JP3759028B2 - 高温部品の補修方法及び補修された高温部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービン、スチームタービン、ジェットエンジン等のエネルギ機関の高温部品、特にタービン動翼、静翼、燃焼器、分割環に生じた損傷や欠陥を補修する高温部品の補修方法及び補修された高温部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル基超合金およびコバルト基超合金は、高温環境下におかれるタービン機関の動翼、静翼、燃焼器、分割環、ノズル等の各種高温部品に用いられている。これらの高温部品は高温ガスと直接接触して過酷な熱サイクルとエロージョン腐食を受けて著しい損傷を生じる。このため比較的短期間に部品が劣化してしまい、設計仕様通りの本来の性能が出力されなくなるので、頻繁に交換又は補修がなされている。
【0003】
これらのニッケル基超合金およびコバルト基超合金は高価な材料であるので、受けた損傷が致命的である場合を除いて部品を交換しないで、その損傷を受けた部位のみをろう付け補修して再度使用に供し、寿命延長を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高温部品に発生した割れなどの損傷が肉厚を貫通して部品の裏面側で約0.5mm以上に開口している場合は、ろう付け材の融液が開口から漏れ出て部品の裏面側にたれ込んでしまうために、補修部の強度を保証できる確実なろう付け施工をすることができない。また、タービン動翼を空冷するための冷却通路周壁の酸化、腐食、エロージョンによる減肉部を補修する場合にも同様の問題を生じる。さらに、運転稼働中に発生した損傷のみならず高温部品の製造時に発生する貫通欠陥を補修する場合にも同様の問題を生じる。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、裏面側に貫通する損傷および欠陥部位を高精度かつ高品質に補修することができる高温部品の補修方法及び補修された高温部品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高温部品の補修方法は、高温で運転されるエネルギ機関に用いられる高温部品を補修するための方法であって、ニッケル基合金またはコバルト基合金からなる高温部品の表面側から裏面側に貫通する損傷または欠陥部位を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成する工程と、前記開先に露出する面を覆うようにニッケル箔を配置する工程と、前記ニッケル箔の上から前記開先内にニッケル基合金ろう付け材を充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下で前記ろう付け材を加熱溶融させるとともに、前記ニッケル箔および母材の少なくとも一部を加熱溶融させて前記ニッケル基合金ろう付け材と一体化させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る補修された高温部品は、高温で運転されるエネルギ機関に用いられる補修された高温部品であって、ニッケル基合金またはコバルト基合金からなる高温部品の表面側から裏面側に貫通する損傷または欠陥部位を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成し、該開先に露出する面を覆うようにニッケル箔を配置し、該ニッケル箔の上から開先内にニッケル基合金ろう付け材を充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下で前記ろう付け材を加熱溶融させるとともに、前記ニッケル箔および母材の少なくとも一部を加熱溶融させて前記ニッケル基合金ろう付け材の融液と拡散または希釈されることにより一体化された合金化補修部位を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の高温部品の補修方法はタービン機関の動翼、静翼、燃焼器、分割環等のいずれにも好適に用いることができ、補修された高温部品として動翼、静翼、燃焼器、分割環がそれぞれ提供される。
