JP4182668B2 - カートリッジの選択により特徴を変更できる印刷 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷ヘッドを主走査方向に移動させつつ印刷媒体上にインクドットを記録することによって印刷を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出することにより、印刷媒体上にインクドットを形成して画像を印刷する印刷装置(以下、インクジェット式印刷装置)は、コンピュータで作成した画像の出力装置として広く使用されている。インクジェット式印刷装置の印刷ヘッドには、複数のノズル列が設けられており、これらのノズル列は互いに異なるインクをそれぞれ吐出する。また、近年では、インクカートリッジを交換することにより、各ノズル列から吐出されるインクの色を積極的に変更して多様な利用を可能とする印刷装置も販売されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、インクカートリッジの交換は、印刷装置のユーザにとって煩雑な作業である。特に、交換するカートリッジの数が多くなると、これが顕著となる。
【0004】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、インクカートリッジを交換することなく各ノズル列から吐出されるインクを変更させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明は、インクを印刷媒体上に吐出することによって印刷を行う印刷装置であって、同一のインクを吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を複数個備える印刷ヘッドと、複数種類のインクをそれぞれ収容するための複数のインクタンクを装着可能なインクタンク装着部と、前記複数のインクタンクの各々を前記複数のノズル列のいずれかに接続するインク供給部とを備え、前記インク供給部は、前記複数のノズル列と前記複数のインクタンクとの間の接続関係を切り替える接続切替部を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の印刷装置では、複数のインクタンクと複数のノズル列との間の接続関係を切り替えることができるので、インクカートリッジを交換することなく容易に各ノズル列から吐出されるインクを変更させることができる。
【0007】
上記印刷装置において、前記接続切替部は、n種類(nは1以上の整数)のインクを前記複数のノズル列から吐出可能とする第1の接続状態と、前記n種類のインクに加えてさらにm種類(mは1以上の整数)のインクを前記複数のノズル列から吐出可能とする第2の接続状態に切り替えることが可能であるようにしても良い。
【0008】
上記印刷装置において、前記複数のノズル列は、前記接続関係の切り替えにより接続されるインクタンクが変更される可変インクノズル列と、前記接続関係の切り替えにより接続されるインクタンクが変更されない固定インクノズル列とを備え、前記固定インクノズル列は、シアン、マゼンタ、イエロの3つのインクをそれぞれ収容するインクタンクに常時接続されているノズル列を含むようにするのが好ましい。
【0009】
こうすれば、シアン、マゼンタ、イエロの3つのインクについては、接続の切替の状態に拘わらず常に吐出可能なので、カラー印刷が常時可能となる。
【0010】
上記印刷装置において、前記固定インクノズル列は、さらにブラックインクを収容するインクタンクに常時接続されているノズル列を含むようにするのが好ましい。
【0011】
こうすれば、接続の切替の状態に拘わらず、グレイでないブラックを再現可能なカラー印刷とブラックの線画印刷とが常時可能となる。
【0012】
上記印刷装置において、前記可変インクノズル列は、前記接続関係の切り替えに応じて、前記固定インクノズル列が接続されている複数のインクタンクのうちのいずれか、あるいは前記インクタンク装着部に装着された複数のインクタンクのうち前記固定インクノズル列が接続されていない他のインクタンクのうちのいずれか、のいずれか一方に接続されるようにしても良い。
【0013】
上記印刷装置において、前記インクタンク装着部は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各基本色と、シアンの基本色インクに比べて濃度が低い淡シアンと、マゼンタの基本色インクに比べて濃度が低い淡マゼンタと、イエロの基本色インクに比べて明度が低い暗イエロと、およびブラックの基本色インクに比べて明度が高い淡ブラックと、の各色のインクを収容する複数のインクタンクが装着可能であり、前記固定インクノズル列は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの4つの基本色インクをそれぞれ吐出する4つの基本色インクタンクに常時接続され、前記接続切替部は、前記淡シアンインクと、淡マゼンタインクと、暗イエロインクと、淡ブラックインクとを収容する各インクタンクを前記可変インクノズル列のそれぞれに接続する第1の接続形態と、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各基本色を収容する各インクタンクを前記可変インクノズル列のそれぞれに接続する第2の接続形態と、を含む複数の接続形態のいずれかに切替可能であるようにするのが好ましい。
【0014】
こうすれば、8色のインクで印刷を行う高画質印刷と、各色毎に2つのノズル列を利用して4色のインクで印刷を行う高速印刷と、の間の切替をインク供給部の接続形態を切り替えることで容易行うことができる。
【0015】
上記印刷装置において、前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されているようにするのが好ましい。
【0016】
こうすれば、千鳥に配列された2つのノズル列の組は、副走査方向に重複しない位置にノズル列を有することになるので、1回の主走査で形成されるラスタラインの数を2倍にすることができる。なお、千鳥に配列されていない場合には、1回の主走査で実質的に2回のオーバーラップ印刷が可能となるので、特にオーバーラップ印刷で速度の向上が図られることになる。あるいは、印刷ヘッドの主走査速度を2倍にすることも可能となるので、これにより記録速度を向上させることもできる。
【0017】
上記印刷装置において、前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されているようにするのが好ましい。
【0018】
