、染料インクのみか、顔料インクのみか、あるいは、染料インクと顔料インクが混在しているのかを判断する。この図6の例では、染料インクのみと判断されてステップS103に進む。ステップS103では染料用駆動波形データを読み込み、ステップS106では染料用マスクデータを読み込む。この染料用マスクデータは、S103で読み込んだ染料用駆動波形を前提として準備されているものである。なお、顔料インクのみと判断された場合はステップS104に進み、ステップS104で顔料用駆動波形データを、ステップS107で顔料用マスクデータを読み込む。同様に、混在と判断された場合はステップS105に進み、ステップS105で混在用駆動波形データを、ステップS108で混在用マスクデータを読み込む。
【0048】
図9は、インクの種類とそれに適する駆動波形の関係を示す説明図である。図9(a)は、所定の染料インクに適する駆動波形を、図9(b)は、所定の染料インクに適する駆動波形を示す。前述のように、染料インクは印刷媒体上で広がりやすい(にじみやすい)が、顔料インクは印刷媒体上で広がりにくい(にじみにくい)。このため、印刷媒体上にほぼ同量のインク滴を吐出した場合には、印刷媒体上に形成されるドットの大きさが異なる。したがって、ドットの大きさを同じにするためには、駆動波形を変える必要がある。この結果、図9に示すように、染料インクの場合には振幅の小さな駆動波形が、顔料インクの場合には大きな駆動波形が使用される。
【0049】
図10は、駆動波形データの一例を示す説明図である。図10(a)に示すように、この第1実施例では、メモリ180は、本来はアナログデータである駆動波形を50nsの標本周期毎のサンプル値の集合として記録している。すなわち、この例では、駆動波形は、50ns毎のサンプル値としての電位(V1〜Vn)を、各々16bitのデータとして時系列上に並べて表している。また、図10(b)に示すように、標本全体としては、一画素区間(140μs)の標本化データがメモリ180に駆動波形データとして記録されている。なお、このデータの大きさは、全体で44.8kbitとなる。データの大きさはサンプル値一つで16bitであり、サンプル数は2800個(140μs÷50ns)であり、両者の積となるからである。本明細書では、このデータを「駆動波形サンプル値データ」と呼ぶ。
【0050】
図11は、駆動波形データの他の例とその補正方法を示す説明図である。図11(a)に示すように、駆動波形データとして、所定のクロック毎の電位の変化分を表すΔV1〜ΔVn(nは自然数)と、その切り替えのためのタイミングデータに基づいて、駆動波形を生成することもできる。たとえば、図11(a)と(b)に示すように、電位上昇中のデータをΔV1からΔV4に変え、電位下降中のデータをΔV3からΔV5に変えることにより、高電圧レベルをδ1からδ2に変えることができる。また、ΔV2=0からΔV5へデータを切り替えるタイミングを変えることにより、高電圧レベル時の時間を変更することができる。なお、本明細書では、このデータを「駆動波形基礎データ」と呼ぶ。
【0051】
図12は、本発明の第1実施例において原駆動信号ORGDRVをシリアル印刷信号PRT(i)で整形して、駆動信号DRVを生成する方法を示す説明図である。図12(a)に示すように、本実施例の原駆動信号ORGDRVは、1画素区間内の3つの小区間に波形の異なる3種類のパルスW1〜W3を含んでいる。なお、3種類のパルスW1〜W3は、第2のパルスW2、第1のパルスW1、第3のパルスW3の順に大きくなっている。
【0052】
図12(b)〜(d)は、小ドット用、中ドット用、大ドット用のシリアル印刷信号PRT(i)を示している。シリアル印刷信号PRT(i)は、1画素区間内の各小区間で「H」あるいは「L」となる信号であり、メモリ180から読み出されたマスクデータに基づいて生成される。この第1実施例では、小ドット用のシリアル印刷信号(図12(b))は、2番目の小区間で「H」となる信号であり、中ドット用のシリアル印刷信号(図12(c))は、1番目の小区間で「H」となる信号であり、大ドット用のシリアル印刷信号(図12(d))は、3番目の小区間で「H」となる信号である。マスク回路は222は、シリアル印刷信号が「H」であるときに、原駆動信号ORGDRVを通過させ、駆動信号DRVを生成する。なお、図示を省略しているが、ドットを形成しない場合のシリアル印刷信号は、1画素区間全体で「L」となる信号である。