【0009】
この場合に、ニッケル箔の厚みを5〜100μmとすることが好ましく、10μm程度とすることが最も好ましい。箔の厚みが5μmを下回ると、箔が破れやすくなり通常の取り扱いができなくなる。一方、箔の厚みが100μmを上回ると、開先の形状に沿わせて変形し難くなり作業者が手指で箔を曲げることができなくなるからである。
【0010】
開先の裏面側の溝幅は1〜10mmとすることが好ましい。裏面側の溝幅が1mmを下回ると、開先露出面を裏面側まで覆うようにニッケル箔を装着することが困難になるとともに、ろう付け材の融液が裏面側まで十分に供給されなくなるからである。一方、裏面側の溝幅が10mmを上回ると、ニッケル箔が溶融して強度を失ったときにろう付け材の融液が開先の裏面側に漏れ出てしまい、溶け込み不良や形状不良を生じるからである。
【0011】
損傷部位が高温部品を空冷するための冷却孔の周壁である場合は、該冷却孔の周壁を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成し、開先の露出面を覆うようにニッケル箔を配置し、該ニッケル箔の上から開先内にニッケル基合金ろう付け材を押し込むことにより充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下でろう付け材を加熱溶融させるとともに、ニッケル箔および母材の少なくとも一部を溶融させてニッケル基合金ろう付け材と一体化させた後に、冷却通路の周壁が損傷を受ける前の大きさと形状の冷却孔を穿孔加工する。これにより冷却孔は設計仕様通りの大きさと形状に回復され、割れ等の危険度の高い損傷を生じる起点になるおそれがなくなり、高温部品の寿命がさらに延長される。
【0012】
ニッケル基合金ろう付け材は、Ni,Cr,Co,W,Ti,Al,Bを含有する融点1080〜1270℃の低融点合金粉末とNi,Cr,Co,Wを含有する融点1200℃以上の高融点合金粉末とを3:7〜7:3の割合で混合したものからなることが好ましい。母材となるニッケル基合金は例えばインコネル738LC(Cr15.70〜16.30%,Co8.00〜9.00%,Ti3.20〜3.70%,Al3.20〜3.70%,W2.40〜2.80%,Mo1.50〜2.00%,Ta1.50〜2.00%,C0.09〜0.13%,B0.01%以下,P0.01%未満,S0.01%未満)であり、それに対する低融点Ni基合金粉末の組成の一例としてはNi−8〜12Cr−16〜20Co−2〜3.5Mo−1.5〜2.5W−5〜9Ta−7.5〜10Ti−8.5〜10.5Al−1〜3Nb−0.5〜3.5B−0.35Zrを、高融点Ni基合金粉末の組成の一例としてはNi−16〜18Cr−〜5Co−〜3.5W−〜1.0Ta−〜1.0Ti−〜1.0Al−0.15〜0.3C−0.01〜0.03B−〜0.1Zrをそれぞれあげることができる。なお、低融点Ni合金粉末の配合割合が30重量%未満の場合は焼結が十分に進まなくなる。一方、低融点Ni合金粉末の配合割合が70重量%を越えると液相がですぎて十分な強度が得られなくなる。
【0013】
Niに添加する各成分の効果は次のとおりである。
【0014】
まず、Crは、合金に耐酸化性及び耐食性を付与する合金成分である。Coは、γ’相(Ni3Al)を形成することで高温強度改善に有効な合金成分であるAl及びTiに対して、高温におけるそれらの固溶限度を大きくし、結果として高温強度向上に寄与する。Wは、固溶強化の効果があり、高温強度の向上に寄与する。Taは、固溶強化とγ’相による析出強化により高温強度の向上に寄与する。
【0015】
Ti及びAlはγ’相による析出強化により高温強度の向上に寄与する。Cは、炭化物を形成し、主として結晶粒界を強化して高温強度の向上に寄与する。B及びZrは、粒界の結合力を増加させ高温強度を向上する。
【0016】
なお、各合金成分の添加効果は上記高融点を有するNi合金粉末と同じであり、高融点を有するNi合金粉末に含まれていないMoはWと同じく、固溶強化の効果があり、高温強度の向上に寄与する。また、Nbは、Tiと同様、Alとともにγ’相を形成して高温強度の向上に寄与する。更に、Co,Mo,Ta,Ti,Al,Bは、高融点を有するNi合金粉末より多く添加しており、これは合金粉末の融点を低下させることが目的であり、特にBはその効果が大きい。