このようなノズル列の配置にすれば、インク流路の接続切替部とノズルとの間の距離を小さくすることができるので、接続の切替に伴うインクの混濁を抑制することができる。
【0019】
上記印刷装置において、前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されているようにしても良い。
【0020】
このように、一部のノズル列が副走査方向に直列に配列されている印刷ヘッドにも本発明は適用することができる。
【0021】
上記印刷装置において、前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡シアンインクがシアンの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、シアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡マゼンタインクがマゼンタの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、マゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記暗イエロインクがイエロの基本インクよりも先に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、シアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡ブラックインクがブラックの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、ブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されているようにするのが好ましい。
【0022】
ノズル列が縦方向に配列される場合には、このように濃度の低いインクが後から吐出されるようにすれば、濃インクが淡インクの影響を受けにくくなるので豊かな階調表現が可能となる。
【0023】
上記印刷装置において、前記接続切替部は、n種類(nは1以上の整数)のインクを前記複数のノズル列から吐出可能とする第1の接続状態と、前記n種類のインクとは異なるm種類(mは1以上の整数)のインクを前記複数のノズル列から吐出可能とする第2の接続状態に切り替えることが可能であるようにしても良い。たとえば、前記複数のノズル列は、前記接続関係の切り替えに応じて、シアン、マゼンタ、イエロの3つの顔料インクをそれぞれ収容するインクタンクと、シアン、マゼンタ、イエロの3つの染料インクをそれぞれ収容するインクタンクと、のいずれか一方に接続されるようにしても良い。
【0024】
上記印刷装置において、前記接続関係の切り替えに応じて、自動的に前記可変インクノズル列から所定の量だけインクを吐出させるクリーニング処理部を備えるようにするのが好ましい。
【0025】
こうすれば、接続状態の切替に伴うインクの混濁を抑制することができる。なお、クリーニングのために行われるインクの吐出は、ポンプによる吸引によって行うようにしても良いし、印刷ヘッドを駆動して行うようにしても良い。
【0026】
本発明の印刷ヘッドユニットは、複数種類のインクをそれぞれ収容するための複数のインクタンクを装着可能な印刷装置に用いられる印刷ヘッドユニットであって、同一のインクを吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を複数個備える印刷ヘッドと、前記複数のインクタンクから供給された複数種類のインクの各々を前記複数のノズル列のいずれかに導くインク供給部とを備え、前記インク供給部は、前記複数のノズル列の各々に導かれる前記複数種類のインクを切り替える接続切替部を備えることを特徴とする。
【0027】
このような印刷ヘッドユニットを利用すれば、容易に本発明を適用することができる。
【0028】
本発明の印刷制御装置は、インクを印刷媒体上に吐出することによって印刷を行う印刷部に供給すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、前記印刷部は、同一のインクを吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を複数個備える印刷ヘッドと、複数種類のインクをそれぞれ収容するための複数のインクタンクを装着可能なインクタンク装着部と、前記複数のインクタンクの各々を前記複数のノズル列のいずれかに接続するインク供給部と、前記切り替えられた接続状態を表す情報を含む接続形態信号を前記印刷制御装置に送信する接続形態信号送信部とを備え、前記印刷制御装置は、前記受信した接続形態信号に応じて、前記接続形態における前記印刷部に印刷を実行させるように構成された印刷データを生成するための処理モードを決定する印刷モード管理部と、前記決定された処理モードで印刷データを生成する印刷データ生成部とを有することを特徴とする。
【0029】
このような印刷制御装置を利用すれば、接続形態の切替に応じて、自動的に印刷データ生成処理のモードが切り替わるので、インクの切替に伴うユーザの負担をさらに軽減することができるとともに、誤操作を減少させることができる。
【0030】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、たとえば、印刷ヘッドユニット、印刷方法および印刷装置、印刷制御方法および印刷制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.本発明の第1実施例:
C.本発明の第2実施例:
D.本発明の第3実施例:
E.本発明の第4実施例:
F.本発明の第5実施例:
G.本発明の第6実施例:
H.変形例:
【0032】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、カラープリンタ20とコンピュータ90の組み合わせを、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0033】
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラープリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。アプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示する。
【0034】
アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをカラープリンタ20に供給するための印刷データPDに変換する。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、印刷データ生成モジュール100と、印刷モード管理部101と、複数の色変換テーブルLUTと、が備えられている。なお、複数の色変換テーブルLUTが備えられている理由については後述する。