【0053】
図12(e)〜(g)は、駆動信号DRV(i)を示している。前述したように、駆動信号DRV(i)は、シリアル印刷信号PRT(i)が「H」となる期間のみ原駆動信号ORGDRVを通過させた信号である。したがって、染料インクの場合に生成される小ドット用の駆動信号(図12(e))には2番目の小パルスW2が含まれており、中ドット用の駆動信号(図12(f))には1番目の中パルスW1が含まれており、大ドット用の駆動信号(図12(g))には3番目の大パルスW3が含まれている。
【0054】
以上説明したように、インクタンクが備えるメモリから読み出した、インク種データ、染料インク用の駆動波形データ、そして染料インク用のマスクデータに基づいて、染料インクに適した駆動信号DRVを生成し、印刷媒体上にドットを形成することができる。なお、すべてのインクが顔料である場合も同様に実施できる。
【0055】
図13(a)は、本発明の第2実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成を示す説明図である。駆動回路の構成やインクの種類は、前述した図7(a)に示したものと同じである。図7と異なる点は、図13(b)に示すように、マスクデータとして、染料用マスクデータと顔料インク用マスクデータとの2つがメモリ180k,180Fに格納されている点である。
【0056】
図14,図15は、第2実施例のヘッド駆動回路内部の動作を示すタイミングチャートである。図14は、染料インクを吐出する場合のタイミングチャートであり、図12と同じものである。図15は、顔料インクを吐出する場合のタイミングチャートである。
【0057】
染料インクを吐出する場合と顔料インクを吐出する場合とで異なるのは、大ドット用のシリアル印刷信号PRT(i)(図14(d),図15(d))である。すなわち、染料インクを吐出する場合の大ドット用のシリアル印刷信号(図14(d))は、3番目の小区間で「H」となる信号であるが、顔料インクを吐出する場合の大ドット用のシリアル印刷信号(図15(d))は、2番目と3番目の2つの小区間で「H」となる信号である。
【0058】
図14(e)〜(g)および図15(e)〜(g)は、駆動信号DRV(i)を示している。第1実施例において説明したように、駆動信号DRV(i)は、シリアル印刷信号PRT(i)が「H」となる期間のみ原駆動信号ORGDRVを通過させた信号である。したがって、染料インクの大ドット用の駆動信号(図14(g))には3番目の大パルスW3が含まれている。一方、顔料インクの大ドット用の駆動信号(図15(g))には2番目の小パルスW2と3番目の大パルスW3との2種類のパルスが含まれている。この結果、顔料インクの大ドットの大きさを、染料インクの大ドットとほぼ同じ大きさにすることが可能である。
【0059】
なお、本実施例においては、1画素区間内に3種類のパルスW1〜W3を含む原駆動信号ORGDRVを用いているが、1画素区間内に、さらに大きな第4のパルスを加えた4種類のパルスを含む原駆動信号を用いるようにしてもよい。こうすれば、顔料インクの場合の大ドット用の駆動信号を第4のパルスのみを用いて生成することが可能となる。
【0060】
また、1画素区間内に1種類のパルスW1〜W4を含む原駆動信号ORGDRVを用いて、染料インクと顔料インクのそれぞれについて小、中、大の三種類のドットを形成できるようにしても良い。たとえば、染料インクでは、パルス1つで小ドット、パルス2つで中ドット、パルス3つで大ドットを形成するようにし、顔料インクでは、パルス1つで小ドット、パルス2つで中ドット、パルス4つで大ドットを形成するようにしても良い。
【0061】
図16(a)は、本発明の第3実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成を示す説明図である。この第3実施例では、ヘッド駆動回路52が3つの駆動波形生成回路46a、46b、46cを有し、各駆動波形生成回路46a、46b、46cが互いに異なる駆動波形を生成できる点で、第1実施例とも第2実施例とも異なる。
【0062】