【0017】
各合金粉末における合金成分の組成範囲は、融点を調整するとともに、所定の配合比で配合し反応させた後、各合金成分の添加効果が発揮するよう、σ相等有害な脆化相が生じないよう配慮し決定した。
【0018】
加熱前は、高融点を有するNi合金粉末(H)間に低融点を有するNi合金粉末(L)が配置されているが、加熱によりNi合金粉末(L)が溶融し、溶融した粉末がNi合金粉末(H)間の大部分の隙間を毛細管現象により埋めることになる。
【0019】
加熱は1080〜1270℃の温度で、かつ2〜24時間保持の条件下で行うことが好ましい。ここで、加熱温度が1080℃未満では毛細管現象による液相が生ずることなく、加熱温度が1270℃を越えると母材の方が溶けやすい。また、本発明では、上記加熱処理(焼結)後、更に段階的な加熱処理を行なうことが好ましい。具体的には、1120℃±10℃で2〜4時間加熱(前者)し、更に850℃±10℃で16〜24時間加熱(後者)する。
【0020】
ここで、前者の加熱は、上記焼結のための熱処理における冷却過程で析出した母材中のγ’相(Ni3Al金属間化合物)を固溶させることを目的に実施するものであり、その温度はγ’相の固溶かつまた初期融解を発生させないため1120℃とし、処理時間は各合金成分の拡散を十分進めるために、上記のとおりとした。後者の加熱は、γ’相を均一に析出させるために行うものであり、γ’相の析出状態を均一、微細とするために850℃、また合金組成に見合って析出させるために16〜24時間の処理とした。
【0021】
熱処理後のNi基焼結合金における気孔の面積率は、〜5%であることが好ましい。これはこの種焼結法では気孔の発生を避け得ないが、5%を超える場合、合金の強度及び延性に悪影響をきたすためである。
【0022】
Ni基焼結合金は、例えばバルク成形、コーティング、局所的肉盛に利用可能である。ここで、バルク成形は、翼材の形に上記Ni基焼結合金の粉を圧をかけて成形した後、焼結することにより行う。前記コーティングは、高温酸化などの減肉部に上記Ni基焼結合金粉を低圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法などで吹き付けてコーティングした後、加熱して焼結するものである。前記局所的肉盛は、き裂部分などの補修対象部に上記Ni基焼結合金粉を肉盛りした後、焼結するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明の種々の好ましい実施の形態について説明する。
本実施形態では発電用ガスタービン機関に用いられる各種の高温部品をろう付け補修する場合を例にとって説明する。
【0024】
図1に示すように、発電用ガスタービン機関1は、燃料供給管2,4、ノズル3,5、燃焼器内筒6、燃焼器尾筒7、静翼8および動翼9からなるタービン翼10、分割環11、圧縮機(過給機)12、圧縮空気導入口13、バイパス弁14を備え、燃料供給管2を通って複数の予混合ノズル3からメイン燃料が燃焼器内に勢いよく噴射され、これに圧縮機(過給機)12から圧縮空気導入口13を通って導入される空気が混合して燃焼し、その燃焼ガスによりタービン翼10を回転させるようになっている。なお、運転開始時にはパイロット燃料を燃料供給管4に供給してパイロットノズル5から噴射させて着火する。
【0025】
燃焼器は、ノズル3,5の噴射孔が開口する内筒6と、これに続く尾筒7とを具備するものである。燃焼器尾筒7の後端部はタービン翼10に燃焼ガスを吹き付けるように開口している。また、燃焼器尾筒7の途中にはバイパス弁14を備えたバイパス管が連通している。燃焼器尾筒7を構成する周壁はニッケル基耐熱合金からなる。
【0026】
タービン翼10を構成する静翼8と動翼9とは交互に繰り返し配置され、静翼8と動翼9と隙間を通って燃焼ガスが外部へ漏れ出さないように、静翼8と動翼9との隙間を外側から取り囲むように分割環11が設けられている。この分割環11を構成する周壁はコバルト基耐熱合金からなる。