【0035】
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データの解像度(即ち、単位長さ当りの画素数)を、プリンタドライバ96が扱うことができる解像度に変換する役割を果たす。こうして解像度変換された画像データは、まだRGBの3色からなる画像情報である。色変換モジュール98は、色変換テーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、カラープリンタ20が利用可能な複数のインク色の多階調データに変換する。
【0036】
色変換された多階調データは、例えば256階調の階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、インクドットを分散して形成することにより、カラープリンタ20でこの階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。ハーフトーン処理された画像データは、印刷データ生成モジュール100によりカラープリンタ20に転送すべきデータ順に並べ替えられ、最終的な印刷データPDとして出力される。なお、印刷データPDは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含んでいる。なお、印刷モード管理部101の機能と、印刷モード管理部101が受信する接続形態信号とについては後述する。
【0037】
なお、プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0038】
図2は、カラープリンタ20の概略構成図である。カラープリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙Pを副走査方向に搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査送り機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。
【0039】
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる主走査送り機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置センサ39とを備えている。
【0040】
図3は、制御回路40を中心としたカラープリンタ20の構成を示すブロック図である。制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45と、カラープリンタ20の動作環境を保持するデータベースであるMIB(Management Information Base)46とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54とを備えている。
【0041】
I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ90から供給される印刷データPDを受け取ることができる。カラープリンタ20は、この印刷データPDに従って印刷を実行する。なお、RAM44は、ラスタデータを一時的に格納するためのバッファメモリとして機能する。また、コンピュータ90は、MIB46にアクセスすることにより、プリンタ20の動作環境に関する情報を得ることができる。この動作環境には、装着されているカートリッジに関する情報が含まれている。
【0042】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド28を有しており、また、インクカートリッジを搭載可能である。なお、印刷ヘッドユニット60は、1つの部品としてカラープリンタ20に着脱される。すなわち、印刷ヘッド28を交換しようとする際には、印刷ヘッドユニット60を交換することになる。
【0043】
図4は、印刷ヘッドユニット60の斜視図である。印刷ヘッドユニット60には、図3にも示すように、ブラックインクを収容するブラックインクカートリッジ171Bkと、シアンインクを収容するシアンインクカートリッジ171Cと、マゼンタインクを収容するマゼンタインクカートリッジ171Mと、イエロインクを収容するイエロインクカートリッジ171Yと、淡シアンインクを収容する淡シアンインクカートリッジ171Lcと、淡マゼンタインクを収容する淡マゼンタインクカートリッジLmと、ダークイエロインクを収容するダークイエロインクカートリッジ171Dyと、淡ブラックインクを収容する淡ブラックインクカートリッジ171Lkと、が装着可能である。
【0044】
なお、本明細書においては、淡インクや暗インク以外の4つのインクC,M,Y,Kを「4つの基本色インク」と呼ぶ。より詳しく言えば、「4つの基本色インク」とは、ほぼ等量を混合することによってブラックを再現することのできるシアンインク、マゼンタインク、およびイエローインクに、さらにグレーでないブラックインクを加えたものを意味している。なお、本明細書においては、これらの4つの基本色インクを吐出するための4つのノズル列Y,M,C,Kを「基本色ノズル列」と呼ぶ。
【0045】
ダークイエロインクとは、イエロインクと比較して明度が低いインクをいい、暗イエロインクとも呼ばれる。具体的には、ダークイエローインクは、イエローインクに他のインク用の色材(例えば濃シアンと濃マゼンタ)が混合されたインクである。濃シアン成分と濃マゼンタ成分とを含むダークイエローインクを用いると、イエローと濃シアンと濃マゼンタのインク滴を別々に吐出する場合に比べて、印刷媒体上に吐出するインク量(特に溶剤の量)が少なくて済む。この結果、特にシャドー部の印刷画質を向上させることができるという利点がある。
【0046】
淡ブラックインクとは、ブラックインクに比べて明度が高いインクをいう。淡ブラックインクLkを用いると、コンポジットブラックの生成に伴うカラーバランスのばらつきや、シャドー部における粒状感を抑制することができるという利点がある。カラーバランスとは、カラーインクを用いてコンポジットブラックを形成する際のシアン、マゼンタ、イエロのバランスをいう。カラーバランスがばらつくと、すなわち、たとえばシアンが多いとシアンがかったブラックとなるという問題がある。
【0047】