この第3実施例では、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の色のインクに染料インクを、淡シアン(LC),淡マゼンタ(LM)の色のインクに顔料インクを使用するように、インクタンクが装着されている。
【0063】
図16(b)は、インクカートリッジに設けられたメモリ180k、180Fに格納されたデータの内容を示す説明図である。この第3実施例でも他の第1実施例や第2実施例と同様に、各メモリ180k、180Fの少なくとも一方には、インク種データと、駆動波形データと、マスクデータとが格納されている。ただし、ヘッド駆動回路52が二つの駆動波形生成回路46を有するので、この第3実施例のように、2種類のインクを使用する場合には、それぞれのインクに対応した駆動波形データを読み込むこともできる。
【0064】
図17は、本発明の第3実施例における駆動信号生成用データの駆動波形生成回路46への読み込み処理の流れを示すフローチャートである。ステップS201では、ヘッド駆動回路52は、各インクタンクのメモリからインク種データを読み込む。ステップS202では、ヘッド駆動回路52は、すべてのインクタンクのインク種データを集めて、染料インクのみか、顔料インクのみか、あるいは、染料インクと顔料インクが混在しているのかを判断する。この実施例では、装着された一部のインクタンクが染料インクを収容し、他のインクタンクが顔料インクを収容しているため、「混在」と判断される。この第3実施例では、「混在」と判断されているためステップS207に進む。ステップS207では染料用駆動波形データを、ステップS208では染料用マスクデータを、ステップS209では顔料用駆動波形データを、ステップS210では顔料用マスクデータを、それぞれ読み込む。
【0065】
駆動波形生成制御回路66は、各インクタンクのメモリから読み込んだインク種データに基づき、各ノズル列に供給する駆動波形を特定する。たとえば、ヘッド駆動回路52は、染料インクであるブラックインクを吐出するノズル列には染料用の駆動信号を、顔料インクである淡シアンインクを吐出するノズル列には、顔料用の駆動信号を供給するように、駆動波形生成回路46の接続を設定する。これにより、染料インクは、染料インクに適した駆動波形に基づく信号で、顔料インクは、顔料インクに適した駆動波形に基づく信号で、インクを吐出して印刷媒体上に適切なドットを形成できる。
【0066】
C.駆動波形の補正:
上記実施例では、インクタンクに設けられたメモリから読み出した情報に基づいて、原駆動信号ORGDRVを生成するが、この原駆動信号ORGDRVは、さらに、補正することもできる。たとえば、インクタンク内のインク残量、湿度、印刷ヘッド28の温度、アクチュエータランクARにより、駆動波形を補正して画質を向上させることも可能である。ここで、アクチュエータランクARとは、インクを吐出するアクチュエータの特性を表すものであって、アクチュエータ(アクチュエータ回路(図示せず)とピエゾ素子PE)の実際の特性を検査することによって予め設定されているアクチュエータのランク(等級)である。すなわち、印刷ヘッドのインク吐出特性を表す吐出特性ランクに相当する。これにより、印刷時における動作環境やアクチュエータの特性がドットの形成に悪影響を与えいないようにすることができる。
【0067】
図18は、駆動波形の補正方法を示す説明図である。図18(a)は、アクチュエータランクARのランクに基づく駆動波形の補正方法を説明する図である。アクチュエータランクARは、たとえば、0〜6までの7等級で表され、駆動波形の高電圧レベルの幅L1と0レベルの幅L2の値は、この等級の値に応じて補正される。たとえば、図18(a)に示すように、ある駆動波形の高電圧レベルの幅L1は、L1aに延長され、0レベルの幅L2はL2aに短縮されている。なお、アクチュエータランクARと波形の幅L1,L2との関係についての詳細な説明は省略する。
【0068】
補正の内容、たとえば、高電圧レベルの幅L1aは、インクタンクに設けられているメモリから読み出す。これにより、インクの種類に応じた適切な補正を行うことができる。
【0069】