【0027】
動翼9の翼本体91には図2に示すように多数の空冷用貫通孔94が形成されている。また、静翼8にも同様の空冷用貫通孔(図示せず)が多数形成されている。
【0028】
(実施例1)
図2および図3を参照して、実施例1としてNi基合金(IN738LC)からなるガスタービン動翼の貫通割れをろう付け補修する場合について説明する。
【0029】
タービン動翼9は、図2に示すように、円周方向に延び出す翼本体91と、翼本体91の内周側の基部に設けられたプラットフォーム92と、プラットフォーム92の内周側に設けられた固定部93とが一体化した精密鋳造品である。翼本体91は中空構造をなし、翼本体91を空冷するために、翼本体を表面側から裏面側に貫通する多数の孔94が翼本体91の長手に沿って直列に形成されている。
【0030】
動翼9は高温高応力の過酷な条件で使用されると、図2に示すように、翼本体91の先端部分にチップシニング亀裂と呼ばれる貫通割れ99を発じやすく、またプラットフォーム92の端縁部にプラットフォーム亀裂と呼ばれる貫通割れ99を生じやすい。さらに、空冷用の貫通孔94の周壁は酸化、腐食、エロージョンにより表面側が削り取られて、孔94の径が表面側で拡大される。安全にガスタービンを運用するためには、これらの亀裂部、減肉部を補修する必要がある。
【0031】
次に、図3を用いて動翼のプラットフォームが受けた損傷部位を補修する場合について詳しく説明する。
【0032】
図3の(a)はプラットフォーム92の端縁部に発生したプラットフォーム亀裂99を拡大して示す断面図である。図示の如く亀裂99はプラットフォーム92の肉厚を貫通して裏面側まで達している。この亀裂99の部位を砥石等を用いて研削し、図3の(b)に示すように開先100を形成する。開先100は、表面側(外周面側)のほうが裏面側(内周面側)よりも幅広の溝形状に形成され、その裏面側(内周面側)の溝幅は1〜10mmである。なお、開先の露出面101は、表面側(外周面側)の溝幅が大きくなりすぎないように適当な傾斜とする。
【0033】
開先の露出面101を脱脂洗浄した後に、図3の(c)に示すように、ニッケル箔102を開先露出面101に沿わせて配置し、ニッケル箔102で露出面101をすべて覆う。ニッケル箔102の厚みは10μmであり、作業者が手指を使って容易に曲げることができる可撓性と、通常の取り扱いによって破れない強度とを兼ね備えている。
【0034】
45質量%の低融点ニッケル基合金粉末と55質量%の高融点ニッケル基合金粉末とを配合したろう付け材をニッケル箔102の上に押し込み、図3の(d)に示すように、ろう付け部103を形成する。この場合に、低融点ニッケル基合金粉末は融点1080〜1270℃のNi−8〜12Cr−16〜20Co−2〜3.5Mo−1.5〜2.5W−5〜9Ta−7.5〜10Ti−8.5〜10.5Al−1〜3Nb−0.5〜3.5B−0.35Zrの組成の合金粉末からなり、高融点ニッケル基合金粉末は融点1200℃以上のNi−16〜18Cr−〜5Co−〜3.5W−〜1.0Ta−〜1.0Ti−〜1.0Al−0.15〜0.3C−0.01〜0.03B−〜0.1Zrの組成の合金粉末からなるものである。
【0035】
ろう付け施工後、動翼9を熱処理炉内に装入し、1080〜1270℃×2〜24時間の条件で熱処理し、図3の(e)に示すように、合金化補修部位としてのろう付け部103とニッケル箔102を焼結させ一体化させ、プラットフォーム92の母材と一体化させた。引き続き、強度上昇のため溶体化及び時効,即ち1120℃×2時間+850℃×24時間の二段階の熱処理を行った。
【0036】
さらに、ろう付け部103の余盛り部分を砥石などにより研削し、図3の(f)に示すように、補修部位の表面を平坦面とした。
【0037】
本実施例1によれば、2種のNi基合金を混合し、加熱することにより動翼9を補修するため、低融点粉末と高融点粉末との間で毛細管現象が起こり、強度が十分な合金化補修部位103を得ることができる。また、焼結のための加熱後、段階的な熱処理を行なうので、母材中にγ’相が均一に析出し、強度がさらに増した合金化補修部位103を得ることができた。