印刷ヘッドユニット60には、各インクカートリッジに挿入されてインク流路を形成するための8個の導入管72Bk、72Lk、72C、72Lc、72M、72Lm、72Y、72Dyが立設されている。これらの導入管72Bk、72Lk、72C、72Lc、72M、72Lm、72Y、72Dyは、後述する接続切替部を経由して、印刷ヘッドユニット60の下部に装備されている印刷ヘッド28が有する各ノズル列に接続されている。
【0048】
図5は、印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド28の下面には、8つのノズル列N1〜N8が設けられている。各ノズル列は48個のノズルを有している。48個のノズルは、副走査方向SSに沿って一定のノズルピッチK・Dでそれぞれ整列している。ここで、Kは整数であり、Dは副走査方向における印刷解像度に相当するピッチ(「ドットピッチ」と呼ぶ)である。なお、隣接する2つのノズル列は千鳥に配列されている。
【0049】
また、各ノズル列の複数のノズルは、副走査方向に沿って一直線上に配列されている必要はなく、例えば千鳥状に配列されていてもよい。本明細書において、「副走査方向に沿って配列されたノズル」とは、一直線上に配列されたノズルという意味と、千鳥状に配列されたノズルという意味と、を包含する広い意味を有している。なお、ノズルが千鳥状に配列されている場合にも、副走査方向に測ったノズルピッチK・Dは、図5の場合と同様に定義することができる。
【0050】
各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子(図示せず)が設けられている。印刷時には、印刷ヘッド28が主走査方向MSに移動しつつ、各ノズルからインク滴が吐出される。
【0051】
以上説明したハードウェア構成を有するカラープリンタ20は、紙送りモータ22により用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッド28のピエゾ素子を駆動して、各色インク滴の吐出を行い、インクドットを形成して用紙P上に多色多階調の画像を形成する。
【0052】
B.本発明の第1実施例:
図6は、本発明の第1実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図である。図6(a)は、比較例における複数のインクカートリッジと印刷ヘッド28との間のインク流路を示している。比較例では、8つのノズル列N1〜N8に接続されるインクタンクは固定されている。
【0053】
図6(b)と図6(c)は、本発明の第1実施例における複数のインクカートリッジと印刷ヘッド28との間のインク流路を示している。本発明の第1実施例における印刷ヘッド28と複数のインクカートリッジは比較例における印刷ヘッド28等と同一である。ただし、本発明の第1実施例は、印刷ヘッド28と複数のインクカートリッジとの間に接続切替部105が備えられている点で比較例と異なる。接続切替部105は、4個の二股に分岐した流路P1と、8個の分岐しない流路P2とを備えている。
【0054】
図6(b)は、印刷ヘッドユニット60に装着されたインクカートリッジが収容する8色のすべてのインクを使用して8色印刷モードで印刷を行う場合の接続形態を示している。図6(c)は、印刷ヘッドユニット60に装着されたインクカートリッジが収容するインクのうち4つの基本色インクのみを使用して4色印刷モードで印刷を行う場合の接続形態を示している。
【0055】
図6(b)に示される8色印刷モードでは、8個の分岐しない流路P2を用いて、8個のインクカートリッジが8個のノズル列にそれぞれ接続されている。このときの接続関係は、比較例における接続関係と同一である。この結果、各色のインクタンクは各ノズル列に接続されているので、8色のインクを用いた高画質の印刷が可能となっている。この印刷ヘッドユニット60の接続切替部105を右側にずらすと、8色印刷モードから図6(c)に示される4色印刷モードに接続関係が切り替わる。具体的には、各インクタンクと各ノズル列との間の8個の分岐しない流路P2による8色印刷モードの接続が切り離され、4個の分岐した流路P1による4色印刷モードの接続関係に切り替わることになる。
【0056】
図6(c)に示される4色印刷モードでは、4個の分岐した流路P1を用いて、4個の基本色インクカートリッジが8個のノズル列に接続されている。たとえばブラックインクカートリッジは、分岐した流路P1を通じて2つのノズル列N1、N2に接続されている。他の基本色インクカートリッジも同様にそれぞれ2つのノズル列に接続されている。この結果、各色のインクタンクは、各々が2つのノズル列に接続されているので、各色毎に2つのノズル列が有するノズルを用いた高速印刷が可能となっている。
【0057】
8色印刷モードの接続状態と4色印刷モードの接続状態とを比較すると、8個のノズル列には、接続切替部105の操作に拘わらずインクカートリッジとの接続関係が変わらない4個のノズル列N1、N3、N5、N7と、接続切替部105の操作により接続関係が切り替わる4個のノズル列N2、N4、N6、N8と、が含まれていることが分かる。本明細書では、前者は固定インクノズル列と、後者は可変インクノズル列と、それぞれ呼ばれる。なお、ノズル列が固定インクノズル列であるか可変インクノズル列であるかは、ノズル列に接続されるインク供給部が有する接続切替部105の構成によって決定されることが分かる。
【0058】
4個の固定インクノズル列N1、N3、N5、N7には、ブラックインクカートリッジと、シアンインクカートリッジと、マゼンタインクカートリッジと、イエローインクカートリッジと、がそれぞれ接続されている。これにより、接続切替部105の操作に拘わらず、4つの基本色インクを吐出してカラー印刷を行うことが可能となっている。
【0059】
4個の可変インクノズル列N2、N4、N6、N8には、8色印刷モード時と4色印刷モード時とで異なるインクカートリッジが接続される。具体的には、8色印刷モード時には、淡ブラックインクカートリッジと、淡シアンインクカートリッジと、淡マゼンタインクカートリッジと、暗イエロインクカートリッジと、が可変インクノズル列N2、N4、N6、N8にそれぞれ接続される。そして、これらのインクカートリッジに収容されるインクが利用可能となる。これにより、8色印刷モード時には、淡インクや暗インクを用いた多階調の高画質印刷が可能となっている。
【0060】
一方、4色印刷モード時には、ブラックインクカートリッジと、シアンインクカートリッジと、マゼンタインクカートリッジと、イエロインクカートリッジと、が可変インクノズル列N2、N4、N6、N8にそれぞれ接続される。これにより、固定インクノズル列と、4つの基本色の各色について2つのノズル列が利用可能となる。この2つのノズル列は千鳥に配列されているので、千鳥に配列された一列のノズル列として用いることができる。この結果、4色印刷モード時には、各色について2つのノズル列を用いた高速印刷が可能となる。