図18(b)は、湿度、印刷ヘッド28の温度、インクタンク内のインク残量に基づく駆動波形の補正方法を説明する図である。W1Mの駆動波形は補正前の波形を示し、W1Hは振幅が増幅された駆動波形を、W1Lは振幅が縮小された駆動波形を示す。すなわち、この補正は、駆動波形の振幅を増幅あるいは縮小することにより補正している。具体的には、たとえば、インク残量が少なくなってくるとインク吐出量が減少する傾向があるため、駆動波形の振幅を大きくして、インク吐出量の減少を抑制している。同様に、温度や湿度に変化があった場合も、駆動波形の振幅を変えることにより、温度等の動作環境の変化による影響を抑制することができる。補正の内容、たとえば、増幅の程度は、アクチュエータランクARのランクに基づく補正の場合と同様に、インクタンクに設けられているメモリから読み出す。なお、インク残量の計測方法は、以下に説明する。
【0070】
図19は、インク残量を計測する処理の流れを示すフローチャートである。なお、インク残量の計測は、コンピュータ90のプリンタドライバ96で行っても良い。以下、図19のフローチャートに従って、インク残量計測処理の内容を説明する。ここでは、メモリ180は、不揮発性メモリである。
【0071】
(a)インク吐出量累積値読込(ステップS200)
プリンタ20の電源が入ると、直ちにインク残量監視ルーチンが起動し、インク残量計測部68(図5)は、メモリインターフェイス部67を通じて、メモリ180に記憶されているインク吐出重量の累積値を読みとる(ステップS300)。インク残量監視ルーチンが処理を終了する場合には、次回ルーチンを起動するときのためにインク吐出量の累積値をメモリに書き込んでおくので、ルーチンが起動されたら先ず初めにこの累積値を読みとるのである。本実施例のカラープリンタ20は、C(シアン)、LC(淡シアン)、M(マゼンタ)、LM(淡マゼンタ)、Y(イエロ)、およびK(黒)の6色のインクを使用することに対応して、インク吐出重量の累積値も各色インク毎に記憶されている。
【0072】
カートリッジ内のインク残量の計測は、インク吐出量累積値を読み込んだ後、読み込んだ値とインクカートリッジのインク収容量とを比較することにより行う。
【0073】
(b)インク供給条件検出(ステップS302)
インク吐出量累積値の読込を行った後、インク残量計測部68はインク供給条件を検出する(ステップS302)。インク室へのインクの供給に関わる条件として、例えば、インク温度と、インク種類と、インクカートリッジ内のインク残量とを検出する。
【0074】
(c)所定期間内のインク滴数計数(ステップS304)
インク残量計測部68は、インク供給条件の検出が終わると、所定期間内に吐出されるインク滴数を各色インク毎に計数する(ステップS304)。カラープリンタ20が、例えば、大・中・小の3種類のインクドットを形成するときは、インク残量計測部68は、インクドットの大きさを区別して計数する。
【0075】
(d)インク吐出量算出(ステップS306)
所定期間内のインク滴数を計数すると、インク残量計測部68は、計数値にインク滴重量(インク滴1滴当たりのインク重量)を乗算してインク吐出重量を算出する(ステップS306)。インクの供給に関わるインク供給条件が異なると、吐出されるインク滴重量も異なってくるので、ステップS306の処理においては、予めステップS302で検出されたインク供給条件を反映させることにより、インク吐出重量の算出精度を向上させている。なお、インク滴1滴当たりの重量でなく体積を記憶しておき、インク吐出数とインクの体積とを乗算することでインク吐出体積を算出することも可能である。
【0076】
(e)インク吐出量累積・インク残量表示等(ステップS308〜S312)
所定期間内のインク吐出重量を算出すると、インク残量計測部68は得られた値を、前回算出したインク吐出重量に加算する。
【0077】
以上の処理が終わると、印刷が終了したか否かを判断し(ステップS310)、印刷が終了していなければ再びステップS304に戻って、続く一連の処理を繰り返す。印刷が終了していれば、次回印刷時に読み出せるように、インク吐出量累積値をメモリ180に格納する(ステップS312)。こうすれば、印刷装置の電源を切断しても、インク吐出量を累積してインクカートリッジ内のインク残量を監視することができる。
【0078】
D.クリーニング方法の選択:
インクの粘度の増加や気泡の混入等の原因によって、ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できない場合がある。特に、顔料を使用した顔料インクは、染料インクに比較して目詰まりがしやすく、その解消が難しい傾向がある。したがって、インクタンクに収容されたインクの種類に応じて適切なクリーニング方法を設定する方法がある。
【0079】
図20は、クリーニング方法の選択手順を示すフローチャートである。ステップ301では、インクタンクに設けられたメモリから、各インクタンクのインク種データを読み込む。ステップS302では、たとえば、予めカウントされている各ノズル列ごとのドットの形成回数をヘッド駆動回路52から読み込む。ステップS303では、適切なクリーニング方法の選択する。この選択は、具体的には、ノズル列が使用するインク種とそのドットの形成回数からクリーニングの必要の程度を推定して行われる。たとえば、顔料インクを吐出するノズル列のドット形成回数が多い場合、特に念入りなクリーニングが選択されることになる。この機能は、制御回路40内のCPU41(図3)がPROM43に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0080】
E.インクタンクまたはインクカートリッジが備えるメモリが有するデータの内容:
【0081】
図21は、カラーインクカートリッジ107Fのメモリ180Fに格納されているデータの他の例を示す説明図である。この例では、メモリ180Fには、以下のようなデータが格納されている。
【0082】
(1)インク種データITD:カラーインクカートリッジ107Fに格納されている各種のインクの種類を示すデータ。
(2)第1の駆動波形データDW1:カラーインクカートリッジ107Fに収容されているインクの種類にもっとも適した駆動波形を示すデータ。図21の例では、5色のインクがすべて染料なので、染料インク用の駆動波形データが第1の駆動波形DW1データとして格納されている。
(3)第1のマスクデータMD1:第1の駆動波形データDW1に適したマスクデータ。
(4)第2の駆動波形データDW2:カラーインクカートリッジ107Fに収容されているインクが、他の種類のインクと混在して用いられるときの駆動波形を示すデータ。第2の駆動波形データDW2は、通常は、染料/顔料混在用の駆動波形データである。
(5)第2のマスクデータMD2:第2の駆動波形データDW2に適したマスクデータ。
(6)補正データCD:湿度、印刷ヘッドの温度、アクチュエータランクに基づく駆動波形の補正のためのデータ。
(7)インク残量IR:カラーインクカートリッジ107F内の各インクの残量を示す。
【0083】
なお、ブラックインクカートリッジ107kのメモリ180kにも、上記と同じ7種類のデータが格納されることが好ましい。
【0084】
図20のように、インクカートリッジに収容されているインクの種類に適した第1と第2の駆動波形データDW1、DW2やマスクデータMD1、MD2のみでなく、他のインクカートリッジと共に利用されるときに使用する第3の駆動波形データやマスクデータをインクカートリッジのメモリ内に格納するようにすれば、プリンタ20において種々のカートリッジを組み合わせて使用したときに、適切な駆動波形を生成することが可能である。
【0085】
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
F−1変形例1:
この発明はカラー印刷だけでなくモノクロ印刷にも適用できる。また、1画素を複数のドットで表現することにより多階調を表現する印刷にも適用できる。また、ドラムプリンタにも適用できる。尚、ドラムプリンタでは、ドラム回転方向が主走査方向、キャリッジ走行方向が副走査方向となる。また、この発明は、インクジェットプリンタのみでなく、一般に、複数のノズル列を有する記録ヘッドを用いて印刷媒体の表面に記録を行うドット記録装置に適用することができる。
【0087】
F−2変形例2:
本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例として印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】プリンタの構成を示す説明図。