【0038】
(実施例2)
次に、実施例2としてNi基合金(IN738LC)からなるガスタービン動翼の冷却孔周壁の酸化、腐食、エロージョンによる損傷部位を補修する場合について図4を参照しながら説明する。
【0039】
図4の(a)は翼本体91の冷却孔94に発生した酸化、腐食、エロージョンによる損傷95を拡大して示す断面図である。図示の如く損傷95は翼本体91の表面側の孔径を拡張するように冷却孔94の周壁が減肉したものである。
【0040】
この損傷95の部位を砥石等を用いて研削し、図4の(b)に示すように開先100を形成する。開先100は、表面側(外周面側)のほうが裏面側(内周面側)よりも幅広の溝形状に形成され、その裏面側(内周面側)の溝幅は平均5mmである。なお、開先の露出面101は、表面側(外周面側)の溝幅が大きくなりすぎないように適当な傾斜とする。
【0041】
開先の露出面101を脱脂洗浄した後に、図4の(c)に示すように、ニッケル箔102を開先露出面101に沿わせて配置し、ニッケル箔102で露出面101をすべて覆う。ニッケル箔102の厚みは10μmであり、作業者が手指を使って容易に曲げることができる可撓性と、通常の取り扱いによって破れない強度とを兼ね備えている。
【0042】
45質量%の低融点ニッケル基合金粉末と55質量%の高融点ニッケル基合金粉末とを配合したろう付け材をニッケル箔102の上に押し込み、図4の(d)に示すように、ろう付け部103を形成する。この場合に、低融点ニッケル基合金粉末は融点1080〜1270℃のNi−8〜12Cr−16〜20Co−2〜3.5Mo−1.5〜2.5W−5〜9Ta−7.5〜10Ti−8.5〜10.5Al−1〜3Nb−0.5〜3.5B−0.35Zrの組成の合金粉末からなり、高融点ニッケル基合金粉末は融点1200℃以上のNi−16〜18Cr−〜5Co−〜3.5W−〜1.0Ta−〜1.0Ti−〜1.0Al−0.15〜0.3C−0.01〜0.03B−〜0.1Zrの組成の合金粉末からなるものである。
【0043】
ろう付け施工後、動翼9を熱処理炉内に装入し、1080〜1270℃×2〜24時間保持の条件で熱処理し、図4の(e)に示すように、合金化補修部位としてのろう付け部103とニッケル箔102を焼結させ、翼本体91の母材と一体化させた。引き続き、強度上昇のため溶体化及び時効,即ち1120℃×2時間+850℃×24時間の二段階の熱処理を行った。
【0044】
さらに、ろう付け部103の余盛り部分を砥石などにより研削し、図4の(f)に示すように、補修部位の表面を平坦面とした。次いで、放電加工を用いてろう付け部103に穿孔し、図4の(g)に示すように、所定サイズおよび形状の冷却孔94を形成した。これにより損傷を受ける前の設計通りのサイズと形状の冷却孔94が動翼9に再生された。
【0045】
本実施例2によれば、2種のNi基合金を混合し、加熱することにより動翼9を補修するため、低融点粉末と高融点粉末との間で毛細管現象が起こり、強度が十分な合金化補修部位103を得ることができる。また、焼結のための加熱後、段階的な熱処理を行なうので、母材中にγ’相が均一に析出し、強度がさらに増した合金化補修部位103を得ることができた。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、部品の裏面側にろう付け材の融液がたれ込むことなく、裏面側開口量が0.5mm以上の貫通損傷や貫通欠陥を確実にろう付け補修することができ、保証強度の要求レベルを満たす高品質の補修部位が得られる。このため、従来は新品に交換して廃棄していたような損傷部品を補修して再度使用に供することができるので、メンテナンスコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガスタービンの概要を示す要部断面図。
【図2】損傷したガスタービン動翼の外観を示す斜視図。
【図3】(a)〜(f)は本発明の実施形態に係る高温部品の補修方法を示す工程図。
【図4】(a)〜(g)は本発明の他の実施形態に係る高温部品の補修方法を示す工程図。
【符号の説明】
2,4…燃料供給管、
3,5…ノズル、
6…燃焼器内筒、