【0061】
なお、淡シアンインクノズル列はシアンインクノズル列に対して主走査方向に隣接して配列されており、また、淡マゼンタインクノズル列はマゼンタインクノズル列に対して、暗イエロインクノズル列はイエロインクノズル列に対して、淡ブラックインクノズル列はブラックインクノズル列に対して、それぞれ主走査方向に隣接して配列されている。このような配置としたのは、インク流路の接続切替部とノズルとの間の距離を小さくすることにより、接続の切替に伴うインクの混濁を抑制するためである。
【0062】
また、印刷ヘッドユニット60は、図示しないスイッチを備えており、いずれの接続状態であるかを自動的に検知可能である。検知された結果は、接続形態信号CSとして制御回路40を経由してコンピュータ90に送信される。接続形態信号CSを受け取ったコンピュータ90は、以下に説明するように切り替えられた接続形態に対応した印刷制御モードに切り替えられる。
【0063】
図7は、本発明の実施例における印刷処理のための準備手順を示すフローチャートである。この準備手順は、カラープリンタ20の電源が「ON」にされると自動的に開始される(ステップS101)。なお、この準備手順は、カラープリンタ20の電源が「ON」の状態で、接続切替部105の切替が検知されたときにも同様に開始される。この場合は、次のステップS102から手順が開始される。
【0064】
ステップS102では、カラープリンタ20のCPU41は、接続切替部105の接続形態を確認する。確認された接続形態は、最後に印刷ないしノズルクリーニングが行われたときの接続形態と比較される。このような最後の接続形態はMIB46に記憶されている。この比較の結果、接続形態に変更が認められたときには、CPU41は、印刷ヘッドユニット60の接続形態に変更があった旨と、変更後の接続形態とを表す接続形態信号CSをコンピュータ90の印刷モード管理部101に送信する。
【0065】
ステップS103では、印刷モード管理部101は、接続形態信号に応じて印刷ヘッドのクリーニングの許可をユーザに求める画面(図8)を表示する。図8に示される例は、図6(b)に示される8色印刷モードから図6(c)に示される4色印刷モードに変更されたときに表示される画面である。この画面上で、ユーザが、「はい」をクリックすると、印刷ヘッドのクリーニングが行われる。一方、ユーザが、「いいえ」をクリックすると、印刷画質が一時的に劣化する旨の警告が現れた後に、この画面が消える。
【0066】
図9は、クリーニング機構200の構成を示す概念図である。クリーニング機構200は、ヘッドキャップ210と、ホース220と、ポンプローラ230とを備えている。なお、図9においては、ホース220は途中までしか示されていない。
【0067】
ヘッドキャップ210は、図9に示すように、その内部空間が8つの吸引室VBk、VLk、VC、VLc、VM、VLm、VY、VDyに分かれている。このヘッドキャップ210が上昇して印刷ヘッド28の下面に密着すると、8つの吸引室VBk、VLk、VC、VLc、VM、VLm、VY、VDyは、各ノズル列Bk、Lk、C、Lc、M、Lm、Y、Dy(図5)を覆う8つの閉空間を形成する。これら8つの閉空間の各々は、ヘッドキャップ210内でそれぞれが備える図示しない電磁弁を経由して、ホース220に接続されている。各閉空間が電磁弁を備えているのは、ノズル列毎にノズルクリーニングを可能とするためである。
【0068】
ポンプローラ230は、その周縁部の近傍に2つの小ローラ232,234を有している。これらの2つの小ローラ232,234の周囲には、ホース220が巻回されている。紙送りモータ31がポンプローラ230に接続され、これが矢印A方向に回転すると、小ローラ232,234によってホース220内の空気が押され、これによってヘッドキャップ210内の各閉空間から排気される。いずれの閉空間から排気するかは、電磁弁を開閉することにより制御される。
【0069】
たとえば、図6(b)に示される8色印刷モードから図6(c)に示される4色印刷モードに変更するときには、淡シアンインクノズル列Lcはシアンインクでフラッシングされ、また、淡マゼンタインクノズル列Lmはマゼンタインクで、ダークイエロインクノズル列Dyはイエロインクで、淡ブラックインクノズル列Lkはブラックインクで、それぞれフラッシングされる。これにより、8色印刷モードで使用されるインクを淡シアンインクノズル列Lc等から排出することができる。これにより、8色印刷モードで使用されるインクと4色印刷モードで使用されるインクの混濁を抑制することができる。なお、本実施例では、印刷モード管理部101とクリーニング機構200とが、特許請求の範囲における「クリーニング処理部」に相当する。
【0070】
ステップS104では、印刷モード管理部101は、接続形態信号CSに応じて印刷モードを管理する。具体的には、印刷モード管理部101は、色変換モジュール98と印刷データ生成モジュール100とに対して処理モードの切替を要求する。
【0071】
色変換モジュール98は、印刷モード管理部101からの要求に応じて、色変換に用いる色変換テーブルLUTを切り替える。色変換テーブルLUTには、8色印刷モード用の色変換テーブルと4色印刷モード用の色変換テーブルとを含んでいる。
【0072】
8色印刷モード用の色変換テーブルは、与えられた画像と、4つの基本色インクと淡シアンインクと淡マゼンタインクと淡ブラックインクとダークイエロインクとを使用して表現するための各色階調値の組合せと、を対応づけた色変換テーブルである。4色印刷モード用の色変換テーブルは、与えられた画像と、4つの基本色インクのみを使用して表現するための各色階調値の組合せと、を対応づけた色変換テーブルである。
【0073】
印刷データ生成モジュール100は、印刷モード管理部101からの要求に応じて、プリンタ20に出力するための最終処理のモードを切り替える。最終処理のモードには、8色印刷モード用の処理モードと4色印刷モード用の処理モードとが含まれている。
【0074】
8色印刷モードでは、同一のインクを吐出するノズルピッチK・Dで配列された48個のノズルを有する各ノズル列を用いて印刷が行われる。一方、4色印刷モードでは、同一のインクを吐出するK・D/2で配列された96個のノズルを有する4組のノズル列を用いて印刷が行われる。印刷データ生成モジュール100は、最終処理のモードの切り替えにより、8色印刷モードあるいは4色印刷モードに適した各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとが生成可能となる。
【0075】