【図3】制御回路40を中心としたカラープリンタ20の構成を示すブロック図。
【図4】印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図。
【図5】駆動信号を各ピエゾ素子に供給する回路の内部構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第1実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成とその駆動のためにインクタンクに設けられたメモリに格納されたデータの内容を示す説明図。
【図7】本発明の第1実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成とその駆動のためにインクタンクに設けられたメモリに格納されたデータの内容を示す説明図。
【図8】駆動信号生成用データの原駆動信号発生部への読み込み処理の流れを示すフローチャート。
【図9】インクの種類とそれに適する駆動波形の関係を示す説明図。
【図10】駆動波形データの一例を示す説明図。
【図11】駆動波形データの他の例を示す説明図。
【図12】第1実施例のヘッド駆動回路内部の動作を示すタイミングチャート。
【図13】本発明の第2実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成とその駆動のためにインクタンクに設けられたメモリから読みとるデータの内容を示す説明図。
【図14】第2実施例のヘッド駆動回路内部の動作を示すタイミングチャート。
【図15】第2実施例のヘッド駆動回路内部の動作を示すタイミングチャート。
【図16】本発明の第3実施例における印刷ヘッド28の駆動回路の構成とその駆動のためにインクタンクに設けられたメモリに格納されたデータの内容を示す説明図。
【図17】駆動信号生成用データの原駆動信号発生部への読み込み処理の流れを示すフローチャート。
【図18】駆動波形の補正方法を示す説明図。
【図19】インク残量を計測する処理の流れを示すフローチャート。
【図20】クリーニング方法の選択手順を示すフローチャート。
【図21】本発明のインクタンクまたはに設けられたメモリが有するデータを示す説明図。
【符号の説明】
20…カラープリンタ
21…CRT
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印刷ヘッド
30…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置センサ
40…制御回路
41…CPU
43…PROM
44…RAM
46…駆動波形生成回路
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
66…駆動波形生成制御回路
67…メモリインターフェイス部
68…インク残量計測部
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…ハーフトーンモジュール
100…ラスタライザ
107F…カラーインクカートリッジ
107k…ブラックインクカートリッジ
180…メモリ
220…原駆動信号発生部
222…マスク回路

Claims (3)

  1. 印刷媒体上にインクドットを形成することによって印刷を行う印刷装置であって、
    インクを吐出するための複数のノズルと、前記複数のノズルを駆動するための複数の駆動素子と、を備える印刷ヘッドと、
    前記複数の駆動素子を駆動するための駆動信号の波形を表す駆動波形データとして、時系列的に変化する駆動波形の複数のレベルを表すための駆動波形データを格納したメモリを備えたインクタンクが装着可能なインクタンク装着部と、
    前記メモリから読み出された駆動波形データに基づいて、前記複数の駆動素子を駆動させるための駆動信号を生成する駆動信号発生部と、
    を備え、
    前記インクタンク装着部は、複数のインクタンクを装着可能であり、
    前記複数のインクタンクに備えられた各メモリは、染料インクと顔料インクのいずれを収容しているかを表すインク種データを格納し、