7…燃焼器尾筒、
8…静翼、
9…動翼、
10…タービン翼、
11…分割環、
12…圧縮機(過給機)、
13…圧縮空気導入口、
14…バイパス弁、
91…翼本体、
92…プラットフォーム、
93…固定部、
94…貫通孔(冷却孔)、
99…貫通欠陥(亀裂、割れ)、
100…開先、
101…開先露出面、
102…Ni箔、
103…Ni合金部(合金化補修部位)。
Claims (8)
- 高温で運転されるエネルギ機関に用いられる高温部品を補修するための方法であって、
ニッケル基合金またはコバルト基合金からなる高温部品の表面側から裏面側に貫通する損傷または欠陥部位を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成する工程と、
前記開先に露出する面を覆うようにニッケル箔を配置する工程と、
前記ニッケル箔の上から前記開先内にニッケル基合金ろう付け材を充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下で前記ろう付け材を加熱溶融させるとともに、前記ニッケル箔および母材の少なくとも一部を加熱溶融させて前記ニッケル基合金ろう付け材と一体化させる工程と、
を具備することを特徴とする高温部品の補修方法。 - 前記ニッケル箔の厚みを5〜100μmとすることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記開先の裏面側の溝幅を1〜10mmとすることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記損傷部位は高温部品を空冷するための冷却通路の周壁であり、該冷却通路の周壁を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成し、該開先に露出する面を覆うようにニッケル箔を配置し、該ニッケル箔の上から前記開先内にニッケル基合金ろう付け材を充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下で前記ろう付け材を加熱溶融させるとともに、前記ニッケル箔および母材の少なくとも一部を加熱溶融させて前記ニッケル基合金ろう付け材と一体化させた後に、前記冷却通路の周壁が損傷を受ける前の大きさと形状の冷却孔を穿孔加工することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記ニッケル基合金ろう付け材は、Ni,Cr,Co,W,Ti,Al,Bを含有する融点1080〜1270℃の低融点合金粉末とNi,Cr,Co,Wを含有する融点1200℃以上の高融点合金粉末とを3:7〜7:3の割合で混合したものからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 高温で運転されるエネルギ機関に用いられる補修された高温部品であって、
ニッケル基合金またはコバルト基合金からなる高温部品の表面側から裏面側に貫通する損傷または欠陥部位を研削整形し、表面側が裏面側よりも幅広となる溝形状の開先を形成し、該開先に露出する面を覆うようにニッケル箔を配置し、該ニッケル箔の上から開先内にニッケル基合金ろう付け材を充填し、温度1080〜1270℃に2〜24時間保持する熱処理条件下で前記ろう付け材を加熱溶融させるとともに、前記ニッケル箔および母材の少なくとも一部を加熱溶融させて前記ニッケル基合金ろう付け材の融液と拡散または希釈されることにより一体化された合金化補修部位を具備することを特徴とする補修された高温部品。 - 前記ニッケル基合金ろう付け材は、Ni,Cr,Co,W,Ti,Al,Bを含有する融点1080〜1270℃の低融点合金粉末とNi,Cr,Co,Wを含有する融点1200℃以上の高融点合金粉末とを3:7〜7:3の割合で混合したものからなることを特徴とする請求項6記載の高温部品。
- 前記合金化補修部位は、タービン機関の動翼、静翼、燃焼器および分割環のうちのいずれかの一部であることを特徴とする請求項6記載の高温部品。
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