このような処理が完了すると、コンピュータ90は、設定された新たな動作環境をMIB46に保存する。そして、印刷装置は、印刷ヘッドユニット60の接続状態に対応した印刷処理を行うことが可能な状態となる。
【0076】
このように、本実施例では、印刷ヘッドユニット60が備える接続切替部105を操作することにより、インクカートリッジを交換することなく各ノズル列から吐出されるインクを変更させることができる。この結果、8色のインクを用いた高画質の印刷と各色について96個のノズルを用いた高速の印刷とを容易に切り替えることが可能となる。
【0077】
なお、本実施例では、接続形態の切替に応じて、自動的に印刷データ生成処理のモードが切り替わるように構成されているが、たとえばユーザがコンピュータ90に接続形態に応じて処理モードを切り替えるような簡易な構成としても良い。ただし、前者にはインクの切替に伴うユーザの負担をさらに軽減することができるとともに、誤操作を減少させることができるという利点がある。
【0078】
C.本発明の第2実施例:
図10は、本発明の第2実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図である。本実施例は第1実施例と2つの点で異なる。第1の相違点は、利用可能なインク色が8色から7色に減らされている点である。第2の相違点は、可変インクノズル列がノズル列N2のみに減らされるとともに、ノズル列N2に接続可能なインクカートリッジが淡ブラックインクカートリッジからダークイエロインクカートリッジに変更されている点である。図10から分かるように、接続切替部105aは、ブラックインクカートリッジと2つのノズル列N1、N2との間のインク流路にのみ含まれており、他のインク流路とはクリアランスCLRで分離されている。
【0079】
この実施例では、7色モードの接続状態においては7色の高画質印刷が可能となる一方、4色モードの接続状態においては4色のカラー印刷または2つのノズル列N1、N2を用いた高速ブラック印刷が可能となる。このように、接続関係の切替は単一のノズル列について行うような構成でも良い。
【0080】
D.本発明の第3実施例:
図11は、本発明の第3実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図である。本実施例は、ノズル列N2が可変ノズル列でなく固定ノズル列である点で第1実施例と異なる。図11から分かるように、接続切替部105bは、五つのカラーインクカートリッジと5つのノズル列N3〜N7との間のインク流路にのみ含まれており、ブラックインクのためのインク流路とはクリアランスCLRで分離されている。
【0081】
この実施例では、7色モードの接続状態においては7色の高画質印刷または2つのノズル列N1、N2を用いた高速ブラック印刷が可能となる一方、4色モードの接続状態においては4色のカラー印刷またはブラック印刷が可能となるという利点がある。
【0082】
E.本発明の第4実施例:
図12は、本発明の第4実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図である。この実施例は、すべてのノズル列N1〜N8が可変インクノズル列である点で前述の各実施例と異なる。接続切替部105cは、流路P1cと流路P2cとを、それぞれ4個ずつ備えている。4個の流路P1cは、顔料インクを収容するインクタンクと8個のノズル列N1〜N8との間を接続可能なように構成されている。4個の流路P2cは、染料インクを収容するインクタンクと8個のノズル列N1〜N8とを接続可能なように構成されている。接続切替部105を操作すると、4個の流路P2cないし4個の流路P1cのいずれか一方がノズル列N1〜N8と接続されることにより、顔料インク4色モードの接続状態ないし染料インク4色モードの接続状態が達成される。
【0083】
この実施例では、顔料インク4色モードの接続状態においては4色の顔料インクBp、Cp、Mp、Ypを用いたカラー印刷が可能となる一方、染料インク4色モードの接続状態においては4色の染料インクBd、Cd、Md、Ydを用いたカラー印刷が可能となるという利点がある。このように、すべてのノズル列が可変インクノズル列であるような構成でも良い。
【0084】
F.本発明の第5実施例:
図13は、本発明の第5実施例における印刷ヘッド28aの下面におけるノズル配列を示す説明図である。本実施例は、印刷ヘッドが少なくとも一部のノズル列が副走査方向に直列に配列されている縦配列の印刷ヘッド28aである点で異なる。ただし、インク流路の接続の切替の様子は、図6に示される第1実施例と同様である。
【0085】
図6(b)に示されるような8色印刷モードでは、第1実施例と同様に、8色のインクを用いた高画質の印刷が可能となっている。一方、図6(c)に示される4色印刷モードようなでは、4個の分岐した流路P1を用いて、4個の基本色インクカートリッジが8個のノズル列に接続されている。たとえばブラックインクカートリッジは、分岐した流路P1を通じて2つのノズル列N1、N2に接続されている。この2つのノズル列は、つながった1列のノズル列として扱われ、他のノズル列と共に高速印刷を可能としている。
【0086】
このように、本発明は、すべてのノズル列が主走査方向に配列された横配列ヘッドを利用する印刷装置に限られず、少なくとも一部のノズル列が副走査方向に直列に配列されている縦配列ヘッドを利用する印刷装置にも適用することができる。
【0087】
ただし、ノズル列が縦方向に配列される場合には、濃度や明度の低いインクが後から吐出されるように配置するのが好ましい。こうすれば、濃インクが淡インクの影響を受けにくくなるので豊かな階調表現が可能となるからである。
【0088】
G.本発明の第6実施例:
図14は、本発明の第6実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図である。本実施例は、インクカートリッジがキャリッジ30e上に装着されていない点で前述の各実施例と異なる。図14では、キャリッジ30e上に装備された第1実施例と同一の印刷ヘッド28と接続切替部105eと、の一部が示されている。
【0089】
本実施例では、インク流路は以下のように構成されている。シアンインクタンク171Cと淡シアンインクタンク171Lcは、インク流路110、112によってノズル列N3,N4とそれぞれ接続されている。これらのインク流路110、112は、印刷ヘッド28の近傍で連絡流路114によって互いに接続されている。連絡流路114には、バルブV2が設けられている。また、インク流路112上の連絡流路114との接続部よりも上流部にもバルブV1が設けられている。
【0090】