    前記複数のインクタンクの少なくとも1つに備えられたメモリは、染料インクの吐出に適した染料インク用駆動波形データと、顔料インクの吐出に適した顔料インク用駆動波形データと、染料インクと顔料インクの双方の吐出に適した混在用駆動波形データと、を格納し、
    前記駆動信号発生部は、前記各メモリから読み出された複数のインク種データに応じて、前記複数のインク種データのいずれもが前記染料インクを表しているときは前記染料インク用駆動波形データを選択し、前記複数のインク種データのいずれもが前記顔料インクを表しているときは前記顔料インク用駆動波形データを選択し、前記複数のインク種データが前記染料インクと前記顔料インクの混在を表しているときは前記混在用駆動波形データを選択することを特徴とする、印刷装置。
  2. インクを吐出するための複数のノズルと、前記複数のノズルを駆動するための複数の駆動素子と、を備える印刷ヘッドと、メモリを備えた複数のインクタンクとを用いて、印刷媒体上にインクドットを形成することによって印刷を行う印刷方法であって、
    前記インクタンク装着部は、複数のインクタンクを装着可能であり、
    前記複数のインクタンクに備えられた各メモリは、染料インクと顔料インクのいずれを収容しているかを表すインク種データを格納し、
    前記複数のインクタンクの少なくとも1つに備えられたメモリは、染料インクの吐出に適した染料インク用駆動波形データと、顔料インクの吐出に適した顔料インク用駆動波形データと、染料インクと顔料インクの双方の吐出に適した混在用駆動波形データと、を格納し、
    前記印刷方法は、
    前記各メモリから前記インク種データを読み出す工程と、
    前記複数の駆動素子を駆動するための駆動信号の波形を表す駆動波形データとして、時系列的に変化する駆動波形の複数のレベルを表すための駆動波形データを前記メモリから読み出す工程と、
    前記メモリから読み出された駆動波形データに基づいて、前記複数の駆動素子を駆動させるための駆動信号を生成する工程と、
    を備え
    前記駆動信号を生成する工程は、前記各メモリから読み出された複数のインク種データに応じて、前記複数のインク種データのいずれもが前記染料インクを表しているときは前記染料インク用駆動波形データを選択し、前記複数のインク種データのいずれもが前記顔料インクを表しているときは前記顔料インク用駆動波形データを選択し、前記複数のインク種データが前記染料インクと前記顔料インクの混在を表しているときは前記混在用駆動波形データを選択する工程を含むことを特徴とする、印刷方法。
  3. インクを吐出するための複数のノズルと、前記複数のノズルを駆動するための複数の駆動素子と、を有する印刷ヘッドを用いて印刷媒体上にインクドットを形成する印刷装置に用いられるインクタンクであって、
    前記複数の駆動素子を駆動するための駆動信号の波形を表す駆動波形データとして、時系列的に変化する波形レベルを表す複数種類の駆動波形データを格納したメモリを備え、
    前記印刷装置は、複数のインクタンクを装着可能であり、
    前記複数のインクタンクに備えられた各メモリは、染料インクと顔料インクのいずれを収容しているかを表すインク種データを格納し、
    前記複数種類の駆動波形データは、前記複数のインクタンクの少なくとも1つに備えられたメモリは、染料インクの吐出に適した染料インク用駆動波形データと、顔料インクの吐出に適した顔料インク用駆動波形データと、染料インクと顔料インクの双方の吐出に適した混在用駆動波形データと、を含み、
    前記染料インク用駆動波形データは、前記各メモリに格納された複数のインク種データに応じて、前記複数のインク種データのいずれもが前記染料インクを表しているときに選択されるデータであり、
    前記顔料インク用駆動波形データは、前記各メモリに格納された複数のインク種データに応じて、前記複数のインク種データのいずれもが前記顔料インクを表しているときに選択されるデータであり、
    前記混在用駆動波形データは、前記各メモリに格納された複数のインク種データに応じて、前記複数のインク種データが前記染料インクと前記顔料インクの混在を表しているときに選択されるデータであることを特徴とする、インクタンク。
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