この構成では、各ノズル列と各インクカートリッジは以下のように接続される。ノズル列N3には常時シアンインクが導かれる。ノズル列N4には、8色印刷モードでは、バルブV1が開かれてバルブV2が閉じられることにより、淡シアンインクが導かれる。一方、4色印刷モードでは、バルブV2が開かれてバルブV1が閉じられることによりシアンインクが導かれる。この結果、8色印刷モードでは、シアンインクと淡シアンインクが利用可能となり、4色印刷モードでは、シアンインクが2つのノズル列N3、N4から吐出可能となる。
【0091】
このように、複数のノズル列と複数のインクタンクとの接続関係の切り替えは、バルブを用いて行うようにしても良い。また、接続切替部は、インクカートリッジからノズルまでのインク流路のいずれかの位置に装備されていれば良く、必ずしもキャリッジ30e上に装備されている必要はない。ただし、ノズル列の近く装備するほど、接続切替に伴うクリーニングに要するインクの吐出量を削減することができるという利点がある。
【0092】
H.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0093】
H−1.上記実施例では、有色のインクが使用されているが、たとえば無色の液剤(たとえば保護剤や耐光材)を利用可能な印刷装置にも本発明は適用できる。一般に、本発明は、複数種類のインクを吐出可能な印刷装置に適用可能である。また、本明細書では、インクの語は、有色の液剤のならず無色の液剤(たとえば保護剤や耐光材)をも含む広い概念である。
【0094】
H−2.上記実施例では、接続切替の際のクリーニングはインクの吸引によって行われているが、たとえばクリーニング用印刷データをプリンタ20に送信して印刷ヘッドを駆動することにより行っても良い。一般に、本発明におけるクリーニングは、ノズルからインクを吐出するものであれば良い。なお、上記構成では、印刷モード管理部101と印刷データ生成モジュール100とが特許請求の範囲における「クリーニング処理部」に相当する。
【0095】
H−3.上記実施例では、各インク毎に独立したインクカートリッジを印刷ヘッドユニット60に装着できるように、印刷ヘッドユニットが構成されているが、複数のインクタンクを有するインクカートリッジが装着可能となるように構成されても良い。一般に、本発明で使用されるインクタンク装着部は、結果として複数種類のインクをそれぞれ収容するための複数のインクタンクが装着可能であれば良い。
【0096】
なお、この説明からも理解できるように、本明細書において、「インクタンク」とは、1種類のインクを収容するための容器を意味している。また、インクカートリッジとは、一体として形成され、少なくとも1つのインクタンクを有する容器を意味している。
【0097】
この発明は、ドラムプリンタにも適用できる。尚、ドラムプリンタでは、ドラム回転方向が主走査方向、キャリッジ走行方向が副走査方向となる。また、この発明は、インクジェットプリンタのみでなく、一般に、複数のノズル列を有する記録ヘッドを用いて印刷媒体の表面に記録を行うドット記録装置に適用することができる。
【0098】
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図1に示したプリンタドライバ96の機能の一部または全部を、プリンタ20内の制御回路40が実行するようにすることもできる。この場合には、印刷データを作成する印刷制御装置としてのコンピュータ90の機能の一部または全部が、プリンタ20の制御回路40によって実現される。
【0099】
本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例として印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】プリンタの構成を示す説明図。
【図3】カラープリンタ20における制御回路40の構成を示すブロック図。
【図4】印刷ヘッドユニット60の斜視図。
【図5】印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図。
【図6】本発明の第1実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図。
【図7】本発明の実施例における印刷処理の手順を示すフローチャート。
【図8】印刷ヘッドのクリーニングの許可をユーザに求めるための画面。
【図9】クリーニング機構200の構成を示す概念図。
【図10】本発明の第2実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図。
【図11】本発明の第3実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図。
【図12】本発明の第4実施例におけるインク流路の接続の切替の様子を示す概念図。
【図13】本発明の第5実施例における印刷ヘッド28aの下面におけるノズル配列を示す説明図。
【図14】印刷ヘッドユニット60外にインクカートリッジが装着された構成の一部を示す説明図。
【符号の説明】
20…カラープリンタ
21…CRT
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28、28a…印刷ヘッド
30、30a…キャリッジ
31…紙送りモータ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置センサ
40…制御回路
41…CPU
44…RAM
46…MIB
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
72Bk、72Lk、72C、72Lc、72M、72Lm、72Y、72Dy…導入管
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…ハーフトーンモジュール
100…印刷データ生成モジュール
101…印刷モード管理部
105、105a…接続切替部
171Bk…ブラックインクカートリッジ
171C…シアンインクカートリッジ
171Dy…ダークイエロインクカートリッジ
171Lc…淡シアンインクカートリッジ
171Lk…淡ブラックインクカートリッジ
171M…マゼンタインクカートリッジ
171Y…イエロインクカートリッジ
200…クリーニング機構
210…ヘッドキャップ
220…ホース
230…ポンプローラ
232,234…小ローラ
Claims (6)
- インクを印刷媒体上に吐出することによって印刷を行う印刷装置であって、
同一のインクを吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を複数個備える印刷ヘッドと、
複数種類のインクをそれぞれ収容するための複数のインクタンクを装着可能なインクタンク装着部と、
前記複数のインクタンクの各々を前記複数のノズル列のいずれかに接続するインク供給部と、
を備え、
前記インク供給部は、複数の流路が形成された板状部材であって前記印刷ヘッドと前記複数のインクタンクとの間に挟まれた板状部材をずらすことによって、前記複数のノズル列と前記複数のインクタンクとの間の接続関係を切り替える接続切替部を備え、
前記複数のノズル列は、
前記接続関係の切り替えにより接続されるインクタンクが変更される可変インクノズル列と、
前記接続関係の切り替えにより接続されるインクタンクが変更されない固定インクノズル列と、
を備え、
前記固定インクノズル列は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの4つのインクをそれぞれ収容するインクタンクに常時接続されているノズル列を含み、
前記可変インクノズル列は、前記接続関係の切り替えに応じて、前記固定インクノズル列が接続されている複数のインクタンクのうちのいずれか、あるいは前記インクタンク装着部に装着された複数のインクタンクのうち前記固定インクノズル列が接続されていない他のインクタンクのうちのいずれか、のいずれか一方に接続され、
前記インクタンク装着部は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各基本色と、シアンの基本色インクに比べて濃度が低い淡シアンと、マゼンタの基 本色インクに比べて濃度が低い淡マゼンタと、イエロの基本色インクに比べて明度が低い暗イエロと、およびブラックの基本色インクに比べて明度が高い淡ブラックと、の各色のインクを収容する複数のインクタンクが装着可能であり、
前記固定インクノズル列は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの4つの基本色インクをそれぞれ吐出する4つの基本色インクタンクに常時接続され、
前記接続切替部は、前記淡シアンインクと、淡マゼンタインクと、暗イエロインクと、淡ブラックインクとを収容する各インクタンクを前記可変インクノズル列のそれぞれに接続する第1の接続形態と、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各基本色を収容する各インクタンクを前記可変インクノズル列のそれぞれに接続する第2の接続形態と、を含む複数の接続形態のいずれかに切替可能である、印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、
前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、
前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されており、
前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列が有する複数のノズルは、千鳥に配列されている、印刷装置。 - 請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、
前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、
前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されており、
前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、主走査方向に隣接して配列されている、印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列とシアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、
前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列とマゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、
前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列とイエロの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されており、
前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列とブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列の2つのノズル列は、副走査方向に直列に配列されている、印刷装置。 - 請求項1または4に記載の印刷装置であって、
前記淡シアンインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡シアンインクがシアンの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、シアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、
前記淡マゼンタインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡マゼンタインクがマゼンタの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、マゼンタの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、
前記暗イエロインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記暗イエロインクがイエロの基本インクよりも先に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、シアンの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されており、
前記淡ブラックインクを吐出可能な可変インクノズル列は、前記淡ブラックインクがブラックの基本インクよりも後に前記印刷媒体の同一位置に吐出できるように、ブラックの基本インクを吐出する固定インクノズル列に対して配列されている、印刷装置。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷装置であって、さらに、
前記接続関係の切り替えに応じて、自動的に前記可変インクノズル列から所定の量だけインクを吐出させるクリーニング処理部を備える、印刷装置。
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